(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230817BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2022538325
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2020018665
(87)【国際公開番号】W WO2021125882
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172472
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(73)【特許権者】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、 オーミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジョン イル
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、 インチョル
(72)【発明者】
【氏名】フワンボ、 グン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0075596(KR,A)
【文献】特開2006-073482(JP,A)
【文献】特表2023-521005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属酸化物粒子;および
前記リチウム金属酸化物粒子表面の少なくとも一部に位置するコーティング層を含み、
前記コーティング層は、B、LiOH、Li
2CO
3およびLi
2SO
4を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記Bの含量は前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~5000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記LiOHの含量は前記正極活物質全体を基準にして、100ppm~10,000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記Li
2CO
3の含量は前記正極活物質全体を基準にして、1000ppm~5000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記Li
2SO
4の含量は前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記Li
2CO
3はリチウム原料として別途投入せず、内部反応によって起因したものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム金属酸化物粒子内金属のうちのニッケルの含量は85モル%以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
共沈反応器内に金属塩水溶液を投入して金属前駆体を得る段階;
前記金属前駆体、リチウム原料物質およびドーピング原料を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を1次熱処理した後、冷却する段階;および
前記冷却する段階で得られた生成物を水洗および乾燥した後、コーティング層形成物質と混合して2次熱処理する段階;
を含み、
前記コーティング層形成物質は、ボロン化合物、LiOHおよびLi
2SO
4を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記2次熱処理は200~450℃の温度範囲で行われる、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記2次熱処理する段階以後、コーティング層が形成された正極活物質を得る段階を含み、
前記コーティング層は、B、LiOH、Li
2CO
3およびLi
2SO
4を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記Li
2CO
3は内部反応に起因したものである、請求項10に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記コーティング層形成物質に含まれるボロン化合物の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、10ppm~5000ppmである、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング層形成物質に含まれるLiOHの含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、100ppm~7000ppmである、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記コーティング層形成物質に含まれるLi
2SO
4の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmである、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
請求項1~7のうちのいずれか一項の正極活物質を含む正極;
負極;および
非水電解質
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ITモバイル機器および小型電力駆動装置(e-bike、小型EVなど)の爆発的な需要増大、走行距離400km以上の電気車ニーズにこたえてこれを駆動するための高容量、高エネルギー密度を有する二次電池の開発が全世界的に活発に行われている。
【0003】
このような高容量電池を製造するためには高容量正極活物質を使用しなければならない。現存する層状系(layered)正極活物質のうちの最も容量の高い素材はLiNiO2(275mAh/g)であるが、充放電時、構造崩壊が起こりやすく酸化数問題による熱的安定性が低くて商用化が難しいのが実情である。
【0004】
このような問題を解決するためにNi siteに異種遷移金属(Co、Mnなど)を置換して電気化学的安定性を改善させたNCM系正極活物質を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態では、リチウム金属酸化物粒子の表面に位置するコーティング層にB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む正極活物質を提供しようとする。これにより、高容量を確保することができ、高温寿命特性に優れ初期抵抗および抵抗増加率を減少させた正極活物質を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物粒子;および前記リチウム金属酸化物粒子表面の少なくとも一部に位置するコーティング層を含み、前記コーティング層は、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含むことができる。
【0007】
前記Bの含量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~5000ppmの範囲であってもよい。
【0008】
前記LiOHの含量は、前記正極活物質全体を基準にして、100ppm~10000ppmの範囲であってもよい。
【0009】
前記Li2CO3の含量は、前記正極活物質全体を基準にして、1000ppm~5000ppmの範囲であってもよい。
【0010】
前記Li2SO4の含量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmの範囲であってもよい。
【0011】
前記Li2CO3はリチウム原料として別途投入せず、内部反応によって起因したものであってもよい。
【0012】
前記リチウム金属酸化物粒子内金属のうちのニッケルの含量は85モル%以上であってもよい。
【0013】
他の実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、共沈反応器内に金属塩水溶液を投入して金属前駆体を得る段階、前記金属前駆体、リチウム原料物質およびドーピング原料を混合して混合物を製造する段階、前記混合物を1次熱処理した後、冷却する段階、および前記冷却する段階の生成物を水洗および乾燥した後、コーティング層形成物質と混合して2次熱処理する段階を含み、前記コーティング層形成物質は、ボロン化合物、LiOHおよびLi2SO4を含むことができる。
【0014】
前記2次熱処理は、200~450℃の温度範囲で行うことができる。
【0015】
前記2次熱処理する段階以後、コーティング層が形成された正極活物質を得る段階を含み、前記コーティング層は、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含むことができる。
【0016】
前記Li2CO3は、内部反応に起因したものであってもよい。
【0017】
前記コーティング層形成物質に含まれるボロン化合物の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、10ppm~5000ppmの範囲であってもよい。
【0018】
前記コーティング層形成物質に含まれるLiOHの含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、100ppm~7000ppmの範囲であってもよい。
【0019】
前記コーティング層形成物質に含まれるLi2SO4の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmの範囲であってもよい。
【0020】
また、他の実施形態によるリチウム二次電池は、一実施形態による正極活物質を含む正極、負極、および非水電解質を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
一実施形態による正極活物質は、コーティング層にB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含むため、高容量の正極活物質を確保することができ、高温寿命特性に優れ初期抵抗および抵抗増加率を顕著に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例3の正極活物質表面をSEM分析した結果である。
【
図2】比較例1の正極活物質表面をSEM分析した結果である。
【
図3】実施例1~5のようにコーティング層に含まれるLi
2SO
4含量による常温初期放電容量および高温での抵抗増加率を示したものである。
【
図4】実施例6~実施例11のようにコーティング層に含まれるLiOH含量による高温での寿命特性および抵抗増加率を示したものである。
【
図5】実施例18~実施例20のようにコーティング層に含まれるB含量による0.1C初期容量および初期抵抗を示したものである。
【
図6】実施例12~実施例17のように2次熱処理温度を調節することによって、25℃での0.1C充放電容量および初期抵抗値と45℃での寿命および抵抗増加率を示したものである。
【
図7】比較例1と実施例3の正極活物質に対する高温での寿命特性評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及できる。
【0024】
ここで使用される専門用語は単に特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される“含む”の意味は特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるのではない。
【0025】
ある部分が他の部分“の上に”または“上に”あると言及する場合、これは直ぐ他の部分の上にまたは上にあり得るか、その間に他の部分が伴われることがある。対照的に、ある部分が他の部分“の真上に”あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0026】
異なるように定義しなかった場合、ここに使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り理想的であるか非常に公式的な意味に解釈されない。
【0027】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0028】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0029】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物粒子、および前記リチウム金属酸化物粒子表面の少なくとも一部に位置するコーティング層を含み、前記コーティング層は、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含むことを特徴とする。
【0030】
より具体的には、前記リチウム金属酸化物粒子は層状構造であってもよく、このような粒子の表面でB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含むコーティング層が位置するため正極活物質表面部の抵抗を減少させることができる。これにより、容量を増加させると同時に高温での寿命特性を向上させることができる。また、初期抵抗および高温での抵抗増加率も顕著に低減させることができる長所がある。
【0031】
即ち、本実施形態の正極活物質は、コーティング層に前記のように少なくとも四つの元素または化合物を共に含むため、シナジー効果を示すことができる。
【0032】
本実施形態で、前記Bの含量は、前記正極活物質全体を基準にして、50ppm~2000ppm、より具体的には、100ppm~1000ppmの範囲であってもよい。Bの含量が前記範囲を満たす場合、正極活物質の焼成時、平均結晶粒の大きさを減少させることができるため、正極活物質の初期抵抗および高温での抵抗増加率を顕著に減少させることができる。
【0033】
前記LiOHの含量は、前記正極活物質全体を基準にして、1200ppm~4000ppm、より具体的には、1500ppm~3500ppmの範囲であってもよい。コーティング層に含まれるLiOHの含量が前記範囲を満たす場合、高容量を確保すると同時に寿命特性を向上させることができる。
【0034】
前記Li2CO3の含量は、前記正極活物質全体を基準にして、1000ppm~5000ppm、より具体的には、1500ppm~4000ppmまたは2000ppm~3500ppmの範囲であってもよい。Li2CO3の含量が前記範囲を満たす場合、優れた常温および高温寿命特性を向上させることができ、抵抗増加率および平均漏れ電流値を減少させることができる。このとき、前記Li2CO3は、別途、コーティング層形成原料を投入せず、リチウム金属酸化物を形成する金属原料と他のコーティング層形成原料の反応から起因する化合物である。
【0035】
前記Li2SO4の含量は、前記正極活物質全体を基準にして、5ppm~1000ppm、より具体的には、10ppm~700ppmまたは10ppm~500ppmの範囲であってもよい。Li2SO4の含量が前記範囲を満たす場合、優れた容量特性を確保すると同時に寿命特性を向上させ、初期抵抗値を減少させることができる。
【0036】
このように、本実施形態の正極活物質はコーティング層にB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含むため、これを適用したリチウム二次電池は優れた放電容量を示すと同時に、向上した初期効率、優れた常温および高温寿命特性を示す。また、初期抵抗、抵抗増加率を顕著に減少させることができる。
【0037】
このような効果はB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含む場合に得られるものであって、もし、このうちの一つでも含まない場合には所望の物性を得ることができない。
【0038】
一方、本実施形態で、前記リチウム金属酸化物内金属のうちのニッケルの含量は85モル%以上、より具体的には、88モル%または90モル%以上であってもよい。
【0039】
本実施形態のようにリチウム金属酸化物内金属のうちのニッケルの含量が80%以上である場合、高出力特性を有する正極活物質を実現することができる。このような組成を有する本実施形態の正極活物質は体積当りエネルギー密度が高まるので、これを適用する電池の容量を向上させることができ、電気自動車用として使用するにも適合する。
【0040】
他の実施形態による正極活物質の製造方法は、共沈反応器内に金属塩水溶液を投入して金属前駆体を得る段階、前記金属前駆体、リチウム原料物質およびドーピング原料を混合して混合物を製造する段階、前記混合物を1次熱処理した後、冷却する段階、および前記冷却する段階の生成物を水洗および乾燥した後、コーティング層形成物質と混合して2次熱処理する段階を含み、前記コーティング層形成物質は、ボロン化合物、LiOHおよびLi2SO4を含むことができる。
【0041】
まず、共沈反応器内に金属塩水溶液を投入して金属前駆体を得る段階を実施する。
【0042】
より具体的には、リチウム金属酸化物を構成する金属原料物質、例えば、ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質などを蒸留水と混合して金属塩水溶液を準備した後、反応器に投入して共沈工程を行うことによって金属前駆体を得ることができる。
【0043】
その次に、前記金属前駆体、リチウム原料物質およびドーピング原料を混合して混合物を製造する段階を行う。
【0044】
本実施形態のリチウム金属酸化物は、Alなどの元素でドーピングされたものであってもよい。このとき、ドーピング元素の含量は、前記リチウム金属酸化物全体を基準にして、例えば、Zrを3000ppm~4000ppm、そしてAlを200ppm~350ppmの範囲で含まれるようにドーピング原料を投入してリチウム金属酸化物を製造することができる。
【0045】
Zrは、ZrイオンがLi siteを占めるため、一種のピラー(pillar)の役割を果たすようになり、充電および放電過程中にリチウムイオン経路(lithium ion path)の収縮を緩和させて層状構造の安定化をもたらすようになる。また、Alは正極活物質の層状構造を安定化させることができる。したがって、リチウム二次電池の寿命特性をより向上させることができる。したがって、このようなドーピング元素を含むことによって、本実施形態の正極活物質を適用したリチウム二次電池の寿命特性をより向上させることができる。
【0046】
その後、前記混合物を1次熱処理した後、冷却する段階を行う。
【0047】
1次熱処理は、例えば、700℃~850℃の範囲で行うことができる。1次熱処理する時間は3時間~40時間の範囲であってもよい。1次熱処理条件が前記範囲を満たす場合、正極表面の残留リチウムであるLiOHとLi2CO3の合計が10000ppm未満、結晶粒の大きさが80nm~210nmの範囲になるため、寿命および抵抗特性に優れ熱安定性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0048】
このように熱処理した後、焼成体を冷却する段階を行う。具体的には、冷却する段階は、通常の方法で行うことができる。
【0049】
その次に、冷却する段階で生成された生成物を水洗および乾燥した後、コーティング層形成物質と混合して2次熱処理する段階を行う。
【0050】
前記水洗および乾燥は、表面の残留リチウムを除去し、水洗処理された正極活物質表面の水分を除去するための行うことである。このような水洗および乾燥は通常の方法で行うことができる。
【0051】
前記2次熱処理は200~450℃の温度範囲で行うことができ、熱処理時間は1hr~12hrの範囲であってもよい。これは、高温寿命特性を阻害しない適切な温度および時間範囲である。2次熱処理工程がこのような条件を満たす場合、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含むコーティング層が形成される。
【0052】
製造された正極活物質におけるB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4の各含量範囲は前述の一実施形態で説明したものと同一なので、ここでは省略する。
【0053】
一方、本実施形態では、コーティング層形成物質は、ボロン化合物、LiOHおよびLi2SO4を含む。即ち、最終的に得られた正極活物質のコーティング層に含まれるLi2CO3は製造過程で投入された他の原料の内部反応によって形成されたものであり、別途、原料を投入しない。
【0054】
コーティング層形成物質中、ボロン化合物の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、500ppm~2000ppmであってもよい。コーティング層形成物質として投入するボロン化合物の含量が前記範囲を満たす場合、正極活物質の結晶粒の大きさが80nm~210nmの範囲になるため、優れた熱安定性を示す。
【0055】
このとき、ボロン化合物としては、例えば、H3BO3、ボロン酸化物、Liを含むボロン化合物、BN、B4C、B2H6、B2F4、B2Cl4、B2Br4、B2I4などがある。
【0056】
また、コーティング層形成物質に含まれる前記LiOHの含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、500ppm~3500ppmであってもよい。コーティング層形成物質として投入するLiOHの含量が前記範囲を満たす場合、残留リチウムによるスラリーのゲル化(gelation)現象を抑制して、正極製造時、電極に塗布可能な状態のスラリー製造が可能である。
【0057】
コーティング層形成物質に含まれるLi2SO4の含量は、前記コーティング層形成物質全体を基準にして、10ppm~1000ppmであってもよい。コーティング層形成物質として投入するLi2SO4の含量が前記範囲を満たす合、表面でLi-B-C-SO4系のイオン伝導体を形成するため、正極活物質表面でのリチウムイオンの移動性を向上させて優れた寿命特性を有するリチウム二次電池を実現することができる。
【0058】
即ち、本実施形態で、LiOHおよびLi2SO4の投入量は、最終的に得られた正極活物質のコーティング層に存在するLiOHおよびLi2SO4より少ない。これは、コーティング層形成物質投入後、2次熱処理過程でリチウム金属酸化物内に存在するリチウムおよび金属原料の反応によることと予測される。
【0059】
前記のような方法で製造された正極活物質に関する具体的な特性は一実施形態で説明したものと同一なので、ここでは省略する。
【0060】
また、本実施形態の正極活物質製造のための工程条件については後述の実施例でより具体的に説明するようにする。
【0061】
本発明の他の実施形態では、前述の本発明の一実施形態による正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および前記正極および負極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0062】
前記正極活物質に関する説明は前述の本発明の一実施形態と同一なため省略するようにする。
【0063】
前記正極活物質層は、バインダーおよび導電材を含むことができる。
【0064】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。
【0065】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能である。
【0066】
前記負極は集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は負極活物質を含む。
【0067】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/ジインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0068】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/ジインターカレーションすることができる物質としては炭素物質であって、リチウムイオン二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質はいずれのものでも使用することができ、その代表的な例としては結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。
【0069】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金が使用できる。
【0070】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-Y(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。
【0071】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。前記負極活物質層はまたバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含んでもよい。
【0072】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。
【0073】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能である。
【0074】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0075】
前記負極と正極は活物質、導電材および結着剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN-メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0076】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0077】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。
【0078】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0079】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜が使用でき、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用できるのはもちろんである。
【0080】
リチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類でき、形態によって円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類でき、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので詳細な説明は省略する。
【0081】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【実施例】
【0082】
製造例1-正極活物質前駆体の製造
(Ni0.92Co0.04Mn0.04)(OH)2組成を有する前駆体を一般的な共沈法によって製造した。
具体的に、ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、マンガン原料物質としてはMnSO4・H2Oを用いた。これら原料を蒸留水に溶解させて金属塩水溶液を製造した。
その次に、共沈反応器を準備した後、共沈反応時、金属イオンの酸化を防止するためにN2をパージング(purging)し、反応器温度は50℃を維持した。
前記共沈反応器にキレーティング剤としてNH4(OH)を投入し、pH調節のためにNaOHを使用した。
共沈工程によって得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃オーブンで24時間乾燥して、平均粒度の直径が14.8μmである正極活物質前駆体を製造した。
【0083】
比較例1-Ni 90%正極活物質製造
前記製造例1で製造した正極活物質前駆体1モルを基準にして、LiOH・H2O(森田化学、battery grade)1.05モルとドーピング原料物質を均一に混合して混合物を製造した。このとき、ドーピング原料としては、Zrは3,400ppmになるようにZrO2(Aldrich、3N)、Alは280ppmになるようにAl(OH)3(Aldrich、4N)を使用した。
前記混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。この焼成工程は、480℃で5時間1次熱処理し、その次に、昇温速度5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で16時間維持し、その次に、焼成工程を実施した生成物を25℃まで自然冷却して正極活物質を製造した。
【0084】
比較例2-ボロン 500ppm含むNi 90%正極活物質
前記製造例1で製造した正極活物質前駆体1モルを基準にして、LiOH・H2O(森田化学、battery grade)1.05モルとドーピング原料物質を均一に混合して混合物を製造した。このとき、ドーピング原料としては、Zrは3,400ppmになるようにZrO2(Aldrich、3N)、Alは280ppmになるようにAl(OH)3(Aldrich、4N)を使用した。
前記混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。この焼成工程は、480℃で5時間1次熱処理し、その次に、昇温速度5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で16時間維持し、その次に、焼成工程を実施した生成物を25℃まで自然冷却した。
その次に、冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、500ppmのH3BO3(Aldrich)を乾式混合した。前記混合物を280℃で5時間2次熱処理してボロン(B)が表面にコーティングされた正極活物質を製造した。
【0085】
比較例3-LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物をLiを基準にしてLiOH 250ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては比較例2と同様な方法で表面にLiOH 1700ppmおよびLi2CO3 3000ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0086】
比較例4-LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 30ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物をLiおよびSを基準にしてLiOH 250ppm、Li2SO4 30ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては比較例2と同様な方法で表面にLiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppmおよびLi2SO4 30ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0087】
実施例1-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 10ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 10ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては比較例2と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 10ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0088】
実施例2-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 100ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 20ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 100ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0089】
実施例3-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 30ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0090】
実施例4-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0091】
実施例5-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 300ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 120ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 300ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0092】
実施例6-B 500ppm、LiOH 1500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 50ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 500ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0093】
実施例7-B 500ppm、LiOH 1600ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極材製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 100ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1600ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0094】
実施例8-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極材製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0095】
実施例9-B 500ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 500ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0096】
実施例10-B 500ppm、LiOH 2500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 1000ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 2500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0097】
実施例11-B 500ppm、LiOH 3500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 2000ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 3500ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0098】
実施例12-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極材製造
2次熱処理を200℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0099】
実施例13-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極材製造
2次熱処理を220℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0100】
実施例14-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極材製造
2次熱処理を240℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0101】
実施例15-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極材製造
2次熱処理を260℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0102】
実施例16-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
2次熱処理を300℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0103】
実施例17-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
2次熱処理を450℃で行うことを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0104】
実施例18-B 1000ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
H3BO3 1000ppmを乾式混合したことを除いては実施例3と同様な方法で、B 1000ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0105】
実施例19-B 300ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
H3BO3 300ppmを乾式混合したことを除いては実施例3と同様な方法で、B 300ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0106】
実施例20-B 100ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
H3BO3 100ppmを乾式混合したことを除いては実施例3と同様な方法で、B 100ppm、LiOH 2000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0107】
実施例21-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 1ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 1ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 10ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0108】
実施例22-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 5ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 5ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 10ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0109】
実施例23-B 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 1000ppmを含むNi 90%正極活物質
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 250ppmおよびLi2SO4 1000ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例1と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 10ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0110】
実施例24-B 500ppm、LiOH 100ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、Li2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 100ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0111】
実施例25-B 500ppm、LiOH 7000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むNi 90%正極活物質製造
冷却生成物を蒸留水を用いて水洗した後、ろ過して乾燥させた後、H3BO3 500ppm、LiOH 4000ppmおよびLi2SO4 60ppmを乾式混合した後、2次熱処理することを除いては実施例3と同様な方法で表面にB 500ppm、LiOH 7000ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 200ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0112】
実施例26-B 10ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
H3BO3 10ppmを乾式混合したことを除いては実施例3と同様な方法で、B 10ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0113】
実施例27-B 5000ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むNi 90%正極活物質製造
H3BO3 5000ppmを乾式混合したことを除いては実施例3と同様な方法で、B 5000ppm、LiOH 1700ppm、Li2CO3 3000ppm、Li2SO4 150ppmを含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0114】
(実験例1)電気化学性能評価
(1)コイン型半電池製造
実施例1~27および比較例1~4によって製造された正極活物質を用いてコイン型半電池を製造した。
具体的には、正極活物質、デンカブラック導電材、およびポリフッ化ビニリデンバインダー(商品名:KF1100)を92.5:3.5:4の重量比で混合し、この混合物を固形分が約30重量%になるようにN-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。
前記スラリーをドクターブレード(Doctor blade)を用いて正極集電体であるアルミ箔(Al foil、厚さ:15μm)上にコーティングし、乾燥した後、圧延して正極を製造した。前記正極のローディング量は約14.6mg/cm2であり、圧延密度は約3.2g/cm3であった。
前記正極、リチウム金属負極(200μm、Honzo metal)、電解液とポリプロピレンセパレータを使用して通常の方法で2032コイン型半電池を製造した。前記電解液は1M LiPF6をエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(混合比EC:DMC:EMC=3:4:3体積%)に溶解させて混合溶液を使用した。
【0115】
(2)25℃ 0.1C放電容量および常温初期抵抗評価
前記(1)で製造されたコイン型半電池を常温(25℃)で10時間エイジング(aging)した後、充放電テストを行った。
容量評価は215mAh/gを基準容量とし、充放電条件はCC/CV 2.5~4.25V、1/20C cut-offを適用した。初期容量は0.1C充電/0.1C放電条件で行った。
抵抗は、0.2Cで4.25V充電100%で0.2C放電電流印加後、60秒間の電圧変動を測定して計算した。結果は下記表1に示した。
【0116】
(3)45℃寿命および抵抗増加率評価
高温サイクル寿命特性は高温(45℃)で0.3C充電/0.3C放電条件で30回を測定後、一番目容量に対する30番目容量比率を測定し、抵抗は4.25V充電100%で放電電流印加後、60秒後の電圧変動を測定して計算した。
抵抗増加率は高温(45℃)で初期に測定した抵抗(高温初期抵抗)に対するサイクル寿命30回後の初期抵抗測定方法と同様に実施して抵抗を測定し、その上昇率を百分率(%)に換算して計算した。前記測定結果は下記表2に示した。
【0117】
【0118】
【0119】
表1は、実施例1~27および比較例1~4によって製造された正極活物質に対する常温での初期効率および初期抵抗測定結果を示したものである。
【0120】
表2は、実施例1~27および比較例1~4によって製造された正極活物質に対する高温寿命および抵抗増加率の測定結果を示したものである。
【0121】
表1および表2を参照すれば、コーティング層にB、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む実施例1~23による正極活物質は、コーティング層が形成されないか、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を全て含まないコーティング層が形成された比較例1~4による正極活物質と比較する時、全体的に初期容量および高温寿命特性は向上し、初期および高温抵抗と抵抗増加率は全て減少するのを確認することができる。
【0122】
(実験例2)正極活物質表面部に対するSEM分析
実施例3および比較例1で製造した正極活物質の表面をSEM(Scanning electron microscope、JEOL JSM-6610)分析を行って
図1および
図2にそれぞれ示した。
【0123】
図1および
図2を参照すれば、実施例3の正極活物質は比較例1の正極活物質と比較する時、表面に1次粒子が見えない程度に均一なコーティング層が形成されたのを確認することができる。
【0124】
図3は、実施例1~5のようにコーティング層に含まれるLi
2SO
4含量による常温初期放電容量および高温での抵抗増加率を示したものである。
【0125】
図3を参照すれば、Sが300ppmである場合、0.1C放電容量が最も高く、抵抗増加率は500ppmで最も低いのを確認した。
【0126】
図4は、実施例6~実施例11のようにコーティング層に含まれるLiOH含量による高温での寿命特性および抵抗増加率を示したものである。
【0127】
図4を参照すれば、LiOH含量が1700ppmである場合、0.1C放電容量が最も高く、抵抗増加率が最も低いのを確認した。
【0128】
図5は、実施例18~実施例20のようにコーティング層に含まれるB含量による0.1C初期容量および初期抵抗を示したものである。
【0129】
図5を参照すれば、B 500ppmで0.1C放電容量が最も高く、300ppmで初期抵抗が最も低いということが分かる。
【0130】
図6は、実施例12~実施例17のように2次熱処理温度を調節することによって、25℃での0.1C充放電容量および初期抵抗値と45℃での寿命および抵抗増加率を示したものである。
【0131】
図6を参照すれば、2次熱処理温度が280℃である時、0.1C放電容量が最も高く、寿命特性に優れ、抵抗増加率が最も低い温度であるのを確認した。
【0132】
図7は、比較例1と実施例3の正極活物質に対する高温での寿命特性評価結果を示したものである。
図7を参照すれば、比較例1の場合、高温寿命が71%程度であるが、実施例3は寿命が91%程度であって顕著に向上するのを確認することができる。
【0133】
本発明は前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施できるのを理解することができるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。