IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -暖房畳 図1
  • -暖房畳 図2
  • -暖房畳 図3
  • -暖房畳 図4
  • -暖房畳 図5
  • -暖房畳 図6
  • -暖房畳 図7
  • -暖房畳 図8
  • -暖房畳 図9
  • -暖房畳 図10
  • -暖房畳 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】暖房畳
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
E04F15/02 102R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019073811
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153212
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示会 展示会名 第87回東京インターナショナルギフト・ショー春2019 開催日 平成31年2月12日~平成31年2月15日 (2)展示会 展示会名 京都ビジネス交流フェア2019 開催日 平成31年2月14日~平成31年2月15日 (3)展示会 展示会名 第1回京都インターナショナルギフト・ショー2019 開催日 平成31年3月6日~平成31年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】592190648
【氏名又は名称】吉岡 芳憲
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 芳憲
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0245326(US,A1)
【文献】特開平11-270106(JP,A)
【文献】実開昭58-047017(JP,U)
【文献】特開2000-001973(JP,A)
【文献】実開平05-052620(JP,U)
【文献】特開2007-063792(JP,A)
【文献】特開2011-219958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床の上に面状発熱体を配し、この面状発熱体の上に表装材を配設して成る暖房畳であって、
前記畳床は、複数の板状部材を積層して構成され、これら板状部材の一は前記面状発熱体が止着されるハードボードであり、他の一は前記ハードボードの下に接着される発泡ボードであって、前記発泡ボードの上下両面にはガラス繊維シート、アラミド繊維シート、カーボンファイバーシートの群から選択される薄い熱変形抑制シートが一体的に固定されており、前記熱変形抑制シートの下側にはアクリルボードが接着して一体化されていることを特徴とする暖房畳。
【請求項4】
面状発熱体は、前記配線溝の数の接続コードを有していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の暖房畳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状発熱体を内蔵した暖房畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1ないし特許文献3に示す暖房畳が知られている。特許文献1および特許文献2に示された暖房畳は、畳床の上面に面状発熱体を配し、その上面に畳表を配設して成るものであり、畳床には面状発熱体に電気接続された接続線を収容する凹溝が形成されている。この凹溝は、畳床の各側辺部に向かって複数本設けられており、その各終端は畳床の四隅部から畳床の短辺寸法の1/2の距離離れた位置にそれぞれ開口するように構成されている。また、凹溝の途中には、接続線を結線するためのコネクタや面状発熱体の制御機器を収容するためのコードボックスや収納凹部が設けられる構成となっている。
【0003】
また、特許文献3および特許文献4には、面状発熱体の上面に鉄板などの金属製の板を敷設し、これにより面状発熱体の発生する熱を均一に伝熱しようとした暖房畳が開示されている。このように面状発熱体の上に金属製板材を配置する例以外にも、特許文献5に示されるように、面状発熱体の上面に直接畳表を表装するものも見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-5140
【文献】実開昭63-117839
【文献】実開平1-154729
【文献】特開2002-97779
【文献】実開平3-119130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の暖房畳においては、面状発熱体の温度をコントロールするためにサーモスタットや温度ヒューズなどが必要であり、前述の収納凹部やコードボックスのように、畳内にこれらを収容するスペースが必要であった。よって、その分、暖房畳が厚くなってしまい、近年流行している琉球畳様の薄型の畳を暖房畳とすることが困難である等の問題があった。また、従来の暖房畳においては、畳のレイアウトに合わせて溝を選び、ここにコードを配線しているため、暖房畳の施工に時間がかかるとともに、コードを配線する溝を間違えて施工が遅延する等の問題も発生していた。さらに、面状発熱体の上面に金属箔や鉄板などを敷設した暖房畳においては、畳が重く、硬くなるとともに、暖房畳が暖まるまでに相応の時間がかかる等の問題が生じていた。このような問題は、面状発熱体の上に直接畳表を配置することで解決可能であるが、一般的な面状発熱体は導電性金属箔や金属線から成る電熱素子を面状に配設し、これに通電することにより熱を得る構造であるため、耐荷重性が低く、鉄板等がないと畳の上を人が歩くことで損傷しやすいという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、薄型軽量で即暖性が高く、かつレイアウトの自由度が高いにも関わらず施工時の配線作業が簡易な暖房畳の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、畳床の上に面状発熱体を配し、この面状発熱体の上に表装材を配設して成る暖房畳であって、前記面状発熱体は、高分子組成物の変形により、そこに含まれる導電性粒子を結合・分離させることにより電気の通電・遮断をなす自己温度調節面状発熱体で成ることを特徴とするものである。この面状発熱体により、サーモスタットや温度ヒューズなどの温度制御回路が不要になる。
【0007】
なお、前記表装材は、面状発熱体の上に直接敷設される繊維質シート材と、この繊維質シート材の上に配置される畳表とから成ることが好ましい。面状発熱体は、高分子組成物に含まれる導電性粒子が発するジュール熱で発熱するため、面的な発熱が可能であり、従来のような伝熱のための鉄板等を設けずに直接繊維質シート材と畳表を敷設できるようになる。よって、暖房畳の即暖性を高めるとともに、その軽量化を図ることが可能になる。
【0008】
また、前記面状発熱体が自己温度調節面状発熱体で成るか否かに関わらず、前記畳床は、複数の板状部材を積層して構成され、これら板状部材の一は前記面状発熱体が止着されるハードボードであり、他の一は前記ハードボードの下に接着される発泡ボードであって、前記発泡ボードの上下両面にはガラス繊維シート、アラミド繊維シート、カーボンファイバーシートの群から選択される薄い熱変形抑制シートが一体的に固定されており、前記熱変形抑制シートの下側にはアクリルボードが接着して一体化されていることが好ましい。これにより、畳床を構成する板状部材が面状発熱体の熱で変形しようとしても、これを熱膨張の極めて少ない熱変形抑制シートで抑制することができ、畳床の熱による反り、その他の変形を防止することができる。
【0009】
さらに、前記畳床は矩形状を成し、この畳床には、前記面状発熱体から延びる接続コードを配線するための配線溝が四辺に連通して設けられるとともに、これら各配線溝の畳床四辺側の端部にはコネクタ収容部が形成されており、一方で、前記接続コードは、予め全ての配線溝に沿って畳床の四辺それぞれに延びて配線されるとともに、その端部には前記コネクタ収容部に常時収容されるコネクタが連結されていることが望ましい。このように、全ての配線溝に予め接続コードおよびコネクタを配線しておくことにより、複数の暖房畳を並べて使用する場合に、接続コードを配線溝に配線する手間を省き、かつ配線ミスを防止することもできる。
【0010】
前記畳床は正方形状を成し、配線溝は四辺の各中間部に連通して設けられているものであることが、より好ましい。また、全ての配線溝に予め接続コードを配線する必要性から、面状発熱体は、前記配線溝の数の接続コードを有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の暖房畳によれば、面状発熱体として自己温度調節面状発熱体を採用し、この面状発熱体の上に繊維質シート材を直接敷設し、この上に畳表を配置する構成であるため、暖房畳を軽量化できるとともに、暖まる速度、すなわち即暖性を高めることができる等の利点がある。また、自己温度調節面状発熱体は、導電性粒子を含む高分子組成物の変形を利用して電気の通電と遮断をなす構造であるため、従来の面状発熱体に比べて電熱素子の導電特性が断たれにくい。したがって、前述のように繊維質シート材と畳表で被覆するだけでも耐久性を担保することができる。さらに、この自己温度調節面状発熱体を採用することにより、サーモスタットや温度ヒューズといった面状発熱体の発熱を制御するための器具が不要になる。よって、面状発熱体の配線を処理する畳床を薄く構成することが可能となり、琉球畳様の薄型の畳を暖房畳と提供することが可能になる。
【0012】
畳床は複数の板状部材を積層して構成され、これら板状部材の間にはガラス繊維シート等の熱変形抑制シートが介在しているため、面状発熱体の熱による畳床の反り、その他の変形を防止することができる。特に、板状部材の少なくとも一が発泡ボードで構成されている場合には、これの上下両面に熱変形抑制シートを一体的に固定しておくことにより、面状発熱体の下側を断熱して表装材側への伝熱量を多くすることができるとともに、発泡ボードの熱変形も防止して畳床の反り、その他の変形を抑制することができる。
【0013】
しかも、矩形、特に正方形の畳床の四辺各中間部に通じる溝に予め面状発熱体の接続コードを配線しているため、複数の暖房畳を配列する場合の配線が簡易となり、暖房畳の施工が迅速に行える等の利点がある。また、複数の暖房畳の辺と辺が合ってさえいれば、これらを電気的に簡単に接続できるため、暖房畳のレイアウトの自由度が増し、近年の多様化するデザインの住空間にも柔軟に対応可能な暖房畳を提供できる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る暖房畳の平面側を示す斜視図である。
図2】本発明に係る暖房畳の底面側を示す斜視図である。
図3】本発明に係る暖房畳の一部切欠斜視図である。
図4】本発明に係る暖房畳のコネクタ収容部付近を示す要部拡大一部切欠断面図である。
図5】本発明に係る暖房畳の内部構造を示す底面図である。
図6】本発明に係る暖房畳の面状発熱体の底面図である。
図7図6のA部拡大図である。
図8】本発明に係る暖房畳の他の例の内部構造を示す底面図である。
図9図8の要部拡大図であって、(a)は暖房畳の中央部、(b)(c)は暖房畳の辺近傍部をそれぞれ示すものである。
図10】本発明に係る暖房畳の他の例の内部構造を示す底面図である。
図11】本発明に係る暖房畳の他の例の内部構造を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の暖房畳の実施の形態を説明する。図1ないし図5において、1は暖房畳であり、平面視正方形で厚さ約15mmの薄型の琉球畳様に構成されている。この暖房畳1は、下面側、すなわち暖房畳1が敷かれる床面側に平面視正方形の畳床2を有し、この畳床2の上面にそのほぼ全面を覆って面状発熱体3を積層するとともに、この面状発熱体3の上面にその全面を覆うよう表装材4を積層して構成されている。
【0016】
前記畳床2は、下側からそれぞれ板状部材の一例であるアクリルボード21、発泡ボード22、ハードボード23を順に積層して成り、この内、発泡ボード22は、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタン、EVAフォームなどの発泡プラスチックを板状に構成したものである。この発泡ボード22は、その上面と下面の全面に熱変形抑制シートの一例である薄いガラス繊維シート22a,22bが一体的に接着固定されたものが採用されている。これらガラス繊維シート22a,22bは、ガラス繊維を編んでシート状にしたものであり、熱膨張が極めて少なく構成されている。熱変形抑制シートとしては、このガラス繊維シート22a,22b以外にも、例えば、アラミド繊維を織り込んだアラミド繊維シートや、炭素繊維を織り込んだカーボンファイバーシート等を用いてもよい。
【0017】
前記アクリルボード21、発泡ボード22、ハードボード23は、接着剤で接着して一体化されており、その中央部には前記面状発熱体3の接続コード35・・・を下側に取り出すための穴2aが各ボード21,22,23を貫通して設けられている。また、発泡ボード22およびアクリルボード21には、前記穴2aから四辺の中間部に放射状に延びる4本の配線溝2bが設けられており、これら配線溝2bの終端部、すなわち畳床2の四辺部分における開口端部は、溝幅が広くなったコネクタ収容部2cとして構成されている。このコネクタ収容部2cは、各辺のちょうど中間位置、すなわち辺の長さの1/2の位置に配置されている。
【0018】
前記面状発熱体3は、特許第3428857号公報に示される自己温度調節面状発熱体で構成されている。この面状発熱体3は、図6に示すように、前記ハードボード23の上面を覆う正方形フィルム状の結晶性ポリエチレン基板31(以下、単に基板31という)上に、2本の電極32,33と、この電極32,33間を接続する複数の発熱部34(図6中薄墨を施した部位)を面状に印刷して成るものであり、電極32,33は銀ペイント、発熱部34は黒鉛、金属粒子、カーボンブラックなどの導電性粒子とシリコーンポリマー、ポリ塩化ビニルなどの無定形高分子を混合した高分子組成物のインクで構成されている。電極32,33は基板31上に張り巡らされており、基板31上に発熱部34をまんべんなく配置できるようになっている。
【0019】
前記面状発熱体3の基板31は、タッカーを用いて畳床2のハードボード23にステープル(図示せず)で止着されており、これにより、ハードボード23上で位置ずれを起こさぬよう保持されている。また、面状発熱体3の電極32,33には、図7に示すように、基板31の中央部に接点32a,33aが設けられており、この接点32a,33aには、それぞれ4本ずつコード単線35a,35bが接続されている。これらコード単線35a,35bは、何れも銅線を絶縁体で被覆した一般的な電線であり、一方の電極32に接続されたコード単線35aと、他方の電極33に接続されたコード単線35bとをそれぞれ1本ずつ対にして4本の接続コード35を構成し、これら接続コード35は、予め前記4本の配線溝2bにそれぞれ配線されている。これにより、暖房畳1を複数枚使用する場合に互いの接続コード35を結線すると、それぞれの暖房畳1における面状発熱体3が電気的に並列接続されるように構成されている。
【0020】
配線溝2bに配線された接続コード35の先端は、各配線溝2bの端部まで延びており、そこにはコネクタ36が結線されている。このコネクタ36は、常時、前記コネクタ収容部2cに収容されており、本暖房畳1と同一構成の別の暖房畳1のコネクタ36と着脱可能に構成されている。このように接続コード35を配線した後、穴2aと配線溝2bにはスポンジなどの緩衝材(図示せず)が詰められ、ナイロンテープ(図示せず)で閉塞される。これにより、面状発熱体3の接点32a,33aや接続コード35・・・が保護される。
【0021】
前記表装材4は、面状発熱体3上全面に直接敷設される繊維質シート材41と、この繊維質シート材41の上に配置される畳表42とから構成されている。繊維質シート材41は、例えば不織布や織布であり、クッション性を得るために所定の厚みのものが用いられている。また、畳表42は、例えばい草を織り込んだ旧来のものでも、近年採用が広がっている和紙を織り込んだものでもよく、この畳表42は、四辺を畳床2の下面まで折り曲げ、そこをステープル(図示せず)で止着されている。これにより、畳床2、面状発熱体3、繊維質シート材41が畳表42でくるまれて一体的に保持されるとともに、畳表42に張りを与えるように構成されている。なお、畳表42の前記コネクタ収容部2cに相当する部位は切欠かれており、よって、畳表42を止着してもコネクタ収容部2cは外部に開口した状態に保たれ、そこに配されるコネクタ36にアクセスすることが可能になっている。
【0022】
畳表42を止着した後、最終的に畳床2の下面には、ここを全面的に覆う裏地5がステープルで止着される。この裏地5は、フェルトなどの不織布で構成されており、これにより、暖房畳1の底面の美観を向上させるとともに、暖房畳1のクッション性が高まるように構成されている。また、この裏地5にはシリコーンゴム等をコーティングして滑り止め加工が施されており、設置した暖房畳1の位置ずれを防止できるようになっている。
【0023】
本発明の暖房畳は、同じ構成のものを複数並べて用いてもよいし、単体で用いてもよい。複数並べて用いる場合は、暖房畳同士の辺と辺を沿わせることで、それぞれのコネクタ収容部2cを連通させることができ、そこに配置されたコネクタ36同士を接続することにより、暖房畳1,1同士を電気的に接続することができる。このように、複数の暖房畳1を並べて使用する場合に接続コード35を都度配線溝2bに配線する必要がないため、複数の暖房畳1の施工設置が極めて簡単かつ正確に行えるようになる。また、後から新たな暖房畳1を追加したい場合にも、柔軟かつ簡単に対応することが可能である。
【0024】
暖房畳1の温熱効果を得るには、暖房畳1の何れか一のコネクタ36にコンセント付きのケーブル(図示せず)を接続し、これのコンセントを家庭用交流電源のプラグに差し込んで電力を得る。これにより、面状発熱体3には電気が通電される。この結果、電極32,33を通じて発熱部34の高分子組成物に電気が流れ、高分子組成物中の導電性粒子が結合して導電回路を形成し、ここを電気が流れることでジュール熱が発生する。このジュール熱により面状発熱体3は暖められ、その熱が繊維質シート材41を介して畳表42に伝えられるため、畳表42の表面において温感を得ることができる。この時、面状発熱体3の下側には断熱性の高い発泡ボード22が配置され、かつ面状発熱体3の上側には直接繊維質シート材41が配置され、この繊維質シート41の上に畳表42が配置されているため、面状発熱体3の熱が畳表42に伝わりやすく、畳表42の表面温度を速やかに上昇させることができる。また、発泡ボード22の両面にはガラス繊維シート22a,22bが接着固定され、かつアクリルボード21、発泡ボード22、ハードボード23も強固に接着して一体化されているため、これらの層間に介在するガラス繊維シート22a,22bによって畳床2全体の熱による反り、その他の変形を抑制することができ、ひいては暖房畳1の反り等の変形を防止することが可能である。
【0025】
一方、前記ジュール熱によって基板31を構成する結晶性ポリエチレンの高分子は熱膨張し、これに伴う応力が高分子組成物に作用して高分子組成物に変形が生じる。これにより、高分子組成物中の導電性粒子が変位し、基板31が所定温度域に達すると、導電性粒子同士の結合が断たれ、通電が遮断される。このスイッチング現象により、面状発熱体3はサーモスタットや温度ヒューズを設けずとも、所定の温度域を保つことができ、畳表42の表面で得られる温感を一定に保つことができる。
【0026】
複数の暖房畳1を接続している場合は、接続コード35を通じて隣接する暖房畳1に電力が供給され、上述同様の作用によって各暖房畳1が温熱効果を発揮する。この場合、各暖房畳1の面状発熱体3は電気的に並列接続されているため、各暖房畳1において暖房能力が落ちることはない。
【0027】
本暖房畳1において、面状発熱体3は、高分子組成物の変形により、そこに含まれる導電性粒子を結合・分離させ、これにより電気の通電・遮断をなす自己温度調節面状発熱体で構成されているため、電極32,33や発熱部34といった電熱素子が断線に強く、これらの導電特性が断たれにくい。また、発熱部34は基板31上に面状にまんべんなく印刷して配置されているため、これによってジュール熱を発する導電性粒子が分散配置され、面状発熱体3は面的に発熱することが可能である。よって、鉄板や金属箔で面状発熱体3を覆い、これを保護したり、あるいは伝熱効果を得たりする必要がなくなり、面状発熱体3の上に直接繊維質シート材41と畳表42を配置することが可能になる。
【0028】
図8に符号1′で示したのは、上記暖房畳1の接続コード35の配線構造を別の構造とした暖房畳の例である。この暖房畳1′は、面状発熱体3′の接続コード35を取り出すために畳床2に開けられた穴が穴2aa,2ab,2acの3個で構成されており、これらを畳床2の中央部と図8における左右の辺近傍にそれぞれ配している。そして、中央の穴2aaからは2本の配線溝2bが図8における上下の辺に連通して延びており、左右の穴2ab,2acからは各1本の配線溝2bが近接する辺に連通して延びるように構成されている。また、面状発熱体3′は、図6に示した面状発熱体3とほとんど同じ構造であるが、接続コード35の取り出し方だけが異なっている。すなわち、この面状発熱体3′においては、図9に示すように電極32,33の接点32a,33aが各4箇所、前記穴2aa,2ab,2acの位置に対応して設けられており、これら各接点32a,33aには、各穴2aa,2ab,2acを通じて配線溝2bに配線される接続コード35のコード単線35a,35bが接続されている(図9(a)・(b)・(c)参照)。このように、面状発熱体の接続コード35の取り出し方(穴やそこから各辺に延びる配線溝の構成の仕方を含む)は、面状発熱体の電極32,33および接点32a,33aの配置に応じて様々に変更できるものである。ここで紹介した以外にも、暖房畳の各辺中間部に近接する4箇所に面状発熱体の接点32a,33aおよび接続コード35が設けられる構成としてもよい。この場合、これら接点32a,33aに対応して畳床2には各辺近傍に4個の穴が開けられるとともに、これら穴から各1本の配線溝2bが各辺に延びて設けられ、各配線溝2bには接続コード35が配線される。ここで述べた例のように、暖房畳の各辺に近い位置で接続コード35を取り出すようにすると、接続コード35を短くして断線の危険を減じることが可能になる。
【0029】
なお、本発明の実施形態においては、平面視正方形(縦横比1:1)の半畳サイズで琉球畳様の薄型に構成された暖房畳1を紹介したが、本発明の主旨は、図10および図11に示すような平面視長方形(縦横比2:1)のサイズの暖房畳11にも適用可能である。長方形の暖房畳に本発明の主旨を適用する場合は、図10に示すように、上述の面状発熱体3を2枚用い、これに合わせて畳床20の穴20aを2箇所に設け、各穴20a,20aから延びる4本の配線溝20b・・・の内、各穴20a,20a間を結ぶ配線溝20bを連通した構成とする。この連通させた配線溝20bを通る接続コード35は、予め面状発熱体3,3を結ぶように1本で構成しておき、他の配線溝20bを通る接続コード35は上述同様に構成しておくとよい。また、図11に示すように、面状発熱体30を畳に合わせて長方形に構成する場合は、畳床20の下面中央部に穴20aを設け、ここから6本の配線溝20b・・・を取り出せばよい。配線溝20bの短辺での開口箇所(コネクタ収容部を設ける位置)は、各短辺の中間、すなわち短辺の長さの1/2の位置とし、長辺での開口箇所は、長辺の各端から短辺の長さの1/2の位置(特許文献1に示されるものと同様)とする。この場合、面状発熱体30の電極からは6本の接続コード305・・・を取り出し、これらを各配線溝20bに予め配線しておくことになる。
【符号の説明】
【0030】
1 暖房畳
2 畳床
2a 穴
2b 配線溝
2c コネクタ収容部
3 面状発熱体
4 表装材
5 裏地
21 アクリルボード
22 発泡ボード
22a,22b ガラス繊維シート
23 ハードボード
31 結晶性ポリエチレン基板
32 電極
32a 接点
33 電極
33a 接点
34 発熱部
35 接続コード
35a,35b コード単線
36 コネクタ
41 繊維質シート材
42 畳表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11