(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調システムおよび空調方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230818BHJP
E21F 1/04 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E02F9/00 M
E21F1/04
(21)【出願番号】P 2019210619
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391004458
【氏名又は名称】日曹金属化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519416808
【氏名又は名称】有限会社黒沢重機土木
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 圭三
(72)【発明者】
【氏名】片桐 聡
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 雄一
(72)【発明者】
【氏名】永山 晋一郎
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-077236(JP,A)
【文献】特開昭53-146454(JP,A)
【文献】特開2003-003519(JP,A)
【文献】特開2017-141635(JP,A)
【文献】実開昭51-056800(JP,U)
【文献】特開昭48-070300(JP,A)
【文献】特開2007-308902(JP,A)
【文献】実開昭49-029728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E21F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半閉鎖空間を形成する構造物、
前記構造物
の外の空気を吸い込むためのブロワー、 吸い込んだ
前記空気を流すための少なくとも一部が伸縮自在なダクト、 吊り下げ装置、および 自走式作業機械を具備し、
前記構造物は、粉塵発生源を有し、
前記自走式作業機械は、冷却装置を具え、
前記吊り下げ装置は、
前記構造物の天井部に固設されたレールと、該レールに沿って移動可能な複数のトロリーと、
前記各トロリーにそれぞれ取り付けられた吊具とを有してなり、
前記ダクトは、一方の端が
前記ブロワーに取り付けられており、他方の端が
前記構造物
の中で作業する
前記自走式作業機械に
前記ブロワーが吸い込んだ
前記空気を
前記冷却装置に送ることができるように取り付けられており、且つ
前記各吊具によって
前記ダクトが吊られており、
前記自走式作業機械が
前記構造物
の中を走行すると、その走行に従って
前記トロリーが
前記レールに沿って移動し、
前記ダクトが伸縮する、
粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調システム。
【請求項2】
半閉鎖空間を形成する構造物の外の空気を吸い込み、
吸い込んだ
前記空気を、ダクトを経て、自走式作業機械が具える冷却装置に送り、
前記ダクトが、
前記構造物の天井部に固設されたレールと、該レールに沿って移動可能な複数のトロリーと、
前記各トロリーにそれぞれ取り付けられた吊具とを有する吊り下げ装置の
前記吊具によって吊られており、且つ
前記自走式作業機械が
前記構造物
の中を走行すると、その走行に従って
前記トロリーが
前記レールに沿って移動し、
前記ダクトが伸縮することを含む、
粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調システムおよび空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内やトンネル内の空調装置または空調方法が種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、工場内床側に据え付けた各種の産業機械および工場内天井側に設けた荷役機械を備える工場において、工場内熱負荷に応じた複数の空気調和機と、この空気調和機に接続され調和空気を工場内に導く送気ダクトと、この送気ダクトに形成され工場の壁側の中間の高さで側方に向けて開口する吹き出し口と、工場内の床面で上向きに開口して工場内の空気を吸引する吸い込み口と、この吸い込み口によって吸引された工場内の空気を上記空気調和機に導く還気ダクトと、この空気調和機内の熱交換器に熱媒体によって空気調和用の熱を供給する加熱ユニットおよび冷却ユニットとからなることを特徴とする工場用空気調和装置を開示している。
【0004】
特許文献2は、トンネルの切羽近傍まで風管を通して清浄空気を導入する換気ファンと、切羽近傍の作業領域で作動する複数の作業機械にそれぞれ取り付けられ、作業機械の作動状態を検出し、作動状態と作業の種類を含む状態信号を送信する複数の送信装置と、トンネル内の前記作業領域より後方かつ前記状態信号を受信可能な位置に設置された受信装置と、受信装置で受信した状態信号に応じて換気ファンによる風量を制御するファン制御装置と、を備える、ことを特徴とするトンネル掘削用換気装置を開示している。
【0005】
特許文献3は、大空間内の熱負荷発生域を空調するに際し、固設のメインダクトから上記の熱負荷発生域までフレキシブルダクトおよび可動吊具を介して吹出口または吹出口チャンバーを適宜移動させることを特徴とする大空間内の熱負荷発生域を空調する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-257652号公報
【文献】特開2014-77236号公報
【文献】特開昭53-146454号公報
【文献】特開2003-3519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ゴミ焼却場、産業廃棄物処理場などに在る建屋や;トンネル工事現場、共同溝工事現場、鉱山などに在る坑道のような、半閉鎖空間を形成する構造物(建造物、建築物、構築物、土木構造物など)では、多量の粉塵が半閉鎖空間に拡がり、油圧ショベル、フォークリフト、クレーンなどの自走式作業機械に粉塵が付着することがある。自走式作業機械の冷却装置にはそれを冷やすための空気を取り入れるための吸気口が設置されている。吸気口にはフィルタなどが設置されている場合もあるが、取り入れられた空気と伴に吸い込んだ粉塵が、フィルタを詰まらせたり、冷却装置に堆積したりする。そのような状態になると、冷却装置の冷却効率が低下し、過熱による動作不良(オーバーヒート)を起こしたり、自走式作業機械そのものに損傷を与えたりすることがある。
【0008】
本発明の課題は、粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調システムおよび空調方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を包含する。
〔1〕 半閉鎖空間を形成する構造物、 構造物外の空気を吸い込むためのブロワー、 吸い込んだ空気を流すための少なくとも一部が伸縮自在なダクト、 吊り下げ装置、および 自走式作業機械を具備し、
構造物は、粉塵発生源を有し、
自走式作業機械は、冷却装置を具え、
吊り下げ装置は、構造物の天井部に固設されたレールと、該レールに沿って移動可能な複数のトロリーと、各トロリーにそれぞれ取り付けられた吊具とを有してなり、
ダクトは、一方の端がブロワーに取り付けられており、他方の端が構造物内で作業する自走式作業機械にブロワーが吸い込んだ空気を冷却装置に送ることができるように取り付けられており、且つ
各吊具によってダクトが吊られており、自走式作業機械が構造物内を走行すると、その走行に従ってトロリーがレールに沿って移動し、ダクトが伸縮する、
粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調システム。
【0010】
〔2〕 半閉鎖空間を形成する構造物の外の空気を吸い込み、
吸い込んだ空気を、ダクトを経て、自走式作業機械が具える冷却装置に送り、
ダクトが、構造物の天井部に固設されたレールと、該レールに沿って移動可能な複数のトロリーと、各トロリーにそれぞれ取り付けられた吊具とを有する吊り下げ装置の吊具によって吊られており、且つ
自走式作業機械が構造物内を走行すると、その走行に従ってトロリーがレールに沿って移動し、ダクトが伸縮することを含む、
粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の冷却装置用の空調方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空調システムおよび空調方法によれば、粉塵発生源の在る構造物内で作業する自走式作業機械の損傷を抑制でき、部品の修理や交換までの期間を長くすることができる。本発明は、特に、半閉鎖空間が塩化水素ガスなどの酸性ガス雰囲気である構造物内において、好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の空調システムにおける、吊り下げ装置、ダクトおよび自走式作業機械の形態の一例を示す側面図である。
【
図2】本発明の空調システムの一例を示す平面図である。
【
図3】自走式作業機械の後側面のカバーを開けて冷却装置の部分の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空調システムは、構造物1、ブロワー2、ダクト3、吊り下げ装置4、および自走式作業機械5を具備する。
【0014】
自走式作業機械5としては、油圧ショベル、フォークリフト、クレーンなどを挙げることができる。自走式作業機械は、運転室に人が乗り込んで操作することができるものであってもよいし、リモコンにて遠隔操作することができるものであってもよい。自走式作業機械には、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータ21、油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ22、エンジンに供給される圧縮空気を冷却するアフタクーラ23等を含む各種の冷却装置6が搭載されている。例えば、油圧ショベルにおいては、冷却装置6は、車体の側面に配置されている場合が多い。冷却装置を覆うための、サイドドア、エンジンフード等が、通常、設けられている。そして、サイドドア、エンジンフード等には、冷却装置を冷やすための空気を取り入れるための開口部7が形成されている(例えば、特許文献4参照)。また、自走式作業機械は、ブロワーが吸い込んだ空気をダクト経由で冷却装置に送るために、前記開口部7以外に、エアチャンバ14を具備していてもよい。
【0015】
構造物1は、半閉鎖空間を形成し、且つ粉塵発生源を有するものである。半閉鎖空間は、そこで自走式作業機械が走行できる広さを有する。粉塵発生源は、どのような態様のものであってもよい。例えば、ゴミ焼却場や産業廃棄物処理場には、運び込まれた、ごみ、産業廃棄物などの廃棄物を一時貯蔵するためのピット12などが建屋内に設けられていることがある。そしてピット12から破砕機、焼却炉、プレス機などの廃棄物処理装置16にホッパ17などから廃棄物が投入される。トンネル工事現場、共同溝工事現場、鉱山などの坑道内では、掘削や切削など作業が行われる。建屋内での廃棄物の運搬などの作業や坑道内での掘削や切削などの作業には、油圧ショベル、クレーンなどの自走式作業機械が使用され、その際に多量の粉塵が発生する。このような構造物内では、粉塵発生源で発生した粉塵が半閉鎖空間に拡がる。さらに、廃棄物には様々な物質が含まれるため、廃棄物を焼却すると、ダイオキシン類; 煤塵; 硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、塩化水素などの酸性ガス; 多環芳香族炭化水素類などが発生し、それらが半閉鎖空間に拡がることもある。なお、構造物は、既設のものであってもよいし、新設のものであってもよい。
【0016】
本発明は、構造物内の半閉鎖空間が酸性ガス雰囲気である場合にも、好ましく適用できる。酸性ガスとしては、塩化水素ガス、塩素ガス、次亜塩素酸ガス、亜塩素酸ガス、塩素酸ガス、過塩素酸ガス、臭化水素酸ガス、フッ化水素酸ガス、硫酸ガス、亜硫酸ガス、硫化水素ガス、チオ硫酸ガス、硝酸ガス、シアン化水素ガス、リン酸ガスなどの無機酸ガス;ギ酸ガス、酢酸ガス、安息香酸ガス、ベンゼンスルホン酸ガスなどの有機酸ガスを挙げることができる。
【0017】
ブロワー2は、構造物外の空気を吸い込み、ダクトに送りだすことができるものであれば特に限定されない。ブロワーは、一般的な構造物内の空調のために設置されるものと同じものであってもよい。
【0018】
吊り下げ装置4は、例えば、
図1に示すような、構造物の天井部に固設されたレール8と、該レールに沿って移動可能な複数のトロリー9と、各トロリーにそれぞれ取り付けられた吊具10とを有してなる。レールは自走式作業機械の所定の走行範囲において追従できるように設置される。ダクトの伸縮に伴ってダクトに過度な力が加わらないようにするために、隣接するトロリーの間やエアチャンバとスイベルとの間に、線材(つなぎ材)11が張られていてもよい。
【0019】
ダクトは、一端がブロワー2に取り付けられており、他の一端が構造物内で作業する自走式作業機械5に取り付けられている。ダクト3は、ダクトの取替などを容易ならしめるために、着脱自在に取り付けることが好ましい。ダクト3はその少なくとも一部が伸縮自在となっている。吊り下げ装置4の各吊具10によってダクトが吊られており、自走式作業機械が構造物内を走行すると、その走行に従ってトロリーがレールに沿って移動し、ダクトが伸縮する。
【0020】
自走式作業機械に取り付けられる部分のダクト3aと、吊具に吊られている部分のダクト3bとの間に、スイベル13を設けることが好ましい。スイベル13によって、自走式作業機械に取り付けられる部分のダクト3aと吊具に吊られている部分のダクト3bとが相互に自由に回転できるので、ダクトに捻じれなどが生じ難くなる。
図1に示したスイベルは全体がボックス形状を成しているが、それに限定されない。
【0021】
自走式作業機械へのダクト3aの取り付け位置は、ブロワーが吸い込んだ空気を冷却装置6に送ることができるようになれば、特に制限されない。例えば、冷却装置を冷やすための空気を取り入れるための開口部7に取り付けてもよいし、自走式作業機械にエアチャンバ14を設けてそれに取り付けてもよい。このエアチャンバ14にダンパ15を設けて、ダクト3c経て冷却装置への風量の調整を行ってもよい。また、エアチャンバ14を経由して、冷却装置6以外の場所、例えば、運転室などに送風できるようにしてもよい。
図1に示したシステムにおいては運転室の屋根の上にエアチャンバ14が設置されている。
【0022】
構造物外から吸い込まれた空気は構造物内の空気に比べて粉塵が少ない。構造物外から吸い込まれた空気は、ダクトを経由して、自走式作業機械の冷却装置6に送られ、冷却装置が冷やされる。ブロワー経由の空気が冷却装置周辺に送られてくると、自走式作業機械の開口部から構造物内の空気が取り込まれにくくなるので、吸気口に設けられているフィルタ(エアクリーナ)、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータ、油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ、エンジンに供給される圧縮空気を冷却するアフタクーラなどの冷却装置に粉塵が堆積し難くなる。その結果、冷却装置の冷却効率が低下せず、過熱による動作不良(オーバーヒート)を起こしたり、自走式作業機械そのものに損傷を与えたりすることが抑制され、部品の修理や交換までの期間を長くすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1:構造物
2:ブロワー
3:ダクト
3a:スイベルからエアチャンバまでの部分のダクト
3b:吊具で吊られている部分のダクト
3c:エアチャンバから冷却装置までの部分のダクト
4:吊り下げ装置
5:自走式作業装置
6:冷却装置
21:ラジエータ
22:オイルクーラ
23:アフタクーラ
7:開口部
8:レール
9:トロリー
10:吊具
11:つなぎ材
12:ピット
13:スイベル
14:エアチャンバ
15:ダンパ
16:廃棄物処理装置
17:ホッパ
24:リモコン受信アンテナ