(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】hGH融合タンパク質を含有する、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/27 20060101AFI20230818BHJP
A61P 5/06 20060101ALI20230818BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230818BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230818BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230818BHJP
C12N 15/18 20060101ALN20230818BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230818BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
A61K38/27 ZNA
A61P5/06 ZMD
A61P43/00 111
A61K47/68
C12N15/62 Z
C12N15/18
C12N15/13
A61K39/395 V
(21)【出願番号】P 2019532910
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2017009471
(87)【国際公開番号】W WO2018044060
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2016-0110806
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0110161
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516351304
【氏名又は名称】ジェネクシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEXINE, INC.
【住所又は居所原語表記】172 Magokjungang-ro, Gangseo-gu, Seoul 07789 REPUBLIC OF KOREA
(73)【特許権者】
【識別番号】514081863
【氏名又は名称】ハンドク インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ・キュン
(72)【発明者】
【氏名】ウォ、ジュン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジャン・ヨン・ジ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ユン-ジョ
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ジ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヒュ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ウォ・イック
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531134(JP,A)
【文献】A Hybrid Fc-fused Human Growth Hormone, GX-H9, Shows a Potential for Weekly and Semi-monthly Administration in Clinical Studies,European Society for Paediatric Endocrinology Abstracts,2016年,55th Annual ESPE,86 RFC8.4,https://abstracts.eurospe.org/hrp/0086/hrp0086rfc8.4
【文献】Endocrine Reviews,2016年04月01日,Vol. 37, No. 2, Supp. Supplement 1,Abstract Number: LBFri-28.,Meeting Info: 98th Annual Meeting and Expo of the Endocrine Society, ENDO 2016. Boston, MA, United States. 01 Apr 2016-04 Apr 2016
【文献】Mol. Pharmaceutics (2015), 12, p.3759-3765
【文献】Growth Hormone & IGF Research,2015年07月14日,Vol.25,pp.201-206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/27
A61K 47/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えhGH GX-H9および薬学的に許容される担体を含む成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、前記組換えhGHはハイブリッドFcと融合したヒト成長ホルモン(hGH)であり、ハイブリッドFcはIgDおよびIgG4を融合させることによって生成され、前記組換えhGHは配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記組換えhGHが、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回、または患者の体重1kgあたり1.0~3.0mgの用量で2週間に1回投与され、前記患者は小児患者である、医薬組成物。
【請求項2】
前記組換えhGHが、前記患者の体重1kgあたり0.5~1.5mgの用量で1週間に1回投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が皮下投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、ハイブリッドFcをヒト成長ホルモン(hGH)に融合させることによって生成されるヒト成長ホルモン融合タンパク質hGH-hyFc(GX-H9)を含む医薬組成物に関する。具体的には、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するのに効果的なhGH融合タンパク質を投与するための方法、ならびに成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、hGH融合タンパク質(GX-H9)および薬学的に許容される担体を含み、hGH融合タンパク質(GX-H9)が、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与される、または患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与される、医薬組成物に関する。
【0002】
[2]加えて、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための方法であって、hGH融合タンパク質(GX-H9)を、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回、または患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与する工程を含む方法に関する。
【0003】
[3]さらに、本開示は、hGH融合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む容器、ならびにhGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために、患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mg/kgの用量で1週間に1回または患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与されることを示す添付文書を含むキットに関する。
【背景技術】
【0004】
[5]191のアミノ酸からなる単一分子ポリペプチドである成長ホルモンは、下垂体前葉から分泌されるホルモンである。成長ホルモンは、成長ホルモン受容体に結合して、細胞の増殖および再生に関与するIGF-1(インスリン様増殖因子1)を発現する。成長ホルモンは、正常な人の身体の下垂体において合成され、その生成は、思春期まで増加し、年齢とともに徐々に減少することが知られている。
【0005】
[6]典型的な成長ホルモン欠乏障害としては、成人成長ホルモン欠乏症(AGHD)および小児成長ホルモン欠乏症(PGHD)が挙げられる。成人成長ホルモン欠乏症は、患者の下垂体が、脳腫瘍、脳溢血などの治療の間に放射線もしくは手術によって損傷を受けた場合に生じるか、または突発的に生じる。成長ホルモンの分泌が正常でない場合、体重減少、骨塩量の減少、脂肪の増加、HDLの減少、LDLの増加、筋力の低下などを含む症状が生じて生活の質が低下する。成人成長ホルモン欠乏症を有する患者は、-2のIGF-1標準偏差値(SDS)もしくはそれ未満(<-2SDS)、または年齢に対して正常の第2.5パーセンタイル値未満を有する。血中成長ホルモンレベルは、インスリン負荷試験(ITT)、GHRH+アルギニン刺激試験(GHRH+ARG)、グルカゴン試験、L-DOPA試験、クロニジン試験などを含む刺激試験によって測定することができる。ピーク成長ホルモン(GH)レベルが、肥満度指数(BMI)が25kg/m2未満の患者において11.0μg/L以下、肥満度指数が25~30kg/m2の患者において8.0μg/L以下、または肥満度指数が30kg/m2を超える患者において4.0μg/L以下である場合、これらの患者は、成長ホルモン欠乏症を有すると決定される(Guidelines for Use of Growth Hormone in Clinical Practice、Endocr.Pract.2009;15(補遺2))。
【0006】
[7]小児成長ホルモン欠乏症は、下垂体への損傷または発達障害がある場合に生じる。成長ホルモン分泌が損なわれると、同じ年齢群の成長曲線における下位3%、または1年あたり5cm以下に対応する成長が現れる低身長が現れ、低グルコースレベル、基礎体力の低下、憂うつおよび精神の未成熟を含む症状も現れる。以下の小児は、小児成長ホルモン欠乏症を有すると決定されてもよい:その身長が同じ年齢群における平均値よりも少なくとも3SD低い小児;その身長が両親の平均身長よりも少なくとも1.5SD低い小児;1年以上の期間にわたって、同じ年齢群の平均値を少なくとも2SD下回り、同じ年齢群の成長を少なくとも1SD下回る小児;2歳以上であるが、SD値が少なくとも0.5下回る小児;または低身長症状を示さないが、1年以上にわたりSDが2未満であるかもしくは2年以上にわたりSD1.5を維持している小児(Consensus guideline for the diagnosis and treatment of GH deficiency in childhood and adolescence: summary statement of the GH Research Society. GH Research Society、J. Clin. Endocrinol. Metab.、2000年11月;85(11):3990~3)。
【0007】
[8]成人成長ホルモン欠乏症については、従来技術では、薬物の用量は患者の体重に基づいて決定されたが、近年は、各患者に対して個別化された用量が、治療のために使用されている。具体的には、推定される適切な用量よりも低い用量での治療の開始後、臨床反応、有害事象事例、またはIGF-1レベルに応じて、用量を0.1~0.2mg/日の範囲で増加または減少させる。成長ホルモンの治療用量は、患者の性別、エストロゲンレベル、年齢などを考慮して決定されるべきである。成人成長ホルモン欠乏症の治療は、代謝を正常にし、生活の質を改善することを目的とする。このために、成長ホルモンの用量は、血中IGF-1レベルが、患者の年齢および性別に応じて正常範囲内(-2SDS~2SDS)になるように好適に決定されるべきである。
【0008】
[9]小児成長ホルモン欠乏症については、小児成長ホルモン欠乏症を有すると診断された後、可能な限り早く治療を開始することが推奨される。一般に、毎日夜に成長ホルモンを皮下投与するレジメンが使用され、成長ホルモンの推奨用量は、25~50μg/kg/日である。一般に、3ヶ月または6ヶ月の間隔で成長速度を確認し、身長の伸び、伸び率の変化、個々の患者の服薬遵守をモニタリングし、安全性の確認のために有害事象を確認し、血清IGF-1またはIGFBP-3レベルを測定することが推奨される。小児成長ホルモン欠乏症患者の治療は、正常に身長が伸びることを目的とし、成長ホルモンの用量は、血中IGF-1レベルを、患者の年齢および性別に応じて正常範囲内(-2SDS~2SDS)に維持することができるように好適に決定されるべきである。
【0009】
[10]成長ホルモン治療が1950年代に最初に導入されたとき、成長ホルモンはヒトの遺体から抽出され、1人から得ることができる成長ホルモンの量は非常に限られていたため、成長ホルモンは、安定的に供給するのが困難であり、また高価でもあった。その後、遺伝子組換え技術が発展し、大腸菌(E.coli)中で合成された成長ホルモンが市場に流通するようになった(Somatropin、1981、Genentech、USA)。米国市場に現在出されている組換え成長ホルモン治療剤の例としては、Pfizer製Genotropin、Eli Lilly製Humatrope、Genentech製Nutropin、Novo Nordisk製Norditropinなどが含まれる。
【0010】
[11]しかしながら、組換え成長ホルモン調剤は、すべて、1週間に6回または7回投与する必要のある、毎日1回用量形態である。成人成長ホルモン欠乏症については、Humatropeが、0.2mg/日(0.15~0.30mg/日の範囲内)の用量で使用される。Nutropinの用量の決定が体重に基づかない場合、Nutropinの開始用量は、0.2mg/日(0.15~0.3mg/日の範囲内)であり、用量は、1~2ヶ月の間隔で0.1~0.2mg/日の範囲内で変更されてもよい。Nutropinの用量が体重に基づいて決定される場合、その開始用量は、0.005mg/kg/日を超えないで使用される。Nutropinの用量を増加させる必要がある事例の場合、用量は、投与後4週間で0.01mg/kg/日を超えないように増加される。Norditropinの用量の決定が体重に基づかない場合、その開始用量は、0.2mg/日(0.15~0.3mg/日の範囲内)であり、Norditropinの用量は、1~2ヶ月の間隔で0.1~0.2mg/日の範囲内で変更されてもよい。Norditropinの用量が体重に基づいて決定される場合、Norditropinは、その開始用量が0.004mg/kg/日を超えないように使用される。Norditropinの用量を増加させる必要がある場合、6週後に0.016mg/kg/日を超えないように増加される。小児成長ホルモン欠乏症については、Genotropinは、0.16~0.24mg/kg/週の用量で使用され、Humatropeは、0.026~0.043mg/kg/日の用量で使用される。さらに、Norditropinは、0.3mg/kg/週の用量で使用され、Norditropinは、0.024~0.034mg/kg/日の用量で使用される。
【0011】
[12]現在の成長ホルモン調剤は、毎日1回用量形態であり、特に、小児患者に対して3~4年の長い治療期間にわたって毎日それらを注射する必要があることは不都合である。さらに、これらの成長ホルモン調剤の注射から生じる精神的ストレスが、生活の質を低下させることが知られている。さらに、患者が意図せず注射を受けない服薬遵守の問題がしばしば発生し、この問題は、治療効果を損なう最大の要因である。加えて、治療の年数が増加するにつれて、非服薬遵守数が大幅に増加することが知られている(Endocrine practice、2008年3月、14(2):143~54)。患者の約2/3の身長の伸び率は、実際の非服薬遵守(低服薬遵守)のために低下することが知られている(PloS one、2011年1月;6(1):e16223)。
【0012】
[13]そのような問題に起因して、様々な技術を使用して、長期持続型の成長ホルモンを開発する試みが間断なく行われている。しかしながら、成功裡に開発され市場に流通している製品の中でも、Genentechによって開発されたNutropin Depotは、毎月1回用量形態であったが、これは、その製造が困難であるために市場から撤退した。さらに、Eutropin Plus/Declage(LG Life Sciences,Ltd.)が、ヒアルロン酸(HA)を使用して、毎週1回用量形態として開発されたが、これは、第1世代製品において大きな針の注射器を使用する必要があるという欠点がある。
【0013】
[14]したがって、毎日用量から生じる不都合および他の様々な理由のために低下する患者の服薬遵守の観点から、安全で効果的である一方患者の服薬遵守を満たす長期持続型の成長ホルモンを開発する必要性がある。GX-H9(hGH-ハイブリッドFc)は、長期持続型の成長ホルモン調剤である。米国特許第7,867,491号では、従来のFc融合技術の問題である、補体依存性細胞傷害および抗体依存性細胞障害を克服することが可能なハイブリッドFcが、イムノグロブリンIgDおよびイムノグロブリンIgG4を組み合わせることによって生成された。次いで、米国特許第8,529,899号では、従来の毎日1回用量型の成長ホルモン調剤を置きかえることが可能なhGH融合タンパク質(hGH-hyFc、GX-H9)が、ハイブリッドFcをヒト成長ホルモン(hGH)に融合させることによって生成された。しかしながら、実際のFc融合タンパク質のin vivo半減期は、Fcに結合する生理活性構成成分の種類に応じて大きく変化し、これは、融合タンパク質の用量にも影響を与える。成長ホルモン欠乏症の治療において効果的かつ安全な、ヒト成長ホルモン(hGH)およびhyFcの融合タンパク質GX-H9の用量、投薬頻度などは、いまだ明らかになっていない。
【0014】
[15]したがって、最適な効果を示すことができるhGH融合タンパク質GX-H9の用量および投薬頻度を決定するために、本発明者らは、32名の健康な成人(2013-002771-18)、成人成長ホルモン欠乏症を有する45名の患者(2014-002698-13、EudraCT/NCT02946606、ClinicalTrials.gov)および小児成長ホルモン欠乏症を有する56名の患者(2015-001939-21、EudraCT)に対して臨床研究を実施している。結果として、本発明者らは、IGF-1 SDS値を長期間にわたって正常範囲内に維持する一方、成長ホルモンによって生じ得る副作用を最小にすることができる、GX-H9の用量、投薬頻度、安全性などを決定し、それによって本発明を完成した。
【発明の概要】
【0015】
[18]技術的な問題
[20]本開示の目的は、hGH融合タンパク質GX-H9の用量および投薬頻度を明らかにすることによって、成長ホルモン欠乏症を治療するのに効果的なhGH融合タンパク質GX-H9を使用して成長ホルモン欠乏症を治療するための方法を提供することである。
【0016】
[21]上記の目的を達成するために、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含み、hGH融合タンパク質が、小児患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与される、医薬組成物を提供する。
【0017】
[22]本開示はまた、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含み、hGH融合タンパク質が、小児患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与される、医薬組成物も提供する。
【0018】
[23]本開示はまた、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含有する容器、ならびにhGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために、小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与されることを示す添付文書を含むキットも提供する。
【0019】
[24]本開示はまた、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含有する容器、ならびにhGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために、小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与されることを示す添付文書を含むキットも提供する。
【0020】
[25]本開示はまた、成長ホルモン欠乏症を治療するための方法であって、hGH融合タンパク質GX-H9を、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与する工程を含む方法も提供する。本開示は、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与することによって成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬の製造における、hGH融合タンパク質GX-H9の使用を提供する。本開示は、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与することによる成長ホルモン欠乏症の治療における使用のための、hGH融合タンパク質GX-H9を含む組成物を提供する。
【0021】
[26]本開示はまた、成長ホルモン欠乏症を治療するための方法であって、hGH融合タンパク質GX-H9を、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与する工程を含む方法にも関する。本開示は、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与することによって成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬の製造における、hGH融合タンパク質GX-H9の使用を提供する。本開示は、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与することによる成長ホルモン欠乏症の治療における使用のための、hGH融合タンパク質GX-H9を含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】[28]
図1は、hGH融合タンパク質(GX-H9)についてのFcγ受容体(FcγR)Iの結合親和性の測定の結果を示す。
【
図2】[29]
図2は、hGH融合タンパク質(GX-H9)についてのC1qの結合親和性の測定の結果を示す。
【
図3】[30]
図3は、Genotropin(Pfizer)またはGX-H9の投与後の、下垂体切除ラットにおける体重増加の測定の結果を示す。
【
図4】[31]
図4は、hGH融合タンパク質(GX-H9)またはEutropin(LG Life Sciences)の、それぞれの薬物のラットへの単回用量皮下投与後に示された、薬物動態特性を示す。
【
図5】[32]
図5は、それぞれの薬物のサルへの単回用量皮下投与後に示された、hGH融合タンパク質(GX-H9)またはEutropinの薬物動態特性を示す。
【
図6】[33]
図6は、GX-H9を4週間にわたってサルに反復投与した後に示された、hGH融合タンパク質(GX-H9)の薬物動態を示す。
【
図7】[34]
図7は、健康な成人ボランティアに対する第1相臨床研究における、hGH融合タンパク質(GX-H9)の用量に応じた薬物動態特性を示す。
【
図8】[35]
図8は、健康な成人ボランティアに対する第1相臨床研究における、hGH融合タンパク質(GX-H9)の用量に応じた薬力学特性(IGF-1 SDS)(ベースラインからの変化)を示す。
【
図9】[36]
図9は、小児成長ホルモン欠乏症を有する患者に対する第2相臨床研究における、hGH融合タンパク質(GX-H9)の単回用量(SD)期間および複数回用量(MD)期間中の用量に応じた用量依存薬物動態特性を示す。
【
図10】[37]
図10は、小児成長ホルモン欠乏症を有する患者に対する第2相臨床研究における、hGH融合タンパク質(GX-H9)の単回用量(SD)期間および複数回用量(MD)期間中の用量に応じた薬力学(平均IGF-1 SDS)特性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0023】
[40]ヒトにおいて、実際の成長を促進するのに効果的である、ヒト成長ホルモン(hGH)融合タンパク質GX-H9の用量および投薬頻度は、いまだ明らかになっていない。
【0024】
[41]本発明者らは、最適な効果を示すことができるGX-H9の用量および投薬頻度を決定するために、小児ホルモン欠乏症を有する56名の患者に対する臨床研究(2015-001939-21)を実施している。結果として、本発明者らは、hGH融合タンパク質GX-H9が、小児患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与された場合、または小児患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与された場合、成長ホルモンが、in vivoにおいて長期持続し得、その結果、そのIGF-1 SDS値を、長期間にわたって正常範囲内に維持することができることを見出した。
【0025】
[42]したがって、一側面では、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、hGH融合タンパク質(GX-H9)および薬学的に許容される担体を含み、hGH融合タンパク質が小児患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与される、医薬組成物を対象とする。特に、本開示は、hGH融合タンパク質が、小児患者の体重1kgあたり0.5~1.5mg、0.7~1.3mg、または0.8~1.2mgの用量で1週間に1回投与される、医薬組成物を対象とする。
【0026】
[43]加えて、別の側面では、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための医薬組成物であって、hGH融合タンパク質(GX-H9)および薬学的に許容される担体を含み、hGH融合タンパク質が小児患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与される、医薬組成物を対象とする。特に、本開示は、hGH融合タンパク質が、小児患者の体重1kgあたり1.0~3.0mg、1.4~2.6mg、または1.6~2.4mgの用量で2週間に1回投与される、医薬組成物を対象とする。
【0027】
[44]本開示の医薬組成物において、hGH融合タンパク質(GX-H9)は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでいてもよい。本開示の医薬組成物は、皮下注射されてもよい。
【0028】
[45]別の側面では、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための方法であって、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、hGH融合タンパク質GX-H9を、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与する工程を含む方法を対象とする。
【0029】
[46]なお別の側面では、本開示は、成長ホルモン欠乏症を治療するための方法であって、hGH融合タンパク質GX-H9を、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与する工程を含む方法を対象とする。
【0030】
[47]ここで使用される場合、「hGH融合タンパク質GX-H9」という用語は、ハイブリッドFcをヒト成長ホルモン(hGH)に融合させることによって生成されるヒト成長ホルモン融合タンパク質hGH-hyFcを指す。hGH融合タンパク質GX-H9は、本明細書に添付された配列番号1のアミノ酸配列を含んでいてもよい。hGH融合タンパク質GX-H9は、米国特許第8,529,899号に開示されている方法に従って生成することができる。
【0031】
[48]本開示によるhGH融合タンパク質GX-H9を含む医薬組成物は、成長ホルモン欠乏症を有する小児患者に投与することができる。
【0032】
[49]「低身長」は、身長が、正常の2標準偏差(SD)もしくは第3パーセンタイル値(3%)未満である場合、または身長の伸びが1年あたり5cm以下である場合を意味する。成長ホルモン欠乏症は、先天性または後天性欠乏症を含んでもよい。先天性欠乏症に関して、下垂体が発達せず、その結果成長ホルモン分泌障害が生じる場合、成長ホルモン欠乏症が生じ得る。後天性成長ホルモン欠乏症は、難産に起因する酸素欠乏を原因とする脳組織への損傷によって生じ得る。成長ホルモン欠乏症の他の原因としては、脳腫瘍の治療のための放射線または出生後の結核性髄膜炎による下垂体への損傷を含む。成長ホルモン欠乏症は、症状、たとえば、成長遅滞および低身長を示し、先天性成長ホルモン欠乏症は、新生児で開始する低グルコース症状を示す。加えて、小児は、症状、たとえば、不安の増加および活力の減少を示す。
【0033】
[50]本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は、それが、hGH融合タンパク質を患者に送達するのに好適な非毒性物質である限り、任意の担体であってもよい。本開示において使用することができる担体の例としては、滅菌水、アルコール、脂肪、ワックスおよび不活性固体が挙げられる。薬学的に許容されるアジュバント、たとえば、緩衝剤、分散剤、希釈剤など、すなわち、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、スクロース溶液、ポロキサマー溶液なども、本開示の医薬組成物中に組み込まれてもよい。
【0034】
[51]本開示において、hGH融合タンパク質GX-H9は、小児患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回、たとえば、患者の体重1kgあたり0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1または1.2mgの用量で1週間に1回投与されてもよい。好ましくは、hGH融合タンパク質GX-H9は、患者の体重1kgあたり0.5~1.5mg、0.7~1.3mg、または0.8~1.2mgの用量で1週間に1回投与されてもよい。加えて、hGH融合タンパク質GX-H9は、小児患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回、たとえば、患者の体重1kgあたり1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6または2.8mgの用量で2週間に1回投与されてもよい。好ましくは、hGH融合タンパク質GX-H9は、患者の体重1kgあたり1.0~3.0mg、1.4~2.6mg、または1.6~2.4mgの用量で2週間に1回投与されてもよい。より好ましくは、hGH融合タンパク質GX-H9は、患者の体重1kgあたり0.8~1.2mgの用量で1週間に1回、または患者の体重1kgあたり1.6~2.4mgの用量で2週間に1回投与される。
【0035】
[52]hGH融合タンパク質の用量は、患者の体重に基づいて調節することができ、投与後の進行に応じて増加または減少させることができる。後続して投与されるhGH融合タンパク質の用量は、初期用量よりも高くても低くてもよく、または初期用量と等しくてもよい。初期段階において、hGH融合タンパク質は、安全性を確実にするために低用量で投与されてもよく、有害事象などが現れないことが確認された場合、用量を徐々に増加させてもよい。加えて、hGH融合タンパク質の用量は、患者から得られた血漿または血清試料中のIGF-I SDS値をモニタリングしながら調節してもよい。個々の患者に好適なhGH融合タンパク質の用量は、患者の年齢、性別、体質、体重などに応じて変動してもよい。
【0036】
[53]hGH融合タンパク質GX-H9を含有する医薬組成物は、様々な方法で対象に投与されてもよい。たとえば、医薬組成物は、非経口的に、たとえば皮下または静脈内に投与されてもよい。この組成物は、当技術分野で周知の従来の滅菌技術を使用して滅菌されてもよい。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる通りの薬学的に許容される補助剤、たとえば、pH調節および緩衝剤、毒性調節剤など、たとえば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有していてもよい。これらの調合物中のhGH融合タンパク質の濃度は、幅広く変動し得、選択される特定の投与様式に従って、液量、粘度などに主に基づいて選択されてもよい。
【0037】
[54]なお別の側面では、本開示は、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含有する容器、ならびにhGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために、小児患者に、患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与されることを示す添付文書を含むキットを対象とする。特に、本開示は、hGH融合タンパク質GX-H9および薬学的に許容される担体を含有する容器、ならびにhGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために、小児患者に、患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に1回投与されることを示す添付文書を含むキットを対象とする。
【0038】
[55]添付文書は、hGH融合タンパク質が、成長ホルモン欠乏症を治療するために小児患者に投与されることを示す手引きのタイプであってもよい。
【0039】
[56]hGH融合タンパク質および薬学的に許容される担体は、同じ容器または個別の容器中に存在していてもよい。一態様では、好適な容器としては、ボトル、バイアル、バッグ、注射器(たとえば、用量調節可能なペン型、障壁の除去後、溶媒および凍結乾燥剤を混合することによって即時投与が可能な注射器など)などが挙げられてもよい。容器は、様々な材料、たとえば、ガラス、プラスチック材料または金属で形成されていてもよい。容器に含まれるラベルは、使用説明を示していてもよい。加えて、商業的観点および使用者の観点から、キットは、他の好ましい材料、たとえば、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器などを含んでいてもよい。
【0040】
[実施例]
[59]以下、本開示を、例を参照してさらに詳細に記載する。これらの例は、例示のみを目的とし、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことが、当業者には明らかである。
【0041】
[61]例1:hGH融合タンパク質GX-H9の生成
[62]hGH融合タンパク質GX-H9は、米国特許第8,529,899号に開示されている方法に従って生成することができる。
【0042】
[63]最初に、hyFcが配列番号1のアミノ酸配列をコードするヒト成長ホルモン(hGH)に融合したhGH-hyFcの核酸配列を、発現ベクターpAD15に挿入し、これによって、hGH-hyFcを発現および生成する細胞株を構築した。hGH-hyFc構造遺伝子を含むベクターを構築するために、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子として、GenBank AAA98618.1の配列を使用し、hyFc遺伝子として、GenBank P01880(IgD)およびGenBank AAH25985(IgG4)の配列を融合のために使用した。遺伝子プロデューサーから得られた遺伝子を、特定の制限酵素の使用によって、融合タンパク質生成細胞株の生成のために発現ベクターに挿入した。
【0043】
[64]上記の方法によって得られた発現ベクターを、リン酸カルシウム法によってCHO DG44(Columbia University、USA)細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、トランスフェクト細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、次いで、培地を、10% dFBS(Gibco、USA、30067-334)、MEMアルファ(Gibco、12561、USA、カタログ番号12561-049)、HT+(Gibco、USA、11067-030))培地で置きかえた。トランスフェクションの48時間後、細胞を、100mmプレート上、HT不含10% dFBS+MEMアルファ培地で系列希釈し、HT選別を実施した。細胞を、単一のコロニーが形成されるまで静置した一方、培地を週に2回置きかえた。次に、DHFRシステムを使用して生産性を増加させるために、HT選別クローンのMTX増幅を実施した。MTX増幅の完了後、細胞を安定化のために4~5回副次培養し、次いで、単位生産性の評価を実施し、これによって所望のタンパク質の生成のために好適なクローンを得た。
【0044】
[65]最も高い生産性を示すクローンについて単一のクローンを得るために、限界希釈クローニング(LDC)を実施した。LDCのために、細胞を培地で希釈し、96ウェルプレートに1個の細胞/ウェルの濃度で播種した。播種後10~14日で、細胞を、顕微鏡観察下で単一のクローンを含有するウェルから収集し、収集した細胞をT25フラスコ中で培養して、細胞の生産性評価を実施できるようにした。次いで、生産性の高い細胞株を選択した。
【0045】
[66]選択した細胞株から培養培地を収集し、次いで、所望のタンパク質を培養培地から精製した。このために、タンパク質含有培養培地試料を、Prosep Ultra Plus(Prosep(登録商標)Ultra Plus、Merck)を使用して吸着し(試料結合)、次いで、50mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウムおよびpH7.0緩衝液を使用して平衡化した。XK16/20カラム(GE Healthcare)を溶出のために使用し、所望のタンパク質を、100mMクエン酸ナトリウム、200mM L-アルギニンおよびpH3.1緩衝液を使用して溶出した。
【0046】
[68]例2:hGH融合タンパク質GX-H9の抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)に関する試験
[69]GX-H9のハイブリッドFc領域が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導しないことを確認するために、酵素連結免疫測定法アッセイ(ELISA)を実施した。
【0047】
[70]陽性対照として、Fcγ受容体(FcγR)I、IIおよびIIIへの非常に高い結合親和性を有することが公知の、Rituxan(Roche、Switzerland)およびEnbrel(Amgen、USA)を使用した。GX-H9、RituxanおよびEnbrelのそれぞれを96ウェルプレートにコーティングし、次いで、系列希釈したFcγ受容体Iと反応させた。反応の完了後、反応溶液のそれぞれを緩衝液で洗浄して、試験物質に結合していないFcγ受容体Iを除去した。次に、Fcγ受容体Iと試験物質のそれぞれとの間の結合親和性を、ビオチン化抗FcγRI抗体およびHRPコンジュゲートストレプトアビジンを使用して測定した。
【0048】
[71]GX-H9と補体依存性細胞傷害を誘導するC1qとの間の結合親和性も、上記の通りのELISA法を使用して測定した。陽性対照として、Rituxan(Roche、Switzerland)およびEnbrel(Amgen、USA)を使用し、C1qと試験物質のそれぞれとの間の結合親和性を、HRPコンジュゲート抗C1ql抗体を使用して測定した。
【0049】
[72]結果として、
図1に示されるように、GX-H9は、抗体依存性細胞傷害を誘導するFcγ受容体Iに対する低い結合親和性を示し、
図2から分かるように、GX-H9はまた、補体依存性細胞傷害を誘導するC1qに対する低い親和性を有した。
【0050】
[74]例3:hGH融合タンパク質(GX-H9)の前臨床研究の結果
[75]3-1:下垂体切除ラットを使用したGX-H9の反復皮下投与の効果に関する試験
[76]GX-H9の効果を、動物疾患モデルである下垂体切除ラットを使用して試験した。対照として、毎日1回用量形態のGenotropin(Pfizer、USA)を使用した。GX-H9を1週間に1回投与し、その効果を、対照の効果と比較した。
【0051】
[77]試験を、下垂体切除後約1週間で約10%以下の体重増加を示す個体に対して実施した。陰性対照として群1には、2週間にわたってビヒクル単独を皮下投与した。群2には、Genotropinを、0.2mg/kgの用量で毎日投与した。群3には、Genotropinを、Genotropinの週用量である1.4mg/kgの用量で1週間に1回皮下投与した。群4には、GX-H9を1.4mg/kgの用量(Genotropinの週用量に対応する)で1週間に1回皮下投与した。群5には、GX-H9を、3.5mg/kgの用量(Genotropinの週用量のモル数の1/2に対応する)で1週間に1回皮下投与した。群6には、GX-H9を、7.0mg/kgの用量(Genotropinの週用量のモル数と同一のモル数に対応する)で1週間に1回皮下投与した。それぞれの薬物投与の翌日、各ラットにおける症状を観察し、各ラットの体重を測定した。
【0052】
[78]結果として、
図3に示されるように、Genotropinを、0.2mg/kgの用量で1日に1回投与した場合、平均で約20gの体重増加があったが、Genotropinを1.4mg/kgの用量で1週間に1回投与した場合、体重増加はなかった。GX-H9を7mg/kgの用量で1週間に1回投与した場合(群6)、群6では、Genotropinを同一モル数で投与した群3と比較して、より大きな体重増加が示された。加えて、3.5mg/kgのGX-H9の投与(群5)では、0.2mg/kgのGenotropinの毎日投与(群2)の効果と同様の効果が示された。
【0053】
[80]3-2:ラットを使用したhGH融合タンパク質(GX-H9)の単回用量皮下投与の薬物動態研究
[81]GX-H9の薬物動態を試験するために、ラットに、単回用量のGX-H9を皮下投与した。対照として、効果の比較のために単回用量のEutropin(LG Life Sciences,Ltd.、Korea)をラットに投与した。群1には、単回用量の200μg/kgのEutropinを皮下投与し、群2には、単回用量の200μg/kgのGX-H9を皮下投与した。群3には、単回用量の1,000μg/kgのGX-H9を皮下投与した。
【0054】
[82]皮下投与前、ならびに皮下投与後1、4、8、12、18、24、36、48、72、96、120、144、168、216、264および336時間の時点で、ラットから血液をサンプリングした。各試験物質の血中濃度を、各試験物質に特異的な生体試料分析法(ELISA)を使用して測定した。
【0055】
[83]試験結果を
図4および以下の表1に示す。これらから分かるように、単回用量のGX-H9を200または1,000μg/kgの用量で皮下投与した後の薬物動態においては、17時間または24時間でピーク血中濃度に達し(T
max)、GX-H9は、それぞれ9日および11日まで血液中で検出された。投与用量が増加すると、全身曝露も増加した。
【0056】
【0057】
[87]対照物質である200μg/kgのEutropinを投与した群と比較した場合、200μg/kgのGX-H9を皮下投与した群の場合では、試験物質は、より長い期間血中で検出され(Eutropinについて24時間対GX-H9について9日間)、GX-H9は、血中で維持された一方、最大血中濃度に達するのに要した時間(Tmax)は、約20時間の差異(Eutropinについて4時間対GX-H9について24時間)を示した。そのような結果は、ラットが、対照薬物Eutropinと比較してより長い期間、GX-H9に全身曝露されたことを示している。加えて、GX-H9の用量が増加すると、皮下投与後の全身曝露も、用量の増加率に比例して増加する。
【0058】
[89]3-3:サルを使用したhGH融合タンパク質(GX-H9)の皮下投与後の薬物動態研究
[90]カニクイザルにおけるGX-H9および対照物質Eutropinの薬物動態を分析した。雄性のサル(群あたり3匹のサル)に、GX-H9を、500μg/kgおよび1,000μg/kgの用量で1週間に1回、合計4回反復して皮下投与し、対照物質Eutropinを、1,000μg/kgの単回用量で皮下投与した。
【0059】
[91]GX-H9を投与した群では、血液を1回目および5回目の投与前(0日目および21日目)、ならびに投与後1、4、8、12、18、24、30、36、48、60、72、96、120、144および168時間の時点でサンプリングした。
【0060】
[92]Eutropinを投与した群では、血液を、単回用量投与前、ならびに単回用量投与後1、4、8、12、18、24、30、36、48、60、72、96、120、144および168時間の時点でサンプリングした。
【0061】
[93]試験物質の血中濃度を、GX-H9およびEutropinのそれぞれに特異的な生体試料分析法(ELISA)を使用して測定し、結果を
図5および以下の表2(単回用量投与)、ならびに
図6および以下の表3(反復投与)に示す。
図5、6、表2および3から分かるように、GX-H9を、500または1,000μg/kgの用量で投与した場合、全身曝露は、単回投与および反復投与(4週間)の両方の後で、用量の増加に従って増加した。
【0062】
【0063】
【0064】
[99]対照薬物Eutropin(1,000μg/kg、単回用量で皮下投与)と比較した場合、GX-H9(500または1,000μg/kg)の投与の場合では、試験物質は、より長い期間血液中で検出された(Eutropinの投与後12~18時間対GX-H9の投与後168時間)。つまり、GX-H9を皮下投与した場合、サルは、対照薬物Eutropinと比較してより長い期間、GX-H9に全身曝露された。加えて、GX-H9の用量が500から1,000μg/kgに増加すると、GX-H9の皮下投与後の全身曝露も、用量の増加率に比例して増加することが示された。
【0065】
[101]例4:hGH融合タンパク質(GX-H9)の第1相臨床研究の結果
[102]4-1:健康な成人におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の薬物動態特性
[103]健康なボランティアに対し、無作為割当て、二重盲検、プラセボ対照、単回用量投与および用量の段階的増加を使用して、第1相臨床研究を実施した。第1相臨床研究は、GX-H9の単回用量投与に対する、安全性、薬物耐性および薬物動態/薬力学特性を評価することが目的であった。健康なボランティアを、無作為に試験群またはプラセボ群に割り当て、次いで、4種の用量(0.2、0.4、0.8および1.6mg/kg)のGX-H9を単回容量で皮下投与し、次いで、合計で56日間にわたって評価した。
【0066】
[104]GX-H9を投与した群では、血液を、単回用量投与前、ならびに単回用量投与後0.25、1、2、4、6、8、12、16、24、28、32、36、40、48、54、60、72、80、96、144、312、480、648および1320時間の時点でサンプリングした。
【0067】
[105]GX-H9の血中濃度を、GX-H9に特異的な生体試料分析法(ELISA)を使用して分析し、結果を、以下の表4および
図7[平均(範囲)]に示す。
【0068】
【0069】
[108]1)tmaxは、中央値(範囲)として表す。
【0070】
[109]2)n=5(1名についてのt1/2値およびパラメータは、正確に決定できなかった)。
【0071】
[111]GX-H9の単回用量皮下投与後、幾何平均濃度のピークが約12時間(8~16時間)で観察され、約12時間において観察されたピークよりも低い2つめのピークが、投与後約32時間(28~32時間)で観察された。最大血液濃度に達するのに要した時間は、0.2~0.8mg/kg用量群において12~16時間、1.6mg/kg用量群において34時間であった。最高用量群における2つめのピークは、C
maxに対応した(
図7を参照されたい)。C
maxおよびAUCは、すべての用量について、用量に対して増加した。半減期(t
1/2)は、69.2時間~138時間であり、個体間で異なった。
【0072】
[113]4-2:健康な成人におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の薬物動態特性
GX-H9を投与した群では、血液を、単回用量投与前、ならびに単回用量投与後12、24、36、48、60、72、96、144、312、480、648および1320時間の時点でサンプリングした。投与前に測定したサンプリングした血液におけるIGF-1濃度に対するベースラインからのパーセント変化の結果を、
図8に示す。
【0073】
[115]
図8は、プラセボ群、ならびに0.2、0.4、0.8および1.6mg/kgのGX-H9を投与した群におけるベースラインからの血中IGF-1濃度(ng/mL)のパーセント変化(%)を示している。ここから分かるように、GX-H9を0.2、0.4、0.8および1.6mg/kgの用量の単回用量で皮下投与した場合、血中IGF-1濃度は、用量依存的様式で増加した。平均最大増加(ベースラインからのパーセント変化)は、0.2、0.4、0.8および1.6mg/kgの用量で、それぞれ81%、157%、301%および349%であった。IGF-1が最大血液濃度に達するのに要した時間は、0.2~0.8mg/kg用量群において48~60時間、1.6mg/kg用量群において48~96時間であり、それが用量依存的様式で増加したことを示した。IGF-1の平均濃度は、0.2mg/kgの用量において投与後7日目および他の用量において14日目にベースラインに戻った。
【0074】
[117]4-3:健康な成人におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の安全性調査
試験対象において観察された、治療により出現した有害事象を、投与薬物、有害事象と薬物との関係および有害事象の強度に従って分析した。結果を以下の表5にまとめる。
【0075】
【0076】
[121]N=薬物に曝露された人数;
[122]n=有害事象を示した人数;
[123]E=出現した有害事象数;
[124](%)=治療から生じた有害事象を経験した患者のパーセンテージ、(n/N)×100;
[125]深刻な有害事象または軽度の有害事象は記録されなかった。
【0077】
[126]
図5に示されるように、試験対象のうち21名で、合計54件の有害事象が報告された。死亡または深刻な有害事象は報告されなかった。重度の有害事象が1名の試験対象において報告されたが、この重度の有害事象は、薬物に起因しないと考えられると決定した。上記の有害事象を除くすべての有害事象は軽度であった。最も頻繁に報告された有害事象は、筋骨格および結合組織障害(19件)、全身性疾患および投与部位異常(11件)、ならびに神経性異常(10件)であった。3件以上報告された有害事象は、筋痛(7件)、カテーテル処置部位反応(6件)、頭痛(5件)、上咽頭炎(5件)、関節痛(4件)および四肢痛(3件)であった。
【0078】
[127]一方、GX-H9を1回投与された試験対象においては、投与前、ならびに投与後28日目および56日目に、抗薬物抗体(ADA)の存在または非存在を観察した。結果として、GX-H9によって抗体が形成された患者は現れなかった。
【0079】
[129]例5:hGH融合タンパク質(GX-H9)の第2相研究の結果
[130]5-1:小児成長ホルモン欠乏症を有する患者におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の薬物動態特性
[131]無作為化、非盲検、実薬対照、用量設定試験において、1週間に1回または2週間に1回投与した場合のGX-H9の安全性、薬物耐性、有効性および薬物動態/薬力学特性を評価するために、小児成長ホルモン欠乏症を有する患者に対する第2相臨床研究が進行中である。GX-H9を、0.8mg/kgの用量で1週間に1回、1.2mg/kgの用量で1週間に1回、および2.4mg/kgの用量で2週間に1回、合計6ヶ月にわたって投与し、次いで、GX-H9の有効性および安全性を、投与の18ヶ月の延長を含む合計24ヶ月にわたって評価した。対照薬として、Genotropinを0.03mg/kgの用量で毎日、12ヶ月にわたって投与した。
【0080】
[132]小児患者に対する臨床研究の期間は、スクリーニング期間、単回投与期間(4週)、複数回用量投与-用量範囲決定期間(6ヶ月)、延長投与期間(6ヶ月)、追加の延長投与期間(12ヶ月)、および安全性追跡観察期間(1ヶ月)からなった。単回投与期間の間、PK/PD分析のための血液サンプリングを以下の方法で実施した。
【0081】
[133]GX-H9コホート(コホート1;0.8mg/kg、1週間に1回、コホート2;1.2mg/kg、1週間に1回、およびコホート3;2.4mg/kg、1ヶ月に2回)、サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)、160(±12時間)、336(±48時間)、および672(±48時間)。
【0082】
[134]Genotropin(登録商標)コホート(コホート4):サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、88(±4時間)、160(±12時間)、336(±48時間)、および672(±48時間)。
【0083】
[135]複数回投与-用量決定期間(6ヶ月)の間、決定した用量を継続して投与した。3ヶ月後、PK/PD分析を定常状態において実施した。血液サンプリングを、以下の方法で実施した。
【0084】
[136]GX-H9の1週間に1回の投与に割り当てられた試験対象について、血液サンプリングを85日目に実施した(PKおよびPDの両方を含む):0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)、および160(±12時間)。
【0085】
[137]GX-H9の1ヶ月に2回の投与に割り当てられた試験対象について、血液サンプリングを85日目に実施した(PKおよびPDの両方を含む):0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)、160(±12時間)、および336(±48時間)。
【0086】
[138]Genotropin(登録商標)コホートの1日1回投与に割り当てられた試験対象について、血液サンプリングを85日目、離脱前であるが薬物投与後に実施した(PKおよびPDを含む):0(-1時間)、6(±2時間)、12(±2時間)、18(±2時間)、24(±2時間)。
【0087】
[139]結果として、
図9から分かるように、0.8、1.2および2.4mg/kgの用量はすべて、in vivoにおいて蓄積することなくin vivoにおいて好適なレベルを維持した。
【0088】
[141]5-2:小児成長ホルモン欠乏症を有する患者におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の薬力学特性
[142]融合タンパク質の薬力学特性の分析を、例5-1で上記した通りの薬力学分析のための血液サンプリングタイミングと同じタイミングで実施した。
【0089】
[143]単回用量投与期間の間、PK/PD分析のための血液サンプリングを以下の方法で実施した。
【0090】
[144]GX-H9コホート(コホート1、コホート2およびコホート3):サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)、160(±12時間)、336(±48時間)、および672(±48時間)。
【0091】
[145]Genotropin(登録商標)コホート(コホート4):サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、88(±4時間)、160(±12時間)、336(±48時間)、および672(±48時間)。
【0092】
[146]複数回用量投与-用量範囲決定期間の間、血液サンプリングを以下の方法で実施した。
【0093】
[147]GX-H9の1週間に1回投与に割り当てられた試験対象のPK/PD:サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)および160(±12時間)。
【0094】
[148]GX-H9の1ヶ月に2回投与に割り当てられた試験対象のPK/PD:サンプリングタイミング:0(-1時間)、16(±2時間)、40(±2時間)、64(±4時間)、88(±4時間)、112(±6時間)、160(±12時間)、336(±48時間)。
【0095】
[149]Genotropin(登録商標)コホートの1日に1回投与に割り当てられた試験対象のPK/PD:サンプリングタイミング:0(-1時間)、6(±2時間)、12(±2時間)、18(±2時間)、および24(±2時間)。
【0096】
[150]結果として、
図10から分かるように、0.8、1.2および2.4mg/kgのすべての用量は、in vivoにおいて蓄積することなくin vivoにおいて好適なレベルを維持した。さらに、in vivoにおける平均IGF-1 SDS値が正常範囲内(-2SDS~2SDS)であったことを確認した。
【0097】
[152]5-3:小児成長ホルモン欠乏症を有する患者におけるhGH融合タンパク質(GX-H9)の安全性の調査
[153]試験対象において観察された有害事象を。投与薬物および薬物と有害事象との関係に従って分析した。結果として、小児患者に対する臨床研究において現在までに報告されたすべての有害事象は、既存の成長ホルモン治療において観察されるものと同じレベルであり、GX-H9が安全であることを示した。
【0098】
[155]5-4:小児成長ホルモン欠乏症を有する患者におけるhGH融合タンパク質に対する抗薬物抗体(ADA)の調査
[156]免疫原性を、GX-H9の反復投与によって抗体が形成されるかを決定することによって評価した。現在まで、GX-H9の投与によって形成された抗体は、何れの患者においても観察されなかった。
【0099】
[157]小児成長ホルモン欠乏症を有する患者の治療のために推奨される従来の第1世代(毎日用量)hGHの用量は、1週間あたり0.16mg/kg~0.24mg/kgであることが知られている。本開示によると、小児成長ホルモン欠乏症を有する患者のためのhGH融合タンパク質の好適な用量は、1週間に1回投与する場合0.4mg/kg~1.6mg/kg、および2週間に1回投与する場合0.8mg/kg~3.2mg/kgであることが見出だされた。加えて、小児患者へのhGH融合タンパク質(GX-H9)の単回または複数回投与は、深刻な有害事象を示さなかった。
【0100】
[158]したがって、GX-H9は、in vivo成長ホルモンまたは第1世代成長ホルモン製品と同等の効果を有し、同時に、半減期が増加し、したがって、患者服薬遵守の大幅な改善を示し、それはまた安全でもあることが見出だされた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
[160]本開示によると、hGH融合タンパク質GX-H9が、小児成長ホルモン欠乏症を有する小児患者の体重1kgあたり0.4~1.6mgの用量で1週間に1回投与された場合、または小児患者の体重1kgあたり0.8~3.2mgの用量で2週間に2回投与された場合、成長ホルモンは、in vivoにおいて長期持続し得、その結果、そのIGF-1 SDS値を、長期間にわたって正常範囲に維持することができ、したがって、成長ホルモン調合物を、毎日投与する必要性なしに1週間に1回または2週間に1回投与し、これによって成長ホルモン欠乏症を治療することができる。
【0102】
[161]本開示を、具体的な特徴に関して詳細に記載しているが、この記載は、好ましい態様についてのみであり、本開示の範囲を限定しないことは当業者には明らかである。したがって、本開示の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0103】
[162]配列表フリーテキスト
[163]電子ファイル添付。
【配列表】