(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】固体ルイス酸触媒成形体
(51)【国際特許分類】
B01J 27/18 20060101AFI20230818BHJP
C07D 307/48 20060101ALI20230818BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
B01J27/18 Z
C07D307/48
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019165744
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-07-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 先端的低炭素化技術開発「多機能不均一系触媒の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】原 亨和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲也
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043597(JP,A)
【文献】特開平02-284650(JP,A)
【文献】特開平02-302366(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108472(WO,A1)
【文献】特開2013-203665(JP,A)
【文献】特開2013-006142(JP,A)
【文献】国際公開第2019/112038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07B 61/00
C07D 307/00-307/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸化物にリン酸残基が共有結合してなる固体ルイス酸、および
バインダ
を含有
し、
バインダが、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、シリコーンおよびパーメチルシランからなる群から選ばれる少なくとも一つである、
固体ルイス酸触媒成形体。
【請求項2】
バインダの量が、固体ルイス酸100質量部に対して10~100質量部である、請求項
1に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
【請求項3】
チタン酸化物がアモルファス含水チタン酸化物である、請求項1または2に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
【請求項4】
チタン酸化物がチタン酸化物前駆体の加水分解生成物である、請求項1~
3のいずれかひとつに記載の固体ルイス酸触媒成形体。
【請求項5】
チタン酸化物前駆体が、チタン塩化物、チタン硫酸塩、およびチタンアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともひとつである、請求項
4に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかひとつに記載の固体ルイス酸触媒成形体の存在下に、溶媒中にて、糖質化合物を反応させることを含む、ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法。
【請求項7】
反応で得られた液を活性炭と接触させることをさらに含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ルイス酸触媒成形体、および糖質化合物からヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシメチルフルフラールはグルコースを原料として合成できる重要な化学品の中間物質であるが、その合成経路は非常に複雑である。原料であるグルコースは酸触媒の存在下で骨格異性化してフルクトースへと変換される。生成したフルクトースは酸触媒との脱水反応によりヒドロキシメチルフルフラールへと変化するが、ヒドロキシメチルフルフラールは反応系内の酸触媒によって更に逐次的に加水分解されて、有機酸(ギ酸、レブリン酸)になる。そのためにヒドロキシメチルフルフラールを高選択的に製造するための新規な触媒が望まれている。
【0003】
特許文献1は、アモルファス含水チタン酸化物を、リン酸で処理することにより、含水チタン酸化物の表面にリン酸残基が共有結合したリン酸化チタン酸化物が得られ、このリン酸化チタン酸化物が、固体ルイス酸触媒として優れた性能を発揮し得ることを開示している。
【0004】
特許文献2は、表面がリン酸処理された第13族元素酸化物からなる水中又は水溶液中におけるグルコースからフルクトースへのヒドリド異性化反応用固体触媒を開示している。さらに、特許文献2は、背景技術の欄において、グルコース水溶液から5-ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法においてリン酸/TiO2やリン酸/Nb2Oを触媒とする反応が知られている旨を教えている。
【0005】
非特許文献1は、酸化チタンをリン酸水溶液に加えて室温で48時間撹拌し、酸化チタンの表面水酸基にリン酸を固定してなる、リン酸固定酸化チタンを開示している。そして、リン酸固定酸化チタンが、水溶液内でトリオースからの乳酸合成、またはキシロースからのフルフラール合成に高い触媒活性を有していたと述べている。
【0006】
非特許文献2は、1,3-ジヒドロキシアセトンを乳酸へ変換する反応において、リン酸処理した酸化チタンは、水存在下で機能するルイス酸サイトによって、高い触媒活性を示したと述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2012/108472A1
【文献】WO2015/137339A1
【文献】特開2000-63110号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】中島ら「酸化チタンの水中ルイス酸特性」第42回石油・石油化学討論会(秋田)抄録 セッションID:1D03
【文献】中島ら「固体ルイス酸による水溶液内でのトリオ-スからの乳酸合成」第44回石油・石油化学討論会(旭川大会)抄録 セッションID:1D08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、固体ルイス酸触媒成形体、および糖質化合物からヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0011】
〔1〕 チタン酸化物にリン酸残基が共有結合してなる固体ルイス酸、およびバインダを含有する、固体ルイス酸触媒成形体。
【0012】
〔2〕 バインダが、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、シリコーン、シリカ、パーメチルシラン、およびカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも一つである、〔1〕に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
〔3〕 バインダの量が、固体ルイス酸100質量部に対して10~100質量部である、〔1〕または〔2〕に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
〔4〕 チタン酸化物がアモルファス含水チタン酸化物である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の固体ルイス酸触媒成形体。
〔5〕 チタン酸化物がチタン酸化物前駆体の加水分解生成物である、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の固体ルイス酸触媒成形体。
〔6〕 チタン酸化物前駆体が、チタン塩化物、チタン硫酸塩、およびチタンアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともひとつである、〔5〕に記載の固体ルイス酸触媒成形体。
【0013】
〔7〕 前記〔1〕~〔6〕のいずれかひとつに記載の固体ルイス酸触媒成形体の存在下に、溶媒中にて、糖質化合物を反応させることを含む、ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法。
〔8〕 反応で得られた液を活性炭と接触させることをさらに含む、〔7〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、十分な強度を有し、長時間の反応においても崩壊しない。本発明の固体ルイス酸触媒成形体を用いると、糖質化合物からヒドロキシメチルフルフラールを高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、固体ルイス酸およびバインダを含有するものである。
【0016】
本発明に用いられる固体ルイス酸は、チタン酸化物にリン酸残基が共有結合してなるものである。
【0017】
チタン酸化物は、アモルファス含水チタン酸化物であることが好ましい。チタン酸化物は、チタン酸化物前駆体の加水分解生成物であることができる。チタン酸化物前駆体としては、水酸化チタン、チタン酸、三塩化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタンのような無機チタン化合物; テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオ キシチタンのようなチタンアルコキシド化合物; チタンアシレート化合物; ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2-エチル 1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ヒドロキシビス (ラクタト)チタンのようなチタンキレート化合物;シュウ酸チタン、四酢酸チタンなどの有機チタン化合物;水溶性チタン錯体などを挙げることができる。本発明において、チタン酸化物は、チタン塩化物、チタン硫酸塩、またはチタンアルコキシドの加水分解生成物であることが好ましい。
【0018】
チタン酸化物、特にアモルファス含水チタン酸化物は、塩化チタン、硫酸チタンまたはチタンアルコキシドを、酸または塩基の存在下で、加水分解することによって得ることができる。チタンアルコキシド中のアルコキシ基は、それを構成する炭素原子の数が、好ましくは1~6、より好ましくは2~4である。アルコキシ基は直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。
加水分解反応において用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等を挙げることができる。加水分解反応において用いられる塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
加水分解反応時の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~30℃である。加水分解反応に要する時間は、反応温度や反応スケールなどに応じて適宜設定できるが、好ましくは0.5時間~48時間、より好ましくは10時間~24時間である。
【0019】
チタン酸化物が、含水であるか否かは、赤外分光光度計による表面測定や、真空下での加熱脱水処理による重量減少等により確認することができる。また、チタン酸化物が、アモルファスであるか否かは、X線回折により調べることができる。なお、本発明でいう「アモルファス」は、X線回折により確認できるアモルファス部分を含むことを意味し、チタン酸化物の全体がアモルファスであるもののみならず、一部がアモルファスであるものも包含する。なお、X線回折により確認されるアモルファスのパターンは、具体的には明確な結晶回折パターンが存在せず、ブロードな波浪パターンを指す。
【0020】
リン酸残基は、チタン酸化物をリン酸で処理することによって、チタン酸化物に共有結合させることができる。
リン酸処理は、チタン酸化物をリン酸水溶液に浸漬し、撹拌することにより行うことができる。この際の温度は、好ましくは10℃以上100℃未満、より好ましくは20℃以上30℃以下である。反応時間は、反応温度や反応スケール等に応じて適宜設定できるが、好ましくは1時間~96時間、より好ましくは24時間~72時間である。特許文献3に記載のように、酸化チタンとリン酸水溶液から成る混合物を密閉状態で100℃以上の温度に加熱すると、リン酸チタンが得られるようである。
【0021】
本発明に用いられる固体ルイス酸は、FT-IRスペクトルにおいて、P-O結合の伸縮振動に由来するシグナル(ピーク)が1000cm-1近傍に出現する。
なお、リン酸処理する前のチタン酸化物においては、1000cm-1近傍にピークは全く出現しない。1000cm-1近傍ピークは、チタン酸化物の骨格表面の水酸基(Ti-OH)にリン酸が共有結合していること、すなわち、Ti-O-PO(OH)2の化学構造が形成されていることを示す。
【0022】
本発明に用いられる固体ルイス酸は、金属元素がドープされていてもよいし、金属元素を含む化合物で被覆されていてもよい。金属元素としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ケイ素、亜鉛、セリウム、鉄、タングステン、モリブデン、ヴァナジウムなどを挙げることができる。
【0023】
本発明に用いられるバインダとしては、例えば、モルデナイト、シャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、フォージャサイト、レビン、ZSM-5、ゼオライトA、ゼオライトβ、FU-1、Rho、ZK-5、RUB-3、RUB-13、NU-3、NU-4、NU-5、NU-10、NU-13、NU-23、MCM-22などの結晶質アルミノシリケートモレキュラーシーブ;SAPO-5、SAPO-11、SAPO-17、SAPO -18、SAPO-26、SAPO-31、SAPO- 33、SAPO-34、SAPO-35、SAPO-4 2、SAPO-43、SAPO-44、SAPO-47、SAPO-56などの結晶質シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ;カオリナイト、セリサイト、タルク、雲母(白雲 母、金雲母、黒雲母、紅雲母、バナジン雲母、クロム雲母、フッ素雲母等)、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト、スメクタイトなどのの粘土化合物類;;シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア、ジルコニア、イットリア;ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、パーメチルシラン、カーボンブラックなどを挙げることができる。これらのうち、ポリテトラフルオロエチレン、酸化アルミニウム、シリコーン、シリカ、パーメチルシラン、およびカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも一つが好ましい。
【0024】
バインダの量は、触媒成形体を製造できる限り特に限定されないが、固体ルイス酸100質量部に対して、好ましくは10~100質量部、より好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは10~20質量部である。
【0025】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、その製法において特に限定されない。本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、例えば、バインダと固体ルイス酸とを、必要に応じて水とともに、混練し、成形し、乾燥し、必要に応じて焼成することによって得ることができる。混練は、加圧下に行うことが好ましい。混練は作業性の点からニーダー等の混練機を用いて連続的に行うのが好ましい。
【0026】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、要望に応じて、粉末、顆粒、ペレット、薄膜、ナノチューブなどの形状を有することができる。
混練物の成形は、所望の形状にすることができる方法であれば、特に限定されない。例えば、押出成形法、圧縮成形法(例えば、打錠成形法など)、圧延成形法、噴霧乾燥法などによって成形を行うことができる。
乾燥は水分の除去ができる限り、その条件は制限されないが、例えば、80℃~150℃の温度範囲で、1~10時間で行うことができる。
乾燥後、所望のサイズに揃えて、必要に応じて、焼成を行う。焼成温度、時間は固体ルイス酸触媒成形体の種類によって異なる。焼成は、例えば、400℃~700℃で1~10時間の条件で行いことができる。
【0027】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、テトラエトキシシランなどのバインダ前駆体と前述のチタン酸化物前駆体とリン酸またはそれの前駆体とを混ぜ合わせて液状またはスラリー状にし、これをキャスティング、スラッシュ成形、塗布などし、次いで加水分解させることによって、またはテトラエトキシシランなどのバインダ前駆体と前述のチタン酸化物前駆体とを混ぜ合わせて液状またはスラリー状にし、これをキャスティング、スラッシュ成形、塗布などし、次いで加水分解させ、これにリン酸処理を施すことによっても得ることができる。
【0028】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体は、水中においても失活しないので、水中における化学反応を触媒するために使用できる。本発明の固体ルイス酸触媒成形体によって触媒し得る化学反応としては、脱水反応、アリル化反応、アルドール縮合反応、マイケル付加反応、アルキル化反応、異性化反応、加水分解反応等を挙げることができる。
【0029】
好ましい化学反応の例として、糖類の骨格異性化とその後の脱水反応やアルデヒドのアリル化反応等を挙げることができる。具体例としては、グルコースなどの糖質化合物からヒドロキシメチルフルフラールを生成する反応や、アルデヒドとアリル金属、より具体的にはベンズアルデヒドとテトラアリル錫との反応等を挙げることができる。なお、ルイス酸として機能することは、-190℃において一酸化炭素(CO)分子が固体ルイス酸触媒成形体のルイス酸サイトに吸着するか否かを、IRを測定することによって確認できる。ルイス酸サイトに吸着した場合には2200~2165cm-1の領域にピークが出現する。
【0030】
本発明の固体ルイス酸触媒成形体を用いた反応は、バッチ式で行ってもよいし、フロー式で行ってもよいが、フロー式で行うことが好ましい。フロー式においては、フローマイクロ反応(マイクロリアクタ)を用いることが好ましい。本発明の固体ルイス酸触媒成形体の充填された流路に原料を流し込むことで化学反応を行う。フローマイクロ反応においてはフロー効果やマイクロミキシング効果によって反応収率の向上、反応条件の緩和、操作の簡便化などの効果が期待できる。
【0031】
本発明のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法は、固体ルイス酸触媒成形体の存在下に、溶媒中にて、糖質化合物を反応させることを含む。この反応において用いられる溶媒として水が好ましい。糖質化合物としては、グルコースなどを挙げることができる。反応時の温度は、好ましくは80℃~180℃、より好ましくは110℃~130℃である。反応に要する時間は、反応温度に応じて適宜選択されるが、好ましくは10分間~24時間、より好ましくは2時間~6時間である。反応に供される糖質化合物の量は、固体ルイス酸触媒成形体中の固体ルイス酸1質量部に対して、好ましくは0.0002~200質量部、より好ましくは0.025~2質量部である。
【0032】
本発明のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法においては、糖質化合物の加熱によってメイラード反応が進行しやすくなる。メイラード反応生成物が固体ルイス酸触媒成形体を被覆して活性を低下させることがある。ヒドロキシメチルフルフラールの収率を向上させるために、公知のメイラード反応抑制剤、メイラード反応生成物分解剤などを用いることができる。メイラード反応抑制剤としては、モノスルフィド化合物、カテキン類、トコフェノール類、トコフェロール類とアスコルビン酸とをリン酸エステルを介して結合させた化合物などを挙げることができる。メイラード反応生成物分解剤としては、リボフラビン誘導体、フラビンアデニンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、サンショウ軟エキス、ウコン抽出液、サフランチンキ、ハッカ軟エキス、ショウガ抽出液、ニンジン抽出液、ハス葉エキス、アカショウマエキス、コレウスフォルスコリエキス、黄杞葉エキス、ヒハツエキス、サンショウ花パウダー、ヒキオコシエキス、シークワーサーエキス、葛根エキス、プーアール茶エキス、甘草エキス、黒米エキス、月見草エキス、グァバ葉エキス、ビワ葉エキス、タマネギ外皮エキス、青花エキス、クワ葉エキス、タラの芽エキス、チョロギエキス、白インゲン豆エキス、羅布麻エキス、クマザサエキス、ニガウリエキス、キクイモエキス、大麦若葉エキス、褐藻類エキス、コンニャク芋エキス、コーヒー豆エキス、ブドウ種子エキス、リンゴエキス、オリーブ葉エキス、コンブエキス、アシタバパウダー、カテキン、キンカン軟エキス、枳実エキス、キンカンエキス、シトラスエキス、ユズパウダー、陳皮エキスなどを挙げることができる。
【0033】
本発明のヒドロキシメチルフルフラールの製造方法においては、前述の糖質化合物の反応で得られた液を活性炭と接触させることが好ましい。活性炭との接触によって副生成物を除去して、ヒドロキシメチルフルフラールの純度を高めることができる。
【0034】
次に、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、実施例によって限定されない。
【0035】
製造例
チタンテトライソプロポキシド20mlを蒸留水100mlに加え、室温下で3時間攪拌した。これから白色沈殿物をろ過によって取り出し、1.0M塩酸水溶液200mlに添加し、1時間攪拌して、酸化物骨格の縮合を促進させた。このろ過、添加および撹拌(縮合)をさらに2回(合計3回)繰り返した。得られた沈殿物を中性になるまで蒸留水で洗浄し、次いで80℃のオーブンで乾燥させて、アモルファス含水チタン酸化物を得た。
このアモルファス含水チタン酸化物をリン酸水溶液(0.1M)に添加し、室温下で48時間撹拌した。白色固形物を濾過によって取り出し、中性になるまで蒸留水で洗浄して、固体ルイス酸を得た。
【0036】
実施例1
固体ルイス酸1g(乾燥重量)にポリテトラフルオロエチレン0.3gを加え、混ぜ合わせた。これを加圧プレスしてシートを得た。このシートを粉砕した。粉砕物を目開き90μmの篩で分級し、篩上に、粉末状の固体ルイス酸触媒成形体1を得た。
【0037】
実施例2
固体ルイス酸1g(乾燥重量)にシリカゾル(スノーテックスC:日産化学社製)0.3gおよび蒸留水3mlを加え、超音波撹拌機で混ぜ合わせた。これを100℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥物をスパチュラで砕いた。これを目開き90μmの篩で分級し、篩上に、粉末状の固体ルイス酸触媒成形体2を得た。
【0038】
実施例3
固体ルイス酸1g(乾燥重量)に酸化アルミニウム0.15g、ポリジメチルシラン0.15gおよびヘキサン5mlを加え、超音波撹拌機で混ぜ合わせた。これを室温で一晩乾燥させた。得られた乾燥物をスパチュラで砕いた。これを目開き90μmの篩で分級し、篩上に、粉末状の固体ルイス酸触媒成形体3を得た。
【0039】
実施例4
シリコーン混和物(シロプレン RTV-2K 1406;バイエル社製)0.2gにヘキサン3mlを添加し、超音波撹拌機で混ぜ合わせた。これに固体ルイス酸1g(乾燥重量)およびシリコーン用硬化剤(シロプレン R-14;バイエル社製)20μlを添加し、超音波撹拌機で混ぜ合わせた。これを室温で一晩乾燥させた。得られた乾燥物をスパチュラで砕いた。これを目開き90μmの篩で分級し、篩上に、粉末状の固体ルイス酸触媒成形体4を得た。
【0040】
実施例5
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体1を0.757g充填した。温度120℃に設定されたカラムに500mMグルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Aとs-ブチルフェノールとをマイクロミキサー(βミキサー;MiChS社製)にて混ぜ合わせ、水層6.3mlおよび有機層7.7mlからなる液を得た。この液を分析した。
水層には、ヒドロキシメチルフルフラール15.3mM、グルコース157.7mM、フルクトース9.9mM、およびセロビオース0.9mMが含まれていた。
有機層には、ヒドロキシメチルフルフラール126.5mMが含まれていた。有機層からは、グルコース、フルクトース、およびセロビオースが検出されなかった。
グルコースからヒドロキシメチルフルフラールへの転換率は71.6%、選択率は42.8%であった。
【0041】
実施例6
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体2を1.077g充填した。温度110℃に設定されたカラムに595mMグルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Bとs-ブチルフェノールとをマイクロミキサー(βミキサー;MiChS社製)にて混ぜ合わせ、水層13.8mlおよび有機層13.8mlからなる液を得た。この液を分析した。
水層には、ヒドロキシメチルフルフラール13.2mM、グルコース237.2mM、フルクトース15.1mM、およびセロビオース1.3mMが含まれていた。
有機層には、ヒドロキシメチルフルフラール128.0mMが含まれていた。有機層からは、グルコース、フルクトース、およびセロビオースが検出されなかった。
グルコースからヒドロキシメチルフルフラールへの転換率は59.3%、選択率は40.9%であった。
【0042】
実施例7
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体2を0.855g充填した。温度110℃に設定されたカラムに525mMグルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Cを分析した。
水溶液Cには、ヒドロキシメチルフルフラール32.3mM、グルコース442.7mM、フルクトース24.7mM、およびセロビオース0.5mMが含まれていた。
【0043】
実施例8
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体3を0.809g充填した。温度110℃に設定されたカラムに10質量%グルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Dを分析した。
水溶液Dには、ヒドロキシメチルフルフラール76.5mM、グルコース386.5mM、フルクトース24.6mM、およびセロビオース0.9mMが含まれていた。
グルコースからヒドロキシメチルフルフラールへの転換率は30.4%、選択率は45.2%であった。
【0044】
実施例9
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体4を1.206g充填した。温度110℃に設定されたカラムに10質量%グルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Eを分析した。
水溶液Eには、ヒドロキシメチルフルフラール35.1mM、グルコース421.3mM、フルクトース11.3mM、およびセロビオース48.3mMが含まれていた。
【0045】
実施例10
4mmφ×5cmのステンレス製カラム(MiChS社製)に固体ルイス酸触媒成形体4を1.1898g充填した。温度110℃に設定されたカラムに575.6mMグルコース水溶液を40μl/分にて流した。カラムを通過して排出された水溶液Fを分析した。
水溶液Fには、ヒドロキシメチルフルフラール22.5mM、グルコース523.3mM、フルクトース7.1mM、およびセロビオース8.8mMが含まれていた。
10mmφのクロマト管に活性炭(富士フイルム和光社製、嵩比重0.182)1.8gを充填した。これに水溶液Fを50ml流した。次いで蒸留水20mlを流した。最後にメタノール20mlを流した。クロマト管を通過して排出されたのメタノールにはヒドロキシメチルフルフラール93%と、グルコース、フルクトースおよびセロビオースの合計7%とが含まれていた。
【0046】
比較例
試験管に固体ルイス酸0.25gと10質量%グルコース水溶液1mlとs-ブチルフェノール3mlを入れ、試験管を110℃で3時間撹拌させた。反応後、試験管からs-ブチルフェノール層3mlと水溶液層1mlを得た。この液を分析した。
水溶液層には、ヒドロキシメチルフルフラール4.64 mM、グルコース387.53mM、フルクトース18.34mM、およびセロビオース2.13mMが含まれていた。
s-ブチルフェノール層には、ヒドロキシメチルフルフラール24.27mMが含まれていた。有機層からは、グルコース、フルクトース、およびセロビオースが検出されなかった。
グルコースからヒドロキシメチルフルフラールへの転換率は23.7%であった。