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<図1>
  • -輸送システム 図1
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  • -輸送システム 図3
  • -輸送システム 図4
  • -輸送システム 図5
  • -輸送システム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】輸送システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 9/00 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B61B9/00 D
B61B9/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022568574
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2021039136
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390002196
【氏名又は名称】泉陽興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 三郎
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151273(JP,A)
【文献】特開2001-260872(JP,A)
【文献】実開昭57-111717(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194371(US,A1)
【文献】国際公開第2019/037691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の軌道と、
前記軌道に沿って延びる駆動用レールと、
前記軌道を走行する複数の車両と、
前記軌道の全長にわたって位置し、前記複数の車両のそれぞれに連結された環状の牽引部材と、を備え、
前記複数の車両は、
前記駆動用レールを挟むことが可能な複数の駆動輪を有する動力車と、前記駆動輪を有さない付随車と、を含み、
前記付随車は、前記動力車に引かれて移動する前記牽引部材に牽引されて、前記軌道を走行する、
ことを特徴とする輸送システム。
【請求項2】
前記軌道は、
上り勾配を有する第一区間と、
下り勾配を有する第二区間と、を含み、
前記複数の車両は、前記第一区間を走行する少なくとも1つの車両と、前記第二区間を走行する少なくとも1つの車両とを含み、
前記第一区間を走行する少なくとも1つの前記車両と、前記第二区間を走行する少なくとも1つの前記車両とは、前記牽引部材を介してつるべ式に釣り合う、
ことを特徴とする請求項1に記載の輸送システム。
【請求項3】
前記軌道の全長にわたって位置し、前記牽引部材を収容して、前記牽引部材の移動をガイドするガイドケースを更に備え、
前記牽引部材は、互いにつながった複数の環状部材を有するリンクチェーンである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の輸送システム。
【請求項4】
前記軌道は、平面視と立面視の両方において湾曲した複合曲線部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の輸送システム。
【請求項5】
前記付随車は、座席を有し、
前記動力車は、前記座席を有さない、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸送システムに関し、詳しくは、軌道に沿って走行する車両を備えた輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人員輸送装置が開示されている。この人員輸送装置では、軌道が車両加速ゾーンと車両自走ゾーンとを有している。車両加速ゾーンは、上り勾配と下り勾配とを有する山形状である。車両加速ゾーンでは、上り勾配において引揚装置によって引き揚げられた車両が下り勾配において加速する。車両自走ゾーンは、略水平状である。車両自走ゾーンでは、主として車両が無駆動にて自走する。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の人員輸送装置では、軌道のうち、引揚装置の設置箇所は、山形状に設ける必要があり、そのため、地形に合わせて自由自在に軌道を配置することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報2002-29414号
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、地形に合わせて自由自在に軌道を配置しやすい輸送システムを提案することである。
【0006】
本開示に係る一態様の輸送システムは、環状の軌道と、前記軌道に沿って延びる駆動用レールと、前記軌道を走行する複数の車両と、前記軌道の全長にわたって位置し、前記複数の車両のそれぞれに連結された環状の牽引部材と、を備える。前記複数の車両は、前記駆動用レールを挟むことが可能な複数の駆動輪を有する動力車と、前記駆動輪を有さない付随車と、を含む。前記付随車は、前記動力車に引かれて移動する前記牽引部材に牽引されて、前記軌道を走行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示に係る一実施形態の輸送システムの要部を概略的に示す側面図である。
図2図2は、同上の輸送システムの要部を概略的に示す平面図である。
図3図3Aは、同上の輸送システムの一例を概略的に示す平面図であり、図3Bは、同上の輸送システムの一例を概略的に示す側面図である。
図4図4は、同上の輸送システムが備える動力車の一例を示す正面図である。
図5図5は、同上の動力車を示す平面図である。
図6図6Aは、同上の動力車の一部を示す側面図であり、図6Bは、同上の動力車の他の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(一実施形態)
1.概要
図1図2図3A図3B、及び図4には、一実施形態の輸送システム1が示されている。輸送システム1は、環状の軌道2と、軌道2に沿って延びる駆動用レール22と、軌道2を走行する複数の車両3と、軌道2の全長にわたって位置し、複数の車両3のそれぞれに連結された環状の牽引部材4と、を備える。複数の車両3は、駆動用レール22を挟むことが可能な複数の駆動輪30を有する動力車3aと、駆動輪30を有さない付随車3bと、を含む。付随車3bは、動力車3aに引かれて移動する牽引部材4に牽引されて、軌道2を走行する。
【0009】
上記構成を備える輸送システム1では、動力車3aは複数の駆動輪30で駆動用レール22を挟むことで走行することができ、付随車3bは動力車3aに引かれて移動する牽引部材4によって牽引して走行させることができる。したがって、この輸送システム1では、軌道2の一部を引揚装置の設置のために山形状に設ける必要がなくて、軌道2を地形に合わせて自由自在に配置しやすい。
【0010】
2.詳細
続いて、一実施形態の輸送システム1について更に詳しく説明する。輸送システム1は、軌道2に沿って走行する複数の車両3により人を輸送する交通システムである。なお、輸送システム1は、交通システムに限定されず、例えば、複数の車両3により物を搬送する運送システムであってもよい。以下では、複数の車両3の進行方向を前方、複数の車両3の進行方向と逆方向を後方、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
【0011】
本実施形態の輸送システム1は、軌道2、駆動用レール22、複数の車両3、及び牽引部材4に加えて、ガイドケース5を備える。ガイドケース5は、軌道2の全長にわたって位置し、牽引部材4を収容して、牽引部材4の移動をガイドする。
【0012】
2-1.軌道
図3A及び図3Bに示すように、軌道2は、環状路である。複数の車両3は、環状の軌道2を一方向に走行して循環可能である。軌道2は、上り勾配を有する第一区間2aと、下り勾配を有する第二区間2bと、を含む。軌道2の周方向の一部に沿うように、利用者が付随車3bに乗り降りする駅(図示せず)が設けられる。
【0013】
本実施形態では、軌道2のうち、進行方向において上り勾配の区間2cと、区間2cを挟むように位置する2つの水平な区間2dとが、第一区間2aであり、軌道2のうち、進行方向において下り勾配の区間が、第二区間2bである。軌道2は、1つの第一区間2aと1つの第二区間2bとを有する。軌道2のうち、第一区間2aを除いた残りの区間の全体が、第二区間2bである。区間2cは、全長にわたって上り勾配であり、第二区間2bは、全長にわたって下り勾配であり、区間2dは、全長にわたって水平である。
【0014】
図4に示すように、軌道2は、車両3を案内する左右一対のレール20を有している。左右一対のレール20は、左右方向(水平で、かつ、車両3の進行方向と直交する方向)に間隔をあけて位置している。左右一対のレール20は平行である。
【0015】
車両3は、左右一対のレール20に沿って走行する。すなわち、車両3の進行方向は、各レール20の延びる方向である。各レール20は、軌道2の長さ方向の全長にわたっている。
【0016】
各レール20は、円筒状の鋼管である。各レール20は、レール20の長さ方向と直交する断面の外形状が円形である。なお、各レール20の形状は、円筒状に限定されない。例えば、各レール20は、レール20の長さ方向と直交する断面の外形状が、楕円形状又は矩形状等であってもよい。また、各レール20は、鋼以外の金属から形成されてもよい。
【0017】
軌道2は、左右一対のレール20を支持する支持部材21を更に有している。支持部材21は、金属製である。支持部材21は、車両3の進行方向に延びた主桁210と、主桁210の長さ方向に間隔をあけて並んだ複数の連結部材211とを有している。主桁210は、左右一対のレール20よりも下方に位置している。主桁210は、例えば、円筒状の鋼管である。主桁210は、例えば、支柱等を介して地面に固定される。
【0018】
各連結部材211は、主桁210と左右一対のレール20とを接続している。連結部材211の下端部は、主桁210に接続されている。連結部材211は、主桁210から二股に分岐して上方に突出した左右一対のアーム部212を有している。左右一対のアーム部212と左右一対のレール20とは、それぞれ一対一で対応している。各アーム部212の上端部は、対応するレール20に接続されている。
【0019】
駆動用レール22は、軌道2に沿って延びている。本実施形態では、駆動用レール22は、主桁210又は複数の連結部材211から上方に向かって突出した板状の部材であり、主桁210に沿って車両3の進行方向に延びている。駆動用レール22の長さ方向は、レール20の長さ方向と平行である。本実施形態では、駆動用レール22は、軌道2の全長にわたって位置する。駆動用レール22は、全長にわたって幅(左右方向の長さ)が一定である。
【0020】
軌道2は、駆動用レール22の上端に設けられた支持部23を更に有する。支持部23は、駆動用レール22の上端と一体の板状の部材である。駆動用レール22と支持部23とは、T字状につながっている。駆動用レール22の上端には、駆動用レール22の全長にわたって、板状の支持部23が設けられている。支持部23は、軌道2の全長にわたって位置する。支持部23の上に、ガイドケース5が設けられる。
【0021】
軌道2は、動力車3aに電力を供給する給電部25を更に有している。給電部25は、例えば、トロリー線である。給電部25は、外部の商用電源に接続されている。給電部25は、本実施形態では、駆動用レール22の下部に取り付けられている。給電部25は、駆動用レール22の全長にわたって設けられている。なお、給電部25は、駆動用レール22に限らず、主桁210又は連結部材211に設けられてもよい。
【0022】
2-2.車両
図1図2図3A及び図3Bに示すように、輸送システム1は、複数の車両3を備えている。本実施形態では、複数の車両3は、進行方向に略等間隔に位置する。輸送システム1が備える車両3の数は、軌道2の長さ、及び進行方向に隣接する車両3間の間隔等に応じて、適宜設定される。
【0023】
複数の車両3は、複数の動力車3aと、複数の付随車3bとを有している。動力車3aは、自走可能な車両である。動力車3aは、自走するための複数の駆動輪30と複数の原動機31(図4図5図6A参照)を有している。付随車3bは、自走するための駆動輪、原動機等の機構を有さず、動力車3aに牽引部材4を介して連結されて、動力車3aの動力によって走行可能な車両である。本実施形態では、1つの動力車3aとその後に並んだ5つの付随車3bとのセットが、進行方向に複数セット並んでいる。
【0024】
図4図5図6A及び図6Bに示すように、動力車3aは、ベース32、左右一対の案内輪ユニット33、複数の駆動輪ユニット34、連結部35、及び受電部(図示せず)を有する。左右一対の案内輪ユニット33、複数の駆動輪ユニット34、連結部35、及び受電部は、ベース32に取り付けられている。
【0025】
ベース32は、左右方向に延びる第一取付フレーム320と、第一取付フレーム320の左右方向の中央部と一体であり、前後方向に延びる第二取付フレーム321と、を有する。取付フレーム320,321は、例えば、鋼製である。なお、取付フレーム320,321は、鋼以外の金属から形成されてもよい。
【0026】
第一取付フレーム320の左右の端部に、左右一対の案内輪ユニット33が固定されて取り付けられている。左右一対の案内輪ユニット33は、左右方向において間隔をおいて位置し、前後方向において同位置に配され、かつ、同じ高さに位置している。
【0027】
左右一対の案内輪ユニット33と、軌道2の左右一対のレール20とは、それぞれ、一対一で対応している。各案内輪ユニット33は、対応するレール20に沿って走行する。動力車3aは、左右一対の案内輪ユニット33が左右一対のレール20に沿った状態で走行する。
【0028】
左右一対の案内輪ユニット33のそれぞれは、複数の案内輪330~332を有する。動力車3aは、複数の案内輪330~332によって上下方向及び左右方向の移動が規制される。
【0029】
各案内輪ユニット33は、複数の案内輪330~332として、前後一対の上案内輪330と、前後一対の下案内輪331と、前後一対の横案内輪332との計6輪の案内輪を有している。
【0030】
案内輪330~332のそれぞれは、ウレタン等の弾性を有する材料から形成されている。なお、各案内輪330~332は、ウレタン以外の合成樹脂から形成されてもよいし、合成樹脂以外の材料から形成されてもよい。
【0031】
なお、軌道2が全長にわたって略水平な場合には、前後一対の上案内輪330は、金属製であることが好ましい。この場合、上案内輪330をウレタン等の弾性を有する材料で形成する場合に比べて、上案内輪330とレール20との間で生じる走行抵抗を小さくすることができる。
【0032】
前後一対の上案内輪330は、前後方向に間隔をあけて並んでいる。各上案内輪330は、上下方向及び前後方向に対して交差する方向と平行な回転軸を中心に回転可能である。各上案内輪330は、対応するレール20の上方に位置する。各上案内輪330は、対応するレール20に上方から接し、対応するレール20によって下方から支持される。
【0033】
各上案内輪330は、動力車3aに加わる下向きの荷重をレール20に伝える。上案内輪330の強度を高めるため、上案内輪330の直径は、下案内輪331の直径よりも大きく、かつ、横案内輪332の直径よりも大きい。
【0034】
前後一対の下案内輪331は、前後方向に間隔をあけて並んでいる。各下案内輪331は、上下方向及び前後方向に対して交差する方向と平行な回転軸を中心に回転可能である。各下案内輪331は、対応するレール20の下方に位置する。前側の下案内輪331の回転軸は、前側の上案内輪330の回転軸と前後方向の位置が同じであり、後側の下案内輪331の回転軸は、後側の上案内輪330の回転軸と前後方向の位置が同じである。各下案内輪331は、対応するレール20に下方から接する。これにより、動力車3aの上方への移動が規制される。
【0035】
前後一対の横案内輪332は、前後方向に間隔をあけて並んでいる。各横案内輪332は、前後方向及び左右方向に対して交差する方向と平行な回転軸を中心に回転可能である。各横案内輪332は、対応するレール20の側方に位置し、対応するレール20に側方から接する。前側の横案内輪332の回転軸は、前側の上案内輪330の回転軸と前後方向の位置が同じであり、後側の横案内輪332の回転軸は、後側の上案内輪330の回転軸と前後方向の位置が同じである。
【0036】
左側の案内輪ユニット33の各横案内輪332は、対応するレール20の左側方に位置し、対応するレール20に左側方から接する。右側の案内輪ユニット33の各横案内輪332は、対応するレール20の右側方に位置し、対応するレール20に右側方から接する。すなわち、左右一対の横案内輪332の間に左右一対のレール20が位置している。
【0037】
動力車3aは、左右一対の案内輪ユニット33を有し、各案内輪ユニット33は、対応するレール20に対して、上方、側方及び下方の三方からそれぞれ接触する複数の案内輪330~332を有している。このため、左右一対の案内輪ユニット33により、動力車3aが上下方向及び左右方向に移動することを規制することができ、安全性を高めることができる。また、動力車3aに加わるねじれ荷重を左右一対のレール20で分散して受けることができ、動力車3aが変形することを抑制することができる。
【0038】
なお、各横案内輪332は、対応するレール20に対して左右方向の内側に配置されてもよい。つまり、左の案内輪ユニット33の各横案内輪332が、対応するレール20の右側方に位置し、かつ、右の案内輪ユニット33の各横案内輪332が、対応するレール20の左側方に位置してもよい。
【0039】
各案内輪ユニット33が有する案内輪330~332の位置、向き、及び数等は、上述した位置、向き、及び数に限定されない。例えば、下案内輪331は、レール20の下斜め側方に位置してもよい。
【0040】
動力車3aは、複数の駆動輪ユニット34として、前後2つの駆動輪ユニット34を有している。前後2つの駆動輪ユニット34のそれぞれは、左右一対の駆動輪30と、対応する駆動輪30を駆動する左右一対の原動機31と、駆動輪30と原動機31とを支持する左右一対の支持ケース340と、を有する。
【0041】
前側の駆動輪ユニット34は、第二取付フレーム321の前端部に回転可能に取り付けられ、後側の駆動輪ユニット34は、第二取付フレーム321の後端部に回転可能に取り付けられている。前側の駆動輪ユニット34と後側の駆動輪ユニット34との間には、第一取付フレーム320が位置する。
【0042】
前後2つの駆動輪ユニット34は、左右一対の案内輪ユニット33の間に位置している。具体的に、各駆動輪ユニット34の左右一対の駆動輪30は、左右一対の横案内輪332の間に位置している。
【0043】
各駆動輪ユニット34の左右一対の駆動輪30のそれぞれは、前後方向及び左右方向に対して交差する方向と平行な回転軸を中心に回転可能である。駆動輪30は、例えば、中実のノーパンクタイヤを含む。前側の2つの駆動輪30の回転軸は、前側の横案内輪332の回転軸よりも前側に位置し、後側の2つの駆動輪30の回転軸は、後側の横案内輪332の回転軸よりも後側に位置する。
【0044】
左右一対の支持ケース340のそれぞれは、筒状である。各支持ケース340の上端に原動機31が固定され、各支持ケース340の内側に駆動輪30の回転軸が回転可能に支持されている。各支持ケース340の内部には、駆動輪30の回転軸を回転自在に支持する軸受けが設けられている。駆動輪30の回転軸と原動機31の回転軸とは、支持ケース340内において接続されている。左右一対の支持ケース340が、第二取付フレーム321に対して、前後方向に対して平行な回転軸を中心に、回転可能に取り付けられている。
【0045】
各駆動輪30の上方に原動機31が位置する。各原動機31は、電動機であり、詳しくは、ギヤードモーターである。各原動機31には、逆転防止機能を有さない減速機が搭載されている。各原動機31は、対応する駆動輪30を回転駆動する。各原動機31は、例えば、動力車3aが備える制御装置によって制御される。制御装置は、地上の管理施設に設置された管理装置から制御信号を受けて、各原動機31を制御する。各原動機31は、ベース32に設けられた受電部(図示せず)から得た電力によって駆動する。
【0046】
各原動機31は、ブレーキ機能を有する。各原動機31は、例えば、電磁ブレーキ付きモーターである。左右2つの駆動輪30が駆動用レール22を挟んだ状態で、各原動機31の回転数を制御することにより、動力車3aの速度を制御することができる。また、複数の駆動輪30が駆動用レール22を挟んだ状態で、各原動機31にブレーキをかけることで、動力車3aを停止させることができる。なお、動力車3aには、原動機31とは別にブレーキ装置を設けてもよく、この場合、各原動機31はブレーキ機能を有さなくてもよい。
【0047】
前後2つの駆動輪ユニット34のそれぞれは、上下方向に延びた左右一対の支持アーム36と、左右一対の支持アーム36の上端部をつなぐ調整部37と、を更に有する。
【0048】
左右一対の支持アーム36のそれぞれの下端部は、左右一対の支持ケース340に固定されている。左右一対の支持アーム36の上端部には、調整部37が接続されている。
【0049】
調整部37は、左右一対の支持アーム36の上端部の間隔を調整可能な部分である。調整部37を調整することで、左右の支持ケース340を回転させて左右の駆動輪30の間の間隔を調整することができる。これにより、左右一対の駆動輪30によって駆動用レール22を挟み込む力を調整することができる。
【0050】
本実施形態では、調整部37は、動力車3aが軌道2の第一区間2aと第二区間2bのいずれを走行する際にも、左右一対の駆動輪30が駆動用レール22を挟み込むように、調整されている。
【0051】
なお、調整部37は、エアシリンダー、油圧シリンダー等からなるアクチュエーターで構成されてもよい。この場合、動力車3aが有する制御装置によって調整部37を制御することによって左右の駆動輪30の間隔を調整して、左右の駆動輪30を駆動用レール22に選択的に当ててもよい。また、前後2つの駆動輪ユニット34は、動力車3aの左右一対の駆動輪30が駆動用レール22を常時挟み込むように、第二取付フレーム321に回転不可に固定されてもよく、この場合、支持アーム36及び調整部37は省略可能である。
【0052】
図5図6Aに示すように、連結部35は、第一取付フレーム320と第二取付フレーム321とが交差する部分に設けられている。連結部35は、牽引部材4の長手方向の一部に連結されている。
【0053】
受電部は、ベース32の一部に設けられている。受電部は、例えば、集電子である。受電部には、給電部25から電力が供給される。動力車3aは、受電部が軌道2の給電部25に接触することで、軌道2から電力が供給される。なお、動力車3aは、給電部25から供給された電力を蓄える蓄電池を更に有してもよい。
【0054】
動力車3aは、客を乗せるための座席を有しておらず、付随車3bに比べて軽量である。
【0055】
付随車3bは、図1に示すように、前後2組の左右一対の案内輪ユニット33bと、乗客を乗せるための車体38と、を備える。付随車3bは、動力車3aの駆動輪ユニット34に相当する機構を有しておらず、自ら推進力を生じさせて走行することはできない。付随車3bは、走行する動力車3aによって引かれた牽引部材4によって牽引されることで、走行する。
【0056】
左右一対の案内輪ユニット33bは、左右方向に延びた取付フレーム(図示せず)の両端部に取り付けられている。取付フレームの左右方向の中央部には、牽引部材4の長手方向の一部に連結される連結部(図示せず)が設けられている。前後の取付フレームの上に車体38が取り付けられている。
【0057】
案内輪ユニット33bは、動力車3aの案内輪ユニット33と構造が略同じである。案内輪ユニット33bは、前後一対の上案内輪330と、1つの下案内輪331と、前後一対の横案内輪332との計5輪の案内輪を有している。
【0058】
車体38は、底板380と、底板380の前部の上に設置された前側ボディ381と、底板380の後部の上に設置された後側ボディ382と、後側ボディ382によって支持された座席383と、前側ボディ381の上に設置された手すり384と、を有する。前側ボディ381と後側ボディ382とは前後方向に離れて位置する。前側ボディ381と後側ボディ382との間の空間が、車体38の出入口である。
【0059】
座席383は、利用者が2名又は3名左右方向に並んで座ることが可能な大きさに設けられている。座席383の前方に、手すり384が位置する。利用者は、手すり384を掴みながら、座席383に座ることが可能である。
【0060】
2-3.ガイドケース
ガイドケース5は、軌道2の全長にわたって位置し、牽引部材4を収容して、牽引部材4の移動をガイドする箱体である。図4に示すように、ガイドケース5は、上方に開口している。ガイドケース5は、例えば、金属製である。ガイドケース5は、軌道2に沿っている。
【0061】
ガイドケース5は、底壁50と、底壁50の左右の端部から上方に突出した左右一対の側壁51と、左右一対の側壁51の上端に取り付けられ、ガイドケース5の上端開口の一部を塞ぐ蓋52と、を有する。ガイドケース5は更に、底壁50の上面と、左右一対の側壁51のうちの少なくとも一方の左右方向内側の面と、蓋52の下面とにそれぞれ取り付けられた複数のスライド部材を有する。
【0062】
底壁50は、本実施形態では、軌道2の長手方向に沿って延びる帯板状である。底壁50は、軌道2の支持部23に、ボルト・ナット等の固定具によって固定されている。左右一対の側壁51は、左右方向に間隔をおいて位置する。左右一対の側壁51のそれぞれは、軌道2の長手方向に沿って延びる帯板状である。左右一対の側壁51は、互いに平行である。底壁50と左右一対の側壁51のそれぞれは、軌道2の長手方向の全長にわたっている。
【0063】
側壁51の上端部に蓋52がボルト・ナット等の固定具で固定されている。蓋52は、本実施形態では、板状である。蓋52は、左右一対の側壁51のうちいずれか一方に取り付けられて、左右一対の側壁51間の上端開口を狭める。蓋52は、ガイドケース5内からの牽引部材4の抜け出しを防ぐ。これにより、ガイドケース5は、牽引部材4を抜け出し不可に収容する。
【0064】
複数のスライド部材のそれぞれは、底壁50、側壁51、及び蓋52よりも摩擦係数の低い材料で形成されており、例えば、樹脂製であり、高密度ポリエチレン等で形成される。複数のスライド部材のそれぞれは、帯板状である。各スライド部材は、底壁50、側壁51、及び蓋52のそれぞれに対して、例えば、ビス等の固定具によって取り付けられている。
【0065】
ガイドケース5は、軌道2の支持部23によって支持されて、左右方向において、左右一対のレール20の間に位置する。ガイドケース5は、左右一対のレール20をつなぐ仮想直線よりも上方に位置している。
【0066】
2-4.牽引部材
牽引部材4は、図6Aに示すように、互いにつながった複数の環状部材40を有するリンクチェーン41である。本実施形態では、リンクチェーン41は、輪状のチェーンであり、言い換えると、無端のチェーンである。
【0067】
本実施形態では、リンクチェーン41は、複数の環状部材40に加えて、動力車3aの連結部35又は付随車3bの連結部が連結される複数の被連結部材42を有する。
【0068】
複数の環状部材40のそれぞれは、長円状である。複数の被連結部材42のそれぞれは、周方向の一部が破断した長円状の部分と、この部分の周方向の両端から互いに平行に延びた2つの被連結部分と、を有する。この2つの被連結部分が、ボルト・ナット等の固定具で、動力車3aの連結部35又は付随車3bの連結部に連結される。
【0069】
被連結部材42は、リンクチェーン41のうち、動力車3aの連結部35又は付随車3bの連結部に対応する箇所に位置するように、複数の環状部材40とつながっている。
【0070】
2-5.その他
本実施形態の輸送システム1は、図1に示すように、複数の車両3のうち、進行方向に隣接する2つの車両3同士をつなぐ索部材6と、リンクチェーン41の一部に取り付けられ、索部材6を支持する複数の索支持部材7と、を備える。
【0071】
索部材6は、例えば、可撓性を有するワイヤーである。索部材6は、長手方向の一端が、前側の車両3に接続され、長手方向の他端が、後側の車両3に接続される。進行方向に隣接する2つの車両3の間においては、索部材6は索支持部材7によって支持される。
【0072】
索支持部材7は、例えば、上下2つの分割体と、これらを結合するボルト・ナット等の固定具で構成され、リンクチェーン41の長手方向の一部の環状部材40に取り付けられる。索支持部材7は、リンクチェーン41よりも上方に位置する索支持部を有する。
【0073】
2-6.輸送システムの動作
以上説明した本実施形態の輸送システム1では、第一区間2aに位置する複数の動力車3aのそれぞれは、前後2つの駆動輪ユニット34の4つの原動機31が駆動して、4つの駆動輪30が駆動用レール22を挟んだ状態で回転する。これにより、第一区間2aに位置する複数の動力車3aが走行する。
【0074】
第一区間2aに位置する複数の付随車3bは、第一区間2aに位置する複数の動力車3aによって引かれた牽引部材4によって牽引されることで、走行する。
【0075】
また、第二区間2bに位置する複数の動力車3aのそれぞれは、前後2つの駆動輪ユニット34の4つの原動機31が駆動して、4つの駆動輪30が駆動用レール22を挟んだ状態で回転する。これにより、第二区間2bに位置する複数の動力車3aが走行する。
【0076】
第二区間2bに位置する複数の付随車3bは、第二区間2bに位置する複数の動力車3aによって引かれた牽引部材4によって牽引されることで、走行する。
【0077】
第二区間2bに位置する複数の車両3は、各車両3の重量及び各車両3の乗客の重量等によって得られる推進力によっても走行する。なお、第二区間2bに位置する複数の動力車3aは、設定速度で走行するように制御してもよい。
【0078】
また、本実施形態の輸送システム1では、第一区間2a及び第二区間2bに位置する各動力車3aの駆動輪30の回転を停止することで、複数の車両3の全てを停止することができる。停電時、非常停止時に電源供給が停止した場合には、各動力車3aの原動機31の電磁ブレーキが作動し、これにより、複数の車両3の全てをその場に停止させることができる。
【0079】
付随車3bに乗車する利用者は、軌道2の長手方向の一部に沿うように配置された駅(図示せず)において、乗り降り可能である。
【0080】
2-7.作用効果
以上説明した本実施形態の輸送システム1では、複数の車両3が牽引部材4を介して連結されており、複数の動力車3aの推進力によって、複数の車両3の全てを走行させることができる。
【0081】
ここで、本実施形態の輸送システム1では、牽引部材4として変形自在なリンクチェーン41を用いており、軌道2にリンクチェーン41を収容してガイドするガイドケース5を設けている。そのため、本実施形態の輸送システム1では、牽引される付随車3bの牽引方向と進行方向とを一致させやすくて、牽引される付随車3bを円滑に走行させやすい。
【0082】
したがって、本実施形態の輸送システム1では、軌道2の一部を引揚装置の設置のために山形に設ける必要がなくて、地形等に合わせて軌道2を自由自在に配置しやすい。そのうえ、本実施形態の輸送システム1では、軌道2が平面視と立面視の両方において湾曲した複合曲線部を含む場合でも、軌道2に沿って複数の車両3を走行させやすい。
【0083】
また、本実施形態の輸送システム1では、下り勾配を有する第二区間2bに位置する複数の車両3と、上り勾配を有する第一区間2aに位置する複数の車両3とが、牽引部材4を介してつるべ式に釣り合う。そのため、本実施形態の輸送システム1では、複数の車両3の全てを走行させるために必要な推進力を抑えることができて、各動力車3aに積載する原動機31の小型化を図れ、その結果、輸送システム1全体の省エネ化を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態の輸送システム1では、複数の動力車3aが有する原動機31によって、複数の車両3の全てを走行させることができる。そのため、本実施形態の輸送システム1では、軌道2の一部に、牽引部材4の長手方向の一部に噛み合って牽引部材4を移動させるための駆動装置を設置する必要が無い。
【0085】
ここで、軌道2の一部(例えば傾斜地の走路では頂上部分)に設けた駆動装置によって牽引部材4を移動させる場合、牽引部材4の逆方向への移動を防ぐために駆動装置には逆転防止ウォーム減速機が必要となる。この場合、第一区間2aに位置する複数の車両3及び各車両3の乗客の重量は、逆転防止ウォーム減速機によって支えられ、第二区間2bに位置する複数の車両3及び各車両3の乗客の重量は、逆転防止ウォーム減速機によって支えられる。つまり、この場合、第一区間2aに位置する複数の車両3と第二区間2bに位置する複数の車両3とがつるべ式で釣り合うことができなくなり、複数の車両3の全てを走行させるために必要な駆動力が大きくなって、駆動装置の大型化等の問題が生じる。
【0086】
しかし、本実施形態の輸送システム1では、軌道2の一部に逆転防止ウォーム減速機付きの駆動装置を設置する必要がなく、第一区間2aに位置する複数の車両3と第二区間2bに位置する複数の車両3とがつるべ式で釣り合う。そのため、本実施形態の輸送システム1では、上記問題を回避できて、輸送システム1全体の省エネ化を図ることができる。
【0087】
また、本実施形態の輸送システム1では、各動力車3aの原動機31には、逆転防止機能を有さない減速機が搭載されており、そのため、原動機31の小型化が図れて、省エネ化が図れる。このように本実施形態の輸送システム1では、省エネ化を図れるため、低炭素社会(脱炭素社会)に適応した輸送システムとなっている。
【0088】
また、本実施形態の輸送システム1では、走行方向に隣接する車両3同士をつなぐ索部材6と、リンクチェーン41の一部に取り付けられた複数の索支持部材7と、を備え、索部材6が複数の索支持部材7によって軌道2に沿って支持されている。そのため、本実施形態の輸送システム1では、もしリンクチェーン41の長手方向の一部が破断した場合でも、索部材6によって隣接する車両3同士がつながっているため、各車両3の自重による移動を抑制することができる。また、本実施形態の輸送システム1では、索部材6は、リンクチェーン41に取り付けられた複数の索支持部材7によって支持することができるため、リンクチェーン41を利用して索部材6を軌道2に沿わせて支持することができる。
【0089】
また、本実施形態の輸送システム1では、軌道2を一方向に走行する複数の付随車3bが、軌道2の長手方向の一部に沿う駅に、1台ずつ連続的に通過するため、人や物の輸送能力が非常に高い。
【0090】
3.変形例
続いて、上述した一実施形態の輸送システム1の変形例について説明する。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0091】
軌道2は、上り勾配を有する第一区間2aと、下り勾配を有する第二区間2bとを含むものに限らず、軌道2の全長にわたって水平であってもよい。
【0092】
また、軌道2は、図3A及び図3Bに示す構造に限らず、平面視と立面視の両方において湾曲した複合曲線部を含んでもよい。また、軌道2は、平面視においてのみまたは立面視においてのみ湾曲した曲線部を含んでもよい。
【0093】
また、軌道2は、軌道2の長手方向の一部(例えば水平な部分)に、軌道2の長手方向に伸縮可能なチェーン緊張機構を有してもよい。この場合、リンクチェーン41が経年劣化等で延びることがあっても、チェーン緊張機構によってリンクチェーン41に張力を与えることができて、リンクチェーン41に連結された複数の車両3を滑らかに走行させることができる。またこの場合、輸送システム1は、リンクチェーン41の交換等の大規模改修が不要であり、ライフサイクルコストを低減した低炭素社会により適したシステムとすることができる。
【0094】
輸送システム1は、ガイドケース5に取り付けられるスライド部材を有さなくてもよく、リンクチェーン41の長手方向の一部に取り付けられる複数のスライド部材を有してもよい。複数のスライド部材のそれぞれは、例えば、環状部材40に取り付けられる2つの矩形のブロック状の分割体と、2つの分割体を結合するボルトとナット等の固定具と、を有する。
【0095】
動力車3aは、付随車3bと同様に、座席383を有してもよく、利用者が乗り降りする客車として利用してもよい。
【0096】
付随車3bが備える車体38は、図1に示す構造に限定されない。例えば、車体38は、前後2列の座席383を有してもよいし、座席383を囲む箱型のボディを有してもよい。
【0097】
前後2つの駆動輪ユニット34のそれぞれは、図4に示す構造に限定されない。前後2つの駆動輪ユニット34のそれぞれは、例えば、上下方向に延びた左右一対の支持アーム36を有さなくてもよく、調整部37が駆動輪ユニット34の2つの原動機31の間に接続されてもよい。
【0098】
また、駆動用レール22の長手方向の一部、詳しくは、軌道2の上り勾配を有する第一区間2aに対応する部分には、駆動用レール22の他の部分よりも左右方向に幅広に設けられた幅広部を有してもよい。この場合、軌道2の上り勾配を有する第一区間2aに位置する動力車3aは、駆動用レール22の幅広部を挟むことで、推進力を得る。軌道2の下り勾配を有する第二区間2bに位置する動力車3aは、駆動用レール22に接触せず、駆動用レール22との間で推進力が得られない。この場合、下り勾配を有する第二区間2bに位置する動力車3aと付随車3bは、自重による推進力と、その他の区間(第一区間2a)を走行する動力車3aによって引かれた牽引部材4によって牽引されることで、走行する。またこの場合、軌道2のうち、下り勾配を有する第二区間2bには、給電部25の設置が不要であり、設置コストを抑えることができる。
【0099】
また、駆動用レール22は、軌道2の全長にわたって位置しなくてもよく、軌道2のうち、上り勾配を有する第一区間2aにのみ位置して、下り勾配を有する第二区間2bには位置しなくてもよい。この場合、下り勾配を有する第二区間2bを走行する動力車3a及び付随車3bは、自重による推進力と、その他の区間(第一区間2a)を走行する動力車3aによって引かれた牽引部材4によって牽引されることで、走行する。またこの場合、軌道2のうち、下り勾配を有する第二区間2bには、給電部25の設置が不要であり、設置コストを抑えることができる。
【0100】
4.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の輸送システム(1)は、下記の構成を備える。
【0101】
すなわち、第一態様の輸送システム(1)は、環状の軌道(2)と、軌道(2)に沿って延びる駆動用レール(22)と、軌道(2)を走行する複数の車両(3)と、軌道(2)の全長にわたって位置し、複数の車両(3)のそれぞれに連結された環状の牽引部材(4)と、を備える。複数の車両(3)は、駆動用レール(22)を挟むことが可能な複数の駆動輪(30)を有する動力車(3a)と、駆動輪(30)を有さない付随車(3b)と、を含む。付随車(3b)は、動力車(3a)に引かれて移動する牽引部材(4)に牽引されて、軌道(2)を走行する。
【0102】
上記構成を備える第一態様の輸送システム(1)では、動力車(3a)は複数の駆動輪(30)で駆動用レール(22)を挟んで走行することができ、付随車(3b)は動力車(3a)に引かれて移動する牽引部材(4)によって牽引して走行させることができる。したがって、第一態様の輸送システム(1)では、軌道(2)の一部を引揚装置の設置のために山形状に設ける必要がなくて、軌道(2)を地形に合わせて自由自在に配置しやすい。
【0103】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の輸送システム(1)は、第一態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0104】
すなわち、第二態様の輸送システム(1)では、軌道(2)は、上り勾配を有する第一区間(2a)と、下り勾配を有する第二区間(2b)と、を含む。複数の車両(3)は、第一区間(2a)を走行する少なくとも1つの車両(3)と、第二区間(2b)を走行する少なくとも1つの車両(3)とを含む。第一区間(2a)を走行する少なくとも1つの車両(3)と、第二区間(2b)を走行する少なくとも1つの車両(3)とは、牽引部材(4)を介してつるべ式に釣り合う。
【0105】
上記構成を備える第二態様の輸送システム(1)では、上り勾配に位置する車両(3)と下り勾配に位置する車両(3)とがつるべ式に釣り合うため、複数の車両(3)の全てを走行させるために必要な推進力を抑えることができる。そのため、第二態様の輸送システム(1)では、動力車(3a)に搭載する原動機(31)の小型化が図れ、輸送システム(1)の省エネ化を図ることができる。
【0106】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の輸送システム(1)は、第一又は第二態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0107】
すなわち、第三態様の輸送システム(1)は、軌道(2)の全長にわたって位置し、牽引部材(4)を収容して、牽引部材(4)の移動をガイドするガイドケース(5)を更に備える。牽引部材(4)は、互いにつながった複数の環状部材(40)を有するリンクチェーン(41)である。
【0108】
上記構成を備える第三態様の輸送システム(1)では、変形自在なリンクチェーン(41)の移動を、軌道(2)の全長にわたって位置するガイドケース(5)でガイドできる。そのため、第三態様の輸送システム(1)では、付随車(3b)の牽引方向と進行方向とを一致させやすくて、付随車(3b)を円滑に走行させやすい。
【0109】
また、上述した一実施形態の変形例のように、第四態様の輸送システム(1)は、第三態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0110】
すなわち、第四態様の輸送システム(1)では、軌道(2)は、平面視と立面視の両方において湾曲した複合曲線部を含む。
【0111】
上記構成を備える第四態様の輸送システム(1)では、ガイドケース(5)のうち、軌道(2)の複合曲線部に対応する部分では、リンクチェーン(41)がガイドケース(5)に合わせて自在に変形できる。そのため、第四態様の輸送システム(1)では、軌道(2)の複合曲線部においても、車両(3)を牽引する牽引部材(4)が軌道(2)に沿いやすくて、車両(3)を円滑に走行させることができる。
【0112】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の輸送システム(1)は、第一から第四のいずれか1つの態様の輸送システム(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0113】
すなわち、第五態様の輸送システム(1)は、付随車(3b)は、座席(383)を有し、動力車(3a)は座席(383)を有さない。
【0114】
上記構成を備える第五態様の輸送システム(1)では、動力車(3a)が座席(383)を有さないため、動力車(3a)の軽量化が図れて、動力車(3a)を走行させるための原動機(31)の小型化が図れる。また、第五態様の輸送システム(1)では、動力車(3a)が座席(383)を有さないため、動力車(3a)の修理、交換などのメンテナンス性に優れる。
【0115】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 輸送システム
2 軌道
22 駆動用レール
2a 第一区間
2b 第二区間
3 車両
3a 動力車
3b 付随車
30 駆動輪
383 座席
4 牽引部材
40 環状部材
41 リンクチェーン
5 ガイドケース
【要約】
本開示の課題は、地形に合わせて自由自在に軌道を配置しやすい輸送システムを提供することである。輸送システム(1)は、環状の軌道(2)と、軌道(2)に沿って延びる駆動用レール(22)と、軌道(2)を走行する複数の車両(3)と、複数の車両(3)のそれぞれに連結された環状の牽引部材(4)と、を備える。複数の車両(3)は、駆動用レール(22)を挟むことが可能な複数の駆動輪(30)を有する動力車(3a)と、駆動輪(30)を有さない付随車(3b)と、を含む。付随車(3b)は、動力車(3a)に引かれて移動する牽引部材(4)に牽引されて、軌道(2)を走行する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6