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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】複合成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230818BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20230818BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/14
B29C45/27
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019150314
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021030495
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松木 克則
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-203537(JP,A)
【文献】特開2016-128256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 33/14
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート体と、シート体の一方の面に接合された樹脂成形体とを備える複合成形品を製造する製造方法において、
前記シート体の一方の面に取着される基部と、前記基部に設けられるとともに前記シート体側とは反対側に突出する突部とを有する一次部材を成形する一次成形工程と、
成形型に設けられた凹部に前記突部を嵌合させ前記シート体を位置決めした後に、溶融樹脂を前記成形型のキャビティ内に射出し前記樹脂成形体を成形する二次成形工程と、を備え、
前記一次成形工程において、前記基部の外縁部は、その厚みが段階的に薄くなるように形成されることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記一次成形工程で射出される樹脂は、前記二次成形工程で射出される樹脂と同一組成の材料であることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記一次成形工程で射出される樹脂は、その融点が、前記二次成形工程で射出される樹脂の融点以下であることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記一次部材を成形する際に射出する樹脂の量と、前記樹脂成形体を成形する際に射出する樹脂の量とが同量となるように成形することを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項において、
前記成形型のキャビティに樹脂を射出するゲートは、前記基部に対向する位置に設けられ、前記ゲートから前記基部に向って樹脂を射出することを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項において、
前記基部には、接合凹部が設けられ、
前記二次成形工程では、前記樹脂成形体を成形する樹脂が前記接合凹部内に行き渡るように成形することを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項において、
前記一次成形工程後、前記シート体を湾曲形状に賦形するプリフォーム成形工程を備えることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項において、
前記一次成形工程後、前記シート体をトリミングするシートカット工程を備えることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項において、
前記シート体は、圧縮された状態から水分に晒されることによって復元する特性を有する多孔質体であり、
前記複合成形品はエンジンのシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサであることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート体と、該シート体の一方の面に接合された樹脂成形体とを有する複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合成形品の製造方法としては、特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
下記特許文献1には、板状部材に予め突起部材を設け、突起部材をキャビティの内面に設けられた凹形状部に嵌め込んで位置決めを行い、板状部材に樹脂部材を射出成形により一体化させた複合成形品を製造する方法が記載されている。
下記特許文献2には、発泡体に透孔を形成しておき、下型の突起に嵌め合わせて発泡体を位置決めした後、溶融樹脂を射出して成形する発泡体と高分子材料とを有する複合成形品を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-86556号公報
【文献】特開2016-128256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにシート体と樹脂成形体とを有した複合成形品を成形する際には、射出成形時の射出圧をシート体が受けて、位置ズレを起こさないように位置決めする工程を要する。特にシート体が可撓性を有し、薄状のものであると、射出成形時にシート体が位置ズレしたり、シート体の端部が捲れ上がったりする等の問題が生じやすい。しかしながら、特許文献1に開示されているようにインサート成形する板状部材自体に突起部材を形成できる場合はよいが、そうでない場合、特許文献1の構成を採用できない。また特許文献2に開示されているように位置ズレを防止するためにシート体に透孔を設けると、完成品として使用する際に不具合が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、可撓性を有するシート体に位置ズレ防止のための孔を形成することなく成形時の位置ズレを防止でき、成形性の向上を図った複合成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合成形品の製造方法は、可撓性を有するシート体と、シート体の一方の面に接合された樹脂成形体とを備える複合成形品を製造する製造方法において、前記シート体の一方の面に取着される基部と、前記基部に設けられるとともに前記シート体側とは反対側に突出する突部とを有する一次部材を成形する一次成形工程と、成形型に設けられた凹部に前記突部を嵌合させ前記シート体を位置決めした後に、溶融樹脂を前記成形型のキャビティ内に射出し前記樹脂成形体を成形する二次成形工程と、を備え、前記一次成形工程において、前記基部の外縁部は、その厚みが段階的に薄くなるように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複合成形品の製造方法によれば、可撓性を有するシート体に位置ズレ防止のための孔を形成することなく成形時の位置ズレを防止でき、成形性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る複合成形品の製造方法の一工程例を示すフローチャートである。
図2】同製造方法を説明するための図であり、(a)は一次成形工程を示す模式的断面図、(b)はシートカット工程を示す模式的断面図である。
図3】同製造方法を説明するための図であり、(a)は二次成形工程を示す模式的断面図、(b)はゲートカット工程を示す模式的断面図である。
図4】(a)及び(b)は第1実施形態に係る製造方法で製造される複合成形品の変形例を模式的に示した図であり、(a)は複合成形品の斜視図、(b)はその断面図である。(c)及び(d)は第1実施形態に係る製造方法で製造される複合成形品のさらに異なる変形例を模式的に示した図であり、(c)は複合成形品の斜視図、(d)はその断面図である。
図5】(a)及び(b)は第1実施形態に係る製造方法で製造される複合成形品のさらに異なる変形例を模式的に示した図であり、(a)は複合成形品の斜視図、(b)はその断面図である。(c)及び(d)は第1実施形態に係る製造方法で製造される複合成形品のさらに異なる変形例を模式的に示した図であり、(c)は複合成形品の斜視図、(d)はその断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る複合成形品の製造方法の一工程例を示すフローチャートである。
図7】同製造方法を説明するための図であり、(a)及び(b)は、プリフォーム成形工程を模式的断面図である。
図8】同製造方法を説明するための図であり、(a)は二次成形工程を示す模式的断面図、(b)はゲートカット工程を示す模式的断面図、(c)は複合成形品をスペーサに適用した例を示す図であり、冷却水流路内に組付けシート体が膨大化した装着状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る製造方法は、可撓性を有するシート体2と、シート体の一方の面20に接合された樹脂成形体3とを有する複合成形品1を製造する製造方法に関する。
本実施形態に係る製造方法は、少なくとも一次成形工程と、二次成形工程とを備える。
一次成形工程では、可撓性を有するシート体2の一方の面20に取着される基部40と、基部40に設けられるとともにシート体2側とは反対側に突出する突部41とを有する一次部材4を成形する。二次成形工程では、成形型10に設けられた凹部130に突部41を嵌合させシート体2を位置決めした後に、溶融樹脂を成形型10のキャビティ11内に射出し、樹脂成形体3を成形する。一次成形工程において、基部40の外縁部40aは、その厚みが段階的に薄くなるように形成される。
以下、図面を参照しながら説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0010】
<第1実施形態>
まずは図1図5を参照しながら、第1実施形態に係る複合成形品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る製造方法は、可撓性を有するシート体2と、シート体2の一方の面20に接合された樹脂成形体3とを備える複合成形品1の製造方法であって、シート体2の他方の面21がおもて面1a、すなわち意匠面(装飾面)として使用される複合成形品1の製造方法である。
【0011】
<一次成形工程・S100~シートカット工程・S101>
複合成形品1を製造するに際し、まずシート体2の位置決め機能を果たすことになる突部41を有した一次部材4を成形する。
そこで図2(a)に示すように、第1型10aと、第2型10bとを備えた一次成形用の成形型10を用意する。一次成形用の成形型10は、第1型10aと第2型10bとがシート体2を介して型締めされるとキャビティ11を形成する。そして、このキャビティ11内に樹脂が射出されることによって一次部材4が形成される。このとき一次成形工程・S100では、後述する二次成形工程・S102で射出される樹脂の融点と同じか、それより低い融点となる樹脂(例えば、ポリアミド66)によって一次部材4を形成する。図2(a)に示す第1型10aは、第1型凹部12と、第2型凹部13とを備えている。第1型凹部12は、溶融された樹脂が通じるゲートになり、この第1型凹部12を通じて樹脂がキャビティ11内へ射出される。また、第1型凹部12は、略円錐状に形成されるとともに、突部41を模る凹部である。第1型凹部12によって突部41が成形されると、突部41は略円錐形状に成形される。第2型凹部13は、平面視において、シート体2より小さい領域になるように形成されている。また、第2型凹部13は、その外縁部が傾斜状に形成されている。第2型凹部13は、一次部材4の基部40を模る凹部であり、第2型凹部13によって基部40が成形されると、一次部材4の基部40がシート体2より小さい面積に形成され、且つ基部40の外縁部40aの厚みが段階的に薄く成形される。図例の外縁部40aは断面視すると次第に厚みが薄くなるように傾斜している。シート体2としては、可撓性を有する素材のシートが用いられる。シート体2の大きさ、形状は、この一次成形工程S100で第1型10aと第2型10bの間に配され、一次部材4を形成した後にシートカット工程S101でカットすることを想定して用意される。
【0012】
上述の成形型10を準備し、シート体2を配し、第1型10aと第2型10bとを型締めし、キャビティ11を形成する(図2(a)参照)。そしてこの状態で第1型凹部12を通じて樹脂を射出して、キャビティ11内に樹脂を充填する。第1型凹部12及び第2型凹部13によって形成されるキャビティ11全域に樹脂を充填した後、保圧状態で冷却し樹脂を固化させる。型開きして脱型すると、図2(b)に示すような一次部材4を得ることができる。そして一次部材4を不図示のトリミング用の型に配置し、シート体2をトリミングする。具体的には、突部41をトリミング用の型に設けられた凹部に嵌合させてシート体2を位置決めし、シート体2を所望する形状に切断する(図2(b)の点線参照)。
【0013】
こうして、シート体2の一方の面20に取着されるとともにシート体2より小さい面積の基部40と、基部40に設けられるとともにシート体2側とは反対側に突出する突部41とを有する一次部材4を得ることができる。またこの一次成形工程・S100において、基部40の外縁部40aは、その厚みが段階的に薄くなるように形成される。さらに一次成形工程S100では、基部40を成形するために望ましい形状・大きさのシート体2とし、一次成形工程S100の後にシート体2を所望の形状にトリミングすることができる。したがって、製造し易さを確保しつつ、シート体2の外形形状を自由に形成することができる。また基部40が取着されたシート体2をトリミング用の型に配置してトリミングする際、上述のように突部41をトリミング用の型に設けられた凹部に嵌合してシート体2を位置決めすることで、シート体2に対する加工精度が低下することを抑制できる。
【0014】
<二次成形工程・S102~ゲートカット工程・S103>
次に図3(a)に示すように第1型100aと、第2型100bとを備えた二次成形用の成形型100を用意する。第1型100aは、キャビティ110に樹脂を射出するゲート120と、突部41が嵌合される凹部130とを備えている。凹部130の深さ寸法、形状は、突部41の突出寸法、形状等に合わせて形成されている。凹部130に突部41を嵌合させれば、樹脂がキャビティ110内に高圧で射出されても、シート体2が所望する位置に位置決めされる。第2型100bには、樹脂成形体3を模る第2型凹部140が形成されており、図3(a)に示す例では、第2型凹部140内に一次部材4が収まるように形成されている。つまり、第2型凹部140は、一次部材4より大きい空間を区画している。ここで、キャビティ110に樹脂を射出するゲート120の位置は、基部40に対向する位置に設けられる構成が望ましい。この場合、二次成形工程S102において、ゲート120から樹脂が射出された際、樹脂は基部4に向い、基部40がその樹脂の射出圧を直接受けることになる。したがって、シート体2は、ゲート120から射出された樹脂の射出圧を直接受けることはないため、樹脂の圧力によってシート体2がずれることをより一層効果的に抑制できる。
【0015】
上述の成形型100を準備し、第1型100aの凹部130に一次部材4の突部41を嵌合した状態で一次部材4を所定の位置に配置する。このとき、凹部130があるので、凹部130に突部41を嵌め合わせればよく、一次部材4を所定の位置へ配置する位置決めがし易い。そして第1型100aと第2型100bとを型締めし、キャビティ110を形成する(図3(a)参照)。この状態でゲート120を通じて樹脂を射出して、キャビティ110内に樹脂を充填する。このとき二次成形工程・S102でキャビティ110内に充填される樹脂は、一次成形工程・S100で射出される樹脂と同類の材料(例えばポリミド66)とする。
【0016】
こうして、キャビティ110全域に樹脂を充填した後、保圧状態で冷却し樹脂を固化させる。型開きして脱型しシート体2と接合された樹脂成形体3を取り出し、ゲート残り部42を切断すると、図3(b)に示す複合成形品1を得ることができる。この複合成形品1において、シート体2が配された側が一方面(おもて面)1a、突部41が配された側が他面1bとなる。
【0017】
以上の本実施形態に係る製造方法によれば、二次成形用の成形型100の凹部130に突部41を嵌合させた状態で、成形型100のキャビティ110内に樹脂を射出することで、シート体2が位置ズレすることなく、シート体2と樹脂成形体3とを所望する位置関係で接合させることができる。
【0018】
上述のような樹脂成形体3を成形する場合、樹脂が、ゲート120から射出され、基部40の外縁部40aを経由し、基部40が存在しない領域E1と基部40が存在する領域E2との間を流れる。図3(a)に示すように基部40の外縁部40aの厚みは、段階的に薄くなるように形成されているので、樹脂は円滑に基部40の外縁部40aを経由できるようになり、樹脂成形体3の成形品質が低下することを抑制できる。
【0019】
また二次成形工程S102で射出された樹脂は、上述のとおり、固化して樹脂成形体3として成形される。樹脂が固化する際に、樹脂成形体3の体積は若干収縮するため、シート体2に接合された部分と基部40に接合された部分とではその体積収縮量に差が生じる。そこで、樹脂成形体3における体積収縮量に差があることにより、シート体2の一方の面20に接合される基部40と樹脂成形体3との境目、これに対応するシート体2の他方の面21に模様が現れて外観品質を損なうおそれがある。
しかしながら、上述の本実施形態に係る製造方法によれば、樹脂成形体3の樹脂が固化する際に、シート体2に接合された部分と基部40に接合された部分とでその体積収縮量に差が生じても、基部40の外縁部40aの厚みは段階的に薄くなるように形成されているため、その樹脂成形体3の体積収縮量の変化は段階的になる。したがって、シート体2の他方の面21に現れる樹脂成形体3とシート体2との境目の模様を目立たなくすることができる。
【0020】
さらに上述のようにシート体2の位置ズレを抑制するために位置決めピンとなる突部41を有する一次部材4を成形することは有効である。しかし、一次成形工程・S100で基部40を成形する際の成形条件と、二次成形工程・S102で樹脂成形体3を成形する際の成形条件とが異なることに起因して、シート体2の他方の面21に基部40と樹脂成形体3との境目に対応する模様が現れ易いことが問題になる。
しかしながら、本実施形態に係る製造方法によれば、一次成形工程・S100と二次成形工程・S102とで成形条件が異なっても、基部40の外縁部40aの厚みは段階的に薄くなるように形成されているため、シート体2の他方の面21に及ぼす影響の変化も段階的になり、基部40と樹脂成形体3との境目に対応する模様がシート体2の他方の面21に現れることを抑制できる。よって、意匠面となるシート体2の他方の面21側、すなわち、複合成形品1のおもて面1aの外観品質を向上させることができる。
【0021】
また上述の実施形態に係る製造方法において、一次成形工程・S100で射出される樹脂と二次成形工程・S102で射出される樹脂とは、同類の材料としてもよい。この場合、一次部材4と樹脂成形体3とが別材料からなる場合に比べて、一次部材4と樹脂成形体3との接合強度を高めることができる。さらに上述の実施形態に係る製造方法において、一次成形工程・S100で射出される樹脂は、その融点が、二次成形工程・S102で射出される樹脂の融点以下としてもよい。この場合、二次成形工程・S102で射出された樹脂が、一次部材4に達すると、一次部材4の表面を溶かし、一次部材4の樹脂と二次成形工程・S102で射出された樹脂とが絡み合ったうえで固化する。したがって、一次成形工程・S100で射出される樹脂の融点が、二次成形工程・S102で射出される樹脂の融点より大きい場合に比べて、一次部材4と樹脂成形体3との接合強度を高めることができる。そして上述の実施形態に係る製造方法において、一次部材4を成形する際に射出する樹脂の量と、樹脂成形体3を成形する際に射出する樹脂の量とが同量となるように成形してもよい。この場合、同じサイズの成形機(不図示)を用いて、一次部材4を成形する時に用いられる成形機のシリンダ内で滞留する樹脂と、樹脂成形体3を成形する時に用いられる成形機のシリンダ内で滞留する樹脂とをほぼ同量にすることができる。したがって、それぞれの成形機のシリンダ内で樹脂が滞留する時間を平準化できるため、基部40及び樹脂成形体3で使われる樹脂の劣化を抑制することができる。
【0022】
<変形例>
次に図4図5を参照しながら、本実施形態に係る製造方法で製造される複合成形品1の種々変形例として複合成形品1A~1Dについて説明する。ここでは一次部材4の形状が異なる変形例を示している。上述の実施形態と共通する部位には共通の符号を付し、共通の効果を奏する点の説明は省略し、異なる点を主に説明する。また次に説明する図4図5の変形例では、基部40に複数の突部41が設けられた例を示すが、この構成は特に図例に限定されない。すなわち、この位置決めピンの役割を担う突部41は、数が多ければ位置決め精度の向上が期待できる。また複数の突部41を備えた場合、突部41,41同士の間隔を大きく離した方が位置決め精度が向上する。さらにシート体2の大きさに対して、基部40の大きさはシート体2の大きさに近いほど、シート体2のズレやシート体2の端部の捲れ上がりを抑制し易くなるとともに、複合成形品1の変形防止効果も期待できる。また一次部材4の体積と樹脂成形体3の体積のバランスは、複合成形品1の外観品質の悪化、寸法悪化、材料費上昇等に影響するため、樹脂成形体3の厚みが一次部材4の厚みより厚くなりすぎないよう留意する必要がある。
【0023】
まず図4(a)及び図4(b)に示す変形例は、基部40に複数の略円形状の接合凹部40b,40bが形成されている点が上述の実施形態と異なる。またこの例では、図4(b)に示すように基部40の一方面43が樹脂成形体3を形成する樹脂で被覆されている。そして、二次成形工程S102では、樹脂成形体3を成形する樹脂が接合凹部40b,40b内に行き渡るように成形する。すると、基部40の一方面43に行き渡った樹脂が接合凹部40bにも充填される。そして、基部40の接合凹部40bと樹脂成形体3の接合凸部30とが係合して、基部40と樹脂成形体3との界面強度を向上させることができる。またこのように接合凹部40bを複数備えている点で、樹脂成形体3が外部から受ける力の方向に拘らず、樹脂成形体3と基部40との接合状態を保ち易くなる。さらに接合凹部40bの形状が複雑でないシンプルな構成であるので、一次成形用の成形型10のコスト上昇を抑えることができ、製造も容易である。
【0024】
この接合凹部の構成は図4(a)及び図4(b)に限定されない。
例えば図4(c)及び図4(d)に示すように樹脂成形体3の短手方向中央及びこれと交わるように樹脂成形体3の長手方向にも複数の溝条の接合凹部40c,40c,40cを形成してもよい。またこの例では、図4(d)に示すように基部40の一方面43が樹脂成形体3を形成する樹脂で被覆されておらず、露出している点は上述の例と相違する。
【0025】
このように基部40に溝条の接合凹部40cを複数形成するようにしても、樹脂成形体3が外部から受ける力の方向に拘らず、樹脂成形体3と基部40との接合状態を保ち易くなる。また図4(c)及び(d)に示すように基部40の一方面43が一部露出していても、溝状の接合凹部40cの形成面積が確保できるので、基部40と樹脂成形体3の界面強度は十分に確保できる。
この他、溝条の接合凹部40cの形成態様としては、樹脂成形体3の短手方向、長手方向のいずれか一方に形成されたものとしてもよいし、十字でもよい。さらには、樹脂成形体3の短手方向、長手方向のそれぞれに2本以上形成してもよい。
【0026】
図5(a)及び図5(b)には、さらに異なる変形例を示す。この例では、基部40、突部41の形状や外縁部40aの構成が上述とは異なる。すなわち、ここに示す例は、基部40が平面視において略方形状に形成されている。また突部41が略円柱状に形成されている。さらに基部40の外縁部40aの厚みが段階的に薄くなる点は上述と同様であるが、段差状(階段状)に薄くなるように形成される点で異なり、接合凹部40dといえる部位も段差状の外縁部40aに設けられている。図例では接合凹部40dが、3段階に段差状になっている例を示しているが、これに限定されず、2段でもよいし、3段以上でもよい。
【0027】
基部40の外縁部40aがこのように段差状であっても、ゲート120から射出された樹脂が、基部40の外縁部40aを円滑に経由して、基部40が存在しない領域E1と基部40が存在する領域E2との間を流れる(図5(b)参照)。図5(a)に示すように基部40の外縁部40aの厚みは、段差状に段階的に薄くなるように形成されているので、樹脂は円滑に基部40の外縁部40aを経由できるようになり、樹脂成形体3の成形品質が低下することを抑制できる。また複合成形品1となった際のおもて面1aの外観品質を向上させることができる点も上述と同様である。さらにこの外縁部40aの構成は接合凹部40dの役割も担うことができる。すなわち、この段差状の外縁部40aによって段差状に凹部が形成されることになるため、これが接合凹部40dとなり、樹脂成形体3が外部から受ける力の方向に拘らず、樹脂成形体3と基部40との接合状態を保ち易くなる。また基部40と樹脂成形体3の界面強度を向上させることもできる。
【0028】
図5(c)及び図5(d)には、さらに異なる変形例を示す。この例では、基部40の外縁部40aの構成が傾斜している点は、図4(d)等に示す例と共通するが、この外縁部40aに接合凹部40eが形成されている点で、上述とは異なる。すなわち、ここに示す例は、基部40の外縁部40aに適宜間隔を空けて、略台形状に接合凹部40eが複数形成されている。また基部40の形状は平面視において略方形状に形成されている。突部41は、略円柱形状に形成されている。基部40の外縁部40aがこのような傾斜状であれば、接合凹部40eが外縁部40aに形成されていても、ゲート120から射出された樹脂が、基部40の外縁部40aを円滑に経由して、基部40が存在しない領域E1と基部40が存在する領域E2との間を流れるため(図5(d)参照)、樹脂成形体3の成形品質が低下することを抑制できる。また複合成形品1となった際のおもて面1aの外観品質を向上させることができる点も上述と同様である。さらにこのように外縁部40aに複数の接合凹部40eを形成した例でも、接合凹部40eがくさびの役割を果たし、また基部40と樹脂成形体3の界面強度を向上させることもできる。また樹脂成形体3が外部から受ける力の方向に拘らず、樹脂成形体3と基部40との接合状態を保ち易くなる。
【0029】
<第2実施形態>
次に図6図8を参照しながら、第2実施形態に係る複合成形品の製造方法について説明する。上述の第1実施形態と共通する部位には共通の符号を付し、共通の効果を奏する点の説明は省略し、異なる点を主に説明する。
第2実施形態に係る製造方法も、第1実施形態に係る製造方法と同様に、可撓性を有するシート体2と、シート体2の一方の面20に接合された樹脂成形体3とを備える複合成形品1の製造方法である。しかしこの実施形態では、エンジンのシリンダブロックに設けられた冷却水流路5に配置されるスペーサS(図8(c)参照)に適用される複合成形品1を製造する例を説明する。
【0030】
スペーサSに用いられるシート体2としては、圧縮された状態から水分に晒されることによって復元する特性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、多孔質素材であるセルロース系スポンジがよい。セルロース系スポンジは、パルプ由来のセルロースと、補強繊維として加えられた天然繊維(例えば、綿等)とからなる天然素材からなり、連続気泡型で優れた吸水性を有する。またセルロースは、親水基(OH)を有しており、化学的に水分になじみ易い性質を有する。よって、セルロース系スポンジは、加圧した状態で乾燥させるとセルロース分子間が水素結合して圧縮状態に維持される一方、この状態から水分に晒されると水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する特性を有するため、シート体2として、好適である。
【0031】
<一次成形工程・S200~シートカット工程・S201>
まずは複合成形品1であるスペーサSを製造するに際し、突部41を有した一次部材4を形成する。一次成形工程S200及びシートカット工程S201は、基本的に第1実施形態の一次成形工程S100及びシートカット工程S101と共通であるので詳しく図示しながらの説明を省略するが、スペーサSとして用いる複合成形品1とするため、基部40の形状は図7(a)に示すように湾曲した形状の基部40に成形される一次成形用の成形型10が準備される。
<プリフォーム成形工程S202>
シート体2を備え、突部41を有した一次部材4を成形したら、シート体2を湾曲形状に賦形するプリフォーム成形工程S202を行う。すなわち、プリフォーム成形工程S202の際には、シート体2のみを二次成形用の成形型100に配置するのではなく、シート体2と一体成形された一次部材4を成形型100に配置する。
【0032】
二次成形用の成形型100は、第1型100aと第2型100bとを有し、型締めしたときに円弧形状のキャビティ110を形成するように構成される。キャビティ110は、凸曲状の第2型凹部140と、第1型凹部150とで構成されている。第2型凹部140は、樹脂成形体3の四周部を成形する。第1型凹部150は、樹脂成形体3の他面1b(図8(b)参照)側部分を成形するように形成されている。
【0033】
第2型100bには、樹脂成形体3を模る第2型凹部140が形成されており、第2型凹部140内に一次部材4が収まるように形成されている。キャビティ110に樹脂を射出するゲート120の位置は、この例においても、図7(a)に示すように基部40に対向する位置に設けられ、ゲート120から基部40に向って樹脂を射出する構成が望ましい。この場合、後述する二次成形工程S203において、ゲート120から樹脂が射出された際、基部40がその樹脂の射出圧を直接受けることになる。したがって、シート体2は、ゲート120から射出された樹脂の射出圧を直接受けることはないため、樹脂の圧力によってシート体2がずれることをより一層効果的に抑制できる。
【0034】
第1型凹部150には、一次部材4の突部41が嵌合される凹部130が設けられている。凹部130の深さ寸法、形状は、突部41の突出寸法、形状等に合わせて形成され、凹部130に突部41が嵌合すれば、樹脂がキャビティ110内に高圧で射出されても、シート体2が所望する位置に位置決めされるように形成される。
【0035】
上述の成形型100を準備し、第2型100bの第2型凹部140内に一次部材4を配置する。このとき、第1型100aの凹部130に一次部材4の突部41を嵌合する。この場合も、凹部130の位置に合わせて突部41を配置すればよいので、一次部材4を所定の位置へ配置する位置決めがし易い。そして、第1型100aと第2型100bとを型締めし、キャビティ110を形成する(図7(b)参照)。すると、この型締めに伴い、シート体2が湾曲形状にプリフォーム成形される。
【0036】
<二次成形工程S203~ゲートカット工程S204>
図7(b)、図8(a)に示すように成形型100を型締めしプリフォーム成形したら、ゲート120から樹脂を充填していく。この充填工程においても、シート体2は樹脂圧によって、第2型凹部140に沿って捲れることなく、湾曲した形状を備え一体成形される。そしてキャビティ110全域に樹脂を充填した後、保圧状態で冷却し樹脂を固化させる。型開きして、シート体2と接合された樹脂成形体3を取り出し、ゲート残り部42を切断すれば、図8(b)に示すスペーサS(1)を得ることができる。このとき、突部41もゲート残り部42と同様に切断してもよいし、突部41の突出寸法を設計すれば、スペーサSとして冷却水流路内に設置される際の冷却水の規制を制御する突部として機能させることもできる。
【0037】
以上の第2実施形態に係る製造方法によれば、二次成形用の成形型100の凹部130に突部41を嵌合させた状態で、成形型100のキャビティ110内に樹脂を射出することで、シート体2が位置ズレすることなく、シート体2と樹脂成形体3とを所望する位置関係で接合させることができる。
【0038】
またゲート120から射出された樹脂が、基部40の外縁部40aを円滑に経由して、基部40が存在しない領域E1と基部40が存在する領域E2との間を流れる。図8(a)等に示すように基部40の外縁部40aの厚みは、段階的に薄くなるように形成されているので、樹脂は円滑に基部40の外縁部40aを経由できるようになり、樹脂成形体3の成形品質が低下することを抑制できる。
【0039】
また第1実施形態に係る製造方法と同様に上述の第2実施形態に係る製造方法によっても、樹脂成形体3の樹脂が固化する際に、シート体2に接合された部分と基部40に接合された部分とでその体積収縮量に差が生じても、基部40の外縁部40aの厚みは段階的に薄くなるように形成されているため、その樹脂成形体3の体積収縮量の変化は段階的になる。したがって、他方の面21に現れる樹脂成形体3とシート体2との境目の模様を目立たなくすることができる。また一次成形工程・S200と二次成形工程・S203とで成形条件が異なっても、基部40の外縁部40aの厚みは段階的に薄くなるように形成されているため、シート体2の他方の面21に及ぼす影響の変化も段階的になるため、基部40と樹脂成形体3との境目に対応する模様がシート体2の他方の面21に現れることを抑制できる。
【0040】
上述の製造方法によって製造されたスペーサSは、以下のように使用される。第2実施形態で示すスペーサSは、冷却水流路5内の適所に部分的に配置される部分スペーサである。スペーサSは、冷却水流路5の円弧形状部50に沿うような円弧形状に形成され、スペーサSを冷却水流路5内に配置し組付ける際には、シート体2は図8(b)に示すように圧縮された状態であるので、スペーサS自体が薄板体でコンパクトな状態にある。よって、スペーサSが冷却水流路5内に組付けられる際に、スペーサSが冷却水流路5の内側壁面51及び外側壁面52に干渉することなく、スムーズに組付けられる。一方、冷却水流路5内に組付けた後は、図8(c)に示すようにシート体2が膨大化する。シート体2が膨大化すると、突部41の先端が外側壁面52に当接するとともに、内側壁面51には膨大化したシート体2の他方の面21が当接する状態となる。すると内側壁面51側の冷却水が堰き止められ、冷却水は外側壁面52側に流入するため、冷却水流路5中、スペーサSが配された部位は冷却水が流れにくくなる。こうして冷却水流路5内に設置されるスペーサSによって過冷却等を防止することができる。
【0041】
以上、第1実施形態及び第2実施形態として種々製造方法を説明したが、上述の例に限定されるものではない。第1実施形態及び第2実施形態に示すシート体2、基部40、突部41、一次部材4、樹脂成形体3、複合成形品1の構成、形状、構造は図例に限定されるものではない。
シート体2としては、可撓性を有するシート状のものであればよく、例えば、皮革、布、織物、木皮等を用いることができる。またシート体2としては、天然素材や多孔質素材に限定されず、塩化ビニル等の樹脂製シート等としてもよい。第1実施形態で図2(a)に示したシート体2は成形型10からはみ出すほどに大きい例を模式的に示しているが、これに限定されるものではない。実際には成形型10内におさまる大きさであってもよく、要はシート体2の一方の面20に一次部材4が成形し易く配されればよい。また第1実施形態において一次成形工程・S100を示す図2(a)では、射出ゲート及びキャビティとなる第1型凹部12を備えた例を示しているが、突部41を形成する第1型凹部12とは別に射出ゲートを設けてもよい。さらにシートカット工程S101(S201)では、図示していないが、位置決め治具に成形型10から取り出した一次部材4を載置し、トムソン刃を用いて切断するようにしてもよい。シート体2と一体に成形される一次部材4の構成、形状も、一次部材4と一体に成形される樹脂成形体3の構成、形状も、製品として求められる複合成形品1の構成、形状に応じて適宜設計される。
【0042】
一次部材4及び樹脂成形体3に用いられる合成樹脂としては、上述の実施形態に限定されず、例えば、ポリアミド66同士や、ポリプロピレン同士等同一組成の組み合わせでもよい。また、さらに具体的には、一次部材4及び樹脂成形体3に用いられる合成樹脂として、同一組成の樹脂の組み合わせで、かつ一次成形工程で射出される樹脂の融点が二次成形工程で射出される樹脂の融点以下である樹脂を用いてもよい。また、一次部材4及び樹脂成形体3に用いられる樹脂の種類が異なるように、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂からそれぞれ選んで用いてもよい。さらに合成樹脂としては、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂でもよい。複合成形品1は、主としてシート体2を有した合成樹脂製であればよく、インサート成形等によって一部に金属製の部材を含んだ構成とされたものでもよい。
【0043】
また上述の実施形態に係る製造方法によって製造される複合成形品1は、自動車の内装ドアトリムやピラーガーニッシュ等の他、産業機械、電子機器、建築資材等において、断熱性、緩衝性及び防音性が求められる構成部材にも好ましく採用されるものに適している。また基部40の一方面43は樹脂成形体3を形成する樹脂で被覆されていてもいいし、されていなくてもよい。またさらに、基部40の一方面43にはリブを形成して樹脂成形体3の変形防止、強度アップを図った構成としてもよい。またこの場合、突部41の形成位置とリブとをかみ合わすように形成すれば、突部41の強度を向上させることができる。
【0044】
また第2実施形態に係る複合成形品1の適用例として示したスペーサSの構成、形状は、図に示すものに限定されるものではない。例えば、スペーサSを構成する樹脂成形体3に対してシート体2を固着させる位置や枚数は、冷却水流路5内に配置されるスペーサSの安定性、或いは、冷却水流路内を流通する冷却水の冷却機能等、求められる仕様に応じて適宜変更してもよい。樹脂成形体3の形状は、第2実施形態で示すような部分スペーサでなく、半筒状(半割状)のものでもよいし、冷却水流路5の全周に及ぶ全筒状のものの製造方法にも適用可能である。
【0045】
さらに図8(b)及び図8(c)に示すスペーサSの場合は、冷却水流路5内の一か所に配置してもよいし、複数箇所に配置してもよく、配置する部分スペーサの数は、冷却水流路内のスペースや求められる仕様等に応じて適宜設定するものに適用してもよい。シート体2として用いられる多孔質体も気泡の大きさが非常に小さい微粒品、気泡の大きさが小程度の小粒品、気泡の大きさが中程度の中粒品のいずれを用いてもよい。具体的には、気泡の大きさ(径)が0.1~5mm程度のセルロース系スポンジを用いてもよい。セルロース系スポンジは、セルロースと補強繊維とからなるものが好ましいが、これに限らず、セルロース単独で構成されるものであってもよい。
【0046】
また、シート体2は、セルロース系スポンジに限定されない。シート体2としては、例えば、水膨潤性シート、水可溶性のバインダー或いは所定温度以上の温度で溶解するバインダーによって圧縮状態に維持された多孔質体シート等を用いてもよい。さらにシート体2が膨大化する所定の外的要因としては、冷却水流路内を流通する冷却水に限定されず、水分に晒されることによって復元するエンジンの作動によって加熱されて所定の温度以上に至った冷却水であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 複合成形品
2 シート体
3 樹脂成形体
4 一次部材
40 基部
40a 外縁部
41 突部
130 凹部
40b~40e 接合凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8