(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】貫入ピストン、土質試験機及び貫入ピストンの下部ユニットの移動方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/40 20060101AFI20230818BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20230818BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G01N3/40 B
G01N3/00 D
E02D1/00
(21)【出願番号】P 2020010457
(22)【出願日】2020-01-26
【審査請求日】2022-12-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年11月15日に、株式会社関西機器製作所がワールドテスト株式会社及び世紀東急工業株式会社との商談において公表
(73)【特許権者】
【識別番号】599023705
【氏名又は名称】株式会社関西機器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100174171
【氏名又は名称】原 慶多
(72)【発明者】
【氏名】安田 勝則
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1400433(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3027598(JP,U)
【文献】実公昭48-032654(JP,Y1)
【文献】実開昭62-203428(JP,U)
【文献】特開2007-146627(JP,A)
【文献】米国特許第06138501(US,A)
【文献】特開昭59-158822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0248840(US,A1)
【文献】特開2009-057765(JP,A)
【文献】中国実用新案第201926598(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
G01N 3/00
E02D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の軸体と、
前記軸体の側面に突設された取手部と、
前記軸体の上面に設けられる略T字形状の係合部材と、
下端側の大径部と前記大径部の上方の小径部とを有する筒部と、上端部に略円形の開口部を有するフランジ部と、を有する下部材と、
前記下部材の上方に配置され、前記係合部材を上下方向に摺動させる貫通孔を有する中間部材と、
前記中間部材の上方に配置され、固定部材によって、前記中間部材と前記下部材と共に固定される上部材と、
を備え、
前記下部材は、前記小径部の内周面によって前記係合部材の下部を支持し、前記大径部の内周面によって前記軸体を支持し、前記開口部に配置された弾性部材と前記弾性部材の上部に載置されたばね座とによって前記中間部材の下面と前記ばね座の上面との間で前記係合部材の係合部を挟持可能であり、
前記上部材は、前記係合部材の上部を回転自在に収容可能な収容部が設けられている、貫入ピストン。
【請求項2】
前記中間部材の上面及び/又は下面に、前記係合部材を係止する突出部を備える請求項1に記載に貫入ピストン。
【請求項3】
前記軸体の側面に貫入ピストンの下部ユニットを回転させる位置を示すマークを有する請求項1又は2に記載の貫入ピストン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の貫入ピストンを用いた土質試験機。
【請求項5】
請求項4に記載の土質試験機を用いた貫入ピストンの下部ユニットの移動方法であって、
貫入終了後に、前記取手部を用いて前記係合部材が前記貫通孔内を摺動できる位置まで前記下部ユニットを回転させるステップと、
前記下部ユニットを回転させた後、前記取手部を用いて下部ユニットを上昇させることにより、前記係合部材の上部を前記収容部まで移動させるステップと、
前記係合部材の上部を前記収容部まで移動させた後、前記取手部を用いて前記下部ユニットを回転させることにより、前記係合部材の係合部と前記中間部材の上面とを係合させるステップと、
を備える貫入ピストンの下部ユニットの移動方法。
【請求項6】
請求項4に記載の土質試験機を用いた貫入ピストンの下部ユニットの移動方法であって、
複数の供試体の貫入試験時における供試体の入れ替え後に、前記取手部を用いて前記係合部材が前記貫通孔内を摺動できる位置まで前記下部ユニットを回転させるステップと、
前記下部ユニットを回転させた後、前記取手部を用いて下部ユニットを下降させることにより、前記係合部材の上部を前記ばね座まで移動させるステップと、
前記係合部材の上部を前記ばね座まで移動させた後、前記取手部を用いて下方向に前記ばね座を押し下げながら前記下部ユニットを回転させることにより、前記係合部材の係合部を前記中間部材の下面と係合させて前記中間部材の下面と前記ばね座の上面によって挟持させるステップと、
を備える貫入ピストンの下部ユニットの移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入ピストン、土質試験機及び貫入ピストンの下部ユニットの移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木建築工事では、地盤の状況や強度等を確認するために、さまざまな地盤試験を行う。これら地盤試験のうち、主に道路の路床、路盤地盤の支持力を確認するために考えられた貫入試験の一種として、CBR試験がある。
【0003】
JIS A 1211(非特許文献1)に定めるCBR試験において、一般に行われている突き固められた土の供試体について試験を行う場合、まず、試料を準備し、供試体を作成する。具体的には、モールド、カラー及び有孔底板を組み立て、当該モールドの中にスペーサーディスクを入れ、当該スペーサーディスクの上にろ紙を敷く。スペーサーディスクは、JIS A 1210(非特許文献2)において、高さが(50±0.2)mmの金属製円盤のものと規定されている。
【0004】
モールド内に1層分の土を入れ、ランマーを用いて、所定回数突き固める。これを3層分繰り返し、カラーを取り外した後、モールド上部のはみ出した土を直ナイフで削り取る。そして、モールドを反転させて有孔底板を外し、モールドからろ紙及びスペーサーディスクを取り出す。このとき、供試体上面は、モールド上端部からスペーサーディスクの高さ分である50mm下の位置にある。
【0005】
この後、吸水膨張試験を経て、CBR試験機を用いて供試体に貫入ピストンを貫入する貫入試験を行う。このとき、まず、貫入ピストンと供試体の中心線が一致するように供試体の入ったモールドを載荷装置に設置した後、供試体と貫入ピストンを密着させるために0.05kN以下の荷重を加える。その後、載荷装置を上昇させることにより貫入ピストンを1mm/minの速さで貫入させ、所定の貫入量における荷重計の読みを記録する。記録後、荷重を除き、載荷装置からモールドを外す。(非特許文献1)。
【0006】
非特許文献1に記載されているCBR試験では、貫入ピストンは固定されており、貫入試験においては、載荷装置が上昇することにより、供試体と貫入ピストンを密着させ、その後貫入ピストンを供試体に貫入させていく。載荷装置の載荷能力は50kN以上とされており、非常に負荷が大きく、また、1mm/minの一定速度で貫入させる必要があることから、貫入量を制御しやすい反面動きが遅いスクリュージャッキ等を使用して上昇及び下降させることが多い。そのため、貫入試験の時間が非常に長くなるという問題点があった。
【0007】
この問題点を解消するために、貫入ピストンが取り付けられている上部ユニットを上下方向に移動可能にし、当該上部ユニットを下降させることにより、供試体と貫入ピストンを接近させるCBR試験機が開発されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】日本工業規格 「CBR試験方法」(JIS A 1211:2009)
【文献】日本工業規格 「突固めによる土の締固め試験方法(JIS A 1210:2009)
【文献】株式会社関西機器製作所ホームページ上の製品カタログP.70、[online]、[2020年1月20日検索]、インターネット、< https://kansaikiki-s.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/11/catalog_soli.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に規定されている通り、貫入ピストンと供試体の中心線が一致するようにしなければならず、非特許文献3に記載されているCBR試験機においても、目視で確認しながら徐々に貫入ピストンを下降させるよう操作する必要があることから、当該上部ユニットではウォームギアを用いてモーター等の回転数を減速させて操作を行っている。そのため、貫入試験終了後に供試体の入ったモールドを取り除くために少なくとも50mm以上貫入ピストンを上昇させなければならないが、当該上部ユニットにおいては貫入ピストンを迅速に上昇させることは難しい。したがって、当該CBR試験機においても、貫入試験に長い時間を要していた。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、貫入試験中に発生する大きな負荷に耐えることができ、かつ、供試体への貫入前後の作業を迅速に行うことができる貫入ピストンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る貫入ピストンは、円柱形状の軸体と、前記軸体の側面に突設された取手部と、前記軸体の上面に設けられる略T字形状の係合部材と、下端側の大径部と前記大径部の上方の小径部とを有する筒部と、上端部に略円形の開口部を有するフランジ部と、を有する下部材と、前記下部材の上方に配置され、前記係合部材を上下方向に摺動させる貫通孔を有する中間部材と、前記中間部材の上方に配置され、固定部材によって、前記中間部材と前記下部材と共に固定される上部材と、を備え、前記下部材は、前記小径部の内周面によって前記係合部材の下部を支持し、前記大径部の内周面によって前記軸体を支持し、前記開口部に配置された弾性部材と前記弾性部材の上部に載置されたばね座とによって前記中間部材の下面と前記ばね座の上面との間で前記係合部材の係合部を挟持可能であり、前記上部材は、前記係合部材の上部を回転自在に収容可能な収容部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、貫入ピストンが貫入試験中に発生する大きな負荷に耐えることができ、かつ、貫入ピストンの供試体への貫入前後の作業を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一の実施形態である貫入ピストンを上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態である貫入ピストンの下部ユニットを上方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態である貫入ピストンの下部材を上方から見た斜視図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態である貫入ピストンの中間部材を(a)上方から見た斜視図と(b)下方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態である貫入ピストンの一部を上方から見た分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態である貫入ピストンの下部ユニットの上方向への移動方法の概略説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態である貫入ピストンの下部ユニットの下方向への移動方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例であり、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態である貫入ピストン1は、軸体2と、取手部3と、下部材5と、中間部材6と、上部材7を備える。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態である貫入ピストン1の下部ユニット1aを上方から見た斜視図である。
図2に示すように、円柱形状の軸体2の側面には、取手部3が突設されている。また、軸体2の上面には、中央部に略T字形状の係合部材4が設けられている。
【0017】
取手部3の形状としては、軸体2を手動により回転させることができればよく、例えば、棒状部材等が挙げられる。また、取手部3はあらかじめ軸体2に固定されていてもよいし、ねじ等により、都度取り付けるようにしてもよい。取手部3の材質については、特に限定されず、例えば、金属等が挙げられる。
【0018】
係合部材4は、略T字形状を有しており、上部4aと下部4bを備える。上部4aの両端部は他の部材等と係合する係合部4cになっている。軸体2の上面への係合部材4の取り付け方法としては、例えば、ホーローセット等を用いて取り付けることが考えられる。係合部材4の材質としては、貫入試験への影響を考慮して、軸体2と同じ金属を用いることが考えられるが、これに限定されず、他の金属等を用いてもよい。
【0019】
図3に示すように、下部材5は、上端部にフランジ部51を有しており、当該フランジ部51には略円形の開口部52が設けられている。また、下部材5は筒部55を有しており、当該筒部の下端側に大径部55aが設けられており、大径部55aの上方には小径部55bが設けられている。
図6に示すように、大径部55aの内周面は軸体2を支持しており、小径部55bの内周面は係合部材4の下部4bを支持している。
図5に示すように、当該開口部52には弾性部材53と前記弾性部材53の上部に載置されたばね座54が配置される。弾性部材53としては、例えば、ばね等が挙げられる。この構成により、ばね座54の上面と中間部材6の下面との間で、係合部材4の係合部4cを挟持することができる。
【0020】
図1に示すように、中間部材6は、下部材5の上方に配置される。
図4に示すように、中間部材6は、係合部材4を上下方向に摺動させる貫通孔61を備えている。貫通孔61は、係合部材4の形状に合わせて設けられる。
【0021】
上部材7は、前記中間部材6の上方に配置され、
図5に示すように、固定部材8によって、前記中間部材6と前記下部材5と共に固定される。固定部材8としては、貫入ピストン1が貫入試験に影響を与えない限り、特に限定されず、例えば、キャップボルト等が挙げられる。また、
図6に示すように、上部材7は、貫入試験における貫入が終了し、係合部材4が前記貫通孔61内を上方に摺動されたときに、係合部材4の上部4aを収容するための収容部71を有している。この場合、取手部3を用いて下部ユニット1aを回転させて、係合部材4の係合部4cを中間部材6の上面62と係合させることによって、係合部材4は収容部71内において係止される。
【0022】
また、
図5に示すように、中間部材6の上面62及び/又は下面63に係合部材4を係止する突出部64を設けてもよい。係合部材4が貫通孔61を摺動して抜け出した後、取手部3により下部ユニット1aを回転させることにより、当該突出部64が係合部材4の係合部4cと係合することで、係合部材4を容易に係止することが可能となる。突出部64としては、例えば、キャップボルト等が挙げられる。また、突出部64の位置としては、係合部材4が係止されればよく、特に限定されない。
【0023】
図6に示すように、マークMを軸体2に設けてもよい。マークMは、取手部3を用いて下部ユニット1aを上下動させるときに、軸体2と下部体5との重なり位置であってかつ下部ユニット1aを回転させる位置に付しておけばよく、軸体2の周囲全体に付す必要はない。また、軸体2の側面に溝を刻むようにしてもよいし、塗料やシールで印を付けるようにしてもよい。
【0024】
従来の土質試験機へ本発明の一実施形態に係る貫入ピストン1を装着することにより、貫入試験における貫入ピストン1の供試体への貫入前後の作業を迅速に行うことができる。なお、土質試験機にはCBR試験機も含まれるが、CBR試験における貫入試験に使用できる土質試験機であればよく、CBR試験機に限定されない。
【0025】
図6は、本発明の一実施形態である貫入ピストンの下部ユニットの上方向への移動方法の概略説明図である。従来例では、貫入試験における貫入終了後、土質試験機の動作によって貫入ピストンを上昇させていたが、
図6に示すように、本発明の一実施形態に係る貫入ピストン1の下部ユニット1aの移動方法においては、取手部3を用いて係合部材4が貫通孔31内を摺動できる位置まで下部ユニット1aを回転させた後(
図6(a))、取手部3を用いて下部ユニット1aを上昇させることで、貫通孔61内を摺動させて係合部材4を鉛直上方向にスライドさせることによって、上部材7の収容部71に係合部材4の上部4aを移動させ(
図6(b))、さらに取手部3を用いて下部ユニット1aを回転させることにより、係合部4cと中間部材6の上面62とを係合させて係合部材4を係止させる(
図6(c))。この後、供試体の入ったモールドを取り除く。そのため、迅速に動かすことができない従来の貫入ピストンを用いる土質試験機によって貫入ピストンを上昇させる場合と比べて、供試体への貫入後の作業を迅速に行うことができる。
【0026】
図7は、本発明の一実施形態である貫入ピストンの下部ユニットの下方向への移動方法の概略説明図である。複数の供試体について貫入試験を行う場合、供試体の入れ替え後に、土質試験機の動作によって貫入ピストンを下降させていたが、
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る貫入ピストン1の下部ユニット1aの移動方法においては、取手部3を用いて係合部材4が貫通孔61内を摺動できる位置まで下部ユニット1aを回転させた後(
図7(a))、取手部3を用いて下部ユニット1aを下降させることで、貫通孔61内を摺動させて係合部材4を鉛直下方向にスライドさせることによって、ばね座54まで係合部材4の上部4aを移動させ(
図7(b))、取手部3を用いてばね座54を押し下げながら下部ユニット1aを回転させることにより、係合部材4の係合部4cを中間部材6の下面63と係合させて中間部材6の下面63とばね座54の上面によって挟持させる(
図7(c))。そのため、迅速に動かすことができない従来の貫入ピストンを用いる土質試験機によって貫入ピストンを下降させる場合と比べて、供試体への貫入前の作業を迅速に行うことができる。また、貫入試験時においても、弾性部材53がばね座54を介して係合部材4の係合部4cを上方向に付勢することによって、係合部材4の係合部4cが中間部材6の下面63とばね座54の上面により安定的に挟持されるため、非常に大きな負荷が発生する貫入試験に影響を与えることもない。
【0027】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0028】
1 貫入ピストン
1a 下部ユニット
2 軸体
3 取手部
4 係合部材
4a 上部
4b 下部
4c 係合部
5 下部材
6 中間部材
7 下部材
51 フランジ部
52 開口部
53 弾性部材
54 ばね座
55 筒部
55a 大径部
55b 小径部
61 貫通孔
62 上面
63 下面
64 突出部
71 収容部