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特許7333674二酸化炭素吸収材、二酸化炭素吸収材の製造方法、二酸化炭素分離体および二酸化炭素分離回収装置
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  • 特許-二酸化炭素吸収材、二酸化炭素吸収材の製造方法、二酸化炭素分離体および二酸化炭素分離回収装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収材、二酸化炭素吸収材の製造方法、二酸化炭素分離体および二酸化炭素分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20230818BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230818BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230818BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230818BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230818BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01J20/28 A
B01J20/34 E
B01D53/14 100
C01B32/50
C08G77/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022516957
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021014974
(87)【国際公開番号】W WO2021215265
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020077543
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509185192
【氏名又は名称】株式会社 ACR
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】北村 武昭
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0186246(US,A1)
【文献】特表2018-502704(JP,A)
【文献】特表2008-530209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0029843(US,A1)
【文献】特開2019-130518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
B01D 53/14-53/18
C01B 32/50
C08G 77/26
C08G 77/54
C08G 77/388
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素吸収材であって、
下記の一般式[II]で表される、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなることを特徴とする、二酸化炭素吸収材。
【化1】
【請求項2】
二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素吸収材であって、
下記の一般式[III]で表される、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなることを特徴とする、二酸化炭素吸収材。
【化2】
【請求項3】
前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンが、多孔質支持体に含侵、複合されないことを特徴とする、請求項1または2に記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項4】
前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの一次平均粒子径が、500nm以下であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項5】
前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの比表面積が、100m/g以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項6】
前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端水酸基と、アミノシランとが、シロキサン結合をしてなることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項7】
前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端水酸基と、アルコキシシランとが、シロキサン結合をしてなることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項8】
ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンから、少なくとも一つを選んで脱水縮合してなることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【請求項9】
前記アミノシランが、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンの群から選ばれる一つ以上である、請求項に記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【請求項10】
アルコキシシランが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシランから選ばれる一つ以上である、請求項に記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【請求項11】
壁流通セラミックハニカムと、
請求項1~のいずれかに記載の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材を、備え、
前記二酸化炭素吸収材は、前記壁流通セラミックハニカムの壁通気孔に担持する、二酸化炭素分離体。
【請求項12】
二酸化炭素を常温、常圧下で吸着分離し、常温で、-80kPaG~-101kPaG(ゲージ圧)の真空圧力にて、二酸化炭素を供給する二酸化炭素分離回収装置であって、
請求項11に記載の二酸化炭素分離体を備える、二酸化炭素分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を大気中から常温、常圧で吸着分離し、真空圧力による二酸化炭素を回収または供給する、二酸化炭素吸収材および二酸化炭素吸収材の製造方法に関する。さらに、二酸化炭素を省エネルギーで分離し回収または供給する二酸化炭素分離体および二酸化炭素分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に起因すると考えられる気象変動や災害の頻発が、農業生産、住環境、エネルギー消費等に多大な影響を及ぼしている。地球温暖化の原因物質としては大気中の二酸化炭素が着目されており、その発生源として、石炭ガス化ガス(IGCC)、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、コークスで酸化鉄を還元する製鐵所の高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鐵所の転炉、各種製造所におけるボイラー、セメント工場におけるキルン等、さらには、ガソリン、重油、軽油等を燃料とする自動車、船舶、航空機等の輸送機器がある。これらのうち、輸送機器を除くものについては固定的な設備であるため、二酸化炭素の放出を削減する対策を施しやすい設備として期待されており、これら設備から排出される排ガス中の二酸化炭素を分離回収する方法の検討が進められている。
【0003】
また、これとは別に、潜水調査船、宇宙ステーション等の密閉空間において、人の呼吸や機器のエネルギー変換等で排出される二酸化炭素を閉空間外に放出するため、二酸化炭素を分離回収する検討もなされている。
【0004】
さらに、植物は、成長に伴い二酸化炭素を吸収する事により光合成を促進する。そして、光合成を促進することで、植物の成長速度が速くなることが知られている。二酸化炭素が葉の気孔より吸収されることにより、光合成を促進し、野菜、花、果樹類の味に旨みを持ち、収穫後に日持ちが良く、色つやや肥大に大きな効果をもたらし、野菜、花、果樹類をより高品質に作りあげることができる。
【0005】
果樹、花および野菜類をハウス栽培や室内栽培で生産する農園においては、人工気象器やガスボンベ、ドアライアイスおよび二酸化炭素発生剤等を使用して植物に炭酸ガスを与えている。
【0006】
しかしながら、二酸化炭素を必要とする期間は、成長期から開花後期、収穫期と長く、大規模のハウス栽培や室内栽培では、人工気象器、ガスボンベ、ドアライアイスおよび二酸化炭素発生剤等では、交換頻度が多く、コストが多大になることが課題であった。
【0007】
排ガスおよび大気中の二酸化炭素を回収またはリサイクルする吸収材および方法が、過去から研究され、そして現在も少ないエネルギーおよび低コストで二酸化炭素を回収する課題解決のため、研究が継続している。
【0008】
例えば、熱安定性の高いSBA―15などメソポーラスシリカを支持体として、その表面にシランカップリング剤を化学結合させた固体の二酸化炭素吸収材が、特許文献1に開示されている。
【0009】
特許文献1は、シランカプリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンであって、分子の末端にアルコシドが加水分解で得られたシラノールを形成し、支持体のシリカと脱水縮合して結合される。分子の他方は、一級および/または二級のアミノ基を有する有機アルキル鎖からなる。シランカップリング剤は、メソポーラスシリカ支持体の細孔容積全体を充填することができず、二酸化炭素を吸収するアミノ基の密度が低く、吸収の反応点が十分でない課題であった。また、実施例に、3-アミノプロピルトリエトキシシランAPS(ゲル)単体が開示されているが、比表面積が2m2/gと少なく、水分非共存のCO2吸着量が劣るものであった。
【0010】
特許文献2には、2-イソプロピルアミノエタノール単独あるいはピペラジン類を混合して支持体に担持した、固体の二酸化炭素吸収材が開示されている。
【0011】
特許文献3には、窒素原子上に少なくとも2つイソプロピル基を有するポリアミンが支持体に担持した、ポリアミン担持体を含有する二酸化炭素分離材が開示されている。
【0012】
特許文献4には、三級アルカノールアミン及び三級アルキルアミンと、触媒としてビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)コバルト、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)カルシウム、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)亜鉛、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)銅及びビス[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛とを含む水溶液に溶解又は懸濁されている液状吸着剤、または、支持体に担持されている固形吸着剤が開示されている。
【0013】
しかしながら、いずれも脱離(回収)速度が十分でなく、未だ実用化のための省エネルギーおよび低コストまで至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2004-261670号公報
【文献】特開2012-139622号公報
【文献】特許第6300457号公報
【文献】特許第6463186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素を分離吸収し、常圧に近い真空圧力のみで省エネルギーで効率よく、二酸化炭素を回収できる固形の二酸化炭素吸収材および二酸化炭素吸収材の製造方法、二酸化炭素吸収材を用いた二酸化炭素分離体および二酸化炭素分離回収装置を提供することを目的とする。
【0016】
本発明の第1の側面によって提供される二酸化炭素吸収材は、大気中、常温および常圧から発生源のガス圧で二酸化炭素を吸収分離することにある。本発明の第2の側面は、前記吸収分離された二酸化炭素を、常温で、-80kPaG~-101kPaG(ゲージ圧)の真空圧力のVSA(Vacuum Swing Adsorption)方式で、分離回収エネルギーを1.0GJ/t-CO2相当および分離コス1000円/t-CO2相当とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記特許文献1、2、3および4において、一級、二級および三級のアミン化合物を多孔質の支持体に含侵せしめて固体の二酸化炭素吸収材とし、それらのアミン化合物と二酸化炭素との反応からカルバメートおよび/または炭酸水素イオンを生成することで二酸化炭素を吸収(分離)し、その逆反応を起こすことで二酸化炭素の脱離(回収)を提案している。
【0018】
そこで、一級、二級および三級のアミン化合物と二酸化炭素との反応を以下に示す。
【0019】
まず、一級アミン(R-NH2)の水溶液を用いた二酸化炭素の吸収過程は、一般的に以下の式(a)~(c)で示される。
【0020】
[化1]
(a)2R-NH2 + CO2 → R-NH3 + + R-NH-COO-
(b)R-NH2 + CO2 + H2O → R-NH3 + + HCO3 -
(c)R-NH-COO- + H2O → R-NH2 + HCO3 -
【0021】
次に、二級アミン(R12-NH)の水溶液を用いた二酸化炭素の吸収過程は、一般的に以下の式(d)~(f)で示される。
【0022】
[化2]
(d)2R12-NH + CO2 → R12-NH2 + + R12-N-COO-
(e)R12-NH + CO22O → R12-NH2 + + HCO3 -
(f)R12-N-COO- + H2O → R12-NH + HCO3 -
【0023】
さらに、三級アミン(R123-N)の水溶液を用いた二酸化炭素の吸収過程は、一般的に以下の式(g)で示される。
【0024】
[化3]
(g)R123-N + CO2 + H2O → R123-NH+ + HCO3 -
【0025】
一級アミンと二級アミンとは、2モルのアミンとCO2から式(a)と式(d)のように反応してカルバメート生成してCO2を吸収する。CO2ガスに水分が含まれると、式(b)、式(c)、式(e)、式(f)のように反応して、炭酸水素イオンを生成してCO2を吸収する。
【0026】
一方、三級アミンは、CO2と水とが、式(g)のように反応して炭酸水素イオンを生成してCO2を吸収する。
【0027】
そのCO2の吸収は、生成熱の総和が発熱反応であって、一級アミン>二級アミン>三級アミンの順に大きく、CO2吸収速度が速い傾向がある。逆に、CO2の脱離(再生)は、吸熱反応であって、吸収と脱離との速度がトレードオフの関係にある。
【0028】
そこで、三級アミンは、一級および二級アミンと比較して、反応熱が小さいため、吸収速度が遅く、脱離(再生)速度が速くなることになるが、実際には、共存する水分に熱を奪われて脱離速度は速くない。
【0029】
本発明の固体二酸化炭素吸収材は、多孔質支持体に内包することなく、それ自身が三次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる比表面積100m2/g以上の多孔質構造であって、単位重量当たりのアミン官能基の有効密度が高く、多くの二酸化炭素を吸収せしめることができる。さらに、オルガノポリシロキサンからなることから疎水性が高く、ガス中の水分が多くとも影響を受けずカルバメート生成する式(d)反応のみが支配的で、官能基が二級アミンであることから反応熱が中程度で吸収速度および脱離速度がバランスよく、効率的な二酸化炭素の分離回収が可能である。
【0030】
本発明のCO2吸収材は、CO2の吸着速度と脱離速度、および脱離に要する省エネルギーのバランスについて、鋭意、研究した結果、二級アミン含有オルガノポリシロキサンに至った。
【0031】
本発明者等は、鋭意検討した結果、大気中、常温および常圧下で、大気中、常温および常圧で二酸化炭素を吸収し、かつ、真空圧力にて脱離して二酸化炭素を回収できる省エネルギーおよび低コストの二酸化炭素吸収材と回収方法を提供することができる。即ち、本発明は、以下の項1から項13の構成を成すものである。
【0032】
項1.二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素吸収材であって、下記の一般式[I]で表される、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなることを特徴とする、二酸化炭素吸収材。
【0033】
[化4]
(SiO2・SiO・6CH2n(NH)x(2CH2x-1 [I]
(式中、n=10以上の整数、X=1~10の整数である。)
【0034】
項2. 二級アミン含有オルガノポリシロキサンが、下記の式[II]で表される、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなることを特徴とする、項1に記載の二酸化炭素吸収材。
【0035】
【化5】
【0036】
項3.二級アミン含有オルガノポリシロキサンが、下記の式[III]で表される、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなることを特徴とする、項1に記載の二酸化炭素吸収材。
【0037】
【化6】
【0038】
項4.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンが、多孔質支持体に含侵、複合されないことを特徴とする、項1~3のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【0039】
項5.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの一次平均粒子径が、500nm以下であることを特徴とする、項1~4のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【0040】
項6.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの比表面積が、100m2/g以上であることを特徴とする、項1~5のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【0041】
項7.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端水酸基と、アミノシランとが、シロキサン結合をしてなることを特徴とする、項1~6のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【0042】
項8.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端水酸基と、アルコキシシランとが、シロキサン結合をしてなることを特徴とする、項1~6のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材。
【0043】
項9.前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンが、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンの群から、少なくとも一つを選んで、脱水縮合してなることを特徴とする、項1~6のいずれかに記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【0044】
項10.前記アミノシランが、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンの群から選ばれる一つ以上である、項7に記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【0045】
項11.アルコキシシランが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシランから選ばれる一つ以上である、項8に記載の二酸化炭素吸収材の製造方法。
【0046】
項12.壁流通セラミックハニカムと、項1~8のいずれかに記載の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材を、備え、前記二酸化炭素吸収材は、前記壁流通セラミックハニカムの壁通気孔に担持する、二酸化炭素分離体。
【0047】
項13.二酸化炭素を常温、常圧下で吸着分離し、常温で、-80kPaG~-101kPaG(ゲージ圧力)の真空圧力にて、二酸化炭素を供給する二酸化炭素分離回収装置であって、項12に記載の二酸化炭素分離体を備える、二酸化炭素分離回収装置。
【発明の効果】
【0048】
本発明の二酸化炭素吸収材は、二酸化炭素の吸収量が増加すると共に、短時間の減圧で多くの二酸化炭素を分離回収できるため、より効率的かつ実用的であり、二酸化炭素の再利用に適している。
【0049】
加えて、本発明の二酸化炭素吸収材は、水蒸気が共存する場合においても、吸収、脱離及び再吸収の性能が低下せず、除湿工程を必要としないため、省エネルギーのシステム構築及び装置の小型化によるコスト削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材が、二酸化炭素を吸収した分子構造の概念図。
図2】3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端を、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランで修飾された二酸化炭素吸収材が、二酸化炭素を吸収した分子構造の概念図。
図3】3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端を、n-プロピルトリメトキシシランで修飾された二酸化炭素吸収材が、二酸化炭素を吸収した分子構造の概念図。
図4】壁流通セラミックハニカムの多孔質な壁内部に、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの末端を、ジメチルジエトキシシランで修飾された二酸化炭素分離体の二酸化炭素を吸収した分子構造の概念図。
図5】二酸化炭素分離回収装置の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
本発明の二酸化炭素吸収材は、多孔質支持体に担持することなく、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンのみからなる。前記3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式[I]で表される。下記一般式[I]中、n=10以上の整数、X=1~10の整数である。
【0053】
[化7]
(SiO2・SiO・6CH2n(NH)x(2CH2x-1 [I]
【0054】
前記nは、より好ましくは100以上の整数である。また、前記Xは、より好ましくは、1~3の整数である。
【0055】
本発明において、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの具体的な例としては、2つのシロキサン結合の間に、1つの二級アミンを有する、下記式[II]で表されるアミノ化合物が挙げられる。下記式[II]中、n=10以上の整数である。
【0056】
【化8】
【0057】
さらに、2つのシロキサン結合の間に、2つの二級アミンを有する、下記式[III]で表されるアミノ化合物が挙げられる。式[III]中、n=10以上の整数である。
【0058】
【化9】
【0059】
本発明の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材は、一次平均粒子径が、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材の比表面積が、100m2/g以上であることが好ましく、180m2/g以上であることがより好ましい。
【0061】
本発明の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンは、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンの群から少なくとも一つを選んで原材料とし、脱水縮合して製造することができる。
【0062】
前記原材料は、水と混合して水和ゾルを生成し、その水和ゾルを80℃~150℃の加熱で2~20時間、脱水縮合させて得られる。より好ましくは、80~100℃、10~20時間の加熱が好ましい。
【0063】
[3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン末端水酸基の処理]
(アミノシランカップリング剤による処理)
本発明の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材は、末端に脱水縮合できない水酸基からなる残基を、アミノシランカップリング剤とでシロキサン結合を施し処理してもよい。
【0064】
(アミノシランカップリング剤の種類)
前記アミノシランカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンの群から少なくとも一つを選んでよい。
【0065】
(処理方法)
3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンを、水に攪拌分散させ、そこへ適量の前記アミノシランカップリング剤を加えて、濾過して、80℃~130℃で加熱乾燥することで、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの水酸残基とアミノシランカップリング剤とが、脱水縮合してシロキサン結合を有する、二酸化炭素吸収材が得られる。
【0066】
(アルコキシシランカップリング剤による処理)
前記アミノシランカップリング剤をアルコキシシランカップリング剤に代えて、前記と同様にして、本発明の3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材は、末端に脱水縮合できない水酸基からなる残基を、アルコキシシランカップリング剤とでシロキサン結合を施し処理してもよい。
【0067】
(アルコキシシランカップリング剤の種類)
前記アルコキシシランカップリング剤が、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシランの群から少なくとも一つを選んでよい。
【0068】
(処理方法)
3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンを、水に攪拌分散させ、そこへ適量の前記アルコキシシランカップリング剤を加えて、濾過して、80℃~130℃で加熱乾燥することで、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの水酸残基とアミノシランカップリング剤とが、脱水縮合してシロキサン結合を有する、二酸化炭素吸収材が得られる。
【0069】
(二酸化炭素分離体)
本発明の前記ゾルは、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる分離膜および分離体に成型加工して用いてもよい。
【0070】
(二酸化炭素分離体の製法)
例えば、分離体の一例として、自動車のディーゼル排ガス後処理に用いられている、煤を捕集し燃焼浄化するディーゼル微粒子捕集フィルター(以下、DPFという)を用いてもよい。DPFは、一般的に壁流通セラミックハニカムの構造であり、二酸化炭素吸収材の有効容積を増やす観点で、壁の気孔率が50~65%が好ましく、60~65%より好ましい。壁の平均孔径が7~20μmが好ましく、13~20μmが好ましい。ハニカムセル数は200~400とすることが好ましく、300~400とすることがより好ましい。セル数の増加にともない、壁厚みを0.3~0.46mmとすることが好ましく、0.3~0.4mmとすることがより好ましい。前記DPFの壁に中に、本発明の前記水和ゾルを含侵し、3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンを形成し、分離体を得ることができる。分離体の概念図を図4に示す。
【0071】
(吸収体)
さらに、本発明の前記水和ゾルは、スリーブ、ペレットおよびビーズの形状にペレタイザー等の公知方法で成型加工し、加熱脱水縮合して、吸収棟に充填し用いてもよい。前記成型加工時に、バインダーを用いずとも形状加工が可能であることから、二酸化炭素吸収性能を保持できる利点がある。
【0072】
(二酸化炭素分離回収装置)
本発明の二酸化炭素分離回収装置は、支持体を用いず多孔質である3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンを、スリーブ、ペレットに成型してなる吸収体、またはDPF等に担持した分離体、またはメッシュまたは網目を有する骨材に膜を形成した板状またはスリーブ状にした加工物を、図5に示す吸着カラムに充填して、常圧、常温下で二酸化炭素を短時間(例えば、5分間)吸収する。表1に、図5で登場する記号の名称を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
一方、二酸化炭素の脱離(分離)は、真空ポンプを用いて減圧-80~-101kPaG(ゲージ圧)、常温(例えば、5分間)で行うことができる。二酸化炭素の吸収と脱離を交互にサイクルで行い、二酸化炭素のリサイクル用途に必要に応じて、バッファータンクに保持および/または加圧ポンプにて圧縮ボンベに回収保存する。
【0075】
本発明の二酸化炭素分離回収装置の運転方法の一例を、表2に示す。表2に記載の洗浄工程は、二酸化炭素の純度を高めることが必要なリサイクル用途に応じて、行えば良い。例えば、その場で二酸化炭素を使用する植物の生育の場合は、洗浄工程は必要としない。
【0076】
【表2】
【実施例
【0077】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
実施例1は、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンを原料として、加水分解したシラノールを、加熱にて脱水縮合して三次元の網目構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンからなる二酸化炭素吸収材を得た。
【0079】
まず、イオン交換水30gを攪拌しながら、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(東京化成工業製)を加えゾルを得た。その後、濾過水洗後、80℃で16時間乾燥して、三次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの粉末を乳鉢で粉砕して、二酸化炭素吸収材とした。得られた二酸化炭素吸収材は、平均粒径が213nm、比表面積が186m2/gであった。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0080】
(実施例2)
実施例2は、実施例1のビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンに代えて、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンとした以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素吸収材を得た。
【0081】
イオン交換水30gを攪拌しながら、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(Merck KGaA製)を加えゾルを得た。その後、濾過水洗後、80℃で16時間乾燥して、三次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサンの粉末を乳鉢で粉砕して、二酸化炭素吸収材とした。得られた二酸化炭素吸収材は、平均粒径が385nm、比表面積が233m2/gであった。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0082】
(実施例3)
実施例3は、実施例1で得られた三次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン粉末の末端水酸基を、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いて、脱水縮合し処理した。まず、イオン交換水30gを攪拌しながら、実施例1で得られた3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン粉末1gを分散させ、そこへN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.1g加え、30分攪拌を継続した。その後、濾過水洗後、80℃で16時間乾燥して、処理された粉末を乳鉢で粉砕して、二酸化炭素吸収材とした。得られた二酸化炭素吸収材は、平均粒径が274nm、比表面積が174m2/gであった。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0083】
(実施例4)
実施例4は、実施例1で得られた三次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン粉末の末端水酸基を、n-プロピルトリエトキシシランを用いて、脱水縮合し処理した。まず、イオン交換水30gを攪拌しながら、実施例1で得られた3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン粉末1gを分散させ、そこへn-プロピルトリエトキシシラン0.1g加え、30分攪拌継続した。その後、濾過水洗後、80℃で16時間乾燥して、処理された粉末を乳鉢で粉砕して、二酸化炭素吸収材とした。得られた二酸化炭素吸収材は、平均粒径が258nm、比表面積が176m2/gであった。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0084】
(比較例1)
比較例1では、メソポーラスシリカSBA-15を支持体として、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンで処理した二酸化炭素固体吸収材の粉末を用いた。
【0085】
(メソポーラスシリカSBA-15の調整方法)
まず、蒸留水1.3dm3に、ポリエチレンオキサイド鎖-ポリプロピレンオキサイド鎖-ポリエチレンオキサイド鎖を有するトリブロックコポリマー(略名:EO20PO70EO20、)50gを溶解させた溶液にテトラエトキシシラン(略名:TEOS、キシダ化学株式会社製)110gを添加し、5分間撹拌した。この溶液に36容量%塩酸(和光純薬株式会社製)175cm3を30分かけて添加した後、35℃、20時間加熱撹拌し、さらに95℃、24時間加熱撹拌した。生成した固形物を吸引濾過により回収し、蒸留水4dm3で洗浄した後、この固形物を70℃に保持した恒温槽中にて1夜乾燥して、メソポーラスシリカSBA-15の粉末を得た。
【0086】
(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン処理
次に、125℃に保持した恒温槽中にて6時間乾燥した支持体SBA-15 5.0gを脱水トルエン250cm3(和光純薬株式会社製)に添加し、5分間撹拌した後、これに(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(アルドリッチ社製)、50cm3を添加した。この混合物をアルゴンガス気流中にて110℃、24時間還流撹拌した後、室温まで冷却した。冷却した混合物を吸引濾過により回収した固形物を脱水トルエン200cm3(和光純薬株式会社製)で洗浄した後、60℃に保持した恒温槽中にて1夜乾燥することによって(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンで処理した支持体の粉末を得た。この粉末は、平均粒子径が、10μmであって、比表面積が355m2/gであった。得られた粉末を二酸化炭素固体吸収材として、後述の二酸化炭素分離・回収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0087】
(比較例2)
比較例2は、支持体を用いず、3-アミノプロピルトリエトキシシランを脱水縮合させて得られたゲルである。まず、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(米国、アルドリッチ(Aldrich)社製)をテフロン(登録商標)製シャーレに採取し、水蒸気を飽和させた25℃のデシケーター中にて、24時間放置し、さらに水蒸気を飽和させた約60℃のデシケーター中にて、24時間放置し、その後、60℃の恒温槽中にて一夜乾燥してシランカップリング剤を加水分解・縮合して粉末を得た。この粉末は、平均粒子径が、3μmであって、比表面積が0.1m2/gであった。得られた粉末を二酸化炭素固体吸収材として、後述の二酸化炭素分離・回収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0088】
(比較例3)
比較例3は、ポリメチルメタクリレートPMMAのビーズを2-イソプロピルアミノエタノール(IPAE)で処理した、二酸化炭素吸収材である。まず、2-イソプロピルアミノエタノール(IPAE)を固体吸収材の40重量%となるように所定量(合計6.67g)秤量し、容量300ccのなすフラスコに計りとったメタノール(和光純薬工業特級)20gに溶解させた後、そこへ、アミンを担持する支持体としてはポリメチルメタクリレートPMMAのビーズ(三菱化学株式会社製ダイヤイオンHP2MG;有効径0.3mm以上;比表面積570m2/g;細孔容積1.3mL/g)を10g加え、室温で、2時間撹拌した後に、これをロータリーエバポレーター(EYELA社製N-1000)で50℃に加熱しながら、系内の圧力が0.03MPaになるまで減圧することで、メタノール溶媒を除去し、アミンを支持体に均一に担持した固体吸収材を調製した。メタノール溶媒の除去は、フラスコと試薬類の合計の重さをあらかじめ計り取り、メタノール溶媒に相当する20gの重量減少が確認できた時点で調製完了とした。このPMMAビーズは、比表面積が173m2/gであった。得られたビーズは、二酸化炭素吸収材として、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。
【0089】
(比較例4)
比較例4は、メソポーラスシリカMSU-Fをジイソプロピル化テトラエチレンペンタミンで処理した、二酸化炭素吸収材である。
【0090】
(ジイソプロピル化テトラエチレンペンタミン(以下、「IP-TEPA」)の合成)
まず、テトラエチレンペンタミン(TEPA) 1mol及び撹拌子を、還流管を取り付けた2Lフラスコに入れ、これにごく少量の水に溶解した炭酸カリウム 2.0molをフラスコに加えた。このフラスコを氷冷しながら混合物を撹拌しているところに、これに2-ブロモプロパン 2.0molを溶解したエタノール 400mLをゆっくり滴下した。エタノール溶液の滴下が終了した後、フラスコを室温に戻し、室温で36時間反応溶液を撹拌した。反応の終了を液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)で確認した後、水とエタノールを40℃で減圧除去し、残渣を得た。得られた残渣にメタノールを加え、不溶物を濾過した。メタノールを減圧除去し、淡黄色透明液体であるIP-TEPAを259.79g(収率95%)で得た。
【0091】
(IP-TEPA(40)/MSU-F)の作製
次に、得られたIP-TEPAを二酸化炭素分離材の40重量%となるように、定量秤量し、これを容量300ccのナスフラスコに量りとったメタノール(和光純薬工業社製;特級) 20gに溶解させた。その後、別途秤量した支持体MSU-F(アルドリッチ社製;メソポーラスシリカ;比表面積550m2/g、細孔径20nm、細孔容積2.0mL/g) 10gにこれを加え、室温で2時間攪拌した後、これをロータリーエバポレーター(EYELA社製;N-1000)で60℃に加熱しながら、系内の圧力が0.03MPaになるまで減圧することで、メタノール溶媒を除去し、アミンを支持体に均一に担持した二酸化炭素固体吸収材を調製した。メタノール溶媒の除去は、フラスコと試薬類の合計の重さを予め量り取り、メタノール溶媒に相当する20gの重量減少が確認できた時点で調製完了とした。この二酸化炭素固体吸収材の平均粒子径が、13μmであって、比表面積が84m2/gであった。得られた二酸化炭素固体吸収材の粉末は、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0092】
(比較例5)
比較例5は、支持体MSU-FをポリメチルメタクリレートPMMAのビーズ(HP2MG)に代えた以外は、比較例4と同様にして、二酸化炭素固体吸収材のビーズを得た。
【0093】
(IP-TEPA(40)/PPMA)の作製
比較例4と同様にして、得られたIP-TEPAを二酸化炭素分離材の40重量%となるように定量秤量し、支持体としてポリメチルメタクリレートPMMAのビーズ(三菱化学株式会社製;ダイヤイオン(登録商標)HP2MG;有効径0.3mm以上、比表面積570m2/g、細孔径19nm、細孔容積1.3mL/g) 10gを用いた。
【0094】
IP-TEPA(40)を内包したPMMAビーズは、平均粒子径が、0.34mmであって、比表面積が99m2/gであった。得られた二酸化炭素固体吸収材のビーズは、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0095】
(比較例6)
比較例6は、IP-TEPAをIP―Spermineに代えて合成した以外は、比較例5と同様にして、ポリメチルメタクリレートPPMAのビーズ(HP2MG)に処理して、二酸化炭素固体吸収材のビーズを得た。
【0096】
ジイソプロピル化スペルミン(以下、「IP-Spermine」という)合成
スペルミン25g(0.12mol)及び撹拌子を、還流管を取り付けた500mLフラスコに入れ、これにごく少量の水に溶解した炭酸カリウム0.49molをフラスコに加えた。このフラスコを氷冷しながら混合物を撹拌しているところに、2-ブロモプロパン60.78g(0.49mol)を溶解したエタノール150mLをゆっくり滴下した。エタノール溶液の滴下が終了した後、フラスコを室温に戻し、室温で36時間反応溶液を撹拌した。反応終了後、水とエタノールを40℃で減圧除去し、残渣を得た。得られた残渣にメタノールを加え、不溶物を濾過した。メタノールを減圧除去し、無色液体であるIP-Spermineを29.42g(収率83%)で得た。
【0097】
(IP-Spermine(40)/PPMA)の作製
次に、得られたIP-Spermineを二酸化炭素分離材の40重量%となるように定量秤量し、支持体としてポリメチルメタクリレートビーズ(三菱化学株式会社製;ダイヤイオン(登録商標)HP2MG;有効径0.3mm以上、比表面積570m2/g、細孔径19nm、細孔容積1.3mL/g) 10gを用いた。得られた二酸化炭素固体吸収材のビーズは、平均粒径が0.33mm、比表面積が97m2/gであって、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0098】
(比較例7)
比較例7は、ポリメチルメタクリレートPMMビーズに、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサンと[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛とで処理した、二酸化炭素固体吸収材のビーズである。
【0099】
三級アルキルアミンであるN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH)を水に加えて混和し、TMDAH:30重量%、水:70重量%とした。触媒として[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛(BOPZ)の添加量は、アミン化合物TMDAHの1.0重量%とした。前記BOPZは、吸収剤TMDAHに対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0100】
次に、前記BOPZを含む吸収剤TMDAHが固体吸収材の40重量%となるように所定量(合計6.67g)秤量し、容量300ccのなすフラスコに計りとったメタノール(和光純薬工業特級)20gに溶解させた後、担持する支持体としては、比較例3と同様にしてポリメチルメタクリレートPMMビーズ(HP2MG)を10g加え、室温で、2時間撹拌した後に、これをロータリーエバポレーター(EYELA社製N-1000)で50℃に加熱しながら、系内の圧力が0.03MPaになるまで減圧することで、メタノール溶媒を除去し、アミンを支持体ビーズに均一に処理して、二酸化炭素固体吸収材のビーズを調製した。この処理されたビーズは、平均粒径が0.35mmで、比表面積が168m2/gであった。得られた二酸化炭素固体吸収材のビーズは、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0101】
(比較例8)
比較例7は、[2-(2-ベンズオキサゾリル)フェノレイト]亜鉛を、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウムに代えた以外は、比較例7と同様にして、二酸化炭素固体吸収材を作製した。三級アルキルアミンであるTMDAHを水に加えて混和し、TMDAH:30重量%、水:70重量%とした。触媒として、ビス(2,4-ペンタンジオネイト)マグネシウム(PDM)の添加量は、アミン化合物TMDAHの2.5重量%とした。前記PDMは、吸収剤TMDAHに対し溶解性を持たないため、該吸収剤中で不均一に懸濁させた。
【0102】
次に、前記PDMを含む吸収剤TMDAHが固体吸収材の40重量%となるように所定量(合計6.67g)秤量し、容量300ccのなすフラスコに計りとったメタノール(和光純薬工業特級)20gに溶解させた後、担持する支持体としては、比較例3と同様にしてポリメチルメタクリレートPMMAビーズ(HP2MG)を10g加え、室温で、2時間撹拌した後に、これをロータリーエバポレーター(EYELA社製N-1000)で50℃に加熱しながら、系内の圧力が0.03MPaになるまで減圧することで、メタノール溶媒を除去し、アミンを支持体ビーズに均一に処理して、二酸化炭素固体吸収材を調製した。この処理されたビーズは、平均粒子径が0.34mmで、比表面積が155m2/gであった。得られた二酸化炭素固体吸収材のビーズは、後述の二酸化炭素吸収性能評価試験に用いた。なお、平均粒径は、電子顕微鏡の像から、n=100個を測定し、測定値を算術平均して求めた。
【0103】
(二酸化炭素分離・回収性能評価試験)
この様にして得られた、実施例1~3および比較例1~8の二酸化炭素吸収材1.0gを、ガラス製のU字管(内径10mm、高さ150mm)に充填し、両端をガラスウールで固定した。恒温水槽を用いて、前記固体吸収材を充填したガラス製のU字管を浸漬し、温度が25℃になるように設定し反応管とした。この固体吸収材を充填した反応管の片側から、大気圧で、0.5L/分で二酸化炭素20体積%及び窒素ガス80体積%の混合ガスを流通した。
【0104】
反応管の入口および出口のガス中の二酸化炭素濃度を、二酸化炭素計(堀場製作所製ガス分析計VA-3001)で連続的に測定して、反応管の入口および出口の二酸化炭素流量の差から5分間の二酸化炭素吸収量(A)を測定した。次に、反応管の入口を弁で閉じ、出口側を真空ポンプにより減圧排気しながら、二酸化炭素流量を連続的して5分間の二酸化炭素の脱離(回収)量(B)を測定した。真空圧力は、減圧開始後、1分で-100kPaGに到達し、その後保持した。得られた結果は、二酸化炭素吸収材1kg当たりの二酸化炭素量(g)として表3に示す。
【0105】
次に、混合ガスに加湿器を用いて水蒸気を加え相対湿度80%RHとした以外は、前記と同様にして、25℃における5分間の二酸化炭素吸収量(A)と、減圧-100kPaGにおける5分間の二酸化炭素の脱離(回収)量(B)とを測定した。得られた結果は、二酸化炭素吸収材1kg当たりの二酸化炭素量(g)として表4に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
上記の表3および表4が示す通り、実施例1~4は、比較例1~8に比べ、常温常圧、5分の短時間で二酸化炭素を多く吸収し、同様にして5分間の減圧で脱離(分離)も90%以上と、効率的に回収できること実証された。
【符号の説明】
【0109】
1 3次元構造を有する二級アミン含有オルガノポリシロキサン
10 二酸化炭素のカルバメート化による吸収
11 N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランでの修飾
12 n-プロピルトリメトキシシランで修飾
13 ジメチルジエトキシシランでの修飾
14 壁流通型セラミックハニカム
15 壁流通内部
図1
図2
図3
図4
図5