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特許7333677タッチング評価装置及びタッチング評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】タッチング評価装置及びタッチング評価方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20230818BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20230818BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230818BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B23/28
G09B9/00 Z
A61B5/00 101N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022568341
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045423
(87)【国際公開番号】W WO2022124384
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020205224
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519105717
【氏名又は名称】アイグレー合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】前川 知子
(72)【発明者】
【氏名】見谷 貴代
(72)【発明者】
【氏名】辰己 浩之
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-87206(JP,A)
【文献】特開2012-37626(JP,A)
【文献】特開2010-286558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H7/00-15/02
39/00-39/08
G09B1/00-9/56
17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触者の手が、少なくとも2つの異なる位置で接触圧力を検出可能な2つのセンサーに順次タッチングすると、当該2つのセンサーに基づいて、各位置で経時的に変化する前記接触者の手の接触圧力と、前記接触者の手の接触速度とのそれぞれを測定値として測定する測定制御部と、
前記測定値と、接触者が被接触者にタッチングすることで被接触者が心地よいと感じるために予め設定された基準範囲とを比較して、前記測定値が前記基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する判定制御部と、
全ての測定値が、対応する基準範囲内にそれぞれ含まれる場合、前記接触者のタッチングは心地よいタッチングと評価し、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れた場合、前記接触者のタッチングは不快なタッチングと評価する評価制御部と、
を備え、
前記接触圧力に対応する圧力基準範囲は、顔以外の全身のタッチングでは、0.001kgf/cm2-2.000kgf/cm2の範囲であり、顔のタッチングでは、0.001kgf/cm2-1.000kgf/cm2の範囲であり、
前記接触速度に対応する速度基準範囲は、1cm/sec-20cm/secの範囲である、
タッチング評価装置。
【請求項2】
前記センサーが温度センサーを含む場合、前記測定制御部は、前記温度センサーに基づいて、前記接触者の手の接触温度を、更に、測定値として測定し、
前記接触温度に対応する温度基準範囲は、25度-45度の範囲である、
請求項1に記載のタッチング評価装置。
【請求項3】
接触者の手が、少なくとも2つの異なる位置で接触圧力を検出可能な2つのセンサーに順次タッチングすると、当該2つのセンサーに基づいて、各位置で経時的に変化する前記接触者の手の接触圧力と、前記接触者の手の接触速度とのそれぞれを測定値として測定する測定制御工程と、
前記測定値と、接触者が被接触者にタッチングすることで被接触者が心地よいと感じるために予め設定された基準範囲とを比較して、前記測定値が前記基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する判定制御工程と、
全ての測定値が、対応する基準範囲内にそれぞれ含まれる場合、前記接触者のタッチングは心地よいタッチングと評価し、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れた場合、前記接触者のタッチングは不快なタッチングと評価する評価制御工程と、
を備え、
前記接触圧力に対応する圧力基準範囲は、顔以外の全身のタッチングでは、0.001kgf/cm2-2.000kgf/cm2の範囲であり、顔のタッチングでは、0.001kgf/cm2-1.000kgf/cm2の範囲であり、
前記接触速度に対応する速度基準範囲は、1cm/sec-20cm/secの範囲である、
タッチング評価方法。
【請求項4】
前記センサーが温度センサーを含む場合、前記測定制御工程は、前記温度センサーに基づいて、前記接触者の手の接触温度を、更に、測定値として測定し、
前記接触温度に対応する温度基準範囲は、25度-45度の範囲である、
請求項3に記載のタッチング評価方法。
【請求項5】
接触者の手が、少なくとも2つの異なる位置で接触圧力を検出可能な2つのセンサーに順次タッチングすると、当該2つのセンサーに基づいて、各位置で経時的に変化する前記接触者の手の接触圧力と、前記接触者の手の接触速度とのそれぞれを測定値として測定する測定制御工程と、
前記測定値と、接触者が被接触者にタッチングすることで被接触者が心地よいと感じるために予め設定された基準範囲とを比較して、前記測定値が前記基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する判定制御工程と、
全ての測定値が、対応する基準範囲内にそれぞれ含まれる場合、前記接触者のタッチングは心地よいタッチングと評価し、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れた場合、前記接触者のタッチングは不快なタッチングと評価する評価制御工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記接触圧力に対応する圧力基準範囲は、顔以外の全身のタッチングでは、0.001kgf/cm2-2.000kgf/cm2の範囲であり、顔のタッチングでは、0.001kgf/cm2-1.000kgf/cm2の範囲であり、
前記接触速度に対応する速度基準範囲は、1cm/sec-20cm/secの範囲である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチング評価装置及びタッチング評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチングとは、非言語的コミュニケーションの一つで、接触者が手のひらで患者の身体に触れることをいう。タッチングには、マッサージや指圧など、治療を目的とするタッチングや、バイタルサインの測定や清拭、検査など処置目的のタッチング、苦痛・不安の軽減や励ましなど、コミュニケーションを主体とした共感的タッチングがある。
【0003】
看護師等の支援者が、終末期のがんや認知症等の病気を患った患者の身体、例えば、手や腕に手のひらで触れて、患者の闘病の辛さや不安を和らげる場合は、共感的タッチングになり、支援者が、患者に優しく触れることで、患者の苦痛や不安、抑うつ、孤独感、緊張等を軽減させて、副交感神経を亢進し、患者を精神的、身体的な安定に導くことが出来る。
【0004】
一方、近年では、押圧力等の測定機器の開発が進んでいる。例えば、特開2005-352927号公報(特許文献1)には、シート状のセンサーと、コントローラと、アクチュエータと、駆動手段とを有する入力装置が開示されている。又、特開2012-34790号公報(特許文献2)には、体組織内の接触圧力を測定する接触圧力測定システムが開示されている。特開2013-134126号公報(特許文献3)には、支持体と、圧力センサーと、可撓性材料と、を備えた生体信号検出体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-352927号公報
【文献】特開2012-34790号公報
【文献】特開2013-134126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共感的タッチングでは、教育現場に限らず、病院や介護施設、ベビータッチング、ベビーマッサージ、子供の情操教育、美容等において実施されているが、様々な現場で、被接触者に対して心地よいタッチングを広めていくためには、誰がタッチングをしても、被接触者に心地よさを感じてもらうための基準を明確にし、その基準に基づいて、接触者のタッチングを評価し、タッチングの再現性を確保していく必要がある。
【0007】
しかしながら、現在、被接触者が接触者にタッチされて心地よいと感じるための基準が明確に存在せず、心地よいタッチングを精度高く評価することが出来ないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、心地よさを生じさせるタッチングの基準に基づいて、タッチングを精度高く評価することが可能なタッチング評価装置及びタッチング評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタッチング評価装置は、測定制御部と、判定制御部と、評価制御部と、を備える。測定制御部は、接触者の手が、少なくとも2つの異なる位置で接触圧力を検出可能な2つのセンサーに順次タッチングすると、当該2つのセンサーに基づいて、各位置で経時的に変化する前記接触者の手の接触圧力と、前記接触者の手の接触速度とのそれぞれを測定値として測定する。判定制御部は、前記測定値と、前記接触者が被接触者にタッチングすることで当該被接触者が心地よいと感じるために予め設定された基準範囲とを比較して、前記測定値が前記基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する。評価制御部は、全ての測定値が、対応する基準範囲内にそれぞれ含まれる場合、前記接触者のタッチングは心地よいタッチングと評価し、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れた場合、前記接触者のタッチングは不快なタッチングと評価する。前記接触圧力に対応する圧力基準範囲は、顔以外の全身のタッチングでは、0.001kgf/cm-2.000kgf/cmの範囲であり、顔のタッチングでは、0.001kgf/cm-1.000kgf/cmの範囲であり、前記接触速度に対応する速度基準範囲は、1cm/sec-20cm/secの範囲である。
【0010】
本発明に係るタッチング評価方法は、測定制御工程と、判定制御工程と、評価制御工程と、を備える。タッチング評価方法の各制御工程は、タッチング評価装置の各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、心地よさを生じさせるタッチングの基準に基づいて、タッチングを精度高く評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る接触者のタッチングから被接触者が心地よさを感じるまでの一例を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係るタッチング評価装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るタッチング用基材の一例を示す概略図(図3A)と、タッチング用補助基材の一例を示す概略図(図3B)とである。
図4】本発明の実施形態に係るタッチング評価方法の実行手順を示すためのフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る接触者の最初のタッチングと接触圧力の経時的変化を示すグラフの一例を示す斜視図(図5A)と、本発明の実施形態に係る接触者の次のタッチングと接触圧力の経時的変化を示すグラフの一例を示す斜視図(図5B)と、である。
図6】不快なタッチングを含む接触圧力の経時的変化を示す3種類のグラフ(図7A)と、心地よいタッチングを示す接触圧力の経時的変化を示すグラフと接触速度(図7B)と、である。
図7】タッチング用基材及びセンサーがタッチパネル式端末装置である場合のタッチングの一例を示す斜視図(図7A)と、タッチング用基材に6つのセンサーが設置された場合のタッチングと接触圧力の経時的変化を示すグラフ(図7B)と、である。
図8】本発明の実施形態に係る複数のスポット状の複合センサーの設置形態の一例を示す斜視図(図8A)と、本発明の実施形態に係るシート状の複合センサーの設置形態の一例を示す斜視図(図8B)と、である。
図9】本発明の実施形態に係る前腕の人体模型と、皮膚分節と、筋肉との関係と、特定のラインの一例を示す斜視図である。
図10】実施例1-4と比較例1-5のタッチングの評価条件と評価結果を示す表である。
図11】実施例5-11のタッチングの評価条件と評価結果を示す表である。
図12】実施例12-15と比較例7-9のタッチングの評価条件と評価結果を示す表である。
図13】実施例16-19と比較例10-12のタッチングの評価条件と評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
タッチングには、接触者が被接触者にタッチングを実施した時に、被接触者が心地よいと感じることが重要である。接触者が被接触者にタッチングを実施した際に、被接触者の皮膚感覚が、被接触者の神経を介して被接触者の脳に伝わり、被接触者の全身に影響を及ぼす。
【0015】
具体的には、図1に示すように、先ず、接触者Aが被接触者Bの皮膚B1、例えば、前腕を手(具体的には、手のひらの接触面A1)でタッチングを実施すると、被接触者Bの皮膚B1に存在する、非識別性の触覚、温冷覚の感覚受容器が反応して信号を発し、感覚受容器に接続された皮膚感覚を伝える神経B2が、その信号を脊髄の神経B3に伝達する。次に、神経B3は、その信号のほとんどを脳幹網様体B4に伝える。
【0016】
脳幹網様体B4に伝わった信号は、扁桃体B5(大脳辺縁系)と視床、視床下部、島皮質B6等に伝わり、扁桃体B5、島皮質B6で脳に精神的なリラックスを促す。同時に、視床下部B6では、自律神経系に影響を及ぼし、副交感神経を亢進し、血圧の低下や心拍数の減少を促す。又、視床に伝わった信号は、脳全体に伝播する。この信号のうち、一部の信号が、第一次体性感覚野B7に伝わって、被接触者Bは、自身の身体のうち、どこの位置に触れられたかを認識する。
【0017】
ここで、接触者Aのタッチングによる被接触者Bの触覚の刺激は、感覚受容器の皮膚感覚を伝える神経B2、B3を介して脳に伝わって、被接触者Bの全身に影響を及ぼす。特に、接触者Aのタッチングによる被接触者Bの触覚に対する、柔らかく、且つ、緩やかな速度の特定の刺激は、被接触者Bの皮膚B1の感覚受容器を反応させてから、扁桃体B5、島皮質B6、視床下部B6での不安や恐怖の軽減と、自律神経の調整とを効果的に促す。これが、タッチングによる被接触者Bが感じる心地よさである。
【0018】
本発明者は、長年、接触者Aのタッチングによる被接触者Bの心地よさを研究しており、タッチングによる被接触者Bでの一連の反応を短時間で引き起こし、不安や緊張の軽減と副交感神経の亢進とを最大限に引き出すためには、接触者Aの手(例えば、手のひらの接触面A1)の接触圧力と、接触速度とが重要であることを、後述する実施例及び比較例に基づいて見出した。そして、本発明者は、実施例及び比較例に基づいて、タッチングを評価するための装置及び方法を発明したのである。
【0019】
即ち、本発明に係るタッチング評価装置1は、図2に示すように、タッチング用基材10と、少なくとも2つのセンサー11と、端末装置12と、を備える。2つのセンサー11は、接触圧力と接触速度とを検出するために必要最低限の数のセンサーである。タッチング用基材10は、接触者Aがタッチングする対象物であり、2つのセンサー11を組み込むことが可能であれば、特に限定は無い。例えば、図2に示すように、タッチング用基材10を半円柱に構成して、半円柱の外周面に2つのセンサー11を所定の間隔に配置しても良い。又、直方体状のシートに構成して、そのシート10に2つ以上のセンサー11を所定の間隔に配置することで、タッチング用基材10と2つ以上のセンサー11とを構成しても良い。図3Aに示すように、タッチング用基材10を直方体に構成し、そのシート10に2つのセンサー11を配置することで、タッチング用基材10と2つのセンサー11とを構成しても良い。タッチング用基材10の形状に特に限定は無く、半円柱に構成したタッチング用基材10の外周面に2つ以上のセンサー11を所定の間隔に配置しても良い。又、半円柱の直径を構成する平面を下面にして、半円柱の上面に位置する部分を水平方向に切断して、半円柱の外周面と切断面に2つ以上のセンサー11を等間隔に配置しても良い。タッチング用基材10は、半楕円柱の他に、半四角柱、半五角柱、半六角柱、半八角柱、半十角柱、半十六角柱等の半多角柱に構成しても良い。その場合は、これらの外周面に2つ以上のセンサー11が配置される。
【0020】
又、2つ以上のセンサー11を、タッチングの圧力や位置を測定可能なタッチパネル式端末装置12で構成する場合、タッチパネル式端末装置12自体をタッチング用基材10とセンサー11として使用しても良い。この場合の端末装置12は、例えば、タブレット型端末装置、タッチパネル式携帯端末装置等を挙げることが出来る。ここで、端末装置12のタッチパネルをそのままセンター11として活用しても良く、タッチパネルは圧力センサーと位置センサーとして機能する。又、図3Bに示すように、例えば、直方体状のシート10aに、複数の突起10bを所定の間隔に配置したタッチング用補助基材10cを用意し、複数の突起10bをタッチパネルPの接触面に接触させた状態で、タッチング用補助基材10cを端末装置12のタッチパネルPに配置することで、タッチング用基材10とセンサー11とを構成しても良い。この場合、接触者は、タッチング用補助基材10cの突起10bが存在しない面をタッチングすることで、突起10bがタッチパネルPに接触し、接触者の手の接触圧力と接触速度とを測定することが出来る。このように構成することで、接触者が保有するタッチパネル式端末装置12をセンサーとして活用して、手軽にタッチングを評価することが可能となる。尚、タッチング用基材10とタッチング用補助基材10cの素材に特に限定は無く、合成樹脂等の可撓性の材質でも良いし、スポンジやゴム等の弾性の材質でも構わない。
【0021】
又、図2に示すように、タッチング用基材10は、右側の前腕の人体模型として構成しても良い。これにより、接触者Aは、非接触者Bを意識してタッチングを行うことが出来る。ここで、人体模型の種類に特に限定は無く、例えば、左側の前腕や左右側の手の甲、左右側の手のひら、顔、全身等を挙げることが出来る。
【0022】
又、センサー11は、圧力センサーとスポンジやゴムなどの弾性の複合センサーで構成しても良い。弾性の複合センサー11の場合、接触者Aの手が弾性の複合センサー11を手でタッチングすると、手の圧力で弾性の複合センサーが凹むことで、凹み量から手の接触圧力を測定することが出来る。
【0023】
センサー11の設置位置は、相互のセンサー11の位置間隔が既知であれば、センサー11の設置位置に特に限定は無い。後述のように、被接触者Bの皮膚における接触者Aの手の走行の接触経路(接触ルート)が重要である場合は、タッチング用基材10を人体模型10にして、皮膚分節(デルマトーム)又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のライン上の位置にセンサー11を設置すると好ましい。これにより、接触者Aの手が、皮膚分節又は筋肉の走行に沿って移動しているか否かを判定することが可能となる。
【0024】
又、センサー11の設置方法に特に限定は無いが、例えば、図2に示すように、タッチング用基材10の表面に設置しても良いし、タッチング用基材10の表面の内部に内蔵しても構わない。又、タッチング用基材10に設けられた2つ以上のセンサー11を覆うカバー材を別途設けても良い。カバー材は、人肌を模した人工皮革等を挙げることが出来る。これにより、接触者Aは、違和感無しにタッチングすることが可能となる。
【0025】
又、端末装置12は、一般に使用されるコンピュータであり、例えば、タッチパネル付きの携帯端末装置、タブレット型端末装置、ウェアラブル型端末装置を含む。端末装置12は、記憶部と、入力部と、出力部とを備え、入力部は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等であり、出力部は、例えば、液晶ディスプレイ等である。
【0026】
端末装置12は、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで各制御部の機能を実現する。
【0027】
次に、図2図4を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、接触者A又は接触者Aのタッチングを指導する指導者は、接触者Aのタッチングを評価するために、端末装置12に評価キーを入力する。すると、端末装置12の測定制御部201は、2つのセンサー11を起動し、接触者Aにタッチング用基材10へのタッチングの開始をパネル上に表示する。
【0028】
接触者Aが、パネルの表示を確認し、手(例えば、手のひら)でタッチング用基材10にタッチングをすると、測定制御部201は、タッチング用基材10に設けられた2つのセンター11に基づいて、接触者Aの手の接触圧力と、接触速度とのそれぞれを測定値として測定する(図4:S101)。
【0029】
測定制御部201の測定方法に特に限定は無いが、例えば、接触者Aがタッチング用基材10を手で2つのセンサー11を順次タッチングすると、起動中の2つのセンサー11が、接触者Aの手のタッチングに応じた信号を順次発信し、測定制御部201は、2つのセンサー11からの信号に基づいて、手の接触圧力と、接触速度とを測定する。
【0030】
ここで、図5Aに示すように、接触者Aの手がタッチング用基材10の2つのセンサー11のうち、最初の第一のセンサー11に接触すると、測定制御部201は、当該第一のセンサー11からの信号に基づいて、第一の時刻t1(sec)における接触者Aの手の接触圧力p1(kgf/cm)を測定する。ここで、接触者Aの手が第一のセンサー11に接触し始めると、第一のセンサー11が検出する接触圧力p(kgf/cm)は、図5Aに示すように、徐々に高くなり、最大値を経る。そして、接触者Aの手が第一のセンサー11から離れ始めると、接触圧力p(kgf/cm)は、徐々に低くなり、ゼロとなる。測定制御部201は、山状に検出される接触圧力p(kgf/cm)の最大値を、接触者Aの手の接触圧力p1(kgf/cm)として測定し、その時が第一の時刻t1(sec)となる。
【0031】
次に、図5Bに示すように、接触者Aの手が続けてタッチング用基材10の次の第二のセンサー11に接触すると、測定制御部201は、当該第二のセンサー11からの信号に基づいて、第二の時刻t2(sec)における接触者Aの手の接触圧力p2(kgf/cm)を測定する。ここで、第二のセンサー11が検出する接触圧力p(kgf/cm)は、第一のセンサー11と同様に、接触者Aの手のタッチングに対して山状に立ち上がるため、測定制御部201は、山状に検出される接触圧力p(kgf/cm)の最大値を、接触者Aの手の次の接触圧力p2(kgf/cm)として測定し、その時が第二の時刻t2(sec)となる。このように、接触者Aの手が2つの異なる位置のセンサー11に接触することで、接触者Aの手の各位置での接触圧力p1(kgf/cm)、p2(kgf/cm)を、経時的に変化する接触圧力p(kgf/cm)として測定することが出来る。
【0032】
特に、一般的なタッチングでは、最初又は最後の接触圧力が高すぎる場合があり、これは不快なタッチングの原因となり得る。そのため、各位置での経時的に変化する接触圧力p(kgf/cm)を測定し、判定に利用することで、接触者Aのタッチングの癖を具体的に評価することが出来る。
【0033】
又、測定制御部201は、2つのセンサー11の位置間隔d12(cm)と、2つのセンサー11がそれぞれ接触圧力(kgf/cm)を検出した時間間隔Δt12(sec)とを用いて、2つのセンサー11を通過した接触者Aの手の接触速度を測定することが出来る。具体的には、測定制御部201は、第一のセンサー11が検出する接触圧力p(kgf/cm)の立ち上がりが開始される時刻t10と、第二のセンサー11が検出する接触圧力p(kgf/cm)の立ち上がりが開始される時刻t20との時間間隔Δt12(sec)を算出し、所定のメモリーに予め記憶された2つのセンサー11の位置間隔d12(cm)から時間間隔Δt12(sec)を除算することで、2つのセンサー11を通過した接触者Aの手の接触速度v12(cm/sec)を算出することが出来る。2つのセンサー11の位置間隔d12(cm)は、予め測定される。
【0034】
さて、測定制御部201が測定を完了すると、端末装置12の判定制御部202は、測定値と、接触者Aが被接触者Bにタッチングすることで被接触者Bが心地よいと感じるために予め設定された基準範囲とを比較して、測定値が基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する(図4:S102)。
【0035】
判定制御部202の判定方法に特に限定は無いが、例えば、判定制御部202が、測定された測定値を取得すると、所定のメモリーを参照する。メモリーには、各設定値毎の基準範囲が予め記憶されている。判定制御部202が、参照したメモリーのうち、測定値の接触圧力に対応する圧力基準範囲を取得し、接触圧力が圧力基準範囲内にあるか否かを判定する。
【0036】
ここで、圧力基準範囲は、被接触者Bが心地よいと感じるタッチングの接触圧力を基準とした範囲である。タッチングの接触圧力は、通常、大きくなる程、被接触者Bへの侵襲性が高くなり、被接触者Bの負担が増加するが、ある程度、大きな接触圧力でも、被接触者Bが痛みを感じない場合は、心地よいタッチングとなる。一方、被接触者Bが痛みを感じるほどの接触圧力で接触が行われた場合は、不快なタッチングとなる。
【0037】
一方、タッチングの接触圧力の違いで、被接触者Bの心拍数が変化したという報告があり、被接触者Bが心地よいと感じるためのタッチングの接触圧力は、大きな圧力とならない。例えば、疲労感の強い終末期のがん患者に対するタッチングの接触圧力は、清拭の接触圧力(例えば、0.510kgf/cm~1.000kgf/cm)と同等か、それよりも低い圧力で行われる。又、いくつかの研究では、接触圧力が0.001kgf/cm~0.220kgf/cmで、C触覚線維や毛包受容器が反応したという報告がある。C触覚線維や毛包受容器は心地よさを伝える触覚センサーである。これらの触覚センサーが反応することで、神経B2、B3を介して脳へ心地よさが伝わる。尚、0.001kgf/cmの接触圧力を検出可能な圧力センサーは既に存在する。
【0038】
本発明では、顔以外の全身にタッチングする場合は、圧力基準範囲は、0.001kgf/cm~2.000kgf/cmの範囲に設定され、顔にタッチングする場合は、圧力基準範囲は、0.001kgf/cm~1.000kgf/cmの範囲に設定される。これは、顔では、顔以外の全身よりも触覚センサーの密度が高いためである。この圧力基準範囲内のタッチングは、通常の接触と比較して極めて軽い接触か、押下を伴う心地よい接触となる。尚、圧力センサーには、接触力(kgf)(N)を測定値として出力する場合もあるが、その場合は、接触力を測定値として用いて、接触力と、圧力基準範囲に相当する力基準範囲とを比較して判定しても構わないし、出力された接触力を、圧力センサーと接触者の手との接触面積(又は圧力センサーの検出面積)で除算した接触圧力を算出して、算出した接触圧力と圧力基準範囲とを比較して判定しても構わない。
【0039】
図6Aに示すように、判定制御部202が、2つのセンサー11で検出された接触圧力を縦軸とし、接触圧力が検出された時刻を横軸としてグラフで表示すると、2つの山状のグラフを描くことが出来る。最初の山状のグラフの最大値が、第一のセンサー11で測定された接触圧力p1(kgf/cm)となり、次の山状のグラフの最大値が、第二のセンサー11で測定された接触圧力p2(kgf/cm)となる。例えば、判定制御部202は、体のタッチングモードと顔のタッチングモードとを選択可能に表示し、接触者Aにより選択されたモード(ここでは、体のタッチングモード)の圧力基準範囲を取得する。そして、判定制御部202は、このグラフに取得された圧力基準範囲p0を設定し、経時的に変化する接触圧力p1、p2が圧力基準範囲p0内にあるか否かを判定する。例えば、図6Aの最初のグラフでは、第一の時刻t1での接触圧力p1が圧力基準範囲p0を超過しているため、判定制御部202は、全体として接触圧力は圧力基準範囲外であると判定する。
【0040】
又、速度基準範囲は、被接触者Bが心地よいと感じるタッチングの接触速度を基準とした範囲である。タッチングの接触速度は、通常、速くなる程、被接触者Bが心地よさを感じなくなる。一方、心地よいタッチングでは、心地よさを伝えるC触覚線維の活性化を促す接触速度を考慮する必要がある。本発明では、速度基準範囲は、C触覚線維が活性に働く接触速度に対応して、1cm/sec-20cm/secの範囲と設定される。この速度基準範囲内のタッチングは、通常の接触と比較して心地よい接触となる。
【0041】
さて、判定制御部202は、測定値の接触速度v12と速度基準範囲v0とを比較し、接触速度v12が速度基準範囲v0内にあるか否かを判定する。尚、判定制御部202における接触圧力と接触速度との判定の順番に特に限定は無い。
【0042】
そして、判定制御部202が、判定を完了すると、最後に、端末装置12の評価制御部203は、全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在する場合、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価し、全ての測定値のうち、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れた場合、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価する(図4:S103)。
【0043】
評価制御部203の評価方法に特に限定は無いが、例えば、接触圧力が圧力基準範囲内であり、且つ、接触速度が速度基準範囲内である場合、全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在することから、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価し、心地よいタッチングをパネル上に表示する。これにより、接触者A又は指導者は、接触者Aのタッチングが心地よいタッチングであることを確認することが可能となる。
【0044】
又、評価制御部203は、心地よいタッチングの表示に加えて、接触圧力と接触速度との数値をパネル上に表示したり、センサー11で検出された接触圧力の経時的変化を示すグラフと圧力基準範囲とを表示したり、接触圧力と接触速度とをイラストやアニメーション等でグラフィック表示したりしても良い。これにより、接触者A又は指導者は、接触者Aのタッチングを数値とともに客観的に認識することが可能となる。
【0045】
一方、心地よいタッチングでは、接触圧力と接触速度との全ての測定値がそれぞれの基準範囲を満たす必要があり、一つでも基準範囲を満たさない場合は、心地よいタッチングとならず、不快なタッチングとなる。
【0046】
例えば、接触圧力が圧力基準範囲外であり、且つ、接触速度が速度基準範囲内である場合、全ての測定値のうち、一つの測定値の接触圧力が、対応する圧力基準範囲から外れているため、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価し、不快なタッチングをパネル上に表示する。これにより、接触者A又は指導者は、接触者Aのタッチングが不快なタッチングであることを確認することが可能となる。
【0047】
例えば、接触圧力において、図6Aの最初のグラフでは、第一の時刻t1の接触圧力p1が圧力基準範囲p0外であるため、この時点での接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価することが出来る。図6Aの次のグラフでは、第二の時刻t2の接触圧力p2が圧力基準範囲p0外であるため、この時点での接触者Aのタッチングは不快なタッチングとなる。図6Aの最後のグラフでは、第一の時刻t1及び第二の時刻t2の接触圧力p1、p2が共に圧力基準範囲p0外であると、全ての時点での接触者Aのタッチングは不快なタッチングとなる。これらの場合は、接触速度が速度基準範囲内であっても、全体として、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価される。接触者Aが、これらの評価結果やグラフを確認した上で、次にタッチングする際に、どのタイミングで接触圧力を弱めたり、接触速度を遅くしたりすることで、心地よいタッチングに近づけることが出来る。上述の他に、例えば、全ての時点において接触圧力が圧力基準範囲内であっても、接触速度が速度基準範囲外である場合は、不快なタッチングに該当する。
【0048】
そして、評価制御部203は、評価を完了すると、2つのセンサー11の起動を停止して、タッチングの評価を完了する。
【0049】
さて、例えば、接触者Aが、再度、端末装置12に評価キーを入力し、上述の評価結果を参考にした上で、タッチングを調整しながらタッチング用基材10を手でタッチングすると、測定制御部201が、2つのセンサー11からの信号に基づいて、手の接触圧力と、接触速度とを測定する(図4:S101)。ここでは、接触者Aの手が2つのセンサー11に順次接触することで2点の接触圧力p1、p2と1つの接触速度v12とが測定される。
【0050】
次に、判定制御部202が、図6Bに示すように、接触圧力を縦軸とし、時刻を横軸としてグラフで表示し、経時的に変化する接触圧力p1、p2が圧力基準範囲p0内にあるか否かを判定する。ここでは、全ての時刻t1、t2における接触圧力p1、p2が圧力基準範囲p0内であるため、判定制御部202は、接触圧力は圧力基準範囲内であると判定する。
【0051】
又、判定制御部202が、接触速度v12が速度基準範囲v0内にあるか否かを判定する。ここでは、接触速度v12が速度基準範囲v0内であるため、判定制御部202は、接触速度は速度基準範囲内であると判定する。
【0052】
この場合、接触圧力が圧力基準範囲内であり、且つ、接触速度が速度基準範囲内であるため、全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在することから、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価し、心地よいタッチングをパネル上に表示する。このように、接触者Aがタッチングの評価を繰り返し行うことで、接触者Aのタッチングを心地よいタッチングに近づけることが出来るのである。
【0053】
このように、接触者Aの手の接触圧力と、接触速度とが、それぞれ基準範囲内になることで、接触者Aのタッチングは、被接触者Bに心地よさを短時間で、且つ、確実に感じてもらえると判断することが出来る。接触者Aのタッチングの技術レベルを各測定値毎に客観的に評価して、接触者Aのタッチングの再現性を確認することが出来る。タッチングの接触圧力と、接触速度とを数値化することで、接触者Aのタッチングの精度管理も可能となる。
【0054】
このようなタッチングの評価は、看護のみならず、介護、ベビータッチング、ベビーマッサージ、子供の情操教育、美容等の人と人が触れあうサービスに幅広く適用出来る。又、タッチング評価装置1を用いることで、接触者Aの心地よいタッチング(触れるケア)を効率的に習得させることが可能となる。又、接触者Aは、ヒトに限らず、例えば、ヒトと接触するヒト型ロボットの開発に役立てることも可能である。
【0055】
ところで、タッチング用基材10及びセンサー11がタッチパネル式端末装置12のタッチパネルPである場合、接触速度は下記のように測定される。図7Aに示すように、接触者Aの手がタッチパネルPをタッチングすることで、測定制御部201が、最初の接触位置11で接触者Aの手のタッチングを検出し、この接触位置11からの信号に基づいて第一の接触時刻t1(sec)における接触者Aの手の接触圧力p1(kgf/cm)と接触位置x1(cm)、y1(cm)とを測定する。接触位置x1(cm)、y1(cm)の決定方法に特に限定は無いが、例えば、タッチパネルPの表面で予め設定した基準点から接触位置までの位置を決定する方法を挙げることが出来る。
【0056】
次に、接触者Aの手が続けてタッチパネルPをタッチングすることで、測定制御部201が、次の接触位置11で接触者Aの手のタッチングを検出し、この接触位置11からの信号に基づいて、第二の接触時刻t2(sec)における接触者Aの手の接触圧力p2(kgf/cm)と接触位置x2(cm)、y2(cm)とを測定する。ここで、各接触時刻における二つの接触位置11を測定することで、接触者Aの手の接触速度を測定することが出来る。例えば、測定制御部201は、第一の接触時刻t1と第二の接触時刻t2との時間間隔Δt12(sec)を算出するとともに、第一の接触位置11と第二の接触位置11との位置間隔d12(cm)とを算出する。第一の接触位置11と第二の接触位置11との位置間隔d12(cm)は、下記の式(1)で算出することが出来る。
【0057】
d12=√{(x2-x1)+(y2-y1)} (1)
【0058】
そして、測定制御部201は、位置間隔d12(cm)から時間間隔Δt12(sec)を除算することで、2つの接触位置11を通過した接触者Aの手の接触速度v12(cm/sec)を算出することが出来る。
【0059】
尚、タッチパネルPで検出される複数の接触位置が、タッチパネルPの仕様上、直線状に検出することが出来ない場合は、非直線状に検出された複数の接触位置を直線状に補正して、補正後の接触位置を利用しても構わない。
【0060】
又、上述では、接触位置が2つの場合について説明したが、2つ以上のセンサー11が配置された場合やタッチパネルPの場合は、下記のようになる。図7Bに示すように、例えば、タッチング用基材10に6つのセンサー11が所定の間隔を空けて直線状又は略直線状に設けられている場合、接触者Aの手が第一のセンサー11から第六のセンサー11に順次接触すると、測定制御部201は、それぞれのセンサー11からの信号に基づいて、山状の接触圧力のうち、各時刻t1~t6での接触圧力の最大値を検出する。次に、測定制御部201は、第一のセンサー11と第二のセンサー11が検出した接触圧力の立ち上がりの開始時刻の時間間隔Δt12を算出し、第一のセンサー11と第二のセンサー11の位置間隔d12(cm)から時間間隔Δt12(sec)を除算して、第一の接触速度v12(cm/sec)を算出する。同様に、測定制御部201は、隣り合う2つのセンサー11が検出した接触圧力の立ち上がりの開始時刻の時間間隔と、隣り合う2つのセンサー11の位置間隔から、この2つのセンサー11を通過した接触者Aの手の接触速度v(cm/sec)を算出する。このように、6つのセンサー11であれば、経時的に変化する5つの接触速度を測定することが出来る。センサー11の数が増加することで、より詳細にタッチングの接触速度の経時的変化を確認することが出来る。尚、タッチパネルPの場合であっても、同様である。そして、5つの全ての接触速度が速度基準範囲v0内にあることで、判定制御部202は、接触速度は速度基準範囲内であると判定する。
【0061】
さて、上述では、心地よいタッチングの要素を必要最低限の接触圧力と接触速度とに設定したが、この要素を更に増やすことで、心地よいタッチングを精度高く評価することが可能となる。
【0062】
例えば、心地よいタッチングの要素として、接触者Aの手の接触面積を示す密着度を追加することが出来る。この場合、測定制御部201は、センサー11に基づいて、接触者Aの手の密着度を、更に、測定値として測定する。例えば、2つ以上のセンサー11が直線状に配置されている場合は、密着度は、接触者Aの手が所定数のセンサー11に接触した際に、信号を発信した所定数のセンサー11の設置間隔と、接触者Aの手幅のサイズとを乗算した乗算値を接触者Aの密着度(密着面積)として測定することが出来る。又、タッチパネルPがセンサー11として機能する場合は、密着度は、接触者Aの手が接触し、信号を発信した複数の接触位置が示す面積を密着度として測定することが出来る。又、判定制御部202は、密着度に対応する密着度基準範囲を用いて、測定値が密着度基準範囲内にあるか否かを判定する。
【0063】
ここで、顔以外の全身にタッチングする場合は、密着度基準範囲は、24cm-400cmの範囲に設定されるが、顔にタッチングする場合は、密着度基準範囲は、1cm-100cmの範囲に設定される。密着度が約1cmの場合は、指の腹でのタッチングが想定され、密着度が約24cmの場合は、小柄の接触者Aの手のひらでのタッチングが想定され、密着度が約400cmの場合は、大柄の接触者Aの手のひらと五本指でのタッチングが想定される。
【0064】
ここで、図8Aに示すように、複数のセンサー11が、人体模型10の前腕の皮膚分節又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のライン上の位置に所定間隔dを空けて設けられている場合は、接触者Aの手が所定数のセンサー11に接触すると、測定制御部201は、当該センサー11からの信号に基づいて、接触圧力と、接触速度とを測定するとともに、信号を発信したセンサー11の設置間隔dと、接触者Aの手幅wのサイズとを乗算した乗算値を接触者Aの密着度(密着面積)として測定する。
【0065】
図8Aでは、接触者Aの手のひらの接触面A1が2つのセンサー11をまたがる形で人体模型10に接触しているため、例えば、最小の密着度として、2つのセンサー11の設置間隔dと、接触者Aの手のひらの手幅wとを乗算して、手のひらが長方形とみなして、接触者Aの密着度(d×w)を測定することが出来る。
【0066】
図8Bに示すように、タッチパネルPのように、圧力と位置と密着度とを測定可能なシート状の複合センサー11が、人体模型10の前腕の外周面に設けられている場合は、接触者Aの手のひらがセンサー11に接触すると、測定制御部201は、当該センサー11からの信号に基づいて、接触圧力と、接触速度とを測定するとともに、センサー11のシート状の信号発生位置が示す面積を算出して、接触者Aの密着度を測定する。尚、上述では、スポット状又はシート状のセンサー11を一例にして説明したが、接触者Aの密着度の測定方法は、センサー11の種類や形状に応じて、適宜設定出来る。
【0067】
ここで、密着度基準範囲は、被接触者Bが心地よいと感じるタッチングの密着度を基準とした範囲である。タッチングの密着度は、接触者Aの手のひらの接触面A1が被接触者Bの皮膚B1にぴったりくっつくことを意味し、タッチングの密着度が、低すぎると、被接触者Bは物足りないとかくすぐったいとかの感覚を受ける。一方、接触者Aは、手のひらの接触面A1で接触することで、密着度を高めることが出来る。又、接触温度が温度基準範囲内であると、接触者Aの手のひらの接触面A1の温かさが被接触者Bに伝わり、心地よいタッチングになる。密着度を高める工夫として、接触者Aが力を抜いて手のひらの接触面A1を被接触者Bの皮膚B1に密着させると良い。
【0068】
本発明では、密着度基準範囲は、接触者Aが日本人の場合、例えば、24cm-200cmの範囲と設定される。ここで、密着度の求め方の一例として、接触者Aが手のひらのみでタッチングを行う場合は、小柄の接触者A(例えば、4歳の子供)の手幅は、約4cmであり、手首から第3指の付根までの手掌第3指は、約6cmであるため、小柄の接触者Aの手のひらの面積は、4cm×6cm=24cmとなる。又、大柄の接触者Aが手のひらのみでタッチングを行う場合は、大柄の接触者A(例えば、成人男性)の手幅は、約10cmであり、手掌第3指は、約10cmであるため、大柄の接触者Aの手のひらの面積は、10cm×10cm=100cmとなる。尚、タッチングは、手のひらと五本指で行う場合もあるため、そのタッチングは、通常の接触と比較して極めて広い接触となる。尚、人種によって、手の面積が変動することから、例えば、密着度基準範囲は、人種に応じて、24cm-400cmの範囲と設定される。
【0069】
さて、測定値の接触圧力と、接触速度と、密着度が測定されると、判定制御部202は、測定値が基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する。ここで、例えば、判定制御部202は、体のタッチングモードと顔のタッチングモードとを選択可能に表示し、接触者Aにより選択されたモードの密着度基準範囲を用いて密着度を判定する。そして、全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在する場合、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価する。
【0070】
一方、上述と同様に、全ての測定値のうち、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れているため、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価し、不快なタッチングをパネル上に表示することになる。このように、測定値の種類が増加することで、心地よいタッチングを精度高く評価することが出来る。
【0071】
ここで、他の心地よいタッチングの要素として、接触者Aの手の接触温度を追加することが出来る。この場合、測定制御部201は、センサー11に基づいて、接触者Aの手の接触温度を、更に、測定値として測定する。又、判定制御部202は、接触温度に対応する温度基準範囲を用いて、測定値が温度基準範囲内にあるか否かを判定するが、この温度基準範囲は、25度-45度の範囲に設定される。
【0072】
ここで、測定制御部201が接触温度を測定する場合、センサー11は、圧力センサーと位置センサーに温度センサーを別途設けても良いし、圧力センサーと位置センサーと温度センサーとを兼ね備えた複合センサー11を利用しても構わない。弾性の複合センサー11の場合、接触者Aのタッチングによる複合センサー11の凹み部分から手の接触温度を測定しても良い。
【0073】
ここで、温度基準範囲は、被接触者Bが心地よいと感じるタッチングの接触温度を基準とした範囲である。タッチングの接触温度が、高過ぎると、皮膚の熱痛覚受容器が活発に働き始めて、熱い不快なタッチングとなる。タッチングの接触温度が、低すぎると、皮膚の冷覚受容器が活発に働き始めて、冷たい不快なタッチングとなる。
【0074】
一方、心地よいタッチングでは、冷覚・熱痛覚受容器の活性ではなく、心地よさを伝えるC触覚線維と温覚を考慮する必要がある。本発明では、温度基準範囲は、C触覚線維と温覚が活性に働く接触温度に対応して、25度-45度の範囲と設定される。この温度基準範囲内のタッチングは、通常の接触と比較して心地よい温かさの接触となる。
【0075】
測定値の接触圧力と、接触速度と、接触温度とが測定されると、判定制御部202は、測定値が基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定する。全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在する場合、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価する。
【0076】
例えば、接触圧力が圧力基準範囲外であり、接触速度が速度基準範囲内であり、且つ、接触温度が温度基準範囲内である場合、全ての測定値のうち、一つの測定値の接触圧力が、対応する圧力基準範囲から外れている。そのため、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価し、不快なタッチングをパネル上に表示する。このように、測定値の種類が増加することで、心地よいタッチングを精度高く評価することが出来る。
【0077】
又、他の心地よいタッチングの要素として、被接触者の皮膚における接触者Aの手の走行の接触経路(接触ルート)を追加することが出来る。
【0078】
例えば、タッチング用基材10が人体模型である場合、接触ルートの測定は容易となる。図9に示すように、2つ以上のセンサー11が、人体模型10の前腕の皮膚分節又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のライン上の位置に所定間隔dを空けて設けられている場合は、接触者Aの手の接触面A1が所定数のセンサー11に接触すると、測定制御部201は、当該センサー11からの信号に基づいて所定数のセンサー11の信号の切り替わり時間間隔と、信号の位置に基づいて接触ルートを測定することが出来る。
【0079】
図9では、接触者Aの手の接触面A1が、最初、2つのセンサー11をまたがる形で人体模型10に接触し、徐々に、人体模型10の基端から先端に向かうセンサー11に順次接触している。この場合、測定制御部201は、人体模型10の基端から先端に向かう最初のセンサー11の信号から次のセンサー11の信号に切り替わる時間間隔t(sec)と、最初のセンサー11と次のセンサー11との間の設置間隔d(cm)とに基づいて、設置間隔d(cm)を時間間隔t(sec)で除算した乗算値を接触速度(cm/sec)として測定することが出来る。
【0080】
又、図9に示すように、複数のセンサー11を人体模型10において皮膚分節又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のラインの上に順次設置し、接触者Aの手の接触面A1が、複数のセンサー11を接触すると、測定制御部201は、信号を受けるセンサー11の位置と順番に基づいて、接触者Aの手の接触面A1の接触ルートを測定することが出来る。
【0081】
特定のライン上に位置するセンサー11の信号が、人体模型10の基端から先端に向かう特定のラインの順方向又は逆方向で順次受信されると、接触者Aの手の接触面A1の接触ルートが、特定のラインを走行し、接触ルートはライン上と測定することが出来る。一方、特定のライン上に位置するセンサー11の信号が、人体模型10の基端から先端に向かう特定のラインの順方向又は逆方向で順次受信されない場合、例えば、センサー11の信号が、一部欠けて、間欠的に受信された場合は、接触者Aの手の接触面A1の接触ルートが、特定のラインを走行しておらず、接触ルートはライン外れと測定することが出来る。
【0082】
ここで、測定値の接触圧力と、接触速度と、接触ルートが測定されると、判定制御部202は、測定値が基準範囲内にあるか否かを各測定値毎に判定し、全ての測定値のそれぞれが、対応する基準範囲内に存在する場合、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは心地よいタッチングと評価する。一方、上述と同様に、全ての測定値のうち、一つの測定値が、対応する基準範囲から外れているため、評価制御部203は、接触者Aのタッチングは不快なタッチングと評価する。例えば、接触ルートに対応する接触ルート基準範囲は、ライン上である。このように、測定値の種類が増加することで、心地よいタッチングを精度高く評価することが出来る。
【0083】
心地よいタッチングの要素は、接触圧力と、接触速度に加え、密着度、接触温度、接触ルートのいずれか又はこれらの組み合わせを採用することが出来る。この心地よいタッチングの要素は、圧力(Pressure)と密着度(Attachment)とルート(Route)と温度(Temperature)と速度(Speed)の頭文字を取ってPARTSと呼んでも良い。
【0084】
又、本発明では、端末装置12が各制御部を備えるよう構成したが、当該各制御部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを所定の端末装置に読み出させ、当該端末装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。プログラムは、ネットワークからダウンロード可能なアプリやクラウドコンピューティングであっても同様である。
【0085】
又、各制御部が実行する工程を本発明に係るタッチング評価方法として提供することも可能である。例えば、指導者が、センサー11を内蔵した人体模型10を用いて、接触者Aにタッチングを実施させ、センサー11から測定される接触圧力と、接触速度とを取得して、測定値が基準範囲内か否かを判定し、心地よいタッチングか不快なタッチングかを評価しても構わない。
【実施例
【0086】
以下、実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0087】
<タッチングの評価方法>
タッチングについて、接触圧力と、接触速度とを基準に、接触者が被接触者に対してタッチングを施し、被接触者の心地よさを確認することで、タッチングを評価した。先ず、接触者は、被接触者の前腕(全身に対応する)に手を接触させて、タッチングを行った。被接触者は、50代の女性とした。接触圧力と、接触速度とを指標に、実施例、比較例を行った。
【0088】
被接触者には、タッチングを実施する前と実施した後で、VAS(Visual Analog Scale)を行い、実施後から実施前を減算した差分を求めて、差分が正の値の場合、タッチングは心地よいタッチングと評価し、差分が負の値の場合、タッチングは不快なタッチングと評価した。
【0089】
<タッチングの評価結果>
図10には、実施例1-4と比較例1-5のタッチングの評価条件と評価結果を示す。差分が10以上の場合は、心地よい評価の「〇」とし、差分が10未満の場合は、不快な評価の「×」とした。図10に示すように、接触圧力が0.001kg/cm-2.000kg/cmの範囲内で、且つ、接触速度が1cm/sec-20cm/secの範囲内の場合、タッチングが心地よいタッチングとなり、それ以外の場合は、タッチングが不快なタッチングになることが分かった。従って、タッチングでは、接触圧力と接触速度が重要となることが分かった。
【0090】
次に、接触圧力と、接触速度と、接触温度と、密着度と、接触ルートとを指標に、接触者が被接触者に対してタッチングを施し、被接触者の心地よさを確認し、上述と同様にVASを行って、タッチングを評価した。接触温度は、接触者の手を加熱手段で加熱したり、冷却手段で冷却したりすることで、変更した。接触者の手のひらのタッチングでは、接触者の手幅が約7.0cmであり、手掌長第3指が約7.5cmであるため、接触者の手のひらの密着度を52.5cmとしている。接触者の手の指先三本のタッチングでは、接触者の指先三本の長さが約2.0cmであり、指先三本の幅が約4.0cmであるため、接触者の接触部分の密着度を8.0cmとしている。接触者の手の指先一本のタッチングでは、接触者の指先一本の長さが約2.0cmであり、指先一本の幅が約1.2cmであるため、接触者の接触部分の密着度を2.4cmとしている。接触者の手のひらと五本指のタッチングでは、接触者の手のひらと中指の長さが約17.0cmであり、手幅が約7cmであるため、接触者の手のひらと五本指の密着度を119.0cmとしている。接触ルートは、図9に示すように、皮膚分節又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のライン上とするか、それ以外とした。それ以外のライン外れでは、例えば、皮膚分節の境界線上にしたり、筋肉の境界線上にしたり、曲線状に蛇行させたりした。
【0091】
<タッチングの評価結果>
図11には、実施例5-11のタッチングの評価条件と評価結果を示す。差分が10以上、20以下の場合は、心地よい評価の「〇」とし、差分が20を超える場合は、最も心地よい評価の「◎」とした。図11に示すように、接触圧力と接触速度に加えて、密着度が24cm-400cmの範囲内で、接触温度が25度-45度の範囲内で、且つ、接触ルートが、皮膚分節又は筋肉の走行に沿った、所定の幅を有する特定のライン上の範囲の場合、タッチングが心地よいタッチングとなり、それ以外の場合は、タッチングがやや不快なタッチングになることが分かった。従って、心地よいタッチングの質を高めるためには、接触圧力と接触速度とに、密着度と接触温度と接触ルートを加えることが重要となることが分かった。
【0092】
次に、非接触対象者の接触対象を前腕から顔に変更して、接触圧力と接触速度とを指標に、接触者が被接触者に対してタッチングを施し、被接触者の心地よさを確認し、上述と同様にVASを行ってタッチングを評価した。
【0093】
<タッチングの評価結果>
図12には、実施例12-15と比較例7-9のタッチングの評価条件と評価結果を示す。差分が5以上の場合は、心地よい評価の「〇」とし、差分が10未満の場合は、不快の評価の「×」とした。図12に示すように、接触対象が顔の場合、接触圧力が0.001kg/cm-1.000kg/cmの範囲内で、且つ、接触速度が1cm/sec-20cm/secの範囲内の場合、タッチングが心地よいタッチングとなり、それ以外の場合は、タッチングが不快なタッチングになることが分かった。
【0094】
次に、接触圧力と、接触速度と、接触温度と、密着度とを指標に、接触者が被接触者に対してタッチングを施し、被接触者の心地よさを確認し、上述と同様にVASを行って、タッチングを評価した。
【0095】
<タッチングの評価結果>
図13には、実施例16-19と比較例10-12のタッチングの評価条件と評価結果を示す。差分が5以上、20以下の場合は、心地よい評価の「〇」とし、差分が20を超える場合は、最も心地よい評価の「◎」とした。図13に示すように、接触対象が顔の場合、接触圧力と接触速度に加えて、密着度が1cm-100cmの範囲内で、接触温度が25度-45度の範囲内の場合、タッチングが心地よいタッチングとなり、それ以外の場合は、タッチングがやや不快なタッチングになることが分かった。従って、心地よいタッチングの質を高めるためには、接触圧力と接触速度とに、密着度と接触温度を加えることが重要となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明に係るタッチング評価装置及びタッチング評価方法は、心地よいタッチングを客観的に評価するために有用であり、心地よさを生じさせるタッチングの基準に基づいて、タッチングを精度高く評価することが可能なタッチング評価装置及びタッチング評価方法として有効である。又、心地よいタッチングを記録し活用することが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
1 タッチング評価装置
10 人体模型
11 センサー
12 端末装置
201 測定制御部
202 判定制御部
203 評価制御部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
図12
図13