(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】冷却装置および構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230818BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20230818BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230818BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H05K7/20 B
H01L23/46 Z
H01M10/613
(21)【出願番号】P 2018218663
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】栗谷川 瑞枝
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康之
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 宣秀
(72)【発明者】
【氏名】アダム ハーグリーヴス
(72)【発明者】
【氏名】植竹 康太
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109326(JP,A)
【文献】特開2006-351561(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147544(WO,A1)
【文献】特開2016-009776(JP,A)
【文献】特開2008-202881(JP,A)
【文献】特開2017-220651(JP,A)
【文献】特開2004-296748(JP,A)
【文献】特開2013-197159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
H01M 10/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を冷却するための金属製冷却パネルと、前記金属製冷却パネルに接合し、かつ、冷媒を流すための樹脂製流路と、を備える冷却装置であって、
前記樹脂製流路は少なくとも第1の流路ユニットおよび第2の流路ユニットを含み、
前記第1の流路ユニットは、前記第1の流路ユニットから前記第2の流路ユニットへ前記冷媒を導くための流路Aと、前記第1の流路ユニット全体に亘って前記冷媒を導くための流路Bと、を含み、
前記流路Aは、前記流路Aの出口に向かって前記流路Aの断面積が減少していくテーパー部Cを含
み、
前記第2の流路ユニットは、前記第1の流路ユニットの前記流路Aと接続され、前記流路Aを流れた前記冷媒が流入する流路Dを有し、
前記流路Dの入口における前記流路Dの断面積は、前記流路Aの出口における前記流路Aの断面積よりも大きい冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、
前記流路Aの内壁または内壁の延長線が前記出口の外周部の少なくとも一部と接するまたは交差する冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、
前記樹脂製流路は、底部と、前記底部に立設する側壁部と、を有する冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記金属製冷却パネルと前記樹脂製流路とが、接着剤法、熱溶着法および機械締結法から選ばれる一つ以上の手段で接合されている冷却装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記金属製冷却パネルの表面の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成されており、
前記微細凹凸構造上に前記樹脂製流路の側壁部が位置する冷却装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記テーパー部Cにおける最狭部が前記流路Aの出口である冷却装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記流路Aの全体がテーパー状である冷却装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記金属製冷却パネルがアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材からなる群から選択される少なくとも一種の部材により構成されている冷却装置。
【請求項9】
請求項
1乃至8のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記流路Dは、前記流路Dの出口に向かって前記流路Dの断面積が減少していくテーパー部Fを含む冷却装置。
【請求項10】
請求項
1乃至9のいずれか一項に記載の冷却装置において、
前記第2の流路ユニットは、前記流路Dから分岐して前記第2の流路ユニット全体に亘って前記冷媒を導くための流路Eを含む冷却装置。
【請求項11】
発熱体と、
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の冷却装置と、
を備え、
前記冷却装置における前記金属製冷却パネル表面に前記発熱体が配置されている構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等の動力源として電池が注目されている。高出力で、かつ、大容量の電池は充放電過程において多量の熱を発生し、この熱によって電池の劣化を引き起こすことが知られている。よって、電池には冷却システムが必要である。
また、発熱素子である半導体素子を搭載した電子部品は従来から熱対策が重要視されている。特に、近年の電子部品の小型化・高密度実装化の傾向、あるいはマイクロプロセッサ類の高速化に伴い、電子部品1つあたりの消費電力は著しく増大しており、効率的な冷却システムが重要となっている。
【0003】
電池や電子部品等の発熱体の冷却システムとして、近年では、液冷方式の冷却装置が採用されつつある。液冷方式の冷却装置は、冷媒を循環させる流路を内蔵する金属製板、いわゆるコールドプレートを発熱体に接触させ、流路内に通液した冷媒によって、発熱体から発生する熱を、装置外部に設けられた放熱側ヒートシンクに搬送することで、発熱体を冷却するものである(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、複数の電池セルが、上記各電池セル間にスペーサを介在して配列され、配列方向の両端にエンドプレートが配置された電池ブロックであって、複数の上記電池セルの配列方向に延在され、上記各電池セルの一面に、直接、または熱伝導層を介して接触する冷却プレートを備え、上記冷却プレートは、複数の上記電池セルの配列方向に延在された肉厚部、および上記肉厚部の空洞部であり、冷媒が流れる冷却用貫通孔を有する、電池ブロックが開示されている。
【0004】
また、集積回路等の電子部品が故障したときの稼働保証や、さらなる高性能化を狙って、複数の電子部品を搭載した電子装置も知られている。複数の電子部品を搭載した電子装置の液冷方式に関して、上流側の電子部品冷却ジャケットを通過した冷媒を、下流側の電子部品冷却ジャケットに流入させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-29624号公報
【文献】特開平5-315488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に開示されたような、複数の発熱体を同時に液冷する方法では、上流側の発熱体によって加熱されてしまった冷媒を下流側の発熱体の冷却に使用するため、下流側の発熱体の冷却効率が落ちてしまう。すなわち、複数の発熱体を同時に液冷する方法には下流側の発熱体の発生熱量が上流側の発熱体の発生熱量に比べて少ない用途に限定されるという問題点があった。
すなわち、従来の技術において、複数の発熱体を同時に液冷する冷却装置には、複数の発熱体の冷却効率を向上させるという点において改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の発熱体を同時に液冷することが可能であるとともに、複数の発熱体の冷却効率が向上した冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば以下に示す冷却装置および構造体が提供される。
【0009】
[1]
発熱体を冷却するための金属製冷却パネルと、上記金属製冷却パネルに接合し、かつ、冷媒を流すための樹脂製流路と、を備える冷却装置であって、
上記樹脂製流路は少なくとも第1の流路ユニットおよび第2の流路ユニットを含み、
上記第1の流路ユニットは、上記第1の流路ユニットから上記第2の流路ユニットへ上記冷媒を導くための流路Aと、上記第1の流路ユニット全体に亘って上記冷媒を導くための流路Bと、を含み、
上記流路Aは、上記流路Aの出口に向かって上記流路Aの断面積が減少していくテーパー部Cを含む冷却装置。
[2]
上記[1]に記載の冷却装置において、
上記流路Aの内壁または内壁の延長線が上記出口の外周部の少なくとも一部と接するまたは交差する冷却装置。
[3]
上記[1]または[2]に記載の冷却装置において、
上記樹脂製流路は、底部と、上記底部に立設する側壁部と、を有する冷却装置。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の冷却装置において、
上記金属製冷却パネルと上記樹脂製流路とが、接着剤法、熱溶着法および機械締結法から選ばれる一つ以上の手段で接合されている冷却装置。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の冷却装置において、
上記金属製冷却パネルの表面の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成されており、
上記微細凹凸構造上に上記樹脂製流路の側壁部が位置する冷却装置。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の冷却装置において、
上記テーパー部Cにおける最狭部が上記流路Aの出口である冷却装置。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の冷却装置において、
上記流路Aの全体がテーパー状である冷却装置。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の冷却装置において、
上記金属製冷却パネルがアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材からなる群から選択される少なくとも一種の部材により構成されている冷却装置。
[9]
発熱体と、
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の冷却装置と、
を備え、
上記冷却装置における上記金属製冷却パネル表面に上記発熱体が配置されている構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の発熱体を同時に液冷することが可能であるとともに、複数の発熱体の冷却効率が向上した冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る樹脂製流路の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る樹脂製流路の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る樹脂製流路を構成する流路ユニットの構造の一例を模式的に示した斜視図であり、流路ユニットが備える冷媒注入口と冷媒分流口の配置の一例を示す図面ある。
【
図4】
図3に示す流路ユニットのX-X’断面を、S方向から眺めた場合の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図5】本実施形態に係る冷却装置を構成する冷却ユニットおよび構造体の構造の一例を模式的に示した断面図である。なお、樹脂製流路の内部に形成された流路は図示していない。
【
図6】本実施形態に係る樹脂製流路の構造の一例を模式的に示した斜視図であり、川上側の第1の流路ユニットに形成された流路Aを流れる冷媒が、流路Bに向かう流れと、直列状に配置された川下側の第2の流路ユニットに向かう流れと、に分流するイメージを示した図面である。
【
図7】本実施形態に係る樹脂製流路の構造の一例を模式的に示した上面図である。
【
図8】本実施形態に係る流路ユニットの3種類の例について、
図3に示す流路ユニットのY-Y’断面を、S方向から眺めた場合の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図9】本実施形態に係る樹脂製流路の構造の一例を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0013】
本実施形態に係る冷却装置は、発熱体を冷却するための金属製冷却パネル9と、金属製冷却パネル9に接合し、かつ、冷媒を流すための樹脂製流路8と、を備える冷却装置であって、樹脂製流路8は少なくとも第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3を含み、第1の流路ユニット2は、第1の流路ユニット2から第2の流路ユニット3へ冷媒を導くための流路A(17)と、第1の流路ユニット2全体に亘って冷媒を導くための流路B(18)と、を含み、流路A(17)は、流路A(17)の出口に向かって流路A(17)の断面積が減少していくテーパー部C(19)を含む。
【0014】
ここで、本実施形態に係る冷却装置において、樹脂製流路8が、複数の流路ユニットを含み、さらに第1の流路ユニット2が、第1の流路ユニット2から第2の流路ユニット3へ冷媒を導くための流路A(17)と、第1の流路ユニット2全体に亘って冷媒を導くための流路B(18)と、を含むことによって、上流側の冷却ユニット上の発熱体によって未だ加熱されていない冷媒を下流側の冷却ユニットへ送ることができるため、下流側の冷却ユニットの冷却効率を向上させることができる。その結果、複数の発熱体を同時に液冷することが可能であるとともに、複数の発熱体の冷却効率を向上させることができる。さらに、上記のような複数の流路ユニットと、複数の流路を含むことにより、冷却装置への冷媒の注入圧力を下げることができる。
【0015】
図1および
図2は、本実施形態に係る樹脂製流路8の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
図3は、本実施形態に係る樹脂製流路8を構成する流路ユニットの構造の一例を模式的に示した斜視図であり、流路ユニットが備える冷媒注入口81と冷媒分流口82の配置の一例を示す図面ある。なお本実施形態においては、各流路ユニットは金属製冷却パネル9と接合一体化して冷却ユニット1’になり、さらに複数の冷却ユニット1’の集合体が冷却装置である。
樹脂製流路8は、少なくとも第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3を含む。
図1に示す態様では、第1の流路ユニット2と第2の流路ユニット3とが直列状に配置された構成となっており、第1の流路ユニット2が川上側であり、第2の流路ユニット3が川下側である。本実施形態において、「直列状に配置」とは、二つの流路ユニット内の冷媒の流通方式が、川上の流路ユニットを通過した冷媒の一部が川下の流路ユニットに流入する配置を言う。
ここで、樹脂製流路8は、
図1に示すように第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3が一体化された構成であってもよいし、第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3が分割された構成であってもよい。第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3が分割されている場合、第1の流路ユニット2と第2の流路ユニット3とは、例えば、冷媒が流れる冷媒管を用いて接続することができる。
【0016】
樹脂製流路8は、
図2に示すように、第1の流路ユニット2および第2の流路ユニット3に加えて、さらに第3の流路ユニット4および第4の流路ユニット5を備えてもよい。この場合、第1の流路ユニット2と第3の流路ユニット4、および第2の流路ユニット3と第4の流路ユニット5がそれぞれ並列状に配置されている。
また、第3の流路ユニット4と第4の流路ユニット5が直列状に配置されている。
ここで、樹脂製流路8は、
図2に示すように各流路ユニットが一体化された構成であってもよいし、各流路ユニットがそれぞれ分割された構成であってもよい。各流路ユニットが分割されている場合、各流路ユニット同士は、例えば、冷媒が流れる冷媒管によってつながっている。
樹脂製流路8を構成する流路ユニットの数は特に限定されず、冷却する発熱体の大きさや個数によって任意に設定することができる。
【0017】
第1の流路ユニット2は、第1の流路ユニット2から第2の流路ユニット3へ冷媒を導くための流路A(17)と、第1の流路ユニット2全体に亘って冷媒を導くための流路B(18)と、を含む。また、第1の流路ユニット2には、冷媒の流入・流出のための複数個の通液口が設けられている。本実施形態に係る冷却装置の好ましい態様においては、後述するように、樹脂製流路8は底部と、底部に立設する側壁部からなり、底部上に流路が形成されている。
第1の流路ユニット2に設けられた通液口の個数は特に限定されないが、例えば4個であり、具体的には一つの側壁部の両端位置、および対向する側壁部の両端位置である。このような一例を
図3に示した。冷媒注入口81から進入する冷媒は、冷媒分流口82において流路B(18)用と第2の流路ユニット3への搬送用とに分流され、冷媒合流口83において第2の流路ユニット3から移送された冷媒と合流し、冷媒回収口84において熱交換器に戻される。
より具体的には、冷媒の温度を下げて冷却機能を付与する熱交換器から送給される冷媒はポンプによって昇圧されて冷媒注入口81から第1の流路ユニット2の流路A(17)に流入し、次いで、流入した冷媒の一部が分岐点から流路B(18)に流れ、そして第1の流路ユニット2全体に流れる。これにより、第1の流路ユニット2全体が冷却される。残りの冷媒が冷媒分流口82から第2の流路ユニット3に流れて第2の流路ユニット3全体に流れる。これにより、第2の流路ユニット3全体が冷却される。第2の流路ユニット3全体に流れた冷媒は冷媒合流口83から第1の流路ユニット2に戻り、冷媒回収口84から熱交換器に戻る。
なお、
図1~3および
図6では、樹脂製流路8中に形成された流路を視認し易くするため、冷却ユニット1’を構成する金属製冷却パネル9の記載を省略している。通常は、
図5に示すように、樹脂製流路8上に金属製冷却パネル9が配置される。また、
図3および
図6中の白色矢印は冷媒の流通状況をイメージ的に示したものである。
また、第1の流路ユニット2以外の流路ユニットは、基本的には第1の流路ユニット2と同じ構造を有している。
【0018】
図4は、
図3に示す流路A(17)を上流側から下流側にS方向から眺めた場合の、冷媒分流口82周辺のイメージ図である。流路Aは、例えば、底面85、樹脂製流路8の内側にある側面(a)86、樹脂製流路8の外側にある側面(b)87、天面88から構成される。底面85、二つの側面86、87は、通常、樹脂製流路8と同一材質である、天面88は、例えば、金属製冷却パネル9の一部をなす。流路Aの突当り面89には、川下側の冷却ユニットにつながる冷媒分流口82が設けられている。
【0019】
図5は、本実施形態に係る冷却ユニット1’および構造体20の構造の一例を模式的に示した断面図である。なお、樹脂製流路8の内部に形成された流路は図示していない。
本実施形態に係る構造体20は、発熱体10と、本実施形態に係る冷却ユニット1’と、必要に応じて発熱体10を収納するケースと、を備え、冷却ユニット1’における金属製冷却パネル9の表面に発熱体10が配置されている。発熱体10は、例えば、電池や電子部品である。金属製冷却パネル9と発熱体10は直接接触させてもよいが、好ましくは該接触部に熱伝導性シートが介装される。熱伝導性シートに替えて、いわゆるサーマル・インターフェース・マテリアル(TIM)と呼ばれる物質を用いてもよく、具体的にはサーマルグリース、相変化材料(PCM)、ゲル、高熱伝導接着剤、サーマルテープ等を例示できる。
図5に示す冷却ユニット1’は、平面状の金属製冷却パネル9の周縁部に、樹脂製流路8(内部の流路は図示せず)が接合されたものであり、金属製冷却パネル9の冷媒流通面とは反対面に電池や電子部品等の発熱体10が搭載され、発熱体10は、必要に応じてケース内に収納されている。樹脂製流路8の側壁部には、冷媒の流入・流出のための通液口である冷媒注入口81と冷媒分流口82が設けられている(冷媒合流口83と冷媒回収口84は図示せず)。
【0020】
金属製冷却パネル9は樹脂製流路8の内部に形成された流路を流通する冷媒によって、全体が冷却されているため、金属製冷却パネル9の樹脂製流路8との接合面とは反対面に接する発熱体10の冷却効率を高くすることができる。また、冷媒の流路が形成された樹脂製流路8は軽量且つ断熱性に優れた材質により形成されているので、例えば構造体20全体の重量軽減に寄与するとともに冷却効率を向上させることができる。
【0021】
図6は、本実施形態に係る樹脂製流路8の構造の一例を模式的に示した斜視図であり、川上側の第1の流路ユニット2中に形成された流路A(17)を流れる冷媒が、流路B(18)に向かう流れと、直列する川下側の第2の流路ユニット3に向かう流れとに分流するイメージを示した図面である。
本実施形態に係る冷却装置では、
図6に示すように、分岐点において、川上側の第1の流路ユニット2の冷媒分流口82に至る分流前の流れ13が、川下側の第2の流路ユニット3に向かう流れ14と、流路B(18)に向かう流れ15とに分岐している。
【0022】
発熱体を冷却するための冷却装置(例えば、冷却ジャケットやコールドプレート)に関する従来技術では、川下側の第2の流路ユニット3に向かう流れ14と流路B(18)に向かう流れ15を制御して、川上側の第1の流路ユニット2と川下側の第2の流路ユニット3を均等に冷却する方法は知られていなかった。
本実施形態に係る冷却装置において、
図7に示されるように、川上側の第1の流路ユニット2に設けられた冷媒注入口81から、川下側の第2の流路ユニット3への冷媒流出用に設けられた冷媒分流口82(流路Aの出口)に向かう流路Aの断面積が徐々に漸減するように流路が形成されている。すなわち、流路Aは、流路Aの出口に向かって流路Aの断面積が減少していくテーパー部C(19)を含む構造となっている。
【0023】
流路Aの出口に向かって流路Aの断面積が減少していくテーパー部C(19)の具体的な構造としては、流路断面が四角形である場合は、樹脂製流路8に形成された底面85、樹脂製流路8に形成された二つの側面86、87、金属製冷却パネル9に形成された天面88からなる4つの面のうち、少なくとも一つの面を、流路Aが狭窄されるように絞り込む流路形状(テーパー形状)にした構造を例示できる。
【0024】
流路Aが、流路Aの出口に向かって流路Aの断面積が減少していくテーパー部C(19)を含む構造であることにより、川下側の第2の流路ユニット3に向かう流れ14と流路B(18)に向かう流れ15の流量比が制御されている。より具体的には、テーパー部C(19)によって、川下側の第2の流路ユニット3に向かう流れ14の冷媒の量が増加し、流路B(18)に向かう流れ15が減少する。
この制御の結果、第2の流路ユニット3へ流入する冷媒の量を増やすことができ、冷却装置全体すなわち各冷却ユニットの冷却効率を高めることができる。これにより、複数の冷却ユニットを接続させて複数の発熱体を同時に液冷する際に、下流側の冷却ユニットの冷却効率の低下を抑制でき、その結果、複数の発熱体の冷却効率を向上させることができる。すなわち、本実施形態に係る冷却装置によれば、複数の発熱体を同時に液冷することが可能であるとともに、複数の発熱体の冷却効率を向上させることが可能となる。
ここで、本発明者らは、テーパー部C(19)を設けた場合、第2の流路ユニット3への冷媒の最大流速および平均流速が、テーパー部C(19)を設けない場合に比べて、30%以上向上することをCFD(数値流体力学)計算により確認している。
【0025】
本実施形態において、流路断面のうち、底面85と二つの側面86、87は共に樹脂部材製であることが好ましい。樹脂部材製であると、狭窄するための設計・加工作業は、既存の全断面が金属製である場合に比べてはるかに容易である。
流路(A)がテーパー部C(19)を含む構造の態様としては、特に制限はなく、例えば、順方向への移動量と比例的に流路が狭まる態様、順方向の途中まで断面積の変化はなく、ある地点からテーパー状に流路が狭まる態様、順方向の途中で階段状に狭まる態様、順方向の複数点で段階的に狭まる態様などを例示できる。このような態様の場合、テーパー部C(19)における最狭部が流路Aの出口すなわち冷媒分流口82であることが好ましい。
本実施形態において、樹脂製流路8への上記態様の流路付与のための成形作業性の容易さから順方向への移動量と比例的に狭まる態様すなわち流路Aの全体がテーパー状である構造が好んで用いられる。
図7は、流路を構成する側面(a)86(樹脂製流路8の内部側)を、対向する他方の側面(b)87(樹脂製流路8の外縁側)にテーパー状に傾斜配置させることによって流路(A)の断面積を漸減させた態様を示したイメージ図である。
【0026】
また、本実施形態に係るテーパー部C(19)において、流路Aの内壁または内壁の延長線が、流路Aの出口すなわち冷媒分流口82の外周部の少なくとも一部と接するか、又は交差していることが好ましい。こうすることで、流路B(18)に向かう流れ15がより一層抑制され、第2の流路ユニット3へ流入する冷媒の量をより一層増やすことができ、冷却装置全体すなわち各冷却ユニットの冷却効率をより一層高めることができる。
ここで、流路Aは、例えば、直線状に延設されている。また、流路Aの内壁とは、流路Aの断面形状が四角形である場合は、底面、二つの側面、天面のいずれかである。流路断面形状が円乃至楕円形状である場合は、内周面の任意の点が内壁に相当する。
流路断面が四角形である場合の、上記好ましい要件を満たす典型的例を
図8に示した。(a)の場合、円形状の冷媒分流口82の円周部が、流路Aの底面85と側面(b)87に共に接している。(b)の場合、側面(a)86の延長線が冷媒分流口82の円周と交差している。また、(c)の場合、側面(a)86の延長線が冷媒分流口82の円周と接している。これらの(a)~(c)は、あくまでも好ましい例の典型を示したに過ぎず、本実施形態では、その具体的な態様は何ら制限されるものではない。
【0027】
本実施形態において、流路Bとしては、対向する二辺の縁部に形成された順方向マニホールド部および逆方向マニホールドと、両マニホールド間に配置された複数の直線状流路からなる櫛歯型流路方式と、蛇行状流路の一端に冷媒注入口が、蛇行状流路を形成する最初の直線流路の対向辺側に、隣接する第2の流路ユニットへの冷媒分流口が形成されている蛇行状流路方式を好ましい態様としてあげることができる。
本実施形態に係る櫛歯状流路においては、後述するように順方向マニホールドから分岐する複数の櫛歯状流路の敷居高さ、敷居幅、流路幅については、冷却される発熱体の発熱量に応じて適宜設定される。ただし、単位冷却ユニットの金属製冷却パネル9内の特定位置を強冷却したい場合、単位冷却ユニットの金属製冷却パネル9表面を押しなべて均一温度で冷却したい場合、あるいは一台のポンプで複数個に配置された冷却ユニットからなる冷却装置を、冷却ユニット間で温度ムラなく冷却した場合等の特定の目的で、上記敷居高さ、敷居幅、流路幅を任意に調整することできる。例えば、本実施形態に係る、二個の冷却ユニットが直列状に配置された構成を含む冷却装置の場合において、後段の冷却ユニットの冷却能力低下を防ぐため、前段の冷却ユニットの複数の櫛歯状流路、好ましくは全ての櫛歯状流路における流路入口の流路幅を絞る態様を挙げることができる。
【0028】
本実施形態に係る冷却装置は、厳しい環境下で使用した場合であっても冷媒が漏れることのない厳密な水密性を担保するために、金属製冷却パネル9と流路ユニット乃至樹脂製流路8は緊密且つ堅固に接合していることが好ましい。好ましい接合手段は、接着剤法、熱溶着法および機械締結法から選ばれる一種、または二種以上を組み合わせる方法である。例えば流路ユニット乃至樹脂製流路8と金属製冷却パネル9を接着剤を介して接合する方法は、接着剤法を用いた接合である。金属製冷却パネル8の表面に、インサート成形等の手段で樹脂土手部を形成させた後、次いで、該樹脂土手部の上に樹脂製流路を溶着手段で接合する方法は、樹脂-金属熱溶着法と樹脂-樹脂熱溶着法を組みわせて利用する方法である。樹脂製流路8と金属製冷却パネル9を接着剤を介して接合させた後、さらに機械締結する方法は、熱溶着法と機械締結法を組み合わせた接合手段である。
上記の接合手段で用いた接着剤としては公知の天然系接着剤および合成系接着剤が制限なく使用できるが接着力の持続性の視点から合成系接着剤が好ましい。
合成系接着剤は熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤、エラストマーに分類できるが、接着強度の観点から熱硬化性接着剤が好ましい。熱硬化性接着剤としては、常温反応型接着剤(一液形)であっても加熱硬化型接着剤(二液形)であってもよい。
どのような接着剤を用いるかは、どのような特性を持つ冷却装置を、どのような材料から形成するか等の事情によって当業者が任意に判断する事項である。
【0029】
本実施形態に係る冷却装置において、金属製冷却パネル9と流路ユニット乃至樹脂製流路8との機械締結は、具体的にはリベットまたはネジ止め等による機械締結である。この場合、少なくとも金属製冷却パネル9の外周端部と流路ユニット乃至樹脂製流路8とがリベットまたはネジ止めされていることが好ましい。金属製冷却パネル9の外周端部のみならず、金属製冷却パネル9の中央部周辺にも流路の流れを邪魔しない程度にリベットまたはネジ止めすることも可能である。金属製冷却パネル9の外周端部を機械的接合する場合、例えば金属製冷却パネル9が平面視矩形の場合、少なくとも外周部の四隅が機械的接合されていることが好ましい。金属製冷却パネル9の外周端部のみならず、金属製冷却パネル9の中央部近辺にも機械的接合用の樹脂土台を形成させたのち、金属製冷却パネル9と樹脂製流路8の機械的接合してもよい。この際は樹脂土台部の流路内での位置を、流路が乱流を引き起こすように工夫して設置することにより、流路内を通液する冷媒の温度均一化に資することが可能な場合がある。
また、本実施形態に係る冷却装置において、上記のように接着層12を介して接合(接着剤法)されていることに加えて、金属製冷却パネル9と流路ユニット乃至樹脂製流路8とがリベットまたはネジ止め等によって機械的接合されていることが好ましい。このように樹脂製流路8と金属製冷却パネル9を二段階で堅固に接合することによって流路ユニット乃至樹脂製流路8内を流通する冷媒の液漏れをより効果的に抑制できる。
【0030】
本実施形態において、接着剤法を用いて接合する場合の接着層12の平均厚みは、例えば0.5~5000μm、好ましくは1.0~2000μm、より好ましくは10~1000μmである。平均厚みが上記下限値以上であることによって、金属製冷却パネル9と樹脂製流路8との間の接着強度をより良好にすることができ、上記上限値以下であることによって硬化反応中に発生する残留歪量を抑制することができる。
【0031】
本実施形態に係る冷却装置においては、流路ユニット乃至樹脂製流路8と接着層12との間、接着層12と金属製冷却パネル9との間にプライマー層を備えていてもよい。プライマー層は特に限定されないが、通常は樹脂層を構成する樹脂成分を含む樹脂材料からなる。プライマー層用の樹脂材料は特に限定されず、公知の物を用いることができる。具体的には、ポリオレフィン系プライマー、エポキシ系プライマー、ウレタン系プライマー等を例示することができる。これらのプライマーは、多層態様等も含めて二種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
本実施形態に係る冷却装置は、流路ユニット乃至樹脂製流路8の流路形成面と、金属製冷却パネル9の周縁部とを重ね合わせ、例えば接着層12を介して接合させることによって作製することができる。具体的には、樹脂製流路8側の接着面、および/または金属製冷却パネル9側の接着面に、接着剤を塗布したのち、両者を接着する方法が挙げられる。接着条件は接着剤としてどのようなタイプを用いるかによっても変わるが、例えば、室温~150℃の温度下で、0.1分~7日程度の条件を例示できる。接着時は、加圧下で行ってもよい。加圧下で接着を行う場合、圧力は、例えば、0.01~1MPa程度である。
【0033】
本実施形態に係る樹脂製流路8は、好ましくは熱可塑性樹脂組成物の成形体である。熱可塑性樹脂組成物は樹脂成分としての熱可塑性樹脂を含み、必要に応じて充填剤をさらに含んでもよい。
熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、極性基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール-ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、樹脂製流路8と接着層12との接着強度や、金属製冷却パネル9と接着層12と接着強度がより効果的に得られるという観点、あるいは冷媒が含有する化学薬品への耐性を効果的に発現できるという観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0035】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物においては、樹脂製流路8の機械的特性の改良の視点や線膨張係数差の調整等の視点から任意成分と充填剤を併用できる。充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。また、アルミナ、フォルステライト、マイカ、窒化アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等に代表される放熱性フィラーを用いることもできる。これらの充填剤の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよいが、後述するように金属製冷却パネル9の表面に微細凹凸構造が形成されている場合は、凹部に侵入できる程度の大きさを含む充填剤を使用することが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂組成物が充填剤を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
【0036】
本実施形態に係る樹脂製流路8として、熱硬化性樹脂組成物を用いることも可能である。熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が用いられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、接着性および防錆性等の視点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上を含む熱硬化性樹脂組成物が好適に用いられる。熱硬化性樹脂組成物に占める熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物全体を100質量部としたとき、好ましくは15質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは25質量部以上50質量部以下である。なお残余成分は例えば充填剤であり、充填剤としては、例えば、前述した充填剤を用いることができる。
【0037】
樹脂製流路8の成形方法としては公知の方法を制限なく使用でき、例えば射出成形、押出成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)、溶射成形等を例示することができる。これらの中でも、樹脂製流路8の成形方法としては、生産性および品質安定性の視点から射出成形法が好ましい。
【0038】
本実施形態に係る樹脂製流路8は、例えば、底部と、底部に立設する側壁部と、を有する。樹脂製流路8の形状は好ましくは、平面視矩形の底部と、底部に立設する4枚の平面視矩形枠状の側壁部からなり、底部上に冷媒の流路を形成するために複数の敷居状の障壁が形成されている。障壁の頂面は好ましくは金属製冷却パネル9の、発熱体10を搭載する面とは反対面に接している。そして、該頂面と金属製冷却パネル9は接着剤によって接合されていてもよい。
本実施形態に係る樹脂製流路8の金属製冷却パネル9側の底面全体には溝部が複数形成されており、この溝部は金属製冷却パネル9面と密接することによって冷媒の流路としての機能を生みだす。
【0039】
流路ユニットにおける流路の構造について本発明は何ら限定するものではないが、好ましい例として、内部に形成された冷媒流路が、対向する二辺に形成された順方向マニホールド部および逆方向マニホールドと、両マニホールドに配置された複数の流路からなる方式(以下の説明では、「櫛歯型流路方式」と呼ぶ場合がある)と、内部に形成された冷媒流路が蛇行した一本の流路からなる方式(以下の説明では、「蛇行状流路方式」と呼ぶ場合がある)が挙げられる。
また、流路ユニットにおける流路のその他の構造の例としては、例えば、
図9に示す(a)~(e)の構造が挙げられる。なお、
図9(a)~(e)において、それぞれ右端の流路が流路Aであり、その他の流路が流路Bである。
【0040】
本実施形態に係る樹脂製流路8には冷媒注入口81と冷媒分流口82が設けられている。通常、櫛歯型流路方式においては順方向マニホールド部の一端に冷媒注入口81が、順方向マニホールルドの他端に第2の流路ユニット3への冷媒分流口82が形成されている。一方、蛇行状流路方式においては、蛇行状流路の一端に冷媒注入口81が、蛇行状流路を構成する最初の直線流路すなわち流路Aの、冷媒注入口81が設けられた辺の対向辺側に冷媒分流口82が形成されている。
【0041】
本実施形態に係る樹脂製流路8の、金属製冷却パネル9側の面とは反対側の面には、すだれ状あるいは格子状の補強リブが形成されていることが好ましい。このような補強リブは樹脂製流路8と同一の材質からなることが好ましい。上記補強リブを備えることによって外的ストレスから樹脂製流路8の構造を保護することができる。また、補強リブのリブ高さを高く設定することによって樹脂製流路8の接地面との間に十分な空間を作ることができ、その結果、樹脂製流路8の断熱効果をより向上でき、冷却機能の持続時間を延ばすことができる場合がある。あるいは補強リブのリブ間の間隔を狭めることによっても樹脂製流路8の断熱効果をより向上でき、その結果として冷却機能の持続時間を延ばすことができる場合がある。
【0042】
本実施形態に係る樹脂製流路8の流路形成面側は金属製冷却パネル9で覆われている。各流路ユニットは、流路ユニットごとに、それぞれ1枚の金属製冷却パネル9で覆われていてもよいし、複数個の大面積の流路ユニットの全体が1枚の金属製冷却パネル9で覆われていてもよい。
本実施形態に係る金属製冷却パネル9は、例えば、平面視において矩形である。金属製冷却パネル9は、発熱体からの熱を拡散するとともに、樹脂製流路8内を流通する冷媒に効率的に熱を伝達するという二つの役割を担う。それゆえ、金属製冷却パネル9の材質は伝熱性に優れることが好ましい。このような視点から金属製冷却パネル9を構成する金属種としては、アルミニウム系金属または銅系金属が用いられ、具体的には、金属製冷却パネル9はアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材からなる群から選択される少なくとも一種の部材により構成されていることが好ましい。また金属製冷却パネル9の平均厚みは、伝熱性、強度および軽量性を総合的に勘案して、例えば0.5mm~30mm、好ましくは0.5mm~20mmである。
【0043】
金属製冷却パネル9上の、少なくとも樹脂製流路8との接合部表面は、脱脂されていることが好ましい。また、金属製冷却パネル9の表面の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成されているか、親水性基が形成されていることがより好ましく、微細凹凸構造が形成された表面にさらに親水性基が形成されていることがさらに好ましい。
また、金属製冷却パネル9の表面の少なくとも一部に形成された微細凹凸構造上に樹脂製流路8の側壁部が位置することが好ましい。こうすることで、樹脂製流路8と金属製冷却パネル9との接合強度を高めることができ、その結果、冷媒の漏洩をより一層抑制できるとともに、機械的強度および耐久性の信頼性により一層優れた冷却装置を得ることができる。
【0044】
本実施形態において、金属製冷却パネル9の表面に形成されている微細凹凸構造の大きさ(深さ、孔径、孔径間距離等)については特段の制限はないが、JIS B 0601に準じて測定した十点平均粗さRzjisが、例えば1μm以上、好ましくは1μm以上1mm以下、より好ましく3μm以上100μm以下である微細凹凸構造である。
金属製冷却パネル9の表面に上記微細凹凸構造を形成する方法としては特段の制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム等の無機塩基水溶液および/または塩酸や硝酸等の無機酸水溶液に金属製冷却パネル9を浸漬する方法;陽極酸化法により金属製冷却パネル9を処理する方法;例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工等の機械的切削によって作製した微細凹凸構造を有する金型パンチを金属製冷却パネル9の表面にプレスすることにより金属製冷却パネル9の表面に微細凹凸構造を形成する方法;サンドブラストやローレット加工、レーザー加工により金属製冷却パネル9の表面に微細凹凸構造を形成する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属製冷却パネル9を浸漬する方法等が挙げることができる。
【0045】
なお、上記した方法の中で、特に浸漬方法を採用する場合、上記微細凹凸構造は、金属製冷却パネル9の樹脂製流路8との接合面のみならず、金属製冷却パネル9の全表面に微細凹凸構造が形成されることになるが、このような実施形態は本発明の効果を何ら損なうものではない。
【0046】
本実施形態において、金属製冷却パネル9の表面を覆う親水性基の具体例として、水酸基、シラノール基等を挙げることができる。金属製冷却パネル9の表面への水酸基等の親水性基の導入は、例えばプラズマトリート社が開発したオープンエア(商標)とプラズマプラス(商標)技術を適宜組み合わせたプラズマ表面改質技術を実施することによって達成可能である。また、金属製冷却パネル9の表面へのシラノール基の導入は、例えば、特許第3557194号公報に記載されているようなイトロ処理(ケイ酸化炎処理)によって可能である。上記微細凹凸構造が形成された金属製冷却パネル9の表面にさらに水酸基やシラノール基を導入するためには、いったん上記方法で金属表面に微細凹凸構造を形成させた後、プラズマあるいはイトロ処理を行えばよい。
【符号の説明】
【0047】
1’ 冷却装置を構成する単位ユニット(冷却ユニット)
2 第1の流路ユニット
3 第2の流路ユニット
4 第3の流路ユニット
5 第4の流路ユニット
8 樹脂製流路
81 冷媒注入口
82 冷媒分流口(流路Aの出口)
83 冷媒合流口
84 冷媒回収口
85 流路Aの底面
86 流路Aの側面(a)(内部側)
87 流路Aの側面(b)(外縁側)
88 流路Aの天面
89 流路Aの突当り面
90 流路側面(a)の延長線と突当り面の交線
9 金属製冷却パネル
10 発熱体
12 接着層
13 分流前の流れ
14 川下側の第2の流路ユニットに向かう流れ
15 流路Bに向かう流れ
17 流路A
18 流路B
19 テーパー部C
20 構造体