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特許7333722樹脂発泡シート及び該樹脂発泡シートを用いてなる容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】樹脂発泡シート及び該樹脂発泡シートを用いてなる容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230818BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230818BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230818BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20230818BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CET
C08J9/04 CFD
C08L51/04
C08L67/00
C08L67/04
C08K5/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019141320
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024888
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宝晃
(72)【発明者】
【氏名】井上 修治
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴彦
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-175537(JP,A)
【文献】特開2016-199654(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080134(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054536(WO,A1)
【文献】特開2000-248100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/8
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体と(D)化学発泡剤とを含有する樹脂発泡シートであって、
(A)ゴム変性ポリスチレンの還元粘度(ηsp/C)が0.65~0.92dl/gであり、
(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの含有量が(A)/(B)で表される質量比で55/45~90/10であり、
(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの合計100質量部に対して、(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体を1~13質量部含有することを特徴とする樹脂発泡シート。
【請求項2】
(B)ポリエステルがポリ乳酸である請求項1に記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
樹脂発泡シート中のゴム含有量が5.5~12.0質量%である請求項1または2に記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の(A)成分と(B)成分が共連続構造を形成した樹脂発泡シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の(A)成分中の流動パラフィンの含有量が0.8~3.0質量%である樹脂発泡シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートを成形してなる食品包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム変性ポリスチレンとポリエステルとを含む樹脂発泡シートと、該樹脂発泡シートを用いてなる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は成形加工の容易さ、軽量性などから、シート、発泡体、筐体など多くの分野で使用されている。一方、ポリエステル系樹脂は機械的特性などに優れることから、フィルム、シート、食器、包装容器など各種産業用途に広く使用されている。近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素の低減が求められており、見かけ上二酸化炭素を排出しない「カーボンニュートラル」な材料として様々な植物由来の環境維持可能な材料が開発され、中でもポリ乳酸が注目されている。しかしながら、ポリ乳酸は耐衝撃性が低く実用性に劣るため、石油系樹脂とのポリマーアロイが検討されている。(特許文献1)(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、スチレン系樹脂とポリ乳酸とのポリマーアロイを用いて得られる樹脂発泡シートは機械的強度が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/080134号
【文献】国際公開第2016/170964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ゴム変性ポリスチレンとポリエステルとを含有する耐折性、耐衝撃性などの機械的強度が良好な樹脂発泡シート、及び該樹脂発泡シートを用いてなる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体と(D)化学発泡剤とを含有する樹脂発泡シートであって、(A)ゴム変性ポリスチレンの還元粘度(ηsp/C)が0.65~0.92dl/gであり、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの含有量が(A)/(B)で表される質量比で55/45~90/10であり、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの合計100質量部に対して、(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体を1~13質量部含有することを特徴とする樹脂発泡シート。
2.(B)ポリエステルがポリ乳酸である前記1に記載の樹脂発泡シート。
3.樹脂発泡シート中のゴム含有量が5.5~12.0質量%である前記1または2に記載の樹脂発泡シート。
4.前記1~3のいずれか1項に記載の(A)成分と(B)成分が共連続構造を形成した樹脂発泡シート。
5.前記1~4のいずれか1項に記載の(A)成分中の流動パラフィンの含有量が0.8~3.0質量%である樹脂発泡シート。
6.前記1~5のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートを成形してなる食品包装用容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐折性、耐衝撃性などの機械的強度が良好なゴム変性ポリスチレンとポリエステルとを含有する樹脂発泡シートを製造することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用する(A)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合して得られるものであり、重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の単独または混合物をいい、特に好ましくはスチレンである。ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体が好ましい
【0009】
(A)ゴム変性ポリスチレンの還元粘度(ηsp/C)は0.65~0.92dl/gである。係る範囲であれば、機械的強度が良好な樹脂発泡シートが得られる。
【0010】
機械的強度の観点から、(A)ゴム変性ポリスチレン中のゴム状重合体の含有量は5.0~13.0質量%であることが好ましい。
【0011】
機械的強度の観点から、(A)ゴム変性ポリスチレン中の流動パラフィンの含有量は0.8~3.0質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明に使用する(B)ポリエステルは特に制限はないが、例としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸等が挙げられ、更に、その他の脂肪族ポリエステル、半芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステル等、主鎖にエステル結合を有するものであればよい。これらの中でもカーボンニュートラルの観点からポリ乳酸が好ましい。
【0013】
本発明において、(B)ポリエステルとして使用するポリ乳酸は、二酸化炭素排出量削減という観点から、植物由来原料が好ましい。特に、食糧問題と競合しない非可食の植物由来原料が好ましい。
【0014】
ポリ乳酸を構成するD-乳酸もしくはL-乳酸成分の比率が少ないほど、ポリ乳酸の結晶化は早く進行する。D-乳酸もしくはL-乳酸成分の比率は0.01~5モル%が好ましい。特に好ましくは0.05~4モル%の範囲である。
【0015】
機械的強度の観点から、ポリ乳酸の分子量は、重量平均分子量(Mw)が5万~40万であることが好ましい。特に好ましくは10~30万の範囲である。
【0016】
本発明において、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの含有量は(A)/(B)で表される質量比で55/45~90/10である。特に好ましくは60/40~80/20の範囲である。係る範囲であれば、機械的強度と耐薬品性が良好な樹脂発泡シートが得られる。
【0017】
本発明に使用する(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体は、モノマー単位としてブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸を有する熱可塑性エラストマーである。エチレン性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル等が挙げられ、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。また必要に応じて、ブタジエン及び/またはエチレン性不飽和カルボン酸エステルと共重合可能な他の単量体を組み合わせることも可能である。上記のエチレン性不飽和カルボン酸エステルの中では、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0018】
(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体は、ブタジエンを含む重合体粒子をコアとして、その表面にエチレン性不飽和カルボン酸エステルを含む単量体をグラフト共重合させてシェルを形成させた多層構造粒子が、耐衝撃性をより高めることができるため好ましい。
【0019】
(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体の含有量は、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルの合計100質量部に対して、1~13質量部である。係る範囲であれば、機械的強度が良好な樹脂発泡シートが得られる。13質量部を超えると耐熱性が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明に使用する(D)化学発泡剤は特に制限はないが、例として無機系発泡剤の炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸との混合物、有機系発泡剤のアゾジカルボンアミド(ADCA)、p,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などが挙げられる。これら化学発泡剤は単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。また必要に応じて、発泡助剤を組み合わせて使用することができる。発泡助剤は例として尿素化合物、亜鉛化合物などが挙げられる。
【0021】
本発明に使用する(D)化学発泡剤の添加量は特に制限はないが、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体とを含む樹脂組成物100質量部に対して、0.1~3.0質量部が好ましい。
【0022】
本発明の樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲でリサイクル材を添加することができる。リサイクル材は例として樹脂発泡シート製造時に発生する耳、樹脂発泡シートを二次成形した際に発生するスケルトンと呼ばれる打抜き屑、それらのリサイクルペレットなどが挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を添加する事ができる。例えば、脂肪酸系滑剤、脂肪族アマイド系滑剤、金属石鹸系滑剤等の滑剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の酸化防止剤、タルク、炭酸カルシウム、クレー等の発泡核剤、タルク、マイカ、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の補強剤、顔料、染料等の着色剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の帯電防止剤である。
【0024】
本発明において、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体との混合方法は、公知の混合技術を適用することができる。例えば、ミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置で予め混合しておいた混合物を、更に溶融混練することで均一な樹脂組成物とすることができる。溶融混練にも特に制限はなく公知の溶融技術を適用できる。好適な溶融混練装置としては、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等である。また、各成分を各々定量フィーダーを使用して押出機等の溶融混練装置に供給し樹脂組成物を得る方法がある。
【0025】
(D)化学発泡剤の添加方法は特に制限はないが、例として、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体との樹脂組成物にドライブレンドする方法、予め熱可塑性樹脂と混合したマスターバッチを作成し添加する方法、押出機の供給口に定量フィーダーを使用して添加する方法などが挙げられる。
【0026】
本発明の樹脂発泡シート製造方法は、公知の製造方法を適用することができる。例としては、溶融樹脂をTダイから押出して成形する方法や、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でもTダイを使用することが好ましい。また、シートは単層でも良く、多層シートの内層に本発明の樹脂発泡シートを用いてもよい。多層シートの製造方法としては、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイを使用した共押出法や、予め表面層を単独で作成しておき、基材シートと熱ラミネートする方法が挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂発泡シートの厚さは0.3~3.0mmであることが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂発泡シートの発泡倍率は1.1~2.5倍であることが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂発泡シートのゴム含有量は5.5~12.0質量%が好ましい。係る範囲であれば、機械的強度が良好な樹脂発泡シートが得られる。
【0030】
本発明において、耐薬品性の観点から、(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルとを混練することにより、共連続構造を形成させることが好ましい。
【0031】
ここで、ポリマーアロイにおける共連続構造は、「特開2010-6910の段落番号0040と段落番号0041」に記載されている。
【0032】
ポリマーアロイにおいて共連続構造を形成させるためには、溶融混錬時の樹脂組成、および、樹脂温度が重要であることを見出した。樹脂温度は215℃以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の樹脂発泡シートは、真空成形や圧空成形、マッチドモールド成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、リッジ成形、プラグアンドリッジ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等、公知の熱成形方法を用いて、トレー、弁当容器、丼容器、カップ、蓋付箱型等の各種形状や大きさの容器に加工することができる。
【実施例
【0034】
以下に例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0035】
(A)ゴム変性ポリスチレンは以下のものを使用した。
(A-1):還元粘度(ηsp/C)0.89dl/g、ゴム状重合体含有量6.3質量%、流動パラフィン含有量2.0質量%であるゴム変性ポリスチレン
(A-2):還元粘度(ηsp/C)0.78dl/g、ゴム状重合体含有量8.6質量%、流動パラフィン含有量2.5質量%であるゴム変性ポリスチレン
(A-3):還元粘度(ηsp/C)0.73dl/g、ゴム状重合体含有量11.9質量%、流動パラフィン含有量1.4質量%であるゴム変性ポリスチレン
(A-4):還元粘度(ηsp/C)0.59dl/g、ゴム状重合体含有量9.3質量%、流動パラフィン含有量0.0質量%であるゴム変性ポリスチレン
なお、還元粘度(ηsp/C)、ゴム状重合体含有量、流動パラフィン含有量は以下の方法で測定した。
【0036】
〈ゴム変性ポリスチレンの還元粘度(ηsp/C)の測定〉
ゴム変性ポリスチレン1gにメチルエチルケトン17.5mlとアセトン17.5mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、250mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥する。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度0.4%(質量/体積)の試料溶液を作成した。この試料溶液、及び純トルエンを30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0-1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C :ポリマー濃度
【0037】
〈ゴム変性ポリスチレン中のゴム状重合体含有量の測定〉
ゴム変性ポリスチレンをクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0038】
〈ゴム変性ポリスチレン中の流動パラフィン含有量の測定〉
ゴム変性ポリスチレン200mgを2mLの1,2-ジクロロメタンに溶解し、メタノールを2mL添加してスチレン系樹脂を析出させ、静置させたのち、上澄み液について、ガスクロマトグラフィー(「HP-5890」ヒューレットパッカード社製)を使用して測定した。なお詳細な条件を以下に記す。
(イ)カラム:DB-1(ht) 0.25mm×30m 膜厚0.1μm
(ロ)インジェクション温度:250℃
(ハ)カラム温度:100-300℃
(二)検出器温度:300℃
(ホ)スプリット比:50/1
(へ)内部標準物質:n-エイコサン
【0039】
(B)ポリエステルは以下のものを使用した。
(B-1):ポリ乳酸「REVODA190」浙江海正生物材料(Zhejiang Hisun Biomaterials Co.,Ltd.)製。D-乳酸成分の比率0.5モル%、重量平均分子量(Mw)20万。
(B-2):共重合ポリエステル「PET-G GN001」イーストマン社製。
【0040】
(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体は以下のものを使用した。
(C-1);ポリブタジエン(コア)に、メタクリル酸メチル及びスチレンをグラフト共重合させてシェル層を形成させた多層構造粒子「メタブレンC-223A」三菱ケミカル社製。
(C-2):ポリブタジエン(コア)に、メタクリル酸メチル及びスチレンをグラフト共重合させてシェル層を形成させた多層構造粒子「カネエースM-511」カネカ社製。
【0041】
(D)化学発泡剤は以下のものを使用した。
(D-1):「ポリスレンES405」永和化成工業社製。
(D-2):「ポリスレンEE207」永和化成工業社製。
【0042】
〈実施例1~8、比較例〉
表1に示す配合量の(A)ゴム変性ポリスチレンと(B)ポリエステルと(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体の各成分を混合機に投入して予備混合を行い、混合物を二軸押出機(「TEM26SS:14バレル」東芝機械社製)に定量フィーダを使用して供給し、シリンダー温度180℃、総供給量30kg/時間、スクリュー回転数300rpmの押出条件で溶融混練して押し出した。この時の樹脂温度は210℃であった。押し出されたストランドは水冷してからペレタイザーへ導き、樹脂組成物のペレットを得た。
続いて、前記樹脂組成物100質量部と、表1に示す配合量の(D)化学発泡剤をドライブレンドし、スクリュー経40mmのシート押出機に供給し、シリンダー温度240℃、Tダイ(コートハンガーダイ)温度190℃、スクリュー回転数70rpm、吐出量20kg/時間で溶融押し出し後、80℃に設定したキャストロール、タッチロールに圧着し、速度1.1m/分で引き取り、樹脂発泡シート(幅500mm×厚み0.6mm)を作製した。得られた樹脂発泡シートの耐折性、耐衝撃性、耐薬品性の評価を以下の方法で行った。結果を表1に示す。
【0043】
〈実施例9〉
樹脂組成物のペレットを得る際に、二軸押出機の押出条件をシリンダー温度230℃に変更し、樹脂温度が230℃であった以外は、前記実施例と同様に行った。
【0044】
〈耐折性の評価〉
押出方向を長手とし幅15mm×長さ110mmの試験片をシートから切り出し、MIT耐折疲労試験機(「MIT-DA」東洋精機社製)を使用し、試験速度175rpm、折り曲げ角度45度、荷重0.5kgf、折り曲げクランプのR0.38mm、折り曲げクランプの開き0.75mmの条件にて、破断に至るまでの折り曲げ回数を求めた。150回以上を合格とした。
【0045】
〈耐衝撃性の評価〉
フィルムインパクトテスター(「BU-302」テスター産業社製)を用いて衝撃球面R6.35mmにて測定を行った。測定は非発泡シートの表面、裏面、各々20回ずつ行い、全ての平均値をシートインパクト強度とした。1.0J/mm以上を合格とした。
【0046】
〈耐薬品性の評価〉
樹脂発泡シート0.5gをメチルエチルケトン50mlに浸漬させ、1週間放置した後、目視にて樹脂発泡シートの形状の変化を確認した。
○:変化なし。
△:わずかに綿状片が見られる。
×:全体的に形状が崩れている。
【0047】
〈樹脂発泡シート中のゴム含有量の測定〉
樹脂発泡シートをクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0048】
〈共連続構造の確認方法〉
樹脂発泡シート0.5gにメチルエチルケトンを50ml加えて、1週間経過後の未溶解物を作製し、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-6510)を用いて、2000倍に拡大して撮影し、共連続構造の有無を確認した。
有:連続した網目状構造を有している。
無:不連続な構造となっている。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示されるように、特定のゴム変性ポリスチレンを使用することによって、スチレン系樹脂とポリエステルとのポリマーアロイを用いて樹脂発泡シートを作成しても、機械的強度が良好であることがわかる。