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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230818BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 642E
H01L21/304 642A
H01L21/304 642F
H01L21/306 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019150463
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021034442
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-164547(JP,A)
【文献】特開2004-281728(JP,A)
【文献】特開2000-183011(JP,A)
【文献】特開平11-154656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
前記処理液が貯留される処理槽と、
前記基板を昇降可能に保持し、前記基板を降下させ、該基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に浸漬させる基板昇降部と、
前記処理槽に処理液を構成する薬液または純水を供給する薬液供給部と、
前記薬液供給部による薬液または純水の前記処理槽への供給を制御し、前記基板昇降部により前記基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態において、所定時間に亘り、前記薬液供給部による前記薬液または純水の前記処理槽への供給を停止する制御部と、
前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度が高く、下部の前記処理液の温度が低いという温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正部と、
を備え、
前記補正部は、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態において、前記処理槽内の下部における前記処理液に超音波を作用させることで、前記処理槽内の下部における処理液の温度を上昇させる超音波発生器を有することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、更に、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後において、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水することで、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度を下げる散水器を有することを特徴とする、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
前記処理液が貯留される処理槽と、
前記基板を昇降可能に保持し、前記基板を降下させ、該基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に浸漬させる基板昇降部と、
前記処理槽に処理液を構成する薬液または純水を供給する薬液供給部と、
前記薬液供給部による薬液または純水の前記処理槽への供給を制御し、前記基板昇降部により前記基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態において、所定時間に亘り、前記薬液供給部による前記薬液または純水の前記処理槽への供給を停止する制御部と、
前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度が高く、下部の前記処理液の温度が低いという温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正部と、
を備え、
前記補正部は、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後において、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水することで、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度を下げる散水器を有することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項4】
前記散水器は、前記処理液の該処理槽の下部からの排水が開始されるタイミングで、前記散水を開始することを特徴とする、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記散水器は、前記処理槽内の前記処理液が該処理槽の下部から排水され、前記処理液に浸漬されていた基板が処理液の水面から露出するタイミングで、前記散水を開始することを特徴とする、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
処理槽内に前記処理液を構成する薬液または純水を供給して貯留させる貯留工程と、
前記基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に降下させる降下工程と、
前記降下工程により前記基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態を維持し、所定時間に亘り、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給を停止する浸漬工程と、
前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度が高く、下部の前記処理液の温度が低いという温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正工程と、
を有し、
前記補正工程においては、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態で、前記処理槽内の下部における前記処理液に超音波を作用させ、前記処理槽内の下部における処理液の温度を上昇させることを特徴とする、基板処理方法。
【請求項7】
前記補正工程においては、更に、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後で、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水することで、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度を下げることを特徴とする、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
処理槽内に前記処理液を構成する薬液または純水を供給して貯留させる貯留工程と、
前記基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に降下させる降下工程と、
前記降下工程により前記基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態を維持し、所定
時間に亘り、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給を停止する浸漬工程と、
前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度が高く、下部の前記処理液の温度が低いという温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正工程と、
を有し、
前記補正工程においては、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後で、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水することで、前記処理槽内の上部の前記処理液の温度を下げることを特徴とする、基板処理方法。
【請求項9】
前記補正工程においては、前記処理液の該処理槽の下部からの排水が開始されるタイミングで、前記散水を開始することを特徴とする、請求項7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記補正工程においては、前記処理槽内の前記処理液が該処理槽の下部から排水され、前記処理液に浸漬されていた基板が処理液の水面から露出するタイミングで、前記散水を開始することを特徴とする、請求項7または8に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機EL用基板、FED(Field Emission Display)、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板等の基板(以下、単に「基板」と称する)に対して、処理液によって処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記の装置として、基板を処理するための処理液を処理槽に貯留し、基板を処理槽内の処理液に浸漬させることで基板の処理を実行する装置がある。その中で、処理槽内の処理液を循環ラインによって循環させ、一旦処理槽から排出された処理液を処理槽に還流しつつ、処理液における温度や各薬液の濃度を適切に維持する装置が公知である。(例えば、特許文献1、2を参照。)
【0003】
しかしながら、このような循環型の基板処理装置において、基板の処理中にも処理液の循環を継続した場合は、処理槽内に設けられた、還流する処理液の流入口から処理液が流入することで処理槽内に液流が発生し、基板において処理液の液流が作用する領域において優先的に処理が進行し、基板における処理の進行度合いに偏りが生じる虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-079954号公報
【文献】特開2019-079881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理槽内の処理液に基板を浸漬させることで基板の処理を実行する装置において、基板における処理の進行度合いの偏りを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
前記処理液が貯留される処理槽と、
前記基板を昇降可能に保持し、前記基板を降下させ、該基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に浸漬させる基板昇降部と、
前記処理槽に処理液を構成する薬液または純水を供給する薬液供給部と、
前記薬液供給部による薬液または純水の前記処理槽への供給を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態において、所定時間に亘り、前記薬液供給部による前記薬液または純水の前記処理槽への供給を停止することを特徴とする、基板処理装置である。
【0007】
すなわち、本発明においては、基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態において、所定時間に亘り、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給を停止する。これにより、処理槽内に薬液または純水が供給されることで生じた水流が基板の表面の特定の部分に作用することを抑制し、基板における処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制する
ことができる。
【0008】
また、本発明においては、前記基板保持部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正部を、さらに備えるようにしてもよい。
【0009】
ここで、基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態において、所定時間に亘り、処理槽に対する前記薬液または純水の供給を停止した場合には、水流が基板の表面の特定の部分に作用することを抑制することが可能であるが、この場合であっても、処理槽内の処理液のうち、比較的高温の処理液は上部に移動し比較的低温の処理液が下部に移動するために、処理液中に温度分布が生じ、結果として、基板における処理の進行度合いに偏りが生じてしまう懸念があった。これに対し、本発明においては、処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正部を備えるようにしたので、より確実に、基板における処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記補正部は、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態において、前記処理槽内の下部における前記処理液に超音波を作用させる超音波発生器を有するようにしてもよい。
【0011】
すなわち、本発明では、基板が処理槽内の処理液に浸漬され、処理槽に対する薬液または純水の供給が停止された状態において、処理槽内の下部における処理液に超音波を作用させる。そうすると、超音波によって付与されるエネルギーにより、処理槽内の下部における処理液の温度を上昇させることができる。これにより、前記処理槽内の温度分布をより均一化することができ、より確実に、基板における処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記補正部は、前記基板昇降部により基板が前記処理槽内の処理液に浸漬され、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後において、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水する散水器を有するようにしてもよい。
【0013】
すなわち、本発明においては、基板が処理槽内の処理液に浸漬され、処理槽に対する薬液または純水の供給が停止された状態の後において、処理槽内の処理液を処理槽の下部から排水するとともに、処理槽の上側から、処理槽内の処理液より低温の純水を処理槽内に散水する。これによれば、より高温の処理液が作用していた基板の上部から優先的に、温度を下げることができ、且つ、処理液の濃度を低下させることができる。よって、より確実に、基板における処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記散水器は、前記処理液の該処理槽の下部からの排水が開始されるタイミングで、前記散水を開始するようにしてもよい。これによれば、基板が処理槽内の処理液に浸漬した状態のまま、基板上部の近傍の処理液の濃度と温度を低下させることができる。その結果、緩やかに基板の上部における処理速度を減少させることができ、より確実に、基板における処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制することができる。なお、ここで処理液の処理槽の下部からの排水が開始されるタイミングとは、処理液の処理槽の下部からの排水が開始されると同時であってもよいし、前後に若干のずれがあってもよい。
【0015】
また、本発明においては、前記散水器は、前記処理槽内の前記処理液が該処理槽の下部から排水され、前記処理液に浸漬されていた基板が処理液の水面から露出するタイミングで、前記散水を開始するようにしてもよい。これによれば、処理液の水面から基板が露出した前後に散水を開始し、基板に直接、低温の純水を散水することができるので、より急速に基板の上部における処理の進行速度を減少させることができる。その結果、より急速に、基板における処理の進行度合いの偏りを補正することができる。なお、ここで、処理液に浸漬されていた基板が処理液の水面から露出するタイミングとは、排水が開始され、処理槽における処理液の水面が低下し、基板の上部が処理液の水面から露出すると同時であってもよいし、前後に若干のずれがあってもよい。このタイミングは、液量センサ等で処理液の水面を測定することで検知してもよいし、予め、排水を開始してからの時間として予め算出され、あるいは、実験的に求められても良い。
【0016】
また、本発明は、上記の基板処理装置と、前記基板昇降部に処理前の前記基板を供給する基板供給装置と、を備える、基板処理システムであってもよい。
【0017】
また、本発明は、基板を処理液に浸漬させることにより前記基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
処理槽内に前記処理液を構成する薬液または純水を供給して貯留させる貯留工程と、
前記基板を前記処理槽に貯留された前記処理液に降下させる降下工程と、
前記降下工程により前記基板が前記処理槽内の処理液に浸漬された状態を維持する浸漬工程と、
を有し、
前記浸漬工程においては、所定時間に亘り、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給を停止することを特徴とする、基板処理方法であってもよい。
【0018】
また、本発明の基板処理方法においては、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態における、前記処理槽内の温度分布による前記処理の進行状態の偏りを補正する補正工程を、さらに有するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明の基板処理方法では、前記補正工程においては、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態で、前記処理槽内の下部における前記処理液に超音波を作用させるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明の基板処理方法では、前記補正工程においては、前記浸漬工程の、前記処理槽に対する前記薬液または純水の供給が停止された状態の後で、前記処理槽内の前記処理液を該処理槽の下部から排水するとともに、該処理槽の上側から、該処理槽内の前記処理液より低温の純水を前記処理槽内に散水するようにしてもよい。
【0021】
また、本発明の基板処理方法では、前記補正工程においては、前記処理液の該処理槽の下部からの排水が開始されるタイミングで、前記散水を開始するようにしてもよい。あるいは、前記補正工程においては、前記処理槽内の前記処理液が該処理槽の下部から排水され、前記処理液に浸漬されていた基板が処理液の水面から露出するタイミングで、前記散水を開始するようにしてもよい。
【0022】
なお、本発明においては、上記した課題を解決するための手段は、可能な限り、組み合わせて実施することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板処理の均一性をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2】実施例1における、基板処理のプロセスを示す図である。
図3】実施例2の基板処理装置の概略構成を示す図である。
図4】実施例2の超音波振動の付与による、処理槽の下部における処理液の温度上昇効果を示すグラフである。
図5】実施例2における、基板処理のプロセスを示す図である。
図6】実施例3における、基板処理のプロセスを示す図である。
図7】実施例4における、基板処理のプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る基板処理装置1の概略図である。基板処理装置1は、半導体ウェハ(以下、単に基板Wともいう)の処理を実行する装置である。ここで、基板Wの製造工程においては、例えばシリコン等のインゴッドをその棒軸方向にスライスし、得られたものに対して面取り、ラッピング、エッチング処理、ポリッシング等の処理が順次施される。そして、処理槽2において実行される基板Wのエッチング処理は、例えば、基板W上のポリシリコン膜や金属膜等を除去することを目的としており、基板Wを処理液に浸漬することにより実施される。
【0027】
なお、本実施例において、基板処理装置1において使用される処理液を構成する薬液は、SC1(NHOH+H+DIW(純水)の混合液)を想定している。しかしながら、処理液を構成する薬液としては、SC1の他、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、フッ酸(HF)、硫酸(HSO)、酢酸(CHCOOH)、硝酸(HNO)、塩酸(HCL)、アンモニア水(NHWater)、過酸化水素水(H)、有機酸(たとえばクエン酸(C(OH)(CHCOOH)COOH)、蓚酸((COOH))など)、界面活性剤(Surfactant)、腐食防止剤(Corrosion Inhibitor)、有機溶剤(Organic Solvent)、炭酸
水(CO Water)、オゾン水(Ozon Water)等を含んだものであってもよい。
【0028】
図1において、基板処理装置1には、処理液が貯留される処理槽2及び、処理槽2における処理液に基板Wを浸漬させるためのリフタ13が備えられている。リフタ13は、図1の紙面に平行に配置された背板13aと、背板13aに垂直に立設された3本の保持棒13bを有する。この保持棒13bは、起立姿勢にて相互に平行に配列された複数(例えば50枚)の基板Wを一括して保持する。より詳細には、保持棒13bは、基板Wの下縁中央部の端縁と、基板Wの下縁斜め下方部の両端縁との三点を当接して、基板Wを起立姿勢で支持する。リフタ13は、保持する複数枚の基板Wを処理槽2内の処理液中に浸漬する処理位置(図1の実線位置)と処理液から引き上げた受渡位置(図1の破線位置)との間で昇降させる。このリフタ13は本実施例において基板昇降部に相当する。
【0029】
また、基板処理装置1は、処理槽2における処理液を排水する排液部4を備える。排液部4は、処理槽2内の処理液を通過させる排液ライン4aと、排液バルブ4bを有する。排液部4は、排液バルブ4bが開弁されることにより、処理槽2中の処理液をそのまま排液ライン4aを介して排水する。排液バルブ4bが閉弁した状態では、処理槽2内に処理液が貯留可能であるが、排液バルブ4bが開弁した状態では、処理槽2内に貯留している
処理液が急速に排水(以下、急速排水ともいう)され、処理槽2を空の状態にすることが可能である。なお、処理槽2から処理液を排水する手法としては、排液バルブ4bが閉弁した状態としたまま処理液を構成する薬液または純水を処理槽2内に流入させ、処理槽2の上端から処理液を溢れさせて排水することも可能となっている。
【0030】
また、基板処理装置1には、処理槽2内の処理液の量及び濃度を調整するための濃度調整部40が設けられている。この濃度調整部40は、正面から見て処理槽2の底板2aの両側に薬液供給部としての噴出管6a、6bを有している。この噴出管6a、6bは、その噴出孔から処理槽2の底板2aの中央部に向かって処理液を構成する薬液または純水を噴出する。この噴出管6a、6bは、複数枚の基板Wの配列方向(図1の紙面に垂直方向)に沿って長軸を有する。濃度調整部40は、SC1供給源41aと、SC1供給源41aと処理槽2とを結ぶ薬液ライン42aと、純水供給源41bと、純水供給源41aと処理槽2とを結ぶ純水ライン42bとを有する。
【0031】
薬液ライン42aには、SC1の流量を測定可能な流量計44aが設けられている。また、SC1の流量を調整可能な補充バルブ45aが設けられている。一方、純水ライン42bには、純水ライン42bを通過する純水の流量を測定する純水流量計44bと、純水の流量を調整する純水補充バルブ45bが設けられている。さらに、噴出管6a、6bから噴出されるSC1及び純水の温度を調整するためのヒータ8が設けられている。
【0032】
また、基板処理装置1には、制御部5が備えられている。この制御部5は図示しないCPUやメモリなど、一般的なコンピューターと同様の構成を有しており、処理手順を規定したレシピに基づいてリフタ13、排液部4、濃度調整部40の各部を制御する。例えば処理槽2内の処理液の濃度を調整する場合には、処理槽2における薬液や純水の濃度を測定する濃度計51の測定結果に基づいて補充バルブ45a、純水補充バルブ45bを制御することで処理槽2に供給されるSC1と純水の量が調整される。また、ヒータ8の発熱量が調整される。そのことで、処理槽2内の処理液の濃度、量及び温度が、基板Wの処理に最適な状態となるように制御される。
【0033】
次に、上記構成を有する基板処理装置1の処理のプロセスについて図2を用いてより詳細に説明する。本実施例においては、図2のステップ1においては、処理槽2が主に純水で満たされた状態から、SC1を噴出管6a、6bから処理槽2に第1時間に亘り噴出させ、処理槽2内におけるSC1濃度を高めて基板Wの処理に適切な濃度となるように制御する。本実施例においてこの工程は貯留工程に相当する(以下の実施例においても同じ)。そして、基板Wが保持されたリフタ13が受渡位置から処理位置まで下降することで、基板Wが処理液に浸漬される。この工程は本実施例において降下工程に相当する(以下の実施例においても同じ)。その際、SC1は噴出管6a、6bから処理槽2の底板2aに向かって噴出され、その後、処理槽2の下部から上部に向かう水流を生じさせる。なお、このステップ1における第1時間は、レシピに基づいて決められるが、例えば、100~200secであってもよい。
【0034】
次に、ステップ2に移行する。ステップ2においては、噴出管6a、6bからのSC1の噴出を停止し、第2時間に亘り、基板Wは処理槽2内の処理液に浸漬された状態で静置される。このステップ2における第2時間は、レシピに基づいて決められるが、例えば、900~1800secであってもよい。この期間において基板Wの処理が進行する。本実施例においてこの工程は浸漬工程に相当する。次に、ステップ3に移行する。ステップ3においては、純水を噴出管6a、6bから処理槽2に第3時間に亘り噴出させ、処理槽2内におけるSC1濃度を低下させる。
【0035】
その際、純水は噴出管6a、6bから処理槽2の底板2aに向かって噴出され、その後
、処理槽2の下部から上部に向かう水流を生じさせる。そして、その期間中、処理槽2の上端からSC1を含む使用後の処理液が溢れることで排水され、最終的には、処理槽2は純水で略満たされた状態となる。そして、その過程において基板Wの洗浄(リンス)が実行され、処理の進行も停止する。
【0036】
なお、このステップ3における第3時間は、レシピに基づいて決められるが、例えば、60sec程度であってもよい。ステップ3が終了し、基板Wのリンスが終了すると、リフタ13が上昇して受渡位置に移動する。そして、リフタ13に搭載された基板Wは次工程に移行するとともに、リフタ13には、次に処理される基板Wが搭載される。また、処理槽2内には純水が満たされる状態となり、図2のステップ1に戻る。
【0037】
本実施例では、図2におけるステップ2において、噴出管6a、6bからはSC1等の薬液や純水は流入されず、処理槽2内の処理液が静止した状態で基板Wの処理が進行する。よって、噴出管6a、6bから噴出された薬液や純水による水流が基板Wに直接作用する領域において処理が促進され、基板Wにおける処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制することができる。
【0038】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、ステップ2において、噴出管6a、6bからの処理槽2へのSC1や純水の噴出を停止し、基板Wが処理液に浸漬された状態で静置することとした。これに対し、実施例2においては、処理槽2の下部に超音波発生器を配置し、ステップ2において、処理槽2の下部の処理液に超音波振動を作用させる例について説明する。
【0039】
上述したとおり、実施例1においては、ステップ2において処理槽2への薬液や純水の噴出を停止し、処理槽2内の処理液と基板Wとを静置することとした。この場合であっても、例えば、処理に適切な温度(例えば60℃)に制御された処理液中にリフタ13と基板Wが存在することで、処理液中に温度分布が生じる場合があった。そして、より高温の処理液は処理槽2の上部に移動し、より低温の処理液は処理槽2の下部に移動する傾向があるため、基板Wの上部において下部と比較して処理が促進され、基板Wの処理の進行度合いに偏りが生じてしまう場合があった。特に、本実施例で処理液に使用しているSC1は、その処理速度の温度依存性が顕著であるので、SC1を用いる処理においては、処理液中の温度分布により生じる、基板Wの処理の進行度合いの偏りは、より顕著になる場合があった。
【0040】
これに対し、本実施例においては、処理槽2の下側に、処理槽2に超音波振動を作用させるための超音波発生器7を設けることとし、ステップ2において、この超音波発生器7によって処理槽2の下部における処理液に超音波振動を作用させることとした。
【0041】
図3は、本実施例における基板処理装置11の概略図である。図3では、処理槽2の下側には、超音波発生器7が設けられている。超音波発生器7において、処理槽2の下部が浸漬するように伝播水7cが貯留された伝播槽7bが設けられている。伝播槽7bの下面中央部には、超音波振動素子7aが取り付けられている。超音波振動素子7aは、伝播槽7bの下面に形成された開口に嵌め込まれ、超音波振動素子7aの上部の振動面70aが伝搬槽7b内に位置した状態で固定されている。本実施例では、伝播槽7bに超音波振動素子7aを取り付けるので、超音波振動素子7aを処理槽2に直接的に取り付ける際の技術的な制限を受けずに、自由度を高く超音波振動素子7aを配置することができる。
【0042】
伝播槽7bの内部には、伝播水を伝播槽7bに供給するための供給管7dが設けられている。超音波振動素子7aは、その上部の振動面70aから超音波振動を発生する。発生
した超音波振動は伝搬槽7b内の伝搬水を介して処理槽2の底板2aに伝搬し、底板2aを透過してさらに処理槽2内の処理液に伝搬する。そして、処理液に伝搬した超音波振動のエネルギーによって処理槽2の下部における処理液の温度が上昇する。なお、供給管7dから伝播槽7b内に供給される伝播水としては、例えば、純水が挙げられる。
【0043】
図4には、超音波発生器7による超音波振動の効果を示す。図4は、後述する本実施例のステップ11及びステップ12における、超音波発生器7による超音波振動の有無と処理槽2の下部の温度との関係を示している。図中破線で示すのは超音波振動の付与が無い場合、図中実線で示すのは、超音波振動の付与が有る場合を示している。図4から分かるように、超音波振動を処理槽2に作用させることで、処理槽2の下部における処理液の温度を上昇させることが可能で、基板Wの処理液への浸漬中に生じた処理液の温度分布の影響を補正することが可能となる。ここで、本実施例における補正部は、この超音波発生器7を含んで構成される。
【0044】
次に、上記構成を有する基板処理装置11の処理のプロセスについて図5を用いてより詳細に説明する。本実施例では、ステップ11においては、実施例1のステップ1と同様、処理槽2が主に純水で満たされた状態から、SC1を噴出管6a、6bから処理槽2に第1時間に亘り噴出させ、処理槽2内におけるSC1濃度を高めて基板Wの処理に適切な濃度となるように制御する。そして、基板Wが保持されたリフタ13が受渡位置から処理位置まで下降する。また、本実施例では、このステップ11において、同時に超音波発生器7から、処理槽2に向かって超音波振動が発生される。このことにより、処理槽2の下部における処理液の温度は、超音波振動の発生がない場合と比較して上昇する。なお、このステップ11においても、第1時間は、レシピに基づいて決められるが、例えば、100~200secであってもよい。
【0045】
次に、ステップ12に移行する。ステップ12においては、噴出管6a、6bからのSC1の噴出を停止し、第2時間に亘り、基板Wが処理槽2内の処理液に浸漬された状態で、超音波発生器7から、処理槽2に向かって超音波振動が発生される。このステップ12における第2時間は、実施例1のステップ2と同様、例えば、900sec程度であってもよい。処理槽2の下部の処理液の温度は、超音波振動がない場合と比較して上昇する。よって、この期間において、超音波振動がない場合と比較して、基板Wの下部における処理がより進行し、超音波振動がない場合における基板Wの処理の進行度合いの偏りを補正することができる。本実施例においてステップ12の工程は、浸漬工程及び補正工程に相当する。
【0046】
次に、ステップ13に移行する。ステップ13においては、純水を噴出管6a、6bから処理槽2に第3時間に亘り噴出させ、処理槽2内におけるSC1濃度を低下させる。その際、実施例1のステップ3と同様、純水は噴出管6a、6bから処理槽2の底板2aに向かって噴出され、その後、処理槽2の下部から上部に向かう水流を生じさせる。そして、その期間中、処理槽2の上端からSC1を含む使用後の処理液が溢れることで排水され、最終的には、純水で満たされた状態とする。また、ステップ13においては、超音波発生器7による超音波振動の発生は停止される。この過程において基板Wの洗浄(リンス)が行われる。
【0047】
なお、このステップ13における第3時間は、実施例1のステップ3と同様、例えば、60sec程度であってもよい。ステップ13が終了し、基板Wのリンスが終了した後のリフタ13の動きは、実施例1と同様である。ステップ13が終了する際には、処理槽2内には純水が満たされる状態となり、ステップ11に戻る。
【0048】
本実施例によれば、図5におけるステップ12においては、噴出管6a、6bからはS
C1等の薬液や純水は噴出されず、処理槽2内の処理液が静止した状態で基板Wの処理が進行する。よって、噴出管6a、6bから噴出された薬液や純水による水流が基板Wに直接作用する領域において処理が促進されることを抑制し、基板Wにおける処理の進行度合い偏りが生じることを抑制できる。さらに、ステップ12においては、超音波発生器7から処理槽2の下部の処理液に超音波振動を作用させ、処理槽2内の下部の処理液の温度を上昇させている。よって、ステップ12においてより確実に、基板Wの処理の進行度合いに偏りが生じることを抑制できる。
【0049】
表1には、ステップ12における超音波振動の付与の有無による、ステップ12終了後における基板Wの処理厚さの偏りの相違を示す。
【表1】
ここで、処理厚さの偏り(%)は、ステップ11及び12の終了後における基板Wの各場所における厚み減少量の(最大値-最小値)/2*平均値で示される値である。このよ
うに、ステップ11~12において超音波振動を処理槽12の下部の処理液に作用させることで、基板Wの処理の進行度合いの偏りが改善されることが分かる。
【0050】
なお、本実施例においては、超音波発生器7は、伝播槽7bを介して処理槽2に超音波振動を作用させているが、本実施例における超音波発生器はこのような形態に限定されない。例えば、伝播槽7bを備えず、処理槽2の底板2aに超音波振動素子7aからの振動を直接的に伝搬させるようにしてもよい。この場合には、超音波振動素子7aを処理槽2の底板2aに押圧して密着するように取り付けるとよい。このような構成であっても、上述した実施例2と同様に基板Wの処理の進行度合いの偏りを改善することができる。また、本実施例においては、ステップ12において超音波振動を作用させる時間は、基板Wの処理液への浸漬時間と同じにする必要はない。ステップ12における基板Wの処理液への浸漬時間の一部において、超音波振動を作用させるようにしてもよい。また、ステップ11における超音波振動の作用は必ずしも必要ではない。
【0051】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例1では、ステップ2において、基板Wが処理液に浸漬された状態で静置した後、ステップ3においては、純水を噴出管6a、6bから処理槽2に第3時間に亘り噴出させ、処理槽2におけるSC1濃度を低下させた。そして、その期間中、処理槽2の上端からSC1を含む使用後の処理液が溢れることで排水され、最終的には、純水で満たされた状態とした。実施例3においては、ステップ2に相当するステップ22の終了後において、噴出管6a、6bから純水を噴出させるのではなく、排液部4から急速排水を行いつつ、処理槽2の上部から処理液より低温の純水を散水することで、基板Wを洗浄するとともに、基板Wの上部の温度を低下させる例について説明する。
【0052】
上述したとおり、実施例1においては、ステップ2において処理槽2への薬液や純水の噴出を停止し、処理槽2内の処理液と基板Wとを静置することとした。この場合であっても、処理に適切な温度(例えば60℃)に制御された処理液中にリフタ13と基板Wが存在することで、処理液中に温度分布が生じ、基板Wの処理の進行度合いに偏りが生じてし
まう場合があった。これに対し、本実施例においては、ステップ2に相当するステップ22の終了後に、処理槽2の上側から処理槽2内の処理液より低温の純水を処理槽2に散水し、基板Wを洗浄するとともに、基板Wの上部の温度を低下させる。ここで、散水される純水の温度は、例えば室温(25℃前後)であってもよい。
【0053】
図6には、本実施例における基板処理装置21の処理のプロセスについて示す。本実施例においては、ステップ21及びステップ22の内容は、実施例1におけるステップ1及びステップ2と同一であるので、説明は省略する。ステップ22が終了すると、次に、ステップ23に移行する。ステップ23においては、図1で示した排液部4を作動させて処理槽2内の処理液を急速排水させる。そして、処理槽2内の処理液の水面が下がり、基板Wの上部が露出し始めたタイミングで、純水を散水器としての上部噴出管9a、9bから処理槽2に第4時間に亘り散水する。この第4時間は、基板Wの種類や処理の内容に応じてレシピで適切に定められるが、例えば30sec程度であってもよい。
【0054】
これにより、露出した基板Wの上部に優先的に低温の純水が散水され、基板Wの上部における処理速度が急速に低下する。また、処理液の水面付近から優先的にSC1濃度が低下するので、処理液に浸漬されている部分についても、基板Wの上側から処理が抑制される。そして、急速排水の期間中、基板Wの上部から優先的に洗浄(リンス)が行われる。そして、急速排水により処理槽2内の処理液が無くなった時点で、排液部4の排液バルブ4bを閉弁し、上部噴出管9a、9bからの純水の散水を継続する。処理槽2内に純水が満たされる状態となると、ステップ21に戻る。
【0055】
本実施例によれば、ステップ22においては、処理槽2内の上部における処理液の温度が下部における処理液の温度より高くなる虞があるが、ステップ23において、基板Wの上部に優先的に低温の純水が散水されるため、基板Wの上部における処理を優先的に抑制することができる。よって、ステップ23の終了後においてより確実に、基板Wの処理の進行度合いの偏りを抑制することができる。ここで、本実施例における補正部は、上部噴出管9a、9bを含んで構成される。また、ステップ23の工程は、本実施例において補正工程に相当する。
【0056】
表2には、処理槽2の上側からの散水及び急速排水の有無(本実施例のステップ23と実施例1のステップ3の相違)による、基板処理厚さの偏りの相違を示す。
【表2】
ここで、処理厚さの偏り(%)は、ステップ23及びステップ3の終了後における、基板Wの各場所における厚み減少量の(最大値-最小値)/2*平均値で示される値である
。このように、ステップ23において低温の純水を処理槽2の上側から散水することで、基板Wの処理の進行度合いの偏りが改善されることが分かる。
【0057】
なお、本実施例においては、ステップ23において、先ず急速排水を実施し、上部噴出管9a、9bからの純水の散水は、処理液の水面から基板Wの上部が露出し始めたタイミングで実施をした。しかしながら、上部噴出管9a、9bからの純水の散水を開始するタイミングはこれに限られない。例えば、急速排水と、純水の散水とを同時に開始しても構わない。さらにこの場合には、排水量をシャワー量より多くなるように制御すれば、処理
槽2内の処理液の水面を徐々に下げ、水面から基板Wの上部が露出した時点で、純水の散水を直接基板Wに当てることで、より迅速に基板Wから処理液を洗い流すとともに基板Wの温度を低下させ、処理の進行を抑制することができる。そして、急速排水により処理槽2内の処理液が無くなった時点で、急速排水を停止して、上部噴出管9a、9bからの純水の散水を継続することで、処理槽2内には純水が満たされる状態となる。その後に図6のステップ21に戻るようにしてもよい。
【0058】
さらに、排水量を散水量より少なくなるように制御すれば、処理槽2内の処理液の水面を逆に上昇させつつ、処理液の上部の水温を低下させ、且つ、SC1濃度を低下させることができる。この場合には、上部の低温の処理液は下部に移動し、下部の高温の処理液は上部に移動するので、処理槽2の上端から処理液を溢れさせて排水させつつ、確実に、基板Wのリンスを行うことが可能である。また、この場合には、急速排水と上部噴出管9a、9bからの純水の散水の両方を継続することで、処理槽2内には純水が満たされる状態とすることができる。
【0059】
<実施例4>
次に、本発明の実施例4について説明する。上述の実施例2においては、処理槽2の下側に超音波発生器7を配置し、ステップ12においては、処理槽2への薬液や純水の噴出を停止するとともに、処理槽2の下側から超音波振動を作用させた。そして、ステップ13においては、純水を噴出管6a、6bから処理槽2に噴出させ、処理槽2内におけるSC1濃度を低下させた。そして、その期間中、処理槽2の上端からSC1を含む使用後の処理液を溢れさせて排水し、最終的には、純水で満たされる状態とした。
【0060】
実施例4では、ステップ12に相当するステップ32においては、処理槽2への薬液や純水の噴出を停止するとともに、処理槽2の下側から超音波振動を作用させる。さらに、ステップ13に相当するステップ33においては、ステップ32の終了後において、噴出管6a、6bから純水を噴出させるのではなく、排液部4から急速液水を行いつつ、処理槽2の上側の上部噴出管9a、9bから低温の純水を散水することで、基板Wの上部を洗浄するとともに、基板Wの上部の温度を低下させる例について説明する。
【0061】
すなわち、実施例2においては、処理槽2の下部の処理液に対して超音波振動を作用させるための超音波発生器7を設けることとし、ステップ12において、この超音波発生器7によって処理槽12の下部の処理液に超音波振動を作用させることとした。しかしながら、ステップ12において超音波振動を作用させた場合には、図4に示したように、処理槽2の下部の処理液の温度は上昇する。その後、温度が上昇した処理槽2の下部の処理液が処理槽2の上部に移動することで、処理液における温度分布が充分には解消しない場合があった。
【0062】
これに対し、本実施例では、ステップ12に相当するステップ32において、処理槽2の下部の処理液に超音波振動を作用させることで、基板Wの下部における処理を促進するとともに、さらに、ステップ13に相当するステップ13においては、処理槽2の上側から低温の純水を散水し、基板Wの上部を優先的に洗浄するとともに、基板Wの上部の温度を優先的に低下させることとした。
【0063】
図6には、本実施例における基板処理装置31の処理のプロセスについて示す。本実施例においては、ステップ31及びステップ32の内容は、実施例2におけるステップ11及びステップ12と同一であるので、説明は省略する。ステップ32が終了すると、次に、ステップ33に移行する。ステップ33においては、図1で示した排液部4を作動させて処理槽2内の処理液を急速排水させる。そして、処理槽2内の処理液の水面が下がり、基板Wの上部が露出し始めたタイミングで、純水を上部噴出管9a、9bから処理槽2に
第4時間に亘り散水する。この第4時間は、例えば30sec程度であってもよい。
【0064】
これにより、露出した基板Wの上部に優先的に純水が散水され、基板Wの上部における処理速度が急速に低下する。また、処理液の水面から優先的にSC1濃度が低下するので、処理液に浸漬されている部分についても、基板Wの上側から処理が抑制される。そして、急速排水の期間中、基板Wの上部から優先的に洗浄(リンス)が行われる。そして、急速排水により処理槽2内の処理液が無くなった時点で、排液部4の排液バルブ4bを閉弁し、上部噴出管9a、9bからの純水の散水を継続する。処理槽2内に純水が満たされる状態となると、ステップ31に戻る。
【0065】
本実施例によれば、ステップ32において、超音波振動を作用させることで、処理槽2における温度分布が緩和されてもなお、処理槽2内の上部における処理液の温度が下部における処理液の温度より高くなるような場合であっても、ステップ33において、基板Wの上部に優先的に低温の純水が散水される。このため、基板Wの上部における処理速度を優先的に低下させることができる。よって、ステップ33の終了後においてより確実に、基板Wにおける処理の進行度合いの偏りを抑制することができる。なお、本実施例における補正部は、超音波発生器7及び上部噴出管9a、9bを含んで構成される。また、本実施例においてステップ32、ステップ33の工程は補正工程に相当する。
【0066】
表3には、超音波振動及び上側からの散水の有無(本実施例のステップ32、33と実施例1のステップ2、3の相違)による、ステップ33の終了後における処理厚さの偏りの相違を示す。
【表3】
ここで、処理厚さの偏り(%)は、ステップ33及びステップ3の終了後における、基板Wの各場所における厚み減少量の(最大値-最小値)/2*平均値で示される値である
。このように、本実施例においては、ステップ32における処理槽2の下部の処理液への超音波振動の作用と、ステップ33における処理槽2の上側からの純水の散水の相乗効果により、基板Wにおける処理の進行度合いの偏りが顕著に改善されることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
1、11、21、31・・・基板処理装置
2・・・処理槽
4・・・排液部
5・・・制御部
6a、6b・・・噴出管
7・・・超音波発生器
9a、9b・・・上部噴出管
40・・・濃度調整部
100・・・基板処理システム
W・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7