(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】チップ抵抗器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 17/24 20060101AFI20230818BHJP
H01C 17/00 20060101ALI20230818BHJP
H01C 17/065 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01C17/24
H01C17/00 100
H01C17/065 110
H01C17/065 700
(21)【出願番号】P 2019156942
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】永坂 功
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-204302(JP,A)
【文献】特開平10-189318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/24
H01C 17/00
H01C 17/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝が設けられた大判基板を準備
する工程と、
前記大判基板の表面における前記1次分割溝と前記2次分割溝で区画された各チップ形成領域内に、前記1次分割溝
および前記2次分割溝からそれぞれ離間すると共に
、前記2次分割溝の延出方向に沿って所定間隔を存して対向する一対の表電極
を形成する工程と、
一対の前記表電極間を橋絡する抵抗体を形成する工程と、
前記1次分割溝を跨ぐ離間ギャップを介して隣接する
2つの前記表電極
に該離間ギャップよりも大きな径寸法の測定用プローブを接触させ、この状態で前記抵抗体の抵抗値を測定しながら該抵抗体にトリミング溝を形成して抵抗値調整する工程と、
前記抵抗値調整を行った後に前記大判基板を前記1次分割溝と前記2次分割溝に沿ってチップ単体に個片化する工程と、
を含
み、
前記抵抗値調整する工程において、前記2次分割溝の延出方向に沿って配列された複数の前記表電極間に存する前記離間ギャップに対し、プローブカードに一列に固定された複数の前記測定用プローブを同時に当接させ、この状態で対をなす前記測定用プローブ間の抵抗値測定を行うことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板上に設けられた抵抗体にトリミング溝を形成することで抵抗値が調整されるチップ抵抗器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を橋絡する端面電極と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う保護膜等によって主に構成されている。
【0003】
一般的に、このようなチップ抵抗器を製造する場合、格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝が設けられた大判基板を準備し、この大判基板に対して多数個分の表電極や抵抗体や保護膜等を一括して形成した後、この大判基板を1次分割溝と2次分割溝に沿って分割してチップ抵抗器を多数個取りするようにしている。かかるチップ抵抗器の製造過程においては、大判基板の表面における1次分割溝と2次分割溝で区画された各チップ形成領域内に、導電ペーストを印刷・焼成することにより対をなす表電極が形成されると共に、対をなす複数組の表電極間に抵抗ペーストを印刷・焼成することにより多数の抵抗体が形成される。その際、印刷時の位置ずれや滲み、あるいは焼成炉内の温度むら等の影響により、各抵抗体の大きさや膜厚に若干のばらつきを生じることが避け難いため、大判基板の状態で各抵抗体にトリミング溝を形成して所望の抵抗値に設定するという抵抗値調整が行われるようになっている。
【0004】
かかる抵抗値調整工程では、一対の測定用プローブを列状に固定したプローブカードを準備しておき、これら測定用プローブを大判基板上に形成された複数対の表電極にそれぞれ接触させた状態で、一対の測定用プローブ間の抵抗値を測定しながら、抵抗体にレーザー光を照射してトリミング溝を形成するようにした抵抗値調整方法が広く採用されている。その際、表電極がチップ形成領域を区画する1次分割溝に跨るように形成されていれば、隣り合う2つのチップ形成領域に跨って連続する広い面積の表電極に対して測定用プローブを接触させることができるため、抵抗値調整を容易に実施することが可能となる。しかし、1次分割溝に跨るように表電極を形成する際に、表電極を形成するための導電ペーストが1次分割溝に沿って滲み出してしまうことがあり、その場合、2次分割溝を介して隣接する2つの抵抗体が導通(短絡)してしまい、抵抗値調整するために測定している抵抗値を正確に測定することができなくなる。
【0005】
このような不具合を解消すべく、特許文献1には、表電極の輪郭と1次分割溝との交点を溝未形成部とすることにより、導電ペーストの1次分割溝に沿う滲み出しを防止するようにした技術が開示されている。
図5は特許文献1に開示されたチップ抵抗器の製造工程を示す説明図であり、まず、
図5(a)に示すように、格子状に延びる1次分割溝101と2次分割溝102が設けられた大判基板100を準備する。ここで、2次分割溝102は横方向に連続する分割溝であるのに対し、1次分割溝101は2次分割溝102との交点に溝未形成部を有する非連続な分割溝となっており、これら1次分割溝101と2次分割溝102により平面視矩形状のチップ形成領域Sが区画されている。
【0006】
そして、
図5(b)に示すように、大判基板100の表面における各チップ形成領域Sの両端部分に、2次分割溝102と平行かつ1次分割溝101の溝部に跨るように表電極103を形成すると共に、大判基板100の裏面における表電極103と対応する位置に裏電極(図示せず)を形成し、また、大判基板100の表面に一対の表電極103と接続する抵抗体104を形成する。表電極103はAg系ペースト等の導電ペーストを印刷・焼成することにより形成されるが、2次分割溝102と表電極103の輪郭との間に1次分割溝101の溝未形成部が存在し、この溝未形成部によって縦方向に延びる1次分割溝101が連続しない構造になっているため、導電ペーストが2次分割溝102を超えて隣の1次分割溝101まで滲み出ることはない。したがって、抵抗体104の抵抗値調整を行う際の抵抗値測定時に、隣接する表電極103どうしが短絡して測定不良となることがなくなり、しかも、1次分割溝101を跨いで形成された広い面積の表電極103に対して測定用プローブを接触させることができるため、抵抗値調整を容易に実施することが可能となる。
【0007】
なお、このような抵抗体104の抵抗値調整を実施した後、大判基板100を1次分割溝101に沿って短冊状基板に分割(1次ブレイク)し、この短冊状基板の分割面に端面電極を形成する。次いで、短冊状基板を2次分割溝102に沿って多数のチップ状基板に分割(2次ブレイク)した後、これらチップ状基板の電極に電解メッキを施すことによりチップ抵抗器が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された従来技術では、1次分割溝101が2次分割溝102との交点に溝未形成部を有する非連続な分割溝となっているため、表電極103の形成時における導電ペーストの滲みに起因する隣接する抵抗体104どうしの短絡を抑制することができる。しかし、1次分割溝101が溝部のない溝未形成部を有しているため、抵抗値調整後に1次分割溝101に沿って1次分割する際のブレイク性が悪くなり、さらに分割溝内の表電極103が1次分割溝を接着するため、連続する2次分割溝の方が容易にブレイクされ易くなり、1次分割時に2次分割溝102に沿って不所望に割れてしまったり、1次分割面のブレイク形状が悪化して端面電極の形成に支障を来たす、等の不具合を生じる虞があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、抵抗値調整を正確かつ容易に実施することができると共に、抵抗値調整後のブレイクを簡単に行うことができるチップ抵抗器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明によるチップ抵抗器の製造方法は、格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝が設けられた大判基板を準備する工程と、前記大判基板の表面における前記1次分割溝と前記2次分割溝で区画された各チップ形成領域内に、前記1次分割溝および前記2次分割溝からそれぞれ離間すると共に、前記2次分割溝の延出方向に沿って所定間隔を存して対向する一対の表電極を形成する工程と、一対の前記表電極間を橋絡する抵抗体を形成する工程と、前記1次分割溝を跨ぐ離間ギャップを介して隣接する2つの前記表電極間に該離間ギャップよりも大きな径寸法の測定用プローブを接触させ、この状態で前記抵抗体の抵抗値を測定しながら該抵抗体にトリミング溝を形成して抵抗値調整する工程と、前記抵抗値調整を行った後に前記大判基板を前記1次分割溝と前記2次分割溝に沿ってチップ単体に個片化する工程と、を含み、前記抵抗値調整する工程において、前記2次分割溝の延出方向に沿って配列された複数の前記表電極間に存する前記離間ギャップに対し、プローブカードに一列に固定された複数の前記測定用プローブを同時に当接させ、この状態で対をなす前記測定用プローブ間の抵抗値測定を行うことを特徴としている。
【0012】
このような工程を含むチップ抵抗器の製造方法では、表電極が1次分割溝と2次分割溝から離間する位置に形成されており、1次分割溝を介して隣接する2つの表電極間に1次分割溝よりも幅広の離間ギャップが確保されているため、表電極形成用の導電ペーストが1次分割溝を伝わって2次分割溝の方向へ流れ出すことはなく、2次分割溝を介して隣接する表電極同士の短絡を防止することができる。そして、離間ギャップよりも大きな径寸法を有する複数の測定用プローブが一列に固定されたプローブカードを用い、2次分割溝の延出方向に沿って配列された複数の表電極間に存する離間ギャップに対し、プローブカードに固定された複数の測定用プローブを同時に当接することにより、1次分割溝を跨いで隣り合う2つの表電極に1つの測定用プローブをそれぞれ接触させた状態で、対をなす測定用プローブ間の抵抗値を測定しながら抵抗体にトリミング溝を形成することができるため、測定用プローブの本数を増やすことなく、抵抗体の抵抗値調整を容易に実施することができる。また、1次分割溝内に導電ペーストが入り込まないため、抵抗値調整後に大判基板を1次分割溝に沿って簡単にブレイクすることができ、ブレイク形状の悪化や不所望な2次割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のチップ抵抗器の製造方法によれば、抵抗値調整を正確かつ容易に実施することができると共に、抵抗値調整後のブレイクを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態例に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図3】該チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】該チップ抵抗器の製造工程を示す大判基板の説明図である。
【
図5】従来例に係るチップ抵抗器の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、
図1は本発明の実施形態例に係るチップ抵抗器の平面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0016】
図1と
図2に示すように、本実施形態例に係るチップ抵抗器10は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極2と、これら両表電極2の間を橋絡する抵抗体3と、抵抗体3を覆う保護層4と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極5と、絶縁基板1の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極6と、これら電極部2,5,6を覆う外部電極7等によって主として構成されている。
【0017】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0018】
一対の表電極2は銀を主成分とする銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら表電極2は所定間隔を存して対向するように絶縁基板1の表面に形成されている。これら表電極2は絶縁基板1の長手方向両端より若干内方の離間位置に形成されており、表電極2と絶縁基板1の長手方向端面との間には間隙が確保されている。
【0019】
抵抗体3は酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、この抵抗体3は両端部が表電極2に重なるように矩形状に形成されている。抵抗体3にはトリミング溝8が形成されており、このトリミング溝8によって抵抗体3の抵抗値が所定値になるように調整されている。トリミング溝8はレーザー光の照射によって抵抗体3にできる切込みであり、本実施形態例では、Lカット形状のトリミング溝8を形成して抵抗体3の抵抗値を調整しているが、トリミング溝8の形状はLカット以外のIカット形状等でも良く、また、トリミング溝8の本数は1つに限定されず複数本でも良い。
【0020】
保護層4はアンダーコート層とオーバーコート層の2層構造からなり、アンダーコート層はガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、オーバーコート層はエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)したものである。アンダーコート層はトリミング溝8の形成時にレーザーの熱から抵抗体3を保護するものであり、アンダーコート層の大きさは抵抗体3を完全に覆い隠せる程度の大きさに形成されている。オーバーコート層はトリミング溝8形成後の抵抗体3を外部環境(湿度や腐食性ガス等)から保護するものであり、オーバーコート層の大きさはアンダーコート層を完全に覆い隠せる程度の大きさに形成されている。
【0021】
一対の裏電極5は銀を主成分とする銀系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極5は表電極2と対応するように絶縁基板1の裏面における長手方向両端部に形成されている。その際、ブレイク性をより向上させるために、裏電極5においても、表電極2と同様に絶縁基板1の長手方向両端より若干内方の離間位置に形成しても良い。
【0022】
一対の端面電極6は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、樹脂銀を塗布して加熱硬化したものであり、絶縁基板1の表面と裏面に回り込むようにコの字状に形成することで、これら端面電極6によって対応する表電極2と裏電極5とが橋絡されている。その後、これら端面電極6の表面はNiメッキ層とSnメッキ層からなる2層構造の外部電極7によって被覆されている。
【0023】
次に、このチップ抵抗器10の製造工程について、
図3に示すフローチャートと
図4に示す大判基板の説明図を参照しながら説明する。
【0024】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板10Aを準備する(
図3のS-1)。
図4(a)に示すように、この大判基板10Aの表面には複数本の1次分割溝11と2次分割溝12が格子状に設けられており、両分割溝11,12によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となっている。
図4には複数個分のチップ形成領域に相当する大判基板10Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ形成領域に相当する大判基板10Aに対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0025】
すなわち、この大判基板10Aの表面にAgを含有する導電ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、
図4(b)に示すように、各チップ形成領域の両端部分に、1次分割溝11から離間すると共に所定間隔を存して対向する複数対の表電極2を形成する(
図3のS-2)。これにより、1次分割溝11を介して隣り合う2つの表電極2の間に1次分割溝11の溝幅よりも広い離間ギャップGが確保されるため、導電ペーストが1次分割溝11を伝わって2次分割溝12の方向へ流れ出すことはなくなる。なお、これら表電極2の形成工程と同時あるいは前後して、大判基板10Aの裏面にAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、表電極2に対応する複数対の裏電極(図示せず)を形成する(
図3のS-3)。
【0026】
次に、大判基板10Aの表面に酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、
図4(c)に示すように、両端部が表電極2に重なる抵抗体3を形成する(
図3のS-4)。しかる後、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、抵抗体3を覆い隠す図示せぬアンダーコート層を形成する(
図3のS-5)。
【0027】
次に、
図4(d)に示すように、抵抗体3の両端部に接続する一対の表電極2に測定用プローブ13を接触させ、これら測定用プローブ13で両表電極2間の抵抗値を測定しながら、アンダーコート層の上からレーザー光を照射して抵抗体3にトリミング溝8を形成することにより、該抵抗体3の抵抗値を調整する(
図3のS-6)。その際、離間ギャップGよりも径寸法の大きな測定用プローブ13を使用し、このような測定用プローブ13を離間ギャップGを介して隣接する2つの表電極2に跨って接触させており、測定用プローブ13が抵抗体3に接続する表電極2と、該表電極2に離間ギャップGを介して対向する隣の表電極2との両方に同時に接触するため、測定用プローブ13を接触させることが可能な表電極2の面積は実質的に2倍の広さとなる。
【0028】
なお、
図4(d)には2つの測定用プローブ13だけが示されているが、実際は不図示のプローブカードに多数の測定用プローブ13が一列に固定されており、これら測定用プローブ13を図中の左右方向に配列された各表電極2間の離間ギャップGに同時に当接するようにしている。そして、この状態で対をなす測定用プローブ13間の抵抗値測定を行いながら、2次分割溝12の延出方向に沿って一列に配置された複数の抵抗体3の抵抗値調整を行い、しかる後、プローブカードを図中の下方へ移動し、2次分割溝12を介して隣接する各列の抵抗体3に対して上記と同様の抵抗値調整を実行する。
【0029】
このようにして大判基板10Aに形成された全ての抵抗体3の抵抗値調整を行った後、アンダーコート層を覆うようにエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷し、これを加熱硬化して図示せぬオーバーコート層を形成する(
図3のS-7)ことにより、アンダーコート層とオーバーコート層の2層構造からなる保護層を形成する。
【0030】
しかる後、大判基板10Aを1次分割溝11に沿って短冊状基板に1次分割する(
図3のS-8)。その際、表電極2が1次分割溝11から離間した位置に形成されており、1次分割溝11内に表電極形成用の導電ペーストが入り込んでいないため、大判基板10Aを1次分割溝11に沿って簡単にブレイクすることができ、ブレイク形状の悪化や不所望な2次割れを抑制することができる。
【0031】
次に、この短冊状基板の分割面にNi/Crをスパッタリングしたり、短冊状基板の分割面にAgを含有させた樹脂ペーストを塗布して加熱硬化することにより、短冊状基板の表面と裏面に回り込むようにコの字状に形成することで、短冊状基板の両端面に表電極2と裏電極5間を導通する端面電極を形成する(
図3のS-9)。この時、短冊状基板の長手方向側端部(エッジ部)に表電極2が形成されていないため、1次分割時に表電極2のバリは発生しない。したがって、短冊状基板の長手方向側端部が1次分割後に形成される端面電極にて覆われるため、表電極2のバリの剥がれによる断線は発生しない。
【0032】
次に、短冊状基板を2次分割溝12に沿って複数のチップ状基板に2次分割し(
図3のS-10)、これらチップ状基板に対して電解メッキを施してNiメッキ層とSnメッキ層を順次形成する。これらNiメッキ層とSnメッキ層により、端面電極の表面を覆う外部電極7が形成され(
図3のS-11)、
図1と
図2に示すチップ抵抗器10が多数個取りされる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態例に係るチップ抵抗器10の製造方法では、表電極2が大判基板10Aの1次分割溝11から離間する位置に形成されており、1次分割溝11を介して隣接する2つの表電極2間に1次分割溝11よりも幅広の離間ギャップGが確保されているため、表電極形成用の導電ペーストが1次分割溝11を伝わって2次分割溝12の方向へ流れ出すことはなく、2次分割溝12を介して隣接する表電極2どうしの短絡を防止することができる。そして、1次分割溝11を介して隣り合う2つの表電極2間に離間ギャップGよりも大径の測定用プローブ13を接触させ、この状態で一対の測定用プローブ13間の抵抗値を測定しながら抵抗体3にトリミング溝8を形成するようにしたので、抵抗体3の抵抗値調整を容易に実施することができる。また、1次分割溝11内に導電ペーストが入り込まないため、抵抗値調整後に大判基板10Aを1次分割溝11に沿って簡単にブレイクすることができ、ブレイク形状の悪化や不所望な2次割れを抑制することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 絶縁基板
2 表電極
3 抵抗体
4 保護層
5 裏電極
6 端面電極
7 外部電極
8 トリミング溝
10 チップ抵抗器
10A 大判基板
11 1次分割溝
12 2次分割溝
13 測定用プローブ
G 離間ギャップ