IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クロマコン アーゲーの特許一覧

特許7333779循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法
<>
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図1
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図2
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図3
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図4
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図5
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図6
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図7
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図8
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図9
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図10a
  • 特許-循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法 図10b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/18 20060101AFI20230818BHJP
   G01N 30/44 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 30/64 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B01D15/18
G01N30/44
G01N30/46 Z
G01N30/86 J
G01N30/34 E
G01N30/74 E
G01N30/74 F
G01N30/74 Z
G01N30/64 A
G01N30/64 C
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020526353
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018080261
(87)【国際公開番号】W WO2019096622
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】17202010.9
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511163470
【氏名又は名称】クロマコン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラース オーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ミュラー シュペート
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル バーバンド
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202749(JP,A)
【文献】特開2004-077329(JP,A)
【文献】特表2014-505236(JP,A)
【文献】特表2008-539395(JP,A)
【文献】国際公開第2018/153776(WO,A1)
【文献】Continuous chromatography in downstream processing of a monoclonal antibody,GE Healthcare, Application note,29170800AA,2015年,p.1-8,<URL:https://cdn.cytivalifesciences.com/api/public/content/digi-17822-pdf>
【文献】THOMAS MULLER-SPATH et al.,Enabling high purities and yields in therapeutic peptide purification using multicolumn countercurrent solvent gradient purification,Chimica Oggi -Chemistry Today-,2013年,Vol.31(5),PHARMACEUTICALS PURIFICATION,<URL:https://www.ymcpt.com/sites/default/files/MCSGP%20Article%20Chem%20Today_Muller-Spath_Enabling%20high%20purities%20and%20yields%20in%20therapeutic%20peptide%20purification%2013.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01D 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の生成物成分(P)と、前記所望の生成物成分(P)よりも吸着性の弱い不純物(W)及び/又は前記所望の生成物成分(P)よりも吸着性の強い不純物(S)と、を含有する供給混合物(フィード)を含む液体を通す少なくとも2つの吸着体を含む循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法であって、
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスが、少なくとも2つの異なる段階(I、B)、すなわち
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結している、少なくとも1回の相互連結段階(I)と、
少なくとも1つの吸着体が他の吸着体と流体連通しておらず、前記所望の生成物成分(P)が、分断された吸着体から、精製された形態で回収される、少なくとも1回のバッチ段階(B)と
を含む方法において、
前記方法が、少なくとも以下のステップ、すなわち
a. 前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルの測定を含む、クロマトグラムの監視ステップと、
b. 前記ステップa.で測定した前記現在の濃度比例シグナルの少なくとも1つとその閾値との比較を含む、前記クロマトグラムの評価ステップと、
c. 前記ステップb.の比較結果に応じて現在実行中の段階の終了を調整し、かつ次の段階を開始することによる、前記循環クロマトグラフィー精製プロセスの制御ステップと
を含み、前記ステップa.~前記ステップc.のシーケンスを、記載の順序で少なくとも2回実施する、方法。
【請求項2】
前記濃度比例シグナルが、前記濃度比例シグナルの絶対値、前記濃度比例シグナルの積分値、前記濃度比例シグナルの傾き及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号のうちの少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記濃度比例シグナルが、前記濃度比例シグナルの絶対値と前記濃度比例シグナルの傾きの符号との組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ステップa.で測定する前記濃度比例シグナルを、少なくとも1つの前記吸着体の出口で、2つの前記吸着体の出口で、又はすべての前記吸着体の出口で測定する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ステップa.で測定する前記濃度比例シグナルを、
前記所望の生成物成分(P)のバッチ溶離段階(B1)における吸着体の出口、及び
相互連結段階(I1、I2)における上流の吸着体の出口
のうちの少なくとも1箇所で測定する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスが、少なくとも4つの異なる段階(I1、B1、I2、B2)、すなわち
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結しており、溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の弱い不純物(W)が、前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られる少なくとも1回の第1の相互連結段階(I1)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体に入り、この生成物溶離吸着体の出口を通じて前記所望の生成物成分(P)が収集され、一方で、前記供給混合物(フィード)を含む液体が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体に入り、この吸着体の出口を通じて不純物が収集される少なくとも1回の第1のバッチ段階(B1)と、
前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体の出口が、前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体の入口に連結していることで、前記2つの吸着体が相互連結しており、前記溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の強い不純物(S)が、前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られる、少なくとも1回の第2の相互連結段階(I2)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の上流の吸着体に入り、この前の上流の吸着体の出口を通じて前記吸着性の強い不純物(S)が収集され、一方で、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の下流の吸着体に入り、この前の下流の吸着体の出口を通じて吸着性の弱い不純物が収集される、少なくとも1回の第2のバッチ段階(B2)と
を記載の順序で含み、前記段階(I1、B1、I2、B2)の機能が、同期して又は順次満たされ、かつ循環式に少なくとも2回実施され、切替時間の後又は切り替え時間内で循環されたときに、前記第2のバッチ段階(B2)の前記前の上流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記下流の吸着体になり、前記第2のバッチ段階の元の下流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記上流の吸着体になる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスが、少なくとも4つの異なる段階(I1、B1、I2、B2)、すなわち
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結しており、溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の弱い不純物(W)が、実質的に所望の生成物成分(P)のみが前記上流の吸着体の出口を通じて出るまで前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られる少なくとも1回の第1の相互連結段階(I1)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体に入り、この生成物溶離吸着体の出口を通じて前記所望の生成物成分(P)が収集され、一方で、前記供給混合物(フィード)を含む液体が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体に入り、この吸着体の出口を通じて吸着性の弱い不純物が収集される少なくとも1回の第1のバッチ段階(B1)と、
前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体の出口が、前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体の入口に連結していることで、前記2つの吸着体が相互連結しており、前記溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の強い不純物(S)が、実質的に所望の生成物成分(P)が前記上流の吸着体の出口を通じて出なくなるまで前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られる、少なくとも1回の第2の相互連結段階(I2)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の上流の吸着体に入り、この前の上流の吸着体の出口を通じて前記吸着性の強い不純物(S)が収集され、一方で、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の下流の吸着体に入り、この前の下流の吸着体の出口を通じて吸着性の弱い不純物が収集される、少なくとも1回の第2のバッチ段階(B2)と
を記載の順序で含み、前記段階(I1、B1、I2、B2)の機能が、同期して又は順次満たされ、かつ循環式に少なくとも2回実施され、切替時間の後又は切り替え時間内で循環されたときに、前記第2のバッチ段階(B2)の前記前の上流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記下流の吸着体になり、前記第2のバッチ段階の元の下流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記上流の吸着体になる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスが、少なくとも4つの異なる段階(I1、B1、I2、B2)、すなわち
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結しており、溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の弱い不純物(W)が、実質的に所望の生成物成分(P)のみが前記上流の吸着体の出口を通じて出るまで前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られ、インライン希釈が前記上流の吸着体と前記下流の吸着体との間で実施される少なくとも1回の第1の相互連結段階(I1)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体に入り、この生成物溶離吸着体の出口を通じて前記所望の生成物成分(P)が収集され、一方で、前記供給混合物(フィード)を含む液体が、前記入口を通じて前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体に入り、この吸着体の出口を通じて不純物が収集される少なくとも1回の第1のバッチ段階(B1)と、
前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体の出口が、前記第1の相互連結段階(I1)の前記下流の吸着体の入口に連結していることで、前記2つの吸着体が相互連結しており、前記溶媒が、前記入口を通じて前記上流の吸着体に入り、前記所望の生成物成分(P)及び前記吸着性の強い不純物(S)が、実質的に所望の生成物成分(P)が前記上流の吸着体の出口を通じて出なくなるまで前記上流の吸着体から前記下流の吸着体に送られ、インライン希釈が前記上流の吸着体と前記下流の吸着体との間で実施される、少なくとも1回の第2の相互連結段階(I2)と、
前記吸着体が流体連通しておらず、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の上流の吸着体に入り、この前の上流の吸着体の出口を通じて前記吸着性の強い不純物(S)が収集され、一方で、前記溶媒が、前記入口を通じて前記第2の相互連結段階(I2)の下流の吸着体に入り、この前の下流の吸着体の出口を通じて吸着性の弱い不純物が収集される、少なくとも1回の第2のバッチ段階(B2)と
を記載の順序で含み、前記段階(I1、B1、I2、B2)の機能が、同期して又は順次満たされ、かつ循環式に少なくとも2回実施され、切替時間の後又は切り替え時間内で循環されたときに、前記第2のバッチ段階(B2)の前記前の上流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記下流の吸着体になり、前記第2のバッチ段階の元の下流の吸着体が移動して、続く前記第1の相互連結段階(I1)における前記上流の吸着体になる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体の出口で測定することを含む、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第1の相互連結段階(I1)の前記上流の吸着体の出口で測定することを含み、前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号のうちの少なくとも1つを測定する、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記濃度比例シグナルの絶対値を測定し、
絶対値閾値を上回ったときに、続く前記第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始するか、
又は、絶対値閾値を上回ったときに、続く前記第1のバッチ段階(B1)が、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始されるまで、固定遅延にわたり待機するか、
又は、第1の絶対値閾値を上回ったときに、最低固定遅延にわたり待機し、その後、第2の絶対値閾値を上回ったときに、続く前記第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始する、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号を測定し、
絶対値閾値を上回ったときに、続く前記第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始するか、
又は、絶対値閾値を上回ったときに、続く前記第1のバッチ段階(B1)が、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始されるまで、固定遅延にわたり待機するか、
又は、第1の絶対値閾値を上回ったときに、最低固定遅延にわたり待機し、その後、第2の絶対値閾値を上回ったときに、前記濃度比例シグナルの傾きが正であるというさらなる条件を確認して、続く前記第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、若しくはさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始する、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第1のバッチ段階(B1)の前記生成物溶離吸着体の出口で測定することを含む、請求項6~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第1のバッチ段階(B1)の前記生成物溶離吸着体の出口で測定することを含み、前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号のうちの少なくとも1つ又はこれらの2つを測定する、請求項6~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
絶対値閾値を下回ったときに、続く前記第2の相互連結段階(I2)を、固定持続長の第2の相互連結段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2の相互連結段階として開始する、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
絶対値閾値を下回ったときに、前記濃度比例シグナルの傾きが負であるというさらなる条件を確認して、続く前記第2の相互連結段階(I2)を、固定持続長の第2の相互連結段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2の相互連結段階として開始する、請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
前記第1のバッチ段階(B1)における非生成物溶離吸着体への供給を、前記第1のバッチ段階(B1)の始めに開始し、前記供給を、固定供給時間の後に停止してから、後の前記第2の相互連結段階(I2)への切り替えを開始する、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第2の相互連結段階(I2)の前記上流の吸着体の出口で測定することを含み、
絶対値閾値を下回ったときに、続く前記第2のバッチ段階(B2)を、固定持続長の第2のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2のバッチ段階として開始する、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第2の相互連結段階(I2)の前記上流の吸着体の出口で測定することを含み、
前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号のうちの少なくとも1つ、又はこれら2つの組み合わせを測定し、絶対値閾値を下回ったときに、続く前記第2のバッチ段階(B2)を、固定持続長の第2のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2のバッチ段階として開始する、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記ステップa.が、前記液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、前記第2の相互連結段階(I2)の前記上流の吸着体の出口で測定することを含み、
前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きの符号のうちの少なくとも1つ、又はこれら2つの組み合わせを測定し、前記濃度比例シグナルの傾きが負であるというさらなる条件を確認して、絶対値閾値を下回ったときに、続く前記第2のバッチ段階(B2)を、固定持続長の第2のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2のバッチ段階として開始する、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスで少なくとも2つの吸着体を使用し、各サイクルは、部分的に純粋な異なる副次的画分(W/P、P/S)の内部再循環のために2つの吸着体が流体連通している少なくとも2つの相互連結段階(I1、I2)を含む、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスで少なくとも2つの吸着体を使用し、各サイクルは、部分的に純粋な異なる副次的画分(W/P、P/S)の内部再循環のために2つの吸着体が流体連通している少なくとも2つの相互連結段階(I1、I2)を含み、前記ステップa.で、前記濃度比例シグナルの絶対値及び前記濃度比例シグナルの傾きのうちの少なくとも1つを、前記上流の吸着体それぞれの出口で測定する、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記傾きの符号の変化を制御動作の判定基準として使用する、請求項2、3、10、12、14、19、及び20のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスの溶離グラジエントが、双方の相互連結段階及び第1のバッチ段階(I1、B1、I2)にわたり前記循環クロマトグラフィー精製プロセスで使用された液体移動相の体積について一定の傾きを有するか、又はゼロの傾きを有する、請求項5~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記循環クロマトグラフィー精製プロセスのある段階を停止して前記循環クロマトグラフィー精製プロセスの新たな段階を開始するための前記閾値が、前記循環クロマトグラフィー精製プロセスの同一の又は先行するサイクル中に記録される前記濃度比例シグナルと関連づけて定められている、請求項1~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
所定の溶離体積又は時間又はグラジエント濃度内で定められた閾値に達しないことに基づいて制御動作を始動させる、請求項1~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記濃度比例シグナルが、可視光、UV、赤外線、蛍光、ラマン、イオン強度、導電率又は屈折率の測定に基づく、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィープロセスは、複雑な混合物から生成物を精製するために用いられる。
【0003】
「困難な」クロマトグラフィー分離の場合、目的生成物は、非常に類似した吸着挙動を示す副次的化合物(不純物)を随伴する。従来の単一吸着体クロマトグラフィーのクロマトグラムでは、これによって生成物ピークの前部及び後部において生成物と様々な副次的化合物との重なり部分が生じ、センターカット(center-cut)精製が必要となる。この精製は、3成分系分離の課題とも称される。なぜなら、クロマトグラムにおいて、分離すべき化合物を、3つのクラス、すなわち、早期に溶離する(吸着性の弱い)不純物/副次的化合物と、中期に溶離する「生成物」と、遅くに溶離する(吸着性の強い)不純物/副次的化合物とに分類できるためである。生成物ピークの前後における重複した画分はそれぞれ、目的生成物と不純物/副次的化合物との双方を含んでおり、その純度が指定の仕様を満たしていないことから、通常はこれを廃棄しなければならない。このことは、そのような3成分系分離の課題では、収率を犠牲にしなければ高純度の生成物画分を得ることができないことを意味する。副次的画分を含めれば、さらなる生成物化合物が含まれることで収率が向上するであろうが、副次的化合物/不純物が含まれるため、純度は低下するであろう。こうした状況は、収率と純度との相反関係としても知られている。
【0004】
収率と純度との相反関係を緩和することを目的として、不純な副次的画分に含まれる生成物を回収すべく、再循環技術を用いた様々なクロマトグラフィープロセスが提案されてきた。再処理が規制ガイドラインに適合している場合には、単一吸着体を使用し、後の時点で精製用の別個の容器内で不純な副次的画分を収集するプロセスが提案されてきた。
【0005】
幾つかのプロセスでは、不純な副次的画分を、中間貯蔵せずに同一の吸着体へと直ちに再循環させる。
【0006】
1つより多いクロマトグラフィー用吸着体を用いたクロマトグラフィープロセスにより、不純な副次的画分の内部再循環の使用と、向流原理、すなわち固定相(吸着体材料)と移動相(流体)との相対的に逆向きの動きとを組み合わせることが可能となる。不純な副次的画分を内部再循環させることで、これらの画分に含まれる生成物化合物を、先ず外部容器内で貯蔵せずに1つの吸着体からもう1つの吸着体へと直接送り、次いで向流原理により分離して回収することができる。
【0007】
この内部再循環と向流原理との有用な組み合わせによって、マルチ吸着体プロセスにおいて、高収率であると同時に高純度でもある生成物化合物の製造が可能となる。こうしたプロセスは、擬似移動層(SMB)式プロセスとしても知られている。初期のSMBプロセスの使用は、2成分系分離、すなわち2種の生成物化合物の分離か、又は1種の生成物化合物と、溶離が早い若しくは遅い不純物/副次的化合物のうちの1つの群との分離に限定されていた。生成物ピークの前部及び後部で副次的化合物と重なる生成物の3成分系分離は、2つのSMBプロセスを組み合わせなければ達成することができないが、2つのSMB構成間に濃縮ステップが潜在的に必要となる場合がある。こうした構成の煩雑性は、その実用に不都合であり、向流原理を用いた3成分系分離の代替的プロセスの開発に繋がった。さらに、SMBプロセスでは、類似の吸着特性を示す複数の化合物の分離に重要な線形の溶媒グラジエントを用いることができない。
【0008】
この点に関して、線形の溶媒グラジエントの性能を有する、3成分系分離に非常に効率的なプロセスは、「MCSGP」プロセス(Multicolumn countercurrent solvent gradient purification、マルチカラム向流溶媒グラジエント精製)として知られており、工業的に十分に確立されている(特許文献1参照)。このプロセスは、2~8の吸着体について記載されている。
【0009】
例えば「定常状態の再循環を伴うグラジエント(gradient with steady state recycle)」(GSSR)プロセスのような、複数の吸着体と内部再循環とを用いた他のクロマトグラフィーマルチ吸着体技術が提案されてきた。ここ数年、マルチ吸着体向流クロマトグラフィープロセスの適用の多くは、吸着体2つのMCSGPプロセスについて記載されており、このプロセスには、設備の煩雑性が低く、また流量、切替時間及び線形の溶媒グラジエントモードでの操作の使用に関する操作上の柔軟性が高いという利点がある。
【0010】
特許文献2には、クロマトグラフィープロセスを制御及び/又は監視及び/又は最適化する方法であって、該方法は、交互に操作される少なくとも2つのカラムを含み、該操作は、少なくとも2つのカラムが相互連結状態及び分断状態で操作されることで実施することができ、これらのカラムが、そのような相互連結状態及び分断状態のシーケンスの後に位置を切り替え、少なくとも1つ又は各カラムの下流に検出器が配置されており、該検出器の通過時に所望の生成物及び/又は不純物の検出が可能である方法が提案されている。
【0011】
特許文献3は、2つのクロマトグラフィー用カラム(吸着体)を使用して混合物から所望の生成物画分を単離するクロマトグラフィー精製方法、かかるプロセスの設定方法、さらにはこれに関連する制御及び/又は監視及び/又は最適化のプロセスにも関する。該方法は、少なくとも1回実施すべき1サイクル内に、以下のステップ、すなわち、第1のバッチステップ(B1)であって、バッチ期間中に前述の吸着体を切り離し、第1の流量を用いて第1の吸着体にその入口を通じてフィードを充填し、その出口を廃棄部に向け、第2の吸着体から所望の生成物をその出口を通じて回収し、続いて第2の吸着体を再生させるステップと、第1の相互連結ステップ(IC1)であって、相互連結期間中に、第1の吸着体の出口を第2の吸着体の入口に連結し、第1の流量と同一の又はそれよりも大きな第2の流量を用いて、第1の吸着体にその動的貫流容量(dynamic breakthrough capacity)を上回る量でその入口を通じてフィードを充填し、第2の吸着体の出口を廃棄部に向けるステップと、第1のバッチステップ(B1)に類似しているが吸着体が交換されている第2のバッチステップ(B2)と、第1の相互連結ステップ(IC1)に類似しているが吸着体が交換されている第2の相互連結ステップ(IC2)とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第1877769号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/241992号明細書
【文献】国際公開第2014/166799号
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的の1つは、循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御するための改善された方法を提案することである。
【0014】
提案される方法は、溶離のクロマトグラフィープロファイル、すなわち濃度比例シグナルを監視して溶離の進行中に動作するため、直ちに実行される。さらにこの方法では、分離を記録するクロマトグラフィーモデルも、実際の値と設定値との有限誤差に基づいて動作する制御アルゴリズムも不要である。一方で、この方法では閾値を用いており、これらの閾値に達する又はこれらの閾値を上回ることに基づいて制御動作を開始する。設定値の決定には、この方法では、設計グラジエントクロマトグラム(design gradient chromatogram)を評価することにより取得可能な、クロマトグラフィー分離に関するいくつかの知識が必要である。場合によっては、例えばピーク最大値を基準として設定値を自動的に決定することが可能である。そのため、設定値の決定には、溶離時間/体積(x軸)についてのクロマトグラムの位置は重要ではなく、この決定は、クロマトグラムの大きさ(y軸)にのみ基づく。
【0015】
提案されるプロセス制御方法は、環境問題、並びに次善のプロセス性能の向流プロセスとなり得る、吸着体性能の操作パラメーターの変動及び相違の問題に対処するものである。提案される方法を用いることで、このプロセスはその設定値で確実に動作する。
【0016】
提案される方法は、a.)実質的に連続的に監視する要素と、b.)クロマトグラムを、好ましくは溶離タスクを実施している吸着体の出口で評価する要素と、c.)評価された情報に基づいて制御動作を始動させる要素とを含む。
【0017】
より具体的には、本発明は、所望の生成物成分(又は化合物)(P)と不純物(W、S)とを含有する供給混合物(フィード)を含む液体を通す少なくとも2つの吸着体(好ましくは2つ以上の吸着体、3つ以上の吸着体又は4つ以上の吸着体)を含む循環クロマトグラフィー精製プロセスを監視、評価及び制御する方法に関する。
【0018】
典型的には、これらの吸着体は、少なくとも2つの吸着体が連続する相互連結段階及び分断段階のシーケンスで操作されること、並びにそのような連続する相互連結段階及び分断段階のシーケンスの後に吸着体の位置を切り替えることで、交互に操作される。吸着体が2つある場合、例えばカラムが2つある場合、そのシーケンスは完全に規定される。これに関して、これらの2つの吸着体はそれぞれ、直列式に相互連結されてこのプロセスにおいて分断されずにその相互連結したシーケンスで維持される、2つ、3つ又はさらには4つ以上の吸着体(カラム)群としても示され得ることにも留意すべきである。
【0019】
2つを超える吸着体が存在する状況については、2つの吸着体(又は吸着体群)をつなぎあわせる相互連結段階I1にバッチ段階B1が常に続き、このバッチ段階B1では同一の2つの吸着体を操作して、前の上流の吸着体(又は吸着体群)から生成物Pを溶離させる、という意味合いで、相互連結段階及び分断段階のシーケンスが維持される。よって、図3~8で概説されて以下でさらに説明される制御は、カラムを3つ以上使用するプロセスにおいても実施可能である。これらのプロセスには、この意味合いで相互連結段階及びバッチ段階が存在すればよく、以下に詳述される濃度比例シグナルは、好ましくは、これらの同一の吸着体のうちの少なくとも1つの吸着体の出口で、好ましくは上流の吸着体の出口のみで、又は2つの吸着体の出口又はすべての吸着体の出口で測定されるためである。さらに好ましくは、濃度比例シグナルは、以下の位置のうちの少なくとも1箇所で測定することが可能である:所望の生成物のバッチ溶離段階(B1)における吸着体の出口、及び相互連結段階(I1、I2)における上流の吸着体の出口で測定することが可能であり、好ましくはこれらの位置のみで測定することが可能である。吸着体又は吸着体群を2つ含むようなシーケンスI1、B1それぞれに並行して、さらなる吸着体又は吸着体群によって、例えば洗浄、平衡化又は反応ステップなどの他のタスクを独立して実施することができる。
【0020】
段階I1、B1それぞれに並行して、また2つのさらなる吸着体又は2つの吸着体群を含む段階I2、B2にも並行して、追加の吸着体又は吸着体群によって、例えば洗浄、平衡化又は反応ステップなどのその他のタスクを独立して実施することができる。3つの吸着体についてのそのようなプロセスの一例を、図10aに示す。したがって、3つの吸着体又は3つの吸着体群を使用するプロセスでは、吸着体の位置は、プロセスの段階B2の後でのみ変えられる。同様に、4つの吸着体又は4つの吸着体群を用いるプロセスを、図10bに図示したように操作することができる。
【0021】
特許文献1に開示されているプロセスも十分に適合しており、また相互連結段階と、それに続くバッチ段階とを有することを要件とした本発明の概念を用いて操作可能であるため、ここでも本発明を、(例えば、特許文献1の図20、22又は23に記載のプロセスに対して)適用することができる。特許文献1では、「I1」及び「I2」に対応する相互連結段階は「CCL」と称され、バッチ段階「B1」及び「B2」は「BL」と称される。不純物(W、S)について、不純物(W又はS)は1つしか存在できないため、生成物よりも吸着性の弱い不純物(W)のみを有する(2極)分布になる。或いは、生成物よりも吸着性の強い不純物(S)のみが存在し得る。また、生成物よりも吸着性の弱い不純物(W)と、生成物よりも吸着性の強い不純物(S)とが存在する状況も可能である。
【0022】
精製プロセスは、少なくとも下記の2つの異なる段階(I、B)を含む。
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結している、少なくとも1つの相互連結段階(I)と、
少なくとも1つの吸着体がそれ以外の吸着体と流体連通しておらず、所望の生成物成分(P)が、精製された形態で、好ましくは分断された吸着体からの形態で、回収される、少なくとも1つのバッチ段階(B)
【0023】
本発明によれば、本方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち
a. 液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルの測定を含む、クロマトグラムの監視ステップと、
b. ステップa.で測定した少なくとも1つの前記現在の濃度比例シグナルとその閾値との比較を含む、クロマトグラムの評価ステップと、
c. ステップb.の比較に応じて現在実行中の段階の終了を調整し、かつ次の段階を開始することによる、クロマトグラフィー精製プロセスの制御ステップと
を含み、シーケンスa.~c.は、1回の分離プロセスにおいて、記載の順序で少なくとも2回続けて実施される。
【0024】
よって、このプロセスは、シーケンスa.~c.を必要に応じて又は必要なだけ繰り返すことにより循環式に実施される。
【0025】
典型的には、このプロセスは、シーケンスa.~c.を、一定時間にわたり、例えば10~200時間の期間にわたり、又はしばしば12~52時間若しくは24~48時間にわたり繰り返すことにより循環される。或いは、このプロセスは、供給量に応じてシーケンスa.~c.を繰り返すことにより循環式に実施され、すなわち、供給量の処理が完了するまでシーケンスa.~c.が繰り返される。
【0026】
例えば、連続発酵に基づくプロセスの場合、シーケンスa.~c.を、発酵プロセスが終了するまで循環させることができ、これは、数週間又は数ヶ月まで、例えば1~20週間又は4~8週間であり得る。或いは、このプロセスは連続的に実行され、すなわち、シーケンスa.~c.は、吸着体の交換又は洗浄が必要になるまで繰り返される。
【0027】
第1の好ましい実施形態によれば、濃度比例シグナルは、その絶対値、その積分値、その傾き及びその傾きの符号のうちの少なくとも1つについて考慮され、好ましくは、これらの組み合わせが考慮され、最も好ましくは、絶対値とその傾きの符号との組み合わせが考慮される。
【0028】
ステップa.で測定される濃度比例シグナルは、好ましくは少なくとも1つの吸着体の出口で、好ましくは2つの吸着体の出口で、又はすべての吸着体の出口で測定可能である。さらに好ましくは、濃度比例シグナルは、以下の位置のうちの少なくとも1箇所又は1箇所のみで測定することが可能である。
所望の生成物のバッチ溶離段階(B1)における吸着体の出口、及び
相互連結段階(I1、I2)における上流の吸着体の出口
よって、濃度比例シグナルを、稼働中の2つの吸収体のうちの上流の吸着体の出口のみで測定し、かつ生成物を溶離させる吸着体のバッチ段階で測定することが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態によれば、精製プロセスは、少なくとも4つの異なる段階(I1、B1、I2、B2)、すなわち
上流の吸着体の出口が下流の吸着体の入口と流体連通していることで、2つの吸着体が相互連結しており、溶媒が、前記入口を通じて上流の吸着体に入り、所望の生成物成分(P)及び吸着性の弱い不純物(W)が、好ましくは実質的に所望の生成物成分(P)のみが上流の吸着体の出口を通じて出るまで上流の吸着体から下流の吸着体に送られ、好ましくは、インライン希釈が上流の吸着体と下流の吸着体との間で実施される、少なくとも1回の第1の相互連結段階(I1)、
複数の吸着体が流体連通しておらず、溶媒が、入口を通じて第1の相互連結段階(I1)の上流の吸着体に入り、この生成物溶離吸着体の出口を通じて所望の生成物成分(P)が収集され、一方で、供給混合物(フィード)を含む液体が、入口を通じて第1の相互連結段階(I1)の下流の吸着体に入り、この吸着体の出口を通じて通常は吸着性の弱い不純物が収集される、少なくとも1回の第1のバッチ段階(B1)、
第1の相互連結段階(I1)の上流の吸着体の出口が、第1の相互連結段階(I1)の下流の吸着体の入口に連結していることで、2つの吸着体が相互連結しており、溶媒が、入口を通じて上流の吸着体に入り、所望の生成物化合物(P)及び吸着性の強い不純物(S)が、好ましくは実質的に所望の生成物化合物(P)が上流の吸着体の出口を通じて出なくなるまで上流の吸着体から下流の吸着体に送られ、さらに好ましくは、インライン希釈が上流の吸着体と下流の吸着体との間で実施される、少なくとも1回の第2の相互連結段階(I2)、
吸着体が流体連通しておらず、溶媒が、入口を通じて第2の相互連結段階(I2)の上流の吸着体に入り、この前の上流の吸着体の出口を通じて吸着性の強い不純物(S)が収集され、一方で、溶媒が、入口を通じて第2の相互連結段階(I2)の下流の吸着体に入り、この前の下流の吸着体の出口を通じて吸着性の弱い不純物が収集される、少なくとも1回の第2のバッチ段階(B2)であって、
を記載の順序で含み、段階(I1、B1、I2、B2)の機能が、同期して又は好ましくは順次満たされ、かつ循環式に少なくとも2回実施され、切替時間の後又は切替時間内に循環するときに、第2のバッチ段階(B2)の前の上流の吸着体が移動して、続く第1の相互連結段階(I1)における下流の吸着体になり、第2のバッチ段階の前の下流の吸着体が移動して、続く第1の相互連結段階(I1)における上流の吸着体になる。このプロセスは実質的に、以下に詳述される図1に図示されるものである。
【0030】
そのような精製方法に関して、ステップa.は、好ましくは、液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、第1の相互連結段階(I1)の上流の吸着体の出口で測定することを含み、好ましくは、絶対値及びその傾きの符号のうちの少なくとも1つ、好ましくはこれら2つの組み合わせを測定する。
【0031】
絶対値及び好ましくはその傾きの符号も測定することができ、絶対値閾値を上回ったときに、続く第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始することができる。
【0032】
絶対値閾値を上回ったときに、続く第1のバッチ段階(B1)が、固定持続長の第1のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始されるまで、固定遅延にわたり待機してもよい。
【0033】
第1の絶対値閾値を上回ったときに、最低固定遅延にわたり待機してもよく、その後、第2の絶対値閾値を上回ったときに、好ましくはその傾きが正であるというさらなる条件を確認して、続く第1のバッチ段階(B1)を、固定持続長の第1のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階として開始する。
【0034】
さらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第1のバッチ段階B1について言及する場合、これは例えば、以下でさらに詳述される生成物溶離ステップの長さの制御に関連する。
【0035】
生成物溶離ステップがいつ開始するかを決定するためのこれらの様々な方法を組み合わせることもできる。
【0036】
ステップa.は、液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、第1のバッチ段階(B1)の生成物溶離吸着体の出口で測定することを含んでいてもよく、好ましくは、絶対値及びその傾きの符号のうちの少なくとも1つ、好ましくはこれら2つの組み合わせを測定する。そのような測定に関して、絶対値閾値を下回ったときに、好ましくはその傾きが負であるというさらなる条件を(連続的に)確認して、続く第2の相互連結段階(I2)を、固定持続長の第2の相互連結段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2の相互連結段階として開始することができる。
【0037】
ステップa.は、液体における少なくとも1つの現在の濃度比例シグナルを、第2の相互連結段階(I2)の上流の吸着体の出口で測定することを含んでいてもよく、好ましくは、絶対値及びその傾きの符号のうちの少なくとも1つ、好ましくはこれら2つの組み合わせを測定し、好ましくはその傾きが負であるというさらなる条件を確認して、絶対値閾値を下回ったときに、続く第2のバッチ段階(B2)を、固定持続長の第2のバッチ段階として、又はさらなる監視、評価及び制御に合わせて調整された長さの第2のバッチ段階として開始する。
【0038】
循環クロマトグラフィープロセスでは、少なくとも2つの吸着体を使用することができ、各サイクルは、部分的に純粋な異なる副次的画分(W/P、P/S)の内部再循環のために2つの吸着体が流体連通している少なくとも2回の相互連結段階を含んでいてもよい。ステップa.で、絶対シグナル及びその傾きのうちの少なくとも1つが、上流の吸着体それぞれの出口で測定されることが好ましい。
【0039】
また、傾きの符号の変化を制御動作の判定基準として使用することができる。
【0040】
プロセスの溶離グラジエントは、相互連結段階及び第1のバッチ段階(I1、B1、I2)の両方に渡ってプロセスで使用される液体移動相の体積について一定の傾きを有していてもよいし、イソクラティックモード(傾きゼロ)で実行されてもよい。
【0041】
プロセスのある段階を停止してプロセスの新たな段階を開始するための閾値は、クロマトグラフィープロセスの同一の又は先行するサイクル中に記録される濃度比例シグナルと関連づけて定め得ることが好ましい。
【0042】
さらに、所定の溶離体積又は時間又はグラジエント濃度内で定められた閾値に達しないことに基づいて制御動作を始動させることができる。
【0043】
濃度比例シグナルは、典型的には、可視光、UV、赤外線、蛍光、ラマン、イオン強度、導電率又は屈折率の測定に基づく。
【0044】
クロマトグラムを監視する好ましい1つの手法は、濃度比例シグナルを、少なくとも1つの吸着体の出口で、吸着体が2つの場合には好ましくは両方の出口で、2を超える吸着体を使用する場合には好ましくは各吸着体の出口で、監視することを含む。
【0045】
濃度比例シグナルの監視は、UVシグナルを収集することにより実施可能であり、これは、その絶対シグナル、その積分値、その傾き又はその傾きの符号によることができる。
【0046】
クロマトグラムを評価する好ましい手法は、上記のパラメーターのうちの少なくとも1つのパラメーターの現在の値と設定値とを比較し、この比較に基づいて制御動作を始動させることである。
【0047】
好ましい制御動作は、現在実行中の段階、例えば生成物の内部再循環のためのIC1を停止して、次の段階、例えば生成物収集のためのB1を開始することである。
【0048】
この制御方法によって、クロマトグラムのシフトを招く、例えば移動相の組成及び温度、吸着体の温度、カラム式の吸着体の場合には充填層の高さの差、カラム式の吸着体の場合には充填圧縮率、ファウリング、並びに容積低下といったプロセスパラメーターの変化を相殺させ得ることが判明した。
【0049】
この方法の監視部は、濃度比例シグナルの値及び/又はこのシグナルの傾きを、上流の吸着体の出口で、段階I1、B1及びI2中に、また段階B2の帯域4における化合物「W」の溶離中に記録することを含んでいてもよい。
【0050】
濃度比例シグナルの傾きを監視することにより、ピークフロント(濃度比例シグナルの傾き>0)又はピークテール(濃度比例シグナルの傾き<0)において制御動作が始動されるようにこの方法を適用することができる。この方法の評価部は、濃度比例シグナルが定められた閾値に達したかどうかを連続的に確認し、閾値に達した場合に制御動作を始動させる。
【0051】
閾値は、(例えば設計クロマトグラムの知識に基づいて)事前に設定されてもよいし、1回又は複数回の先のサイクルからの情報に基づいて制御方法により自動的に決定されてもよい。例えば、閾値は、主要化合物又はそれより早く溶離する「W」化合物のピーク高さのパーセンテージとして表すことが可能である。
【0052】
さらなる好ましい実施形態において、マルチ吸着体向流溶媒グラジエント精製プロセスを監視、評価及び制御する方法は、以下の要素、すなわち
a. その絶対シグナル、その積分値、その傾き若しくはその傾きの符号、又はそれらの組み合わせについての濃度比例シグナルの監視と、
b. 上記のパラメーターのうちの少なくとも1つのパラメーターの現在の値と設定値とを連続的に比較することを含む、クロマトグラムの評価と、
c. プロセスの制御は、現在の値と設定値との整合性に基づいてマルチ吸着体向流溶媒グラジエント精製プロセスの現在実行中の段階を終了すること、及び新たな段階を開始することを含む、
を含み、ここで、a.~c.は、精製プロセスの操作中に少なくとも1回実施される。
【0053】
本発明の意味合いでの濃度比例シグナルという表現は、クロマトグラフィー実行における生成物又は不純物の濃度に対するシグナルの比例関係を指し得るが、代替的には修飾剤の濃度に対する比例関係を指す場合もあり、この濃度としては、これらに限定されるものではないが、塩濃度又は有機修飾剤濃度のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0054】
好ましい実施形態において、マルチ吸着体向流溶媒グラジエント精製プロセスでは、吸着体が2つ使用される。しかし、2つを超える吸着体、例えば、吸着体を3つ、4つ、5つ又はさらには6つ使用することも可能である。
【0055】
好ましい実施形態において、この方法では、内部再循環の段階と生成物溶離の段階との間にクロマトグラムを監視し、閾値に基づいて制御動作を始動させる。
【0056】
このプロセスでは、ちょうど2つの吸着体を使用することが好ましい。
【0057】
好ましい実施形態において、この方法は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、上流の吸着体の出口で、吸着性の弱い不純物の内部再循環(段階I1)中に監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが正である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び閾値に達したときに、
(c) 段階I1の実施を停止して段階B1を開始すること、ここで、B1は、固定の持続長か、又は別の閾値に応じて可変の持続長を有する
を含む。
【0058】
別の好ましい実施形態において、この方法は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、上流の吸着体の出口で、吸着性の弱い不純物の内部再循環(段階I1)中に監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが正である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び閾値に達したときに、
(c) 段階I1を一定時間にわたり継続(遅延)し、それから段階I1の実施を停止して段階B1を開始すること、ここで、段階B1は、固定持続長を有し、遅延は、所定の持続長か、又は別の閾値に応じて可変の持続長を有する
を含む。
【0059】
さらなる別の好ましい実施形態では、最小値に関連し得る遅延期間を、段階I1で始動させるために使用される閾値と同一の又は異なり得る閾値に基づいて段階B1が開始されるように、先の方法を修正する。最低持続長を遅延に割り当てる理由は、主要生成物の前に不純物が溶離して第2の閾値の値に達することを原因として段階B1が予定よりも早く開始されるのを回避することにある。遅延期間は、時間又は体積について定式化することが可能である。
【0060】
さらなる好ましい実施形態において、この方法は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、生成物溶離吸着体(段階B1)の出口で監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが負である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び閾値に達したときに、
(c) 試料の充填は段階B1の初めに行われ、他方の吸着体の溶離が閾値に達するまで進行している短い時間の後に停止され、I2は所定の持続長か、又は別の閾値に応じて可変の持続長を有するように試料の充填が調整されるように、段階B1の実施を停止して段階I2を開始すること
をさらに含む。
【0061】
別の好ましい実施形態では、I2の終点を閾値により決定し、この閾値に達したときに、(c)段階I2の実施を停止して段階B2を開始する。
【0062】
その他の好ましい実施形態では、段階B1の開始に関連する上記の方法のいずれかが、段階B1の停止に関連する方法と組み合わされる。
【0063】
よって、これらの方法の組み合わせも可能であり、I1における遅延期間の開始は、第1の閾値に基づき、生成物収集段階B1の開始は、UVシグナルの傾きが正である間の第2の閾値に基づき、段階B1の停止(及び段階I2の開始)は、第3の閾値に基づく。
【0064】
上記の方法のいずれかの方法の他の好ましい実施形態では、制御動作を始動させるために、クロマトグラムの傾きのさらなる情報が使用される。方法の好ましい実施形態において、固定持続長ありの遅延体積を使用する上記の方法では、遅延を停止して、第2の閾値に達するためのシグナルの評価を継続する判定基準として、傾きの符号の変化を代わりに使用してもよい。
【0065】
いずれの方法も、このプロセスで使用される移動相の体積についての傾きに関して、溶離グラジエントを、段階I1、B1、I2を通して、好ましくは、成分「W」の溶離(2つの吸着体を用いる構成では段階4)中に使用されるグラジエント傾きで実行及び拡張し続けることを含み得る。これは、マルチ吸着体プロセスの溶離グラジエントが、段階I1、B1、I2にわたり、このプロセスで使用される移動相の体積について一定の傾きを有することを意味する。
【0066】
記載の方法において、閾値は、同一の実行又はサイクル中に得られる情報に基づき定められ得るため、これらは、実行又はサイクルが開始する時点では不明であってもよい。そのような場合、1回目のサイクルを部分的又は完全に実行した後、残りのサイクル(サイクルが評価時点で部分的に完了している場合)又はクロマトグラフィープロセスの残りの実行について有効な、記録されたシグナルの評価に基づく閾値をこの方法により決定することができる。したがって、プロセスのある段階を停止してプロセスの新たな段階を開始するための閾値は、クロマトグラフィープロセスの同一の又は先行する実行中に記録される濃度比例シグナルと関連づけて定められている。
【0067】
提案される方法は、特定の溶離体積内で定められた閾値に達しないことに基づいて制御動作を始動させることも含む。これは、例えば、クロマトグラフィープロセスにおいて使用されるポンプのうちの1つが適切に作動していないためにクロマトグラムが溶離しない場合に起こり得る。好ましい動作は、移動相を供給するために使用されるポンプを停止することである。基準値は、設計クロマトグラムから得ることが可能である。
【0068】
好ましい実施形態において、濃度比例シグナルは、可視光、UV、赤外線、蛍光、ラマン、イオン強度、導電率又は屈折率の測定に基づく。
【0069】
上記の方法の説明において、持続長は、時間又は体積に関して作成される。時間t及び体積Vは、対応する段階で使用される体積流量Qを用い、V=Q×tを用いて相互に変換可能である。濃度比例シグナルの傾きも、体積又は時間と関連づけて定めることが可能である。
【0070】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に規定されている。本発明において、「溶媒」という用語には、緩衝液及びその他の種類の移動相も含まれる。本発明において、「吸着体」という用語は、充填層クロマトグラフィー用カラムか、又は膜、繊維系吸着体及びモノリス吸着体を含むクロマトグラフィー用固定相を収容したその他の装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明の好ましい実施形態について、以下で図面を参照して説明するが、これは、本発明の好ましい実施形態を説明することを目的としており、本発明の限定を目的としたものではない。
図1】MCSGPプロセスの概略図を示し、具体的に、これは、ツイン吸着体向流溶媒グラジエント精製(MCSGP)プロセスの1回目の半サイクル(「切り替え」)の図であり、垂直の破線は、この図の下側部分に示される概略的バッチクロマトグラムの帯域に対応する様々なMCSGPプロセスタスクを分割しており、段階I1、B1、I2、B2が順次実施される。
図2】a)は、帯域6が適切に配置されたクロマトグラムを示し、b)は、帯域6が不都合にもシフトして、吸着性の強い不純物が含まれるクロマトグラムを示し、具体的には、MCSGP実行からの単一生成物の溶離の概略的クロマトグラムが、固定された生成物溶離ウィンドウの位置あり、制御方法なしで示されており、a)は、生成物ピークが収集されており、かつ大部分の不純物が生成物プールから排除されている最適な動作条件下での実行を示し、b)は、クロマトグラムがより早い溶離時間にシフトして濃度及び純度の低い生成物が生じた実行を示す。
図3】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(A)の概略図を示す。
図4】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(B)の概略図を示す。
図5】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(C)の概略図を示す。
図6】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(D)の概略図を示す。
図7】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(E)の概略図を示す。
図8】2つの吸着体のうちの一方からの単一生成物の溶離及び段階I1、B1、I2及びB2を示すMCGSPクロマトグラムに基づく制御方法(F)の概略図を示す。
図9】a)は、2つの異なる吸着体を用いて操作されるMCSGP実行の10回のサイクルのクロマトグラムを示し、b)は、上記の10回のサイクルの重なったクロマトグラムが、100mAUの閾値を示し、段階I1、B1、I2及びB2を示す。
図10a】3つの吸着体を含むプロセスの概略図を示す。制御方法に関与する吸着体は灰色でハイライトされており、他のタスク、例えば、洗浄、平衡化又は反応ステップを実施する吸着体は、ハイライトされていない。
図10b】4つの吸着体を含むプロセスの概略図を示す。制御方法に関与する吸着体は灰色でハイライトされており、他のタスク、例えば、洗浄、平衡化又は反応ステップを実施する吸着体は、ハイライトされていない。
【発明を実施するための形態】
【0072】
吸着体2つのMCSGPプロセス(例えば、2つのクロマトグラフィー用カラム又は膜吸着体を有する)の原理を、図1に示す。図1の下部の概略的クロマトグラムは、バッチクロマトグラフィーの実行において実施されるタスク(帯域1では平衡化、帯域2では供給、帯域3では洗浄、帯域4~7では溶離、帯域8では洗浄及び再平衡化)に応じて様々な区分(垂直の破線)に分けられたバッチクロマトグラムを表す。クロマトグラムにおいて、溶離段階は、吸着性の弱い不純物(W)、生成物(P)、及び吸着性の強い不純物(S)の溶離順序に応じて、さらなる帯域に細分化される(帯域4ではWの溶離、帯域5では重なり部分W/Pの溶離、帯域6では純粋なPの溶離、帯域7では重なり部分P/Sの溶離)。吸着体2つのMCSGPプロセスにおいて、帯域4~7のこれらの個別のタスクは、バッチクロマトグラフィーの場合と同様に実施されるが、ただし、W/P及びP/S(帯域5及び7)の溶離液が、Pの回収のために第2の吸着体に送られるという決定的な差がある。したがって、単一吸着体バッチプロセス及びMCSGPプロセスのプロセスタスクは類似しており、MCSGPの操作パラメーターをバッチ操作パラメーター及び対応するクロマトグラムから導き出すことが可能である。
【0073】
吸着体2つのMCSGPプロセスの全サイクルは、2回の「切り替え」を含んでおり、4対のタスク(I1、B1、I2、B2)をそれぞれ、図1に示す。各切り替えにおける段階は同一であり、違いは吸着体の位置のみである。1回目の切り替えにおいて、吸着体1は吸着体2の下流にあり、2回目の切り替え(図1には図示せず)において、吸着体2は吸着体1の下流にある。4つの段階は、以下のタスクを含む:
段階I1:第1の相互連結段階。重なり部分W/Pを上流の吸着体(図1における帯域5)から溶離させ、相互連結モードで内部循環させて下流の吸着体(帯域1)に送る。通常、これらの吸着体の間で、流れを緩衝液/溶媒によりインライン希釈して、P(及び重なったW)を下流の吸着体において再吸着させる。段階I1の終わりには、純粋な生成物は、上流の吸着体(帯域5)の出口において、溶離の準備が整う。
【0074】
欧州特許出願公開第1877769号明細書の図28では、この段階はステップ「1」と称される。
【0075】
段階B1:第1のバッチ段階。帯域5における吸着体(図1における吸着体2)から純粋なPを溶離させて収集し、重なり部分P/S及びSを吸着体中に維持する。同時に、帯域2における吸着体に新しいフィードを注入する。
【0076】
欧州特許出願公開第1877769号明細書の図28では、この段階はステップ「2」と称される。
【0077】
段階I2:第2の相互連結段階。上流の吸着体(帯域7)から重なり部分P/Sを溶離させ、内部循環させて下流の吸着体(帯域3)に送る。通常、これらの吸着体の間で、流れを緩衝液/溶媒によりインライン希釈して、Pを下流の吸着体において再吸着させる。このステップの終わりには、残留したPがすべて上流の吸着体から溶離し、Sのみが上流の吸着体に残る。
【0078】
欧州特許出願公開第1877769号明細書の図28では、この段階はステップ「3」と称される。
【0079】
段階B2:第2のバッチ段階。帯域8の吸着体(図1における吸着体2)を洗浄してSを除去し、再平衡化させる。同時に、帯域4において、もう一方の吸着体からWを溶離させる。
【0080】
欧州特許出願公開第1877769号明細書の図28では、この段階はステップ「4」と称される。
【0081】
これらのタスクを完了した後に、吸着体は位置を入れ替え、次の段階I1(図1には図示せず)では、吸着体2は下流位置(帯域1)にあり、吸着体1は上流位置(帯域5)にある。このI1段階の始めに、吸着体2を洗浄し、再平衡化させ、吸着体1からW/P画分を取り込む準備が整う。2回目のB1、I2及びB2を完了した後に、吸着体はその元の位置に戻り、1回のサイクルの完了となる。そして、吸着体1は汚れがなくなり、次の段階I1(図1に示される)において吸着体2からW/Pを取り込む準備が整う。
【0082】
その他の向流クロマトグラフィープロセスと同様に、MCSGPにおいて実際には、吸着体の物理的な移動によってではなく、バルブ切り替えによる吸着体の入口及び出口の連結及び分断によって、吸着体の移動を擬似的に行う。
【0083】
そのようなマルチ吸着体向流プロセスのプロセス設計は、生成物及び不純物の化合物を本質的に多くの異なる帯域に溶離させることを示す図1に図示されているように、「設計クロマトグラム」を分割することによるものである。プロセス設計に重要なのは、吸着性の弱い不純物が単独で存在する第1の帯域(図1における帯域4)、吸着性の弱い不純物Wが生成物化合物Pと重なる第2の帯域(図1における帯域5)、純粋な生成物Pが存在する第3の帯域(図1における帯域6)、生成物Pと吸着性の強い不純物Sとが重なる第4の帯域(図1における帯域7)、並びに吸着性の強い不純物Sが単独で存在する第5の帯域(図1における帯域8)である。
【0084】
プロセス設計の一部として、異なる帯域の間に境界を配置して、単一吸着体バッチクロマトグラムからプロセス操作パラメーター(グラジエント濃度、ポンプ流量)を決定する位置に配置する必要がある。境界の配置は、時間に関係詞、かつ体積流量を介して時間に変換可能な溶離体積に基づいて行われる。境界の配置は、プロセス性能、すなわち生成物純度及び生産性にとって重要である。例えば、生成物溶離帯域(図1における帯域6)を誤って配置すると、吸着性の弱い不純物が生成物プールに含まれ、純度の仕様が満たされなくなることがある。
【0085】
しかし、最初は適切に設計されていたとしても、後の段階において、外部要因が、記載のマルチ吸着体向流プロセスの生成物純度及びプロセス性能に不都合な効果を与えることがある。新たに調製された移動相は、組成が僅かに異なることがあり、環境温度が変化して、クロマトグラフィー吸着プロセスに影響を与えることがある。固定相の容量は、経時的に変化し得る。
【0086】
ほとんどの場合、これらの要因によりクロマトグラフィープロファイルがシフトするが、生成物及び不純物の分離能は類似したままである。しかし、シフトしたクロマトグラムは、マルチ吸着体向流プロセスを設計するために使用された元の設計クロマトグラムに比べて、ピーク位置が異なることがある。
【0087】
これは、元の設計クロマトグラムによる異なる帯域間での境界配置が、もはや正確ではなく、ピークのシフトの結果として、生成物純度が損なわれる可能性があることを意味する。
【0088】
図2に例を示す。生成物収集ウィンドウが最適に配置されている(図2a)が、クロマトグラムがわずか約1分早く溶離する場合には、帯域6の生成物溶離間隔(元の位置に基づいた固定位置を有する)は、生成物のピーク最大値から外れ、吸着性の強い不純物の大部分を含むことになる(図2b)。結果として、収集された画分における生成物濃度、さらに重大なことには純度が低下し、それにより、生成物が純度の仕様をもはや満たさなくなることがある。1分のシフトは、わずか摂氏数度の温度変化によって生じ得る。
【0089】
通常は、検出器による記録が可能であるのは、累積濃度比例シグナルのみであり、例えば累積UVシグナル(太い黒線、UV)のみであることに留意されたい。不純物が生成物プールに含まれていることを視覚化するために、累積濃度比例シグナルを数値的にデコンボリューション(deconvoluted)して、生成物及び不純物のピークを示した。
【0090】
環境条件における変化を考慮するために、新たな設計クロマトグラムを新たな条件ごとに記録する必要があり、これは、著しい実験的労力をかけずには成し遂げることができず、実際的でない。
【0091】
プロセス設計に安全性を付加する1つの手法は、生成物画分(帯域6)を狭くして、内部再循環の帯域(帯域5及び7)の幅を広げることであるが、これはプロセスの生産性に対して不利な影響を与えるため、クロマトグラムのシフトが溶離ウィンドウの幅より著しく小さい場合にしか行うことができない。操作パラメーターにおける変動を考慮するためのより好ましい手法は、オンライン制御の使用である。
【0092】
1つの選択肢は、ピークの最大位置又はピークの一次モーメントの評価を使用して、次の生成物溶離又は次のサイクルのために制御動作を誘導することである。
【0093】
別の選択肢は、アットライン(at-line)HPLCによる生成物溶離液の評価を使用して、収率及び純度を決定することである。
【0094】
MCSGPについてのこれらの制御方法では、サイクル誤差(cycle-to-cycle)に基づいてプロセスを制御及び最適化することが可能な高度な制御アルゴリズムが使用される。これらの制御方法の利点は、これらがプロセスの制御及びプロセスの最適化を同時に実行することが可能なことである。それらの欠点は、この方法が、制御動作の誘導が可能になる前に完全な生成物溶離段階についての情報を必要とするため、これに続く生成物溶離について最も早く有効になる制御動作の効果が遅延することにある。別の欠点は、オフライン分析が必要であること及び制御アルゴリズムの煩雑性である。通常、制御アルゴリズムは、生成物溶離を評価して、プロセス性能及び/又は生成物純度に関連する実際の値を決定し、実際の値と設定値との差に基づいて誤差を計算する。その後、誤差の大きさに基づいて制御動作が始動される。
【0095】
他の方法は、クロマトグラフィーモデルを使用したMCSGPプロセスの説明を目的としており、このモデルを使用して、プロセス性能を予測し、最適化(モデルに基づく予測制御)を実施する。これらの方法は、有用ではあるものの、実際に適用するのは困難である。なぜならば、これらの方法では、分離すべき化合物と、使用すべきクロマトグラフィー固定相及び移動相とに関連する多くのパラメーターに基づいてプロセス及びクロマトグラフィー分離を正確に記述する必要があり、これは決定が難しくかつ時間がかかり、またこれらの方法では、ノウハウの大幅なモデル化が必要とされるためである。
【0096】
図3は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、上流の吸着体の出口で、吸着性の弱い不純物の内部再循環(段階I1)中に監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが正である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び濃度比例シグナルが閾値に達したときに、
(c) 段階I1の実施を停止して段階B1を開始すること、ここで、段階B1は、固定の持続長か、又は別の閾値に応じて変化する持続長を有する
を含む方法を使用したクロマトグラムを示す。
【0097】
この場合、濃度比例シグナルはUVシグナルであり、UV閾値は0.6AUであり、B1の固定持続長は1.5mLである。
【0098】
図4は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、上流の吸着体の出口で、吸着性の弱い不純物の内部再循環(段階I1)中に監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが正である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び濃度比例シグナルが閾値に達したときに、
(c) 段階I1を一定時間又は溶離体積にわたり継続(遅延)し、それから段階I1の実施を停止して段階B1を開始すること、ここで、段階B1は、固定持続長を有し、遅延は、所定の持続長か、又は別の閾値に応じて変化する持続長を有する
を含む方法を使用したクロマトグラムを示す。
【0099】
この例では、以下のことが成り立つ:濃度比例シグナルはUVシグナルであり、閾値は0.5AUであり、遅延体積は1.1mLであり、B1生成物収集(固定)は1.5mLである。
【0100】
図5は、最小値に関連し得る遅延期間を段階I1で生じさせるために使用される閾値と同一の又は異なり得る閾値に基づいて段階B1が開始されるように修正した前記方法を使用したクロマトグラムを示す。最低持続長を遅延に割り当てる理由は、主要生成物の前に不純物が溶離して第2の閾値の値に達することを原因として段階B1が予定よりも早く開始されるのを回避することにある。遅延期間は、時間又は体積について定式化することが可能である。この例では、以下のことが成り立つ:濃度比例シグナルはUVシグナルであり、閾値1は0.5AUであり、最低遅延期間は1.0mLであり、閾値2は0.6AUであり、生成物収集(固定)は1.5mLである。
【0101】
図6は、
(a) 濃度比例シグナルの傾き及び/又は値を、生成物溶離吸着体(段階B1)の出口で監視すること、
(b) 濃度比例シグナルの傾きが負である間に、濃度比例シグナルの値と定められた閾値とを連続的に比較すること、及び濃度比例シグナルが閾値に達したときに、
(c) 試料の充填は段階B1の初めに行われ、他方の吸着体の溶離が閾値に達するまで進行している短い時間の後に停止され、I2は所定の持続長か、又は別の閾値に応じて可変の持続長を有するように試料の充填が調整されるように、段階B1の実施を停止して段階I2を開始すること
を含む方法を使用したクロマトグラムを示す。
【0102】
ここで、濃度比例シグナルはUVシグナルであり、閾値は0.2AUであり、固定供給間隔持続長は0.5mLであり、I2段階の固定持続長は1.2mLである。
【0103】
図7は、I2の終点を閾値により決定する方法であって、この閾値に達したときに、(c)段階I2の実施を停止して段階B2を開始する方法を使用したクロマトグラムを示す。ここで、濃度比例シグナルはUVシグナルであり、I2開始の閾値1は0.2AUであり、固定供給間隔持続長は0.5mLであり、I2終了の閾値2は0.1AUである。
【0104】
段階B1の開始に関連する前記方法のいずれかを、段階B1の停止に関連する方法と組み合わせることができる。
【0105】
図8は、I1における遅延期間の開始が、第1の閾値に基づき、生成物収集段階B1の開始が、UVシグナルの傾きが正である間の第2の閾値に基づき、段階B1の停止(及び段階I2の開始)が、第3の閾値に基づく、図5及び図6で述べた方法の組み合わせを示す。
【0106】
上記のいずれかの方法の他の好ましい実施形態では、制御動作を始動するために、クロマトグラムの傾きのさらなる情報が使用される。方法の好ましい実施形態において、固定持続長を有する遅延体積を使用する上記の方法では、遅延を停止して、第2の閾値に達するためのシグナルの評価を継続するための判定基準として、傾きの符号の変化を代わりに使用してもよい。
【0107】
いずれの方法も、このプロセスで使用される移動相の体積についての傾きに関して、溶離グラジエントを、段階I1、B1、I2を通して、好ましくは、化合物「W」が溶離する段階4で使用されるグラジエント傾きで実行及び拡張し続けることを含む。これは、図3~8に図示されているように、マルチ吸着体プロセスの溶離グラジエントが、段階I1、B1、I2にわたり、このプロセスで使用される移動相の体積について一定の傾きを有することを意味する。
【0108】
また、記載の方法において、閾値は、同一の実行又はサイクル中に得られる情報に基づいて定められ得るため、これらは、実行又はサイクルが開始する時点では不明であってもよい。そのような場合、1回目のサイクルを部分的又は完全に実行して、それから、残りのサイクル(サイクルが評価時点で部分的に完了している場合)又はクロマトグラフィープロセスの残りの実行について有効な、記録されたシグナルの評価に基づく閾値をこの方法により決定することができる。したがって、プロセスのある段階を停止してプロセスの新たな段階を開始するための閾値は、クロマトグラフィープロセスの同一の又は先行する実行中に記録される濃度比例シグナルと関連づけて定められる。例として、この方法では、UVシグナルをMCSGPクロマトグラフィー実行の操作中に監視する。この方法は、段階B1中に得られるUV最大値の25%に達したらすぐに、段階B1を停止して段階I2を開始するように構成されている。段階B1中に、最大ピーク値0.80AUのピークが溶離する(図6参照)。この方法が0.20AUに対応する最大ピーク値の25%に達したらすぐに、段階B1は停止し、このプロセスは段階I2で継続する。続くサイクルにおいて、段階B1では、最大ピーク値が0.72AUにしか達しない場合がある(例えば、吸着体品質の変化を原因とする)。段階B1中に達したピーク最大値の25%に達すると動作するように方法が構成されているため、このプロセスは0.18AUの閾値に達するまで継続し、それから段階B1が停止され、段階I2が開始される。実行の間に事前に得られた濃度比例値に閾値を関連付けるこのタイプの方法の構成により、吸着体品質又は検出器品質又は検出器較正における変動のバランスを取ることが可能になる。この方法は、クロマトグラムにおいてカウントされたピーク数を使用して制御動作を始動させることも含む。
【0109】
例1[図9]:
制御方法(A)を使用して、Contichromシステム(ChromaCon AG)を操作した。内側直径0.5cm及び層高さ10cmのカラムに充填した異なるカチオン交換固定相(Fractoprep SO3(M)及びGigacap SO3)を充填した2つのカラム。2つの異なる樹脂を使用し、カラム充填品質が異なるカラムを擬似的に再現して使用した。A280UVシグナルを双方のカラム出口で連続的に監視するようにシステムの操作ソフトウェアをプログラムし、設計クロマトグラムの知識に基づいて、生成物収集段階を開始するためのUV閾値を0.1AU(=100mAU)に設定した。生成物溶離段階の持続長を、5.5分に固定した。
【0110】
充填材料はリゾチーム溶液であり、使用した緩衝液は以下の通りであった:緩衝液A:25mMのホスフェート、pH6.0;緩衝液B:25mMのホスフェート、pH6.0、1MのNaCl;洗浄溶液:1MのNaOH。図9Aは、各カラムからの生成物溶離ピークが繰り返された、10回のサイクルにわたるMCSGPプロセスのサイクル操作のクロマトグラムを示す。生成物ピークは、どのカラムから溶離するかに応じて、幅及び高さが大きく異なることが分かる(Fractoprepは幅広いピーク、Gigacapは狭いピーク)。図9Bは、10回のサイクルのクロマトグラムのオーバーレイを示し、各カラムからの生成物溶離が、同一のカラムからの生成物溶離と比較して非常に再現性が高いことが確認されている。さらに、この図は、用いられる出口バルブの位置(V1b、V2b)を示し、これはプロセス段階を表す。バルブ位置4は段階I1に対応し、位置3は段階B1に対応し、位置4は段階I2に対応し、位置1及び5は段階B2に対応する。
【0111】
これらのクロマトグラムは、ピーク形状が大きく異なるにもかかわらず生成物収集が0.1AUの設定閾値で開始すること、及び生成物収集が固定持続長で動作することを示しており、どちらの場合にも、最も高い生成物濃度及び純度に対応するピーク最大値が収集される。
【0112】
図10は、図1に図示したプロセスに類似したプロセスの概略図を示し、a)には、吸着体を3つ含む構成が示されており、b)には、吸着体を4つ含む構成が示されている。
【0113】
吸着体を3つ用いるa)において、I1~B2の上側4つのラインは、吸着体1及び2のタスクに関する限り、図1に図示されているプロセスに実質的に対応する。吸着体3は、成分W(吸着性の弱い画分)、P(生成物画分)及びS(吸着性の強い画分)を含む実際の分離プロセスに関する限り、受動的である。この第1のブロックでは、カラム3を、洗浄、平衡化又は反応ステップに供することができる。
【0114】
第2のブロックのI1~B2に移行すると(移行は、左の上側矢印により図示されている)、第1のブロックの吸着体1は、第1のブロックにおける吸着体2の機能を引き継ぎ、第1のブロックの吸着体2は、第1のブロックにおける吸着体3の機能(受動機能)を引き継ぎ、第1のブロックの吸着体3は、第1のブロックにおける吸着体1の機能を引き継ぐ。
【0115】
第3のブロックのI1~B2に移行すると(移行は、左の下側矢印により図示されている)、吸着体1は、第1のブロックにおける吸着体3の機能(受動機能)を引き継ぎ、吸着体2は、第1のブロックにおける吸着体1の機能を引き継ぎ、吸着体3は、第1のブロックにおける吸着体2の機能を引き継ぐ。
【0116】
図10aにおける吸着体3つのプロセスにおいて、濃度比例シグナルは、稼働中のカラムの出口で、すなわち、上から1つ目のブロックではカラム1及び2の出口(図1の説明に詳述されているように)で、上から2つ目のブロックについては同様にカラム1及び3の出口で、一番下のブロックについては同様にカラム2及び3の出口で測定することが可能である。濃度比例シグナルを、相互連結モード(I1、I2)では、稼働中の2つの吸着体のうちの上流の吸着体の出口のみで測定し、生成物を溶離させる吸着体のバッチ段階(B1)では、例えば、ステップ1~4(第1のブロック)の吸着体2の出口、ステップ5~8(第2のブロック)の吸着体1の出口、及びステップ9~12(ブロック3)の吸着体3の出口のみで測定することが好ましい。
【0117】
吸着体を4つ用いる図10b)において、I1~B2の上側4つのラインは、吸着体1及び2のタスクに関する限り、図1に図示されているプロセスに実質的に対応する。吸着体3及び4は、成分W(吸着性の弱い画分)、P(生成物画分)及びS(吸着性の強い画分)を含む実際の分離プロセスに関する限り、受動的である。第1のブロックでは、吸着体3及び4を、洗浄、平衡化又は反応ステップに供することができる。
【0118】
第2のブロックのI1~B2に移行すると(移行は、左の上側矢印により図示されている)、第1のブロックの吸着体1は、第1のブロックにおける吸着体2の機能を引き継ぎ、第1のブロックの吸着体2は、第1のブロックにおける吸着体3の機能(受動機能)を引き継ぎ、第1のブロックの吸着体3は、第1のブロックにおける吸着体4の機能(受動機能)を引き継ぎ、第1のブロックの吸着体4は、第1のブロックにおける吸着体1の機能を引き継ぐ。
【0119】
第3のブロックのI1~B2に移行すると(移行は、左の中央の矢印により図示されている)、吸着体1は、第1のブロックにおける吸着体3の機能(受動機能)を引き継ぎ、吸着体2は、第1のブロックにおける吸着体4の機能(受動機能)を引き継ぎ、吸着体3は、第1のブロックにおける吸着体1の機能を引き継ぎ、吸着体4は、第1のブロックにおける吸着体2の機能を引き継ぐ。
【0120】
第4のブロックのI1~B2に移行すると(移行は、左の下側矢印により図示されている)、吸着体1は、第1のブロックにおける吸着体4の機能を引き継ぎ、吸着体2は、第1のブロックにおける吸着体1の機能を引き継ぎ、吸着体3は、第1のブロックにおける吸着体2の機能を引き継ぎ、吸着体4は、第1のブロックにおける吸着体3の機能を引き継ぐ。
【0121】
また、図10bにおける吸着体4つのプロセスにおいて、濃度比例シグナルは、稼働中の吸着体の出口で、すなわち、上から1つ目のブロックについては吸着体1及び2の出口(図1の説明に詳述される)で、上から2つ目のブロックについては同様に吸着体1及び4の出口で、3つ目のブロックについては吸着体3及び4の出口で、一番下のブロックについては同様に吸着体2及び3の出口で測定することが可能である。また、濃度比例シグナルを、稼働中の2つの吸着体のうちの上流の吸着体の出口のみで測定し、生成物を溶離させる吸着体のバッチ段階(B1)では、ステップ1~4(第1のブロック)の吸着体2の出口、ステップ5~8(第2のブロック)の吸着体1の出口、ステップ9~12(ブロック3)の吸着体4の出口、及びステップ13~16(ブロック4)の吸着体3の出口のみで測定することが好ましい。
【符号の説明】
【0122】
1 平衡化帯域
2 供給帯域
3 洗浄帯域
4 Wの溶離帯域
5 再循環重なり帯域、重なり部分W/Pの溶離
6 純粋な生成物Pの溶離帯域
7 再循環重なり帯域、重なり部分P/Sの溶離
8 洗浄及び再平衡化帯域
I 相互連結段階
B バッチ段階
B1 第1のバッチ段階
I1 第1の相互連結段階
B2 第2のバッチ段階
I2 第2の相互連結段階
W 吸着性の弱い不純物画分
P 所望の生成物画分/化合物
S 吸着性の強い不純物画分
UV UVシグナル
V 体積
t 時間
Q 体積流量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b