IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード ナノポール テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

特許7333794エレクトロウェッティングデバイスにおける液滴界面
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】エレクトロウェッティングデバイスにおける液滴界面
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20230818BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230818BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230818BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20230818BHJP
   C12N 1/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N27/00 Z
G01N1/28 J
G01N1/00 101F
G01N1/28 Z
C12M1/00 A
C12M1/42
C12N1/06
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020564747
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2019033957
(87)【国際公開番号】W WO2019227013
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/675,943
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ホールデン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,ケン
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504124(JP,A)
【文献】特表2018-510677(JP,A)
【文献】特開2014-140841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 1/00- 1/44
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを有する液滴を受容するための、かつ液滴界面を使用して前記サンプルに対して実験を実行するために前記サンプルを溶解するための装置であって、前記装置がエレクトロウェッティングデバイスを備え、
前記エレクトロウェッティングデバイスは、
作動電極のアレイと、第1の基板に支持される前記作動電極を覆い、最も外側の疎水性表面を有する絶縁体層とであって、前記エレクトロウェッティングデバイスが、前記疎水性表面上に配置された流体媒体および前記流体媒体中の液体を含む液滴を受容するように配設されている、作動電極のアレイ及び絶縁体層と、
受容された液滴を操作するために選択された前記作動電極に作動信号を印加するように、かつ前記液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように構成された制御システムと、
疎水性材料でコーティングされたセンサ電極のアレイであって、前記疎水性材料は、第2の基板に支持される前記センサ電極の少なくとも一部を露出させる開口を有し、前記液滴は前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれる、センサ電極のアレイと、
液滴界面にわたって形成された液滴システムにおいて、液滴間の電気的測定値を取得するように構成されたセンサシステムと、
少なくとも2つの作動電極に接続可能であり、液滴内の細胞を溶解するために溶解信号を液滴に印加するように構成された溶解器であって、前記溶解信号が、前記制御システムによって制御される、溶解器と、を備え
装置。
【請求項2】
前記アレイ中の前記作動電極が、個別に制御可能であり、前記制御システムが、前記アレイ中の任意の2つの作動電極の間またはそれらの上に位置する液滴を介して、溶解信号を通過させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アレイ中の少なくとも2つの作動電極が、前記溶解信号を提供するように構成された溶解電極として動作可能であり、前記溶解電極が、前記アレイ中の他の電極から機械的および/または電気的に隔離され、電極の前記アレイが、前記溶解電極間でサンプルを有する液滴を操るように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
2つの溶解電極が、作動電極の前記アレイに隣接するかまたはその内部の溶解ゾーンにおいて構成され、前記溶解ゾーンが、作動電極の前記アレイから隔離され、作動電極の前記アレイが、前記溶解ゾーン間でサンプルを有する液滴を操るように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記制御システムは、液滴内の細胞を溶解するために、溶解信号が液滴に印加されている期間の間、溶解電極として動作する2つ以上の電極から作動電極の前記アレイを非活性化および/または隔離するように構成されている、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記制御システムが電極の前記アレイを隔離する時間の長さと、
溶解信号が液滴に印加される時間の長さとの比が、
20:1~2:1である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記溶解信号が、前記制御システムが電極の前記アレイに接続された前記作動機能および感知機能を隔離またはオフにする期間の途中に、前記溶解電極に印加される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記デバイスが、前記絶縁体層の前記疎水性表面に面し、かつ少なくとも1つの溶解電極を支持する、第2の基板を有する、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、
分析されるサンプルを有する液滴を受容することと、
内部でコールを破壊するために、前記サンプルを溶解するための溶解電極へ前記液滴を操ることと、
前記溶解した液滴の少なくとも一部分を測定電極へ操ることと、
前記溶解した液滴に隣接する第2の液滴を移動させて、液滴界面二重層を形成することと、
前記液滴界面を使用して、前記サンプルの測定を実行することと、を行うように構成されている、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
溶解に続いて、前記装置が、液滴界面二重層の作製、およびその後の実験前に、調製のために前記溶解サンプルを移動および/または混合する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記液滴を溶解電極へ操った後、前記装置は、内容物のグループが、内部の細胞を破壊するために溶解するために配設されるように、誘電泳動を使用して、前記グループ中の前記液滴の内容物を照合するようにさらに構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記溶解電極間に前記誘電泳動場を適用するように構成された、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電気的測定値が、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値である、請求項3~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記センサシステムが、前記電気的測定値を処理するように構成された分析システムをさらに備え、
前記分析システムが、電気的測定値を処理して、両親媒性分子の膜を含む形成された液滴界面に挿入された膜貫通細孔と相互作用する分析物を分析するように構成されており、
前記分析物が、ポリマーユニットを含むポリマーであり、前記センサシステムが、前記電気的測定値を処理して、前記ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成されている、請求項3~13に記載の装置。
【請求項15】
前記エレクトロウェッティングデバイスが、表面において両親媒性分子を含み、かつ膜貫通細孔を含有する液滴を受容するように配設され、前記制御システムが、形成された液滴界面に膜貫通細孔が挿入されるように、前記液滴間に両親媒性分子の膜を含む1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように選択された前記作動電極に作動信号を印加するように構成されている、請求項3~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の装置において分析物を調製するための方法であって、
関心対象の細胞を含有する第1の液滴を少なくとも2つの作動電極と接触させることであって、前記電極が、溶解信号を前記第1の液滴に印加して前記細胞を溶解するために、前記溶解器に接続可能である、接触させることと、
前記溶解器を前記第1の液滴と接触している電極対に接続して、前記細胞を溶解し、関心対象の分析物を前記細胞から放出することと、を含む、方法。
【請求項17】
溶解前に、誘電泳動を使用して前記液滴内の細胞をグループ化することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶解のための前記溶解電極で前記細胞をグループ化するために、前記誘電泳動が、前記溶解電極間に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞の溶解および前記分析物の前記液滴への放出に続いて、さらなる誘電泳動場が、前記液滴に適用され、前記分析物を前記溶解電極に保持する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の液滴を分割して、第1のサブ液滴および第2のサブ液滴を形成し、第1の液滴対を形成することと、
第2の液滴を前記第1のサブ液滴と接触させて、第2の液滴対を形成し、前記第1のサブ液滴および前記第2の液滴をそれぞれの測定電極と接触させることと、
第3の液滴を前記第2のサブ液滴と接触させて、第2の液滴対を形成し、前記第2のサブ液滴および第3の第2の液滴をそれぞれの測定電極と接触させることと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年5月24日に提出された米国仮特許出願第US62/675,943号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
エレクトロウェッティングデバイスならびに関連するシステムおよび使用法が、概して説明されている。いくつかの態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイス、および流体媒体中の液体の液滴間に液滴界面を形成するためのそれらの使用に関する。いくつかの態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイス、およびエレクトロウェッティングを使用して形成された液滴界面の測定を行う際のそれらの使用に関する。他の態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイスを使用するサンプルの調製に関する。流体媒体中の液体の液滴を操作するためのエレクトロウェッティングデバイス、例えば誘電体上エレクトロウェッティング(EWOD)デバイスが既知である。
【背景技術】
【0003】
これをより詳細に検討すると、誘電体上エレクトロウェッティングは、例えば、US2016/0305906に開示されているように、電場の適用によって流体の液滴を操作するための周知の技術である。EWODデバイスの例示的な構成および動作は、以下の文書で説明される。US-6,911,132は、2次元における液滴の位置および移動を制御するための2次元EWODアレイを開示している。US-6,565,727は、液滴の分割およびマージング、ならびに異なる材料の液滴を一緒に混合することを含む他の液滴動作のための方法を開示している。US-7,163,612は、AMディスプレイ技術で採用されているものと同様の回路配置を使用して、薄膜トランジスタ(TFT)を含む薄膜エレクトロニクスに基づくアクティブマトリックス(AM)配置が、EWODデバイスへの電圧パルスのアドレス指定を制御し得る方法を説明している。この一般的なタイプのデバイスは、AM-EWODデバイスと呼ばれ得る。
【0004】
EWODデバイスを使用して、そのような液滴を操作して、例えば、両親媒性分子の膜を含む、液滴間に液滴界面を形成することが提案されてきた。これは、液滴界面自体、および液滴界面で発生するプロセスを研究するための潜在的に有用なシステムを提供する。特に関心のある一例では、そのようなプロセスは、膜貫通細孔の挿入、および分析物のそのような膜貫通細孔との相互作用に依存し得るイオン電流の流れなどの特性のその後の測定を伴い得る。
【0005】
両親媒性分子の膜、例えば、人工平面脂質二重層は、生体膜の簡略化されたモデルとして役立ち得、膜貫通タンパク質細孔、例えば、イオンチャネルなどの膜貫通細孔の特徴付けを含む様々なプロセスの研究に広く使用されている。イオンチャネルは、細胞膜にわたる特定のイオンの移動を生物学的に選択的に制御し、多種多様の生物学的プロセスの基礎となる電圧および電気化学的勾配を確立する、膜貫通タンパク質細孔の多様なグループである。
【0006】
個々のタンパク質細孔の単一チャネル記録(SCR)は、チャネルタンパク質機能を研究する強力な手段である。単一チャネル記録は、単一タンパク質チャネルを通してイオン電流の変化を測定し、電圧依存性、ゲーティング動作、リガンド結合親和性、および単一分子レベルでのイオン選択性を調べることができる。Montal,M.&Mueller,P.1972.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 69,3561-3566)によって開示されているような様々な方法を採用して脂質二重層を形成し得る。広く使用されているが、平面脂質二重層は、調製することが難しく、寿命が短いため、多くの状況で使用を妨げる。
【0007】
したがって、両親媒性分子の他の膜が提案されてきた。平面脂質二重層の代替物が開示されており、例えば、両親媒性分子の二重層を形成する方法を開示するWO-2008/012552は、油などの疎水性媒体中の水溶液の液滴を使用する。
【0008】
例えば、WO-2014/064443に開示されている、それぞれのイオンチャネルタンパク質細孔またはナノ細孔を含有する両親媒性分子の個々の浮遊膜のアレイを提供し得る。ポリヌクレオチドなどの分析物およびNanopore Technologies Ltd.によって販売されている、ポリヌクレオチド配列を決定することができるナノ細孔アレイを含むMinION(商標)などの市販のデバイスを特徴付けるために、両親媒性膜の両側で提供される2つの水溶液間のイオン電流を測定することができる。
【0009】
したがって、互いに接触している液滴間の液滴界面が、両親媒性分子の膜を形成する代替的な方法である。両親媒性分子の二重層によって形成されるそのような膜は、液滴界面二重層(DIB)と呼ばれ得る。多数の膜を多数の液滴対の間の界面において形成することができる。DIBを形成するための技術は、例えば、Leptihn et al,Nature Protocols 8,1048-1057(2013)に開示されており、DIBは、その中に挿入された膜貫通細孔の研究に使用され得る。例えば、Martel et al.,Biomicrofluidics 6、012813(2012)は、タンパク質チャネルが挿入された液滴界面二重層を形成するためのマイクロ流体デバイスを開示している。Ag/AgClパッドが提供された作動電極を含む基板上に金のマイクロワイヤーを堆積させて、膜チャネルを通るイオン電流の流れの測定を実施するために各液滴と電気的に接触させた。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイス、および流体媒体中の液体の液滴間に液滴界面を形成するためのそれらの使用に関する。いくつかの態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイス、およびエレクトロウェッティングを使用して形成された液滴界面の測定を行う際のそれらの使用に関する。他の態様では、本発明は、エレクトロウェッティングデバイスを使用するサンプルの調製に関する。流体媒体中の液体の液滴を操作するためのエレクトロウェッティングデバイス、例えば誘電体上エレクトロウェッティング(EWOD)デバイスが既知である。
【0011】
本発明の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替の解決策、ならびに/または1つ以上のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を伴う。
【0012】
本発明の第1の態様は、エレクトロウェッティングデバイスにおいて液滴界面を形成するための方法およびデバイスに関係する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、エレクトロウェッティングデバイス中に液滴界面を形成する方法であって、エレクトロウェッティングデバイスが、作動電極のアレイと、作動電極を覆い、かつ最も外側の疎水性表面を有する絶縁体層と、疎水性表面に配置された流体媒体および流体媒体中の液体を含む2つの液滴と、を備え、液体および流体媒体の一方が、極性であり、液体および流体媒体の他方が、無極性であり、これにより、作動信号が液滴に印加されるとき、作動電極が、液滴をエレクトロウェッティングすることが可能であり、方法は、選択された作動電極に作動信号を印加して、2つの液滴の一方または両方を、より低いエネルギー状態の場合と比較して、該一方または両方の液滴の形状が変更された通電状態に置き、かつ2つの液滴をその間にギャップを伴って近接させることであって、ギャップが、一方または両方が通電状態にあるときに2つの液滴が互いに接触せず、より低いエネルギー状態にあるときに互いに接触して液滴界面を形成するように選定される、近接させることと、該一方または両方の液滴が、ギャップ内に緩和され、2つの液滴が、互いに接触し、それによって液滴界面を形成するように、作動電極に印加された作動信号を変化させて、該一方または両方の液滴のエネルギーをより低いエネルギー状態に低下させることと、を含む、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法は、作動電極のアレイおよび作動電極を覆い、かつ最も外側の疎水性表面を備える絶縁体層を含むエレクトロウェッティングデバイスに適用される。いくつかの実施形態では、そのようなエレクトロウェッティングデバイスでは、流体媒体および流体媒体中に液体を含む2つの液滴が、疎水性表面上に配置され得る。いくつかの実施形態では、作動電極は、作動信号がそれに印加されるときに液滴をエレクトロウェッティングすることができ、それにより、作動信号の選択によって液滴の操作を可能にする。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、2つの液滴間に液滴界面を形成するための信頼できる技術を提供する。本方法により、いくつかの実施形態では、作動信号は、2つのフェーズで作動電極に印加される。いくつかの実施形態では、初期のフェーズにおいて、印加された作動信号は、通電状態で2つの液滴の一方または両方を置くように選択されたパターンを有する。結果として、いくつかの実施形態では、一方または両方の液滴の形状は、より低いエネルギー状態にあるときと比較して変更される。そのような通電状態では、いくつかの実施形態では、2つの液滴は、それらの間のギャップを伴って近接することをもたらす。いくつかの実施形態では、ギャップは、一方または両方が通電状態にあるときに2つの液滴が互いに接触せず、より低いエネルギー状態にあるときに互いに接触して液滴界面を形成するように選定される。
【0016】
その後のフェーズでは、いくつかの実施形態では、印加される作動信号は、該一方または両方の液滴のエネルギーをより低いエネルギー状態に低下させるように変化する。その結果、いくつかの実施形態では、一方または両方の液滴がギャップ内に緩和され、2つの液滴が互いに接触する。いくつかの実施形態では、それにより、2つの液滴間に液滴界面が形成される。したがって、いくつかの実施形態では、一方または両方の液滴の表面の移動は、受動的プロセスである、通電状態の緩和によって引き起こされる。
【0017】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、液滴全体を互いに向かって移動させる作動信号を印加することによって2つの液滴を直接接触させようとする試みと比較して、液滴界面の形成の信頼性を改善する。そのような方法は、原理的には可能であり得るが、いくつかの実施形態では、液滴は、融合する(すなわち、マージする)傾向があり、液滴間の界面を維持することが難しい。
【0018】
この方法は、いくつかの実施形態では、2つの液滴のうちの単一の1つを通電状態に置くことによって適用され得るが、好ましくは両方の液滴が通電状態に置かれる。その結果、いくつかの実施形態では、両方の液滴の表面がギャップ内に緩和され、互いに接触して液滴界面を形成する。このようにして、いくつかの実施形態では、両方の液滴の緩和が、液滴界面を形成するために使用され、これは形成の信頼性をさらに高める。
【0019】
いくつかの実施形態では、一方または両方の液滴の通電状態では、表面の所望の緩和が液滴界面を形成することを可能にする任意の形状の液滴が選択され得る。様々な形状が可能であるが、いくつかの実施形態では、有利には、エレクトロウェッティングデバイスの平面で見たときの通電状態の液滴の形状は、細長い。同様に、いくつかの実施形態では、通電状態の液滴の接触線の形状は、細長い。その場合、いくつかの実施形態では、液滴間のギャップが細長い形状の主要な長さに沿って延在し得、緩和時に、主要な長さに沿って延在する液滴の表面が、ギャップに移動して他の液滴と接触し得る。
【0020】
細長い形状が使用される場合、通電状態の液滴の形状は、いくつかの実施形態では、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも4:1、または少なくとも8:1のアスペクト比を有し得る。いくつかの実施形態では、アスペクト比を増加させると、少なくとも1つの液滴の表面の移動の程度が増加し、これにより、液滴を接触させるのを助ける。
【0021】
いくつかの実施形態では、作動電極に作動信号を印加するステップ中に、2つの液滴が、液滴のより低いエネルギー状態の2つの重心間の線に沿って、液滴の結合半径よりも短い距離だけ分離した2つの液滴の重心に近接することをもたらし得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、より低いエネルギー状態の液滴の接触線によって囲まれた面積が、少なくとも2つの作動電極、好ましくは少なくとも5つの作動電極、少なくとも10個の作動電極、または少なくとも20個の作動電極を覆うエレクトロウェッティングデバイスに有利に適用され得る。エレクトロウェッティングデバイスの設計では、いくつかの実施形態では、液滴が覆う作動電極が多いほど、液滴の通電状態における形状の制御の解像度がよくなる。これにより、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液滴の表面の移動の程度を増加させることを可能にし、これは、液滴を接触させるのを助ける。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ以上の液滴を通電するために選択される作動信号は、交流(AC)作動電圧信号であり得る。いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスにおけるAC作動信号の使用は、液滴を操作するために有利であることが既知である。その場合、好ましくは、選択された作動電極に印加された作動信号を変化させるステップは、AC作動信号の代わりにDC電位または浮遊電位を選択された作動電極に印加することを含み得る。いくつかの実施形態では、これは、AC作動信号が維持された場合よりもDC電位または浮遊電位が液滴界面を破壊する可能性が低いため、液滴界面の形成の信頼性を改善する。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、エレクトロウェッティングデバイスに適用され得、絶縁層は、該疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされた電気絶縁材料の層を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、絶縁体層の疎水性表面に面する第2の基板をさらに備えるエレクトロウェッティングデバイスに適用され得、第2の基板は、絶縁体層の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされる。この場合、液滴は、疎水性層のさらなる疎水性表面および絶縁体層の疎水性表面上に配置され得る。このようにして、いくつかの実施形態では、液滴は、2つの基板の間に挟まれ、これは液滴の形状を制約する。いくつかの実施形態では、これは、通電状態とより低いエネルギー状態との間の液滴の形状の制御の程度を改善し、次に、液滴界面の形成の信頼性を改善する。
【0026】
さらに、いくつかの実施形態では、第2の基板は、液滴界面が間に形成される液滴との電気的接続を行うセンサ電極を支持し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、作動電極に接続されたアクティブマトリクス配列をさらに備えるエレクトロウェッティングデバイスに適用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、2つの液滴間に単一の液滴界面のみを形成するために適用され得るが、同様に、方法は、疎水性表面上に配置された1つ以上のさらなる液滴と共に適用され得、作動電極への作動信号を印加および変化させるステップは、複数の液滴対の間に複数の液滴界面を形成するために実行され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、液滴界面の形成後、電気的測定値は、液滴界面にわたって液滴間で取得され得る。例えば、いくつかの実施形態では、電気的測定値は、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値であってもよく、かつ/または液滴間に電位差を適用しながら取得されてもよい。
【0030】
さらに、本発明の第1の態様によれば、いくつかの実施形態では、上記と同様の方法を実装する、液滴界面を形成するためのエレクトロウェッティングデバイスが提供される。
【0031】
本発明の第2の態様は、エレクトロウェッティングデバイスで形成された液滴のシステムでそれぞれの液滴に電気的接続を行い、液滴間に1つ以上の液滴界面を有することに関係する。いくつかの実施形態では、そのような電気的接続は、エレクトロウェッティングデバイスで様々な液滴操作を実行するときに液滴のサイズまたは場所などの液滴の特性を感知する目的、または液滴界面にわたって測定値を取得する目的を有し得る。
【0032】
US-2010/0,194,408は、とりわけ、作動電極での液滴の存在、部分的存在、または不在を決定するために、液滴アクチュエータの静電容量を検出するための方法、回路、および装置を開示している。US-8,653,832は、インピーダンス(または静電容量)感知機能をAM-EWODデバイスの各アレイ素子のアレイ素子回路にどのように組み込むことができるかを説明しており、インピーダンスセンサ回路は、アレイ中の各電極に存在する液滴の存在およびサイズを決定するために使用され得る。しかしながら、これらのアプローチは、作動信号が印加されるのと同じ電極から信号を得る必要性により限定される。
【0033】
Martel et al.,Biomicrofluidics 6、012813(2012)は、タンパク質チャネルが挿入された液滴界面二重層を形成するためのマイクロ流体デバイスを開示し、Ag/AgClパッドが提供された作動電極を含む基板上に金のマイクロワイヤーを堆積させ、膜チャネルを流れるイオン電流の測定を実施するために、各液滴と電気的に接触させた。しかしながら、この構成は不便であり、製造が困難であるだけでなく、測定値を取得する信頼性を限定し、かつ技術のスケーラビリティを限定する。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、液滴界面にわたって測定値を取得するためのエレクトロウェッティングデバイスであって、エレクトロウェッティングデバイスが、作動電極のアレイを支持する第1の基板と、作動電極を覆い、かつ疎水性表面を有する絶縁体層と、絶縁体層の疎水性表面に面し、少なくとも2つのセンサ電極のうちの少なくとも1つのセットを支持する第2の基板と、を備え、エレクトロウェッティングデバイスが、疎水性表面上に配置された流体媒体および流体媒体中の液体を含む液滴を受容するように配設され、作動電極が、液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するために、受容された液滴をエレクトロウェッティングさせるための作動信号を受信するように構成され、各セットのセンサ電極が、少なくとも1つの液滴システム中のそれぞれの液滴に電気的接続を行うように構成される、エレクトロウェッティングデバイスが提供される。
【0035】
したがって、エレクトロウェッティングデバイスでは、いくつかの実施形態では、センサ電極は、作動電極を覆う絶縁体層の疎水性表面に面する第2の基板上に提供される。いくつかの実施形態では、そのようなセンサ電極は、少なくとも2つのセンサ電極のうちの少なくとも1つのセットに配設され、各セットのセンサ電極は、液滴システム中のそれぞれの液滴に電気的接続を行うように構成される。いくつかの実施形態では、これは、液滴への電気的接続を行うための便利で信頼できる方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の基板は、絶縁体層の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされ得る。その場合、エレクトロウェッティングデバイスは、疎水性層のさらなる疎水性表面および絶縁体層の疎水性表面上に配置された流体媒体および液滴を受容するように配設され得る。このようにして、いくつかの実施形態では、液滴は、2つの基板の間に挟まれ、これは液滴の形状を制約する。いくつかの実施形態では、これは、作動電極に印加された作動信号による液滴の制御の程度を改善する。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2の基板が疎水性材料でコーティングされる場合、次いで、第2の基板をコーティングする疎水性材料は、センサ電極の少なくとも一部を露出させる開口を有し得る。いくつかの実施形態では、これは、センサ電極と液滴との間の電気的接続を改善する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2の基板は、例えば、液滴を操作するために作動信号が作動電極に印加される間に基準信号を受信するための少なくとも1つのさらなる電極をさらに支持する。
【0039】
いくつかの実施形態では、センサ電極およびさらなる電極は、提供される場合、第1の基板に面する第2の基板の表面上に堆積され得る。その場合、さらなる電極は、提供される場合、センサ電極の周囲に延在し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、作動電極に接続され、受容された液滴を操作するために作動電極に作動信号を印加するように構成された制御システムをさらに備え得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、制御システムは、作動電極に作動信号を印加しながら、センサ電極および/または提供されるさらなる電極に基準信号を印加するように構成され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、制御システムは、2つの液滴間の界面において液滴界面を形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、センサ電極に接続され、かつ、例えば、それらの間の液滴界面を形成するそれぞれの液滴に電気的に接続されるセンサ電極間でインピーダンス測定値を含む電気的測定値を取得するように構成された、センサシステムをさらに備え得る。いくつかの実施形態では、そのような電気的測定値は、液滴システム中の2つの液滴間の液滴界面にわたって取得され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、膜貫通細孔が内部に挿入された両親媒性分子の膜を含む液滴界面にわたってそれぞれの液滴間で接触するそれぞれのセンサ電極間で電気的測定値、例えば、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値および/または膜貫通細孔と相互作用する分析物に依存する電気的測定値を取得するように構成され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、膜貫通細孔と相互作用する分析物を分析するために電気的測定値を処理するように構成された分析システムをさらに備え得る。例えば、分析物がポリマーユニットを含むポリマーであるいくつかの実施形態では、分析システムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。
【0046】
本発明の第3の態様は、液滴界面で実験を実行するためのエレクトロウェッティングデバイスの使用に関係する。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、液滴界面で実験を実行するための装置であって、装置が、作動電極のアレイと、作動電極を覆い、かつ最も外側の疎水性表面を有する絶縁体層と、を備えるエレクトロウェッティングデバイスであって、疎水性表面上に配置された流体媒体および流体媒体中の液体を含む液滴を受容するように配設される、エレクトロウェッティングデバイスと、受容された液滴を操作するために選択された作動電極に作動信号を印加するように、かつ、液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように構成された制御システムと、液滴界面にわたって形成されたシステムにおいて、液滴間の電気的測定値を取得するように構成されたセンサシステムと、を備える、装置が提供される。
【0048】
いくつかの実施形態では、そのような装置は、液滴界面で実験を実行するのに好適である。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置は、液滴界面が形成され得るエレクトロウェッティングデバイスを含む。いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、作動電極のアレイおよび作動電極を覆い、かつ最も外側の疎水性表面を有する絶縁体層を備える。いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、疎水性表面上に配置された流体媒体および流体媒体中に液体を含む液滴を受容することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、装置は、受容された液滴を操作するために選択された作動電極に作動信号を印加するように、かつ、液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように構成された制御システムをさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、制御システムの使用により、液滴界面をエレクトロウェッティングデバイス中に形成することが可能になる。
【0051】
いくつかの実施形態では、装置は、液滴界面にわたって形成されたシステムでの液滴間の電気的測定値を取得するように構成されたセンサシステムをさらに含み、それにより形成された液滴界面で実験を実行することが可能になる。
【0052】
いくつかの実施形態では、液滴界面の形成後、様々なタイプの電気的測定値が、液滴界面にわたって液滴間で取得され得る。例えば、いくつかの実施形態では、電気的測定値は、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値であってもよく、かつ/または液滴間に電位差を適用しながら取得されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、膜貫通細孔と相互作用する分析物を分析するために電気的測定値を処理するように構成された分析システムをさらに備え得る。例えば、分析物がポリマーユニットを含むポリマーであるいくつかの実施形態では、分析システムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。
【0054】
有利には、いくつかの実施形態では、制御システムは、センサシステムによって取得された電気的測定値に応答して、少なくとも1つの形成された液滴システムを変更するように配設され得る。いくつかの実施形態では、センサシステムからのフィードバックに基づいて形成された液滴システムを変更する装置の能力は、装置が適応的に液滴界面で実験を実行することを可能にするので、有意な利点を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、制御システムが応答するセンサシステムの出力は、電気的測定値自体を含み得る。いくつかの実施形態では、これは、測定される電気特性に基づいて実行される実験の第1のタイプの制御を提供する。電気的特性は、液滴界面の形成およびそこで発生する反応などの関連プロセスの基本であるため、いくつかの実施形態では、この第1のタイプの制御により、これらのプロセスを考慮し、適応的に変更することを可能にする。
【0056】
あるいは、いくつかの実施形態では、センサシステムは、電気的測定値を処理するように構成された分析システムを備え、センサシステムの該出力は、分析システムの出力を含む。いくつかの実施形態では、これは、分析に基づいて実行される実験の第2のタイプの制御を提供する。そのような分析により、例えば、分析される分析物に関するより高いレベルの情報を得ることができるので、この第2のタイプの制御は、いくつかの実施形態では、分析の結果に基づいて強力な実験的適合を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、実行され得る制御のタイプは広範囲であり、それによって強力な実験装置を提供する。いくつかの非限定的な例は、以下の通りである。
【0058】
いくつかの実施形態では、形成された液滴システムは、システム中の液滴界面を分離することによって変更され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、形成された液滴システムは、新しい液滴を移動させて、液滴システム中の現在の液滴と接触させ、新しい液滴と現在の液滴との間に液滴界面を形成することによって変更され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、形成された液滴システムは、新しい液滴を移動させて、液滴システム中の現在の液滴と接触させ、新しい液滴と現在の液滴とを融合させることによって変更され得る。その場合、新しい液滴は、液滴の液体と流体媒体との間の界面において両親媒性分子を含まない場合がある。
【0061】
有利には、いくつかの実施形態では、制御システムは、複数の液滴システムを並列に形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように配設され得る。いくつかの実施形態では、これにより、装置は、複数のシステム上で互いに並行して実験を実行することが可能になり、それにより、装置の実験スループットが増加する。
【0062】
いくつかの実施形態では、装置は、流体媒体中のエレクトロウェッティングデバイスの疎水性表面上に配置された液滴を形成するように構成された液滴調製システムをさらに含み得る。この場合、制御システムは、液滴調製システムを制御して液滴を形成するように構成され得る。いくつかの実施形態では、これは、装置が適正な試薬を含有する液滴を実験目的で形成することを可能にするので、装置の実験力を増大させる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の第1~第3の態様は、例えば同じデバイスまたは装置中で一緒に実装され得る。したがって、本発明の第1~第3の態様の好ましい特徴は、そのいくつかは、以下の従属請求項で定義されており、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0064】
第4の態様によれば、本発明は、サンプルを有する液滴を受容するための、かつ液滴界面を使用してサンプルに対して実験を実行するために該サンプルを溶解するための装置であって、装置が、作動電極のアレイおよび作動電極を覆い、かつ最も外側の疎水性表面を有する絶縁体層を備えるエレクトロウェッティングデバイスであって、疎水性表面上に配置された流体媒体および流体媒体中の液体を含む液滴を受容するように配設される、エレクトロウェッティングデバイスと、受容された液滴を操作するために選択された作動電極に作動信号を印加するように、かつ、液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように構成された制御システムと、液滴内の細胞を溶解するために溶解信号を液滴に印加するように構成された、少なくとも2つの溶解電極(例えば、対、液滴の下)に接続可能な溶解器であって、溶解信号が、制御システムによって制御される、溶解器と、液滴界面にわたって形成された液滴システムにおいて、液滴間の電気的測定値を取得するように構成されたセンサシステムと、を備える、装置に属する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの溶解電極は、液滴が配置される一対の電極であり得る。いくつかの実施形態では、溶解信号は、液滴内の細胞を破壊する電場を生成する。例えば、いくつかの実施形態では、溶解信号は、信号が印加される電極の上に位置する液滴内の細胞を破壊することができる電場を生成することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの溶解電極(例えば、対)は、測定電極であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの溶解電極(例えば、対)は、作動電極であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、アレイ中の作動電極は、個別に制御可能であり得る。いくつかの実施形態では、制御システムは、アレイ中の任意の2つの作動電極の間または上に位置する液滴を介して溶解信号を通過させるように構成され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、アレイ中の少なくとも2つの作動電極は、溶解信号を提供するように構成された溶解電極として動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、溶解電極は、アレイ中の他の電極から機械的および/または電気的に隔離することができる。いくつかの実施形態では、電極のアレイは、溶解電極間でサンプルを有する液滴を操るように構成することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、2つの溶解電極は、作動電極のアレイに隣接するまたはその内部の溶解ゾーンにおいて構成することができ、該溶解ゾーンは、作動電極のアレイから隔離することができ、作動電極のアレイは、溶解ゾーン間でサンプルを有する液滴を操るように構成することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、制御システムは、液滴内の細胞を溶解するために溶解信号が液滴に印加されている期間の間、溶解電極として動作する2つ以上の電極から作動電極のアレイを非活性化および/または隔離するように構成することができる。いくつかの実施形態では、疎水性表面上に形成された任意の液滴が破裂される前に、制御システムが、期間の間、作動電極機能および/もしくは感知機能を隔離し、アレイを再接続するか、または再びそれをオンに切り替えることができ、したがって、デバイス上の液滴の構成が、隔離が発生する前のそれらの形状または形態を維持するか、またはそれらに戻る。
【0070】
いくつかの実施形態では、制御システムが電極のアレイを隔離する時間の長さと、溶解信号が液滴に印加可能である時間の長さとの間の比は、約20:1~約2:1であり得、
または約15:1~約5:1であり得、
または約12:1~約8:1であり得る。いくつかの実施形態では、溶解信号は、制御システムが電極のアレイに接続された作動および感知機能を隔離またはオフにする期間の途中に溶解電極に印加され得る。いくつかの実施形態では、短パルスは、ITO電極、疎水性層への損傷を制限するか、または水電解によって作製される気泡を抑制することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、制御システムは、約5ms~約100msの期間の間、電極のアレイを隔離またはオフにすることができ、溶解信号が印加される時間の長さは、約1ms~約50msであり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、溶解信号のピーク電圧は、約100ボルト(例えば、100V DC)であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、溶解信号は、直流電圧であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、デバイスは、絶縁体層の疎水性表面に面し、少なくとも1つの溶解電極を支持する第2の基板を有することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、装置は、分析されるサンプルを有する液滴を受容することと、内部でコールを破壊するために、該サンプルを溶解するための溶解電極へ液滴を操ることと、溶解した液滴の少なくとも一部分を測定電極へ操ることと、溶解した液滴に隣接する第2の液滴を移動させて、液滴界面二重層を形成することと、液滴界面を使用してサンプルの測定を実行することと、を行うように構成することができる。
【0076】
溶解に続いて、装置は、いくつかの実施形態では、液滴界面二重層を作製し、その後の実験前に、調製のために溶解サンプルを移動および/または混合することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、液滴を溶解電極へ操った後、装置は、内容物のグループが、内部の細胞を破壊するために溶解するために配設されるように、誘電泳動を使用して、グループ中の液滴の内容物を照合するようにさらに構成することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、装置は、溶解電極間に誘電泳動場を適用することができる。いくつかの実施形態では、制御システムは、センサシステムの出力に応答して、少なくとも1つの形成された液滴システムを変更するように配設することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、センサシステムの出力は、センサシステムによって取得された電気的測定値を含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、電気的測定値を処理するように構成された分析システムをさらに備えることができ、センサシステムの該出力は、分析システムの出力を含むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、制御システムは、システム中の液滴界面を分離することによって、形成された液滴システムを変更するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、制御システムは、新しい液滴を液滴システム中の現在の液滴と接触させるように移動させ、新しい液滴と現在の液滴との間に液滴界面を形成することによって、形成された液滴システムを変更するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、制御システムは、新しい液滴を液滴システム中の現在の液滴と接触させるように移動させ、新しい液滴と現在の液滴とを融合することによって、形成された液滴システムを変更するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、新しい液滴は、液滴の液体と流体媒体との間の界面において両親媒性分子を含まない。
【0085】
いくつかの実施形態では、制御システムは、複数の液滴システムを並列に形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、制御システムは、本明細書に記載の方法を使用して液滴間に1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、電気的測定値は、インピーダンス測定値を含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、下限から上限までの周波数範囲で電気的測定値を取得するように構成することができ、任意の組み合わせで、下限は、1Hz、10Hz、または100Hzであり、上限は、10MHz、100KHz、または10KHzである。
【0089】
いくつかの実施形態では、電気的測定値は、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、センサ電極のそれぞれの対の間に電位差を適用しながら、電気的測定値を取得するように配設することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、電気的測定値を処理するように構成された分析システムをさらに備えることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、分析システムは、電気的測定値を処理して、両親媒性分子の膜を含む形成された液滴界面に挿入された膜貫通細孔と相互作用する分析物を分析するように構成され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、分析物は、ポリマーユニットを含むポリマーであり得、センサシステムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、装置は、流体媒体中のエレクトロウェッティングデバイスの疎水性表面上に配置された液滴を形成するように構成された液滴調製システムをさらに備え、制御システムは、液滴調製システムを制御して、液滴を形成するように構成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、絶縁体層は、該疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされた電気絶縁材料の層を含むことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、装置は、絶縁体層の疎水性表面に面する第2の基板をさらに備えることができ、第2の基板が、絶縁体層の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされ、液滴が、疎水性層のさらなる疎水性表面および絶縁体層の疎水性表面上に配置される。
【0097】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、第2の基板上に支持され、液滴との電気的接続を行うセンサ電極を備えることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、制御システムは、作動電極に作動信号を印加しながら、センサ電極に基準信号を印加するように配設することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、EWODデバイスは、さらなる電極をさらに備えることができ、制御システムは、作動電極に作動信号を印加しながら、さらなる電極に基準信号を印加するように配設される。
【0100】
いくつかの実施形態では、EWODデバイスは、作動電極に接続されたアクティブマトリクス配列をさらに備えることができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、EWODデバイスは、表面において両親媒性分子を含み、かつ膜貫通細孔を含有する液滴を受容するように配設することができ、制御システムは、形成された液滴界面に膜貫通細孔が挿入されるように、液滴間に両親媒性分子の膜を含む1つ以上の液滴界面を有する少なくとも1つの液滴システムを形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように構成することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、EWODデバイスは、膜貫通細孔と相互作用することが可能である分析物を含有する液滴を受容するように配設することができ、センサシステムは、分析物と膜貫通細孔との相互作用に依存する測定値を取得するように構成される。
【0103】
いくつかの実施形態では、装置は、エレクトロウェッティングデバイスの疎水性表面上に配置された流体媒体と流体媒体中に液体を含む液滴とを組み合わせて使用することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、液体および流体媒体の一方は、極性であり、液体および流体媒体の他方は、無極性であり、液滴は、液滴の液体と流体媒体との間の界面において両親媒性分子をさらに含み、液滴界面は、両親媒性分子の膜を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、液体は、極性であり得、流体媒体は、無極性である。
【0106】
いくつかの実施形態では、流体媒体は、液体媒体であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、液滴のうちの少なくとも1つは、両親媒性分子の膜に挿入することが可能である膜貫通細孔を含むことができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、液滴のうちの少なくとも1つは、膜貫通細孔と相互作用することが可能である分析物を含むことができる。
【0109】
第5の態様によれば、前述および特許請求されたような装置で分析物を調製するための方法であって、方法が、関心対象の細胞を含有する第1の液滴を少なくとも2つの作動電極と接触させることであって、該電極が、溶解信号を第1の液滴に印加して該細胞を溶解するために溶解器に接続可能である、接触させることと、溶解器を第1の液滴と接触している電極対に接続して、細胞を溶解し、関心対象の分析物を細胞から放出することと、を含む、方法が存在する。
【0110】
第6の態様によれば、前述および特許請求されたような装置で分析物を測定するための方法であって、方法が、第2の液滴を第1の液滴と接触させて液滴対を形成することをさらに含み、第1の液滴および第2の液滴が、それぞれの測定電極と接触する、方法が存在する。
【0111】
いくつかの実施形態では、方法は、溶解前に誘電泳動を使用して液滴内の細胞をグループ化することをさらに含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、誘電泳動は、溶解のための溶解電極で細胞をグループ化するために、溶解電極間に適用することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞の溶解および分析物の液滴への放出に続いて、さらなる誘電泳動場を液滴に印加して、分析物を溶解電極に保持することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の液滴を分割して、第1のサブ液滴および第2のサブ液滴を形成し、第1の液滴対を形成することと、第2の液滴を第1のサブ液滴と接触させて、第2の液滴対を形成し、第1のサブ液滴および第2の液滴をそれぞれの測定電極と接触させることと、第3の液滴を第2のサブ液滴と接触させて、第2の液滴対を形成し、第2のサブ液滴および第3の第2の液滴をそれぞれの測定電極と接触させることと、をさらに含むことができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、方法は、液滴対の間に流体経路を提供するために、液滴対のいずれかの間の界面においてイオンチャネルを提供することをさらに含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、方法は、分析物の特性を測定するか、または分析物を検出するために、センサシステムを使用して、液滴対のいずれかの間で電気的測定値を取得するステップをさらに含むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、関心対象の分析物は、ポリヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、イオンチャネルは、ナノ細孔であり得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔を通るポリヌクレオチドのトランスロケーション中に電気的測定値を取得することができる。ポリヌクレオチドの特徴的な配列は、いくつかの実施形態では、電気的測定値から決定することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、溶解細胞からの分析物の放出に続いて、分析物は、特性の検出または測定用にそれを最適化するために、サンプル調製に供され得る。いくつかの実施形態では、サンプル調製は、分析物を1つ以上のサンプル調製試薬と接触させることによって実施することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、1つ以上のサンプル調製試薬は、1つ以上のさらなる液滴中に提供することができる。いくつかの実施形態では、細胞の溶解に続いて、第1の液滴を移動させて測定電極に接触させることができる。
【0120】
本発明の第1~第6の態様は、例えば同じデバイスまたは装置において一緒に実装され得る。したがって、本発明の第1~第3の態様の好ましい特徴は、そのいくつかは、以下の従属請求項で定義されており、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
より良好な理解を可能にするために、本発明の実施形態は、添付の図面を参照して非限定的な例としてここで説明される。
【0122】
図1】特定の実施形態に従って、AM-EWODデバイスを含む装置の概略図である。
図2】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイスの概略斜視図である。
図3】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイスの一部分の断面側面図である。
図4A】特定の実施形態に従って、それぞれ液体液滴が存在する場合と存在しない場合の、作動電極に提示される電気負荷の回路表現の図である。
図4B】特定の実施形態に従って、それぞれ液体液滴が存在する場合と存在しない場合の、作動電極に提示される電気負荷の回路表現の図である。
図5】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイス中の薄膜電子機器の平面図である。
図6】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイスのアレイ素子回路の図である。
図7】特定の実施形態に従って、AM-EWODデバイスの第2の基板上に形成された導電性材料の層の平面図である。
図8】特定の実施形態に従って、液滴間に液滴界面を形成する方法の連続する段階中のAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイ上の一対の液滴の平面図である。
図9】特定の実施形態に従って、液滴間に液滴界面を形成する方法の連続する段階中のAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイ上の一対の液滴の平面図である。
図10】特定の実施形態に従って、液滴間に液滴界面を形成する方法の連続する段階中のAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイ上の一対の液滴の平面図である。
図11】特定の実施形態に従って、液滴間に液滴界面を形成する方法の連続する段階中のAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイ上の一対の液滴の平面図である。
図12】特定の実施形態に従って、液滴間に液滴界面を形成する方法の連続する段階中のAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイ上の一対の液滴の平面図である。
図13】特定の実施形態に従って、3つの液滴の2つのシステムを形成するそれぞれの方式の平面図である。
図14】特定の実施形態に従って、3つの液滴の2つのシステムを形成するそれぞれの方式の平面図である。
図15】特定の実施形態に従った、液滴のそれぞれのシステムの平面図である。
図16】特定の実施形態に従った、液滴のそれぞれのシステムの平面図である。
図17A】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイス中の作動電極のアレイの2つの画像である。
図17B】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイス中の作動電極のアレイの2つの画像である。
図18】特定の実施形態に従って、AM-EWODデバイス中の導電性材料のパターン化された層の図である。
図19】特定の実施形態に従って、2つの液滴の3つのシステムが形成されているAM-EWODデバイス中の作動電極のアレイの画像である。
図20】特定の実施形態に従って、間に2つの液滴界面が形成される前後の3つの液滴の2つのセットの画像である。
図21】特定の実施形態に従って、AM-EWODデバイス中の液滴界面の形成、分離、および再形成中の電流および電圧の電気的測定値のプロットである。
図22】特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイス中の2つの液滴のシステムの画像である。
図23】特定の実施形態に従った、図22の液滴のシステムで得られた電流信号のトレースである。
図24】特定の実施形態に従って、DNAがAM-EWODデバイス中の2つの液滴のシステム中の細孔を通ってトランスロケートする実験中の電流および電圧の電気的測定値のプロットである。
図25】特定の実施形態に従った、6つのトランスロケーション事象についての電流の電気的測定値のプロットである。
図26】特定の実施形態に従った、溶解回路をさらに含む図6の代替構成である。
図27】特定の実施形態に従った、デバイスの異なるゾーンを示す概略図である。
図28】特定の実施形態に従って、デバイスがサンプルを処理するために行うことができるステップを示す図である。
図29A】特定の実施形態に従って、細胞が分配され、次いで溶解されるアレイの2つの電極をそれぞれ示す図である。
図29B】特定の実施形態に従って、細胞が分配され、次いで溶解されるアレイの2つの電極をそれぞれ示す図である。
図30A図30Cに示されるように、図30Aは、特定の実施形態に従って、EWOD上に分配された細胞を示す図であり、図30Bにおいて、特定の実施形態に従って、溶解される前に、並べられた細胞を示す図である。
図30B図30Cに示されるように、図30Aは、特定の実施形態に従って、EWOD上に分配された細胞を示す図であり、図30Bにおいて、特定の実施形態に従って、溶解される前に、並べられた細胞を示す図である。
図30C図30Cに示されるように、図30Aは、特定の実施形態に従って、EWOD上に分配された細胞を示す図であり、図30Bにおいて、特定の実施形態に従って、溶解される前に、並べられた細胞を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
装置全体
図1は、特定の実施形態に従って、液滴界面を形成し、その上で実験を実行するための装置30を示す。いくつかの実施形態では、装置30は、リーダー32およびリーダー32に挿入され得るカートリッジ33を含む。いくつかの実施形態では、カートリッジ33は、エレクトロウェッティングデバイスの例であるAM-EWODデバイス34を含有する。AM-EWODデバイス34は、特定の実施形態に従って図2に示され、以下でさらに説明される。
【0124】
いくつかの実施形態では、電気的連通を提供する様々な他の方法(例えば、無線接続)が使用され得るが、使用中に、例えば、接続ワイヤ42のケーブルによって、リーダー32およびカートリッジ33が一緒に電気的に接続され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、リーダー32は、カートリッジ33が挿入されたときにAM-EWODデバイス34中の流体媒体60中に液体を含む液滴1を形成するように構成された液滴調製システム35も備える。液滴1および流体媒体60に好適な材料特性は、以下で考察される。いくつかの実施形態では、液滴調製システム35はまた、測定される分析物を調製するためのサンプル調製を運ぶことができ得、あるいはサンプル調製は、AM-EWODデバイス34中で実施され得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、ライブラリー調製またはシーケンシングのために区画化され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、液滴調製システム35は、1つ以上のリザーバからAM-EWODデバイス34に液体を入力し、それによってAM-EWODデバイス34内に液滴を生成する機能を実行する流体入力ポートを備え得る。いくつかの実施形態では、液滴調製システム35は、従来の流体工学要素、例えば、エレクトロウェッティングによって液体の流れを制御することによって形成され得る。いくつかの実施形態では、液滴調製システム35は、いくつかの実施形態では、作製された液滴1の体積を正確に制御して、正確に2~3%にする能力を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、液滴は、1nL~10μLのそれぞれの体積を有し得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、装置30は、リーダー32に提供される制御システム37をさらに含む。この例では、制御システム37は、システムに関連する任意のアプリケーションソフトウェア、任意のデータを記憶し得る制御電子機器38および記憶デバイス40を含む。いくつかの実施形態では、制御電子機器38は、CPU、マイクロコントローラ、またはマイクロプロセッサなどの、AM-EWODデバイス34の制御に関連する様々な制御動作を実施するように構成される好適な回路および/または処理デバイスを含み得る。
【0128】
それらの機能の中で、本発明の特徴を実装するために、いくつかの実施形態では、制御電子機器38は、記憶デバイス40内の制御アプリケーションとして具現化されるプログラムコードを実行し得る全体制御システム37の一部を備え得る。いくつかの実施形態では、記憶デバイス40は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、または他の好適な媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体として構成され得る。また、コードは、例示的な実施形態に従って制御電子機器38によって実行され得るが、そのような制御システム機能は、専用ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを介して実施することもできる。
【0129】
以下でより詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴調製システム35の制御を含む装置の様々な要素の制御を実行して、液滴1を形成し、液滴を操作するための作動信号の印加を制御するように構成される。特に、いくつかの実施形態では、制御システム37は、2つ以上の液滴1の1つ以上のシステムを形成するように構成される。いくつかの実施形態では、液滴1のシステムまたは各システム内で、液滴1のそれぞれの対の間に1つ以上の液滴界面が形成される。いくつかの実施形態では、制御システム37はまた、ユーザーにグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)も提供し得、これは、ユーザーが、液滴動作(例えば、液滴を移動させる)、アッセイ動作(例えば、アッセイを実行する)、およびユーザーに対するそのような動作の結果を表示などのプログラムコマンドを入力することを提供する。以下に記載されるように、いくつかの実施形態では、制御システム37は、細胞を溶解するために調製システム35をさらに管理することができる。
【0130】
エレクトロウェッティングデバイス
図2および3は、特定の実施形態に従って、AM-EWODデバイス34を示す。
【0131】
図2に見られるように、AM-EWODデバイス34は、いくつかの実施形態では、第1の基板44上に配置された薄膜電子機器46を備えた第1の基板44(図2および3の最下部の基板)を有する。いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)のアレイ50は、薄膜電子機器46の上にある第1の基板44によって支持される。いくつかの実施形態では、薄膜電子機器46は、電極48(例えば、作動電極)を駆動するように配設される。
【0132】
いくつかの実施形態では、電極48のアレイ50(例えば、作動電極)は、X×Yの長方形アレイであり得、XおよびYは、任意の整数である。いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)もしくは別の透明金属酸化物、または金属、または任意の他の導電性材料から形成され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、AM-EWODデバイス34は、第1の基板を有し、スペーサ56によって第1の基板44から分離された第2の基板54(図2および図3の最上部の基板である)も含む。以下でさらに説明するように、いくつかの実施形態では、液滴1は、第1の基板44と第2の基板54との間に配置される。単一の液滴が図2および3に示されているが、いくつかの実施形態では、多数の液滴1が存在する。
【0134】
AM-EWODデバイス34の層状構造は、特定の実施形態に従って、第1の基板44によって支持された2つの電極48(例えば、作動電極)を含むその一部分を示す図3で最もよく見られる。いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)は、導電性材料のパターン化された層から形成され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、疎水性材料64でコーティングされた電気絶縁材料の層62を含む絶縁体層61は、電極48(例えば、作動電極)を覆って第1の基板44上に配置される。いくつかの実施形態では、疎水性材料64は、絶縁体層61の最も外側の疎水性表面を形成する。
【0136】
いくつかの実施形態では、第2の基板54は、絶縁体層61の疎水性表面に面している。いくつかの実施形態では、第2の基板54は、絶縁体層61に面する第2の基板54の表面上に堆積される導電性材料の層58を支持する。いくつかの実施形態では、導電性材料の層58は、本明細書でより詳細に説明されるように、より多くの電極を形成するようにパターン化される。
【0137】
いくつかの実施形態では、第2の基板54は、導電性材料の層58を覆い、かつ絶縁体層61の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料68によってコーティングされる。
【0138】
いくつかの実施形態では、疎水性材料64および68は、任意の好適な材料(同じであっても異なっていてもよい)、例えばフルオロポリマーによって形成され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、液滴1は、流体媒体60内に配置されたAM-EWODデバイス34に受容される。いくつかの実施形態では、液滴1および流体媒体60は、絶縁体層61の疎水性表面上および第2の基板54をコーティングする疎水性材料68のさらなる疎水性表面上に配置される。このようにして、いくつかの実施形態では、液滴1は、第1の基板44と第2の基板54との間に挟まれ、これは液滴1の形状を制約する。いくつかの実施形態では、これは、以下に説明するように電極48(例えば、作動電極)に印加された作動信号による液滴1の制御の程度を改善する。
【0140】
いくつかの実施形態では、液滴1は、絶縁体層61の疎水性表面との接触角66を有する。接触角66は、(1)疎水性表面から液滴1(ΓSL)界面の液体、(2)液滴1の液体から周囲の流体媒体60(ΓLG)界面、および(3)疎水性表面から周囲の流体媒体60(ΓSG)界面の表面張力成分の釣り合いによって決定される。無電圧は、接触角66を満たすヤングの法則を適用しない場合、cosθ=((ΓSG-ΓSL)/ΓLG)で与えられるサイズのθである。
【0141】
したがって、いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)は、作動信号が電極48(例えば、作動電極)に印加されるとき、液滴1をエレクトロウェッティングすることが可能である。いくつかの実施形態では、作動信号は、絶縁層61の疎水性表面の疎水性を効果的に制御する電気力を作製し、それによって液滴1を通電する。いくつかの実施形態では、そのような通電状態において、液滴1は、液滴1がより低いエネルギー状態、すなわち、作動信号が液滴1に提供するエネルギーが少ないかまたは全くない状態にあるときと比較して変更される形状を有する。
【0142】
変更される形状へのそのような言及は、AM-EWODデバイス34の平面における形状、すなわち、絶縁体層61の疎水性表面に平行な形状を指す場合がある。いくつかの実施形態では、作動信号によって供給されるエネルギーは、液滴1の3次元形状を変更するが、形状は、電極48(例えば、作動電極)が配設される方向であるAM-EWODデバイス34の平面で最も大きく影響を受ける。
【0143】
同様に、より低いエネルギー状態にあるときと比較して変更されている形状への言及は、液滴1の接触線の形状を指す場合がある。この文脈において、「接触線」という用語は、液滴1と流体媒体60との間の界面が電極48(例えば、作動電極)の上の絶縁層61の疎水性表面に接触する線に沿ったその通常の意味を有する。
【0144】
いくつかの実施形態では、選択された電極48(例えば、作動電極)に印加された作動信号のパターンを選択的に制御することにより、液滴1を操作し、第1の基板44と第2の基板54との間の側面で移動させ得る。一般的に言えば、この方法での液滴1のそのような操作は、いくつかの実施形態では、EWODデバイスについて既知である技術を適用し得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、作動信号は、エレクトロウェッティング液滴1に好適な任意の形態を取り得る。いくつかの実施形態では、作動信号は、AC作動信号であり得るが、それらはまた、基準電圧に対するDC電圧電位であり得る。いくつかの実施形態では、作動信号を印加している間、以下でさらに説明するように、基準信号は、AM-EWODデバイスの他の場所で基準電極59に印加される。
【0146】
いくつかの実施形態では、基準信号は、任意の好適な形態を取り得る。一例では、基準信号は、固定基準電圧であり得る。作動信号がAC作動信号である別の例では、基準信号は、AC作動信号と逆位相であるAC基準信号であり得る。この例では、電極48(例えば、作動電極)と基準電極59との間の電位差の大きさが増加し、例えば、AC作動信号およびAC基準信号が、固定基準電圧である基準信号と比較して等しい大きさである場合、2倍になる。
【0147】
図4Aは、特定の実施形態に従って、液滴1が存在する場合の電極48(例えば、作動電極)と基準電極59との間の電気負荷70Aの簡略化された回路図を示す。いくつかの実施形態では、液滴1は、抵抗器およびコンデンサとして並列にモデル化することができる。いくつかの実施形態では、液滴1の抵抗は、比較的低く(例えば、液滴がイオンを含有する場合)、液滴の静電容量は、比較的高い(例えば、極性液体の比誘電率が比較的高いため、例えば、液滴1が水性の場合は約80)。多くの状況では、液滴抵抗は、比較的小さく、そのため、エレクトロウェッティングについての関心対象の周波数で、液滴1は電気的短絡として効果的に機能し得る。いくつかの実施形態では、疎水性材料64および68は、コンデンサとしてモデル化され得る電気的特性を有し、層62の絶縁材料はまた、コンデンサとしてモデル化され得る。いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)と基準電極59との間の全体的なインピーダンスは、その値が典型的には、層62の絶縁材料の寄与ならびに疎水性材料64および68の寄与によって支配されるコンデンサによって概算され得、典型的な層の厚さおよび材料の場合、ピコファラッドオーダーの値になり得る。
【0148】
図4Bは、特定の実施形態に従って、液滴1が存在しない場合の、電極48(例えば、作動電極)と基準電極59との間の電気負荷70Bの回路図を示す。この場合、液滴成分は、上部基板と第1の基板との間の空間を占める流体媒体60(例えば、非極性流体)の静電容量を表すコンデンサによって置き換えられる。この場合、電極48(例えば、作動電極)と基準電極59との間の全体的なインピーダンスは、値が非極性流体の静電容量によって支配され、典型的には、フェムト-ファラッドのオーダーの小さいコンデンサによって概算され得る。
【0149】
電極48(例えば、作動電極)を駆動および感知する目的で、いくつかの実施形態では、電気負荷70Aおよび70Bは、全体として実質的にコンデンサとして機能し、その値は、所与の電極48(例えば、作動電極)に液滴1が存在するか否かに依存する。いくつかの実施形態では、液滴が存在する場合、静電容量は、比較的高く(典型的には、ピコ-ファラッドのオーダー)、一方、液滴1が存在しない場合、静電容量は低い(典型的には、フェムト-ファラッドのオーダー)。いくつかの実施形態では、液滴が所与の電極48を部分的に覆う場合、そのとき、静電容量は、液滴1による電極48(例えば、作動電極)の被覆範囲をほぼ表し得る。
【0150】
図5は、特定の実施形態に従った、AM-EWODデバイス34における薄膜電子機器46の配設を示す。いくつかの実施形態では、薄膜電子機器46は、第1の基板44上にあり、対応する電極48(例えば、作動電極)の電極電位を制御するためのアレイ素子回路72をそれぞれ備えるアレイ素子51のアクティブマトリクス配列を備える。いくつかの実施形態では、集積行ドライバ74および列ドライバ76の回路はまた、アレイ素子回路72に制御信号を供給するために、薄膜電子機器46に実装される。このようにして、いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72は、制御システム37の制御下で、電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加するために電極48(例えば、作動電極)を選択的に作動させる機能を実行し得る。したがって、いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴操作動作を実行するために必要な電圧およびタイミング信号など、電極48(例えば、作動電極)に印加された作動信号を制御する。
【0151】
図6は、特定の実施形態に従って、各アレイ素子51に存在するアレイ素子回路72の配設を示す。いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72は、入力ENABLE、DATA、およびACTUATE、ならびに電極48(例えば、作動電極)に接続される出力を有する作動回路88を含有する。
【0152】
いくつかの実施形態では、シリアルインターフェース82はまた、シリアル入力データストリームを処理し、アレイ50の電極48(例えば、作動電極)への必要な電圧のプログラミングを促進するために提供され得る。いくつかの実施形態では、電圧供給インターフェース84は、対応する供給電圧、第2の基板駆動電圧、および他の必要な電圧入力を提供する。いくつかの実施形態では、第1の基板44と外部制御電子機器、電源、および任意の他の部品との間のいくつかの接続ワイヤ86は、大きなアレイサイズであっても比較的少なくすることができる。任意選択で、シリアルデータ入力を部分的に並列化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、2本のデータ入力線が使用される場合、1本目は、列1からX/2についてのデータを供給し、2本目は、列ドライバ回路76にわずかな変更を加えて、列(1+X/2)からMについてのデータを供給し得る。このようにして、いくつかの実施形態では、アレイ素子51にデータをプログラムすることができる速度が増加し、これは、液晶ディスプレイ駆動回路で使用される標準的な技術である。
【0153】
液滴界面感知
図7は、特定の実施形態に従って、導電性材料の層58がパターン化されて、センサ電極100、導電性トラック101、およびしたがって、第2の基板54上に堆積され、それによって支持されるさらなる電極102を形成する方法を示す。
【0154】
いくつかの実施形態では、センサ電極100は、それぞれの液滴1との電気的接続を行うように配設される。いくつかの実施形態では、センサ電極100の提供は、例えば、それらの間に形成された液滴界面にわたって液滴1間の電気的測定値を取得するために、液滴1への電気的接続を行うための便利で信頼できる方法である。対照的に、いくつかの実施形態では、そのようなタイプの電気的接続は、電極48(例えば、作動電極)と液滴1との間に電気絶縁材料の層62を含む絶縁層61が存在するため、電極48(例えば、作動電極)からは不可能である。
【0155】
いくつかの実施形態では、第2の基板54をコーティングする導電性材料の層58を覆う疎水性材料68には、センサ電極100の一部を露出する開口69が提供されるが、より一般的には、開口は、より大きく、センサ電極100全体を露出し得る。いくつかの実施形態では、疎水性材料68の開口69は、センサ電極100と液滴1との間の電気的接続を行うのを助ける。いくつかの実施形態では、流体媒体60および/または液滴1の液体は、開口69に流入し、疎水性材料68よりも低い電気インピーダンスを有し、それにより導電性経路を提供することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、開口69は、電極が非作動化されるか、またはデバイスが非電源化される場合に液滴1を所定の位置に留めるのに役立つ親水性パッチとして作用する追加の利点を有し得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、開口69は、例えばドライエッチングプロセスまたはリフトオフプロセスを用いて、疎水性材料68を選択的に除去することによって作製され得る。
【0158】
しかしながら、いくつかの実施形態では、開口69は、必須ではなく、代わりに、センサ電極100と液滴1との間の電気的接続は、電気的測定値が、依然としてそれを通して取得することができる十分に低いインピーダンス(実数または虚数部分のいずれか)であり得る疎水性材料68を通して行うことができる。その場合、疎水性材料68の厚さおよび材料特性は、それに応じて選定される。
【0159】
いくつかの実施形態では、センサ電極100は、セットで配設され、各セットのセンサ電極100は、液滴1のそれぞれのシステムで液滴界面が間に形成される液滴1との電気的接続を行うようなサイズおよび形状である。いくつかの実施形態では、これは、液滴1のセンサ電極100との接触線によって囲まれた面積と同様のセンサ電極100の面積、および各セット内のセンサ電極100の中心間の距離であり、かつ形成されたシステムでの液滴1の中心間の距離と同様の距離によって達成され得る。いくつかの実施形態では、センサ電極100の各セットは、その液滴システム1中のそれぞれの液滴1に電気的接続を行うために、それぞれの液滴1のシステムと整列され得る。したがって、いくつかの実施形態では、制御システム37は、2つ以上の液滴1の複数のシステムを形成するように構成され得、液滴1の各システムは、センサ電極100のそれぞれのセットと整列される。
【0160】
例証として、図7は、特定の実施形態に従って、2つのセンサ電極100の3つのセットおよびそれぞれのセットのセンサ電極100と整列して形成された2つの液滴1の3つのシステムを示す。しかしながら、いくつかの実施形態では、センサ電極100の任意の数のセットがあり得、セットは、各システムに含まれる液滴1の数に応じて、任意の数のセンサ電極100を含有することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、この構成の結果として、液滴1のシステムを並列に形成し得、センサ電極100のそれぞれのセットを使用して実験を並列に実行し得る。いくつかの実施形態では、例えば2つ以上、最大で数万のオーダーの任意の数の液滴1のシステムが形成され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、導電性トラック101は、センサ電極100に接続され、導電性材料の層58の縁まで延在し、ここで以下でさらに説明する液滴界面センサシステム110への電気的接続が行われる。したがって、いくつかの実施形態では、導電性トラック101は、センサ電極100から液滴界面センサシステム110への電気的接続を提供する。
【0163】
いくつかの実施形態では、さらなる電極102は、センサ電極100および導電性トラック101の周囲に延在する。
【0164】
いくつかの実施形態では、さらなる電極102は、図4Aおよび4Bに示される回路表現において基準電極59として機能し得る。その場合、制御システム37は、さらなる電極102に接続され、電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加しながら、さらなる電極102に基準信号を印加するように配設される。
【0165】
しかしながら、いくつかの実施形態では、さらなる電極102は、必須ではない。いくつかの実施形態では、さらなる電極102が存在しない場合、またはさらなる電極102が存在する場合でさえ、異なる電極(複数可)が基準電極59として機能し得る。一例では、センサ電極100は、基準電極59として機能し得る。
【0166】
別の例では、基準電極59は、例えば、面内基準電極などの別個の要素として、第1の基板44と第2の基板54との間のどこかに提供され得る。任意のそのような例では、制御システム37は、いくつかの実施形態では、基準電極59、例えば、センサ電極100に接続され、電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加しながら、基準電極59に基準信号を印加するように配設される。そのような配列では、いくつかの実施形態では、第1の基板44上の非作動電極48(例えば、作動電極)は、基準として動作し、液滴1は、第2の基板54上の基準電極を必要とせずに移動することができる。
【0167】
いくつかの実施形態では、リーダー32は、センサ電極110に接続され、それらの間に形成される液滴界面にわたってそれぞれの液滴1に電気的に接続されるセンサ電極110間の電気的測定値を取得する測定ユニット111を含む液滴界面センサシステム110をさらに備える。いくつかの実施形態では、測定ユニット111は、作動信号が電極48(例えば、作動電極)に印加されていない間に電気的測定値を取得するように制御される。いくつかの実施形態では、これは、例えば、測定される液滴システムに物理的に影響を与えるもしくは損傷を与えることによって、または測定ユニット111との電気干渉を引き起こすことによって、電気的測定値に影響を与える作動信号のリスクを低減するという利点を有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、薄膜電子機器46の要素は、センサ電極100および測定ユニット111から電気的に隔離されているため、電気的測定値の取得には関与しない。
【0169】
例えば、インピーダンス、電流、または静電容量の測定値など、任意の好適な電気的測定値を取得し得る。可能な構成では、電気的測定値は、電圧を印加し、センサ電極100の一方を通して供給される電流を測定し、他方のセンサ電極を接地することにより取得され得る。したがって、いくつかの実施形態では、液滴界面2の電気インピーダンスの実数部および虚数部を決定し得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、測定ユニット111は、例えば、増幅器配列を含む検出チャネルを含む、液滴界面実験に好適な好適な電子部品によって形成され得る。一例では、測定ユニット111は、パッチクランプ配列を備え得る。別の例では、測定ユニット111は、WO-2011/067559に記載されている信号処理機能と同じ構成を有し得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、電気的測定値は、下限から上限までの周波数範囲で取得され得、任意の組み合わせで、下限は、1Hz、10Hz、または100Hzであり、上限は、10MHz、100KHz、または10KHzである。
【0172】
いくつかの実施形態では、測定ユニット111は、それらの測定値を取得しながら、測定値が取得されるセンサ電極100のそれぞれの対の間に電位差を適用するように配設され得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、測定ユニット111は、制御システム37の制御下でAM-EWODデバイス34中に形成された後、液滴1のシステムのいずれかから電気的測定値を取得するように制御システム37によって制御される。
【0174】
電気的測定値は、例えば、インピーダンス測定値および/または液滴界面にわたるイオン電流の流れの測定値である、任意の好適なタイプであり得る。膜貫通細孔が内部に挿入された両親媒性分子の膜を含む液滴界面にわたって測定値が取得されるいくつかの実施形態では、電気的測定値は、例えば、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン電流の流れの測定値および/または電気的膜貫通細孔と相互作用する分析物に依存する電気的測定値であり得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、測定値は、Soni GV et al.,Rev Sci Instrum.2010 Jan;81(1):014301 and T Gilboa and A Meller,Analyst,2015,140,4733-4747によって開示されるような、光学的または光学的と電気的との組み合わせであり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、液滴界面センサシステム110は、分析物を分析するために、膜貫通細孔と相互作用する分析物に依存する電気的測定値を処理するように構成された分析システム112をさらに備え得る。例えば、分析物がポリマーユニットを含むポリマーである場合、分析システムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、分析システム112は、任意の好適な既知の技術を使用して電気的測定値を処理し得、そのいくつかの例を以下でさらに説明する。
【0177】
いくつかの実施形態では、分析システム112は、測定ユニット111からの信号として供給される電気的測定値を前処理する(1)ハードウェアステージ、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と、(2)ハードウェアステージから供給される信号を処理するためのプロセッサとの適正な組み合わせによって形成され得る。いくつかの実施形態では、プロセッサは、任意の好適な形態の処理デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、プロセッサは、図1に示されるようにリーダー32内に実装されてもよく、記憶デバイス40に記憶され得るソフトウェアを実行してもよい。代替として、いくつかの実施形態では、プロセッサは、リーダー32の外部の処理デバイス、例えば従来のコンピュータ装置によって実装することができる。
【0178】
例として、測定ユニット111および分析システム112は、WO-2011/067559に記載されている信号処理機能と同じ構成を有し得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、液滴界面センサシステム110は、他のタイプの測定システムと組み合わせて、測定値、例えば、作動電極からの静電容量測定値、追加の電極(図示せず)からの測定値、および/または吸光度もしくは発光赤外線、紫外線が含まれるが、これらに限定されない電磁放射を使用した測定値を取得し得、これらの技術は、標識された色素もしくは抗体、および/または蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を採用し得る。
【0180】
液滴感知
いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72はまた、電極48(例えば、作動電極)と電気的に連通する液滴センサ回路90を含有し得る。いくつかの実施形態では、液滴センサ回路90は、各電極48(例えば、作動電極)の場所における液滴1の有無を検出するための感知能力を提供する。このようにして、いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72は、液滴1の操作中にアレイ素子51の場所での液滴1の有無を感知する機能も実行し得る。しかしながら、電極48(例えば、作動電極)と液滴1との間に電気絶縁材料の層62を含む絶縁層61が存在するため、いくつかの実施形態では、液滴界面または液滴界面で発生するプロセスを研究するのに好適な電気的測定値を取得することが困難または不便な場合がある。
【0181】
いくつかの実施形態では、液滴センサ回路90は、インピーダンスセンサ回路を使用する容量感知を都合よく採用してもよい。いくつかの実施形態では、液滴センサ回路90は、例えばUS-8,653,832およびGB-2,533,952に記載されているように、当該技術分野で既知のタイプのインピーダンスセンサ回路を含み得る。ここで記載されているように、いくつかの実施形態では、液滴1は、エレクトロウェッティングによって作動され得、容量性またはインピーダンス感知手段によって感知され得る。いくつかの実施形態では、容量性およびインピーダンス感知は、アナログであり得、すべてのアレイ素子51で同時に、またはほぼ同時に実行され得る。いくつかの実施形態では、そのようなセンサから返された情報を(例えば、リーダー32の記憶デバイス40のアプリケーションソフトウェアで)処理することにより、制御システム37は、AM-EWODデバイスに存在する各液滴1の位置、サイズ、重心、および周囲をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで決定することができる。
【0182】
あるいは、いくつかの実施形態では、そのような感知は、いくつかの他の手段、例えば、光学的または熱的手段によって実行され得る。いくつかの実施形態では、液滴センサ回路90の代替は、エレクトロウェッティングデバイスの分野で既知のように、液滴特性を感知するために使用することができる光学センサなどの外部センサを提供することである。
【0183】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴センサ回路90が液滴1の操作中に感知動作を実行するための制御信号を生成して出力する。いくつかの実施形態では、統合されたセンサ行アドレス指定78および列検出回路80は、各アレイ素子回路72中の液滴センサ回路90のアドレス指定および読み出しのために、薄膜電子機器46に実装される。いくつかの実施形態では、液滴センサ回路90の読み出しは、アレイ50の同じ行におけるアレイ素子51に共通であり得、1つ以上の出力、例えば、アレイ50の同じ列中のすべてのアレイ素子50に共通であり得るOUTも有し得る1つ以上のアドレス指定ライン(例えば、RW)によって制御され得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴センサ回路90の出力を使用して、液滴1を操作するときに電極48(例えば、作動電極)への作動信号の印加のタイミングを制御し得る。
【0185】
液滴界面の形成
いくつかの実施形態では、制御システム37は、AM-EWODデバイス34を制御して、以下のように液滴1の対の間に1つ以上の液滴界面2を有する液滴1のシステムを形成するように構成される。
【0186】
まず、いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴1のそれぞれのシステムの必要に応じて、AM-EWODデバイス34中に液滴1を形成するために液滴調製システム35を制御する。いくつかの実施形態では、液滴1は、実行されている実験に必要とされるように、任意の適正な試薬から調製され得る。好適な試薬を以下に記載する。
【0187】
次に、いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴1のシステムを形成するために、電極48(例えば、作動電極)への作動信号の印加を制御する。
【0188】
液滴が形成されるところから電極48(例えば、作動電極)のアレイ50にわたって、液滴を互いに向かって単に移動させ、接触させることによって、液滴1を操作するために作動信号を単に印加すると考えられてきた。しかしながら、その場合、液滴1は、融合する傾向があり、液滴1の間の液滴界面を維持することは困難である。エレクトロウェッティングは、塩濃度、液滴試薬(特に膜成分)、および液滴サイズなどのサンプル間で変化する可能性のあるいくつかの要因に依存するため、液滴界面2の形成を促進する条件の最適化は困難である。
【0189】
したがって、いくつかの実施形態では、ここで説明するように、2つの段階を採用して異なる方法が実施される。
【0190】
方法の例は、図8~12に示され、液滴が方法中に連続して操作されるときの電極48(例えば、作動電極)のアレイ50上の一対の液滴1の平面図を示している。特に、図8~12は、特定の実施形態に従って、電極48(例えば、作動電極)のアレイ50上の液滴の接触線を示す。図8~12はまた、特定の実施形態に従って、作動信号が印加される選択された電極48(例えば、作動電極)のハッシングによって印加された作動信号のパターン53を示す53。この例は、単に例示のためのものであり、限定的なものではない。いくつかの実施形態では、例えば、液滴1のサイズに対して様々な変化を行ってもよく、作動信号のパターンが作製され得る。また、図8~12は、液滴1の液体が極性であり、流体媒体60が無極性であり、その結果、作動信号が印加される電極48(例えば、作動電極)がエレクトロウェットである例に関することに留意されたい。液滴1の液体が無極性であり、流体媒体60が極性である概念的な代替案では、次いで作動信号のパターンが反転し、その結果、作動信号が印加されない電極48(例えば、作動電極)が、無極性液滴を引き付ける。
【0191】
背景として、いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)への作動信号の印加によってエレクトロウェットではない、液滴1の緩和状態において、液滴1は、最も低い表面エネルギーの形状をとり、これは、一般に、絶縁体層61の疎水性表面が均一な特性を有する円形であることに留意されたい。
【0192】
方法の実施形態の第1段階では、作動信号が、選択された電極48(例えば、作動電極)に印加されて、液滴界面が間に形成される2つの液滴1の一方、または好ましくは両方に通電する。ここでは、説明を分かりやすくするために、2つの液滴1の両方に通電する場合について説明する。
【0193】
いくつかの実施形態では、通電状態では、液滴1の形状は、液滴1のより低いエネルギー状態の液滴1の形状と比較して変更される。いくつかの実施形態では、そのような通電状態では、2つの液滴1は、それらの間のギャップ3を伴って近接するように移動する。いくつかの実施形態では、ギャップ3のために、このとき液滴1は、互いに接触しない。
【0194】
いくつかの実施形態では、方法の第1段階は、液滴センサ回路90からのフィードバック制御下で実行され得る。
【0195】
第1段階の実施形態で適用されるプロセスの例を、以下のように図8~10に示す。
【0196】
図8は、特定の実施形態に従って、作動信号のパターン53が、電極48(例えば、作動電極)の正方形の4×4グループに印加されるステップを示す。いくつかの実施形態では、これは、2つの液滴1に通電して、概してやはり正方形であるが、液滴1の表面エネルギーを最小化する角に若干の丸みを伴う対応する形状を形成する。図8はまた、特定の実施形態に従って、液滴1がいかに一緒に移動され得るかを示す。特に、図8は、特定の実施形態に従って、作動信号のパターン53が、前のステップに対してシフトされた電極48(例えば、作動電極)のグループに印加される場合を示す。いくつかの実施形態では、これは、液滴1を矢印4の方向に電極48(例えば、作動電極)のグループに向かって移動させる結果をもたらす。このようにして、いくつかの実施形態では、液滴1が成形され、移動され得る。
【0197】
図9は、特定の実施形態に従って、作動信号のパターン53が電極48(例えば、作動電極)の長方形の2×8グループに印加されるステップを示す。いくつかの実施形態では、これは、2つの液滴1に通電して、やはり略長方形であるが、液滴1の表面エネルギーを最小化する角に若干の丸みを伴う対応する形状を形成する。このステップでは、いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)の長方形の2×8グループ、ひいては液滴1は、2列の電極48(例えば、作動電極)のギャップ3を伴って近接する。
【0198】
図10は、特定の実施形態に従って、図9に示されるステップに続くステップを示し、電極48(例えば、作動電極)の2×8グループのうちの1つが、電極48(例えば、作動電極)の1列だけシフトされるので、電極48(例えば、作動電極)の長方形の2×8グループ、ひいては液滴1は、単一列の電極48(例えば、作動電極)のギャップ3を伴って近接することを除いて、作動信号が、同じパターン53を有する。この例では、これは、方法の第1段階の最終ステップである。
【0199】
いくつかの実施形態では、方法の第2段階では、印加される作動信号は、液滴1のエネルギーがより低いエネルギー状態に低下するように変化する。
【0200】
いくつかの実施形態では、この段階では、変化は、好ましくは、液滴1に影響を与える電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加しないことである。その場合、いくつかの実施形態では、電極48(例えば、作動電極)から液滴1にエネルギーが供給されないため、より低いエネルギー状態は、液滴1の最小エネルギーの状態であり、緩和後のそれらの形状は、材料特性のみによって影響を受ける。あるいは、いくつかの実施形態では、変化は、原則として、液滴1に通電する作動信号を印加する程度が小さいため、液滴1が緩和してその形状が変化するが、液滴1に影響を与える電極48(例えば、作動電極)に作動信号が印加されていない場合よりも程度が小さい。
【0201】
いくつかの実施形態では、より低いエネルギー状態に置かれる結果として、ギャップ3を越えて互いに面する液滴1の表面は、ギャップ3内に緩和され、互いに接触し、それによって2つの液滴1の間に液滴界面2を形成する。したがって、いくつかの実施形態では、液滴1の表面の移動は、第1段階で生成された液滴1の通電状態からの緩和によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、これは、液滴界面2の確実な形成を提供する受動的プロセスである。いくつかの実施形態では、液滴1が緩和する速度は、流体媒体60のものに対する液滴1の液体の相対粘度、液滴1のサイズ、および/またはギャップ3のサイズなどの1つ以上の要因に依存し得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、デバイスの幾何学的形状(液滴のサイズ1、疎水性表面間のギャップの高さなど)および液滴界面2での表面張力は、それ自体が材料および材料特性の選択に依存しており、液滴1の表面が触れると、液滴1は、融合または合体せず、むしろ液滴界面2が形成されるように配設される。作動信号のパターンの幾何学的形状および液滴1の空間寸法は、液滴界面2が最小の表面積で形成されるように配設される。
【0203】
いくつかの実施形態では、印加された作動信号は、液滴1を消勢するために任意の方法で変化させ得る。いくつかの実施形態では、作動電極をエレクトロウェットするために印加される作動信号が、AC作動信号である場合、そのとき変化は、望ましくは、液滴1に通電するAC作動信号を、DC電位、例えば、接地電位によって、または浮遊電位によって置き換えることである。いくつかの実施形態では、これは、AC信号が作動信号にもはや印加されないという利点を有し、これは、AC信号から生じるAC電場の存在が、液滴1の表面が接触したときに、液滴界面2を破壊し、液滴1を融合させるリスクを増大させるので、液滴界面2の形成を助ける。
【0204】
いくつかの実施形態では、液滴1を消勢する他の変化を代替的に行い得る。いくつかの実施形態では、代替案は、電極48(例えば、作動電極)のアレイ50からすべての電力を除去することである。しかしながら、いくつかの実施形態では、望ましくない環境電磁干渉から液滴界面2を遮蔽するのを助けるためにDC電位を印加することが好ましくなり得る。
【0205】
本発明者らは、いくつかの実施形態では、結果として生じる摂動は、液滴界面2を損傷するか、または液滴界面2を通して電気的測定値に干渉する場合があるため、AC電圧波形を適用することによって従来の方法で液滴を非作動にしないことが好ましいことを認識した。
【0206】
第2段階の実施形態で適用されるプロセスの例を、以下のように図11および12に示す。
【0207】
図11は、特定の実施形態に従って、2つの2×8グループの電極48(例えば、作動電極)への作動信号の印加を中止し、代わりに、DC電位または浮動電位を印加することによって、図10に示すものと比較して、作動信号のパターンが変化するステップを示す。図11は、特定の実施形態に従って、液滴が以前と同じ略長方形の形状を瞬間的に有するときに変化した瞬間の液滴1を示す。しかしながら、いくつかの実施形態では、次いで、液滴は、図12に示されるより低いエネルギー状態に緩和する。いくつかの実施形態では、他の液滴1の不在下で、各液滴1は、略円形であるそれ自体のより低いエネルギー状態をとるが、液滴1の質量中心は、概して同じ場所に残る。したがって、いくつかの実施形態では、より低いエネルギー状態に向けて緩和する際に、ギャップ3を越えて互いに面する液滴1の表面は、ギャップ3内に緩和され、互いに接触し、それによって液滴界面2を形成する。
【0208】
いくつかの実施形態では、図8図10に示す通電状態の液滴1の特定の形状は、限定的ではなく、一般に、液滴1を緩和して接触させて液滴界面を形成することを可能にする任意の形状を使用することができる。いくつかの実施形態では、液滴1の通電された接触線の形状は、細長くてもよく、ギャップ3は、細長い形状の長さに沿って延在する。いくつかの実施形態では、任意の細長い形状、例えば、図9に示すような長方形、楕円形、またはより複雑な形状が選定され得る。いくつかの実施形態では、細長くない形状、例えば、図8に示すような正方形の形状も使用され得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、液滴1の正確な形状は、作動信号のパターンの制御によって選択されるが、材料特性に依存する、液滴1と流体媒体60との間の表面張力によるものから変動し得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、液滴1の通電された接触線の形状が通電された場合、通電された液滴1の形状は、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも4:1、または少なくとも8:1のアスペクト比を有し得る。いくつかの実施形態では、アスペクト比を増加させると、液滴1が消勢されたときの液滴1の表面の移動の程度が増加し、それにより、液滴1を接触させるのを助ける。
【0211】
いくつかの実施形態では、第1段階の液滴1間のギャップ3は、2つの液滴1が接触しないが十分に近く、それらがより低いエネルギー状態に置かれたときに液滴界面2を形成するように選定される。いくつかの実施形態では、液滴1が近接にいたるときのギャップ3の幅は、作動信号のパターンが変化したときに液滴1が接触することを可能にするように選定される。いくつかの実施形態では、これは、通電状態の同じ液滴1に依存し得る。いくつかの実施形態では、2つの液滴1が近接にいたるときのギャップ3の幅は、2つの液滴1の重心が、液滴1のより低いエネルギー状態にある2つの重心間の線に沿った液滴1の結合半径よりも短い距離だけ離れるように選定され得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、ギャップ3は、アレイ50における電極48(例えば、作動電極)の単一の行もしくは列、またはアレイ50における電極48(例えば、作動電極)の2つ以上の行もしくは列の幅を有し得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、これらのプロセスを助けるために、液滴1の接触線によって囲まれる面積は、電極48(例えば、作動電極)の面積と比較して大きいことが望ましい。いくつかの実施形態では、これにより、液滴1の通電状態における形状の制御の解像度が向上し、アレイにわたる液滴1の移動および液滴1の表面の移動が緩和時に接触することを可能にするのを助ける。したがって、いくつかの実施形態では、AM-EWODデバイス34は、実験的に使用されることが望ましい液滴1の典型的なサイズを考慮したサイズの電極48(例えば、作動電極)で設計される。いくつかの実施形態では、アクティブマトリクス配列の特定の利点は、液滴1のサイズと比較して高い解像度で作動信号の作動パターンの印加を可能にすることである。
【0214】
いくつかの実施形態では、より低いエネルギー状態の液滴1の接触線によって囲まれた面積は、電極48(例えば、作動電極)の面積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍である。したがって、より低いエネルギー状態の液滴1の接触線によって囲まれた面積は、少なくとも2つの電極48(例えば、作動電極)、好ましくは少なくとも5つの電極48(例えば、作動電極)、少なくとも10個の電極48(例えば、作動電極)、または少なくとも20個の電極48(例えば、作動電極)を覆い得る。
【0215】
上記の説明は、特定の実施形態に従って、説明を容易にするために両方の液滴1を通電することについて言及しているが、代替として、第1のフェーズでの2つの液滴1のうちの1つのみを通電することによって液滴界面2を形成し得る。その場合、第2のフェーズで作動信号を変化させると、いくつかの実施形態では、その一方の液滴1の表面は、他の液滴1の静止表面と接触するように緩和する。
【0216】
液滴システム
上記では、特定の実施形態に従って、2つの液滴1のシステム間の単一の液滴界面2の形成が説明されている。いくつかの実施形態では、同様の方法を使用して、3つ以上の液滴1のシステムにおいて、液滴のそれぞれの対の間に複数の液滴界面2が形成され得る。いくつかの実施形態では、液滴界面2は、液滴1を連続的または同時に接触させることにより、順次形成され得る。一例として、図13は、順次形成される2つの液滴界面2を有する3つの液滴1のシステムを形成する例を示し、図14は、同時に形成される2つの液滴界面2を有する3つの液滴1のシステムを形成する例を示す。これらの例の各々では、液滴界面2は、上記の方法を使用して形成される。
【0217】
いくつかの実施形態では、形成された液滴システム1の構成は、所望の実験を実行するように選定される。そのような形成されたシステムにおいて、いくつかの実施形態では、液滴1は、例えば、図13および14に示す3つの液滴1のシステムに示されるように、同様に一連の液滴界面2と直列に配設され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、形成されたシステムにおいて、液滴1は、より複雑な配列またはクラスタを有してもよく、その2つの非限定的な例が、図15および16に示されている。
【0218】
そのような液滴1のシステムでは、液滴1は、等しいかまたは等しくない体積であり得、液滴1は、同じまたは異なる構成要素を有し得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、システム中の1つ以上の液滴は、液滴界面2に挿入することが可能である膜貫通細孔を含み得る。いくつかの実施形態では、液滴界面2の形成後、膜貫通細孔は、液滴界面2に自発的に挿入され、その後、電気的測定値が取得され得る。いくつかの実施形態では、システム中の1つ以上の液滴1は、膜貫通細孔と相互作用する分析物を含み得る。
【0220】
いくつかの実施形態では、特に複数の液滴界面2を有する3つ以上の液滴1のシステムを作製する場合、装置を使用して液滴界面2を形成し、その後、このように形成された液滴界面2で電気的測定値を取得する際にいくつかの利点がある。例えば、いくつかの実施形態では、平面膜のアレイの形成を伴ういくつかの他の技術と比較して、比較的少量のサンプル容量が使用され得る。いくつかの実施形態では、ライブラリー調製が測定と同じデバイスで行われ得るので、剪断の可能性が低減されるため、長いポリヌクレオチドを使用する可能性を可能にする。いくつかの実施形態では、サンプルを移す必要がないことを考えると、汚染のリスクは、低くなる。サンプルのすべてが液滴1の一方または両方のいずれかに含有されるので、いくつかの実施形態では、回復することができる小さなサンプル損失がある。いくつかの実施形態では、エレクトロウェッティングが、すべての液体操作に使用されるので、ポンプまたは他の可動部品の必要性が排除される。いくつかの実施形態では、液滴の位置決めは、プログラムされたスクリプトを通じて制御されるので、サンプル調製は、自動化することができる。いくつかの実施形態では、次いで、DNAサンプルの液滴に、ポリマー小胞、試薬、細孔、および分析物を含む所望の成分を補充することができる。
【0221】
1つのタイプの実験では、液滴1は、例えば、サンプルで発生している進行中の反応を監視するために、サンプルの体積から定期的に切り離してもよい。いくつかの実施形態では、これは、時間を伴う分析、反応物の滴定、条件の変化などを提供する。
【0222】
特定の実施形態の他の利点には、以下が含まれる:
●感知/シーケンシングと連結されたライブラリー調製/PCRを実行する能力;シーケンスするのに使用しやすいライブラリー(自動化、ウォークアウェイ)
●低汚染リスク
●ライブラリーまたはシーケンシングのための区画化されたサンプルの使用
●サンプル/反応の異なる位置のサンプリング、例えば、ゲル/メッシュ/拡散バリアを通る長さ、細胞サンプル上の位置、および/または濃度/熱/密度勾配を許可する。
【0223】
溶解
溶解は、細胞またはウイルス粒子が分解されて、ウイルスRNA、タンパク質、酵素、脂質、細胞DNAなどの内容物を放出するプロセスである。溶解した細胞の内容物は、溶解物と呼ばれる。化学的溶解、液体均質化などの機械的破裂、高周波音波、凍結/解凍サイクル、手動粉砕、およびエレクトロポレーションなどの様々な既知の溶解方法が使用され得る。
【0224】
既知の分析方法では、溶解は、サンプル調製の一部を形成し、この機能を提供する専用の機器を伴う場合があり、これにより、調製の複雑さが増し、分析を実行するのに必要なスキルレベルが上がり、さらに重要なことには、分析されるサンプルの汚染のリスクが高まる。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置または方法は、単独でまたは組み合わせて、溶解機能を組み込んで、測定のために細胞または粒子から関心対象の分析物を放出することができる。いくつかの実施形態では、これは、サンプル調製および分析プロセス全体を事前溶解、簡略化、および標準化する必要なく、分析のためにデバイスにサンプルを直接追加することができるなどの多くの利点を有する。いくつかの実施形態では、それは、ユーザーによって実施されるステップの数を減らすことにより、潜在的な汚染のリスクを軽減することもできる。
【0226】
いくつかの実施形態では、溶解は、電場の使用によって実施され得る。いくつかの実施形態では、関心対象の1つ以上の細胞または粒子を含む液滴を装置の電極対で作動させ、細胞を溶解するために2つの電極間を通過する電場に供してもよい。
【0227】
液滴は、電極に直接接触するか、または本明細書の例で構成されているように、電極が絶縁されているため、ITO電極に直接接触しないことから、電極ペアで「作動」すると広く説明されている。いくつかの実施形態では、絶縁電極が好ましい。いくつかの実施形態では、絶縁電極は、ITOへの損傷を抑制することができる。いくつかの実施形態では、絶縁電極は、より耐久性があり、それらの性能レベルを維持することができる。
【0228】
エレクトロウェッティングデバイスの作動電極は、この溶解機能を実施するために使用され得るか、あるいは、デバイスは、溶解のタスクに特有である電極の1つ以上の対をさらに備え得る。溶解は、測定電極を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に示される手段は、空間的および時間的に変調された電場を使用して細胞をさらに溶解することができる。
【0229】
以下に説明する例では、誘電泳動生細胞操作および電気細胞溶解は、TFT EWODアレイと統合される。したがって、単一の細胞は、液滴内のサンプルの一部として導入され、電極対、または2つ以上の電極に運ばれ得る。液滴が電極の上に位置した状態で、誘電泳動(DEP)を使用して、液滴内の細胞を整列または照合し得る。次いで、制御システムは、液滴に溶解信号を印加して、細胞を破壊し、DNAなどの核酸を含む内容物を放出し得る。溶解後、DEPを使用して液滴の内容物を管理し、その中のDNAを選択的に管理し得る。
【0230】
この例では、シーケンシングのためのサンプル調製の前に溶解を発生させる。いくつかの実施形態では、溶解機能の組み込みにより、すべてのプロセスを自動化し、最初から最後まで1つのデバイスで行うことができる。
【0231】
溶解は、容量結合されたACパルスまたはDCパルスを有する溶解信号を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、溶解信号パルスは、水の電気分解が原因で発生する場合があるサンプル中の気泡の形成を抑制するために生成される。さらに、いくつかの実施形態では、電気化学的侵食または堆積を抑制できるようにパルスが生成され、その結果、劣化または性能損失が最小限に抑えられる。
【0232】
いくつかの実施形態では、電極に印加される電圧が電場を作製するため、絶縁コーティングが電極の上に提供される場合、DCパルスは、溶解を発生させることができる。いくつかの実施形態では、電極間の電場は、印加される電圧によって決定される。いくつかの実施形態では、溶解される液滴内の細胞は、細胞に対する電場効果が非常に大きいため、それを破壊するように液滴よりも実質的に小さい。いくつかの実施形態では、DEPを使用して細胞を整列させて、細胞を最大電場強度のエリアに位置させることができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、酸化インジウムスズ(ITO)が劣化することを心配することなく、電極として使用することができる。いくつかの実施形態では、ITOなどの不透明でない電極材料の使用により、溶解の光学的観察が可能になる。好適であり得る不透明でない電極材料のさらなる例は、グラフェンである。
【0233】
装置は、液滴内の1つ以上の細胞または粒子を効率的に溶解することができるように、それらを分離または照合するために、液滴に誘電泳動を適用するように任意選択で、構成され得る。いくつかの実施形態では、誘電泳動の効果により、細胞または粒子が電極に向かって、および電極に対して移動し、電場が最も強い電極端に細胞または粒子が集中する傾向がある。この技術は、例えば、Pohl and Crane,Biophysical Journal Volume 11 1971,pp711-727に開示されている。いくつかの実施形態では、誘電泳動場は、電極で細胞または粒子を集中して溶解するために溶解電極間に有利に適用され得る。電極表面での細胞のグループ化に続いて、いくつかの実施形態では、電極は、誘電泳動場の適用から溶解のためのDC電圧の適用へと切り替えられ得る。いくつかの実施形態では、その後、細胞は、急速に溶解され、誘電泳動場を切り替えた後に電極からの分析物の任意の拡散を低減する。対象の分析物を液滴に放出するための溶解に続いて、いくつかの実施形態では、誘電泳動場を液滴に再適用して、放出された分析物を電極に保持し得る。いくつかの実施形態では、溶解電極を使用して、誘電泳動場を再適用することができる。いくつかの実施形態では、溶解されていない任意の細胞は、例えば、液滴と接触し、誘電泳動電極から遠位の作動電極を作動させることによって、誘電泳動電極に保持された分析物から分離され得る。
【0234】
いくつかの実施形態では、DEP信号によって流れる電流を測定して、溶液とその中に含有される粒子との関数であるインピーダンスを与えることができる。いくつかの実施形態では、これを使用して、光学的観察を必要とせずに、細胞の存在または溶解の成功を決定することができる。
【0235】
エレクトロポレーション
いくつかの実施形態では、装置は、生細胞を一時的にエレクトロポレーションするようにさらに構成することができ、細胞膜の透過性を高めるために電場を細胞に印加して、例えば、化学物質、薬物、またはポリヌクレオチドを細胞に導入することを可能にし、細胞をトランスフェクトするために使用することができる技術である。エレクトロポレーションにより細胞をトランスフェクトする方法は、例えば、Curr Protoc Mol Biol.2003年5月;章:ユニット-9.3.doi:10.1002/0471142727.mb0903s62に開示されている。いくつかの実施形態では、細胞に導入される物質と共にエレクトロポレーションされる1つ以上の関心対象の細胞を含有する液滴は、電場に供することができる。いくつかの実施形態では、細胞をエレクトロポレーションするために、100Vの領域であり得る高DC電圧が、電極対の間を瞬間的に通過し得る。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーションは、より低いDC電圧レベルまたはAC電圧でさえ達成することもできる。いくつかの実施形態では、電極対は、測定電極であり得る。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーションの前に、1つ以上の細胞は、最初に誘電泳動によって作動電極にあり得る。
【0236】
いくつかの実施形態では、本発明の装置での使用に好適な細胞またはウイルス粒子を含有するサンプルは、全血、血漿、唾液、涙、間質液、痰、および尿などの体液を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、液体または半固体であり得る。いくつかの実施形態では、細胞含有サンプルは、起源が細菌、古細菌、または真核生物であり得、例えば、哺乳動物、昆虫、細菌、ウイルス、酵母、ハイブリドーマ、または植物に由来し得る。
【0237】
例えば、500kベース以上の長いDNAは破損しやすく、慎重に扱う必要がある。いくつかの実施形態では、液滴内のインサイチュでの溶解および測定は、ピペッティングおよび移送ステップの数を排除することができ、したがって、細胞から放出された任意のDNAを断片化する可能性を低減する。これにより、いくつかの実施形態では、非常に長いDNA鎖を測定することが可能になる。
【0238】
いくつかの実施形態では、装置は、液滴中のサンプルを溶解して、EWODによって移動可能な独立した水性液滴中でのDNAのカプセル化および操作をもたらし、これにより、サンプルを隔離および分析することができる。いくつかの実施形態では、装置は、おそらくシーケンシングによって、細胞タンパク質の抽出/特徴付けをサポートすることができる。
【0239】
全体として、いくつかの実施形態では、装置内で溶解することにより、熱および/または化学物質による分子の変性が回避され、一般に機械的摂動が低減される。
【0240】
図26は、特定の実施形態に従って、各アレイ素子51に存在するアレイ素子回路72の配列を示す。いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72は、入力ENABLE、DATA、およびACTUATEを有する作動回路88ならびに電極48(例えば、作動電極)に接続された液滴感知回路90からの出力を含有する。いくつかの実施形態では、アレイ回路素子は、溶解スイッチ202を介して作動電極に接続された溶解回路200を有する。いくつかの実施形態では、スイッチは、作動回路およびセンサ回路を溶解信号から隔離するように機能する。いくつかの実施形態では、スイッチは、各回路に提供することができ、または作動、測定、および溶解の機能を含む三機能電極に溶解信号を提供するために回路のサブセットに提供することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、アレイ素子回路72は、作動回路88および液滴感知回路90を除く溶解回路を提供することができ、その結果、回路は、サンプルまたは液滴中の細胞を溶解するように機能する2つ以上の電極専用である。いくつかの実施形態では、代替回路は、さらに、DEPを使用して液滴内容物を操作することができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、電極48およびスイッチ202は、細胞溶解を実行するように構成可能である。いくつかの実施形態では、溶解信号の隔離により、システムの残りの部分を妨害する、または隣接するハードウェアを損傷することなく、高電圧溶解パルスを印加することができる。いくつかの実施形態では、細胞溶解を誘導するために必要な高電圧は、高電圧増幅器モジュールによって生成される。例として。溶解回路は、ピエゾドライブhttps://www.piezodrive.com/product/pdu100b-miniature-piezo-driver/によって市販および販売されているPDu100Bなどのピエゾアクチュエーターを駆動するために使用されるタイプであり得る。いくつかの実施形態では、5V電源を使用して、そのようなモジュールは、0.7V~4.3Vの制御電圧を0V~100Vの溶解信号に制御することができる。いくつかの実施形態では、溶解回路の増幅器は、直流および容量結合された出力の両方を有することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、増幅器のオフセット電圧を抑制するために、ゼロボルトが印加されたときにDC電流が流れるのを回避するために、容量結合出力が好ましい。さらに、いくつかの実施形態では、オフセット電圧は、電極および/または上部プレート間にDC電流を生成することが既知であり、これは、上部プレートITOを劣化させる可能性がある。
【0243】
いくつかの実施形態では、溶解パルスのタイミングは、液滴を制御する信号が最小時間の間、オフになるように、作動および感知回路の非活性化と同期される。いくつかの実施形態では、これは、液滴が緩和する時間がないことを意味するため、溶解中の液滴または流体の移動は、ごくわずかである。加えて、いくつかの実施形態では、短い高電圧パルスは、ITO電極に対する電気化学的損傷を制限し、電気分解による気泡の生成を制限する。
【0244】
いくつかの実施形態では、装置は、単一細胞の適用のために動作可能であり、アダプターライゲーションおよび他の処理の前に、まずDNAを細胞から遊離させなければならない。既知の細胞溶解には、液滴界面二重層(DIB)膜の安定性要件と適合しない可能性のある濃縮界面活性剤および変性剤を伴う。
【0245】
いくつかの実施形態では、液滴中のサンプルを受容した後、装置は、溶解信号を印加することができる電極の上での液滴および細胞の位置付けを可能にし、短い高電圧パルスが印加される。いくつかの実施形態では、このパルスは、細胞の周囲およびその内部のすべての膜を破壊するように機能することができる。
【0246】
図27は、特定の実施形態に従って、抽出ゾーン、2つのシーケンシングゾーン、およびライブラリー調製ゾーンを有するEWODデバイスの概略図を示す。これらのゾーンは、組織的であり、いくつかの実施形態では、装置の異なる領域に構成することができる。いくつかの実施形態では、これらのゾーンによって提供される機能は、重複する可能性がある。いくつかの実施形態では、機能は、これらのゾーンに制約されないように、装置のすべてのエリアで実施することができる。
【0247】
図28は、特定の実施形態に従って、装置上で実行することができるアクションを示す概略図である。いくつかの実施形態では、細胞を有するサンプルは、サンプル中の細胞が溶解され得る抽出ゾーンに移動することができる。いくつかの実施形態では、別個の液滴中のアダプターは、溶解したDNAを細孔を使用してシーケンシングするために、細孔が2つの液滴間に配設されるように移動して、細孔と係合することができるライブラリーを作製するために溶解サンプルと混合することができる。
【0248】
フィードバックおよび変更
上記のように、いくつかの実施形態では、装置は、液滴1のシステムに液滴界面2を形成し、それらの液滴界面2で実験を実行するのに好適である。いくつかの実施形態では、液滴界面センサシステム110の出力に応答して、制御システム37が液滴1の形成されたシステムを変更することにより、特定の利点が得られる。したがって、いくつかの実施形態では、液滴1のシステムは、以前に実行された実験からのフィードバックを使用して、実験の進行中の性能を変更するように変更され得る。これは、実験が適応的に実行し得るため、強力な実験ツールを提供する。
【0249】
いくつかの実施形態では、例えば、以下のように、液滴界面センサシステム110の様々な出力を使用してフィードバックを提供し得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、使用され得る液滴界面センサシステム110の出力は、測定ユニット111によって取得された電気的測定値を含む。いくつかの実施形態では、これは、第1のタイプの制御を提供する。電気的特性は、液滴界面の形成およびそこで発生する反応などの関連プロセスの基本であるため、いくつかの実施形態では、この第1のタイプの制御により、これらのプロセスを考慮し、適応的に変更することを可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、センサシステムによって取得された電気的測定値を使用して、液滴界面2が首尾よく形成されたかどうかを決定し得る。
【0251】
いくつかの実施形態では、使用され得る液滴界面センサシステム110の出力は、分析システム112の出力を含む。いくつかの実施形態では、これは、第2のタイプの制御を提供する。そのような分析により、例えば、分析される分析物に関するより高いレベルの情報を得ることができるので、この第2のタイプの制御は、いくつかの実施形態では、分析の結果に基づいて強力な実験的適合を提供する。
【0252】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、例えば、以下のように、様々な方法で形成された液滴1のシステムを変更し得る。
【0253】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、システム中で液滴界面2を分離することによって、形成された液滴1のシステムを変更し得る。これを行うために、いくつかの実施形態では、制御システム37は、液滴界面2が間に形成される液滴の一方または両方を離す電極48(例えば、作動電極)に作動信号のパターンを印加する。いくつかの実施形態では、液滴1の分離は、液滴界面2を分離する。
【0254】
そのような分離は、例えば、液滴界面2で発生する相互作用を停止するために使用され得る。これは、例えば、測定ユニット111によって取得された電気的測定値が、液滴界面2が首尾よく形成されなかったことを示す場合、または分析システム112の出力が、例えば、分析物が枯渇したために分析が完了したことを示す場合、または特定の分析物について十分な電気的測定値が取得された場合に行われ得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、新しい液滴1を移動させて、液滴1のシステム中の現在の液滴1と接触させ、新しい液滴1と現在の液滴1との間に液滴界面2を形成することによって、形成された液滴1のシステムを変更し得る。これを行うために、いくつかの実施形態では、制御システム37は、上記と同じ方法を使用して、電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加する。
【0256】
そのような新しい液滴界面2の形成は、例えば、測定ユニット111によって取得された電気的測定値が、液滴界面2が首尾よく形成されなかったので、新しい液滴界面を形成することが望ましいことを示す場合、または分析システム112の出力が、液滴界面2での分析が完了しており、さらなる測定値を得することが望ましいことを示す場合に使用され得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、制御システム37は、新しい液滴1を移動させて、液滴1のシステム中の現在の液滴1と接触させ、新しい液滴1と現在の液滴1とを融合させることにより、形成された液滴1のシステムを変更し得る。これを行うために、いくつかの実施形態では、制御システム37は、新しい液滴1を現在の液滴1と接触するように移動させ、それらを融合させる電極48(例えば、作動電極)に作動信号を印加する。いくつかの実施形態では、液滴1の融合は、上記の方法を使用して液滴界面を形成することなく、新しい液滴1を移動させて、現在の液滴1と接触させることによって簡単に達成され得る。代替または追加として、いくつかの実施形態では、液滴1の融合は、そうでなければ新しい液滴1と現在の液滴との間に形成されるであろう液滴界面を破壊するAC作動信号を印加することによって達成され得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、システムの現在の液滴1へのそのような新しい液滴1の融合は、例えば、液滴1の対のうちの1つにおいてレドックス対のうちの1つのメンバーを使い果たすと、例えば、新しい試薬を現在の液滴1に導入するために使用され得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、このように新しい液滴1を融合する場合、新しい液滴1が、液滴1の液体と流体媒体60との間の界面において両親媒性分子を含まない場合がある。
【0260】
いくつかの実施形態では、形成された液滴1のシステムを変更するこれらおよび他の方法は、例えば、多段階実験を実行するために、任意の組み合わせで一緒に使用され得る。
【0261】
いくつかの具体的な用途が上で説明されているが、これらは、限定的ではなく、実際、フィードバックの利点のうちの1つは、その多様性である。いくつかのさらなる非限定的な適用例は、以下の通りである:
●膜貫通細孔の自動挿入
●液滴1のシステムの、細孔または二次細孔の不要な挿入への適合
●反応/サンプル条件に基づく制御
●液滴界面分離の推進
●より多くのサンプルまたは試薬の送達
●異なるサンプルの送達
●液滴へのより多くのメディエーターの送達
●別の場所にサンプルを取得する、かつ/またはそれを回収する、かつ/またはそれを元のサンプル体積に戻すための液滴1の分離
●反応条件の変化(例えば、温度、添加剤、クエンチ/活性化)
●代替測定値(例えば、吸光度)の取得
●サンプルを元の体積に戻す
●分析したサンプル(またはその一部)に対する新しい反応の性能
●多数の細孔タイプの制御および多数の膜の各々のバランス
●多数の膜と同じサンプルと相互作用する細孔を有する膜配列の形成
●十分な情報が得られ、それにより、全体的な実験スループットが増加するまでの実験のみの性能。
●サンプルのキューイング/プーリング、例えば、オンデマンドでサンプルのキューからライブラリーサンプルを送達することを可能にする、かつ/またはキューの順序を変化させる
●シーケンシング/感知の結果としてのサンプルのプーリング
●複数のサンプルのどれを分析するかの決定
●運転の持続時間/成功基準の決定
●膜/細孔分析前のサンプル変更のための条件の決定(例えば、ライブラリー調製のタイプ/濃度)
●液滴1を定期的に大量のサンプルから切り離す場合、反応/サンプル条件を適合させるためのフィードバックとして以前の実験の結果の使用
●膜/細孔をセンサとして使用する定向進化の性能
【0262】
液体媒体中の液滴
本明細書において、流体媒体中に液体を含む液滴に言及する場合、液体および流体媒体は、以下のように選定され得る。いくつかの実施形態では、流体媒体中に液滴を形成する任意の液体を使用し得るが、いくつかの可能な材料は、以下の通りである。
【0263】
流体媒体は、原則として気体媒体であり得るが、好ましくは液体媒体である。
【0264】
場合によっては、またしばしば流体媒体が液体媒体であるとき、液体および流体媒体の一方は、極性であり、液体および流体媒体の他方は、無極性である。好ましくは、液滴の液体は、極性であり、流体媒体は、無極性である。
【0265】
液体および流体媒体の一方が極性である場合、極性媒体は、いくつかの実施形態では、水を含む水性液体である。いくつかの実施形態では、水性液体は、1つ以上の溶質をさらに含み得る。水性液体は、例えば、水性媒体のpHを必要に応じて調節するために緩衝剤を含んでもよく、それは、支持電解質を含んでもよい。水性媒体は、例えば、レドックス対、またはレドックス対を提供するために部分的に酸化または還元され得るレドックス対のメンバーを含み得る。いくつかの実施形態では、レドックス対は、Fe2+/Fe3+、フェロセン/フェロセニウム、またはRu2+/Ru3+などの当該技術分野で既知のものから選定され得る。そのような例は、フェロ/フェリシアン化物、ルテニウムヘキサミン、およびフェロセンカルボン酸である。
【0266】
あるいは、液体および流体媒体の一方が極性である場合、いくつかの実施形態では、極性媒体は、極性有機溶媒を含み得る。いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、例えば、アルコールなどのプロトン性有機溶媒であってもよく、または非プロトン性極性有機溶媒であってもよい。
【0267】
いくつかの実施形態では、液滴の液体は、以下に記載されるタイプの実験を実行するのに好適な任意の液体であり得る。いくつかの実施形態では、異なる液滴は、異なる液体を含み得る。
【0268】
いくつかの実施形態では、液体および流体媒体の他方が、無極性である場合、そのとき無極性媒体は、油を含んでもよい。いくつかの実施形態では、油は、単一の化合物であってもよく、または油は、2つ以上の化合物の混合物を含んでもよい。
【0269】
一例では、油は、純粋なアルカン炭化水素である。
【0270】
油は、例えば、シリコーン油を含み得る。好適なシリコーン油には、例えば、ポリ(フェニルメチルシロキサン)およびポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が含まれる。いくつかの実施形態では、シリコーン油は、ヒドロキシ末端シリコーン油、例えば、ヒドロキシ末端PDMSを含み得る。
【0271】
追加または代替として、いくつかの実施形態では、油は、炭化水素、例えば、ヘキサデカンを含み得るが、任意の好適な炭化水素を使用し得る。油が炭化水素を含む場合、それは、単一の炭化水素化合物、または2つ以上の炭化水素の混合物を含み得る。油が炭化水素を含む場合、炭化水素は、分岐していても分岐していなくてもよい。炭化水素は、例えば、スクアレン、ヘキサデカン、またはデカンであり得る。一実施形態では、それは、ヘキサデカンである。しかしながら、いくつかの実施形態では、炭化水素は、ハロゲン原子、例えば、臭素で置換され得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、油は、1つ以上のシリコーン油と1つ以上の炭化水素との混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、混合物中のシリコーン油および炭化水素は、両方とも上記でさらに定義された通りであり得る。シリコーン油は、例えば、ポリ(フェニルメチルシロキサン)またはPDMSであり得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、他のタイプの油も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、油は、フルオロカーボンまたはブロモ置換C10-C30アルカンであり得る。
【0274】
両親媒性分子
液体および流体媒体の一方が、極性であり、液体および流体媒体の他方が、無極性である場合、そのとき液滴は、いくつかの実施形態では、液滴の液体と流体媒体との間の界面において両親媒性分子をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、そのような両親媒性分子は、液滴界面の形成前に、流体媒体中の液滴を安定化させるのに役立つ。また、いくつかの実施形態では、両親媒性分子は、液滴界面が形成されたときに、両親媒性分子の膜を含むことを可能にし得る。
【0275】
多数の異なるタイプの両親媒性分子を使用し得る。使用され得る両親媒性分子のタイプのいくつかの非限定的な例は、以下の通りである。
【0276】
一例では、両親媒性分子は、脂質二重層を形成するときに慣用的であるように、単一成分または成分の混合物を有し得る脂質を含み得る。
【0277】
いくつかの実施形態では、脂質二重層などの膜を形成する任意の脂質を使用し得る。いくつかの実施形態では、脂質は、必要とされる特性、例えば、表面荷電、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的特性を有する脂質二分子層が形成されるように選定される。いくつかの実施形態では、脂質は、1つ以上の異なる脂質を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、脂質は、最大100個の脂質を含有することができる。いくつかの実施形態では、脂質は、好ましくは1~10個の脂質を含有する。いくつかの実施形態では、脂質は、天然に存在する脂質および/または人工脂質を含み得る。
【0278】
いくつかの実施形態では、脂質は、化学修飾することもできる。
【0279】
いくつかの実施形態では、両親媒性ポリマー膜は、そのより高い電圧に耐える能力のため、脂質膜よりも好ましい。
【0280】
別の例では、両親媒性分子は、第1の外側親水基、疎水性コア基、および第2の外側親水基を含む両親媒性化合物を含み得、第1および第2の外側親水基の各々は、疎水性コア基に連結される。
【0281】
いくつかのそのような両親媒性化合物は、WO2014/064444に開示されている。
【0282】
他のそのような両親媒性化合物は、参照により本明細書に組み込まれるUS6,916,488に開示され、いくつかの実施形態では、平面両親媒性膜として装置に採用することができるいくつかのポリマー材料を開示している。特に、トリブロックコポリマー、例えば、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ブロック-ポリ(ジメチルシロキサン)-ブロック-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)などのシリコントリブロックコポリマー膜が開示されている。
【0283】
採用可能なシリコーントリブロックポリマーの例は、7-22-7 PMOXA-PDMS-PMOXA、6-45-6 PMOXA-PE-PMOXA、および6-30-6 PMOXA-PDMS-PMOXAであり、名称は、サブユニットの番号を指す。
【0284】
いくつかの実施形態では、そのようなトリブロックコポリマーは、液滴中の小胞形態で提供され得る。
【0285】
いくつかの実施形態では、両親媒性分子の性質に応じて、膜は、両親媒性分子の二重層であってもよく、または両親媒性分子の単層であってもよい。
【0286】
いくつかの実施形態では、両親媒性分子は、別法として、別の界面活性剤で置き換えられ得る。
【0287】
いくつかの実施形態では、異なる液滴界面は、異なる両親媒性分子の膜、例えば、脂質二重層およびWO2017/004504に開示されるような上記のシリコーントリブロックポリマー膜などのポリマー膜を含む膜を含み得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、取得される電気的測定値は、両親媒性分子自体の膜またはその相互作用を研究するために、例えば、薬物膜誘電率を研究するために使用され得る。
【0289】
膜貫通細孔
いくつかの実施形態では、液滴界面に挿入することが可能である任意の膜貫通細孔を使用し得る。異なる液滴は、同じまたは異なる膜貫通細孔を含み得るので、複数の液滴界面が異なる複数の液滴対の間に形成される場合、同じまたは異なる膜貫通細孔が、それらの液滴界面に挿入され得る。
【0290】
使用され得る膜貫通細孔のタイプのいくつかの非限定的な例は、以下の通りである。
【0291】
膜貫通細孔は、イオンが流れ得る膜の一方から他方への経路を提供するチャネル構造である。いくつかの実施形態では、チャネルは、その長さに沿って幅が変動してもよく、0.5nm~10nmの内径を有する。
【0292】
いくつかの実施形態では、任意の好適な膜貫通細孔が本発明において使用され得る。いくつかの実施形態では、細孔は、生物学的または人工的であり得る。好適な細孔には、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔、および固体細孔が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細孔は、DNA折り紙細孔であり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。好適なDNA折り紙細孔は、WO2013/083983に開示されている。
【0293】
いくつかの実施形態では、膜貫通細孔は、好ましくは、膜貫通タンパク質細孔である。
【0294】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔は、モノマーまたはオリゴマーであり得る。いくつかの実施形態では、細孔は、六量体、七量体、八量体、または非異性体細孔であり得る。いくつかの実施形態では、細孔は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであり得る。
【0295】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔は、CsgG、例えば、大腸菌Str.K-12亜種MC4100からのCsgGに由来し得る。好適なCsgG細孔の例は、WO-2016/034591、WO-2017/149316、WO-2017/149317、およびWO-2017/149318に記載されている。
【0296】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔は、イオンが通って流れ得るバレルまたはチャネルを含む。いくつかの実施形態では、細孔のサブユニットは、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α-ヘリックスバンドルもしくはチャネルに寄与する。
【0297】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔のバレルまたはチャネルは、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、細孔は、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換または欠失によって修飾され得る。
【0298】
いくつかの実施形態では、本発明に従った使用のための膜貫通タンパク質細孔は、β-バレル細孔またはα-ヘリックスバンドル細孔に由来し得る。β-バレル細孔は、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ-バレル細孔としては、α-溶血毒、炭疽毒素、およびロイコシジンなどのβ-毒素、ならびにMycobacterium smegmatisポリン(Msp)、例えばMspA、MspB、MspC、またはMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびNeisseriaオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)などの細菌の外膜タンパク質/ポリン、ならびにリセニンなどの他の細孔が挙げられるが、これらに限定されない。α-ヘリックスバンドル細孔は、α-ヘリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なα-ヘリックスバンドル細孔は、内膜タンパク質およびα外膜タンパク質、例えばWZAおよびClyA毒素を含むが、これらに限定されない。
【0299】
いくつかの実施形態では、膜貫通細孔は、Msp、α溶血毒(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、および溶血性タンパク質フラガセトキシンC(FraC)に由来するか、またはそれらに基づき得る。いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔は、好ましくはCsgG、より好ましくは大腸菌Str.K-12亜種MC4100からのCsgGに由来する。
【0300】
いくつかの実施形態では、膜貫通細孔は、リセニンに由来し得る。リセニン由来の好適な細孔は、WO2013/153359に開示されている。
【0301】
いくつかの実施形態では、細孔は、上に列挙されたナノ細孔の変異体であり得る。いくつかの実施形態では、変異体は、アミノ酸配列に対して、アミノ酸類似性または同一性に基づき、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、または99%の相同性であり得る。
【0302】
いくつかの実施形態では、相同性を決定するために、当該技術分野における標準的な方法が使用され得る。例えば、UWGCG Packageは、例えばそのデフォルト設定で使用されて、相同性を計算するために使用され得るBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12,p387-395)。いくつかの実施形態では、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300;Altschul,S.F et al(1990)J Mol Biol 215:403-10に記載されているように、相同性を計算するか、または配列を並べるために使用することができる(同等の残基または対応する配列の識別(典型的には、それらのデフォルト設定)など)。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。いくつかの実施形態では、類似性は、ペアワイズ同一性を使用して、またはBLOSUM62などのスコアリングマトリックスを適用し、同等の同一性に変換することによって測定することができる。いくつかの実施形態では、それらは、進化した変化ではなく機能性を表すため、相同性を決定するときに意図的に変異した位置は、マスクされる。いくつかの実施形態では、類似性は、タンパク質配列の包括的データベース上の例えば、PSIBLASTを使用する位置特異的スコアリングマトリックスの適用によってより敏感に決定され得る。いくつかの実施形態では、進化的時間スケール(例えば、電荷)にわたる置換の頻度ではなくアミノ酸の化学物理的特性を反映する異なるスコアリングマトリックスを使用することができる。
【0303】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号3のアミノ酸配列、例えば、最大1、2、3、4、5、10、20、または30個の置換に対して行われ得る。いくつかの実施形態では、同類置換は、アミノ酸を、同様の化学構造、同様の化学的特性、または同様の側鎖量の他のアミノ酸で置き換える。いくつかの実施形態では、導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と同様の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。代替的には、いくつかの実施形態では、同類置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。
【0304】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔などの本明細書に記載のタンパク質のいずれも、合成的にまたは組み換え手段によって作製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、細孔は、インビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。いくつかの実施形態では、細孔のアミノ酸配列は、非自然発生アミノ酸を含むように、またはタンパク質の安定性を増加させるように修飾され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質が合成手段によって産生される場合、そのようなアミノ酸は、産生中に導入され得る。いくつかの実施形態では、細孔はまた、合成または組み換え産生のいずれかに続いて改変され得る。
【0305】
いくつかの実施形態では、膜貫通タンパク質細孔などの本明細書に記載のタンパク質のいずれも、当該技術分野において既知の標準的な方法を使用して産生することができる。いくつかの実施形態では、細孔または構造体をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野において標準的な方法を使用して誘導および複製され得る。いくつかの実施形態では、細孔または構造体をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野において標準的な方法を使用して細菌宿主細胞において発現され得る。いくつかの実施形態では、細孔は、組み換え発現ベクターからのポリペプチドのインサイチュ発現によって細胞中に産生され得る。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、任意に、ポリペプチドの発現を制御するために誘導性プロモーターを担持する。これらの方法は、Sambrook,J.and Russell,D.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載される。
【0306】
いくつかの実施形態では、細孔は、タンパク質産生有機体からの任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによる精製に続いて、または組み換え発現後に大規模に産生され得る。いくつかの実施形態では、典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムには、FPLC、AKTAシステム、Bio-Cadシステム、Bio-Rad BioLogicシステム、およびGilson HPLCシステムが含まれる。
【0307】
分析物
いくつかの実施形態では、液滴は、膜貫通細孔と相互作用することが可能である分析物を含み得、標的分析物、テンプレート分析物、または関心対象の分析物とも呼ばれる。例えば、いくつかの実施形態では、分析物は、ポリマーまたは薬物であり得る。
【0308】
いくつかの実施形態では、取得される電気的測定値は、分析物の膜貫通細孔との相互作用に依存し得る。いくつかの実施形態では、電気的測定値は、細孔を通るイオン電流の測定値であり得る。
【0309】
いくつかの実施形態では、電気的測定値が分析物の膜貫通細孔との相互作用に依存する場合、分析は、標的分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を決定し得る。いくつかの実施形態では、分析は、標的分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を決定し得る。分析物がポリマー単位を含むポリマーであるいくつかの実施形態では、分析において、電気的測定値を処理して、ポリマー単位の推定同一性を導出するか、またはポリマー単位をカウントするか、もしくはポリマーの長さを決定し得る。いくつかの実施形態では、分析の基礎として分析物が電気的測定値にどのように影響するかを決定するために、異なる分析物またはポリマーユニットの存在下で対照実験を実施することができる。
【0310】
いくつかの実施形態では、分析は、例えば、WO-2013/041878またはWO-2015/140535に記載されているような隠れマルコフモデルを採用する技術、例えば、Boza et al.,「DeepNano:Deep recurrent neural networks for base calling in MinION nanopore reads」PLoS ONE 12(6):e0178751,5 June 2017に記載されているような機械学習を採用する技術、例えば、WO-2013/121224に記載されているような特徴ベクトルの比較を採用する技術、または任意の他の好適な技術を含む、任意の好適な既知の技術を使用して実行され得る。
【0311】
いくつかの実施形態では、そのような相互作用は、分析物が細孔に対して移動する、例えば、細孔を通してトランスロケートするときに発生し得る。その場合、いくつかの実施形態では、分析物が細孔に対して移動するときに、電気的測定値を取得し得る。いくつかの実施形態では、液滴間に、すなわち細孔全体に電位差が適用されている間に、そのような移動が発生し得る。いくつかの実施形態では、適用される電位は、細孔とポリヌクレオチド結合タンパク質との間で複合体の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、適用される電位差は、電位であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、適用される電位差は、化学ポテンシャルであり得る。この例は、両親媒性層にわたって塩勾配を使用している。塩勾配は、Holden et al.,J Am Chem Soc.2007 Jul 11;129(27):8650-5に開示されている。
【0312】
いくつかの実施形態では、標的分析物は、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、染料、漂白剤、薬剤、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、または環境汚染物質であり得る。
【0313】
いくつかの実施形態では、分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、および/またはタンパク質であり得る。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然型であっても非天然型であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質は、それらの中に合成または修飾アミノ酸を含むことができる。アミノ酸へのいくつかの異なるタイプの修飾が当該技術分野で既知である。好適なアミノ酸およびその修飾は、上で説明される。本発明の目的のために、いくつかの実施形態では、標的分析物は、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾することができることを理解されたい。
【0314】
いくつかの実施形態では、分析物タンパク質は、酵素、抗体、ホルモン、成長因子、または成長調節タンパク質、例えば、サイトカインであり得る。いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターロイキン、好ましくは、IFN-1、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、およびIL-13、インターフェロン、好ましくは、IL-γ、ならびにTNF-αなどの他のサイトカインから選択され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、細菌タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質、または寄生虫由来のタンパク質であり得る。
【0315】
いくつかの実施形態では、標的分析物は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、以下で考察される。オリゴヌクレオチドは、通常は、50以下のヌクレオチド、例えば40以下、30以下、20以下、10以下、または5以下のヌクレオチドを有する短いヌクレオチドポリマーである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、脱塩基および修飾ヌクレオチドを含む、以下で考察されるヌクレオチドのいずれかを含み得る。
【0316】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの少なくとも一部分は、二本鎖であり得る。
【0317】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含むことができる。
【0318】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、長さが少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対であり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、長さが1000以上、10000以上、100000以上、または1000000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対であり得る。
【0319】
任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100以上のポリヌクレオチドの特徴付けに関し得る。2個以上のポリヌクレオチドが特徴付けられた場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの実例であり得る。
【0320】
ポリヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。
【0321】
分析物がヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり、ポリマー単位の推定同一性が、電気的測定値から導出されるいくつかの実施形態では、そのとき鎖の特徴付け/シーケンシングまたはエキソヌクレアーゼの特徴付け/シーケンシングを適用し得る。
【0322】
いくつかの実施形態では、鎖シーケンシングにおいて、ポリヌクレオチドは、印加された電位と共にまたはそれに対してのいずれかで、ナノ細孔を通ってトランスロケートし得る。この場合、いくつかの実施形態では、電気的測定値は、多数のヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す。
【0323】
いくつかの実施形態では、液滴は、酵素などのポリマー結合部分を含有し、細孔を通るポリマーのトランスロケーションを制御し得る。いくつかの実施形態では、部分は、例えば、部分が酵素、酵素活性である場合、または分子ブレーキとして使用する分子モーターであり得る。
【0324】
ポリマーがポリヌクレオチドであるいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド結合酵素の使用を含む、トランスロケーションの速度を制御するために提案されたいくつかの方法がある。ポリヌクレオチドのトランスロケーションの速度を制御するための好適な酵素には、ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、一本鎖および二本鎖結合タンパク質、ならびにジャイレースなどのトポイソメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。他のポリマータイプの場合、そのポリマータイプと相互作用する部分をいくつかの実施形態で使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー相互作用部分は、WO-2010/086603、WO-2012/107778、およびLieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72),ならびに電圧ゲート方式(Luan B et al.,Phys Rev Lett.2010;104(23):238103)に開示されるいずれかであり得る。
【0325】
いくつかの実施形態では、ポリマー結合部分は、ポリマーの動きを制御するためにいくつかの方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、部分は、適用された電場と共に、またはそれに対して、ナノ細孔を通してポリマーを移動させることができる。いくつかの実施形態では、部分は、例えば、部分が酵素、酵素活性である場合に使用する分子モーターとして、または分子ブレーキとして使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーのトランスロケーションは、細孔を通るポリマーの移動を制御する分子ラチェットによって制御され得る。いくつかの実施形態では、分子ラチェットは、ポリマー結合タンパク質であり得る。ポリヌクレオチドの場合、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素である。
【0326】
いくつかの実施形態では、好ましいポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、およびトポイソメラーゼ、例えば、ジャイレースである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、例えば、WO-2015/140535またはWO-2010/086603に記載されているタイプのポリヌクレオチドハンドリング酵素のうちの1つであり得る。
【0327】
実施形態では、膜のうちの1つ以上は、試薬を供給するための一種のフリット代替物を提供するために挿入された多数の細孔を有する選択的膜であり得る。この実施形態は、例えば、液滴対およびその対の液滴に接続された第3の液滴を含む3細孔システムで採用され得、それにより、第3の液滴と対の液滴との間の界面は、多数の細孔を含む。第3の液滴は、フェリシアン化物[Fe(CN)3-/2-などの電気化学的メディエーターを含み得る。
【0328】
いくつかの実施形態では、異なる液滴界面は、その上に挿入された異なる膜貫通細孔を有し得る。
【0329】
連結
いくつかの実施形態では、分析物は、それを膜に連結するアンカー、またはそれを細孔に連結するテザーを含有し得る。いくつかの実施形態では、膜は、分析物の連結を促進するように機能化され得る。いくつかの実施形態では、細孔は、分析物の係留を促進するように変更され得る。いくつかの実施形態では、例えば、WO-2012/164270またはWO-2015/150786に記載されているように、当該技術分野で既知である分析物を膜に連結する方法を使用し得る。いくつかの実施形態では、例えば、WO-2012/164270またはPCT/GB2017/053603に記載されているように、当該技術分野で既知である分析物を細孔につなぐ方法を使用し得る。
【0330】
サンプル
いくつかの実施形態では、液滴1は、サンプルから調製され得る。いくつかの実施形態では、そのようなサンプルは、分析物を含有することが既知であり得るか、またはそれを含有すると推測され得る。
【0331】
いくつかの実施形態では、サンプルは、生体サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、任意の生物または微生物から得られ得るか、またはそれらから抽出され得る。
【0332】
いくつかの実施形態では、サンプルは、任意のウイルスから得られ得るか、またはそれから抽出され得る。
【0333】
いくつかの実施形態では、サンプルは、好ましくは、流体サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは、患者の体液を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、尿、リンパ液、唾液、粘液、または羊水であり得るが、好ましくは、血液、血漿、または血清である。
【0334】
いくつかの実施形態では、サンプルは、ヒト起源であり得るが、代替的には、別の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、サカナ、ニワトリ、またはブタなどの商業用飼育動物であり得るか、または代替的には、ネコもしくはイヌなどの愛玩動物であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、サンプルは、穀物、マメ科植物、果物、または野菜などの商品作物から得られたサンプルなどの植物起源のものであり得る。
【0335】
いくつかの実施形態では、サンプルは、非生物学的サンプルであり得るか、またはそれに由来し得る。いくつかの実施形態では、非生体サンプルは、好ましくは、液体サンプルである。非生物学的サンプルの例としては、外科用流体、水、例えば飲料水、海水、または河川水、および臨床検査用の試薬が挙げられる。
【0336】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0337】
実施例1
実施されている装置の使用例は、以下の通りである。
【0338】
実施例の装置は、DNAサンプル調製およびシーケンシングを1つの携帯可能なプラットフォームで実行するように設計された。重要なシーケンシング要素は、上記のタイプのAM-EWODデバイス34の2つの水性液滴1間の液滴界面2に形成された高分子膜に埋め込まれたタンパク質ナノ細孔であった。
【0339】
この実施例では、液滴1の液体は、水溶液であり、液滴は、小胞形態の上記タイプのトリブロックコポリマーである両親媒性分子を含有し、流体媒体60は、純粋なアルカン炭化水素であった。
【0340】
実施例は、2つの液滴1も示す画像である図17に示されるように電極48(例えば、作動電極)のアレイ50を有するAM-EWODデバイス34を使用した。図17aは、上記の方法の第1段階の終了時に、液滴1がその間にギャップ3を伴って近接した通電状態で撮影された。図17bは、液滴1が緩和して液滴界面2を形成した、第2段階の終了後に撮影された。アレイの各電極48(例えば、作動電極)は、寸法が200×200μmであり、したがって、使用されたいずれの液滴1よりもはるかに小さかった。
【0341】
AM-EWODデバイス34では、導電性材料の層58は、図18に示されるようにパターン化され、ボックス120は、図17の画像を撮影した領域を示す。図18は、上端にC1~C15とラベル付けされた接触パッド121を示す。C2(接地)とラベル付けされた接触パッド121に接続されたセンサ電極100およびC5(記録)とラベル付けされた接触パッド121に接続されたセンサ電極100は、パネル図17bの液滴界面2からの電気的記録に使用された。
【0342】
記録電極がAM-EWODデバイス34に統合されて、電圧印加および細孔DNAシーケンシング信号を含む電流記録を促進した。
【0343】
実施例では、標準的なパッチクランプ増幅器を使用して、個々の液滴界面2で現在の記録を実行した。液滴界面2のアレイからのマルチチャネル記録を並列に行うために、いくつかの実施形態では、マルチチャネル記録システムを採用することができる。いくつかの実施形態では、DNAシーケンシングに十分な品質(<1pArms@5KHz)の記録を可能にするために、システムは、実質的に電気的ノイズがない必要がある。したがって、優先的に、装置は、いくつかの実施形態では、EWODモードおよび記録モードと呼ばれる2つの相互に排他的なモードで動作する。
【0344】
いくつかの実施形態では、EWODモードでは、導電性材料の層58のすべての特徴は、移動に必要な電圧の一部を供給する制御電子機器38に接続される。EWODは、高周波の大きなAC電圧場を使用するので、いくつかの実施形態では、EWOD場がオンの間は記録を行うことができない。具体的には、いくつかの実施形態では、EWOD場は、DNA信号を不明瞭にするノイズを生成する。したがって、いくつかの実施形態では、液滴1が所望のように位置されると、制御電子機器38が取り外されるが、代わりに内部切り替え部品を使用することができる。EWODが取り外されると、多極スイッチが作動する。
【0345】
周囲のノイズからの干渉を防止するため、録音中は装置全体をファラデー箱に密閉した。したがって、いくつかの実施形態では、記録モード中、液滴は、任意の電気的に誘導される力によって所定の位置に保持されない。
【0346】
上記の方法を使用して、AM-EWODデバイス34を使用して、図19に示すように、それぞれが液滴界面2を間に有する2つの液滴1からなる3つのシステムを作製した。
【0347】
液滴界面2の形成は、以下のように実行された。
【0348】
電極48(例えば、作動電極)への作動信号の印加下でそれらを一緒にするために2つの液滴1を単に操作することは、可能であったが、液滴1が融合する傾向があるために困難であった。
【0349】
代わりに、上記の方法を使用した。具体的には、第1段階では、液滴1は、1.5より大きいアスペクト比を有する長方形の形状に通電された。これらの形状の長い縁部は、1~2ピクセルの近さにされ中央に配置された。3つの液滴1に適用されるこの段階の例を図20の左側に示す。
【0350】
第2段階では、作動信号を切り替えた。液滴は、自然に緩和して、緩和した円形に戻り、その表面積対体積比を減らした。緩和により、ギャップ3を介して互いに向かい合う液滴の表面が接触し、液滴界面2を形成した(受動的形成と呼ばれ得る)。このアプローチを使用して、いくつかの実施形態では、DIBは、2つ以上の液滴間に作製され得る。3つの液滴1に適用されたこの段階の例を、図20の右側に示す。
【0351】
そのような液滴界面2の形成は、可逆的なプロセスであった。
【0352】
制御電子機器38は、DNAシーケンシング信号を不明瞭にするノイズを生成したが、液滴界面2への細孔挿入などの大きな電流事象を観察することは依然として可能である。実例として、装置は、AM-EWODデバイス34が低ノイズモードに電力を供給され得、電流を記録しながら液滴界面を形成するように液滴が位置するように設定した。
【0353】
図21は、このように記録された電流を示す。この信号内で、液滴界面2の形成、解凍、再形成、および細孔挿入を観察することが可能である。細孔挿入ならびに膜の切断および再接続の多数のサイクルを示す。黒太矢印は、細孔挿入を示す。記録時間バーは、記録モードを示し、EWODon時間バーは、EWODモードを表し、作動時間バーは、液滴の作動および成形を示す。液滴作動中にスケール外のノイズが観察された。
【0354】
細孔挿入は、300mVで0~約200pAの電流でのジャンプとして観察された。細孔挿入後、電圧をゼロに切り替え、システムをEWODモードに切り替えた。液滴1を分離し、次いで、液滴界面を再形成した。この間、ノイズは現在の録音機器のスケールを超えていることに留意されたい。
【0355】
次いで、システムを記録モードに切り替え、300mVの電圧を印加した。別の細孔挿入を観察した後、合計3つの細孔挿入および液滴界面2の2つの分離のサイクルをもう一度繰り返した。これは、AM-EWODデバイス34において、液滴界面2を形成し、細孔を挿入し、液滴1を分離し、液滴界面2を繰り返し再形成する能力を実証する。
【0356】
DNAの検出およびシーケンシングは、以下のように実行された。
【0357】
両親媒性分子を流体媒体60ではなく液滴1に置くことにより、いくつかの実施形態では、非対称膜を作製することが可能になる。例えば、いくつかの実施形態では、DNA液滴は、反対の液滴に対して低濃度のポリマー小胞を有することができ、またはそれは、完全に異なるポリマー組成を有することができる。これは、いくつかの実施形態では、サンプル調製、DIB形成、細孔挿入、DNAシーケンシング、またはさらなるプロセスを最適化する際の柔軟性を提供し得る。
【0358】
一例では、図22に示すように、非対称の液滴1のペア1を使用して、短いDNA鎖(アダプター)を検出した。図22は、細孔挿入を支援するためにDNA液滴(上部)に2mg/mL未満の濃度を有する両親媒性分子の膜を含む液滴界面2の例を示す。反対側の液滴(下部)のポリマー濃度が高いほど、安定性を支援する。
【0359】
図23は、図22の液滴界面から得られる特徴的なアダプター信号の例を示す。pAで示す電流レベルは、開いた細孔(2)およびアダプターが占有している細孔を表す。図23では、アダプター封鎖の特徴的な波線は、細孔の品質および全体的なシステム構成を確立する、容易に認識可能な信号である。
【0360】
いくつかの実施形態では、同じアプローチを適用して、DNAの一本鎖からシーケンシング信号を得ることができる。液滴界面2は、3.6Kbの1本鎖DNAサンプル、シーケンシング試薬および酵素、ポリマー小胞、メディエーターバッファー、ならびにナノ細孔を含有する液滴1から作製された。反対側の液滴1には、両親媒性分子の小胞およびメディエーター+塩が含有され、DNA液滴1と浸透圧的にバランスが取れていた。
【0361】
単一の細孔挿入を観察した後、制御電子機器38を取り外し、電極を記録モードに切り替えた。シーケンシング中、DNAの鎖は、次いで印加された電圧によって引き抜かれる細孔に通じる。スレッディングの速度は、付着した酵素によって調節され、それにより液滴のATPターンオーバーによって電力を供給する。
【0362】
この実験で使用したDNAは、既知の配列を有する標準的な3.6Kbの長さであったため、各スタンドは、同様の時間、細孔を通り抜けると予想された。図24は、180mVでのDNAスレッディング事象を示す、電気的測定値の例を示す。現在の封鎖は、15.1秒~18.3秒まで続き、これは、1秒あたり約200塩基に相当することに留意されたい。これは、実験条件下で動作するナノ細孔で予想されるトランスロケーション速度である。対照サンプルの各DNA鎖は同一であるため、各トランスロケーション事象からの波線配列は、同じである必要がある。
【0363】
図25は、6つのトランスロケーション事象の拡張された電流トレースのプロットであり、各々がシーケンシング信号が続く特徴的な「a-basic」ピークを示す。すべてのトレースが同じプロファイルを持つことに留意されたい。6つのトランスロケーション事象のこれらの現在のトレースの大まかな配列は、信号パターンがDNAの各鎖で同じであることを示す。
【0364】
実施例2
図29Aおよび29Bは、いくつかの実施形態に従って、溶解の前後のEWOD上のHeLa細胞をそれぞれ示す。画像の両側で垂直に走る2つの少し暗い領域は、電極48(つまり、ITO電極)である。電極は、溶解ステーションとして使用された。各電極の中央にある黒丸または孔は、ITOを露出させるために疎水性コーティング(例えば、テフロンAF)が除去されたエリアを示す。画像の中央の明るい垂直領域は、電極間のITOフリー領域である。明るいスポットは、HeLa細胞である。図27Aは、特定の実施形態に従って、溶解信号が印加される前に電極上に分配された細胞を示し、一方、図27Bは、特定の実施形態に従って、溶解信号が印加された後に電極間に無傷の細胞がなかったことを示す。細胞溶解は、GFP蛍光強度の衰退として観察され、これは、理論に束縛されることを望まないが、周囲の水溶液へのGFPおよびすべての細胞質内容物の拡散が原因であると推定される。
【0365】
図30A~30Cは、特定の実施形態に従って、ITOを露出するためにコーティングが除去されたチップの図であり、したがって、各電極の中央の暗い円または孔を明らかにしない。いくつかの実施形態では、インジウムおよびスズ酸化物によるサンプルの分解および/または汚染を抑制し、通過する電流が少ないため、コーティングを使用することが好ましい。図30Aは、特定の実施形態に従って、液滴中にランダムにある緑色蛍光タンパク質(GFP)を有するHeLa細胞を有する装置の一部分を示し、一方、図30Bは、特定の実施形態に従って、装置が液滴内の特定の領域で細胞を集中するために誘電泳動を実行することができることを示す。いくつかの実施形態では、DEPを使用して、溶解シグナルを使用して溶解する前に細胞を整列させることができる。これにより、溶解プロセスの効率が改善する。図30Cは、特定の実施形態に従って、いくつかの細胞が溶解されたことを示す。
【0366】
HeLa細胞を含有する液滴を2つのITO電極の下の位置に移動させた。図30Bにより、500kHzの7Vrms電場を上部プレート上のITO電極に適用し、TFTアレイの機能に合わせて細胞を駆動した。細胞が所定の位置にあると、100Vの50msのパルスがITO電極に適用され、図30Cに示される線がないことによって図30Cに示されるように並ぶ細胞を溶解させた。細胞が、界面活性剤または他の試薬を使用せずに溶解されたことに留意することが重要である。溶解後、溶解を繰り返す前に、DEPを使用して、任意の破壊されていない細胞を液滴内で整列させることができる。
【0367】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびそれらが引用される資料は、参照により明確に組み込まれる。
【0368】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲のいかなる参照符号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。もちろん、必ずしもすべての態様または利点が本発明の特定の実施形態に従って達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示または示唆され得る他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点のグループを達成または最適化する方法で本発明を具体化または実施することができることを認識するであろう。
【0369】
本発明は、組織および動作方法の両方に関して、その特徴および利点と共に、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。本発明の態様および利点は、以下に記載される実施形態(複数可)を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうであってもよい。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられて、開示を簡素化し、様々な発明的態様のうちの1つ以上の理解を支援することを目的とする場合があることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求された発明が各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴にあるわけではない。
【0370】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「ポリヌクレオチド結合タンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「細孔」への言及は2つ以上の細孔などを含む。
【0371】
本明細書中のすべての考察において、アミノ酸の標準的な1文字のコードが使用される。それらは以下の通りである:アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)。標準的な置換記法も使用され、すなわち、Q42Rは、42位におけるQがRで置換されていることを意味する。
【0372】
当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または日常実験にすぎないことを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図30C