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特許7333799自律走行作業車両の制御方法および自律走行システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】自律走行作業車両の制御方法および自律走行システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230818BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230818BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021000752
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106054
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 志郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170228(JP,A)
【文献】特開2013-23116(JP,A)
【文献】特開2019-96342(JP,A)
【文献】特開2017-173986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のマーカユニットのマーカ部を検知して、自律走行作業車両に対する前記マーカユニットの相対的な位置関係を示すマーカ検知情報を取得することと、
前記マーカユニットの位置を示す第1位置情報を取得することと、
前記自律走行作業車両の位置を示す第2位置情報を取得することと、
前記マーカ検知情報を取得しており、かつ、前記第1位置情報および前記第2位置情報を取得していることを条件に、前記マーカユニットを追従する前記自律走行作業車両の自律走行を開始する操作を受け付けることと、
前記マーカ検知情報、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて前記自律走行作業車両の移動を制御することと、
を含む、
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記自律走行作業車両の前記自律走行を制御する方法がそれぞれ異なる複数の動作モードを、前記マーカ部の検知の成否と、前記第1位置情報および前記第2位置情報の取得の成否とに基づいて切り替えること
をさらに含む、
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記複数の動作モードは、
前記マーカ部を検知しており、かつ、前記第1位置情報および前記第2位置情報を取得しているときに実行される第1動作モード
を含み、
前記自律走行を開始するときに、前記マーカ部の第1基準点から前記自律走行作業車両の第2基準点までの車幅方向の距離である横オフセットの基準値を、前記マーカ検知情報に基づいて算出することと、
前記横オフセットの前記基準値を記憶装置に格納することと、
前記第1動作モードにおいて、前記マーカ部の前記第1基準点から前記自律走行作業車両の前記第2基準点までの進行方向の距離である第1距離を第1範囲内に保ち、かつ、前記基準値を含む第2範囲内に前記横オフセットを保つように、前記マーカ検知情報、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて前記自律走行作業車両を制御することと、
をさらに含む、
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記複数の動作モードは、
前記マーカ部を検知しておらず、かつ、前記第1位置情報および前記第2位置情報を取得していないときに実行される第2動作モード
をさらに含み、
前記第1動作モードにおいて、複数の時刻に取得された複数の前記第1位置情報および複数の前記第2位置情報を前記複数の時刻にそれぞれ対応付けて前記記憶装置に格納することと、
前記第2動作モードにおいて、前記複数の第1位置情報に基づいて前記マーカユニットが移動した第1移動経路を示す第1移動経路情報を算出し、前記自律走行作業車両が前記第1動作モードにおいて移動すると推定される第2移動経路を示す第2移動経路情報を、前記第1移動経路と前記横オフセットの前記基準値に基づいて算出し、前記自律走行作業車両が前記第2移動経路に沿って移動するように、前記自律走行作業車両の前記自律走行を前記第2移動経路情報に基づいて制御することと、
をさらに含む、
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記複数の動作モードは、
前記マーカ部を検知しており、かつ、前記第1位置情報または前記第2位置情報の少なくとも一方を取得していないときに実行される第3動作モード
をさらに含み、
前記第3動作モードにおいて、前記第1距離を前記第1範囲内に保ち、かつ、前記第2範囲内に前記横オフセットを保つように、前記マーカ検知情報に基づいて前記自律走行作業車両を制御すること、
をさらに含む
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記マーカ部以外の障害物をさらに検知して前記自律走行作業車両に対する前記障害物の相対的な位置関係を示す障害物検知情報をさらに取得することと、
前記自律走行作業車両が前記障害物を回避するように、前記障害物検知情報に基づいて前記自律走行作業車両を制御することと、
をさらに含む
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
前記マーカ検知情報を取得しておらず、かつ、前記第1位置情報または前記第2位置情報の少なくとも1つを取得していないとき、前記自律走行を停止すること、
をさらに含む
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の自律走行作業車両の制御方法において、
LiDAR(Light Detection and Ranging:光検出と測距)を用いて前記マーカ部までの距離を測定すること、
をさらに備える
自律走行作業車両の制御方法。
【請求項9】
所定の車両に取り付けられ、外部から検知されるマーカ部を備え、自身の位置を示す第1位置情報を送出するマーカユニットと、
所定の作業車両に取り付けられ、前記マーカ部を検知した検知情報と、前記第1位置情報と、前記作業車両の位置を示す第2位置情報とに基づいて前記車両の前記マーカユニットを追従する前記作業車両の自律走行を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記検知情報を取得しており、かつ、前記第1位置情報を取得しており、かつ、前記第2位置情報を取得していることを条件に、前記自律走行を開始する操作を受け付ける
自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自律走行作業車両の制御方法および自律走行システムに関し、例えば、先導する車両に追従する自律走行作業車両を制御する自律走行作業車両の制御方法と、この自動走行作業車両を含む自律走行システムとに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
先導する車両を別の作業車両が追従して自律走行することができれば、1人の使用者が一度に2台またはそれ以上の車両を目的地まで移動させることができる。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特開2019―170228号公報)には、自動走行装置が開示されている。特許文献1では、先導する随伴対象車両にマーカを設け、追従する作業車両にこのマーカを検出するセンサと、この検出の結果に基づいてマーカまでの距離とマーカへの方向を測定する自動走行制御部とを設ける。自動走行制御部が作業車両の走行速度と操舵角を制御することによって、作業車両は随伴対象車両を随伴走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019―170228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、目的地に向かう経路によっては、先導する車両を追従する作業車両が見失う場合がある。例えば、見通しの悪い交差点を走行する場合や、先導する車両が90度の角度を急旋回した場合などには、特許文献1では追従する作業車両のセンサが先導する車両のマーカを検出できなくなり、自動的な走行を行えなくなる。
【0006】
そこで、一実施の形態では、マーカ部を検知して自律走行し、マーカ部の検知に失敗しても自律走行を継続できる自律走行作業車両を制御する自律走行作業車両の制御方法と、この自動走行作業車両を含む自律走行システムとを提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
一実施形態によれば、自律走行作業車両(40)の制御方法は、外部のマーカユニット(30)のマーカ部(31)を検知して、自律走行作業車両(40)に対するマーカユニット(30)の相対的な位置関係を示すマーカ検知情報を取得することと、マーカユニット(30)の位置を示す第1位置情報を取得することと、自律走行作業車両(40)の位置を示す第2位置情報を取得することと、を含む。自律走行作業車両(40)の制御方法は、さらに、マーカ検知情報を取得しており、かつ、第1位置情報および第2位置情報を取得していることを条件に、マーカユニット(30)を追従する自律走行作業車両(40)の自律走行を開始する操作を受け付けることと、マーカ検知情報、第1位置情報および第2位置情報に基づいて自律走行作業車両(40)の移動を制御することと、を含む。
【0009】
一実施の形態によれば、自律走行システムは、マーカユニット(30)と、制御装置(42)とを備える。マーカユニット(30)は、所定の車両(10)に取り付けられ、外部から検知されるマーカ部(31)を備え、自身の位置を示す第1位置情報を送出する。制御装置(42)は、所定の作業車両(41)に取り付けられ、マーカ部(31)を検知した検知情報と、第1位置情報と、作業車両(41)の位置を示す第2位置情報とに基づいて作業車両(41)の車両(10)を追従する自律走行を制御する。制御装置(42)は、検知情報を取得しており、かつ、第1位置情報を取得しており、かつ、第2位置情報を取得していることを条件に、自律走行を開始する操作を受け付ける。
【発明の効果】
【0010】
前記一実施の形態による自律走行作業車両の制御方法および自律走行システムでは、自律走行作業車両がマーカ部を検知して自律走行し、マーカ部の検知に失敗しても自律走行を継続することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施の形態による自律走行システムの一構成例を示す図である。
図2図2は、一実施の形態によるマーカユニットの一構成例を示す部分透過図である。
図3図3は、一実施の形態による制御装置の一構成例を示すブロック回路図である。
図4図4は、一実施の形態によるタブレット端末の一構成例を示すブロック回路図である。
図5図5は、一実施の形態によるタブレット端末の一表示例を示す図である。
図6図6は、一実施の形態による自律走行作業車両の制御方法およびプログラムの一構成例を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、一実施の形態による自律走行作業車両の制御方法およびプログラムの一構成例を示すフローチャートの一部である。
図7B図7Bは、一実施の形態による自律走行作業車両の制御方法およびプログラムの一構成例を示すフローチャートの一部である。
図8図8は、一実施の形態によるマーカユニットと自律走行作業車両の位置関係の一例を示す図である。
図9図9は、一実施の形態による自律走行作業車両の制御方法およびプログラムの一構成例を示すフローチャートである。
図10図10は、一実施の形態によるマーカユニットと自律走行作業車両の位置関係の一例を示す図である。
図11図11は、一実施の形態によるマーカユニットと自律走行作業車両の位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明による自律走行作業車両の制御方法および自律走行システムを実施するための形態を以下に説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による自律走行システム1は、先導する車両10の背面などに取り付けられたマーカユニット30と、マーカユニット30を追従して自律走行する自律走行作業車両40とを備える。自律走行システム1には、さらに、車両10に設けられたタブレット端末20を備える。自律走行作業車両40は、制御装置42の制御下で自律走行する作業車両41と、作業車両41の自律走行を制御する制御装置42とを備える。車両10がその前方に向かって走行すると、自律走行作業車両40は車両10を追従して自律的に走行する。
【0014】
図2に示すように、一実施の形態によるマーカユニット30は、マーカ部31と、第1測位装置32と、第1通信装置33とを備える。マーカユニット30は、さらに、車両10の車体に着脱自在に取り付けられるための図示しない着脱装置と、第1測位装置32および第1通信装置33に電力を供給するための図示しない電源装置とを備えている。
【0015】
マーカ部31は、自律走行作業車両40から検知されるために、マーカユニット30の表面に露出するように設けられている。マーカ部31は、自律走行作業車両40から検知されるために、所望の形状を有している。マーカ部31は、画像認識技術によって検知されやすいように、色が異なる複数の領域を有していてもよいし、LiDAR(Light Detection and Ranging:光検出と測距)によって検知されやすいように、反射率が異なる複数の領域を有していてもよいし、これら領域の組み合わせを有していてもよい。
【0016】
第1測位装置32は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などの測位手段を利用して、マーカユニット30の位置を示す第1位置情報を取得する。第1位置情報は、例えば、マーカユニット30の緯度および経度をそれぞれ示す第1緯度情報と第1経度情報を含む。第1測位装置32は、複数の時刻において複数の第1位置情報を取得する。これら複数の第1位置情報は、一定期間ごとに取得されてもよい。第1測位装置32をマーカユニット30の所望の位置に固定し、マーカユニット30に基準となる第1基準点を配置することで、第1測位装置32は実質的に第1基準点の位置を示す第1位置情報を取得することができる。
【0017】
第1通信装置33は、第1位置情報を外部に送信する。第1通信装置33は、第1位置情報を、自律走行作業車両40の制御装置42が受信できるように送信する機能を有する。
【0018】
制御装置42は、いわゆるコンピュータを含んでいてもよい。図3に示すように、制御装置42は、バス421と、演算装置422と、記憶装置423と、入出力装置424と、検知装置425と、第2測位装置426と、第2通信装置427とを備える。演算装置422、記憶装置423、入出力装置424、検知装置425、第2測位装置426および第2通信装置427は、バス421を介して互いに通信可能に接続されている。
【0019】
演算装置422は、記憶装置423に格納されているプログラムを読み出して実行することによって、制御装置42の機能を実現する。言い換えれば、演算装置422とプログラムが協働することによって、制御装置42の機能は実現される。制御装置42の機能には、自律走行作業車両40の制御方法を実現する機能が含まれる。このプログラムは、外部の記録媒体428から読み出されて記憶装置423に格納されたものであってもよい。この記録媒体428は、非一時的かつ有形の媒体(non-transitory and tangible medium)である。
【0020】
入出力装置424は、制御装置42への操作などを入力するための入力装置と、制御装置42の状態などを示すための出力装置とを含んでいてもよい。
【0021】
検知装置425は、マーカユニット30のマーカ部31を検知して、マーカユニット30との相対的な位置関係を示すマーカ検知情報を取得する。検知装置425を含む制御装置42を作業車両41の所定の位置に固定することによって、検知装置425はマーカ部31を検知して作業車両41に対するマーカユニット30の相対的な位置関係を示すマーカ検知情報を取得することができる。マーカ部31の検知とマーカ検知情報の取得は、複数の時刻において行われてもよく、さらに一定期間ごとに行われてもよい。検知装置425はLiDAR装置を備えており、マーカ部31をLiDAR技術によって検知することによって、マーカ検知情報を取得することができる。
【0022】
検知装置425は、マーカ部31以外の、検知装置425の前方にある障害物を検知して、作業車両41に対する障害物の相対的な位置関係を示す障害物検知情報を取得することもできる。また、制御装置42の演算装置422は、障害物検知情報に基づいて、作業車両41が障害物を回避するように、作業車両41を制御することができる。ここで、演算装置422は、たとえ検知装置425がマーカ部31の検知に失敗している状態であったとしても、この状態とは関係なく、障害物を回避するように作業車両41を制御できる。
【0023】
第2測位装置426は、第1測位装置32と同様にGNSSなどの測位手段を利用して、制御装置42の位置を示す第2位置情報を取得する。第2位置情報は、例えば、制御装置42の緯度および経度をそれぞれ示す第2緯度情報と第2経度情報を含む。第2測位装置426は、複数の時刻において複数の第2位置情報を取得する。これら複数の第2位置情報は、一定期間ごとに取得されてもよい。制御装置42を作業車両41の所望の位置に固定し、作業車両41に基準となる第2基準点を配置することで、第2測位装置426は実質的に第2基準点の位置を示す第2位置情報を取得することができる。
【0024】
第2通信装置427は、第1通信装置33から送信された第1位置情報を受信して取得する。
【0025】
第1位置情報と第2位置情報は、記憶装置423に格納される。複数の時刻において取得された複数の第1位置情報と複数の第2位置情報は、それぞれが取得された複数の時刻に対応付けられて記憶装置423に格納される。
【0026】
第2通信装置427は、さらに、タブレット端末20に向けて各種の情報を送信する機能を有する。使用者は、車両10においてタブレット端末20に表示される作業車両41の状態を確認することができる。この詳細については後述する。
【0027】
タブレット端末20は、いわゆるコンピュータを含んでいてもよい。図4に示すように、タブレット端末20は、バス21と、演算装置22と、記憶装置23と、入出力装置24と、通信装置25とを備える。演算装置22、記憶装置23、入出力装置24および通信装置25は、バス21を介して互いに通信可能に接続されている。
【0028】
演算装置22は、記憶装置23に格納されているプログラムを読み出して実行することによって、タブレット端末20の機能を実現する。言い換えれば、演算装置22とプログラムが協働することによって、タブレット端末20の機能は実現される。このプログラムは、外部の記録媒体26から読み出されて記憶装置23に格納されたものであってもよい。この記録媒体26は、非一時的かつ有形の媒体である。
【0029】
入出力装置24は、情報を表示して出力する表示装置と、使用者によるタッチ操作を入力するためのタッチデバイスとが一体化されたタッチパネルを備えている。
【0030】
通信装置25は、第2通信装置427から送信された情報を受信する。
【0031】
図5を参照して、タブレット端末20のタッチパネル60による表示の一例について説明する。図5に示すように、タブレット端末20のタッチパネル60には複数の表示領域61~69が用意されている。
【0032】
表示領域61は、非常停止のボタンとして機能する。使用者が表示領域61をタッチ操作することによって、自律走行システム1による自律走行作業車両40の自律走行を非常停止することができる。
【0033】
表示領域62は、自律走行システム1の各種パラメータを表示する。使用者は、車両10に乗ったままタブレット端末20の表示領域62を目視することによって、作業車両41のエンジン負荷率、PTO(Power Take Off:パワーテイクオフ)回転速度、車速、エンジン回転速度、作業機の高さなどのパラメータを一度に確認することができる。
【0034】
表示領域63は、自律走行を開始する操作を受け付けられる状態にあるとき、自律走行を開始するためのボタンとして機能する。使用者は、この状態において、表示領域63をタッチ操作することによって、自律走行を開始することができる。この操作の詳細については、後述する。
【0035】
表示領域64は、作業車両41の前方に向けて搭載されたカメラから見た景色をリアルタイムで中継した映像を表示する。使用者は、車両10に乗ったままタブレット端末20の表示領域64を目視することによって、作業車両41の運転席から見た景色またはこれに近い景色を確認することができる。
【0036】
表示領域65は、作業車両41の後方に向けて搭載されたカメラから見た景色をリアルタイムで中継した映像を表示する。使用者は、車両10に乗ったままタブレット端末20の表示領域65を目視することによって、車両10からは作業車両41に遮られて見えない後方の景色またはこれに近い景色を確認することができる。
【0037】
表示領域66は、自律走行作業車両40の制御装置42から使用者に向けた報知メッセージを表示する。使用者は、タブレット端末20の表示領域66を目視することで、自律走行システム1の現在の状態を把握し、もし何らかの問題が発生している場合、または発生が予想される場合には、この問題を解消するための対処を行うことができる。報知メッセージの内容は、例えば、車両10と作業車両41の距離が基準となる距離の範囲と比較して短すぎるまたは長すぎること、作業車両41が車両10を正常に追従していること、作業車両41が車両10を追従できなくなっていること、GNSSが不調であること、などを含む。
【0038】
表示領域67は、作業車両41に対するマーカユニット30の位置関係を、作業車両41を表すアイコン671と、マーカユニット30を表すアイコン672を用いて概略的に表示する。使用者は、車両10に乗ったままタブレット端末20の表示領域67を目視することによって、車両10と作業車両41の距離が、自律走行を安全かつ安定的に行うために適正な範囲に含まれているかどうかを確認することができる。
【0039】
表示領域68は、自律走行作業車両40に車両10との距離を縮める指示を出すためのボタンとして機能する。使用者が表示領域68をタッチ操作することによって、タブレット端末20の演算装置22は、自律走行作業車両40に車両10との距離を縮めるための信号を生成し、通信装置25によってこの信号を制御装置42の演算装置422に向けて送信する。制御装置42の演算装置422は、第2通信装置427によってこの信号を受信すると、作業車両41の車速を調節するなどして、自律走行作業車両40と車両10の距離が所定の範囲に含まれるように制御する。
【0040】
表示領域69は、自律走行作業車両40に車両10との距離を伸ばす指示を出すためのボタンとして機能する。使用者が表示領域69をタッチ操作することによって、タブレット端末20の演算装置22は、自律走行作業車両40に車両10との距離を伸ばすための信号を生成し、通信装置25によってこの信号を制御装置42の演算装置422に向けて送信する。制御装置42の演算装置422は、第2通信装置427によってこの信号を受信すると、作業車両41の車速を調節するなどして、自律走行作業車両40と車両10の距離が所定の範囲に含まれるように制御する。
【0041】
図6のフローチャートを参照して、一実施の形態による自律走行システム1の自律走行の開始を準備する動作、すなわち一実施の形態による自律走行作業車両40の制御方法の開始を準備する動作と、この動作を実現するためのプログラムとの一構成例について、説明する。
【0042】
図6のフローチャートは、使用者が、自律走行作業車両40の作業車両41および制御装置42と、マーカユニット30の第1測位装置32および第1通信装置33と、タブレット端末20とを起動することで開始する。このとき、使用者は、マーカユニット30を取り付けた車両10を起動してもよい。さらに、車両10と作業車両41のどちらかまたは両方を使用者が運転するなどして、車両10と作業車両41の位置関係を初期化してもよい。
【0043】
ステップS11において、演算装置422が検知装置425によってマーカ部31の検知を試みる。詳細には、演算装置422の制御下で検知装置425がその検知範囲を走査するなどしてマーカ部31の検知を試みる。マーカ部31が検知範囲の内側に存在しており、かつ、マーカ部31の表面が検知装置425の方を向いていれば、検知装置425はマーカ部31を検知することができる。反対に、マーカ部31が検知範囲の外側に存在していない場合、および/または、マーカ部31の表面が検知装置425の方を向いていない場合は、検知装置425はマーカ部31を検知することができない。
【0044】
ステップS12において、ステップS11の検知が成功していた場合はステップS13に処理を進め、反対にステップS11の検知が失敗していた場合はステップS16に処理を進める。
【0045】
ステップS13において、演算装置422が第2測位装置426によって第2位置情報の取得を試みる。また、演算装置422が第2通信装置427によって第1位置情報の取得を試みる。
【0046】
詳細には、第2測位装置426が十分な数の人工衛星などから測位用の無線信号を受信できている場合、第2測位装置426は第2位置情報の取得に成功する。反対に、第2測位装置426が建物やトンネルなどによって隠れていて十分な数の人工衛星などから測位用の無線信号を受信できていない場合、第2測位装置426は第2位置情報の取得に失敗する。
【0047】
同様に、第1測位装置32が十分な数の人工衛星などから測位用の無線信号を受信できている場合、第1測位装置32は第1位置情報の取得に成功する。ここで、第1通信装置33から第2通信装置427への第1位置情報の送受信が成功した場合、第2通信装置427は第1位置情報の取得に成功し、第1通信装置33から第2通信装置427への第1位置情報の送受信が失敗した場合、第2通信装置427は第1位置情報の取得に失敗する。また、第1測位装置32が十分な数の人工衛星などから測位用の無線信号を受信できていない場合、第1測位装置32は第2位置情報の取得に失敗し、第2通信装置427は第1位置情報の取得に失敗する。
【0048】
ステップS14において、ステップS13の取得が全て成功していた場合はステップS15に処理を進め、反対に第1測位情報と第2測位情報のうちの少なくとも1つの取得が失敗していた場合はステップS16に処理を進める。
【0049】
ステップS15において、タブレット端末20の演算装置22が、自律走行システム1がその動作を開始するための条件が達成されたことを、タッチパネル60の表示領域63および/または表示領域66に表示して使用者に報知する。詳細には、まず、制御装置42の演算装置422が、ステップS11の検知が成功しており、かつ、ステップS13の取得が全て成功していることを条件に、自律走行を開始する操作を受け付けられる状態にあることを示す信号を生成し、この信号を第2通信装置427によってタブレット端末20の演算装置22に向けて送信する。タブレット端末20の演算装置22は、通信装置25によってこの信号を受信すると、自律走行を開始する操作を受け付けられる状態にあることを示す画像または文字列を、入出力装置24のタッチパネル60によって表示する。ステップS15の後、図6のフローチャートは終了する。
【0050】
ステップS16において、タブレット端末20の演算装置22が、自律走行システム1がその動作を開始するための条件が未達成であることを、タッチパネル60の表示領域63および/または表示領域66に表示して使用者に報知する。ステップS16の後、処理はステップS11に戻って繰り返される。この繰り返し処理は、ステップS15に到達して終了するまで繰り返されてもよいし、ステップS15に到達する前に使用者がタブレット端末20の表示領域61をタッチ操作するなどして自律走行の開始を取りやめることによって終了してもよい。
【0051】
図6のフローチャートのステップS15に次いで、使用者がタブレット端末20の表示領域63をタッチ操作することによって、一実施の形態による自律走行が開始する処理について説明する。タブレット端末20の演算装置22は、表示領域63がタッチ操作されたことを検出すると、自律走行を開始するための信号を生成し、通信装置25によってこの信号を制御装置42の演算装置422に向けて送信する。制御装置42の演算装置422は、第2通信装置427によってこの信号を受信すると、所定のプログラムを実行して、作業車両41の自律走行を制御する処理を開始する。
【0052】
一実施の形態による制御装置42は、作業車両41の自律走行を制御する方法がそれぞれ異なる複数の動作モードを有している。これら複数の動作モードには、第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モードが含まれる。これら複数の動作モードのうち、第1動作モードと第3動作モードは、マーカ部31の検知が成功しているときに実行可能である。また、第2動作モードは、マーカ部31の検知が失敗していても第1位置情報と第2位置情報の取得が成功しているときに実行可能である。制御装置42は、これら複数の動作モードを、マーカ部31の検知の成否と、第1位置情報および第2位置情報の取得の成否に基づいて選択的に切り替える。
【0053】
図7A図7Bのフローチャートを参照して、制御装置42がこれら複数の動作モードを切り替えるための方法とプログラムの一構成例について説明する。使用者が表示領域63をタッチ操作することによって、制御装置42の演算装置422が作業車両41の自律走行を制御する処理を開始すると、図7A図7Bのフローチャートが開始する。
【0054】
ステップS21において、制御装置42の演算装置422は、マーカ部31の検知を試みる。ステップS22において、ステップS21の検知が成功していた場合はステップS23に処理を進め、反対に検知が失敗していた場合は図7BのフローチャートのステップS27に処理を進める。ここで、図7AのフローチャートのステップS21とステップS22の処理は、図6のフローチャートのステップS11とステップS12の処理と、それぞれ同様である。
【0055】
ステップS23において、演算装置422は第1位置情報と第2位置情報の取得を試みる。ステップS24において、ステップS23の取得が全て成功していた場合はステップS25に処理を進め、反対に第1位置情報と第2位置情報のうちの少なくとも1つの取得が失敗していた場合はステップS26に処理を進める。ここで、図7AのフローチャートのステップS23とステップS24の処理は、図6のフローチャートのステップS13とステップS14の処理と、それぞれ同様である。
【0056】
ステップS25において、一実施の形態による制御装置42は、複数の動作モードの中から第1動作モードを選択して自律走行の制御を行う。
【0057】
制御装置42は、自律走行の制御と並行して、マーカ部31の検知の成否と位置情報の取得の成否の判定を続ける。つまり、処理はステップS25からステップS21に戻り、マーカ部31の検知が失敗するまで、または位置情報の取得が失敗するまで、ステップS21、ステップS22、ステップS23、ステップS24およびステップS25を繰り返す処理が続く。使用者がタブレット端末20の表示領域61をタッチ操作するなどして自律走行が停止された場合には、この繰り返し処理も停止する。
【0058】
ステップS26において、一実施の形態による制御装置42は、複数の動作モードの中から第2動作モードを選択して自律走行の制御を行う。
【0059】
制御装置42は、自律走行の制御と並行して、マーカ部31の検知の成否と位置情報の取得の成否の判定を続ける。つまり、処理は図7AのステップS26からステップS21に戻り、マーカ部31の検知が失敗するまで、または位置情報の取得が成功するまで、ステップS21、ステップS22、ステップS23、ステップS24およびステップS26を繰り返す処理が続く。使用者がタブレット端末20の表示領域61をタッチ操作するなどして自律走行が停止された場合には、この繰り返し処理も停止する。
【0060】
図7BのステップS27において、演算装置422は第1位置情報と第2位置情報の取得を試みる。ステップS28において、ステップS27の取得が全て成功していた場合はステップS29に処理を進め、反対に第1位置情報と第2位置情報のうちの少なくとも1つの取得が失敗していた場合はステップS30に処理を進める。ここで、図7AのフローチャートのステップS23とステップS24の処理は、図6のフローチャートのステップS13とステップS14の処理と、それぞれ同様である。
【0061】
ステップS29において、一実施形態による制御装置42は、複数の動作モードの中から第2動作モードを選択して自律走行の制御を行う。
【0062】
制御装置42は、自律走行の制御と並行して、マーカ部31の検知の成否と位置情報の取得の成否の判定を続ける。つまり、処理は図7BのステップS29から図7AのステップS21に戻り、マーカ部31の検知が成功するまで、または位置情報の取得が失敗するまで、ステップS21、ステップS22、ステップS27、ステップS28およびステップS29を繰り返す処理が続く。使用者がタブレット端末20の表示領域61をタッチ操作するなどして自律走行が停止された場合には、この繰り返し処理も停止する。
【0063】
ステップS30において、制御装置42の演算装置422が自律走行を終了し、図7A図7Bのフローチャートの処理は終了する。使用者がタブレット端末20の表示領域61をタッチ操作した場合などにおいても、同様に、制御装置42の演算装置422が自律走行を終了する。このように、マーカ部31の検知と位置情報の取得のうちの少なくとも1つが成功している間は自律走行を継続することで自律走行を行える距離を伸ばすことができる一方で、マーカ部31の検知と位置情報の取得の両方が失敗している状態においては自律走行を停止することで安全性を高めることができる。ここで、本実施形態による自律走行は、農道や公道での走行が想定されているため、先導する車両10と自律走行作業車両40の周囲には他の車両が走行している可能性がある。そこで、自律走行を停止するときには、その前にハザードランプなどによる周囲への報知を実行してもよい。こうすることで、他の車両、特に自律走行作業車両40より後方の後続車両との衝突などを回避することができ、安全性をさらに高めることができる。自律走行が終了した後も、図6のフローチャートの最初から自律走行を再度開始することができる。
【0064】
図7A図7Bのフローチャートで選択的されるそれぞれの動作モードについて説明する。
【0065】
第1動作モードは、マーカ部31の検知に成功し、かつ、位置情報の取得にも成功している状態で実行される。第1動作モードにおいて、制御装置42は、マーカ部31を検知して取得した検知情報が示す、作業車両41に対するマーカユニット30の相対的な位置関係に基づいて、作業車両41の車速と進行方向を制御する。
【0066】
このとき、図8に示すように、マーカユニット30が制御装置42の検知装置425の検知範囲50の内側にあり、かつ、マーカユニット30の表面が制御装置42の方を向いている限り、車両10の進行方向と作業車両41の進行方向は必ずしも一致していなくてもよい。制御装置42は、マーカユニット30が検知範囲50のうちの右側の領域にある場合には作業車両41が右に旋回するための制御を行う。反対に、制御装置42は、マーカユニット30が検知範囲50のうちの左側の領域にある場合には作業車両41が左に旋回するための制御を行う。マーカユニット30が検知範囲50のうちの中央の領域にある場合には、制御装置42は作業車両41が旋回するための制御を行わない。ここで、マーカユニット30が検知範囲50のどの領域にあるかを判定するときには、後述する横オフセットを考慮する。
【0067】
また、作業車両41からマーカユニット30までの距離が第1基準距離より短い場合には、制御装置42は作業車両41が減速するための制御を行う。反対に、作業車両41からマーカユニット30までの距離が第2基準距離より長い場合には、制御装置42は作業車両41が加速するための制御を行う。ここで、第1基準距離と第2基準距離は、それぞれ、車両10と作業車両41の距離における、自律走行を安全かつ安定的に行うために適正な範囲の、下限と上限である。第1基準距離と第2基準距離は、使用者がタブレット端末20の表示領域68と表示領域69をタッチ操作することによって調節できる。
【0068】
なお、第1動作モードが実行されるとき、第1位置情報および第2位置情報の取得にも成功している。したがって、第1動作モードでは、制御装置42は、第1位置情報と第2位置情報を利用することで、作業車両41に対するマーカユニット30の相対的な位置関係を補正することができる。
【0069】
第2動作モードは、第1位置情報および第2位置情報の取得が成功しており、かつ、マーカ部31の検知が失敗している状態で実行される。第2動作モードにおいて、制御装置42は、過去に取得されて記憶装置423に格納されている第1位置情報と第2位置情報を利用して、作業車両41に走行させる経路を算出する。
【0070】
図9のフローチャートを参照して、一実施の形態による自律走行作業車両40の制御方法およびプログラムの一構成例について説明する。
【0071】
ステップS41において、制御装置42の演算装置422が、過去に取得されて記憶装置423に格納されている第1位置情報に基づいて、マーカユニット30が過去に移動した経路を算出する。少なくとも図6のフローチャートで自律走行を開始した瞬間には第1位置情報の取得が成功しており、この状態は第1動作モードから第2動作モードに切り替わるまで継続されている。したがって、第2動作モードが開始する直前までの、第1動作モードが実行されていた複数の時刻のそれぞれにおいて、複数の第1位置情報が取得されている。そして、前述のとおり、複数の第1位置情報は、これらの第1位置情報がそれぞれ取得された複数の時刻に対応付けられて、記憶装置423に格納されている。演算装置422は、これら複数の第1位置情報が示す複数の位置を、これら複数の第1位置情報が取得された複数の時刻の順番につなぐことで、マーカユニット30が移動した移動経路を算出することができる。
【0072】
なお、第3動作モードから第2動作モードに切り替わった場合などには、第2動作モードが開始する直前の第1位置情報が取得されていない可能性がある。このような場合は、ステップS41の方法によるマーカユニット30の移動経路の算出が困難である。そこで、図7A図7Bのフローチャートに基づく自律走行を停止し、図6のフローチャートから再度開始してもよい。以降、マーカユニット30が過去に移動した経路を算出できた場合の処理の続きを説明する。
【0073】
ステップS42において、制御装置42の演算装置422が、ステップS41で算出したマーカユニット30の移動経路と、横オフセットとに基づいて、作業車両41に走行させる移動経路を算出する。以降、区別のために、マーカユニット30の移動経路を第1移動経路と記し、作業車両41に走行させる移動経路を第2移動経路と記す。
【0074】
図10を参照して、横オフセット53について説明する。制御装置42の検知装置425は、作業車両41の車幅方向の中心に配置されるとは限らない。同様に、マーカユニット30は、車両10の車幅方向の中心に配置されるとは限らない。言い換えれば、検知装置425がマーカ部31を検知する方向である検知方向51は、車両10と作業車両41の進行方向における距離である相対距離52の方向と、平行であるとは限らない。そこで、自律走行作業車両40が車両10との間で車幅方向に所定の距離を保つように追従することで、車両10の車幅方向の中心部分が移動した経路に、自律走行作業車両40の車幅方向の中心部分が移動する経路が重なるように移動することができる。この車幅方向の距離を横オフセット53の基準値と呼ぶ。実際には、横オフセット53の基準値を含む所定の範囲内に横オフセット53を保つように、制御装置42の演算装置422は作業車両41を制御する。
【0075】
一例として、図10に示すように、横オフセット53の基準値は、車両10と作業車両41が同じ進行方向を向いており、かつ、作業車両41の車幅方向の中心部分から見て進行方向に車両10の車幅方向の中心部分が配置されている状態における、マーカ部31の第1基準点から作業車両41の第2基準点までの、車両10および作業車両41の車幅方向における距離と定義してもよい。
【0076】
一例として、横オフセット53の基準値は、自律走行を開始する前に、車両10の後方に作業車両41が配置されている状態で、制御装置42の検知装置425がマーカ部31を検知したときに、制御装置42の演算装置422が算出して記憶装置423に格納してもよい。
【0077】
図11に示すように、第2移動経路80は、第1移動経路70を、第1移動経路70に含まれる複数の第1位置情報が示す複数の位置71、72、73、74のそれぞれにおける車幅方向に、横オフセット53の基準値だけずらすことで算出できる。制御装置42の演算装置422は、複数の位置71、72、73、74を表す複数の第1位置情報に基づいて第1移動経路70を表す第1移動経路情報を算出し、この第1移動経路情報と、横オフセット53の基準値とに基づいて第2移動経路80を表す第2移動経路情報を算出する。
【0078】
ステップS43において、制御装置42の演算装置422が、作業車両41が第2移動経路80に沿って自律走行するように、作業車両41を制御する。その結果、作業車両41は、過去に取得した各種情報を使用しない場合と比較して、より高い精度で自律走行を行える。
【0079】
以上に説明したように、第2動作モードでは、過去にマーカ部31を検出したときに算出した横オフセット53の基準値と、過去に取得した第1位置情報および第2位置情報とを用いて第2移動経路80を算出することで、マーカ部31の検出が失敗している状態においても、自律走行作業車両40は車両10のマーカユニット30を追従するように自律走行を継続することができる。
【0080】
第3動作モードは、マーカ部31の検知には成功し、位置情報の取得には失敗している状態で実行される。第3動作モードにおいて、制御装置42は、マーカ部31を検知して取得した検知情報が示す、作業車両41に対するマーカユニット30の相対的な位置関係に基づいて、作業車両41の車速と進行方向を制御する。
【0081】
このとき、図8に示すように、マーカユニット30が制御装置42の検知装置425の検知範囲50の内側にあり、かつ、マーカユニット30の表面が制御装置42の方を向いている限り、車両10の進行方向と作業車両41の進行方向は必ずしも一致していなくてもよい。このことは、第1動作モードの場合と同様である。すなわち、制御装置42は、マーカユニット30が検知範囲50のうちの右側の領域にある場合には作業車両41が右に旋回するための制御を行う。反対に、制御装置42は、マーカユニット30が検知範囲50のうちの左側の領域にある場合には作業車両41が左に旋回するための制御を行う。マーカユニット30が検知範囲50のうちの中央の領域にある場合には、制御装置42は作業車両41が旋回するための制御を行わない。ここで、マーカユニット30が検知範囲50のどの領域にあるかを判定するときには、前述した横オフセットを考慮する。
【0082】
また、作業車両41からマーカユニット30までの距離が第1基準距離より短い場合には、制御装置42は作業車両41が減速するための制御を行う。反対に、作業車両41からマーカユニット30までの距離が第2基準距離より長い場合には、制御装置42は作業車両41が加速するための制御を行う。ここで、第1基準距離と第2基準距離は、それぞれ、車両10と作業車両41の距離における、自律走行を安全かつ安定的に行うために適正な範囲の、下限と上限である。第1基準距離と第2基準距離は、使用者がタブレット端末20の表示領域68と表示領域69をタッチ操作することによって調節できる。このことも、第1動作モードと同様である。
【0083】
以上に説明したように、一実施形態による自律走行作業車両40の制御方法および自律走行システム1において、自律走行作業車両40は、先導する車両10を追従して自律走行するために、車両10に取り付けられるマーカユニット30の位置を2つの手法で取得する。これら2つの手法のうち、第1の手法が使えない状態になっても、第2の手法が使える状態であれば、自律走行作業車両40は自律走行を継続することができる。また、現在は使えない手法が使えていた過去にこの手法で取得していた情報を記憶装置423に格納しておき、格納されていた過去の情報と、第2の手法だけで取得した位置情報とを組み合わせることで、自律走行作業車両40は、片方の手法だけを使う場合よりも高い精度で自律走行を継続することができる。
【0084】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0085】
上述した一実施の形態として、マーカユニット30が図示しない着脱装置を備えている構成について説明した。一実施の形態の変形例として、この着脱装置は磁石を備える。
【0086】
上述した一実施の形態の変形例として、タブレット端末20の代わりに別の情報端末を使用してもよい。この情報端末は、自律走行作業車両40の状態を示すことのできる表示装置と、使用者が自律走行システム1を操作するための入力装置と、制御装置42の第2通信装置427と通信するための通信装置とを備えていることが好ましい。
【0087】
上述した一実施の形態として、検知装置425がLiDAR装置を備えている構成について説明した。一実施の形態の変形例として、検知装置425はCCD(Charge-Coupled Device:電荷結合素子)カメラを備えていてもよい。この場合、検知装置425はマーカ部31を光学的に検知して画像認識処理を行うことによって、マーカ検知情報を取得することができる。別の変形例として、検知装置425は、CCDカメラとLiDAR装置を備えていてもよい。
【0088】
上述した一実施の形態として、作業車両41にはその前方と後方にそれぞれ向けた2台のカメラが搭載されている構成例について説明した。一実施の形態の変形例として、カメラの台数は2台に限定されず、より多くてもよいし、より少なくてもよい。また、カメラが向けられる方向は、作業車両41の前方と後方に限定されない。さらに、カメラの台数に応じて、タブレット端末20の表示領域64、65の総数と配置を適宜に変更してもよい。
【0089】
上述した一実施の形態として、図6のフローチャートのステップS11とステップS12でマーカ部31の検知を試みて成功したかどうかを判定し、ステップS13とステップS14で位置情報の取得を試みて成功したかどうかを判定した。一実施の形態の変形例として、これらの処理の順序を逆にしてもよい。つまり、ステップS11で位置情報の取得を試みてステップS12で取得に成功したかどうかを判定し、ステップS13でマーカ部31の検知を試みてステップS14で検知に成功したかどうかを判定してもよい。一実施の形態の別の変形例として、これらの処理を並行に行ってもよい。いずれの場合も、マーカ部31の検知と第1位置情報および第2位置情報の取得が全て成功している場合にステップS15に処理を進め、反対に、マーカ部31の検知が失敗している場合、および/または、第1位置情報または第2位置情報の少なくとも1つが失敗している場合にはステップS16に処理を進める。
【符号の説明】
【0090】
1 自律走行システム
10 車両
20 タブレット端末
21 バス
22 演算装置
23 記憶装置
24 入出力装置
25 通信装置
26 記録媒体
30 マーカユニット
31 マーカ部
32 第1測位装置
33 第1通信装置
40 自律走行作業車両
41 作業車両
42 制御装置
421 バス
422 演算装置
423 記憶装置
424 入出力装置
425 検知装置
426 第2測位装置
427 第2通信装置
428 記録媒体
50 検知範囲
51 検知方向
52 相対距離
53 横オフセット
60 タッチパネル
61~69 表示領域
671、672 アイコン
70 第1移動経路
71~74 位置
80 第2移動経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11