(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】向上されたドレイン電流ドリフト及び/又は漏れ電流性能を有する高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230818BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230818BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230818BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230818BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301N
(21)【出願番号】P 2021538969
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2019068557
(87)【国際公開番号】W WO2020142345
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョン - グン
(72)【発明者】
【氏名】ラデュルスク、ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、スコット
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100471(JP,A)
【文献】特表2008-507843(JP,A)
【文献】特開2012-044003(JP,A)
【文献】特開2015-072975(JP,A)
【文献】特開2014-187084(JP,A)
【文献】特開2014-078568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタであって、
チャンネル層と;
前記チャンネル層上のバリア層であって、前記バリア層は、前記チャンネル層に隣接する下側面と前記下側面の反対側の上側面とを有する、バリア層と;
前記バリア層の前記上側面上のソース接点と;
前記バリア層の前記上側面上のドレイン接点と;
前記ソース接点と前記ドレイン接点との間の前記バリア層の前記上側面上のゲート接点と;
前記ソース接点と前記ドレイン接点との間の前記バリア層の前記上側面上の第1のパッシベーション層と;
前記ソース接点と前記ドレイン接点との間の前記バリア層の前記上側面上の第2のパッシベーション層と;
を備え、
前記バリア層の前記上側面に第1の凹部と第2の凹部を備え、
前記第2のパッシベーション層は前記第1の凹部及び前記第2の凹部の両方の内部にあって前記第1の凹部及び前記第2の凹部の両方
に充填され、
前記第1の凹部は前記ソース接点に隣接し、前記第2の凹部は前記ドレイン接点に隣接し、
前記第1のパッシベーション層及び前記第2のパッシベーション層の両方は前記バリア層に直接的に接触し、
前記第1のパッシベーション層は電荷散逸材料である第1の材料を含み、前記第2のパッシベーション層は前記第1の材料とは異なる第2の材料を含む、高電子移動度トランジスタ。
【請求項2】
前記第1の材料は、窒素に対するケイ素の第1の比率を有する第1の窒化ケイ素材料であり、前記第2の材料は、窒素に対するケイ素の第2の比率を有する第2の窒化ケイ素材料であり、窒素に対するケイ素の前記第1の比率は、窒素に対するケイ素の前記第2の比率よりも少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ大きい、請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項3】
前記バリア層の前記上側面に第3の凹部を更に備え、前記第2のパッシベーション層は前記第3の凹部内にあり、前記第3の凹部は前記ゲート接点の下にある、請求項1から2までのいずれか一項に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項4】
前記第2のパッシベーション層は前記第1のパッシベーション層を覆う、請求項1から3までのいずれか一項に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項5】
前記第1のパッシベーション層は、前記ソース接点と前記ゲート接点との間にある前記バリア層の前記上側面の部分の第1のパーセンテージに直接的に接触し、前記ゲート接点と前記ドレイン接点との間にある前記バリア層の前記上側面の部分の第2のパーセンテージに直接的に接触し、前記第2のパーセンテージは前記第1のパーセンテージとは少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ大きい、請求項1から4までのいずれか一項に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項6】
前記第2のパーセンテージは前記第1のパーセンテージよりも少なくとも20パーセンテージ・ポイントだけ大きい、請求項5に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項7】
前記第2のパッシベーション層は、前記ソース接点と前記ゲート接点との間にある前記バリア層の前記上側面の部分の第3のパーセンテージに直接的に接触し、前記ゲート接点と前記ドレイン接点との間にある前記バリア層の前記上側面の部分の第4のパーセンテージに直接的に接触し、前記第4のパーセンテージは前記第3のパーセンテージとは少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ大きい、請求項1から5までのいずれか一項に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項8】
前記第4のパーセンテージは前記第3のパーセンテージを少なくとも50パーセンテージ・ポイントだけ上回る、請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその内容の全体が本明細書に組み込まれる2019年1月3日出願の米国特許出願第16/238,853号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書において説明される本発明の概念は、半導体デバイスに関し、より詳細には高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ素及びガリウムヒ素などの低バンドギャップ半導体材料で形成された電子デバイスは、より低電力及び(ケイ素の場合)より低周波数の適用用途において広範な適用用途を見いだしている。しかしながら、これらの半導体材料は、それらの比較的小さなバンドギャップ(例えば、室温においてケイ素で1.12eV及びガリウムヒ素で1.42eV)及び/又は比較的小さな破壊電圧のため、より高電力及び/又はより高周波数の適用用途にはあまり適さないことがある。
【0004】
高電力、高温及び/又は高周波数の適用用途では、炭化ケイ素(室温においてアルファ炭化ケイ素で2.996eVバンドギャップ)及び第III族窒化物(例えば、室温において窒化ガリウムで3.36eVバンドギャップ)などの広いバンドギャップ半導体材料で形成されたデバイスがしばしば使用される。これらの材料は、典型的には、ガリウムヒ素及びケイ素と比べて、より高い電界破壊強度及びより高い電子飽和速度を有する。
【0005】
高電力及び/又は高周波数の適用用途のために特に関心が持たれているデバイスは、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)である。HEMTデバイスは、2次元電子ガス(2DEG:Two-dimensional Electron Gas)が、異なるバンドギャップエネルギーを有する2つの半導体材料のヘテロ接合部に形成されるので、いくつかの環境の下で動作上の利点を提供し得、より小さなバンドギャップの材料はより高い電子親和度を有する。2DEGは、より小さなバンドギャップ材料における蓄積層であり、非常に高いシート電子濃度を含み得る。加えて、より広いバンドギャップ半導体において生じる電子は2DEG層に移動し、イオン化された不純物の散乱の低下に起因する高電子移動度を可能とする。高キャリア濃度と高キャリア移動度とのこの組合せが、非常に大きな相互コンダクタンスをHEMTに与え得、高周波数の適用用途のための金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に対する強い性能優位性を提供し得る。
【0006】
第III族窒化物ベースの材料系で作成された高電子移動度トランジスタは、前述された高い破壊電界、広いバンドギャップ、大きな導電帯オフセット、及び/又は高い飽和電子ドリフト速度を含む材料特性の組合せのために、大量の無線周波数(RF:Radio Frequency)電力を生成する潜在性を有する。本明細書において使用されるとき、「第III族窒化物」という用語は、窒素(N)と周期表の第III族の元素、通常は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及び/又はインジウム(In)との間に形成される半導体化合物を指す。この用語は、例えばAlGaN及びAlInGaNなどの三元及び四元(又は更に高い)化合物も指す。当業者にはよく理解されているように、第III族元素は窒素と結合して二元(例えば、GaN)、三元(例えば、AlGaN、AlInN)、及び四元(例えば、AlInGaN)化合物を形成し得る。これらの化合物は全て、1モルの窒素が合計で1モルの第III族元素と結合される実験式を有する。
【0007】
図1Aは、従来の窒化ガリウムベースの高電子移動度トランジスタ100の概略的な平面図であり、
図1Bは、
図1Aの線1B-1Bに沿った高電子移動度トランジスタ100の概略的な断面図である。
図1A~
図1Bにおいて図示されるように、高電子移動度トランジスタ100は、例えば炭化ケイ素基板などの基板110上に形成され得る。任意選択的なバッファ層120が基板110上に形成され得、チャンネル層130が基板110の反対側でバッファ層120上に形成される。バリア層140が基板110の反対側でチャンネル層130上に形成される。チャンネル層130及びバリア層140は、第III族窒化物ベースの材料を含み得、チャンネル層130はバリア層140のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する。基板110、バッファ層120、チャンネル層130及びバリア層140は、一緒に半導体構造102を形成し得る。ソース接点150及びドレイン接点152がバリア層140の上側面上に形成され、これらは横方向に互いから離間されている。ゲート接点154が、ソース接点150とドレイン接点152との間のバリア層140の上側面上に形成される。パッシベーション層160が、バリア層140の上面の露出された部分を覆う。HEMTデバイス100が導電状態又は「オン」状態になるようにバイアスされたとき、2DEG層132がチャンネル層130とバリア層140との間の接合部に形成される。2DEG層132は、ソース接点150、ドレイン接点152の下にそれぞれあるデバイスのソース及びドレイン領域の間に電流が流れることを可能とする非常に導電性の高い層として働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2003/0102482(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のいくつかの実施例に従って、高電子移動度トランジスタであって、チャンネル層と、チャンネル層上のバリア層であって、バリア層は、チャンネル層に隣接する下側面と下側面の反対側の上側面とを有する、バリア層と、バリア層の上側面上のソース接点と、バリア層の上側面上のドレイン接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上のゲート接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上のパッシベーション層とを含む、高電子移動度トランジスタが提供される。バリア層の上側面に第1の凹部が設けられ、パッシベーション層は第1の凹部内にある。
【0010】
いくつかの実施例において、パッシベーション層は第2のパッシベーション層を備え得、トランジスタは、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上の第1のパッシベーション層を更に含み、第1のパッシベーション層及び第2のパッシベーション層の両方はバリア層に直接的に接触する。このような実施例において、第1のパッシベーション層は第1の材料であり得、第2のパッシベーション層は、第1の材料とは異なる第2の材料であり得る。例えば、第1の材料は、窒素に対するケイ素の第1の比率を有する第1の窒化ケイ素材料であり得、第2の材料は、窒素に対するケイ素の第2の比率を有する第2の窒化ケイ素材料であり得、窒素に対するケイ素の第1の比率は、窒素に対するケイ素の第2の比率よりも少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ大きい。他の例示的な実施例において、第1の材料はアルミナであり得、第2の材料は窒化ケイ素であり得る。いくつかの実施例において、第1の材料は電荷散逸材料であり得る。
【0011】
いくつかの実施例において、第1の凹部はゲート接点の下にあり得、第2のパッシベーション層は第1の凹部内にあり得る。他の実施例において、第1の凹部は、ソース接点又はドレイン接点のうちの1つに隣接し得る。いくつかの実施例において、トランジスタは、前記凹部とバリア層の上側面に第2の凹部とを含み得、第2のパッシベーション層は第1の凹部及び第2の凹部の両方の内部にある。例えば、第1の凹部はソース接点に隣接し得、第2の凹部はドレイン接点に隣接し得る。いくつかの実施例において、トランジスタは、バリア層の上側面に第3の凹部を更に含み得、第2のパッシベーション層は第3の凹部内にあり、第3の凹部はゲート接点の下にある。
【0012】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層を覆い得る。
【0013】
いくつかの実施例において、第1のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第1のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第2のパーセンテージに直接的に接触し得、第1のパーセンテージは第2のパーセンテージとは少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ異なる。例えば、1つの具体的な実施例において、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージよりも少なくとも20パーセンテージ・ポイントだけ大きくなり得る。
【0014】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第3のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第4のパーセンテージに直接的に接触し得、第3のパーセンテージは第4のパーセンテージとは少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ異なる。例えば、1つの具体的な実施例において、第3のパーセンテージは第4のパーセンテージを少なくとも50パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。
【0015】
本発明の更なる実施例に従って、高電子移動度トランジスタであって、チャンネル層と、チャンネル層上のバリア層であって、バリア層は、チャンネル層に隣接する下側面と下側面の反対側の上側面とを有する、バリア層と、バリア層の上側面上のソース接点と、バリア層の上側面上のドレイン接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上のゲート接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上の第1のパッシベーション層とを含む、高電子移動度トランジスタが提供される。第1のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第1のパーセンテージに直接的に接触し、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第2のパーセンテージに直接的に接触し、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージとは異なる。
【0016】
いくつかの実施例において、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージを少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。他の実施例において、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージを少なくとも30パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。
【0017】
いくつかの実施例において、トランジスタは、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面に直接的に接触する第2のパッシベーション層を更に含み得、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層とは異なる材料を含む。第1のパッシベーション層は電荷散逸材料であり得る。例えば、第1のパッシベーション層はケイ素リッチな窒化ケイ素又はアルミナであり得る。
【0018】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第3のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第4のパーセンテージに直接的に接触し得、第4のパーセンテージは第3のパーセンテージとは異なる。例えば、第3のパーセンテージは第4のパーセンテージを少なくとも30パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。
【0019】
いくつかの実施例において、第1のパッシベーション層は電荷散逸材料であり得る。
【0020】
いくつかの実施例において、バリア層は、その上側面に少なくとも1つの凹部を含み得、第2のパッシベーション層は少なくとも1つの凹部内に蒸着され得る。例示的な実施例において、少なくとも1つの凹部はゲート接点の下にある凹部を含み得る。
【0021】
本発明のなおも更なる実施例に従って、高電子移動度トランジスタであって、チャンネル層と、チャンネル層上のバリア層であって、バリア層は、チャンネル層に隣接する下側面と下側面の反対側の上側面とを有する、バリア層と、バリア層の上側面上のソース接点と、バリア層の上側面上のドレイン接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面上のゲート接点と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面に直接的に接触する第1のパッシベーション層であって、第1のパッシベーション層は電荷散逸材料を含む、第1のパッシベーション層と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面に直接的に接触する第2のパッシベーション層であって、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層とは異なる材料を含む、第2のパッシベーション層とを含む、高電子移動度トランジスタが提供される。
【0022】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層の上側面上にもあり得る。
【0023】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層は電荷散逸材料でなくてよい。
【0024】
いくつかの実施例において、電荷散逸材料はケイ素リッチな窒化ケイ素又はアルミナであり得る。
【0025】
いくつかの実施例において、第1の凹部がバリア層の上側面に設けられ得、第2のパッシベーション層は第1の凹部内にあり得る。第1の凹部は、例えば、ゲート接点の下にあり得、又はソース接点又はドレイン接点のうちの1つに隣接し得る。いくつかの実施例において、トランジスタは、バリア層の上側面に第2の凹部を更に含み得、第2のパッシベーション層は第2の凹部内にあり、第1の凹部はソース接点に隣接し、第2の凹部はドレイン接点に隣接する。トランジスタは、バリア層の上側面に第3の凹部を更に含み得、第2のパッシベーション層は第3の凹部内にあり、第3の凹部はゲート接点の下にある。第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層を覆い得る。
【0026】
いくつかの実施例において、第1のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第1のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の上側面の部分の第2のパーセンテージに直接的に接触し得、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージを少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ上回る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】従来の高電子移動度トランジスタの概略的な平面図である。
【
図1B】
図1Aの線1B-1Bに沿った概略的な断面図である。
【
図2】様々な電流パスが特定された
図1Bの断面図である。
【
図3A】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な平面図である。
【
図3B】
図3Aの線3B-3Bに沿った概略的な断面図である。
【
図4】高電子移動度トランジスタのソースからドレインへの電流が、ドレイン電流ドリフトに起因して定常状態動作条件中に時間経過とともにどのように変化し得るかを示すグラフである。
【
図5A】本発明の更なる実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な平面図である。
【
図5B】本発明の更なる実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な断面図である。
【
図6A】本発明のなおも更なる実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な平面図である。
【
図6B】本発明のなおも更なる実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な断面図である。
【
図7】本発明の追加的な実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な断面図である。
【
図8】本発明のなおも更なる実施例による高電子移動度トランジスタの概略的な断面図である。
【
図9A】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【
図9B】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【
図9C】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【
図9D】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【
図9E】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【
図9F】本発明の実施例による高電子移動度トランジスタを作成する方法を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例は、向上されたドレイン電流ドリフト及び/又は漏れ電流性能を呈し得る高電子移動度トランジスタに関する。
【0029】
図2は、様々な電流パスが示された
図1Bの断面図である。
図2において図示されるように、高電子移動度トランジスタにおける一次的なオン状態の導電パスは、ドレインからソースへの電流I
DSがソース接点150とドレイン接点152との間に流れることを可能とする2DEG層132に形成される導電パス170である。しかしながら、やはり
図2において図示されるように、従来の高電子移動度トランジスタ100においては追加的な電流パスが存在し得る。これらの追加的な電流パスは、半導体構造102とパッシベーション層160との間の界面に沿ったソース接点150とゲート接点154との間の電流パス172、及び半導体構造102とパッシベーション層160との間の界面に沿ったゲート接点154とドレイン接点152との間の電流パス174を含む。電流パス172及び174は、デバイスのゲート漏れ電流I
G及びドレイン漏れ電流I
Dに影響を与える。
図2において示された追加的な電流パス172、174は、一般的に、望ましくない電流パスである。
【0030】
高電子移動度トランジスタ100は、通常はオンのHEMTとして、又は通常はオフのHEMTとして構成され得る。通常はオフのHEMTは、ソース及びドレイン接点150、152が適切にバイアスされ、ゲート接点154にバイアス電圧が印加されていないときに、デバイスがドレイン及びソース接点150、152の間に電流を導通させないように構成される。これとは対照的に、通常はオンのHEMTは、ドレイン及びソース接点150、152が適切にバイアスされ、及びゲート接点154にバイアス電圧が印加されていないときに、デバイスがソース及びドレイン接点150、152の間に電流を導通させるように構成される。故に、換言すれば、通常はオフのHEMTは、ゲート接点154にバイアス電圧を印加することによって電源オンされ得(すなわち導電状態にされ)、通常はオンのHEMTは、ゲート接点154にバイアス電圧を印加することによって電源オフされ得る(すなわち非導電状態にされる)。以下の議論は、HEMT100が通常はオンのHEMTであるものと想定するが、本発明の実施例はこれに限定されるものではない。
【0031】
困ったことに、例えば半導体構造の上側面における、電子トラップとして働く欠陥に起因して、半導体構造102において電荷が堆積し得る。この電荷の堆積は、半導体構造202における電荷の蓄積を結果的にもたらし得、これは、HEMT100がオフ状態からオン状態に切り替わるときに電流の流れを減少させ得、これはRF分散と称される。このような挙動は、HEMTデバイス100がトランジスタ増幅器として使用されるときに非線形性を生成し得、これらの非線形性は、受動相互変調(PIM:Passive Intermodulation)歪みを生じさせ得る。当技術分野において知られているように、PIM歪みは、通信システムの送信パスに沿った不所望の相互変調積の生成を指し、これは通信システムの受信パスの性能を深刻に低下させ得る。高電子移動度トランジスタのドレイン電流ドリフト性能は、例えばHEMTが定常状態条件で動作するときに電荷堆積に起因してドレイン電流が変化する程度の尺度である。
【0032】
本発明の実施例に従って、向上されたドレイン電流ドリフト性能及び/又は向上されたゲート及びドレイン漏れ電流性能を有し得る高電子移動度トランジスタが提供される。高電子移動度トランジスタは、窒化ガリウムベースのデバイス又は他の第III族窒化物ベースのデバイスであり得る。動作の任意の特定の理論に縛られることを意図することなく、半導体構造102の上側面に沿った又はその近くの欠陥(このような場所における欠陥は、本明細書において半導体構造の上側面「における」欠陥と称される)は、HEMTデバイスの動作中に電荷を捕捉する電子トラップを形成することがあると信じられている。これらの捕らわれた電荷は、ソース接点150とゲート接点154との間の領域及びゲート接点154とドレイン接点152との間の領域においてパッシベーション層160とバリア層140との間の界面に集まり得、これらの捕らわれた電荷は、2DEG層132を流れる電流の流れを減少させ得る。本発明の実施例によるHEMTデバイスは、上述された電子トラップに捕まった電荷を散逸させるという特徴を含み得る。結果として、本発明の実施例によるHEMTデバイスのドレイン電流ドリフト性能は、著しく向上されたドレイン電流ドリフト性能を呈し得、従って、向上されたPIM歪み性能を呈し得る。
【0033】
電子トラップにおける電荷は、本発明の実施例によるHEMTデバイスにおけるソース及びドレイン接点の間の半導体構造の上側面上に形成された多層パッシベーション構造の使用を通じて散逸され得る。これらの多層パッシベーション構造は、半導体構造の上側面の部分上に直接的に形成された第1のパッシベーション層を含み得る。第1のパッシベーション層は、下にある半導体層に存在する電荷を散逸させる電荷散逸材料で形成され得る。しかしながら、電荷散逸材料を使用して単一層のパッシベーション構造を形成することは、ゲート漏れ電流IG及び/又はドレイン漏れ電流IDの一方又は両方を不所望に増加させる場合があることが分かっている。それ故、本発明の実施例によるパッシベーション構造は、半導体構造の上側面の他の部分上に直接的に形成された第2のパッシベーション層を更に含み得る。第2のパッシベーション層は電荷散逸材料で形成されるものではない。第2のパッシベーション層は、ゲート漏れ電流IG及び/又はドレイン漏れ電流IDの上述された増加を減少又は防止し得る。
【0034】
いくつかの実施例において、ソース及びドレイン接点の間の領域において半導体構造の上側面に開口が形成され得、第2のパッシベーション層はこれらの開口内に形成され得る。これらの開口は、ゲート漏れ電流IG及び/又はドレイン漏れ電流IDの任意の増加の減少を更に助ける。いくつかの実施例において、1つ又は複数の開口が、ソース接点とゲート接点との間の半導体構造の上側面に設けられ得、1つ又は複数の追加的な開口が、ゲート接点とドレイン接点との間の半導体構造の上側面に設けられ得る。他の実施例において、開口が、追加的に又は代替的に、ゲート接点の下で、半導体構造の上側面に設けられ得る。
【0035】
第1のパッシベーション層を形成するために使用される電荷散逸材料は、例示的な実施例において、例えば、ケイ素リッチな窒化ケイ素層又はアルミナ層を含み得る。他の実施例において、電荷散逸特性を有する他の誘電性材料又は金属リッチ若しくは第IV族リッチな誘電性材料も使用され得る。更には、多層パッシベーション構造は、対称的である必要はない。例えば、いくつかの実施例において、第1のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にある半導体構造の部分の上側面の第1のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の部分の上側面の第2のパーセンテージに直接的に接触し得、第1のパーセンテージは第2のパーセンテージとは異なる。故に、ゲート接点の両側における多層パッシベーション構造の形状及び/又はサイズは非対称であり得る。
【0036】
次に、本発明の実施例が図を参照してより詳細に説明される。
【0037】
図3Aは、本発明の実施例による窒化ガリウムベースの高電子移動度トランジスタ200の概略的な平面図であり、
図3Bは、
図3Aの線3B-3Bに沿った高電子移動度トランジスタ200の概略的な断面図である。
図3Cは
図3Bの一部分の拡大図である。
図3A~
図3Bにおいて図示されるように、高電子移動度トランジスタ200は基板210上に形成され得る。基板210は、例えば、半絶縁性炭化ケイ素基板を含み得、これは、例えば、4Hポリタイプ又は6Hポリタイプの炭化ケイ素であり得る。基板210を形成するために使用され得る他の炭化ケイ素候補ポリタイプは、3C、6H、及び15Rポリタイプなどがある。「半絶縁性」という用語は、絶対的な意味であるよりはむしろ記述的に使用される。本発明の特定の実施例において、炭化ケイ素のバルク結晶は、室温において約1×10
5Ωcm以上の抵抗率を有する。炭化ケイ素が基板材料として使用され得るが、本発明の実施例は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム、ケイ素、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InPなど、任意の適切な基板を利用し得る。基板210は炭化ケイ素ウエハーであり得、高電子移動度トランジスタ200は少なくとも部分的にウエハー・レベル処理を介して形成され得、次いで、複数の個々の高電子移動度トランジスタ200を提供するためにウエハーはダイスカットされ得る。
【0038】
例えばバッファ、核形成及び/又は遷移層などの1つ又は複数の任意選択的な層220が、基板210の上側面上に形成され得る。例えば、AlNバッファ層220が、炭化ケイ素基板210とデバイス200の残りの部分との間に適切な結晶構造遷移を提供するために基板210の上側面上に形成され得る。加えて、例えば、その開示が参照によって本明細書に全体が記載されているかの如く本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許出願公開第2003/0102482(A1)号において説明されるように、歪み相殺遷移層(strain balancing transition layer)220が追加的に及び/又は代替的に設けられ得る。任意選択的なバッファ/核形成/遷移層220は、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって、又は分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)若しくは高蒸気圧エピタキシー(HVPE:High Vapor Pressure Epitaxy)などの当業者に知られる他の技術によって蒸着され得る。
【0039】
チャンネル層230は、基板210の上側面上(又は任意選択的な層220上)に形成され、バリア層240は、チャンネル層230の上側面上に形成される。チャンネル層230はバリア層240のバンドギャップより小さなバンドギャップを有し得るとともに、チャンネル層230はバリア層240よりも大きな電子親和度も有し得る。チャンネル層230及びバリア層240は、第III族窒化物ベースの材料を含み得る。
【0040】
いくつかの実施例において、チャンネル層230はAlxGa1-xNなどの第III族窒化物であり得、ここで、チャンネル層及びバリア層230、240の間の界面においてチャンネル層230の導電帯縁のエネルギーがバリア層240に導電帯縁のエネルギーよりも小さいという条件で、0≦x<1である。本発明の特定の実施例において、x=0であり、チャンネル層230がGaNであることを示す。チャンネル層230は、InGaN、AlInGaNなどの他の第III族窒化物であってもよい。チャンネル層230は非ドープ(「意図しないドープ」)であり得、約20Åよりも大きな厚さまで成長し得る。チャンネル層230は、超格子又はGaN、AlGaNなどの組合せなどの多層構造でもあり得る。いくつかの実施例において、チャンネル層230は圧縮歪みの下にあり得る。
【0041】
いくつかの実施例において、バリア層240は、AlN、AlInN、AlGaN又はAlInGaN、又はこれらの層の組合せである。バリア層240は、単一の層を備え得、又は多層構造であり得る。本発明の特定の実施例において、バリア層240は、バリア層240がオーミック接触金属の下に埋め込まれたときに偏極効果を通じてチャンネル層230とバリア層240との間の界面においてかなりのキャリア濃度を誘起するために十分に厚くなり得、十分に高いアルミニウム(Al)組成及びドーピングを有し得る。バリア層240は、例えば、約0.1nmから約30nmの厚さであり得るが、内部に亀裂又は実質的な欠陥形成を起こすほど厚くはない。15~30nmの範囲のバリア層の厚さが一般的である。特定の実施例において、バリア層240は、非ドープであるか、又は約1019cm-3未満の濃度までnタイプのドーパントによってドープされる。本発明のいくつかの実施例において、バリア層240は、AlxGa1-xNであり、ここで、0<x<1である。特定の実施例において、アルミニウム濃度は約25%である。しかしながら、本発明の他の実施例において、バリア層240は、約5%から約100%の間のアルミニウム濃度のAlGaNを含む。本発明の具体的な実施例において、アルミニウム濃度は約10%よりも大きい。チャンネル層230及び/又はバリア層240は、例えば、MOCVD、MBE又はHVPEによって蒸着され得る。従来のHEMT100に関して上記において議論されたように、2DEG層232が、チャンネル層230とバリア層240との間の接合部においてチャンネル層230に誘起される。2DEG層232は、ソース接点250、ドレイン接点252の下にそれぞれあるデバイスのソース及びドレイン領域の間の導電を可能とする導電性の高い層として働く。基板210、バッファ/核形成/遷移層220、チャンネル層230及びバリア層240は、半導体構造202を形成する。
【0042】
ソース接点250及びドレイン接点252は、バリア層240の上側面上に形成され、横方向に互いから離間される。ゲート接点254は、ソース接点250とドレイン接点252との間のバリア層240の上側面上に形成される。ゲート接点254の材料は、バリア層240の組成に基づいて選択され得る。例えば、Ni、Pt、NiSix、Cu、Pd、Cr、W及び/又はWSiNなど、窒化ガリウムベースの半導体材料へのショットキー接触を作り出すことができる従来の材料が使用され得る。ソース接点250及びドレイン接点252は、窒化ガリウムベースの半導体材料へのオーミック接触を形成し得るTiAlNなどの金属を含み得る。
【0043】
上記において議論されたように、本発明の実施例による高電子移動度トランジスタは、バリア層240の上側面上に形成された多層パッシベーション構造260を有し得る。例示的な実施例において、多層パッシベーション構造260は、第1のパッシベーション層262及び第2のパッシベーション層264を含み得、これらの両方は、半導体構造202の上側面に直接的に接触する(例えば、バリア層240の上側面に接触する)。いくつかの実施例において、3つ以上のパッシベーション層が多層パッシベーション構造260に含まれ得ることも理解されよう。多層パッシベーション構造260は、以下において更に詳細に議論される。
【0044】
上記において議論されたように、高電子移動度トランジスタは、通常はオンのHEMT又は通常はオフのHEMTとして構成され得る。以下の議論は、HEMT200が通常はオンのHEMTであるものと想定するが、本発明の実施例はこれに限定されるものではない。
【0045】
図3Bにおいて270とラベルが付された矢印によって示されるように、ゲート接点254にバイアス電圧が印加されない(及びソース及びドレイン接点250、252に適切なバイアス電圧が印加されている)とき、電子はソース接点250を通って2DEG層232へと下向きに流動し、次いで、2DEG層232に沿ってドレイン接点252の下の半導体層構造202の部分へと横方向に流動し、次いで、ドレイン接点252内へと上向きに流動する。しかしながら、十分なバイアス電圧がゲート接点254に印加されたとき、ゲート接点254の下の半導体材料の領域は電荷キャリアが空乏する。
図3Bにおいて、空乏領域は、点線の曲線によって画定された領域256として図示され、空乏領域256のサイズは、数ある中でも、印加されたゲート・バイアス電圧の関数である。空乏領域256における電荷キャリアの不存在は、2DEG層232を通る電子流動を効果的に「ブロック」し、従って、ゲート・バイアス電圧の印加によってHEMT200は電源オフされる。
【0046】
しかしながら、
図1A~
図1Bを参照して上記において議論されたように、ゲート漏れ電流I
Gパス(
図1Bの172を参照)及びドレイン漏れ電流I
Dパス(
図1Bの174を参照)など、電流パス270以外にHEMT200を通る様々な電流パスが存在する。ゲート及びドレイン漏れ電流パスは、HEMTデバイス200がオフ状態にバイアスされたときでさえも電流が流れることを可能とし得る。加えて、上述されたように、例えばバリア層240の上側面における欠陥に関連する電子トラップが電荷を保持し得、バリア層240とチャンネル層230との界面に集まる電荷を結果的にもたらし得、これは、ゲート接点254がバイアスされていないとき(すなわち、HEMT200がオン状態にバイアスされたとき)でさえも、2DEG層232に沿った電流の流れを減少させ得、又はブロックし得る。これらの電荷は時間経過とともに散逸するが、HEMT200が例えばRF増幅器として使用されるとき、ゲート・バイアス電圧はオン状態とオフ状態との間で高速で循環し、故に、電子トラップからもたらされる電荷は、2DEG層232の近傍においてエネルギーを保持し得る。ゲート・バイアス電圧が除去されてHEMT200がオン状態に切り替えられると、電荷は「メモリ効果」を有し得、これは本明細書において「ドレイン・ラグ」と称され、ゲート・バイアス電圧が除去された後に2DEG層232を通る電流の流れを少なくとも部分的にブロックし得る。ドレイン・ラグは、HEMT200を含む通信システムの性能を深刻に低下させ得る受動相互変調歪みを生じさせ得る非線形性を結果的にもたらす。
【0047】
HEMTデバイスのドレイン電流ドリフト性能は、上述されたドレイン・ラグ効果の1つの特徴付けである。ドレイン電流ドリフト性能は、HEMTに、HEMTをオン状態にバイアスする直流電流(「DC:Direct Current」)バイアス電圧を印加し、このような定常状態動作条件の下でドレイン電流I
DSが時間経過とともにどのように変化するかを観察することによって測定され得る。これは、
図4においてグラフで表されている。理論的には、
図4において「理想」とラベルが付された曲線によって示されるように、ドレイン電流I
DSが一定であるように定常状態条件が達成されるべきである。しかしながら、上記において議論された電荷堆積などの仕組みに起因して、2DEGチャンネルを部分的にブロックし得る空乏領域が生じ得、
図4において「ドレイン電流ドリフトがある場合」とラベルが付された曲線によって示されるように、これは時間経過とともにドレイン電流を減少させ得る。
【0048】
上記において議論されたように、本発明の実施例に従って、著しく向上されたドレイン電流ドリフト性能を呈し得る多層パッシベーション構造260を有するHEMTデバイスが提供される。多層パッシベーション構造260は、電子トラップに堆積する電荷の量を減少させるために、半導体構造202の上側面における電子トラップを変調するように設計され得る。このように電子トラップを変調することによって、HEMTのドレイン電流ドリフト性能が向上され得る。
【0049】
いくつかの実施例において、HEMTデバイス200はパッシベーション構造260を含み得、これは、半導体構造202における電荷の堆積を少なくするようにパッシベーション構造と電子トラップとの間に相互作用をもたらす。例えば、いくつかの実施例において、ケイ素リッチな非化学量論的な窒化ケイ素を含むパッシベーション構造が使用され得る。他の実施例において、例えば、ケイ素リッチなSiO2及びアルミナを含む、金属リッチな誘電性材料又は第IV族リッチな誘電性材料(すなわち、元素の周期表の第IV族の元素を含む材料であり、第IV族材料とはケイ素などである)などの他のパッシベーション材料が使用され得る。ケイ素リッチな窒化ケイ素、アルミナ又は他のパッシベーション材料は、バリア層240の上側面に沿って電子トラップに堆積する電荷を散逸させるように働く電荷散逸材料を含み得る。ケイ素リッチな窒化ケイ素及びアルミナの両方が、電荷散逸材料として働き得ることが分かっている。電荷散逸材料は、電子トラップにおける電荷を中和し得、電荷の散逸パスを提供し得、又は他のやり方によってバリア層240に堆積する電荷の量を減少させるように働き得る。結果として、半導体構造202に存在する電荷が少なくなり得、従って、ドレイン・ラグの量が減少され得る。
【0050】
しかしながら、電荷散逸材料を使用してパッシベーション構造を形成すると、ゲート漏れ電流IG及び/又はドレイン漏れ電流IDの一方又は両方を増加させる場合があることが分かっている。それ故、本発明の実施例によると、電荷散逸材料で形成される第1のパッシベーション層と、ゲート及びドレイン漏れ電流をブロックするように働く第2のパッシベーション層とを少なくとも含む多層パッシベーション構造260が使用され得る。第1及び第2のパッシベーション層は両方とも、半導体構造202(例えば、バリア層240)に直接的に接触するように形成され得る。
【0051】
図3A~
図3Bを再び参照すると、多層パッシベーション構造260が、少なくともソース及びドレイン接点250、252の間の領域において半導体構造202上に形成されることが見られる。多層パッシベーション構造260は、第1のパッシベーション層262及び第2のパッシベーション層264の両方を含む。第1のパッシベーション層262は、電荷散逸材料で形成され得る。本明細書において、電荷散逸材料は、下にある半導体層の上側面に捕らわれた電荷を実質的に散逸させる材料を指す。第1のパッシベーション層262を形成するために適切な電荷散逸材料としては、ケイ素リッチな窒化ケイ素(Si
xN
y)、ケイ素リッチな酸化ケイ素(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)などがある。第1のパッシベーション層262は、ゲート接点254の両側でバリア層240の上側面に直接的に接触する。第1のパッシベーション層262はデバイス上に一括蒸着(blanket deposited)され得る。第1のパッシベーション層262においてソース接点250及びドレイン接点252にそれぞれ隣接して開口263-1、263-2を形成するために、エッチング・ステップが実施され得る。第1のパッシベーション層262における開口263-1、263-2は、半導体構造202の上側面の選択された部分を露出させる。
【0052】
第2のパッシベーション層264は、例えば化学量論的な窒化ケイ素又は窒素リッチな窒化ケイ素などの従来の材料で形成され得る。第2のパッシベーション層264は電荷散逸材料で形成されなくてよい。第2のパッシベーション層264は、第1のパッシベーション層262によって覆われていないソース及びドレイン接点250、252の間のバリア層240の上側面の部分に直接的に接触し得る。第2のパッシベーション層264は、デバイス上に一括蒸着され得、従って、第1のパッシベーション層262も覆い得る。1つの例示的な実施例において、第1のパッシベーション層262は、窒素に対するケイ素の第1の比率を有する第1の窒化ケイ素材料で形成され得、第2のパッシベーション層264は、窒素に対するケイ素の第2の比率を有する第2の窒化ケイ素材料で形成され得る。第1の窒化ケイ素材料はケイ素リッチな窒化ケイ素でよく、第2の窒化ケイ素材料はケイ素リッチな窒化ケイ素でなくてよい。いくつかの実施例において、第1のパッシベーション層262における窒素に対するケイ素の第1の比率は、第2のパッシベーション層264における窒素に対するケイ素の第2の比率よりも少なくとも5パーセンテージ・ポイントだけ大きくてよい。他の実施例において、第1のパッシベーション層262における窒素に対するケイ素の比率は、第2のパッシベーション層264における窒素に対するケイ素の比率よりも少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ大きくてよい。なおも他の実施例において、第1のパッシベーション層262における窒素に対するケイ素の比率は、第2のパッシベーション層264における窒素に対するケイ素の比率よりも少なくとも15パーセンテージ・ポイントだけ大きくてよい。
【0053】
図3Bにおいて更に図示されるように、一対の任意選択的な凹部242-1、242-2もバリア層240の上側面に形成され得る。凹部242-1はソース接点250に隣接し、凹部242-2はドレイン接点252に隣接する。第2のパッシベーション層264は凹部242-1、242-2内に形成され得、各凹部242-1、242-2を実質的に充填し得る。凹部242は深さtを有し得る。例示的な実施例において、深さtは25ナノメートル(nm)未満であり得る。別の例示的な実施例において、深さtは0.5から15ナノメートル(nm)の間であり得る。なおも別の例示的な実施例において、深さtは1から10ナノメートル(nm)の間であり得る。別の例示的な実施例において、深さtは2から8ナノメートル(nm)の間であり得る。なおも別の例示的な実施例において、深さtは3から7ナノメートル(nm)の間であり得る。いくつかの実施例において、凹部242-1は横方向幅d1を有し得、凹部242-2は横方向幅d2を有し得る。距離d1及びd2並びに深さtは
図3Cにおいて図示されている。
図3Cは
図3Bの断面の一部分の拡大図である。
図3B~
図3Cにおいて見られるように、第2のパッシベーション層264は、ソース接点250とゲート接点254との間の領域において横方向距離d1にわたってバリア層240の上側面に直接的に接触し、ゲート接点254とドレイン接点252との間の領域において横方向距離d2にわたってバリア層240の上側面に直接的に接触する。
【0054】
いくつかの実施例において、第2のパッシベーション層264は、ソース接点250とゲート接点254との間の領域において横方向距離d1にわたって下にある半導体構造202に直接的に接触し得、ゲート接点254とドレイン接点252との間の領域において横方向距離d2にわたって下にある半導体構造202に直接的に接触し得る。このような実施例において、エッチング・ステップは、ソース接点250に隣接して幅d1を有する第1のパッシベーション層262のストライプを除去し得、ドレイン接点252に隣接して幅d2を有する第1のパッシベーション層262のストライプを除去し得、対応する横方向幅d1及びd2を有するバリア層240の部分を露出させる。第2のパッシベーション層264は、第2のパッシベーション層264が、ソース接点250に隣接して幅d1を有するバリア層240のストライプに直接的に接触し、ドレイン接点252に隣接して幅d2を有するバリア層240のストライプに直接的に接触するように、バリア層240の露出された部分上に形成され得る。
【0055】
バリア層240の上側面に沿ったソース接点250とゲート接点254との間の距離は距離x1であり得、バリア層240の上側面に沿ったドレイン接点252とゲート接点254との間の距離は距離x2であり得る。これらの距離も
図3Cの拡大図において図示される。例示的な実施例において、距離x1及びx2は各々、例えば、1~2ミクロンの範囲内であり得る。x1はx2と等しい必要はないことも留意されるべきである。サンプル・デバイスは、これらの距離d1及びd2が(距離x1及びx2それぞれのパーセンテージとして)ドレイン電流ドリフト性能に与える影響を判定するために、距離d1及びd2が変更されるように作成された。これらのサンプルの各々は、
図3A~
図3CのHEMT200の設計を有した。これらの実施例において、任意選択的な開口242-1、242-2は省略された(すなわち、t=0)。以下の表1は、
図1A~
図1Bの設計を有する従来のHEMTと比べて、4つの異なるサンプル設計についてドレイン電流ドリフト性能を示す。
【0056】
【0057】
表1から見られるように、本発明の実施例によるデバイスの全ては、技術的現状における従来のデバイスと比べて著しく向上されたドレイン電流ドリフト性能を呈した。更には、向上の量は、距離d1及びd2(すなわち、第1のパッシベーション層262における開口263-1、263-2の横方向幅)の関数であったが、上記において議論されたように、これは、第2のパッシベーション層264がバリア層240に直接的に接触する距離x1及びx2のパーセンテージにそれぞれ対応する。
【0058】
表1において示されるように、サンプル1において、d1及びd2は非常に小さな距離であったが(例えば、それぞれ0.05*x1未満及び0.05*x2未満)、これは、第2のパッシベーション層264の小さな領域だけが、ソース接点250及びドレイン接点252に隣接する小さな領域においてだけバリア層240に直接的に接触したようなエッチングの結果である。表1において示されるように、サンプル1は、従来の技術的現状のデバイスと比べて、ドレイン電流ドリフトにおいてほぼ75%の減少を呈した。
【0059】
サンプル2及び3において、ここでもd1は非常に小さな距離であり(例えば、0.05*x1未満)、第2のパッシベーション層264の小さな領域だけが、ソース接点250とゲート接点254との間の領域においてバリア層240に直接的に接触した。しかしながら、距離d2は距離d1よりも大きくされ、第2のパッシベーション層264は、ゲート接点254とドレイン接点252との間の領域においてバリア層240のより大きな部分に直接的に接触した。サンプル2において、距離d2は、ゲート接点254とドレイン接点252との間の距離x2の10%に等しくなるように設定された。サンプル3において、距離d2は、ゲート接点254とドレイン接点252との間の距離x2の50%になるように設定された。表1に示されるように、サンプル2及び3のドレイン電流ドリフト性能は、やはり従来のデバイスのドレイン電流ドリフト性能よりも著しく良好であり、サンプル1のデバイスのドレイン電流ドリフト性能にやや匹敵するほどであった。サンプル3のドレイン電流ドリフト性能は、サンプル2と比べて向上されたが、このことは、開口263-2を拡げる(すなわち横方向幅d2を増加させる)ことで性能が向上され得ることを示している。
【0060】
サンプル4において、d1はソース接点250とゲート接点254との間の距離x1の10%として設定され、d2はゲート接点254とドレイン接点252との間の距離x2の50%として設定された。表1に示されるように、ドレイン電流ドリフト性能はサンプル1~3と比べて向上され、従来のHEMTによって呈されるドレイン電流ドリフトの5%未満であった。
【0061】
故に、表1は、本発明の実施例によるパッシベーション構造が著しく向上されたドレイン電流ドリフト性能を提供し得ることを示す。
【0062】
サンプル1から4は、多層パッシベーション構造260がゲート接点254の両側において対称であることを必要としないことを示す。実のところ、表1の結果は、向上された性能が、少なくともいくつかの場合においては、非対称的な設計を使用して達成され得ること示す。故に、本発明の実施例によるHEMTデバイスは、第1のパッシベーション層262が、ソース接点250とゲート接点254との間にあるバリア層240の部分の上側面の第1のパーセンテージに直接的に接触し、第1のパッシベーション層262が、ゲート接点254とドレイン接点252との間にあるバリア層240の部分の上側面の第2のパーセンテージに直接的に接触し、第2のパーセンテージが第1のパーセンテージとは異なるように設計され得ることが理解されよう。これは、
図3Aにおいてグラフィカルに図示されており、そこでは、ソース接点250とゲート接点254との間にあるバリア層240の部分はP1とP2との組合せであり、第1のパッシベーション層262がバリア層240の部分の上側面に直接的に接触するこの領域の部分はP1である。同様に、ゲート接点254とドレイン接点252との間にあるバリア層240の部分はP3とP4との組合せであり、第1のパッシベーション層262がバリア層240の上側面に直接的に接触するこの領域の部分はP3である。
図3Aは、P1(これは、第1のパッシベーション層262がバリア層240に直接的に接触するソース接点250とゲート接点254との間にあるバリア層240の部分の上側面のパーセンテージである)がP3(これは、第1のパッシベーション層262がバリア層240に直接的に接触するゲート接点254とドレイン接点252との間にあるバリア層240の部分の上側面のパーセンテージである)に等しく、P2(これは、第2のパッシベーション層264がバリア層240に直接的に接触するソース接点250とゲート接点254との間にあるバリア層240の部分の上側面のパーセンテージである)がP4(これは、第2のパッシベーション層264がバリア層240に直接的に接触するゲート接点254とドレイン接点252との間にあるバリア層240の部分の上側面のパーセンテージである)に等しい本発明の実施例を示す。他の実施例において、P2及びP4は、少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも20パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも30パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも40パーセンテージ・ポイントだけ、又は、それどころか、少なくとも50パーセンテージ・ポイントだけ異なり得る。いくつかの実施例において、P4はP2を、少なくとも10パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも20パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも30パーセンテージ・ポイントだけ、少なくとも40パーセンテージ・ポイントだけ、又は、それどころか、少なくとも50パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。典型的には、もしもP4がP2を上回るならば、P1はP3を上回る。
【0063】
図5A及び
図5Bはそれぞれ、本発明の更なる実施例によるHEMTデバイス300の概略的な平面図及び断面図である。
図5A~
図5Bにおいて図示されるように、HEMT300は、開口263-1及び263-2(並びに凹部242-1、242-2)がHEMT300においては省略されており、代わりに開口263-3が第1のパッシベーション層262においてゲート接点254の下に設けられていることを除いてHEMT200と同様である。第2のパッシベーション層264は、開口263-3内に形成され得る。第2のパッシベーション層264は、バリア層240の上側面に直接的に接触し得る。
【0064】
図5Bにおいて図示されるように、任意選択的な凹部242-3がバリア層240において開口263-3の下に形成され得る。任意選択的な凹部242-3は、深さtを有し得る。凹部242-3の深さtの範囲は、凹部242-1及び242-2の深さtについて上記において論じられたものと同一であり得る。
図5Bにおいて図示されるように、開口263-3は、横方向幅d3を有し得る。幅d3は、凹部242-3の幅に対応し得る。凹部242-3が省略された実施例(すなわち、t=0である実施例)において、開口263-3の横方向幅は、整合性のために依然としてd3であると考えられよう(すなわち、距離d3はソース接点250とゲート接点254との間にある第1のパッシベーション層262の部分とゲート接点254とドレイン接点252との間にある第1のパッシベーション層262の部分との間の離間に対応する)。
図5A~
図5Bの実施例において、第2のパッシベーション層264は、開口263-3内のバリア層240の上側面に直接的に接触する。
【0065】
ソース接点250とドレイン接点252との間の距離は、距離x3であり得る。サンプル・デバイスはHEMT300の設計を有するように作成され、横方向幅d3がデバイス性能に与える影響を判定するために距離x3のパーセンテージとして距離d3が変更された。これらのサンプルのドレイン電流ドリフト性能は、著しい向上を呈さなかった。しかしながら、ゲート漏れ電流IG及びドレイン漏れ電流IDは、従来のデバイスと比べて実質的な向上を呈した。表2は測定結果を示す。
【0066】
【0067】
表2において示されるように、電荷散逸材料から形成されたパッシベーション層を使用すること、及び開口263-3を含むことは、ゲート漏れ電流及びドレイン漏れ電流性能の両方を向上させるように働く。開口263-3が広いほど、性能の向上が大きくなる。
【0068】
本発明の更なる実施例に従って、HEMT200及びHEMT300の特徴が組み合わされ得る。特には、
図6A及び
図6Bにおいて図示されるように、第1のパッシベーション層262における3つの開口263-1、263-2及び263-3の全てを含み、第2のパッシベーション層264がこれらの開口263-1、263-2及び263-3を充填するHEMT400が提供され得る。
図6Bにおいて図示されるように、HEMT400は、バリア層240に凹部242-1、242-2、242-3のうちの1つ又は複数を任意選択的に含み得る。
図3A~
図3B及び表1に関して上記において議論されたように、電荷散逸材料で形成された第1のパッシベーション層262を使用するとともに開口263-1及び263-2を含むことは、デバイスのドレイン電流ドリフト性能を著しく向上させ得る。
図5A~
図5B及び表2に関して上記において議論されたように、非電荷散逸材料で形成された第2のパッシベーション層264を使用するとともに開口263-3を含むことは、デバイスのゲート漏れ電流及びドレイン漏れ電流性能を著しく向上させ得る。
図6A~
図6BのHEMTデバイス400は、3つの開口263-1から263-3の全てを含み、第2のパッシベーション層264がその内部に形成されている。HEMTデバイス400は、例えば
図1A~
図1Bの従来のHEMTデバイスと比べて、向上されたドレイン電流ドリフト性能並びに向上されたゲート及びドレイン漏れ電流性能を呈することが見込まれる。
【0069】
図7は、本発明の更なる実施例によるHEMT500の部分の拡大断面図である。HEMT500は、
図7において図示されるように、HEMT500においては、第2のパッシベーション層が、それぞれの凹部242-1及び242-2を充填する第1の部分265と、凹部242-1及び242-2の外側にあるが依然としてバリア層240の上側面に直接的に接触する第2の部分266とを含むことを除いて
図3A~
図3CのHEMT200と同じであり得る。換言すれば、HEMT500においては、第1のパッシベーション層262におけるそれぞれの開口263-1、263-2の横方向幅d1及びd2は、凹部242-1、242-3の横方向幅よりも大きい。
図7は、第2のパッシベーション層264が、凹部242-1、242-2、242-3の外側のバリア層240の上側面に接触してよいことを示すために提供される。
【0070】
図8は、本発明の別の実施例によるHEMTデバイス600の断面図である。HEMT600は上述されたHEMT500と同様であるが、ここでは、追加的な開口263-4、263-5が第1のパッシベーション層262に形成され、第2のパッシベーション層264は、開口263-1から263-5の5つ全てにおいてバリア層240の上側面に直接的に接触するように構成されている。
【0071】
図9A~
図9Fは、本発明の実施例によるHEMTデバイス400を形成する方法を示す。上述されたHEMTデバイス200及び300を形成するために僅かに修正された技術が使用されてよいことは理解されよう。
【0072】
図9Aにおいて図示されるように、1つ又は複数の任意選択的なバッファ層、核形成層及び/又は遷移層220が、例えば炭化ケイ素基板などの基板210上に形成され得る。バッファ/核形成/遷移層220は、例えば、窒化アルミニウム、窒化ガリウムなどの第III族窒化物層を含み得る。任意選択的な層220は、例えば基板210とデバイス構造のより上部に形成されるチャンネル及びバリア層230、240との間での格子不整合にもかかわらず、基板210上での高品質な第III族窒化物層の成長を促進し得る。任意選択的なバッファ/核形成/遷移層220は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、又は分子線エピタキシー(MBE)若しくは高蒸気圧エピタキシー(HVPE)などの当業者に知られる他の技術によって形成され得る。
【0073】
図9Bにおいて図示されるように、チャンネル層230は、バッファ層220の上側面上に形成され得、バリア層240は、チャンネル層230の上側面上に形成され得る。チャンネル層230は、バリア層240のバンドギャップより小さなバンドギャップを有し得るとともに、チャンネル層230はバリア層240よりも大きな電子親和度も有し得る。チャンネル層230及びバリア層240は、第III族窒化物ベースの材料を含み得る。例えば、チャンネル層230は窒化ガリウム層を含み得、バリア層240はAl
xGa
1-xNを含み得、ここで、0<x<1である。チャンネル層230は非ドープ(「意図しないドープ」)であり得、約20Åよりも大きな厚さまで成長し得る。例示的な実施例において、バリア層240は、非ドープであるか、又はnタイプのドーパントによってドープされ得る。チャンネル層230及び/又はバリア層240は、例えば、MOCVD、MBE又はHVPEによって蒸着され得る。
【0074】
図9Cを参照すると、次に、凹部242-1から242-3が、バリア層240の上側面に形成され得る。凹部242は、例えば、バリア層240の上側面上にエッチ・マスク(図示されず)を形成し、次いで凹部242の場所の上方に開口を形成するようにエッチ・マスクをパターニングし、次いで凹部242を形成するためにバリア層240の露出された部分をエッチングすることによって形成され得る。
【0075】
図9Dを参照すると、次に、例えばケイ素リッチな窒化ケイ素又はアルミナなどの電荷散逸材料を含む第1のパッシベーション層262が形成され得る。第1のパッシベーション層262は、例えばスパッタリング法又は物理蒸着法によって、デバイス上に一括蒸着され得る。次いで、エッチ・マスク(図示されず)が第1のパッシベーション層262上に形成され得、このエッチ・マスクは標準的なフォトリソグラフィ技術を使用してパターニングされ得る。次いで、
図9Dにおいて図示されるように、一括蒸着された第1のパッシベーション層262は、1つ又は複数の開口263-1から263-3を内部に形成するために、パターニングされたエッチ・マスクを使用してパターニングされ得る。
【0076】
図9Eを参照すると、第2のパッシベーション層264が、例えばスパッタリング法又は物理蒸着法によって、デバイス上に一括蒸着され得る。第2のパッシベーション層264は、例えば化学量論的な窒化ケイ素などの従来のパッシベーション材料を含み得る。第2のパッシベーション層264は電荷散逸材料を含まなくてよい。次いで、エッチ・マスク(図示されず)が第2のパッシベーション層264上に形成され得、このエッチ・マスクは標準的なフォトリソグラフィ技術を使用してパターニングされ得る。次いで、
図9Eにおいて図示されるように、一括蒸着された第2のパッシベーション層264は、パターニングされたエッチ・マスクを使用してパターニングされ得る。第2のパッシベーション層264は、開口263-1から263-3を充填し得るとともに、もしも設けられているならば任意選択的な凹部242-1から242-3も充填し得る。第2のパッシベーション層264は、第1のパッシベーション層262の上側面も覆い得る。第1及び第2のパッシベーション層262、264は一緒に、積層された多層パッシベーション構造260を形成し得る。
【0077】
次に、
図9Fにおいて図示されるように、金属接点がバリア層240の上側面上に形成され得る。特には、ソース接点250及びドレイン接点252が単一のステップにおいて一緒に形成され得る。ソース接点250及びドレイン接点252は、窒化ガリウムベースの半導体材料へのオーミック接触を形成し得るTiAlNなどの金属を含み得る。オーミック金属は、例えばスパッタリング法によって、デバイス上に一括蒸着され得、次いで、ソース接点250及びドレイン接点252を形成するために、適切なマスキング及びエッチング・ステップが実施され得る。ゲート接点254が、同様のやり方によってバリア層240の上側面上に形成され得る。ゲート接点254を形成するために使用される材料は、例えばNi、Pt、NiSi
x、Cu、Pd、Cr、W及び/又はWSiNなど、窒化ガリウムベースの半導体材料へのショットキー接触を作り出すことができる材料であり得る。ゲート接点254は、ソース接点250及びドレイン接点252の前又は後のどちらかにおいて形成され得る。
【0078】
故に、本発明のいくつかの実施例に従って、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面に凹部を含むHEMTデバイスが提供される。パッシベーション構造は、デバイスの半導体構造上で、1つ又は複数の凹部内に形成される。いくつかの実施例において、パッシベーション構造は、例えば電荷散逸材料で形成され得る第1のパッシベーション層と、ゲート及び/又はドレイン漏れ電流をブロックするために非電荷散逸材料で形成され得る第2のパッシベーション層とを含む多層パッシベーション構造であり得る。第1のパッシベーション層及び第2のパッシベーション層の両方はバリア層に直接的に接触し得るとともに、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層のいくらか又は全ても覆い得る。いくつかの実施例において、バリア層の上側面における1つ又は複数の凹部は、ソース接点に隣接する凹部及び/又はドレイン接点に隣接する凹部を含み得る。デバイスは、追加的に又は代替的に、ゲート接点の下にあるバリア層の上側面における開口を含み得る。
【0079】
他の実施例において、バリア層の上側面に直接的に接触する第1のパッシベーション層を含むHEMTデバイスが提供される。第1のパッシベーション層は、ソース接点とゲート接点との間にあるバリア層の部分の上側面の第1のパーセンテージに直接的に接触し得、ゲート接点とドレイン接点との間にあるバリア層の部分の上側面の第2のパーセンテージに直接的に接触し得、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージとは異なる。例えば、いくつかの実施例において、第2のパーセンテージは第1のパーセンテージを、少なくとも10パーセンテージ・ポイント、少なくとも20パーセンテージ・ポイント、少なくとも30パーセンテージ・ポイント、少なくとも40パーセンテージ・ポイント、又は、少なくとも50パーセンテージ・ポイントだけ上回り得る。第2のパッシベーション層は、第1のパッシベーション層上に形成され得る。第2のパッシベーション層も、第1のパッシベーション層によって覆われていないソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面の部分に直接的に接触し得る。第2のパッシベーション層は、第1のパッシベーション層とは異なる材料を含み得る。例えば、第1のパッシベーション層は電荷散逸材料であり得、第2のパッシベーション層は、電荷散逸性を含まない従来のパッシベーション材料であり得る。
【0080】
本発明のなおも更なる実施例によると、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面に直接的に接触する電荷散逸材料で形成された第1のパッシベーション層と、ソース接点とドレイン接点との間のバリア層の上側面にやはり直接的に接触する第2のパッシベーション層とを有する多層パッシベーション構造を含み、第2のパッシベーション層は第1のパッシベーション層とは異なる材料を含む、高電子移動度トランジスタが提供される。第2のパッシベーション層は、第1のパッシベーション層の上側面上にも形成されてよく、非電荷散逸材料で形成されてよい。
【0081】
本明細書において、様々な要素を説明するために第1、第2などの用語が使用され得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は1つの要素を別の要素から区別するために使用されるにすぎない。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と名付けられてもよく、同様に、第2の要素は第1の要素と名付けられてもよい。本明細書において使用されるとき、「及び/又は」という用語は、関連して列記されたアイテムのうちの1つ又は複数の任意の及び全ての組合せを含む。
【0082】
本明細書において使用される用語法は、特定の実施例を説明することのみを目的とするものであり、本発明を限定することを意図されるものではない。本明細書において使用されるとき、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むものと意図される。「備える」、「含む」(「comprises」、「comprising」、「includes」及び/又は「including」)という用語は、本明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を規定するものであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではないことが更に理解されよう。
【0083】
本明細書において使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、そうでないことが定められていない限り、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書において使用される用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と整合する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明確に定められていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されるものではないことが更に理解されよう。
【0084】
層、領域又は基板などの要素が別の要素の「上に(on)」ある、又は「上へと(onto)」延在すると称されるとき、その別の要素の直接的に上にあってよく、又は直接的に上へと延在してよく、又は介在する要素が存在してもよいことが理解されよう。これとは対照的に、要素が別の要素の「直接的に上に」ある、又は「直接的に上へと」延在すると称されるとき、介在する要素は存在しない。要素が別の要素に「接続される」又は「結合される」と称されるとき、その別の要素に直接的に接続若しくは結合されてよく、又は介在する要素が存在してもよいことも理解されよう。これとは対照的に、要素が別の要素に「直接的に接続される」又は「直接的に結合される」と称されるとき、介在する要素は存在しない。
【0085】
「下方」又は「上方」又は「上側」又は「下側」又は「水平方向」又は「横方向」又は「垂直方向」などの相対的用語は、本明細書において、図に示されたような1つの要素、層又は領域の別の要素、層又は領域に対する関係を記述するために使用され得る。これらの用語は、図において描かれる向きに加えてデバイスの異なる向きを包含するものと意図されることが理解されよう。
【0086】
本明細書において、本発明の理想的な実施例(及び中間的な構造)の概略的な図である断面図を参照して本発明の実施例が説明された。明確化のために、図面における層の厚さ及び領域は誇張されている場合がある。加えて、例えば製造技術及び/又は許容誤差の結果として、図の形状からの変形が予期される。故に、本発明の実施例は、本明細書において示される領域の特定の形状に限定されるものと解釈されるべきではなく、例えば製造の結果もたらされる形状における逸脱を含むものとする。
【0087】
図面及び明細書において、本発明の典型的な実施例が開示され、特定の用語が用いられたが、それらは一般的な及び説明的な意味においてのみ使用され、限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲において記載される。