IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コアギュレイション・サイエンシーズ・エルエルシーの特許一覧

特許7333824凝固検査デバイス、システムおよび使用方法
<>
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図1
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図2
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図3
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図4
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図5A
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図5B
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図6
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図7
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図8
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図9
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図10
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図11
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図12
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図13
  • 特許-凝固検査デバイス、システムおよび使用方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】凝固検査デバイス、システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20230818BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20230818BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G01N33/86
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021555887
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2019022558
(87)【国際公開番号】W WO2020190266
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521424530
【氏名又は名称】コアギュレイション・サイエンシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスタイン,シェルドン
(72)【発明者】
【氏名】カガン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ローダー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コスマン,マウリー・ディー
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520824(JP,A)
【文献】特表2006-527363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0306774(US,A1)
【文献】特表2008-525784(JP,A)
【文献】特開平03-115864(JP,A)
【文献】特開2005-181321(JP,A)
【文献】特表2003-505678(JP,A)
【文献】特開2015-200612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/86
G01N 35/08
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血検体を含むカートリッジであって、該カートリッジは複数の検査チャンバと各検査チャンバ内の金属球体とを含む、前記カートリッジと、
前記カートリッジを受け入れるように構成されたデバイスと
を含むシステムであって、前記デバイスは、
各センサが前記検査チャンバのうちの1つに隣接して配置された複数のセンサと、
各検査チャンバ内で金属球体を移動させる力が加わるように前記カートリッジを振動させるように構成されたアクチュエータと、
コントローラと
を含み、前記コントローラは、
前記検査チャンバのそれぞれに前記全血検体の一部を移動するように真空源を作動させ、
前記アクチュエータを作動させて前記カートリッジを振動させ
前記カートリッジが振動している間に前記センサのそれぞれから信号を受信し、
前記金属球体が前記検査チャンバ内を移動しているか否かを判定し、
各検査チャンバ内の前記全血検体が凝血障害を示しているか否かを判定し、
各検査チャンバの前記全血中に凝血障害が存在するか否かを示す標識をディスプレイ上に出力する
ように構成された、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、各センサは磁石とホール効果センサとを含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記磁石は当該磁石に関連付けられた検査チャンバの近傍に磁界を生じさせ、前記検査チャンバ内の前記金属球体は前記磁界に乱れを生じさせ、前記センサは、前記乱れを検出し、前記球体が前記検査チャンバ内で移動しているか否かを判定するように前記コントローラに信号を送信する、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記真空源に選択的に結合された、前記カートリッジにおける複数の真空ポートをさらに含み、前記真空ポートのそれぞれに沿った複数の疎水性フィルタをさらに含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記カートリッジは、1つの試薬チャンバが前記検査チャンバのうちの1つに関連付けられた複数の試薬チャンバを含み、前記疎水性フィルタは前記試薬チャンバのそれぞれが満たされると血液の流れを停止させるように構成された、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記デバイスは、前記カートリッジと前記全血検体とに熱エネルギーを加えるように構成された加熱素子をさらに含む、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記加熱素子は、前記全血検体を摂氏34度と摂氏37度の間の温度に加熱する、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記加熱素子は、前記全血検体を摂氏30度と摂氏33度の間の温度に加熱する、システム。
【請求項9】
請求項7に記載のシステムであって、前記全血検体は、前記試薬チャンバのそれぞれの中で試薬と混合され、1分から10分の間、インキュベートされる、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記試薬チャンバのそれぞれの中の前記試薬は、隣接する試薬チャンバから離隔されている、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記コントローラは、前記検査チャンバのそれぞれにおける血餅形成までの時間の長さを判定するようにさらに構成された、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記時間の長さは、前記検査チャンバのうちの1つに関連付けられた前記センサにより前記金属球体の移動検出されている時間の長さに基づき判定される、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、各検査チャンバは前記センサのうちの2つを含む、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記コントローラは、血餅形成を判定するようにさらに構成された、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
記コントローラ前記カートリッジの前記振動の各サイクルにおいて、前記2つのセンサからの信号にピークが存在しないかを検出するように構成され、
前記2つのセンサからの信号にピークが存在しないこと血餅形成により前記金属球体が前記検査チャンバ内での移動を停止したことを示す、
システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記コントローラは、血餅強度を判定するようにさらに構成された、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、
各検査チャンバが含む前記2つのセンサは、前記金属球体の移動経路に沿って配置され、各々が磁石とホール効果センサとを含み、
ある検査チャンバにおける前記血餅形成後に当該ある検査チャンバに含まれる前記2つのセンサのいずれも信号を発生しない場合に、当該ある検査チャンバにおける強度の血餅が判定される、
システム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムであって、
各検査チャンバが含む前記2つのセンサは、前記金属球体の移動経路に沿って配置され、各々が磁石とホール効果センサとを含み、
ある検査チャンバが含む前記2つのセンサの一方からの信号のみ前記金属球体の移動を示し続ける場合に低強度の血餅により、当該ある検査チャンバ内での前記金属球体の移動範囲が限定されていると判定される、システム。
【請求項19】
請求項5に記載のシステムであって、前記カートリッジは18個の検査チャンバを含む、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記18個の検査チャンバのそれぞれは、前記試薬チャンバのうちの1つに関連付けられ、前記18個の検査チャンバのそれぞれが、関連付けられた前記試薬チャンバから全血-試薬複合体を受け取る、システム。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムであって、各検査チャンバ内の前記金属球体は、各検査チャンバ内の前記全血検体の粘度に比例する信号を発生するように、各検査チャンバに関連付けられた前記センサの上を通過する、システム。
【請求項22】
請求項1に記載のシステムであって、前記コントローラは、前記凝血障害の結果に基づいて診断を判定するようにさらに構成された、システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムであって、前記コントローラは、前記診断を前記ディスプレイ上に出力するようにさらに構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]ポイントオブケア(POC)ベースと検査室ベースの両方のほとんどの既存の凝固検査は、出血異常を診断するが、出血の根本原因に関しては不十分な情報しか提供しない。出血患者の現行の管理には、しばしば「大量輸血プロトコル」(MTP)の使用が含まれる。このプロトコルによる方針は、画一的手法を使用し、患者個人個人における凝血障害の根本原因を考慮せずに、すべての患者を管理する。因子レベルの臨床検査または粘弾性検査は、実行に時間と熟練した技術スタッフとを必要とする。
【発明の概要】
【0002】
[0002]本明細書に記載の凝固検査デバイスは、操作のための検査技術をほとんどまたはまったく必要とせず、個別化された、根拠に基づく結果を提示し、これらの結果は、検体チューブを挿入してから結果を得るまでに15分以内で治療の決定を下すのに役立ち得る。また、血栓塞栓発症に至った治療の選択および投薬の事例が報告されている。このデバイスは、可能性のある治療薬の体外検査を可能にし、これは凝血障害の根本原因を判定するのに助けとなり得、血栓塞栓発症を生じさせる可能性のある薬剤の投与に対する防護となり得る。
【0003】
[0003]本明細書に記載の凝固検査デバイスは、異なる止血条件下で全血検体の凝固時間および血餅特性を測定するための体外診断ポイントオブケアデバイスである。検査の結果は、医師が出血を止めるための適切な臨床行為を決定するのを支援するために、原因が未知の凝固障害を有する患者の管理における支援として使用される。さらに、このデバイスは、特定の止血治療薬が出血患者の全血凝固時間に与える効果を検査することによって、周術期医学における重要な問題に対処し、この問題を解決する。
【0004】
[0004]診療の現状では、異常検査結果には、一般に、投与に至る治療の経過における経験ベースの知識に基づく推測によって対処されている。本明細書に記載の凝固検査デバイスは、患者の特定の凝血障害の病因に関する個別化された、臨床ガイダンスを医師に提供する。このデバイスは、いくつかの止血剤が全血凝固時間に与える効果を同時に比較し、それらの止血剤間の実測反応に基づいて根本病因を導き出す。
【0005】
[0005]一実施形態では、本明細書において、全血検体が入ったカートリッジを処理するためのデバイスが開示される。このデバイスは、カートリッジを受け入れるための凹部と、カートリッジに結合された真空源と、カートリッジを振動させるようにカートリッジに連結されたアクチュエータと、コントローラとを含む。コントローラは、全血検体を容器からカートリッジ内の複数の流路に移動させ、その後、血液が試薬と混合する複数の試薬チャンバに移動させ、次に複数の蛇行形状の流路を通って複数の検査チャンバまで移動させるために、真空源を作動させ、カートリッジを振動させるためにアクチュエータを作動させ、各センサが検査チャンバのうちの1つに付随する複数のセンサから、検査チャンバのそれぞれに隣接して配置された磁石が発生する磁界内の球形部材の存在に基づく信号を受信し、各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するか否かを判定し、各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するかを示す標識をディスプレイに出力するように構成される。
【0006】
[0006]別の実施形態では、本明細書において、複数の検査チャンバと各検査チャンバ内の金属球体とを含む、全血検体を収容するカートリッジと、カートリッジを受け入れるように構成されたデバイスとを含むシステムが開示される。デバイスは、各センサが検査チャンバの1つに隣接して配置された複数のセンサと、コントローラとを含み、コントローラは、全血検体の一部を検査チャンバのそれぞれに移動させるために真空源を作動させ、カートリッジを移動させ、カートリッジが移動する間にセンサのそれぞれから信号を受信し、検査チャンバ内で金属球体が移動しているか否かを判定し、各検査チャンバ内の全血検体が凝血障害を示しているか否かを判定し、各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するか否かを示す標識をディスプレイに出力するように構成される。
【0007】
[0007]さらなる実施形態では、本明細書において、全血検体の凝固特性を判定する方法が開示される。この方法は、各検査流路が試薬チャンバと、検査チャンバと、各検査チャンバ内の金属球体とを含む、複数の検査流路を有するカートリッジ内に全血検体を導入することと、全血検体を試薬チャンバのそれぞれの中の試薬と混合することと、カートリッジを振動させることと、検査チャンバのそれぞれに隣接して配置された2つのセンサによって検査チャンバのそれぞれの中の金属球体の移動を検出することと、コントローラによって、金属球体の移動の検出に基づいて全血検体の1つまたは複数の血餅特性を判定することと、ユーザに表示するために血餅特性の標識を生成することとを含む。
【0008】
[0008]本発明のその他の態様は、詳細な説明および添付図面を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]一実施形態による凝固検査デバイスを示す透視図である。
図2】[0010]図1に示す凝固検査デバイスを示すブロック図である。
図3】[0011]検査カートリッジと保護カバーとが取り除かれた、図1に示す凝固検査デバイスを示す透視図である。
図4】[0012]図1に示す凝固検査デバイスとともに使用される検体チューブが挿入された検査カートリッジを示す透視上面図である。
図5A】[0013]図4に示す検査カートリッジの流体経路を示す透視図である。
図5B】[0014]図4に示す検査カートリッジを示し、疎水性膜を示す背面透視図である。
図6】[0015]検査の前に検査カートリッジが所定位置に配置された凝固検査デバイスを示す透視図である。
図7】[0016]図4に示す検査カートリッジ内の検査チャンバと球形部材とを示す拡大断面図である。
図8】[0017]検査チャンバ内の球形部材の移動速度とその結果として検査チャンバ内の血液検体に加えられるずり速度との関係をグラフで示す図である。
図9】[0018]磁界線図の相違を示す図である。
図10】[0019]検査チャンバ内の球形部材のセンサ検出をグラフで示す図である。
図11】[0020]図1に示す凝固検査デバイスの動作方法を示すフローチャートである。
図12】[0021]止血試薬に対する反応に基づいて凝血障害の原因を判定するための決定木を示す図である。
図13】[0022]血餅形成の開始時のセンサ信号をグラフで示す図である。
図14】[0023]検査チャンバ内に弱い血餅が存在する場合の検査チャンバ内の球形部材の移動の検出をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0024]本発明の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明に記載されているかまたは以下の図面に示されている構造の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方式で実施され、実行されることができる。
【0011】
[0025]以下の説明および添付図面では、1つまたは複数の実施形態について説明し、図示する。これらの実施形態は、本明細書に記載の特定の詳細には限定されず、様々な方式で変更可能である。また、本明細書に記載されていない他の実施形態も存在し得る。また、本明細書において1つの構成要素によって実行されるものとして記載されている機能は、複数の構成要素によって分散方式で実行されることもできる。同様に、複数の構成要素によって実行される機能は、統合されて単一の構成要素によって実行されてもよい。同様に、特定の機能を実行するものとして記載されている構成要素が本明細書に記載されていない追加の機能も実行してもよい。例えば、特定の方式で「構成されている」デバイスまたは構造体は、少なくともその方式で構成されるが、記載されていな方式でも構成されてよい。また、本明細書に記載の一部の実施形態は、非一過性のコンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行することによって記載されている機能を実行するように構成された、1つまたは複数の電子プロセッサを含み得る。同様に、本明細書に記載の実施形態は、記載されている機能を実行するように1つまたは複数の電子プロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一過性のコンピュータ可読媒体として実施され得る。本出願で使用されている「非一過性のコンピュータ可読媒体」は、あらゆるコンピュータ可読媒体を含むが、一過性の伝播信号からなるものではない。したがって、非一過性のコンピュータ可読媒体は、例えば、ハードディスク、CD-ROM、光学式記憶デバイス、磁気記憶デバイス、ROM(読取り専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、SIMカード、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0012】
[0026]さらに、本明細書で使用する表現および用語は、説明を目的としており、限定的であるものとみなされるべきではない。例えば、本明細書における「含む(including)」、「含有する(containing)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」およびこれらの変形の使用は、その前に記載されている細目およびその均等物と追加の細目とを包含することが意図されている。「接続されている」および「結合されている」という用語は広義に使用されており、直接と間接の両方の接続および結合を包含する。また、「接続されている」および「結合されている」は、物理的または機械的接続または結合には限定されず、直接か間接かを問わず、電気的接続または結合を含み得る。さらに、電子通信および通知は、有線接続、無線接続、またはこれらの組合せを使用して行われることができ、様々な種類のネットワーク、通信チャネルおよび接続により直接に、または1つまたは複数の中間デバイスを介して送信され得る。また、第1および第2、上および下などの関係語は、本明細書では、そのような実体または動作間のいかなる実際のそのような関係または順序も必ずしも必要または含意することなく、1つの実体または動作を別の実体または動作と区別するためにのみ使用されている場合がある。冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(少なくとも1つ)を指すために使用されている。例えば、「一要素(an element)」は、少なくとも1つの要素を意味し、複数の要素を含み得る。別に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語は、本開示が属する技術分野の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0013】
[0027]本明細書では、実施形態についてフローチャート図および/またはブロック図および/または図面を参照しながら説明する。本開示におけるフローチャート、ブロック図およびその他の図は、本発明の様々な実施形態による、システム、方法、コンピュータプログラム製品(1組の機能を実行するためにマイクロプロセッサなどの1電子プロセッサの実行可能な命令を記憶する非一過性のコンピュータ可読媒体)などの可能な実装形態のアーキテクチャ、機能および動作を示す。これに関連して、本明細書のフローチャートもしくはブロック図、または添付図面の各ブロックは、規定されている論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含む、命令のモジュール、セグメントまたは部分を表す場合がある。一部の別の実装形態では、ブロックまたは図に記載されている機能は、図に記載されている順序とは異なる順序で行われてもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、関与する機能に応じて、実際には実質的に並行して実行されてよく、またはそれらのブロックは場合によっては逆の順序で実行されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャート図および/または図面の各ブロック、および/またはブロック図および/またはフローチャート図および/または図面のブロックの組合せは、規定されている機能または動作を実行する専用ハードウェア・ベースのシステムによって実装可能であるか、または専用ハードウェアとコンピュータ命令との組合せを実施することができることもわかるであろう。
【0014】
[0028]本明細書では、当業者によってよく理解されている様々な用語が使用されている。それらの用語の意図されている意味は、一般に受け入れられている意味から逸脱しない。
【0015】
[0029]抗凝固剤または抗凝血剤という用語は交換可能に使用されることがあり、自然または人工的な凝固を妨げ、凝固時間を長引かせる、生物試料に添加されるかまたは存在する組成物を指す。抗凝固剤の例には、クエン酸ナトリウム、ヒルジン、および、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)によって、またはヘパリンなどの錯化剤、およびヘパリン硫酸塩および低分子ヘパリンなどのヘパリン種によって代表されるキレート剤、クマリンおよびインダンジオン、Xa因子阻害剤、およびトロンビン阻害剤が含まれるが、これらには限定されない。
【0016】
[0030]本明細書で使用する凝血障害という用語は、患者の血液が凝固する仕方に影響を与えるあらゆる出血性疾患を指す。本明細書で使用する凝固亢進という用語は、血餅形成に向かう異常な上昇の状態を指す。本明細書で使用する凝固性低下という用語は、血餅形成から離れる異常な低下の状態を指す。
【0017】
[0031]本明細書で使用する励起源の例は、磁界、電磁界、光または超音波エネルギーであり得る。本明細書で使用する励起センサは、検体中の検査要素によって影響されるかまたは妨害されるときの励起源の存在、欠如、変化を検出することができる手段である。
【0018】
[0032]血餅溶解およびフィブリン溶解という用語は交換可能に使用される場合があり、本明細書では、通常はプラスミンの酵素作用による、フィブリンの分解を指す。血餅完全性と血餅強度という用語は交換可能に使用される場合があり、本明細書では、フィブリンおよび網血小板の結果として形成された血餅の強度を指す。本明細書で使用する早期血栓溶解という用語は、形成後の血餅の早期溶解を指し、止血の欠陥を示す。
【0019】
[0033]図1および図2に、一部の実施形態による凝固検査デバイス10を示す。凝固検査デバイス10は、一部の実施形態によると、複数の止血条件下で同時に全血の凝固時間を評価し、血餅特性を判定する能力を提供する。図1に示すように、凝固検査デバイス10は、ハウジング14と、カートリッジ30を受け入れるように構成された凹部区画18と、ディスプレイ26とを含む。図のように、凹部区画18とディスプレイ26とはハウジング14内で互いに隣接して配置されるが、凹部区画18とディスプレイ26との間の他の構成および向きも可能である。
【0020】
[0034]図2を参照すると、凝固検査デバイス10は、ハウジング14によって支持された真空源12と、ハウジング14によって支持されたヒータ16も含む。凝固検査デバイス10は、電子プロセッサ24とコンピュータ可読非一過性メモリ28とを含むコントローラ20をさらに含む。メモリ28は、本明細書に記載のようにコントローラ20の機能を実現するように電子プロセッサ24によって実行される命令を記憶する。コントローラ20は、ディスプレイ26にも結合され、グラフ情報およびデータを出力するように構成される。例えば、実装形態によっては、デバイス10は、検査の進行中に被検止血試薬と、各流路の全血凝固時間とに関する特定のデータをディスプレイ26に出力するように構成される。止血剤は、フィブリノゲン、VIII因子、IX因子、クレオプレシピテート、ヒト血漿、VIII因子およびフォン・ヴィレブランド因子、3因子プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)、4因子プロトロンビン複合体凝縮製剤(PCC)、硫酸プロタミン、血小板、ヘパリナーゼ、VII因子、VIIa因子、およびXIII因子を含み得るが、他の適切な止血剤も採用可能である。検査が完了すると、ディスプレイ26は、検査流路データの分析から導き出された診断およびその他の検査特性も表示することができる。コントローラ20は、作動および停止を制御するために真空源12およびヒータ16にも結合される。
【0021】
[0035]図3を参照すると、凹部区画18は、単一のカートリッジ30における凝固時間検査の最大18本の流路を可能にする、カートリッジ30を受け入れるように構成される。1つの構成では、カートリッジ30はマイクロタイタープレートの大きさ程度(例えば9.7mm×11.8mm)であり、18の個別凝固検査を行う。カートリッジ30のエンベロープ内で追加またはより少ない数の流路も使用可能である。例えば、例示のために、図4から図5Bにカートリッジ30における18本の流路を示すが、カートリッジ30は18本より多いかまたは少ない流路を含んでもよい。一実施形態では、デバイス10は4.5mlの全血を収容する検体チューブを受け入れる。18本の凝血検査流路の場合、この実施形態は、検査のために約150マイクロリットルの18のアリコートを作成する。カートリッジ30の構造および寸法は、試薬チャンバおよび後続の検査チャンバのサイズを小さくすることによってサンプル量を2.7mlに低減するように変更してもよい。
【0022】
[0036]図3を続けて参照すると、凹部区画18は、カートリッジ30とその中の検体とを振動させるための歯車駆動部38に機械的に連結される。歯車駆動部38は、アクチュエータ32(例えばモータ、ポンプなど)を介してコントローラ20と連絡している。一実施例では、アクチュエータは、10度と75度の間の揺動角度で、毎秒90度と180度の間の振動/揺動速度を実現する。1サイクル期間は1秒と5秒の間である。他の実施例では、アクチュエータは、本明細書で示すパラメータを下回るかまたは上回り得る適切な揺動速度および揺動角度を実現してもよい。同様に、サイクル期間は、デバイス10の動作の範囲内で適切に調整可能である。
【0023】
[0037]凹部区画18は、カートリッジ30とインターフェースする1つまたは複数の真空ポート42と、インキュベーションおよび検査領域のための1つまたは複数のヒータ領域46と、複数の磁石50と、コントローラ20と通信する複数のセンサ54も含む。
【0024】
[0038]図4に、カートリッジ30の一実施形態を示す。カートリッジ30は、ハウジング58と、廃棄物収集領域62と、凹部区画18上で1つまたは複数の真空ポート42とインターフェースするように構成された1つまたは複数の真空ポート66とを含む。カートリッジ30は、試薬真空領域70と、検体チューブインターフェース74と、(図4で検体チューブハウジング78内に示されている)検体チューブ82を受け入れるように構成された検体チューブハウジング78と、検査流路真空領域84も含む。
【0025】
[0039]カートリッジ30は、射出成形および二次アセンブリ操作用に設計されている。カートリッジ30は、血液と適合性があって凝固に影響を与えない膜で密封されている。カートリッジ30は、互いに離隔された複数のチャンバを含む。血液検体は、真空源12によってカートリッジ30内に導入される。血液が完全に吸引されると血液の流れを停止させるために、疎水性フィルタ34(図5B)が使用される。真空ポート66は、カートリッジ30がデバイス10の外部にあるときに大気圧にある。検体に圧力が加えられていないため、検体チューブ82がデバイス10上に搭載されて検体シーケンスが開始するまでは検体は検体チューブ82内に留まる。
【0026】
[0040]カートリッジ30は、検体注入を、個別の止血試薬を収容するチャンバに接続する共通供給流路X(図5Aに示す)を含む。各試薬チャンバは、流路ごとに一連の疎水性フィルタ34を介して真空ポート66の1つに接続される。検体がカートリッジ30内に吸引されるにつれて、真空源12の所定の減圧によって設定される流率で各流路が順次に満たされる。個別流路が完全に満たされると、その流路のための図5Bに示す疎水性フィルタ34が遮断され、流路はその容量を超えて満たすのを停止する。残りの流路も、フィルタのそれぞれが遮断されるまで満たされる。コントローラ20が、流路のすべてが満たされるときを判定するために、印加減圧の期間を監視するとともにフィルタ全体にわたる圧力降下も監視することができる。
【0027】
[0041]カートリッジ30の流体系について、一部の実施形態によりさらに説明し、図5Aおよび図5Bに示す。カートリッジ30は、廃棄物領域86と、廃棄物領域86と連通する検体供給流路90と、それぞれの流路98を介して検体供給流路90と連通する1つまたは複数の止血試薬チャンバ94とを含む。カートリッジ30は、それぞれの止血試薬チャンバ94の流出口における1つまたは複数の蛇行混合流路102も含む。蛇行混合流路102は、(全血検体を抗凝固処理するために抗凝固剤が使用された場合のための)1つまたは複数の抗凝固剤逆転チャンバ106とそれぞれ流体連通し、抗凝固剤逆転チャンバ106はそれぞれ1つまたは複数の凝固検査チャンバ110と連通している。上述し、本明細書で図示するように、カートリッジ30は、各流路が試薬チャンバ94と、蛇行流体路102と、検査チャンバ110とを含む18本の個別検査流路112を備えるように示されているが、他の構成では、カートリッジ30は、18本より多いかまたは少ない検査流路112を含んでもよい。
【0028】
[0042]図6に、デバイス10とカートリッジ30とを含む、全血検体100の凝固特性を判定するためのシステムを示す。具体的には、カートリッジ30は、デバイス10の凹部区画18内の所定位置にあるのが示されている。凹部区画18内の真空ポート42がカートリッジ30上の真空ポート66と連通している。
【0029】
[0043]全血または血漿中の血餅形成は、多くの異なる方法で測定可能である。電気伝導は全血との接触を必要とする。容量性測定は接触を必要とせず、バリア膜を介して測定することができるが、これらの技術は、デバイスに信号を送り、デバイスから信号を取り出すために検査デバイスとの何らかのタイプの電気接続を必要とする。本明細書に記載の凝固検査デバイス10は、磁性材料からなる球体114が18個の検査チャンバ110のそれぞれの内部にあり、各検査チャンバ110内の全血の粘度を判定するために使用される、非接触測定法を使用する。図7に、拡大された検査チャンバ110とその中に配置された球形部材114の断面図を示す。検査チャンバ110を振動させると、球形部材114が各検査チャンバ110内の全血中で回転する。デバイス10によって振動させられるときに検査チャンバ110内の球形部材114の存在を測定するために、検査チャンバ110に近接してセンサ54が配置される。一構成では、検査チャンバ110は、約150マイクロリットルの検体アリコート量を収容するように3.0mmの幅と18mmの長さを有する。他の構成では、検査チャンバ110は、検体アリコート量を約70マイクロリットルに減らすように、1.5mmの幅と10mmの長さを有してもよい。例示の一構成では、検査チャンバ110間の間隔が4.5mmとされ、それによって凝固時間検査の18本の流路がカートリッジ30のエンベロープ内に組み込まれることができる。本明細書に記載のデバイスの範囲内で他の適切な寸法も可能である。
【0030】
[0044]検査チャンバ110内の移動速度の検知は、球形部材114が、各検査チャンバ110の経路に沿って配置されたセンサ54の近傍を通過するときの磁束の変化を測定することによって行われる。センサ54は、検査チャンバ110との接触を必要とせず、検査チャンバ表面から最大0.8mmまで離隔され得る。センサ54は、カートリッジ30のハウジング58内で発生される信号をそれぞれの検査チャンバ110から検知する。この非接触測定法は、カートリッジ30とデバイス10との完全な離隔を可能にし、それによってデバイス10が全血検体と接触する必要をなくす。この構成は、検体間でのデバイスの洗浄またはメンテナンスステップもなくす。さらに、デバイス流体経路内の血餅に起因してデバイスが機能しなくなる可能性もなくす。
【0031】
[0045]各検査チャンバ110には、距離(例えば9.5mm)をあけて検査チャンバ内の球形部材114の移動経路に直線的に沿って配置された2つのセンサ54が付随している。図9を参照すると、各センサ54は、十分な磁界強度の(例えば1つまたは複数の希土類金属からなる)磁性部材118からなり、それによって検査チャンバ領域内と、磁性部材118と検査チャンバ110との間に配置されたホール効果センサ122とに磁界が延びる。ホール効果センサ122は、1ガウス当たり8ミリボルトと10ミリボルトの間の磁界に比例する電圧信号を発生する。振動サイクルの開始時に、コントローラ20が、各センサ54の磁界のベースラインである静止読み取り値を記録する。このベースライン測定値は、球形部材114がセンサ54の上を通過するときの磁界の乱れの量を設定するために使用される。球形部材114がセンサ54の上を通過するとき、球形部材114は静止磁界において乱れを生じさせ、センサ54によって検出される。この磁束の乱れは、ホール効果センサ122によって検出され、電圧に変換される。各センサ54の電圧信号は次にコントローラ20に送信される。信号アーチファクトを除去するために信号閾値が設定される。センサ54からの電圧信号は、一連のアナログ-デジタル変換器によってデジタル信号に変換される。検査チャンバ110ごとに配置された2つのセンサ54があるため、2つのセンサ54の乱れのピーク間の時間は、検査チャンバ110内の球形部材114の移動時間に直接関係している。この方法により、一定期間にわたりデバイス10が検査チャンバ110を振動させて球形部材114をセンサ54のそばを通過させるときの検査チャンバ110内の流体の粘度を追跡することができる。図9に、検査チャンバ110および球形部材114との相互作用を示す磁界マップを示す。図9に示すように、左側のマップは、球形部材が、球形部材が存在しない右側のマップよりも多くの力線を生じさせる様子を示している。
【0032】
[0046]検査チャンバ110と、センサ54と、コントローラ20とが、所定のプログラム可能な振動速度での各検査チャンバ内の球形部材114の移動時間を判定する。各検査チャンバ110内の流体の粘度はそのチャンバ内の移動時間に比例する。したがって、凝固の進行は、流体粘度の上昇と時間との関係とみることができる。凝固カスケードは、真に事象のカスケードであり、したがって非線形である。デバイス10の移動時間の追跡により、凝固に近づくときの静止血液状態を検出し、監視することができる。この凝固の初期発現の直後、図13に示すように、血餅を形成することによって流体は急速に高粘度に近づく。流体状態から血餅形成までの軌跡の角度も測定され、明らかな因子または結晶板機能の欠乏の診断の根拠として使用される。
【0033】
[0047]凝固時間に加えて、デバイス10は形成中の血餅の完全性または強度を判定することができる。デバイス10内の各検査チャンバ110は(上述のように)2つの独立したセンサ54を有し、それによって移動時間が計算される。球形部材114が検査チャンバ内で両方のセンサ54を横切ることができない場合、移動時間を計算することができない。これは、検査チャンバ110内の球形部材114の完全な移動を妨げている血餅を示すものである。しかし、検査チャンバ内の球形部材114にかかる重力が1G未満であるため、球形部材114が弱い血餅によって保持される可能性があり、その場合、球形部材114はチャンバ全長の限られた範囲を移動し続けることになる。デバイス10は、両方のセンサ54からの信号を監視し、2つのセンサ54のうちの一方が信号を出し続けていることを検出することができる。この信号は、球形部材114が検査チャンバ110の全長を完全に移動するのを妨げてはいるが、それでも球形部材114が移動することを可能にしている、弱い血餅を示している。図14に示すように、2つのセンサのうちの一方のみが、球形部材114の移動を示し続ける。
【0034】
[0048]図14は、球形部材114が、カートリッジの各振動またはデューティサイクルによりセンサ54のうちの一方のみを横切っており、弱い血餅を示している状態を示す。球形部材114が2つのセンサ54のうちの一方によって検出される頻度は、血餅の完全性を示し、信号発生の高い頻度は弱い血餅を示す。単一センサ信号の数が減少すると、これは血餅強度の上昇を示す。球形部材114の移動がない場合は、血餅形成後の強い血餅を示し、頻度ゼロまたはデバイス10によって設定された閾値を下回る頻度となる。デバイス10は、血餅完全性のカットオフ値を設定する。
【0035】
[0049]一実施例では、球形部材114のデューティサイクルは血餅の完全性に比例し、40%を上回るデューティサイクルは著しく弱い血餅を示し、25%と40%の間のデューティサイクルはやや弱い血餅を示し、10%と25%の間のデューティサイクルはやや強い血餅を示し、0%と10%の間のデューティサイクルは強い血餅を示す。
【0036】
[0050]検査チャンバ内の球形部材114の相対的な大きさと検査チャンバの直径とは、生理学的凝固メカニズムに類似した方式で凝固を生じさせやすくする。ヒト血管系内のずり応力が凝固を促進することが知られている。多くの凝固検査システムは、通常の凝固時間を急速凝固時間の必要を満たすレベルまで短縮するために、セリットまたはカオリンなどの高表面積凝血促進剤の添加を必要とする。本明細書に記載の方法および装置は、各検査流路内に500秒-1と4,000秒-1の間または毎秒100ダインから1,000ダインの生理学的ずり速度およびずり応力を生じさせることによって、凝血促進剤の必要をなくす。図8に、検査チャンバ110の直径と検査チャンバ内の球形部材114の相対的大きさとに基づく、検査チャンバ110内の球形部材114の移動速度とその結果のずり速度との関係を示す。ずり速度は、振動角度と、検査チャンバの直径と、相対的な球形部材の直径とを変更することによって調整可能である。しかし、検査結果を得るまでのより迅速な時間が望まれる場合には、このシステムは、カオリン、クエン酸塩、組織因子、リン脂質、またはその他の適切な活性化物質などの凝血促進剤の添加とともに使用することもできる。
【0037】
[0051]図11を参照すると、(200で)デバイス10の電源投入によって検体処理が開始する。(204で)デバイス10は品質管理試験を受ける。デバイス10は、すべての電子機械サブシステムが正常な順調動作状態であることを確認するための品質検査を実行する。ユーザが検体検査を開始することができるようにする前に、真空システム、測温要素、および磁気センサなどのサブシステムがすべて検査される。さらに、デバイスには、再利用可能QCカートリッジが与えられ、デバイスはすべての電子機械システムが正常に動作していることを確認するために、QCカートリッジを検体検査と同様にして振動させる。再利用可能カートリッジ試験結果がコントローラまたはメモリに記録される。QCカートリッジが取り外され、デバイスは次に患者検体を受け入れる準備が整う。次に、検体チューブ(患者からの全血で満たされ、検体チューブは固有バーコードを含む)を(208で)デバイス10に識別させる。デバイス10は、操作者が入力せずに、検査を実行するのに必要なすべての情報の入力を可能にする。デバイス10は、コントローラ20と通信するバーコードスキャナ40を含み得る。操作者は、スキャナ40の前に検体チューブのバーコードを置く。スキャナ40はバーコードと検体情報をメモリ28またはその他の記憶デバイス(例えばデバイス10のローカルまたはリモートにあるデータベース)に記録する。デバイス10は、ディスプレイ26(例えばタッチスクリーン)を介した患者情報の手動入力を可能にすることができるオーバーライド機能を有する。患者検体は検査カートリッジ30にも関連付けられる必要がある。操作者は、カートリッジに付けられたバーコードをスキャナ40の前に置く。スキャナ40は、カートリッジ30情報をメモリ28またはその他の記憶デバイス(例えばデバイス10のローカルまたはリモートにあるデータベース)に記録する。検体チューブがバーコードを有していない場合は、ディスプレイ26上のオンスクリーンキーボードを介して情報を入力するように操作者に促すことができる。
【0038】
[0052]検体およびカートリッジ30が(212で)デバイス10に装填され、(216で)操作者がディスプレイ26上のユーザインターフェースを介して検体とカートリッジ30とを確認する。デバイス上のカバー130が凹部区画18上に降ろされる。カバー130は、検体処理中および凝固時間検査を開始する前に、カートリッジ30を通って流体を移動させるために必要な、カートリッジ30上の真空ポート66とインターフェースする真空接続部を含む。カートリッジ30上の真空ポート66は、カバー130を閉じる動作によってデバイス10の真空ポート42に接続される。カバー130は、カートリッジ30とデバイス10内のセンサ54との間の均一な距離を維持するように、カートリッジ30に圧力も加える。操作者は、ディスプレイ26上のユーザインターフェースを介して検査シーケンスを開始する。
【0039】
[0053]検体採取と検体検査との間の時間を見込んでおくために、デバイス10に提示される検体は、典型的には抗凝固処理される。これは、ほとんどの血液検査手順で一般的に行われることである。デバイス10は、抗凝固剤拮抗剤(例えばカルシウム)が入っていないカートリッジを使用した抗凝固処理されていない検体を検査することもできるが、抗凝固処理されていない検体をカートリッジ30に入れ、デバイス10に配置するための時間の制約がある。
【0040】
[0054]カートリッジ30は、検体チューブハウジング78内の検体注入デバイスとして検体真空ドローチューブ(例えば可撓性キャップを備えた真空容器)を受け入れるように構成される。これにより、検査室器具に共通するプロセスであるがデバイス10では必要がないプロセスである、検体をカートリッジ30にピペットで入れる必要がなくなる。操作者は、検体ドローチューブを(検体チューブハウジング78内の)カートリッジ30に直接挿入し、カートリッジ30をデバイス10の凹部区画18に配置する。カートリッジ30は、デバイス10に配置される前に流出経路が開かれないように制御することによって、血液検体がカートリッジ内に移動するのを防ぐ。チューブ内の検体には、可撓性キャップを刺し通す1本または複数の針(例えば2本の針)によってアクセスする。操作者は、検体チューブをカートリッジ上の検体チューブ受けに挿入する。穏やかな挿入力で、針アセンブリが検体チューブキャップを刺し通す。真空が加えられると、一方の針が検体を吸引する機能を果たし、他方の針は血液をドローチューブから流出させる流出口の機能を果たす。
【0041】
[0055]デバイス10は、(220で)既知のプログラム済みパラメータのセットを使用して検体を処理する。最初のステップは、検体チューブから血液を引き出すために可撓性キャップを刺し通し、検体供給流路90および接続された試薬収容チャンバ94を満たすことである。血液は(図5Aに示す)点Xで検体チューブからカートリッジ30内に移動し、検体供給流路90を満たし、試薬収容チャンバ94を満たし始める。コントローラ20が、カートリッジ内の血液検体に真空を加えるようにハウジング14内の真空源12を作動させる。圧力が既定値に制御されるように、真空ポンプに沿った圧力調整器がデバイス10によって読み取られる。検体吸引のための典型的な真空レベルは、50ミリバール(mb)と100mbの間である。このシーケンスにおいて、最初の検体が血液検体の等分に分離された18のアリコートに分割される。
【0042】
[0056]コントローラ20が、真空ポート66における特定のバルブを選択し、それによって真空の方向を制御する。血液検体は、カートリッジ30内の様々な流路を通って移動し続ける。試薬チャンバ94には様々な止血剤の個別の用量が入っている。これらの止血剤は、製造プロセスの一環として乾燥されて試薬チャンバ94内に残っている。乾燥方法は、試薬の特性に応じて、凍結乾燥または空気乾燥とすることができる。カートリッジの設計は、真空源12によって、血液検体が試薬チャンバ94の底部から試薬チャンバ94内に引き込まれ、チャンバの上部に引き込まれるようになっている。乾燥試薬は、(224で)流入する血液検体量によって再水和される。各試薬チャンバ94は、試薬チャンバが過剰充填されるのを防ぐ疎水性フィルタを収容する。デバイス10は、既定期間にわたって真空を加えるか、または、すべての疎水性フィルタが遮断されるまで疎水性フィルタの圧力降下を監視する。
【0043】
[0057]各検体試薬複合体は、相互汚染を避けるためにその最も近接した隣接検体試薬複合体から分離される必要がある。個別の試薬チャンバ94の充填後、デバイス10は、検体を試薬チャンバ94に向けるために使用されるバルブを閉じ、検体供給流路90の内容物をカートリッジ30内の廃棄物領域62に向けるためのバルブを開くことによって、試薬チャンバ94を接続する検体供給流路90を空にする。吸収材料が供給流路90からの廃棄物を収集する。これで各検体アリコートが空の供給流路90によって生じた広い空隙によってその隣接試薬チャンバ94から分離される。
【0044】
[0058]凝固は温度依存現象である。コントローラ20は、(凹部区画18のヒータ領域36を介して)カートリッジ30に熱エネルギーを供給し、通常の検査温度が摂氏37度である試薬チャンバ94内の検体アリコートを、摂氏25度と40度の間のプログラム可能温度値にするために、ヒータ16を作動させる。この範囲により、正常条件と低体温条件と高体温条件下での検体を検査することが可能になる。検体アリコートは、止血剤を使用して典型的には1分と10分の間であるプログラム可能期間にわたってインキュベートされる。他の実施形態では、検体アリコートは、止血剤を使用して3分と5分の間にわたってインキュベートされる。これにより、検体アリコートの温度を適正な温度に平衡化させることができるとともに、止血剤が完全に溶解し、検体アリコート中に拡散することを可能にする。
【0045】
[0059]ここまでで、すべての検体アリコートが検査の準備が整うまで血液検体が凝固し始めるのを防ぐために、血液検体と試薬とが抗凝固処理される。各検査流路の凝固時間検査を開始する前に、抗凝固剤を逆転する必要がある。蛇行形状流路102が試薬チャンバ94を検査チャンバ110に接続する。流体が試薬領域から検査領域に移動するときに、蛇行部の狭い直径が流体速度を上昇させる。各流路の流れに、正確な量の乾燥または凍結乾燥されたカルシウムが沿っている。移動する流体がカルシウムを再水和させ、移動時に検体アリコートと混合する。カートリッジ30は、検体が検査領域に入る直前に、各流路内で個別の量のカルシウムを含有している。カルシウムは、アリコートが検査領域に進むときにアリコートと混合する。これで各アリコート中の抗凝固剤が逆転され、凝固カスケードが開始する。
【0046】
[0060]コントローラ20は、(228で)バルブを介して真空源12の方向を変えるために信号を送信し、検体アリコートの流れを試薬チャンバ94から検査チャンバ110に向ける。典型的な真空レベルは50mbと100mbの間である。流路の充填を容易にし、検査チャンバ110内に気泡を閉じ込める可能性を最小限にするように、カートリッジ30と検査チャンバ110はデバイスに置かれるときにカートリッジの水平位置に対して10度と40度の間の所定角度に配置される。各検査チャンバ110は、検査チャンバの過剰充填とデバイス真空システムへの血液の引き込みとを防ぐために、真空源12に沿わせた疎水性フィルタを有する。
【0047】
[0061]検査チャンバ110のすべて(または一部)が満たされ、検体アリコートの抗凝固状態が逆転された状態で、コントローラ20は、(232で)検査流路110を中心とした中心軸の周りのカートリッジ30の振動を開始し、凝固検査を開始するために、アクチュエータ32を作動させる。この動作は、カートリッジ30内の球形部材114を検査流路の一端から他端まで均一に回転させる。各振動サイクルにより、各検査流路内で球形部材114が、各流路110に付随するセンサ54の上を通過し、各検査流路110内の血液検体の粘度に比例する信号を発生する。センサ54は発生した信号をコントローラ20に送信する。
【0048】
[0062]上述のように、デバイス10は、カートリッジ流路内の球形部材114の動きと移動時間とを検出する非接触法を使用する。現行の方法は、400シリーズステンレス鋼ボールの磁性を使用するが、超音波、電磁気、光学式など他の非接触検出方法も使用可能である。
【0049】
[0063]各センサ54は、流路110ごとに1対のネオジム・鉄・ホウ素希土類磁石118と2つのホール効果センサ122とを含む。各磁石118は、各検査流路の直線経路に沿って約9.5mm離隔され、ホール効果センサ122を通ってカートリッジ30のその特定の領域に入る局在磁界を生じさせる。磁気ステンレス鋼ボールが磁界を通過すると、ホール効果センサ122が、磁石ボールの存在によって生じる静止ベースライン信号を上回る磁束の変化を検出し、電圧を生じさせる。デバイスは、各サイクルの開始時にベースライン(静止)磁気信号を測定する。(検出された電圧がある場合)各センサ54からの電圧はさらなる処理のためにコントローラ20に送られる。
【0050】
[0064]各流路の凝固作用を測定するために他の励起源およびセンサ技術を採用することも可能であるが、流路間クロストークを受ける可能性がある。各流路に超音波センサも使用することができる。この場合、各流路内の球形部材114は磁性である必要はないが、超音波反射が信号を受信するのに十分な大きさとなるように、全血よりもはるかに大きい密度のものである必要がある。小型金属探知機に類似した電磁気センサも使用可能である。この場合、球体部材は導電性である必要があるが、磁性である必要はない。球形部材の光学的探知も使用可能である。この場合、励起光源と、隣接する光検出器とを提供する反射式センサ要素が、球形部材が光学センサの上を通過するときに球形部材の反射を検出することになる。磁気検知を使用する利点は、流路間の磁界が、すべて同じ極性であり、4mmの近い離隔距離で隣接する流路と干渉しないため、自己離隔性であることである。
【0051】
[0065]検査の最初の数分間に、検体アリコートのベースラインまたは正常粘度が設定される。検査流路のそれぞれでフィブリンが形成され始めると、10%と20%の間の粘度の上昇がコントローラ20によって観察され、記録される。この上昇の直後に、凝固カスケードが急速に進行し、所与の流路内の検体の粘度が、球形部材の検体内を通過する能力を上回る点に達する。その特定の流路110に沿ったセンサ54は、発生される電圧がなくなったことを検知する。コントローラ20は、これを血餅形成と解釈し、血餅の時刻を記録する。検査はすべての流路が凝固するかまたは事前プログラムされた最大検査時間に達するまで進行する(例えば検査は236で完了する)。
【0052】
[0066]前述のように、凝固時間を考慮し、完全な血餅を判定する際に、血餅完全性または強度も考慮される。凝血障害の原因の判定では堅固な血餅に関連する凝固時間のみが考慮される。弱い血餅を物理的に観察すると、球体が検査流路の全長を移動するのを妨げる球形部材の周囲に形成された小さい繊維がわかるが、球形部材は短距離および検査流路における2つのセンサのうちの一方を横切って移動することができる。それに対して、高完全性血餅は球形部材を完全に捕捉し、血餅形成後はほとんどまたはまったく移動させない。
【0053】
[0067]血餅形成後、センサ信号により血餅完全性を評価することができる。血餅形成は、センサ54が各デバイス振動サイクルで2つのセンサピークを検知しなくなる時点で判定される。高い完全性/強度の血餅においては、血餅形成後にいずれのセンサ54も信号を発生しない。低完全性の、弱い血餅においては、センサ54の一方が信号を発生し続け、血餅が球形部材114を限られた距離にわたって移動させていることを示す。血餅完全性は、少なくとも一方のセンサが信号を報告しないときの、血餅が最初に形成された時点から、300秒と1,800秒の間のプログラム可能検査期間の終わりまでの、流路内の平均信号を調べることによって定量化される。数値が小さいほど、血餅完全性が高い。高完全性血餅は、ゼロと100の間の値を生じさせる。中程度の完全性血餅は、101と400の間の値を生じさせる。低完全性血餅は、401を上回り、2,000もの高い血餅強度値を生じさせる。
【0054】
[0068]デバイス10は、凝固時間および血餅完全性を、治療を含む流路に対するカートリッジ30内の2つの未処理流路または基準流路と比較する。他の凝固検査は、凝固時間を秒単位で判定し、設定済みの凝固時間範囲と比較する。デバイス10は、様々な止血剤に対する反応を判定する方法として、基準検体流路に対して相対的な凝固時間を凝固時間比の形態で調べる。値1.0は、止血剤と基準検体流路とに差がないことを示す。1.0未満の値は、基準流路と比較して凝固時間の短縮を示し、1.0より大きい値は凝固時間の増大を示す。凝固時間の変動係数(CV)は、12%と高くなることがあり、したがって試薬に対する「反応」の閾値はこのCVより大きい短縮に基づく。(100以下の)高完全性の血餅による20%を超える、基準流路に対して正規化された凝固時間の短縮は、特定の流路内の試薬に対する妥当な反応とみなされる。検査チャンバの凝固時間が設定正常範囲(典型的には120秒と270秒の間)の下限を下回る場合、そのチャンバの結果は凝固性亢進の可能性があるものとして示される。凝固時間が設定正常範囲の上限を上回る場合、その検査チャンバは凝固性低下として示される。
【0055】
[0069]凝血障害の病因は、カートリッジ30内に含まれる基準検体アリコートと比較した、前述の凝固時間比と各検査チャンバ110の血餅強度とによって判定される。凝固時間を短縮する止血剤と凝固時間を短縮しない止血剤の情報が組み合わされて、特定の病因または、欠乏しているために凝血障害を引き起こしている可能性のある因子群を隔離する。例えば、図12の決定木を参照すると、カートリッジ30と検体がクリオレシピテート流路において短縮凝固時間で応答する(<0.8比で示される)が、VIII因子流路では応答しない(>0.8比で示される)場合、クリオレシピテートは3つの凝固因子をすべて含有しているため、その欠乏症はフォン・ヴィレブランド因子またはフィブリノゲンである可能性がある。同様に、検体がフィブリノゲン流路とクリオレシピテート流路とに反応するが、VIII因子またはVIII/vWF因子複合体流路には反応しない場合、判定はフィブリノゲン欠乏症である可能性がある。
【0056】
[0070]様々な止血剤に対するこれらの反応は、検査シーケンスの終わりに報告される特定の条件を示すパターンまたはシグネチャを形成する。ディスプレイ26は各流路の凝固時間および未処理の基準流路に対する比の視覚的表示を提供することができる。ディスプレイ26は、すべての検査流路にわたる凝固時間、凝固比、および血餅強度に基づいて、凝血障害の考えられる原因に関する医師による解釈の対象となる結果の欠乏症または診断も提供することができる。コントローラによって行われる分析は、多変量的性質のものであり、凝血障害の病因の判定の際にすべての流路データを調べる。デバイス10は、ディスプレイ26上に出力される情報およびデータを印刷するプリンタも含み得る。基準流路に対する比の閾値によって治療に対する反応が設定される。最大12%の流路間の固有の変動があるため、閾値はこれを考慮に入れて設定される。止血試薬に対する反応は、所定の閾値より大きい比(例えば、基準流路と比較して20%またはそれ以上の変化)として定義される。
【0057】
[0071]デバイス10は、血餅形成が確証された後で血餅がどのように解体するかを検査する際にも使用することができる。通常は、血餅が自然に溶解するフィブリン溶解と呼ばれるプロセスがある。本明細書に記載のデバイス10では、カートリッジ30は、球形部材114が移動を再開しないか監視しながら、約30分から60分間、振動を続けることができる。これは、通常の検体では起こらないはずであるが、一部の患者、例えば外傷患者は、血餅の溶解が速すぎ、再び出血が開始する、線溶亢進になる場合がある。
【0058】
[0072]1秒と2秒の間の初期振動サイクルにより、球形部材114がカートリッジ30の一端から他端まで移動するのに十分な時間が与えられる。血餅形成が開始すると、検体アリコートの粘度が上昇し、移動時間を増大させる。デバイスは、振動サイクルパラメータに適応アプローチを適用することができる。
【0059】
[0073]完全を期するために、以下の番号付き項目に本発明の様々な態様を記載する。
[0074]項目1.複数の検査チャンバと各検査チャンバ内の金属球体とを含む、全血検体を含むカートリッジと、
カートリッジを受け入れるように構成されたデバイスとを含むシステムであって、
デバイスは、
各センサが検査チャンバのうちの1つに隣接して配置された複数のセンサと、
コントローラとを含み、
コントローラは、
検査チャンバのそれぞれに全血検体の一部を移動するように真空源を作動させ、
カートリッジを動かし、
カートリッジが動いている間にセンサのそれぞれから信号を受信し、
金属球体が検査チャンバ内を移動しているか否かを判定し、
各検査チャンバ内の全血検体が凝血障害を示しているか否かを判定し、
各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するか否かを示す標識をディスプレイ上に出力するように構成された、システム。
【0060】
[0075]項目2.各センサは磁石とホール効果センサとを含む、項目1に記載のシステム。
[0076]項目3.磁石はその磁石に関連付けられた検査チャンバの近傍に磁界を生じさせ、検査チャンバ内の金属球体は磁界に乱れを生じさせ、センサは、乱れを検知し、球体が検査チャンバ内で移動しているか否かを判定するようにコントローラに信号を送信する、項目2に記載のシステム。
【0061】
[0077]項目4.真空源に選択的に結合された、カートリッジにおける複数の真空ポートをさらに含み、真空ポートのそれぞれに沿った複数の疎水性フィルタをさらに含む、項目1に記載のシステム。
【0062】
[0078]項目5.カートリッジは、1つの試薬チャンバが検査チャンバのうちの1つに関連付けられた複数の試薬チャンバを含み、疎水性フィルタは試薬チャンバのそれぞれが満たされると血液の流れを停止させるように構成された、項目4に記載のシステム。
【0063】
[0079]項目6.デバイスは、カートリッジと全血検体とに熱エネルギーを加えるように構成された加熱素子をさらに含む、項目5に記載のシステム。
[0080]項目7.加熱素子は、全血検体を摂氏34度と摂氏37度の間の温度に加熱する、項目6に記載のシステム。
【0064】
[0081]項目8.加熱素子は、全血検体を摂氏30度と摂氏33度の間の温度に加熱する、項目6に記載のシステム。
[0082]項目9.全血検体は、試薬チャンバのそれぞれの中で試薬と混合され、1分間と10分間の間、インキュベートされる、項目7に記載のシステム。
【0065】
[0083]項目10.試薬チャンバのそれぞれの中の試薬は、隣接する試薬チャンバから離隔されている、項目9に記載のシステム。
[0084]項目11.コントローラは、検査チャンバのそれぞれにおける血餅形成までの時間の長さを判定するようにさらに構成された、項目1に記載のシステム。
【0066】
[0085]項目12.時間の長さは、検査チャンバのうちの1つに関連付けられたセンサが金属球体の移動をどれだけ長く検出するかに基づく、項目11に記載のシステム。
[0086]項目13.各検査チャンバはセンサのうちの2つを含む、項目1に記載のシステム。
【0067】
[0087]項目14.コントローラは、血餅形成を判定するようにさらに構成された、項目13に記載のシステム。
[0088]項目15.血餅形成は、コントローラが、各振動サイクルにおける2つのピークが存在しないことを検出し、金属球体が検査チャンバ内での移動を停止したことを示すときに判定される、項目14に記載のシステム。
【0068】
[0089]項目16.コントローラは、血餅完全性を判定するようにさらに構成された、項目14に記載のシステム。
[0090]項目17.血餅形成後に2つのセンサのいずれも信号を発生しない場合に高完全性の血餅が判定される、項目16に記載のシステム。
【0069】
[0091]項目18.2つのセンサの一方が、血餅が金属球体を限定された距離にわたって移動することを可能にしていることを示す信号を発生し続ける場合に、低完全性の血餅が判定される、項目16に記載のシステム。
【0070】
[0092]項目19.血餅完全性は、血餅が形成された時点から検査の終了までに2つのセンサによって発生された検査チャンバにおける平均信号に基づく、項目16に記載のシステム。
【0071】
[0093]項目20.カートリッジは18個の検査チャンバを含む、項目5に記載のシステム。
[0094]項目21.18個の検査チャンバのそれぞれは、試薬チャンバのうちの1つに関連付けられ、18個の検査チャンバのそれぞれが、関連付けられた試薬チャンバから全血-試薬複合体を受け取る、項目20に記載のシステム。
【0072】
[0095]項目22.各検査チャンバ内の金属球体は、各検査チャンバ内の全血検体の粘度に比例する信号を発生するように、各検査チャンバに関連付けられたセンサの上を通過する、項目1に記載のシステム。
【0073】
[0096]項目23.コントローラは、凝血障害の結果に基づいて診断を判定するようにさらに構成された、項目1に記載のシステム。
[0097]項目24.コントローラは、診断をディスプレイ上に出力するようにさらに構成された、項目23に記載のシステム。
【0074】
[0098]項目25.全血検体を収容したカートリッジを処理するためのデバイスであって、
カートリッジを受け入れるための凹部と、
カートリッジに結合された真空源と、
カートリッジを振動させるためにカートリッジに連結されたアクチュエータと、
コントローラとを含み、
コントローラは、
全血検体を容器からカートリッジ内の複数の流路へ、その後、血液が試薬と混合する複数の試薬チャンバ内へ、次に複数の蛇行形状流路を通って複数の検査チャンバ内へと移動させるように、真空源を作動させ、
カートリッジを振動させるためにアクチュエータを作動させ、
各センサが検査チャンバのうちの1つに関連付けられた複数のセンサから、検査チャンバのそれぞれに隣接して配置された磁石によって発生される磁界内の球状部材の存在に基づく信号を受信し、
各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するか否かを判定し、
各検査チャンバの全血中に凝血障害が存在するか否かを示す標識をディスプレイに出力するように構成された、デバイス。
【0075】
[0099]項目26.真空源に選択的に結合された、カートリッジにおける複数の真空ポートをさらに含み、真空ポートのそれぞれに沿った複数の疎水性フィルタをさらに含み、疎水性フィルタは試薬チャンバのそれぞれが満たされると血液の流れを停止させるように構成された、項目25に記載のデバイス。
【0076】
[00100]項目27.カートリッジと全血検体とに熱エネルギーを加えるように構成された加熱素子をさらに含む、項目25に記載のデバイス。
[00101]項目28.加熱素子は、全血検体を摂氏34度と摂氏37度の間の温度に加熱する、項目27に記載のデバイス。
【0077】
[00102]項目29.加熱素子は、全血検体を摂氏30度と摂氏33度の間の温度に加熱する、項目27に記載のデバイス。
[00103]項目30.全血検体は、試薬チャンバのそれぞれの中で試薬と混合され、1分間と10分間の間、インキュベートされる、項目28に記載のデバイス。
【0078】
[00104]項目31.試薬チャンバのそれぞれの中の試薬は、隣接する試薬チャンバから離隔されている、項目30に記載のデバイス。
[00105]項目32.コントローラは、検査チャンバのそれぞれにおける血餅形成までの時間の長さを判定するようにさらに構成された、項目25に記載のデバイス。
【0079】
[00106]項目33.時間の長さは、検査チャンバのうちの1つに関連付けられたセンサが球形部材の移動をどれだけ長く検出するかに基づく、項目32に記載のデバイス。
[00107]項目34.各検査流路はセンサのうちの2つを含む、項目25に記載のデバイス。
【0080】
[00108]項目35.コントローラは、血餅形成を判定するようにさらに構成された、項目34に記載のデバイス。
[0109]項目36.血餅形成は、コントローラが、各振動サイクルにおける2つのピークが存在しないことを検出し、球形部材が検査チャンバ内での移動を停止したことを示すときに判定される、項目35に記載のデバイス。
【0081】
[00110]項目37.コントローラは、血餅完全性を判定するようにさらに構成された、項目35に記載のデバイス。
[00111]項目38.血餅形成後に2つのセンサのいずれも信号を発生しない場合に高完全性の血餅が判定される、項目37に記載のデバイス。
【0082】
[00112]項目39.2つのセンサの一方が、血餅が球形部材を限定された距離にわたって移動することを可能にしていることを示す信号を発生し続ける場合に、低完全性の血餅が判定される、項目37に記載のデバイス。
【0083】
[00113]項目40.血餅完全性は、血餅が形成された時点から検査の終了までに2つのセンサによって発生された検査チャンバにおける平均信号に基づく、項目37に記載のデバイス。
【0084】
[00114]項目41.カートリッジは18個の検査チャンバを含む、項目25に記載のデバイス。
[00115]項目42.18個の検査チャンバのそれぞれは、試薬チャンバのうちの1つに関連付けられ、18個の検査チャンバのそれぞれが、関連付けられた試薬チャンバから全血-試薬複合体を受け取る、項目41に記載のデバイス。
【0085】
[00116]項目43.各検査チャンバ内の球状部材は、各検査チャンバ内の全血検体の粘度に比例する信号を発生するように、各検査チャンバに関連付けられたセンサの上を通過する、項目25に記載のデバイス。
【0086】
[00117]項目44.コントローラは、凝血障害の結果に基づいて診断を判定するようにさらに構成された、項目25に記載のデバイス。
[00118]項目45.コントローラは、診断をディスプレイ上に出力するようにさらに構成された、項目25に記載のデバイス。
【0087】
[00119]項目46.全血検体の凝固特性を判定する方法であって、
各検査流路が試薬チャンバと、検査チャンバと、各検査チャンバのそれぞれの中の金属球体とを含む複数の検査流路を有するカートリッジ内に、全血検体を導入するステップと、
全血検体を試薬チャンバのそれぞれの中の試薬と混合するステップと、
カートリッジを振動させるステップと、
検査チャンバのそれぞれに隣接して配置された2つのセンサによって、検査チャンバのそれぞれの中の金属球体の移動を検出するステップと、
コントローラによって、金属球体の移動の検出に基づいて、全血検体の1つまたは複数の血餅特性を判定するステップと、
ユーザに表示するための血餅特性を示す標識を生成するステップとを含む方法。
【0088】
[00120]項目47.全血検体が検査チャンバに入る前に全血検体中の抗凝固剤を逆転させるステップをさらに含む、項目46に記載の方法。
[00121]項目48.カートリッジはカルシウムを含み、さらに、全血検体は試薬チャンバの出口と検査チャンバの入口との間でカルシウムと接触する、項目47に記載の方法。
【0089】
[00122]項目49.1つまたは複数の血餅特性を判定するステップは、全血検体の血餅形成を判定するステップを含む、項目46に記載の方法。
[00123]項目50.血餅形成を判定するステップは、検査チャンバ内で金属球体が移動を停止したことを示す、各振動サイクルにおける2つのピークが存在しないことをコントローラが検出するステップを含む、項目49に記載の方法。
【0090】
[00124]項目51.血餅特性の1つは血餅完全性である、項目50に記載の方法。
[00125]項目52.血餅形成後に2つのセンサのいずれも信号を発生しない場合に高完全性の血餅が判定される、項目51に記載の方法。
【0091】
[00126]項目53.2つのセンサの一方が、血餅が金属球体を限定された距離にわたって移動することを可能にしていることを示す信号を発生し続ける場合に、低完全性の血餅が判定される、項目51に記載の方法。
【0092】
[00127]項目54.血餅完全性は、血餅が形成された時点から検査の終了までに2つのセンサによって発生された検査チャンバにおける平均信号に基づく、項目51に記載の方法。
【0093】
[00128]項目55.カートリッジを振動させるステップは、カートリッジを所定のデューティサイクルで揺動させることを含み、金属球体のデューティサイクルは金属球体の移動の検出に基づく、項目51に記載の方法。
【0094】
[00129]項目56.金属球体のデューティサイクルは血餅完全性に比例する、項目55に記載の方法。
[00130]項目57.血餅完全性は、金属球体のデューティサイクルが40%を超える場合に低い、項目56に記載の方法。
【0095】
[00131]項目58.血餅完全性は、金属球体のデューティサイクルが25%と40%の間である場合に中程度である、項目56に記載の方法。
[00132]項目59.血餅完全性は、金属球体のデューティサイクルが10%と25%の間である場合に高い、項目56に記載の方法。
【0096】
[00133]項目60.血餅完全性は、金属球体のデューティサイクルが0%と10%の間である場合にきわめて高い、項目56に記載の方法。
[00134]項目61.1つまたは複数の血餅特性を判定するステップは、全血検体の粘度を判定するステップを含む、項目46に記載の方法。
【0097】
[00135]項目62.粘度は、2つのセンサ間の金属球体の移動時間に基づく、項目61に記載の方法。
[00136]項目63.粘度は、全血検体中に血餅が形成されるにつれて上昇する、項目62に記載の方法。
【0098】
[00137]項目64.粘度が所定のベースラインの10%と20%の間であるときに血餅形成が開始する、項目63に記載の方法。
[00138]上記の詳細な説明は、例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定される本発明の範囲に対する限定と捉えるべきではないことを理解されたい。
【0099】
[00139]開示されている実施形態の様々な変更および修正が、当業者には明らかであろう。本発明の様々な特徴および利点は以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14