(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230818BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20230818BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 302R
C02F1/00 D
(21)【出願番号】P 2022503556
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2021080037
(87)【国際公開番号】W WO2021197009
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】202010256036.1
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518142258
【氏名又は名称】中国水利水電科学研究院
【氏名又は名称原語表記】China Institute of Water Resources and Hydropower Research
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 浩
(72)【発明者】
【氏名】雷 暁輝
(72)【発明者】
【氏名】戴 会超
(72)【発明者】
【氏名】張 召
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(72)【発明者】
【氏名】楊 恒
(72)【発明者】
【氏名】朱 永楠
(72)【発明者】
【氏名】楊 朝暉
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103175513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109615124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106355540(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水環境監視データを取得し、箱ひげ図を描き、箱ひげ図に基づいて異常データを実時間認識診断するステップS1と、
予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行するステップS2と、
BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、灰色関係分析法によって比較選択された関連性の高い変数をモデルの入力とし、予測変数をその出力とするステップS3と、
BPニューラルネットワークモデルを水環境監視データの実時間予測に適用し、異常診断とデータ補間を実行するステップS4と、
を含
み、
前記ステップS1は、2日にわたる2時間ごとの水環境監視データの推移を示す時系列データを取得し、箱ひげ図を作成し、データの離散分布を示し、離散データの四分位数と四分位範囲を異常値の判断基準として使用して監視データの異常値を認識することを含み、
前記予測変数は、チェックゲートの水位や流量を含む水環境の実時間監視データを指し、
前記ステップS1中の時系列データを、BPニューラルネットワークモデルへの入力として用いて、前記ステップS3で調練し終わったBPニューラルネットワークモデルに適用すると、出力予測変数値は実時間異常値の補正値になることを特徴とする水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【請求項2】
前記異常値の基準は、データがQ
1―1.5QR未満か、Q
3+1.5QRより大きいという条件を異常データの判断基準とし、ここで、Q
1は第1四分位数であり、Q
3は第3四分位数であり、QRは四分位範囲であり、QR=Q
3―Qという条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【請求項3】
前記ステップS2は、
予測変数の性質と特性に従って、予測変数に影響を与えて反映することができる他の変数を選択し、灰色相関分析を実行するステップS21と、
物理的な意味とデータの次元との異なった変数を比較しやすいように灰色関係分析用に選定された変数を無次元で処理するステップS22と、
某時点における各関連変数と予測変数との差を表し、次の式(1)に簡略化される、各関連変数の灰色相関係数ξを計算するステップS23と、
【数1】
[式(1)中、ξ
0iは相関係数であり、ρは分解能係数であり、一般に0~1に入り、通常値が0.5であり、Δ(min)は2級数の最小差であり、Δ(max)は2級数の最大差であり、Δ
0i(k)は各比較数列上の各点と参照数列曲線上の各点との絶対差である]
関連する各変数の相関度を計算し、各時点の相関係数が、次の式(2)に示された1つの値に集まるステップS24と、
【数2】
[式(2)中、r
iは参照数列に対する比較数列の灰色相関度であり、ξ
iはステップ3で計算された相関係数である]
予測変数に対する各関連変数の相関度を順位付けし、各関連変数と予測変数との相関サイズをするステップS25と、
を具体的に含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【請求項4】
ステップS22の無次元処理は、標準化方法を選択し、選定された変数の元のデータに対して一次変換を実行し、minAとmaxAをそれぞれ変数Aの最小値と最大値として定義し、A中の一つの元の値xを、min-maxで標準化し、区間[0,1]の値x'にマッピングすることにより、x'は元の値xの無次元の結果になることを具体的に含むことを特徴とする請求項
3に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【請求項5】
ステップS3においてBPニューラルネットワークモデルの高相関変数は最大の相関係数である変数であることを特徴とする請求項1
から4の何れか一項に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【請求項6】
ステップS3においては、
高相関変数の過去の監視データをモデルへの入力として用いて、予測変数の過去の監視データをモデルからの出力として用い
、誤差逆伝搬―情報フィードフォワードニューラルネットワークモデルを構築し、構築されたネットワークモデルに対し
て調練
を行うことにより、BPニューラルネットワークモデルを作成し、この調練用のデータは少なくとも相関性の高い変数の1年にわたる2時間
ごとの
推移を示す時系列データを含むことを特徴とする請求項1
から5の何れか一項に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水環境監視の技術分野、特に、水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水利産業にさまざまな監視装置を幅広く適用するに従って、作り上げた地上に設けた用水路工事において水位や流量や速度などの水環境要素を含む全面的な監視システムを形成した。ただし、機器の故障や伝送の中断や人為的妨害や環境の変化などの様々な要因により、監視データに異常値(監視されていない欠落値を含む)が発生する傾向がある。この問題は、監視データの品質の低下に直接つながることに加えて、スケジューリング決定に影響を及ぼす。したがって、異常データを実時間認識し、合理的なデータで補間及び修正することにより、データの信頼性を向上させ、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くために、重要な応用価値と科学的重要性がある。
【0003】
ルールで異常データを診断する方法は、往々にしてより大きな主観的要因を含んで診断基準に一貫性がないという問題がある。従来のラグランジュ補間やニュートン補間などの数値方法は、よりいっそうデータ補間に適し、欠落値(監視されていない欠落値と除外された異常値)の前後のデータに対する高い完全性を要求することにより、監視データの実時間補間に適用する場合に、より大きな制限がある。したがって、異常データに対する迅速かつ効果的な識別と合理的なデータでの実時間補間は、地上に設けた用水路工事の水環境監視において解決の余地がある重要な問題である。
【0004】
したがって、上記の技術的問題を解決するための水位予測及び制御の方法を早急に見つけなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、先行技術における上記の問題を解決するために、水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段は以下のとおりである:
水環境監視データを取得し、箱ひげ図を描き、箱ひげ図に基づいて異常データを実時間認識診断するステップS1と、
予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行するステップS2と、
BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、灰色関係分析法によって比較選択された関連性の高い変数をモデルの入力とし、予測変数をその出力とするステップS3と、
実時間予測のためにBPニューラルネットワークモデルを適用するステップS4と、
を含む水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0007】
好ましくは、前記ステップS1は、2日間続く水環境監視データを2時間の水環境監視データとして選択し、箱ひげ図を作成し、データの離散分布を示し、離散データの四分位数と四分位範囲を異常値の判断基準として使用して監視データの異常値を認識する。
【0008】
好ましくは、前記異常値の基準は、データがQ1―1.5QR未満か、Q3+1.5QRより大きいという条件を異常データの判断基準とし、ここで、Q1は第1四分位数であり、Q3は第3四分位数であり、QRは四分位範囲であり、QR=Q3―Qという条件を満たす。
【0009】
好ましくは、前記ステップS2は、
予測変数の性質と特性に従って、予測変数に影響を与えて反映することができる他の変数を選択し、灰色相関分析を実行するステップS21と、
物理的な意味とデータの次元との異なった変数を比較しやすいように灰色関係分析用に選定された変数を無次元で処理するステップS22と、
某時点における各関連変数と予測変数との差を表し、次の式(1)に簡略化される、各関連変数の灰色相関係数ξを計算するステップS23と、
【数1】
[式(1)中、ξ
0iは相関係数であり、ρは分解能係数であり、一般に0~1に入り、通常値が0.5であり、Δ(min)は2級数の最小差であり、Δ(max)は2級数の最大差であり、Δ
0i (k)は各比較数列上の各点と参照数列曲線上の各点との絶対差である]
関連する各変数の相関度を計算し、各時点の相関係数が、次の式(2)に示された1つの値に集まるステップS24と、
【数2】
[式(2)中、r
iは参照数列に対する比較数列の灰色相関度であり、ξ
iはステップ3で計算された相関係数である]
予測変数に対する各関連変数の相関度を順位付けし、各関連変数と予測変数との相関サイズをするステップS25を具体的に含む。
【0010】
好ましくは、前記予測変数は、チェックゲートの水位や流量を含む水環境の実時間監視データを指す。
【0011】
好ましくは、ステップS22の無次元処理は、標準化方法を選択し、選定された変数の元のデータに対して一次変換を実行し、minAとmaxAをそれぞれ変数Aの最小値と最大値として定義し、A中の一つの元の値xを、min-maxで標準化し、区間[0,1]の値x'にマッピングすることにより、x'は元の値xの無次元の結果になることを具体的に含む。
【0012】
好ましくは、ステップS3においてBPニューラルネットワークモデルの高相関変数は最大の相関係数である変数である。
【0013】
好ましくは、ステップS3においては、
高相関変数の過去の監視データをモデルへの入力として用いて、予測変数の過去の監視データをモデルからの出力として用い、Matlabニューラルネットワークツールボックスを採用して誤差逆伝搬―情報フィードフォワードニューラルネットワークモデルを構築し、構築されたネットワークモデルに対して調練を行うことにより、BPニューラルネットワークモデルを作成し、この調練用のデータは少なくとも相関性の高い変数の1年にわたる2時間のデータを含む。
【0014】
好ましくは、ステップS1中の水環境監視データの2時間の時系列データを、BPニューラルネットワークモデルへの入力として用いて、ステップS3で調練し終わったBPニューラルネットワークモデルに適用すると、出力予測変数値は実時間異常値の補正値になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
【0016】
本発明は、水環境監視データを取得し、箱ひげ図を描き、箱ひげ図に基づいて異常データを実時間認識診断することと、予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行することと、BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、BPニューラルネットワークモデルを水環境監視データの実時間予測に適用し、異常診断とデータ補間を実行することを特徴とする水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法を開示した。この方法を採用すると、水環境監視データの実時間予測と監視を有効的に改善し、異常データを実時間診断補間することができ、従って、データの信頼性を向上させ、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1における水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法の概略フローチャートである。
【
図2】実施例2においてチェックゲートの水位データの異常値を認識診断して得られた箱ひげ図の結果である。
【
図3】実施例2においてBPニューラルネットワークモデルを採用してチェックゲート前の水位を補間した後、チェックゲートの水位データに異常値が生じた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、次に添付の図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。本明細書に記載の具体的な実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されるべきである。
【0019】
実施例1
【0020】
本実施例による水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法は、次のステップを備える。
【0021】
ステップ1:箱ひげ図の分析方法に基づいて、異常データを実時間認識診断する。
【0022】
地上に設けた用水路工事中の監視データの収集頻度は、秒級に至って精確にされるが、地上に設けた用水路工事中の水環境データの実時間変動が秒級の監視データを妨げて、工事のスケジュールを導くのに役立たない。地上に設けた用水路工事中の水理特性、工事の運転期間、労働集約度などの様々な要因の影響を受けて、地上に設けた用水路工事中の水環境監視頻度は、高いほど良いわけではない。2時間の水環境監視データは、実際のスケジューリング作業で安定性が高く、継続性が高く、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くことができるため、2時間の水環境監視データを選択して箱ひげ図を作成し、異常データを実時間認識診断する。
【0023】
データ分布範囲が大きすぎて異常値の実時間認識と診断に影響を与えることを避けるために、箱ひげ図を描くように選定された水環境監視データは、多すぎてはなく、期間が長すぎてはない。この実施例で2日間続く2時間の水環境観測データを選択して、データの離散分布を表す箱ひげ図を描き、四分位数と四分位範囲を異常値の判断基準として使用し、データ中の異常値を視覚的に認識できる。その上に、箱ひげ図の形状は、データの歪度と品質を反映し、歪度は偏差の程度を示し、端部が重いほど、異常値が多くなり、データ品質が低下する。
【0024】
ステップ2:予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行する。
【0025】
予測変数の性質と特性に従って、予測変数に影響を与えて反映することができる他の変数を選択し、灰色相関分析を実行するステップS21と、
物理的な意味とデータの次元との異なった変数を比較しやすいように灰色関係分析用に選定された変数を無次元で処理するステップS22と、
某時点における各関連変数と予測変数との差を表し、次の式(1)に簡略化される、各関連変数の灰色相関係数ξを計算するステップS23と、
【数3】
[式(1)中、ξ
0iは相関係数であり、ρは分解能係数であり、一般に0~1に入り、通常値が0.5であり、Δ(min)は2級数の最小差であり、Δ(max)は2級数の最大差であり、Δ
0i (k)は各比較数列上の各点と参照数列曲線上の各点との絶対差である]
関連する各変数の相関度を計算し、各時点の相関係数が、次の式(2)に示された1つの値に集まるステップS24と、
【数4】
[式(2)中、r
iは参照数列に対する比較数列の灰色相関度であり、ξ
iはステップ3で計算された相関係数である]
予測変数に対する各関連変数の相関度を順位付けし、各関連変数と予測変数との相関サイズをするステップS25と、
ステップ3:BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、灰色関係分析法によって比較選択された関連性の高い変数をモデルの入力とし、予測変数をその出力とする。
【0026】
誤差逆伝搬―情報フィードフォワードニューラルネットワークモデルでBPニューラルネットワークを構築して調練する。2時間の水環境監視データは、地上に設けた用水路工事の実際のスケジューリング作業で安定性が高く、継続性が高く、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くことができる。その上に、用水路工事のスケジュール計画に明らかな年間周期性があるため、調練用のデータを選択する場合、この調練用のデータは少なくとも相関性の高い変数の1年にわたる2時間のデータを含む必要がある。
【0027】
BPネットワークモデルの調練方法は現行技術に属しているため、ここで繰り返さない。
【0028】
ステップ4:実時間予測のためにBPニューラルネットワークモデルを適用する。
【0029】
ステップ1の箱ひげ図法により、用水路工事の水環境監視データの異常値を認識診断する場合、関連変数の2時間の時系列データを入力としてステップ3で調練し終わったBPニューラルネットワークモデルに適用すると、出力予測変数値は実時間異常値の補正値になる。BPネットワークモデルで異常データを実時予測修正することにより、データ品質が向上し、実際の水環境を実時間反映する。
【0030】
実施例2
【0031】
この実施例は、具体的な実例を採用して南水北調水流の中間ルートを例とし、実施例1に記載の方法に従って、地上に設けた用水路工事の水環境監視データに対して実時間異常診断と補間を行う。
【0032】
南水北調の中間ルートは、1432キロメートルの全長、複数年に基づく95億立方メートルの平均水移動量及び97個の分水口を有し、293個の水プラントと接続し、北京、天津、河北及び河南を丹江口貯水地と結ぶ主要な動脈と生命線である。全線は、主に開水路給水に基づき、運転条件が変更可能で、連合調節作業が難しく、スケジューリング目標が多く、誤差許容度が小さい。異常データを実時間認識し、合理的なデータで補間及び修正することにより、データの信頼性を向上させ、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くために、重要な応用価値と科学的重要性がある。
【0033】
地上に設けた用水路工事中の水理特性、工事の運転期間、労働集約度などの様々な要因の影響を受けて、地上に設けた用水路工事中の水環境監視頻度は、ほとんど2時間である。調査対象として選定された観測データは、磁河逆サイフォンチェックゲートのゲート#1前の2時間の水位観測データであり、調査期間は2018年3月1日0:00~2018年7月31日24:00である。2日ごとに選択されたゲート前の水位監視データを箱ひげ図に表し、異常データを実時間認識診断し、模擬結果を
図2に示す。
【0034】
目下チェックゲート前の水位を反映するか、それに影響を与えた他の変数を選定して灰色相関分析を行う。調査対象として選定された関連変数は、上流チェックゲートの流量データ、目下チェックゲート前の水位、目下チェックゲート後の水位、目下チェックゲートのゲート開口度、上流河川区間の分水流量データなどを含む。分析結果を表1を示す。
【0035】
表1目下チェックゲート前の水位に対する灰色相関分析の結果
【表1】
【0036】
分析結果は、目下チェックゲート前後の水位が、予測変数との最も強い相関関係を有し、BPニューラルネットワークモデルを構築するための入力として選択されることを示す。地上に設けた用水路工事中の水環境監視の頻度は、ほとんど2時間であるに加えて、スケジューリング指令が年次周期を備えるため、1年にわたる2時間のチェックゲート前後の水位データを選択してモデルの調練を行い、そして目下チェックゲート前の水位を予測する。模擬結果を
図3に示す。
【0037】
本発明によって開示された上記の技術的解決策を採用することにより、次の有益な効果を達成する。
【0038】
本発明は、水環境監視データを取得し、箱ひげ図を描き、箱ひげ図に基づいて異常データを実時間認識診断することと、予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行することと、BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、BPニューラルネットワークモデルを水環境監視データの実時間予測に適用し、異常診断とデータ補間を実行することを特徴とする水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法を開示した。この方法を採用すると、水環境監視データの実時間予測と監視を有効的に改善し、異常データを実時間診断補間することができ、従って、データの信頼性を向上させ、水環境の変化を客観的に反映し、工事のスケジューリングを有効的に導くことができる。
【0039】
上記内容は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善及び修正ができることを指摘すべきである。これらの改善及び修正が本発明の保護範囲に入るのと見なされるべきである。
【0040】
(付記)
(付記1)
水環境監視データを取得し、箱ひげ図を描き、箱ひげ図に基づいて異常データを実時間認識診断するステップS1と、
予測変数に関連する他の変数に対して灰色相関分析を実行するステップS2と、
BPニューラルネットワークモデルを構築して調練し、灰色関係分析法によって比較選択された関連性の高い変数をモデルの入力とし、予測変数をその出力とするステップS3と、
BPニューラルネットワークモデルを水環境監視データの実時間予測に適用し、異常診断とデータ補間を実行するステップS4と、
を含むことを特徴とする水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0041】
(付記2)
前記ステップS1は、2日間続く水環境監視データを2時間の水環境監視データとして選択し、箱ひげ図を作成し、データの離散分布を示し、離散データの四分位数と四分位範囲を異常値の判断基準として使用して監視データの異常値を認識することを含むことを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0042】
(付記3)
前記異常値の基準は、データがQ1―1.5QR未満か、Q3+1.5QRより大きいという条件を異常データの判断基準とし、ここで、Q1は第1四分位数であり、Q3は第3四分位数であり、QRは四分位範囲であり、QR=Q3―Qという条件を満たすことを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0043】
(付記4)
前記ステップS2は、
予測変数の性質と特性に従って、予測変数に影響を与えて反映することができる他の変数を選択し、灰色相関分析を実行するステップS21と、
物理的な意味とデータの次元との異なった変数を比較しやすいように灰色関係分析用に選定された変数を無次元で処理するステップS22と、
某時点における各関連変数と予測変数との差を表し、次の式(1)に簡略化される、各関連変数の灰色相関係数ξを計算するステップS23と、
【数5】
[式(1)中、ξ
0iは相関係数であり、ρは分解能係数であり、一般に0~1に入り、通常値が0.5であり、Δ(min)は2級数の最小差であり、Δ(max)は2級数の最大差であり、Δ
0i (k)は各比較数列上の各点と参照数列曲線上の各点との絶対差である]
関連する各変数の相関度を計算し、各時点の相関係数が、次の式(2)に示された1つの値に集まるステップS24と、
【数6】
[式(2)中、r
iは参照数列に対する比較数列の灰色相関度であり、ξ
iはステップ3で計算された相関係数である]
予測変数に対する各関連変数の相関度を順位付けし、各関連変数と予測変数との相関サイズをするステップS25と、
を具体的に含むことを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0044】
(付記5)
前記予測変数は、チェックゲートの水位や流量を含む水環境の実時間監視データを指すことを特徴とする付記4に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0045】
(付記6)
ステップS22の無次元処理は、標準化方法を選択し、選定された変数の元のデータに対して一次変換を実行し、minAとmaxAをそれぞれ変数Aの最小値と最大値として定義し、A中の一つの元の値xを、min-maxで標準化し、区間[0,1]の値x'にマッピングすることにより、x'は元の値xの無次元の結果になることを具体的に含むことを特徴とする付記4に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0046】
(付記7)
ステップS3においてBPニューラルネットワークモデルの高相関変数は最大の相関係数である変数であることを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0047】
(付記8)
ステップS3においては、
高相関変数の過去の監視データをモデルへの入力として用いて、予測変数の過去の監視データをモデルからの出力として用い、Matlabニューラルネットワークツールボックスを採用して誤差逆伝搬―情報フィードフォワードニューラルネットワークモデルを構築し、構築されたネットワークモデルに対してを調練行うことにより、BPニューラルネットワークモデルを作成し、この調練用のデータは少なくとも相関性の高い変数の1年にわたる2時間のデータを含むことを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。
【0048】
(付記9)
ステップS1中の水環境監視データの2時間の時系列データを、BPニューラルネットワークモデルへの入力として用いて、ステップS3で調練し終わったBPニューラルネットワークモデルに適用すると、出力予測変数値は実時間異常値の補正値になることを特徴とする付記1に記載の水環境監視データのための実時間異常診断及び補間方法。