(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20230818BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230818BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20230818BHJP
F28F 13/08 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
F28F3/00 301Z
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
F28F13/08
(21)【出願番号】P 2022539330
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037541
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】杷野 満
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504767(JP,A)
【文献】特開2006-261555(JP,A)
【文献】特開2019-46944(JP,A)
【文献】特開2005-229047(JP,A)
【文献】中国実用新案第206192166(CN,U)
【文献】特開平6-2959(JP,A)
【文献】独国特許発明第3739585(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
F28F 3/00
F28F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却対象物と、
前記複数の冷却対象物を冷却するための冷却器と、を備え、
前記冷却器は、
直方体の箱型で、厚さ方向からみて一方向に長く形成されるとともに、冷媒が流通する流路が形成された流路形成部と、
前記流路形成部の厚さ方向両側面に設けられ、前記複数の冷却対象物に接触する接触面と、
前記流路形成部における前記一方向の一端側に配置され、前記流路に前記冷媒を供給する供給部及び前記流路から前記冷媒を排出する排出部と、
前記流路で局所的に前記冷媒の滞留を促すように流路断面積が変化する滞留部と、を備え、
前記流路は、前記流路形成部の厚さ方向からみた前記一方向及び前記一方向に直交する短手方向に沿って蛇行し、かつ前記流路形成部の前記一方向の両端部間を複数回に渡って前記一方向に沿って往復するように、前記一方向に沿い前記短手方向に並んで配置された複数の直線状部と、前記直線状部の前記一方向の両端に連結された複数の湾曲部と、を有し、
前記滞留部は、各前記直線状部に複数設けられており、
各前記直線状部の前記滞留部は、前記流路形成部の厚さ方向からみて千鳥配置状に互い違いに配置されており、
複数の前記滞留部は、前記流路形成部の厚さ方向からみて前記複数の冷却対象物とそれぞれ重なり合うように設けられており、
前記複数の冷却対象物のうち、相対的に発熱量が大きい冷却対象物は、相対的に発熱量が小さい冷却対象物よりも前記一方向で前記供給部及び前記排出部の近くに配置されている
電気機器。
【請求項4】
前記流路は、先ず、前記供給部から前記流路形成部の中央部に向かって設けられ、次に、前記中央部から前記流路形成部の周縁部に向かって設けられ、次に、前記周縁部から前記排出部に向かって設けられる
請求項1に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の液体の冷媒を流通させる流路が内部に形成されたヒートシンクを備える電力変換装置がある。
しかしながら、ヒートシンクの冷却能力を増大させるために、冷媒の流量又は流速を増大させる場合、装置が大型になる又は装置に異常が生じる可能性があった。例えば、流路断面積の拡大によって冷媒の流量を増大させる場合、冷媒を流通させるポンプの容量が増大する可能性があった。例えば、冷媒の流速を増大させる場合、流路の内部に損傷等の異常が発生する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-274959号公報
【文献】特開2019-160849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、大型化や異常の発生を抑制しつつ冷却能力を向上させることができる電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電気機器は、複数の冷却対象物と、冷却器と、を備える。冷却器は、複数の冷却対象物を冷却する。冷却器は、流路形成部と、接触面と、供給部と、排出部と、滞留部とを備える。流路形成部は、直方体の箱型で、厚さ方向からみて一方向に長く形成されるとともに、冷媒が流通する流路が形成される。接触面は、流路形成部の厚さ方向両側面に設けられ、複数の冷却対象物に接触する。供給部は、流路形成部における一方向の一端側に配置され、流路に冷媒を供給する。排出部は、流路形成部における一方向の一端側に配置され、流路から冷媒を排出する。滞留部は流路で局所的に冷媒の滞留を促すように流路断面積が変化する。流路は、流路形成部の厚さ方向からみた長手方向及び短手方向に沿って蛇行し、かつ流路形成部の一方向の両端部間を複数回に渡って一方向に沿って往復するように、複数の直線状部と、複数の湾曲部と、を有する。複数の直線状部は、一方向に沿い短手方向に並んで配置されている。複数の湾曲部は、直線状部の一方向の両端に連結されている。滞留部は、各直線状部に複数設けられている。各直線状部の滞留部は、流路形成部の厚さ方向からみて千鳥配置状に互い違いに配置されている。複数の滞留部は、流路形成部の厚さ方向からみて複数の冷却対象物とそれぞれ重なり合うように設けられている。複数の冷却対象物のうち、相対的に発熱量が大きい冷却対象物は、相対的に発熱量が小さい冷却対象物よりも一方向で供給部及び排出部の近くに配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の冷却器を備える電気機器の構成を示す斜視図。
【
図4】実施形態の冷却器及び比較例の冷却器の各々の温度分布の例を示す図。
【
図6】実施形態の変形例の比較例に係る冷却器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷却器及び電気機器を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の冷却器10を備える電気機器1の構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態の冷却器10の断面図である。
【0008】
以下、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば
図1及び
図2に示すように、Z軸方向は冷却器10の厚さ方向に平行である。Y軸方向は冷却器10の短手方向に平行である。X軸方向は冷却器10の長手方向に平行である。
【0009】
実施形態の電気機器1は、例えば、電気設備等に設けられる盤である。盤は、電力変換装置、電源装置及びモータ駆動装置等を構成する配電盤、分電盤及び制御盤等である。
【0010】
図1に示すように、電気機器1は、例えば、半導体素子、抵抗、導体、ヒューズ、コンデンサ、トランス、開閉器、遮断器及び計測機器等の各種の回路構成要素を備える。各種の回路構成要素のうち、例えば、半導体素子及び抵抗等の発熱源は、冷却器10によって冷却される冷却対象物OBである。
【0011】
実施形態の電気機器1では、例えば、複数の放電抵抗3及び複数のスナバ抵抗5が冷却対象物OBとして冷却器10の厚さ方向の両側に配置されている。電気機器1の動作時等にて、相対的に放電抵抗3の発熱はスナバ抵抗5の発熱よりも小さい。
例えば、冷却器10の厚さ方向の両側の各々にて、複数のスナバ抵抗5は正極側及び負極側の各々でバスバー7に接続されている。各放電抵抗3と、各バスバー7によって接続された複数の放電抵抗3との各々には、適宜のケーブル9が接続されている。
【0012】
例えば、複数の放電抵抗3及び複数のスナバ抵抗5は、X軸方向に沿う2列の各々でX軸方向に並びながら、2列同士ではX軸方向でずれるように配置されている。複数の放電抵抗3及び複数のスナバ抵抗5は、冷却器10の厚さ方向から見て千鳥配置状に互い違いに配置されている。複数の放電抵抗3及び複数のスナバ抵抗5は、互い違いに配置される一対の放電抵抗3又は一対のスナバ抵抗5によって各1つの冷却対象物OBを構成する。
【0013】
冷却器10は、例えば、内部を流通する液体状又は気体状等の冷媒によって冷却対象物を冷却するヒートシンクである。
図1に示すように、冷却器10の外形は、例えば直方体の箱型である。冷却器10は、流路形成部11と、流路形成部11に通じる供給部13及び排出部15と、を備える。
【0014】
図2に示すように、流路形成部11には、冷却器10の内部で冷媒が流通する流路21が形成されている。流路形成部11には、流路21と冷却器10の外部とを通じさせる冷媒供給口23及び冷媒排出口25が形成されている。冷媒供給口23及び冷媒排出口25は、例えば、流路形成部11のX軸方向の両端部のうち一方の端部(
図2における右側の端部、以下、第1端部11aと称する)に形成されている。
【0015】
以下の説明では、流路形成部11における第1端部11aの側を、単に第1端部11a側と称する。流路形成部11のX軸方向の両端部のうち、第1端部11aとは反対の端部(
図2における左側の端部)を第2端部11bと称する。流路形成部11における第2端部11bの側を、単に第2端部11b側と称する。
【0016】
流路21は、例えば、流路形成部11のX軸方向の両端部間を複数回に亘ってX軸方向に沿って往復する。流路21は、流路形成部11のX軸方向の両端部間を蛇行しながら、Y軸方向の中央部から周縁部に向かうように設けられている。流路21は、例えば、複数の直線状部31と、複数の直線状部31の長手方向両端に連結された複数の湾曲部33と、直線状部31の途中に設けられた複数の滞留部35と、を備える。
【0017】
複数の直線状部31は、例えば4個の直線状部31(第1外側直線状部31a、第1内側直線状部31b、第2外側直線状部31c、第2内側直線状部31d)である。複数の直線状部31の各々は、流路形成部11のX軸方向の両端部間をX軸方向に沿って平行に延びるように設けられている。複数の直線状部31は、例えば、Y軸方向に沿って並ぶように設けられている。
【0018】
これら直線状部31のうち、Y軸方向で一方の端部に設けられた第1外側直線状部31aの第1端部11a側に、冷媒排出口25が接続されている。第1外側直線状部31aとY軸方向で並ぶ第1内側直線状部31bの第1端部11a側に、冷媒供給口23が接続されている。
【0019】
複数の湾曲部33は、例えば3個の湾曲部33(第1湾曲部33a、第2湾曲部33b、第3湾曲部33c)である。複数の湾曲部33の各々は、例えば、流路形成部11のX軸方向の両端部のいずれかに配置されている。各湾曲部33は、流路形成部11のX軸方向外側に向かって凸となるようにU字状に形成されている。各湾曲部33の両端が、所定の直線状部31のX軸方向端部に連結されている。
【0020】
例えば、3個の湾曲部33のうちの第1湾曲部33aは、第1外側直線状部31aの第2端部11b側と、Y軸方向で第1外側直線状部31aとは反対側の端部に設けられた第2外側直線状部31cの第2端部11b側と、を連結している。
3個の湾曲部33のうちの第2湾曲部33bは、第1内側直線状部31bの第2端部11b側と、第1内側直線状部31bと第2外側直線状部31cとの間に設けられた第2内側直線状部31dの第2端部11b側と、を連結している。
【0021】
3個の湾曲部33のうちの第3湾曲部33cは、第2外側直線状部31cの第1端部11a側と、第2内側直線状部31dの第1端部11a側と、を連結している。
これにより、流路21は、流路形成部11のX軸方向の両端部間を蛇行しながら、Y軸方向の中央部から周縁部に向かうように設けられる。
【0022】
複数の滞留部35の各々は、例えば、流路21の直線状部31で局所的に冷媒の滞留を促すようにして流路断面積が変化するように設けられている。各滞留部35の流路断面積は、例えば、直線状部31の流路断面積に比べてより大きく形成されている。各滞留部35は、例えば、直線状部31に比べてY軸方向に拡大するように形成されている。
【0023】
各滞留部35での冷媒の滞留時間は、直線状部31での冷媒の滞留時間よりも小さい。滞留時間は、例えば、冷媒が流路21のX軸方向に沿った単位長さ当たりを流通するのに要する時間である。
【0024】
複数の直線状部31のうちY軸方向で隣り合う任意の2つの直線状部31に設けられる複数の滞留部35は、例えばZ軸方向から見て千鳥配置状に互い違いに配置されている。Y軸方向で隣り合う任意の2つの直線状部31にて、いずれかの直線状部31と滞留部35との間の距離は、2つの直線状部31間の距離よりも小さい。
【0025】
複数の滞留部35の各々は、例えば、後述する冷却器10の接触面37の法線方向から見て、電気機器1の冷却対象物OBと重なり合うように設けられている。接触面37の法線方向は、冷却器10の厚さ方向に平行であり、例えばZ軸方向である。
【0026】
このような構成のもと、例えば冷却器10の内部で冷媒供給口23から冷媒排出口25に至る流路21は、先ず、冷媒供給口23から流路形成部11のY軸方向の中央部に向かって設けられる。次に、流路21は、流路形成部11の中央部からY軸方向の周縁部(両端部)に向かって設けられる。次に、流路21は、流路形成部11の周縁部から冷媒排出口25に向かって設けられる。
【0027】
供給部13及び排出部15の各々は、例えば冷媒供給口23及び冷媒排出口25の各々に通じる配管を接続するための接続部等を構成する。
【0028】
図1に示すように、冷却器10は、例えば、厚さ方向の両側に複数の冷却対象物OBが配置される接触面37を備える。複数の冷却対象物OBは、例えば、流路21の直線状部31に沿うように、各接触面37上でX軸方向に一列に並んで配置されている。各接触面37の複数の冷却対象物OBのうち、相対的に発熱量が大きい冷却対象物OBは相対的に発熱量が小さい冷却対象物OBよりもX軸方向で供給部13及び排出部15の近くに配置されている。
【0029】
例えば、相対的に発熱量が小さい一対の放電抵抗3による冷却対象物OBは、相対的に発熱量が小さい一対の放電抵抗3による冷却対象物OBよりも供給部13及び排出部15から離れて配置されている。例えば
図2に示すように、一対の放電抵抗3による冷却対象物OBは、流路形成部11のX軸方向での冷媒供給口23及び冷媒排出口25が設けられる第1端部11aの反対側の第2端部11bに配置されている。
【0030】
図3は、実施形態の比較例に係る冷却器40の断面図である。
図4は、実施形態の冷却器10及び比較例の冷却器40の各々の温度分布の例を示す図である。
比較例の冷却器40の外形状は、実施形態の冷却器10の外形状と同一である。比較例の冷却器40での複数の冷却対象物OBの配置は、実施形態の冷却器10での複数の冷却対象物OBの配置と同一である。
【0031】
図3に示すように、実施形態の比較例に係る冷却器40と上述の実施形態の冷却器10との相違点は、比較例の冷却器40の流路41と実施形態の冷却器10の流路21とが異なる点にある。実施形態の比較例に係る冷却器40と上述の実施形態の冷却器10との相違点は、実施形態の冷却器10の流路21に設けられた滞留部35が、比較例の冷却器40には設けられていない点にある。
【0032】
すなわち、比較例の冷却器40は、冷媒が流通する流路41が形成された流路形成部43を備える。比較例の流路形成部43の外形状は、実施形態の流路形成部11の外形状と同一である。比較例の流路形成部43には、流路41と冷却器40の外部とを通じさせる冷媒供給口45及び冷媒排出口47が形成されている。冷媒供給口45及び冷媒排出口47は、例えば、流路形成部43のX軸方向の両端部のうち一方の端部(
図3における右側の端部、以下、第1端部43aと称する)に形成されている。
【0033】
以下の説明では、流路形成部43における第1端部43aの側を、単に第1端部43a側と称する。流路形成部43のX軸方向の両端部のうち、第1端部43aとは反対の端部(
図3における左側の端部)を第2端部43bと称する。流路形成部43における第2端部43bの側を、単に第2端部43b側と称する。
【0034】
流路41は、例えば、流路形成部43のX軸方向の両端部間を複数回に亘ってX軸方向に沿って往復する。流路41は、流路形成部43のX軸方向の両端部間を蛇行しながら、Y軸方向の一方側(
図3における上側、以下、Y軸方向上側と称する)から反対側(
図3における下側、以下、Y軸方向下側と称する)に向かうように設けられている。流路41は、例えば、複数の直線状部51と、複数の直線状部51の長手方向両端に連結された複数の湾曲部53と、を備える。
【0035】
複数の直線状部51は、例えば4個の直線状部51(第1外側直線状部51a、第1内側直線状部51b、第2外側直線状部51c、第2内側直線状部51d)である。複数の直線状部51の各々は、流路形成部11のX軸方向の両端部間をX軸方向に沿って平行に延びるように設けられている。複数の直線状部31は、例えば、Y軸方向に沿って並ぶように設けられている。
【0036】
これら直線状部51のうち、Y軸方向上側端に設けられた第1外側直線状部51aの第1端部43a側に、冷媒供給口45が接続されている。直線状部51のうち、Y軸方向下側端に設けられた第2外側直線状部51cの第1端部43a側に、冷媒排出口47が接続されている。
【0037】
複数の湾曲部53は、例えば3個の湾曲部53(第1湾曲部53a、第2湾曲部53b、第3湾曲部53c)である。複数の湾曲部53の各々は、例えば、流路形成部43のX軸方向の両端部のいずれかに配置されている。各湾曲部53は、流路形成部43のX軸方向外側に向かって凸となるようにU字状に形成されている。各湾曲部53の両端が、所定の直線状部51のX軸方向端部に連結されている。
【0038】
例えば、3個の湾曲部53のうちの第1湾曲部53aは、第1外側直線状部51aの第2端部43b側と、第1外側直線状部51aと隣り合う第1内側直線状部51bの第2端部43b側と、を連結している。
3個の湾曲部53のうちの第2湾曲部53bは、第2外側直線状部51cの第2端部43b側と、第2外側直線状部51cと隣り合う第2内側直線状部51dの第2端部43b側と、を連結している。
【0039】
3個の湾曲部53のうちの第3湾曲部53cは、第1内側直線状部51bの第1端部43a側と、第2内側直線状部51dの第1端部43a側と、を連結している。
これにより、流路21は、流路41は、流路形成部43のX軸方向の両端部間を蛇行しながら、Y軸方向上側からY軸方向下側に向かうように設けられる。
【0040】
このような構成のもと、冷却器40の内部で冷媒供給口45から冷媒排出口47に至る流路41は、先ず、冷媒供給口45から流路形成部43のY軸方向上側の周縁部(第1周縁部)に向かって設けられる。次に、流路41は、流路形成部43の第1周縁部からY軸方向の中央部に向かって設けられる。次に、流路41は、流路形成部43の中央部からY軸方向下側の周縁部(第2周縁部)に向かって設けられる。次に、流路41は、流路形成部43の第2周縁部から冷媒排出口47に向かって設けられる。
【0041】
図4に示すように、実施形態の冷却器10では、Y軸方向での温度分布が均一化されていることに対して、比較例の冷却器40では、Y軸方向での温度分布が不均一であって、Y軸方向での冷却作用に偏りがあることが認められる。比較例の冷却器40では、冷媒供給口45からの流路長が相対的に短いY軸方向の第1端部側から流路長が相対的に長いY軸方向の第2端部側に向かうことに伴い、温度が増大するように変化している。比較例の冷却器40に比べて、実施形態の冷却器10では、Y軸方向の第1端側及び第2端側での冷媒供給口45からの流路長の差が小さく、温度が同程度になっている。
【0042】
このように、上述の流路21は、局所的に冷媒の滞留を促すように流路断面積が変化する複数の滞留部35を備える。このため、冷却器40の大型化を抑制し、かつ流路内21での冷媒の流速の増大による冷却器40の異常を防止しつつ、冷却器40の冷却能力を向上させることができる。
【0043】
すなわち、冷媒の流通方向で各滞留部35での冷媒の滞留時間は各直線状部31での冷媒の滞留時間よりも長い。これにより、例えば滞留部35を備えない場合に比べて、流路21内での冷媒の滞留時間を延長することができる。このため、冷却器40の大型化や流路内21での冷媒の流速の増大を抑制しつつ、冷却器40の冷却能力を向上させることができる。
【0044】
Y軸方向で隣り合う任意の2つの直線状部31にて、いずれかの直線状部31と滞留部35との間の距離は、2つの直線状部31間の距離よりも小さい。これにより、例えば滞留部35を備えない場合に比べて、隣り合う任意の2つの直線状部31を流れる冷媒間での熱伝達を促し、温度の均一性を向上させることができる。
複数の滞留部35は、流路21に局所的に設けられていることによって、例えば流路21の全体に亘って流路断面積を拡大する場合に比べて、ポンプ容量の増大を抑制することができる。
【0045】
各滞留部35は、接触面37の法線方向から見て冷却対象物OBと重なり合うことによって、冷却対象物OBの冷却を促進することができる。例えば、接触面37の法線方向から見て各滞留部35が冷却対象物OBと重なり合わない場合に比べて、冷媒による冷却対象物OBの冷却を促すことができる。
【0046】
Y軸方向で隣り合う任意の2つの直線状部31に設けられる複数の滞留部35は、Z軸方向から見て千鳥配置状に互い違いに配置されていることによって、冷却器10の全体で均一的な熱の伝達を確保することができる。例えば、Z軸方向から見て複数の滞留部35がY軸方向で並ぶ等のように複数の滞留部35が局所的に近接する場合に比べて、冷却作用に位置による偏りが生じることを抑制することができる。
【0047】
流路21は、冷媒供給口23から冷媒排出口25に至る場合に、流路形成部11のY軸方向の中央部から周縁部に向かうように設けられていることによって、冷却器10のY軸方向での温度分布を均一化することができる。例えば、比較例のように、流路41が流路形成部43のY軸方向の第1端部側から第2端部側に向かうように設けられる場合に比べて、Y軸方向での温度分布が不均一になること及びY軸方向での冷却作用に偏りが生じることを抑制することができる。
【0048】
以下、変形例について説明する。
上述した実施形態では、流路21は、流路形成部11のX軸方向の両端部間を複数回に亘ってX軸方向に沿って往復するとしたが、これに限定されない。
【0049】
図5は、実施形態の変形例に係る冷却器10Aの断面図である。
図5に示すように、変形例の冷却器10Aの流路形成部11Aに形成される流路21Aは、例えば、周方向での所定の2つの部位11c,11d間を複数回に亘って周方向に沿って往復する。変形例の流路21Aは、流路形成部11Aの所定の2つの部位11c,11d間を周方向に沿って蛇行しながら、内周部から外周部に向かうように設けられている。
【0050】
図6は、実施形態の変形例の比較例に係る冷却器40Aの断面図である。
図6に示すように、変形例の比較例に係る冷却器40Aの流路形成部43Aに形成される流路41Aは、例えば、渦巻状に複数回に亘って周方向に沿って周回する。変形例の比較例の流路41Aは、周方向の一方(第1方向)に沿って渦を巻きながら流路形成部43Aの外周部から内周部に向かった後に反転する。そして、周方向の一方の反対方向(第2方向)に沿って渦を巻きながら内周部から外周部に向かうように設けられている。
【0051】
変形例の比較例の冷却器40Aでは、外周部から内周部に向かう往路側の部位と内周部から外周部に向かう復路側の部位とが径方向で隣り合うことによって、冷媒による冷却が冷却対象物OBに効率よく作用しないおそれがある。これに対して、変形例の冷却器10Aでは、相対的に冷却作用が強い内周部から相対的に冷却作用が小さい外周部に向かって徐々に変化する温度分布となり、冷媒による冷却が冷却対象物OBに効率よく作用する。
【0052】
なお、実施形態の変形例に係る冷却器10Aの流路21Aには、実施形態の冷却器10と同様に、局所的に冷媒の滞留を促すようにして流路断面積が変化する滞留部35が設けられてもよい。
【0053】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、流路21は局所的に冷媒の滞留を促すように流路断面積が変化する複数の滞留部35を備えることにより、冷却器40の冷却能力を向上させることができる。この結果、冷却器40の大型化を抑制でき、かつ流路内21での冷媒の流速の増大による冷却器40の異常を防止しできる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…電気機器、3…放電抵抗、5…スナバ抵抗、7…バスバー、9…ケーブル、10,10A…冷却器、11,11A…流路形成部、21,21A…流路、31…直線状部、33…湾曲部、35…滞留部、37…接触面、OB…冷却対象物
【要約】
実施形態の冷却器は、接触面と、流路形成部と、供給部と、排出部と、少なくとも1つの滞留部とを備える。接触面は冷却対象物に接触する。流路形成部には冷媒が流通する流路が形成される。供給部は流路に冷媒を供給する。排出部は流路から冷媒を排出する。滞留部は流路で局所的に冷媒の滞留を促すように流路断面積が変化する。