(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】冷菓
(51)【国際特許分類】
A23G 9/38 20060101AFI20230818BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20230818BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A23G9/38
A23L11/00 F
A23L11/00 Z
A23J3/14
(21)【出願番号】P 2023035734
(22)【出願日】2023-03-08
【審査請求日】2023-03-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和4年3月9日 ウェブサイトのアドレス:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001700.000002360.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:株式会社ランテック、2.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:隅田冷凍工業株式会社川崎事業所、3.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:株式会社青葉冷凍仙台東物流センター、4.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:第一倉庫冷蔵株式会社岩槻長宮一号冷蔵倉庫、5.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:中部冷蔵株式会社、6.出荷日:令和4年3月9日 出荷先:東洋水産株式会社石狩第二冷凍庫
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】一政 洋子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋介
(72)【発明者】
【氏名】横田 善廣
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-503918(JP,A)
【文献】特開2006-136298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0361523(US,A1)
【文献】特表2012-502666(JP,A)
【文献】特開2022-120401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウ豆たんぱくと、
豆乳クリーム及び低脂肪豆乳からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含む、冷菓
であって、
前記エンドウ豆たんぱくの量が、前記冷菓の質量を基準として、0.5~3.0質量%であり、
前記豆乳クリームが、大豆から分離された成分であって、かつ、たんぱく含量が3~8質量%かつ脂質含量が10~15質量%である豆乳クリームであり、
前記低脂肪豆乳が、大豆から分離された成分であって、かつ、脂質含量が0~3質量%である低脂肪豆乳であり、
前記豆乳クリーム及び前記低脂肪豆乳の合計量が、前記冷菓の質量を基準として、5~25質量%である、冷菓。
【請求項2】
前記エンドウ豆たんぱくと、前記豆乳クリームと、前記低脂肪豆乳と、を含む、請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
乳製品を含まない、請求項1又は2に記載の冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、海外の冷菓市場では植物性冷菓の市場が拡大しており、日本でもSDGsの観点から植物素材を使った冷菓の需要が高まっている。消費者の中でも環境意識の高い人は、乳製品を使用した一般的な冷菓から植物性ベースの冷菓に置き換える流れになりつつある。
【0003】
植物性ベースの冷菓に関して、例えば、特許文献1は、バランスのよい豆乳特有の濃厚感及び豆乳本来のうまみやコクを有する濃縮豆乳及び前記濃縮豆乳を含む冷菓の提供を目的として、「炭水化物を2.5重量%以上含有し、かつ重量比で蛋白質1に対し炭水化物0.4以上に設定されてなることを特徴とする濃縮豆乳」及び前記濃縮豆乳を含む冷菓を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
豆乳を使用した冷菓には、豆特有の臭い及び味や、冷菓のボディ感及びコクの不足といった問題がある。そのため、本発明は、前記問題を解決した冷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討した結果、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び/又は低脂肪豆乳とを使用することによって、前記問題を解決できることを見出した。
【0007】
なお、前記特許文献1は、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び/又は低脂肪豆乳とを組み合わせて使用することを開示していない。
【0008】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
エンドウ豆たんぱくと、
豆乳クリーム及び低脂肪豆乳からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含む、冷菓。
[2]
前記エンドウ豆たんぱくと、前記豆乳クリームと、前記低脂肪豆乳と、を含む、[1]に記載の冷菓。
[3]
乳製品を含まない、[1]又は[2]に記載の冷菓。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、豆特有の臭い及び味を抑え、かつ、ボディ感及びコクに優れた冷菓を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
<冷菓>
本発明の一実施形態は、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び低脂肪豆乳からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む、冷菓に関する。
【0012】
本実施形態に係る冷菓は、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び/又は低脂肪豆乳とを含むことによって、豆特有の臭いを抑えることができ、かつ、優れたボディ感及びコクを有する。また、本実施形態に係る冷菓は、エンドウ豆特有の苦い後味を回避することもできる。
【0013】
本明細書における「冷菓」は、アイスクリーム類、氷菓等の冷凍下で保管する菓子であり、プリン等のチルド温度帯で保管する菓子は含まない。
アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク、及びラクトアイスが包含される。本明細書における「アイスクリーム類」、「アイスクリーム」、「アイスミルク」、及び「ラクトアイス」は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(平成30年8月8日厚生労働省令第106号)における定めに従う。
【0014】
具体的には、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)である。
アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であって、乳脂肪分が8.0%以上のものである。
アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であって、乳脂肪分が3.0%以上のもの(アイスクリームを除く。)である。
ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のもの(アイスクリーム及びアイスミルクを除く。)である。
【0015】
氷菓は、乳固形分が3.0%未満のものである。
【0016】
本実施形態に係る冷菓は、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び/又は低脂肪豆乳とを含み、好ましくは、エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリームと、低脂肪豆乳とを含む。これらの成分を組み合わせて使用することにより、豆特有の臭い及び味を抑え、かつ、冷菓のボディ感及びコクを向上させることができる。
【0017】
エンドウ豆たんぱくは、エンドウ豆に含まれるたんぱくであり、エンドウ豆から水のみを用いて分離抽出した粉末状のたんぱくであることが好ましい。エンドウ豆は、黄色エンドウ豆(学名: Pisum sativum)であることが好ましい。
【0018】
豆乳クリームは、大豆から分離された成分であり、たんぱく含量が3~8質量%(好ましくは5~6質量%)かつ脂質含量が10~15質量%(好ましくは12~13質量%)であるものが好ましく、不二製油株式会社によって開発されたUltra Soy Separation(USS)製法によって得られた豆乳クリーム画分のものがより好ましい。
【0019】
低脂肪豆乳は、大豆から分離された成分であり、たんぱく含量が3~8質量%(好ましくは5~6質量%)かつ脂質含量が0~3質量%(好ましくは0~1質量%)であるものが好ましく、USS製法によって得られた低脂肪豆乳画分のものがより好ましい。
【0020】
エンドウ豆たんぱくの量は、豆特有の臭い及び味を更に抑え、かつ、冷菓のボディ感及びコクを更に向上させる観点から、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.1~5.0質量%であり、より好ましくは0.5~3.0質量%であり、更に好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0021】
豆乳クリーム及び/又は低脂肪豆乳の量(合計量)は、豆特有の臭い及び味を更に抑え、かつ、冷菓のボディ感及びコクを更に向上させる観点から、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは5~25質量%であり、更に好ましくは9~15質量%である。
【0022】
本実施形態に係る冷菓は、更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分としては、例えば、油脂(例えば植物油脂)、糖質(糖アルコール等も含む。)、塩、乳化剤、安定剤、香料、着色料、果汁、乳製品、酸味料、pH調整剤、及び水が挙げられる。
【0023】
油脂の量は、特に限定されないが、冷菓の質量を基準として、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは1~18質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。
【0024】
糖質の量は、特に限定されないが、冷菓の質量を基準として、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは10~47質量%であり、更に好ましくは15~45質量%である。
【0025】
本実施形態に係る冷菓は、乳製品を含んでいないことが好ましく、動物性原料を含んでいないことがより好ましい。乳製品を含まない冷菓は、上記の氷菓に分類される。本明細書において「乳製品」とは、動物の乳に由来する製品であり、例えば、牛の乳に由来する製品が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る冷菓は、氷片を含んでいてもよい。本明細書における「氷片」とは、アイスミックスとは別に加えられるものであり、その長さが0.06mm以上のものをいう。氷片は、アイスミックス中の水分がフリージングによって固まって生じる氷の結晶(通常30~55μm)とは区別される。
【0027】
氷片の平均長さは、好ましくは0.06~14mmであり、より好ましくは0.06~1.7mmであり、更に好ましくは0.06~1.0mmである。また、氷片の平均長さは、例えば、0.10~1.7mm、0.15~1.7mm、0.10~1.0mm、又は0.15~1.0mmであってもよい。氷片の平均長さを前記の範囲内とすることにより、滑らかな食感及び冷涼感を与えることができる。
【0028】
本明細書における氷片の「長さ」とは、光学顕微鏡を使用して撮影した、又は肉眼で観察した氷片の外縁における任意の2点を結んだ距離が最大となる2点間の距離を意味する。本明細書における氷片の「平均長さ」とは、ランダムに選択した100個の氷片の長さの平均値である。
【0029】
氷片の量は、冷菓の質量を基準として、例えば、10~80質量%、20~70質量%、又は30~60質量%とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0031】
<冷菓の製造>
下記表1に示す成分を混合し、フリージングして冷菓を製造した。
なお、表1に記載の「エンドウ豆たんぱく」は、黄色エンドウ豆から水のみを用いて分離抽出した粉末状のたんぱくであり、たんぱくの量は約85質量%である。また、表1に記載の「豆乳クリーム」は、USS製法によって得られた豆乳クリーム画分(脂肪になじみやすい成分を多く含む高脂肪画分)のものであり、「低脂肪豆乳」は、USS製法によって得られた低脂肪豆乳画分(水溶性の成分を多く含む低脂肪画分)のものである。
【表1】
【0032】
<冷菓の評価>
実施例及び比較例の冷菓を使用して、「豆臭さ」、「エンドウ豆特有の苦い後味」、「ボディ感」及び「乳使用冷菓と同等のコク」について、訓練を受けた5名の専門パネルが評価した。なお、「ボディ感」とは、冷菓を口の中に入れたときの弾力、溶ける時の粘度、食感、組織のなめらかさなどの総合的な感覚である。各評価の判断基準は以下のとおりであり、各専門パネルの結果を表2に示し、その結果の平均値を表3に示す。
【0033】
[評価基準:豆臭さ]
0点以上1点未満(×):大豆やエンドウ豆の豆臭さが前面に出てきている。
1点以上1.8点未満(△):やや豆臭さを感じ、冷菓としてのおいしさが感じられない。
1.8点以上2.6点未満(〇):豆臭さは若干感じるが、気にならない程度である。
2.6点以上(◎):豆臭さが全くない。
【0034】
[評価基準:エンドウ豆特有の苦い後味]
0点以上1点未満(×):全く感じない。
1点以上1.8点未満(△):やや感じる。
1.8点以上2.6点未満(〇):若干感じるが気にならない程度。
2.6点以上(◎):感じない。
【0035】
[評価基準:ボディ感]
0点以上1点未満(×):ボディ感がなく、水っぽく、厚みがない状態。
1点以上1.8点未満(△):やや粘度はあるが、乳使用の冷菓と比較して薄っぺらく、舌で感じる弾力が弱い。
1.8点以上2.6点未満(〇):乳使用の冷菓と比べて、やや物足りない。
2.6点以上(◎):乳使用の冷菓と同等の弾力と、食感、組織のなめらかさを感じる。
【0036】
[評価基準:乳使用の冷菓と同等のコク]
0点以上1点未満(×):味わいが薄っぺらく、コクがない。
1点以上1.8点未満(△):やや味わいに厚みがあるが、物足りない。
1.8点以上2.6点未満(〇):乳使用の冷菓と比較するとコクがないが、冷菓としては満足できる。
2.6点以上(◎):乳使用の冷菓と比較して同等のコクを感じる。
【0037】
[評価基準:総合評価]
×:合計で5点未満(品質として劣る)
△:合計で5点以上7.5点未満(品質としてやや劣る)
〇:合計で7.5点以上10点未満(品質として適している)
◎:合計で10点以上(品質として優れている)
【0038】
【0039】
【要約】
【課題】豆特有の臭い及び味や、冷菓のボディ感及びコクの不足といった問題を解決した冷菓の提供。
【解決手段】エンドウ豆たんぱくと、豆乳クリーム及び低脂肪豆乳からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む、冷菓。
【選択図】なし