(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】水中構造物の洗堀防止方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20230818BHJP
F03D 13/25 20160101ALN20230818BHJP
【FI】
E02B3/04 301
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2023036464
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】新 正行
(72)【発明者】
【氏名】南本 政司
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171918(JP,A)
【文献】実開昭56-121076(JP,U)
【文献】特開2003-171922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002872(US,A1)
【文献】特開平10-236760(JP,A)
【文献】特開2022-019177(JP,A)
【文献】特開2006-152801(JP,A)
【文献】特開2005-133364(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04-3/14
F03D 13/25
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)吊り装置に複数の袋詰めユニットを係止し、揚重機により前記吊り装置を吊り上げる工程と、
b)前記吊り装置を吊り下ろして、前記袋詰めユニットを水底面に設置する工程と、
c)前記袋詰めユニットを前記吊り装置から取り外す工程と、を有し、
前記袋詰めユニットは、a工程において吊り下げた状態では側面視水滴形状であり、前記b工程において水底面に設置する際に横方向に広がって扁平状となり、
前記a工程において、複数の前記袋詰めユニットは、吊り上げ高さを変えて上下方向に2段に配置し、平面視で隣合う前記袋詰めユニットは異なる段に配置し、かつ、平面視において間に空間を有することを特徴とする、
水中構造物の洗掘防止方法。
【請求項2】
前記袋詰めユニットは、前記吊り装置にフックを介して係止し、前記c工程において、水上からの操作で前記フックを開放して前記袋詰めユニットを前記吊り装置から取り外すことを特徴とする、
請求項1に記載の水中構造物の洗掘防止方法。
【請求項3】
前記a工程において、複数の前記袋詰めユニットは、
異なる段に配置したものも含めて平面視して千鳥状になるように吊ることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の水中構造物の洗掘防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水底に設ける水中構造物の洗掘防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電設備やケーソン、橋脚の基礎等の水底に設ける水中構造物の洗掘防止工として、水中構造物の周囲の水底に袋詰めユニットを並べて敷き詰めることで行われている。
袋詰めユニットは袋体内に中詰材を充填したものであり、水底面に設置すると平面形状が円形に近い形となるため、隣り合う袋詰めユニット同士の間に隙間が発生して水底面の砂が部分的に露出し、洗掘防止対策としての役割を十分に発揮出来なくなる。
このため、特許文献1には吊り上げ、設置時の寸法変化の無い袋詰めユニットを平面視で重なり合うように吊り上げて水底面に敷設することで、袋詰めユニットを噛み合わせて隙間を解消する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水底に洗掘防止工を行う場合、潜水士による水中作業は、作業時間が制約される。また、波や潮流の影響により潜水士が水底の構造物や水底に設置する袋詰めユニットとの接触等の危険がある。
特に、近年採用されている洋上風力発電設備は大型であり、広範囲に洗掘防止工を敷設する必要があるため、潜水士作業を減らして工事の安全性を高めるとともに、工事を効率化することが課題となっている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決し、袋詰めユニットを安全に、効率よく隙間なく敷き詰めることができる、水中構造物の洗掘防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、a)吊り装置に複数の袋詰めユニットを係止し、揚重機により前記吊り装置を吊り上げる工程と、b)前記吊り装置を吊り下ろして、前記袋詰めユニットを水底面に設置する工程と、c)前記袋詰めユニットを前記吊り装置から取り外す工程と、を有し、前記袋詰めユニットは、a工程において吊り下げた状態では側面視水滴形状であり、前記b工程において水底面に設置する際に横方向に広がって扁平状となり、前記a工程において、複数の前記袋詰めユニットは、吊り上げ高さを変えて上下方向に2段に配置し、平面視で隣合う前記袋詰めユニットは異なる段に配置し、かつ、平面視において間に空間を有することを特徴とする、水中構造物の洗掘防止方法を提供する。
前記袋詰めユニットは、前記吊り装置にフックを介して係止し、前記c工程において、水上からの操作で前記フックを開放して前記袋詰めユニットを前記吊り装置から取り外してもよい。
前記a工程において、複数の前記袋詰めユニットは、異なる段に配置したものも含めて平面視して千鳥状になるように吊ってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)袋詰めユニットは外縁が重ならないように吊られているため、水底面に設置する際に水滴型の袋詰めユニットは自由に外側に広がる。
(2)自由に外側に広がることで、袋詰めユニット間の隙間を埋める効果を発揮できる。
(3)吊り装置との距離が異なることで、吊り上げ高さが変わり、水底面への配置順を調整することができる。
(4)地上からの操作で袋詰めユニットを取り外せることで、潜水士による水中作業が不要となり、袋詰めユニットを安全に、効率よく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る水中構造物の洗掘防止方法によって構築した洗掘防止構造の説明図
【
図3】吊り装置に係止した袋詰めユニットを吊り上げた状態の説明図
【
図4】複数の袋詰めユニットを吊った状態を平面視した図
【
図6】袋詰めユニットを吊り下ろした状態の説明図(1)
【
図7】袋詰めユニットを吊り下ろした状態の説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の水中構造物の洗掘防止方法を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
<1>洗掘防止構造
本発明の洗掘防止方法によって構築する洗掘防止構造は、袋詰めユニット1を水中構造物周辺の水底面2に設置し、袋詰めユニット1により水底面2を抑え込むことで、水底面2の土砂が波浪や水流によって洗い流されるのを防止する(
図1)。
【0011】
<2>袋詰めユニット
袋詰めユニット1は、土木工事用の袋体11の内部に中詰材12を充填したものである(
図2)。
【0012】
<2.1>袋体
袋体11は、例えばポリエステル等の合成繊維糸を一重又は二重に編成したラッセル網地からなる。
袋体11の網目は、中詰材12が抜け出ない寸法に設定する。
【0013】
<2.2>中詰材
中詰材12は、袋体11内に充填する材料である。
中詰材12は、例えば玉石、割栗石、砕石等の自然骨材、コンクリートガラ等を使用する。
【0014】
<2.3>袋詰めユニットの吊り上げ
袋詰めユニット1は、吊り上げるための吊りロープ13を有している。
そして、吊りロープ13を上方に吊り上げることにより、吊りロープ13が引っ張られ、袋体11の上方が吊り上げられて、袋体11内部上方の中詰材12は袋詰めユニット1の中心方向に引き寄せられて、袋体11は内側に引き絞られる。一方、袋体11内部下方の中詰材12は上方からの重量が作用するため、中心方向に引き寄せられる量が小さくなり、底部が半球状に下方に膨らむ。このため、袋詰めユニット1は吊り上げると水滴型となる(
図2(a))。
【0015】
<2.4>袋詰めユニットの水底面への配置
袋詰めユニット1を水底面2に吊り下ろすと、中詰材12の重量によって袋体11が外側に広がって扁平状に変形し、饅頭形となる(
図2(b))。
【0016】
<3>吊り装置
本発明の洗掘防止方法は、袋詰めユニット1を吊り装置3を用いて吊り下げて行う(
図3)。
吊り装置3は、鋼製の枠体からなる本体31と、本体31に吊り下げたフック32と、からなる。フック32には袋詰めユニット1の吊りロープ13を係止して吊り上げるが、吊りロープ13を引き上げて袋詰めユニット1を吊り上げることができる構成であれば、フック32に限定されない。
また、本実施例のフック32はフック開放ロープ33を有し、フック開放ロープ33を引き上げることでフック32から袋詰めユニット1の吊りロープ13を取り外すことができる構成とする。この構成は従来から用いられているものであり、フック開放ロープ33に限らず、離れた場所から袋詰めユニット1の吊りロープ13をフック32から取り外せる形態であれは適宜用いることができる。
吊り装置3は揚重機(図示せず)により吊り上げる。
【0017】
<4>洗掘防止方法
<4.1>袋詰めユニット1の吊り上げ
袋詰めユニット1の吊りロープ13を、吊り装置3のフック32に係止し、揚重機により吊り装置3を吊り上げることで袋詰めユニット1を吊り上げる。
袋詰めユニット1a、1bは、吊り装置3に対して複数個を吊り上げるが、本実施例では、平面視して千鳥状になるように、かつ平面視で水滴型の袋詰めユニット1の最大径の外縁が重ならないように吊る(
図4)。その他、平面視して格子状になるように吊ることもできる。
千鳥状に吊る際には、平面視で正方形状や六角形状等の多角形状に配置した袋詰めユニット1aと、その中央に配置する袋詰めユニット1bは吊り上げ高さ(吊り装置3との距離)を変えて、中央の袋詰めユニット1bが高く(吊り装置3との距離が短く)なるように吊る(
図5)。
【0018】
<4.2>吊り下ろし
揚重機で吊り装置3を吊り下ろしていくと、低い方の袋詰めユニット1aが先に水底面2に吊り下ろされ、中詰材12の重量によって袋体11が外側に広がって扁平状に変形し、饅頭形となる(
図6)が、平面視で多角形状の中央となる、袋詰めユニット1bの下には隙間ができる。
そして、さらに吊り装置3を吊り下ろしていくと、袋詰めユニット1bがその隙間に収まり、かつ、袋体11が外側に広がって変形する(
図7)。袋体11により袋詰めユニット1a間の隙間を埋めるためには、吊り上げ時には水滴型であり、吊り下ろすと外側に広がって扁平状に変形する袋詰めユニット1bが好適である。
吊り上げ時に袋詰めユニットの外縁が重なっている場合には、設置時に隣の袋詰めユニットと接触して広がらずに重なった状態となるが、本実施例の袋詰めユニット1a、1bは外縁が重ならないように吊られているため、隣合う袋詰めユニット1a、1bの間にスペースを有することで、水滴型の袋詰めユニット1bは自由に外側に広がり、隙間を埋める効果を発揮できる。
【0019】
<4.3>袋詰めユニットの取り外し
袋詰めユニット1bを隙間に配置した後、吊り装置3から袋詰めユニット1の吊りロープ13を取り外す。本実施例においては、フック32のフック開放ロープ33を地上から引き上げることで、フック32から袋詰めユニット1の吊りロープ13を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 袋詰めユニット、11 袋体、12 中詰材、13 吊りロープ
2 水底面
3 吊り装置、31 本体、32 フック、33 フック開放ロープ
【要約】
【課題】袋詰めユニットを安全に、効率よく隙間なく敷き詰めることができる、水中構造物の洗掘防止方法を提供すること。
【解決手段】a)吊り装置に複数の袋詰めユニットを係止し、揚重機により前記吊り装置を吊り上げる工程と、b)前記吊り装置を吊り下ろして、前記袋詰めユニットを水底面に設置する工程と、c)前記袋詰めユニットを前記吊り装置から取り外す工程と、を有し、前記袋詰めユニットは、a工程において吊り下げた状態では側面視水滴形状であり、前記b工程において水底面に設置する際に横方向に広がって扁平状となり、前記a工程において、複数の前記袋詰めユニットは、平面視において互いに重ならないように配置することを特徴とする、水中構造物の洗掘防止方法。
【選択図】
図3