IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -手すり装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】手すり装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20230821BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
A61G5/12
A61G5/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017232195
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019097900
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 幸司
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】中村 則夫
【審判官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223247(JP,A)
【文献】登録実用新案第3043385(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H3/00,A47C7/40,A47K17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座上に立設固定された左右一対の縦材と該縦材の上端を接続する横材とを備えた略逆U形の形体で且つ上記縦材の中段部には連結材が横設されたフレーム体の上記連結材に、又は該連結材と上記横材の双方にクッション体を備えるとともに、
該クッション体は、下面側が略樋状に開口した木製あるいは樹脂製の基材と、該基材の表面を覆うように取り付けられ、且つその表面がレザー張りされたウレタン材で構成され、上記フレーム体の上記連結材又は上記横材に対して、上記基材の開口側から該連結材又は横材を埋没させるように鞍座状態で取り付けられたことを特徴とする手すり装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主として、立ち姿勢を保持するための手すり装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被介助者に対する介助現場においては、例えば、入浴時とか用便時に被介助者を椅子とか便座に座らせたまま衣服の脱ぎ着せを行うと、椅子とか便座との干渉によって衣服の脱ぎ着せがしにくく、また衣服の脱ぎ着せ後に椅子とか便座からの立ち上がり時に被介助者の膝とか腰に過度の負担が掛かかるとともに、介助者にも負担を強いることになる。
【0003】
また、外出時とか帰宅時における靴の脱ぎ履きなどは短時間の作業であるものの、例えば、被介助者が玄関の上り框に座り込んで靴の脱ぎ履きを行うと、脱ぎ履き後の立ち上がり時に被介助者の膝とか腰に過度の負担が掛かかるとともに、介助者にも負担を強いることになる。このような事情から、被介助者及び介助者に対する過度の負担を回避すべく、被介助者を立たせた状態のままで衣服の脱ぎ着せとか、靴の脱ぎ履きをさせることが多くある。
【0004】
このような介助作業を、被介助者及び介助者に過度の負担を強いることなく、安全且つ的確に行うためには、被介助者の立ち姿勢を保持できる手段が必要であるが、現時点では係る用途専用の手すり装置は提案されておらず、実際の介助現場では、周辺の壁面とか該壁面に設置された歩行用手すり等を代用し、被介助者は壁面に手をついたり、手摺を把持したりすることで立ち姿勢を保持するのが一般的である。また、介助現場の周辺に立ち姿勢の保持に利用できる壁面等が無い場合には、例えば、特許文献1、2に示されるような載置式の起上り支援用の手すりを設置してこれを立ち姿勢保持に代用するとか、特許文献3に示すような載置式の立ち姿勢凭れ装置を設置して利用するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第31374976号公報
【文献】特開2012-223247号公報
【文献】特開2010-46239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載されるような載置式の起上り支援用の手すりを立ち姿勢保持に代用する場合には、該手すりが起上り支援用であることから高さが低く、立ち姿勢にある被介助者は腰の高さ近くにある手すりを把持して立ち姿勢を保持しなければならず、またこの手摺に上体部分を凭れ掛けることができないことから、立ち姿勢の保持効果は低いものである。
【0007】
また、特許文献3に記載される立ち姿勢凭れ装置は、立ち姿勢にある人の腰部近くの高さにクッション部を設け、このクッション部に人が背面側から腰部を凭れ掛けることで立ち姿勢を保持する構成であることから、これを介助現場において立ち姿勢の保持に使用する場合、腰部は支持されるが、上体部分は何ら支持されず、また上記クッション部分が揺動可能な構成であってこれを手すりとして使用することが困難であること等から、立ち姿勢の保持に際しての被介助者及び介助者の体力的な負担が大きく、体力的に劣る被介助者の立ち姿勢の保持手段として好適とは言えない。
【0008】
そこで本願発明は、体力的に劣る被介助者に過度の負担を強いることなく、安全且つ的確に立ち姿勢を保持できる手すり装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る手すり装置では、台座上に立設固定された左右一対の縦材と該縦材の上端を接続する横材とを備えた略逆U形の形体で且つ上記縦材の中段部には連結材が横設されたフレーム体の上記連結材に、又は該連結材と上記横材の双方にクッション体を備えるとともに、該クッション体は、下面側が略樋状に開口した木製あるいは樹脂製の基材と、該基材の表面を覆うように取り付けられ、且つその表面がレザー張りされたウレタン材で構成され、上記フレーム体の上記連結材又は上記横材に対して、上記基材の開口側から該連結材又は横材を埋没させるように鞍座状態で取り付けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る手すり装置では、台座上に立設固定された左右一対の縦材と該縦材の上端を接続する横材とを備えた略逆U形の形体で且つ上記縦材の中段部には連結材が横設されたフレーム体の上記連結材に、又は該連結材と上記横材の双方にクッション体を備えたので、被介助者が上記手すり装置に向かって(即ち、前向きで)立ち姿勢をとる場合には、図6に例示するように、該被介助者(M)はその太腿部(Mc)の部分を上記連結材(5)に設けたクッション体(7)に凭れさせるとともに、両手を上記横材(4b)に設けたクッション体(6)に預けることで、体力的な負担を殆ど感じることなく、安全且つ的確に立ち姿勢を保持することができる。
【0011】
また、被介助者が上記手すり装置に背を向けて(即ち、後ろ向きで)立ち姿勢をとる場合には、図5に例示するように、該被介助者(M)はその臀部近傍を上記連結材(5)に設けたクッション体(7)に凭れさせるとともに、背中(Mb)部分を上記横材(4b)に設けたクッション体(6)に預けることで、体力的な負担を殆ど感じることなく、安全且つ的確に立ち姿勢を保持することができ、また介助者の負担も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願発明の実施形態に係る手すり装置の斜視図である。
図2】上記手すり装置の正面図である。
図3】上記手すり装置の側面図である。
図4図2のA-A拡大断面図である。
図5】上記手すり装置の第1の使用状態説明図である。
図6】上記手すり装置の第2の使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図3には、本願発明の実施形態に係る手すり装置1を示している。この手すり装置1は、例えば、足腰が弱くて立ち姿勢を保持することが困難な被介助者の立ち姿勢を支援するものであって、床面上に載置される台座2に、左右一対の縦材4aと該縦材4aの上端同士を接続する横材4bを備えた略逆U形の金属パイプ製のフレーム体4を、左右一対の支柱3を介して高さ調整可能に取り付けている。
【0014】
また、上記フレーム体4の上端部に位置する上記横材4bには上側クッション体6を、また上記フレーム体4の中段部に横設された連結材5には下側クッション体7を、それぞれ設けている。この場合、この実施形態では、上記フレーム体4の左右一対の縦材4aの上端寄り位置を後方側へ所定角度に折曲させる一方、上記フレーム体4連結材5の中段部に設けられた上記連結材5を左右一対の上記縦材4aよりも前方側へ延出させることで、上記上側クッション体6を下側クッション体7よりも後方側へオフセットさせている。
【0015】
さらに、上記上側クッション体6と上記下側クッション体7の高さ位置及びこれら両者の間隔は、以下のように設定されている。即ち、上記下側クッション体7の高さ位置は、上記フレーム体4の上記支柱3に対する固定位置を調整することで増減調整できるが、例えば、この支柱3側での調整量を全調整幅の中間に設定した状態において、上記台座2上に立った人の腰部から臀部にかけての部位が上記下側クッション体7に対応するように設定される。
【0016】
また、上記上側クッション体6と上記下側クッション体7の間隔は一定間隔に固定されているが、立ち姿勢にある人の大腿部近傍とか臀部近傍上記下側クッション体7に対応した状態において、上記上側クッション体6が背中部分に対応するように設定されている。
【0017】
また、上記フレーム体4の上記上側クッション体6と上記下側クッション体7の中間の高さ位置には、該フレーム体4から略水平方向前方へ延出する使用時姿勢と略鉛直に起立する収納時姿勢の間で姿勢変更可能とされた左右一対の肘掛9が設けられている。
【0018】
上記上側クッション体6と上記下側クッション体7は同様の構造をもつものであり、これを図4に示す下側クッション体7について説明する。この下側クッション体7は、上記連結材5にその上側から鞍座状態で取り付けられた木製あるいは樹脂製の基材11と、該基材11の表面を覆うように取り付けられた所定厚さのウレタン材12で構成される。なお、上記ウレタン材12の表面はレザー張りとし、触感と耐久性を確保している。
【0019】
続いて、上記手すり装置1の使用状態を、図5及び図6を参照して説明する。
「前向きでの立ち姿勢の保持」
この場合には、図6に示すように、被介助者Mはその太腿部Mcの部分を上記下側クッション体7に凭れさせるとともに、両手を上記上側クッション体6に預けることで、体力的な負担を殆ど感じることなく、安全且つ的確に立ち姿勢を保持することができ、立ち姿勢の保持に係る被介助者Mの体力的な負担が軽減され、延いては介助者の負担も軽減される。
【0020】
さらにこの場合、上記フレーム体4の上記中段部の上記連結材5に設けた上記下側クッション体7に対して上記フレーム体4の上記横材4bに設けた上側クッション体6を、該フレーム体4の後方側へオフセットさせているので、被介助者Mは、その大腿部Mc付近を上記下側クッション体7に支持させるとともに、その両手を上記上側クッション体6に預けることで、全体として、直立姿勢よりも若干前屈みの安楽な姿勢で立ち姿勢を保持することができる。
【0021】
「後向きでの立ち姿勢の保持」
この場合には、図5に示すように、被介助者Mはその臀部Ma近傍を上記下側クッション体7に凭れさせるとともに、背中Mb部分を上記上側クッション体6に預けることで、体力的な負担を殆ど感じることなく、安全且つ的確に立ち姿勢を保持することができ、立ち姿勢の保持に係る被介助者Mの体力的な負担が軽減され、延いては介助者の負担も軽減される。
【0022】
さらにこの場合、上記フレーム体4の上記連結材5に設けた上記下側クッション体7に対して上記フレーム体4の上記横材4bに設けた上側クッション体6を、該フレーム体4の後方側へオフセットさせているので、被介助者Mは、その臀部Ma付近を上記下側クッション体7に凭れ掛からせるとともに背中Mb部分を上記上側クッション体6に凭れ掛からせることで、直立姿勢よりも若干後傾した安全な姿勢で立ち姿勢を保持することができ、立ち姿勢の保持に係る被介助者Mの体力的な負担が軽減され、延いては介助者の負担も軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明に係る手すり装置は、主として足腰の弱った被介助者を支援する介護分野において利用されるものである。
【符号の説明】
【0024】
1・・手すり装置
2・・台座
3・・支柱
4・・フレーム体
5・・連結材
6・・上側クッション体
7・・下側クッション体
8・・延設体
9・・肘掛
11・・基材
12・・ウレタン材
13・・肘掛フレーム
14・・肘掛板
図1
図2
図3
図4
図5
図6