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特許7333904ゴムブーツ、ゴムブーツの取付構造、及び産業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ゴムブーツ、ゴムブーツの取付構造、及び産業車両
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20230821BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20230821BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20230821BHJP
   B66F 9/08 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F15B15/14 335C
F16J3/04 B
F16J3/04 C
B66F9/22 Z
B66F9/08 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019067899
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165514
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】591085547
【氏名又は名称】ゴムノイナキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】篠田 政範
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲矢
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-226742(JP,A)
【文献】特開2017-053446(JP,A)
【文献】特開2006-242245(JP,A)
【文献】特開2010-196783(JP,A)
【文献】特開平09-132152(JP,A)
【文献】特開平07-055003(JP,A)
【文献】特開2006-161980(JP,A)
【文献】国際公開第2010/028670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F16J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツであって、
ベローズと、
前記ベローズに対して前記ベローズの軸線方向に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、
前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え
前記リブにおける前記締付部の軸線方向の寸法は、前記リブにおける前記締付部の周方向の寸法よりも長いゴムブーツ。
【請求項2】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツであって、
ベローズと、
前記ベローズに対して前記ベローズの軸線方向に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、
前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え
前記締付部には、前記締付部の軸線方向に延びるスリットが設けられているゴムブーツ。
【請求項3】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツであって、
ベローズと、
前記ベローズに対して前記ベローズの軸線方向に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、
前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え
前記リブは、前記締付部の周方向に間隔を空けて3つ以上設けられているゴムブーツ。
【請求項4】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツの取付構造であって、
前記ゴムブーツは、
前記ロッドの外周を覆うベローズと、
前記ロッドの軸線方向の端部のうち前記シリンダチューブから突出している端部を突出端とすると、前記ベローズに対して前記ロッドの軸線方向の前記突出端側に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、
前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え、
前記リブにおける前記締付部の軸線方向の寸法は、前記リブにおける前記締付部の周方向の寸法よりも長く、
前記締付部は、前記締付部材によって前記ロッドに取り付けられ、前記リブは前記ロッドに形成されたネジ溝に入り込んでいるゴムブーツの取付構造。
【請求項5】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータと、
前記アクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツと、を備えた産業車両であって、
前記ゴムブーツは、
前記ロッドの外周を覆うベローズと、
前記ロッドの軸線方向の端部のうち前記シリンダチューブから突出している端部を突出端とすると、前記ベローズに対して前記ロッドの軸線方向の前記突出端側に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、
前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え、
前記リブにおける前記締付部の軸線方向の寸法は、前記リブにおける前記締付部の周方向の寸法よりも長く、
前記締付部は、前記締付部材によって前記ロッドに取り付けられ、前記リブは前記ロッドに形成されたネジ溝に入り込んでいる産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムブーツ、ゴムブーツの取付構造、及び産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、シリンダチューブと、シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータには、ロッドを保護するためのゴムブーツが取り付けられる場合がある。ゴムブーツは、ロッドの外周を覆うことで異物がロッドに接触することを抑制する。ゴムブーツは、軸線方向の両端部のうちの一方には、シリンダチューブに取り付けられるシリンダ取付部を備え、他方には、締付部材によってロッドに取り付けられる締付部を備える。締付部材としては、締付部に締め付け力を付与する結束バンドが用いられている。締付部材によって、締付部からロッドに締め付け力が加わり、締付部の位置ずれが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-226742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
締付部材を締付部に取り付ける際に、締付部材から締付部に加わる締付力にはばらつきが生じる。締付部材から締付部に加わる締め付け力によっては、締め付け力の不足を原因として、ロッドの移動などにより締付部がゴムブーツの軸線方向に位置ずれする場合がある。
【0005】
本発明の目的は、ゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制できるゴムブーツ、ゴムブーツの取付構造、及び産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するゴムブーツは、シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツであって、ベローズと、前記ベローズに対して前記ベローズの軸線方向に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる締付部と、前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備える。
【0007】
アクチュエータにゴムブーツを取り付ける際には、締付部材によって締付部に締め付け力が加えられる。リブを設けることで、締付部に加わる締め付け力は、リブに集中して加わり、締付部からロッドへの締め付け力が大きくなる。これにより、ゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制できる。
【0008】
上記ゴムブーツにおいて、前記リブにおける前記締付部の軸線方向の寸法は、前記リブにおける前記締付部の周方向の寸法よりも長くてもよい。
アクチュエータにゴムブーツを取り付ける際に、締付部に締め付け力を加えると、締付部は弾性変形する。リブにおける締付部の軸線方向の寸法がリブにおける締付部の周方向の寸法よりも長いことで、ゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制するのに効果的に、弾性変形をさせることができる。
【0009】
上記ゴムブーツについて、前記締付部には、前記締付部の軸線方向に延びるスリットが設けられていてもよい。
アクチュエータにゴムブーツを取り付ける際に、締付部に締め付け力を加えると、締付部は弾性変形する。この際、スリットは弾性変形を許容する空間として機能する。締付部にスリットを設けない場合に比べて、締付部に皺が生じにくい。このため、締付部からロッドへの締め付け力を大きくすることができる。
【0010】
上記ゴムブーツについて、前記リブは、前記締付部の周方向に間隔を空けて3つ以上設けられていてもよい。
上記課題を解決するゴムブーツの取付構造は、シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツの取付構造であって、前記ゴムブーツは、前記ロッドの外周を覆うベローズと、前記ロッドの軸線方向の端部のうち前記シリンダチューブから突出している端部を突出端とすると、前記ベローズに対して前記ロッドの軸線方向の前記突出端側に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え、前記締付部は、前記締付部材によって前記ロッドに取り付けられ、前記リブは前記ロッドに形成されたネジ溝に入り込んでいる。
【0011】
リブを設けることで、締付部材から締付部に加わる締め付け力は、リブに集中してネジ溝に向けて加わり、締付部からロッドへの締め付け力が大きくなる。これにより、リブはネジ溝に入り込むため、ゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制できる。
【0012】
上記課題を解決する産業車両は、シリンダチューブと、前記シリンダチューブから突出したロッドと、を備えるアクチュエータと、前記アクチュエータに取り付けられる筒状のゴムブーツと、を備えた産業車両であって、前記ゴムブーツは、前記ロッドの外周を覆うベローズと、前記ロッドの軸線方向の端部のうち前記シリンダチューブから突出している端部を突出端とすると、前記ベローズに対して前記ロッドの軸線方向の前記突出端側に設けられており、締付部材からの締め付け力が加えられる筒状の締付部と、前記締付部の内周面に設けられたリブと、を備え、前記締付部は、前記締付部材によって前記ロッドに取り付けられ、前記リブは前記ロッドに形成されたネジ溝に入り込んでいる。
【0013】
締付部材から締付部に加わる締め付け力は、リブに集中してネジ溝に向けて加わることで、リブはネジ溝に入り込む。そのため、産業車両に搭載されるアクチュエータに取り付けられたゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴムブーツの軸線方向への締付部の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フォークリフトの側面図。
図2】ティルトシリンダとマストとの取付態様を説明するための分解斜視図。
図3】ゴムブーツが取り付けられたティルトシリンダの概略断面図。
図4】ティルトシリンダに取り付けられていない状態のゴムブーツの締付部を示す断面図。
図5】ティルトシリンダに取り付けられていない状態のゴムブーツをフランジ部側から見た図。
図6】ロッドに取り付けられた締付部及びリブを示す断面図。
図7】締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示す図。
図8】締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ゴムブーツ、ゴムブーツの取付構造、及び産業車両の一実施形態について説明する。
図1に示すように、産業車両としてのフォークリフト10は、車体11と、荷役装置12と、を備える。荷役装置12は、マスト13と、ティルトシリンダ21と、リフトシリンダ14と、を備える。マスト13は、車体11に対して前後に傾動可能に支持されたアウタマスト15と、アウタマスト15に対して昇降可能なインナマスト16と、を備える。ティルトシリンダ21は、アウタマスト15に取り付けられている。リフトシリンダ14は、インナマスト16に取り付けられている。ティルトシリンダ21及びリフトシリンダ14は、油圧シリンダである。ティルトシリンダ21は、車幅方向に間隔を空けて一対配置されている。
【0017】
図2に示すように、アウタマスト15は、ティルトシリンダ21を取り付けるための固定部17を備える。固定部17は、円形の回動孔18を区画する区画部19を備える。回動孔18は、車幅方向に延びている。
【0018】
図3に示すように、ティルトシリンダ21は、筒状のシリンダチューブ22と、ヘッドカバー23と、ロッド24と、を備える。ヘッドカバー23は、シリンダチューブ22の両端のうちの一方に設けられている。
【0019】
ロッド24は、シリンダチューブ22に収容されている。ロッド24の一部は、ヘッドカバー23からシリンダチューブ22外に突出している。ロッド24は、シリンダチューブ22に収容されたピストンの移動とともに軸線方向に移動する。言い換えれば、ピストンの移動によりシリンダチューブ22からのロッド24の突出長が変化する。ロッド24の両端部のうちシリンダチューブ22外に位置する端部を突出端25とすると、突出端25の外周にはネジ溝26が形成されている。ネジ溝26は、ロッド24の周方向に対して斜めに延びる螺旋状の溝である。突出端25には雄ネジ部が設けられているといえる。
【0020】
図2及び図3に示すように、荷役装置12は、ロッド24をアウタマスト15の固定部17に取り付けるためのジョイント31と、締結ボルト51と、ナット52と、取付部材42と、を備える。ジョイント31は、ロッド24が挿入される挿入部32と、挿入部32と一体の2つのマスト取付部33と、を備える。挿入部32は、ロッド24が挿入される円形状の挿入孔34を区画する挿入孔区画部35を備える。図示は省略するが、挿入孔区画部35の一部には、ネジ溝が設けられている。挿入孔区画部35には、雌ネジ部が設けられているといえる。これにより、突出端25を挿入部32に締結することが可能である。突出端25のネジ溝26及び挿入孔区画部35のネジ溝は、ロッド24の軸線方向に対するジョイント31の位置調整のために設けられている。ジョイント31の位置を調整することで、一対のティルトシリンダ21におけるストローク長の差を吸収することができる。
【0021】
挿入部32には、挿入孔34の軸線方向に延びる調整スリット36が設けられている。挿入部32は、調整スリット36を挟んだ両側に、互いに向かい合うボルト挿入部37を備える。2つのマスト取付部33のそれぞれは、互いに向かい合っている。各マスト取付部33は、円形の回動孔38を区画する第1区画部39と、締結孔40を区画する第2区画部41と、を備える。取付部材42は、取付板43と、取付板43から突出する円柱状の軸部44と、を備える。
【0022】
挿入部32の挿入孔34にはロッド24の突出端25が挿入されている。ボルト挿入部37を挿通した締結ボルト51にナット52が締結されることで、ジョイント31はロッド24に取り付けられている。ジョイント31がロッド24に取り付けられた状態で、ネジ溝26の一部は挿入部32よりもシリンダチューブ22側に位置する。即ち、ネジ溝26の一部はジョイント31に覆われることなく、挿入部32よりもシリンダチューブ22側でジョイント31から露出している。マスト取付部33同士の間には、マスト13の固定部17が配置される。回動孔18,38に取付部材42の軸部44が挿入されることでジョイント31はマスト13に取り付けられている。取付部材42は、取付板43を挿通した取付ボルト53が第2区画部41に締結されることでジョイント31に取り付けられている。なお、取付ボルト53は締結孔40を挿通してナットに締結されていてもよい。また、締結孔40はジョイント31に代えて固定部17に設けられていてもよい。
【0023】
図3に示すように、荷役装置12は、ゴムブーツ61と、締付部材71と、を備える。ゴムブーツ61は、ティルトシリンダ21のロッド24を覆うことで、ロッド24を保護する。本実施形態では、ゴムブーツ61が取り付けられるアクチュエータは、ティルトシリンダ21である。まず、ティルトシリンダ21に取り付けられていない状態でのゴムブーツ61について説明する。ゴムブーツ61は、天然ゴムや、合成ゴムなどのゴム製である。
【0024】
図3及び図4に示すように、ゴムブーツ61は、全体として円筒状である筒状の部材である。ゴムブーツ61は、シリンダ取付部62と、ベローズ63と、締付部64と、フランジ部65と、を備える。ベローズ63を挟んでゴムブーツ61の軸線方向の両側にシリンダ取付部62と締付部64とが設けられている。フランジ部65は、締付部64の両端のうちベローズ63側の端部とは反対側の端部に設けられている。締付部64の内径は、ロッド24の外径よりも大きい。シリンダ取付部62は、ティルトシリンダ21にゴムブーツ61を取り付ける際にヘッドカバー23に取り付けられる部分である。締付部64は、ティルトシリンダ21にゴムブーツ61を取り付ける際に、締付部材71からの締め付け力が加えられる部分である。
【0025】
図4及び図5に示すように、ゴムブーツ61は、リブ66を備える。リブ66は、ゴムブーツ61の締付部64に設けられている。リブ66は、締付部64の内周面から突出している。リブ66は、締付部64の軸線方向に直線状に延びている。リブ66における締付部64の軸線方向の寸法Laは、リブ66における締付部64の周方向の寸法Lcに比べて長い。リブ66の長手方向は、締付部64の軸線方向と同一方向といえる。本実施形態において、リブ66は4つ設けられている。リブ66は、等間隔置きに締付部64の周方向に並んで配置されている。ここで、円筒状(筒状)とは、途切れのない完全な筒となっていなくてもよく、ゴムブーツ61としての機能(例えば、異物や水等の浸入の抑制)を満たしている範囲で、周方向に部分的に途切れている形状も含んでいる。
【0026】
締付部64には、スリット67が設けられている。スリット67は、フランジ部65からベローズ63に向けてゴムブーツ61の軸線方向に延びている。スリット67は、ベローズ63の途中位置まで延びている。スリット67は、フランジ部65及び締付部64の軸線方向の全体に亘って設けられている。なお、スリット67とは、ゴムブーツ61がティルトシリンダ21に取り付けられていない状態で締付部64に存在する空間であり、空間が存在しないように設けられた切り込みはスリット67には該当しない。ここで、締付部64にスリット67等が形成されている場合も、ゴムブーツ61の締付部64が円筒状であるものとして説明する。
【0027】
次に、ティルトシリンダ21に取り付けられたゴムブーツ61の取付構造について説明する。
図3に示すように、ゴムブーツ61のシリンダ取付部62は、ヘッドカバー23に取り付けられている。詳細にいえば、シリンダ取付部62は、ヘッドカバー23に掛けられる図示しない掛止部を備え、掛止部をヘッドカバー23に掛けることでゴムブーツ61はヘッドカバー23に取り付けられている。締付部64は、ベローズ63に対してロッド24の軸線方向の突出端25側に設けられている。
【0028】
図3及び図6に示すように、締付部64は、締付部64の外周を囲む締付部材71によってロッド24に取り付けられている。締付部材71としては、例えば、結束バンドを用いることができる。締付部材71は、締付部64に締め付け力を加えている。これにより、締付部64の内径は小さくなり、締付部64からロッド24に締め付け力が加えられている。ロッド24がゴムブーツ61から露出することを抑制するため、ゴムブーツ61とジョイント31との間の隙間は極力小さくされている。締付部64は、ロッド24のネジ溝26に重なり合っている。従って、締付部64は、ネジ溝26に向けて押し付けられていることになる。リブ66は、弾性変形して、ネジ溝26に入り込んでいる。具体的には、リブ66は、締付部材71からの締め付け力によって弾性変形し、隣り合うネジ山の頂点同士を結んだ仮想線よりもネジ溝26側へ侵入している。このように、ゴムブーツ61は、締付部材71の締め付け力によって締付部64及びリブ66を弾性変形させることで、ティルトシリンダ21に取り付けられている。ベローズ63は、ロッド24の外周を覆っている。ベローズ63は、ロッド24の移動とともに伸縮する。
【0029】
本実施形態の作用について説明する。
ティルトシリンダ21を車体11及びマスト13に取り付ける際には、シリンダ取付部62はヘッドカバー23に取り付けられている一方で、締付部64はロッド24に取り付けられていない。即ち、締付部材71による締付部64の取り付けが行われていない状態でティルトシリンダ21の取り付け作業は行われる。ティルトシリンダ21を車体11及びマスト13に取り付けた後には、締付部材71によって締付部64を締め付けることで、締付部64をロッド24に取り付ける。
【0030】
締付部材71による締め付けを行う際には、作業者がゴムブーツ61を引っ張り、フランジ部65を極力、ジョイント31に近付ける。ゴムブーツ61とジョイント31との間の隙間を極力小さくした状態で、作業者は締付部材71によって締付部64を締め付ける。ネジ溝26は、ジョイント31からシリンダチューブ22に向けてジョイント31から露出しているため、ゴムブーツ61とジョイント31との間の隙間を小さくすると、必然的に締付部64はネジ溝26に重なって設けられることになる。締付部64は、締付部材71からの締め付け力によって弾性変形する。ロッド24には、締付部64からの締め付け力が加わり、この力によってゴムブーツ61の軸線方向への締付部64の位置ずれが規制される。
【0031】
仮に、締付部64にリブ66が設けられていない場合、締付部64の内周面が全体に亘ってネジ山に接触することになる。この場合、締付部材71から加わる締め付け力が分散されるため、締付部64からロッド24に加わる締め付け力が不足しやすい。締付部64が弾性変形しにくく、ネジ溝26に締付部64が入り込みにくい。結果として、締付部64の内周面とネジ山とが点接触することになり、締付部64からロッド24に加わる締め付け力が不足しやすい。
【0032】
これに対し、本実施形態では、締付部64の内周面にリブ66を設けている。締付部材71から締付部64に締め付け力が加わり、リブ66がロッド24の外周面に接触すると、締付部材71からの締め付け力は、リブ66に集中して加わることになる。リブ66はロッド24に押し付けられると、ネジ溝26の形状に倣って弾性変形する。これにより、リブ66がネジ溝26に入り込み、リブ66を設けていない場合に比べて、締付部64からロッド24に加わる締め付け力を大きくすることができる。詳細には、締付部材71から締付部64に加わる締め付け力が同一であれば、リブ66を設けていない場合に比べて、リブ66を設けた場合のほうが締付部64からロッド24に加わる締め付け力が大きくなる。
【0033】
また、締付部64にはスリット67が設けられている。締付部材71から締付部64に締め付け力が加わると、締付部64の直径が小さくなるように締付部64は弾性変形する。この際、スリット67は締付部64の弾性変形を許容する空間として機能する。詳細にいえば、締付部材71からの締め付け力が加わると、スリット67の幅が小さくなるように締付部64は弾性変形する。仮に、締付部64にスリット67が設けられていない場合、締付部64の直径が小さくなるように締付部64が弾性変形すると、締付部64の一部に皺が生じる。皺が生じると、締付部64にはロッド24に向かう締め付け力とは異なる方向への力が作用し、締め付け力が小さくなる原因となる。これに対し、スリット67の幅が小さくなるように締付部64を弾性変形させることで、締付部64に皺が生じることを抑制することができる。
【0034】
図7及び図8には、締付部材71から締付部64への締め付け力である締付部材締付力と、締付部64からロッド24への締め付け力であるロッド締付力との関係を示す。図7の線L1は、締付部64にリブ66及びスリット67を設けていない場合の締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示している。締付部64にリブ66及びスリット67が設けられていない状態で、締付部64の内周面がロッド24の外周面に密着するときの締付部材締付力をF1とし、締付部材締付力がF1のときのロッド締付力をF2とする。F2は、締付部64の軸線方向への移動を規制するために必要な締め付け力である。
【0035】
図7の線L2は、本実施形態のゴムブーツ61を用いた場合の締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示している。線L2から把握できるように、本実施形態のゴムブーツ61を用いた場合、締付部材締付力に対するロッド締付力がリブ66及びスリット67を設けていない場合に比べて大きくなる。
【0036】
図7の線L3は、本実施形態のゴムブーツ61にスリット67を設けなかった場合の締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示している。スリット67を設けた場合に比べて、締付部材締付力に対するロッド締付力が小さくなっているが、リブ66及びスリット67を設けていない場合に比べると、ロッド締付力が大きくなる。
【0037】
図8の線L4は、本実施形態のゴムブーツ61にスリット67を設けず、かつ、リブ66における締付部64の周方向への寸法を実施形態の2倍にした場合の締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示している。リブ66における締付部64の周方向への寸法を長くすることで、締付部材締付力に対するロッド締付力が小さくなっているが、リブ66及びスリット67を設けていない場合に比べると、ロッド締付力が大きくなる。
【0038】
図8の線L5は、本実施形態のゴムブーツ61にスリット67を設けず、かつ、リブ66の数を実施形態の2倍にした場合の締付部材締付力と、ロッド締付力との関係を示している。リブ66の数を増やすことで、締付部材締付力に対するロッド締付力が大きくなることがわかる。
【0039】
線L1~L5から把握できるように、ロッド締付力F2を生じさせるのに必要な締付部材締付力は、リブ66を設けることによって小さくなる。従って、締付部64にリブ66を設けることで、締付部材締付力にばらつきがあったとしても、ロッド締付力F2が確保されやすい。
【0040】
上記したように、締付部64にリブ66を設けることで、スリット67の有無、リブ66の寸法、リブ66の数に関わらず、締付部64にリブ66を設けていない場合に比べて締付部材締付力に対するロッド締付力が大きくなる。従って、実施形態に記載したゴムブーツ61のスリット67の有無、リブ66の寸法及びリブ66の数は適宜変更してもよい。また、リブ66の数を変更する場合、リブの数を3つ以上にすることで、ロッド締付力F2を生じさせるのに必要な締付部材締付力を確保しやすい。詳細にいえば、リブ66が2つの場合、締付部64の周方向に対するリブ66同士の間隔が長く、締付部材締付力が締付部64に作用すると、リブ66同士の間に皺が発生しやすい。そのため、締付部64が円筒形状に維持されにくい。これに対し、リブ66を3つ以上にすることで、締付部64の周方向に対するリブ66同士の間隔が短くなり、締付部64が円筒形状に維持されやすい。これにより、ロッド締付力F2を生じさせるのに必要な締付部材締付力を確保しやすい。
【0041】
また、リブ66の数を8つ以下とすることで、ゴムブーツ61を取り付ける際の作業性の悪化を抑制することができる。リブ66の数を増やすと、締付部64を引っ張る際の作業性が悪くなる。リブ66の数を8つ以下とすることで、ゴムブーツ61を取り付ける際の作業性の悪化を抑制することができる。
【0042】
なお、ネジ溝26にゴムブーツ61の一部を入り込ませるために、締付部64の周方向に延びるリブを設けることも考えられる。しかしながら、ネジ溝26は螺旋状であるため、リブを締付部64の周方向に延ばすと、リブが入り込むネジ溝26の溝の数(溝を形成する側面に当接する数)が少ないほか、リブの全体がネジ溝26の形状に倣って、締付部64の周方向に斜めに延びることになる。ロッド24は、締付部64の軸線方向に移動するため、リブには締付部64の軸線方向に力が加わる。この際、リブが締付部64の周方向に対して斜めに延びていると、リブがネジ溝26から外れやすい場合がある。本実施形態のように、リブ66を締付部64の軸線方向に延ばすことで、リブ66を締付部64の周方向に延ばした場合に比べてリブ66がネジ溝26から外れにくい。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ゴムブーツ61の締付部64にリブ66を設けている。締付部材71から締付部64に加わる締め付け力は、リブ66に集中して加わり、リブ66を設けない場合に比べて、ロッド24への締め付け力が大きくなる。これにより、ゴムブーツ61の軸線方向への締付部64の位置ずれを抑制できる。
【0044】
(2)リブ66における締付部64の軸線方向の寸法Laは、リブ66における締付部64の周方向の寸法Lcよりも長い。ティルトシリンダ21にゴムブーツ61を取り付ける際に、締付部64に締め付け力を加えると、締付部64は弾性変形する。リブ66における締付部64の軸線方向の寸法Laがリブ66における締付部64の周方向の寸法Lcよりも長いことで、ゴムブーツ61の軸線方向への締付部64の位置ずれを抑制するのに効果的に、弾性変形をさせることができる。
【0045】
(3)締付部64にスリット67を設けている。締付部64にスリット67を設けない場合に比べて、締付部64に皺が生じにくい。このため、締付部64からロッド24への締め付け力を大きくすることができる。また、スリット67は締付部64に存在する空間であるため、締め付け具合が強くなるほど空間の幅が狭まるため、目視にて締め付け具合を確認できる。
【0046】
(4)リブ66を4つ設けている。実施形態で記載したように、リブ66の数を増やすと締付部材締付力に対するロッド締付力は大きくなる。特に、リブ66の数を3つ以上にすることで、顕著な効果を得ることができる。一方で、リブ66の数を増やすと、締付部64を引っ張る際の作業性が悪くなり、ゴムブーツ61を取り付ける際の作業効率の低下を招く。発明者は、締付部材締付力に対するロッド締付力と、ゴムブーツ61を取り付ける際の作業性との均衡を図るべく試験を重ねた結果、リブ66を4つにすることで両者の均衡を図ることができると結論付けた。従って、リブ66を4つ設けることで、ロッド締付力を確保しつつ、リブ66を設けることによる作業性の悪化も抑制することができる。
【0047】
(5)リブ66がネジ溝26に入り込むようにしている。締付部材71から締付部64に加わる締め付け力は、リブ66に集中してネジ溝26に向けて加わり、締付部64からロッド24への締め付け力が大きくなる。これにより、リブ66はネジ溝26に入り込むため、ゴムブーツ61の軸線方向への締付部64の位置ずれを更に抑制できる。
【0048】
(6)ジョイント31の位置を調整するためのネジ溝26を、リブ66の一部を入り込ませる溝として兼用している。リブ66を入り込ませるための専用の溝を設ける必要がなく、製造コストの増加を抑制できる。
【0049】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○締付部64にスリット67を設けない場合、締付部64に切り込みを設けてもよい。
【0050】
○ゴムブーツ61は、マスト13を傾動させるティルトシリンダ21に限らず、どのような用途に用いられるアクチュエータに取り付けられていてもよい。例えば、マスト13を前後方向に移動させるリーチシリンダを備えるフォークリフト10であれば、リーチシリンダのロッドにゴムブーツ61を取り付けてもよい。
【0051】
○ゴムブーツ61が取り付けられるアクチュエータは、空気の圧力によってロッドを移動させるエアシリンダや、モータによってロッドを移動させる電動アクチュエータであってもよい。
【0052】
○締付部64は、ロッド24においてネジ溝26が設けられていない部分に取り付けられていてもよい。従って、ロッド24としては、ネジ溝26が設けられていないものであってもよい。
【0053】
○締付部材71としては、締付部64に締め付け力を付与することができれば、どのような部材を用いてもよい。
○ロッド24に設けられた溝は、ネジ溝26でなくてもよい。即ち、螺旋状の溝に代えて、周方向に直線状に延びる溝をロッド24に設けてもよい。この場合、溝は、締付部64の締め付け力を大きくすることを目的としてロッド24に設けられる。
【0054】
○産業車両としては、建設機械、自動搬送車、トラックなどフォークリフト10以外の産業車両であってもよい。
○ゴムブーツ61は、シリンダチューブ及びロッドを備えるアクチュエータが搭載される機器であればどのような機器に設けられていてもよい。
【0055】
○リブ66は、締付部64の周方向に一致させた上で、締付部64の軸線方向に対して複数設けられていてもよい。
○リブ66における締付部64の軸線方向の寸法Laは、リブ66における締付部64の周方向の寸法Lcよりも短くてもよい。
【0056】
○スリット67は、複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…産業車両としてのフォークリフト、21…アクチュエータとしてのティルトシリンダ、22…シリンダチューブ、24…ロッド、25…突出端、61…ゴムブーツ、63…ベローズ、64…締付部、66…リブ、67…スリット、71…締付部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8