(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】配筋確認支援システム、配筋確認支援方法及び配筋確認支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20230821BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20230821BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G01B11/02 H
G01B11/08 H
E04G21/12 105Z
E04G21/12 ESW
(21)【出願番号】P 2019137973
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】504454060
【氏名又は名称】株式会社アプライド・ビジョン・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 允哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕信
(72)【発明者】
【氏名】水口 祐司
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-001146(JP,A)
【文献】特開平05-187825(JP,A)
【文献】特表2019-502118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形鉄筋を撮影した撮影画像を用いて、前記異形鉄筋の配筋情報を特定する制御部を備え、前記異形鉄筋の配筋の確認を支援する配筋確認支援システムであって、
前記制御部は、
前記撮影画像において、前記異形鉄筋の軸方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布を取得し、
前記一次元分布を周波数解析
することにより、前記撮影画像に含まれる前記異形鉄筋のふしの間隔
と、前記ふしの間隔に応じた周波数の画像指標値に基づく前記異形鉄筋のふし領域を特定し、
前記特定したふし領域において、所定距離内にある隣接する2つのふし領域を1本の鉄筋の鉄筋領域として特定し、
複数の前記鉄筋領域の配置及び数から、前記異形鉄筋の軸方向と直交する方向で前記鉄筋領域の間隔
を算出して、前記異形鉄筋のピッチを特定することを特徴とする配筋確認支援システム。
【請求項2】
前記制御部は、特定した前記ふしの間隔から前記異形鉄筋の径を特定することを特徴とする請求項1に記載の配筋確認支援システム。
【請求項3】
前記画像指標値は、前記異形鉄筋の軸方向に並んだ画素の輝度値であって、
前記周波数解析において、前記一次元分布に対して窓関数を掛けた後、離散フーリエ変換を行なうことを特徴とする請求項
1又は2に記載の配筋確認支援システム。
【請求項4】
異形鉄筋を撮影した撮影画像を用いて、前記異形鉄筋の配筋情報を特定する制御部を備えた配筋確認支援システムを用いて、前記異形鉄筋の配筋の確認を支援する方法であって、
前記制御部は、
前記撮影画像において、前記異形鉄筋の軸方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布を取得し、
前記一次元分布を周波数解析
することにより、前記撮影画像に含まれる前記異形鉄筋のふしの間隔
と、前記ふしの間隔に応じた周波数の画像指標値に基づく前記異形鉄筋のふし領域を特定し、
前記特定したふし領域において、所定距離内にある隣接する2つのふし領域を1本の鉄筋の鉄筋領域として特定し、
複数の前記鉄筋領域の配置及び数から、前記異形鉄筋の軸方向と直交する方向で前記鉄筋領域の間隔
を算出して、前記異形鉄筋のピッチを特定することを特徴とする配筋確認支援方法。
【請求項5】
異形鉄筋を撮影した撮影画像を用いて、前記異形鉄筋の配筋情報を特定する制御部を備えた配筋確認支援システムを用いて、前記異形鉄筋の配筋の確認を支援するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記撮影画像において、前記異形鉄筋の軸方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布を取得し、
前記一次元分布を周波数解析
することにより、前記撮影画像に含まれる前記異形鉄筋のふしの間隔
と、前記ふしの間隔に応じた周波数の画像指標値に基づく前記異形鉄筋のふし領域を特定し、
前記特定したふし領域において、所定距離内にある隣接する2つのふし領域を1本の鉄筋の鉄筋領域として特定し、
複数の前記鉄筋領域の配置及び数から、前記異形鉄筋の軸方向と直交する方向で前記鉄筋領域の間隔
を算出して、前記異形鉄筋のピッチを特定する手段として機能させることを特徴とする配筋確認支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配置された異形鉄筋の寸法等の配筋情報を特定して、配筋の確認を支援するための配筋確認支援システム、配筋確認支援方法及び配筋確認支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築工事の現場において、鉄筋コンクリート構造物に埋設される鉄筋を撮影し、撮影画像に含まれる鉄筋の本数等が設計図面に一致していることを確認する。この場合、撮影画像を用いて、鉄筋の本数、直径及びピッチ等の配筋情報を取得する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の配筋情報取得システムにおいて、携帯端末は、背景バーの部分に相当する画像全体から、マーカーを検出し、マーカー間の画像を切り出す。配筋情報取得システムでは、その画像において、鉄筋の軸方向に垂直な方向で、ピクセルの輝度が不連続な箇所を検出することにより領域の境界線となるエッジを抽出し、不要なエッジを除去する。次に、画像の輝度分布に対して度数分布を作成し、その度数分布に基づいて鉄筋、影、背景の3つの領域における代表輝度値を計算し、各代表輝度値を用いて、各エッジに挟まれた領域を特定し、エッジを挟んで隣り合う領域が同じである場合、その2つの領域を1つの領域として統合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、鉄筋、影及び背景の領域を分離するために、配筋された鉄筋の背後に、単色の背景バーを挿入していた。このため、背景バーの設置の手間が掛かっていた。また、光の向きによっては、背景バーに影が落ちることがある。この場合には、影と分離して、鉄筋部分の領域を抽出することが難しく、効率的に配筋を確認することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する配筋確認支援システムは、異形鉄筋を撮影した撮影画像を用いて、前記異形鉄筋の配筋情報を特定する制御部を備え、前記異形鉄筋の配筋の確認を支援する配筋確認支援システムであって、前記制御部は、前記撮影画像において、前記異形鉄筋の軸方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布を取得し、前記一次元分布を周波数解析して、前記撮影画像に含まれる前記異形鉄筋のふしの間隔を特定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、効率的に配筋を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における配筋確認支援システムの構成を説明する説明図。
【
図2】実施形態におけるハードウェア構成の説明図。
【
図3】実施形態における配筋検査処理を説明する説明図であって、(a)は処理手順の流れ図、(b)は撮影画像、(c)はスキャン方向、(d)はリブが中央に位置した鉄筋のふし領域、(e)はリブが端部に位置した鉄筋のふし領域。
【
図4】実施形態におけるふし間隔の特定処理を説明する説明図であって、(a)は処理手順の流れ図、(b)は輝度値に対する波形、(c)は窓関数、(d)は輝度値に対する波形と窓関数を掛けた波形、(e)は(d)の波形をフーリエ変換した結果。
【
図5】実施形態における処理の処理手順を説明する流れ図であって、(a)は鉄筋径の特定処理、(b)はピッチの特定処理。
【
図6】実施形態におけるピッチの特定処理を説明する説明図であって、(a)は特定したふし領域、(b)は特定した鉄筋領域、(c)は特定したピッチ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図6を用いて、配筋確認支援システム、配筋確認支援方法及び配筋確認支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、配筋確認支援システムを用いて、複数の異形鉄筋の配筋検査を実行する。
【0009】
この配筋検査においては、
図1に示すように、建設現場において配筋が行なわれた複数の鉄筋10のうちの両端の鉄筋10の外側にマーカーM1,M2を取り付ける。そして、タブレット15の撮影装置でマーカーM1,M2及びその間の鉄筋10を撮影した画像を用いて、鉄筋10の配筋情報(鉄筋10のふし間隔、鉄筋10の径、ピッチ(間隔)等の寸法情報)を特定して、検査を行なう。
ここで、配筋確認支援システムとして、タブレット15及び配筋検査装置20を用いる。
【0010】
(ハードウェア構成)
図2を用いて、配筋検査装置20及びタブレット15を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0011】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0012】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける入力部である。入力装置H12は、タブレット15においては、例えばボタンやタッチパネルディスプレイであり、配筋検査装置20では、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示する出力部である。表示装置H13は、タブレット15においては、例えば、タッチパネルディスプレイであり、配筋検査装置20では、例えばディスプレイ等である。
【0013】
記憶部H14は、配筋検査装置20及びタブレット15の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0014】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、配筋検査装置20及びタブレット15における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各サービスのための各種プロセスを実行する。
【0015】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0016】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、タブレット15及び配筋検査装置20のシステム構成について説明する。
【0017】
タブレット15は、撮影装置(内蔵するカメラ等)で被写体を撮影した撮影画像を生成する。このタブレット15は、配筋検査装置20と、無線通信を介して、データの送受信を行なう。
配筋検査装置20は、鉄筋10を撮影した撮影画像から、鉄筋10の配筋状況を特定して配筋検査を行なうためのコンピュータ端末である。配筋検査装置20は、制御部21及びJIS規格情報記憶部25を備える。
【0018】
制御部21は、後述する処理(検査管理段階、画像取得段階、ふし領域抽出段階、鉄筋径特定段階、ピッチ特定段階及び出力段階等を含む処理)を行なう。このための配筋確認支援プログラムを実行することにより、制御部21は、検査管理部210、画像取得部211、ふし領域抽出部212、鉄筋径特定部213、ピッチ特定部214及び出力部215として機能する。
【0019】
検査管理部210は、配筋検査のための管理処理を実行する。この検査管理部210は、撮影画像において鉄筋の軸方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布を取得する。本実施形態では、画像指標値として、画素の輝度値を用いる。そして、検査管理部210は、撮影画像において、鉄筋の軸方向に並んだ画素の輝度値を、順番に並べた一次元分布を生成する。更に、検査管理部210は、マーカーM1,M2のマーク間の距離等の情報を取得する。このため、本実施形態では、検査管理部210は、画像において、マーカーM1,M2を特定するためのマーカー画像と、マーカーM1,M2に対して処理を行なう処理対象範囲を特定するための範囲特定情報とを記憶している。範囲特定情報は、例えば、特定した2つのマーカーM1,M2の間を横の長さとし、マーカーM1,M2の上下1つ分の高さを含む長方形状の範囲を用いることができる。
【0020】
画像取得部211は、タブレット15から撮影画像を取得する。
ふし領域抽出部212は、撮影画像において異形鉄筋のふし領域を抽出する処理を実行する。本実施形態では、撮影画像において、鉄筋の軸方向に並んでいる各画素の輝度値の一次元分布を周波数解析して、ふしの間隔を特定する。そして、ふし領域抽出部212は、特定したふしの間隔に応じた輝度値の変化に基づいて、画像においてふしが示されている略長方形状の領域(ふし領域)を特定する。このため、ふし領域抽出部212は、一次元分布に掛け合わせる窓関数と、その結果に対して掛け合わせるフーリエ変換とを記憶している。本実施形態では、窓関数として一般化ハミング窓関数を用い、フーリエ変換として離散フーリエ変換を用いる。
【0021】
鉄筋径特定部213は、異形鉄筋の呼び径を特定する処理を実行する。本実施形態では、ふしの間隔の実際の寸法を特定し、このふしの間隔をJIS規格と照合することにより、鉄筋の呼び径を特定する。
【0022】
ピッチ特定部214は、配筋に用いられた鉄筋10の間隔(ピッチ)を特定する処理を実行する。このピッチ特定部214は、鉄筋の軸方向と直交する方向(領域の短手方向)の距離が近いふし領域が、同じ鉄筋10のふし領域か否かを判定するための基準間隔を記憶している。
出力部215は、特定した鉄筋の本数、径及びピッチを出力する処理を実行する。
【0023】
JIS規格情報記憶部25は、JIS規格(日本工業規格)の異形鉄筋に関する情報が記憶されている。本実施形態では、異形鉄筋の呼び名(D10,D16等)、公称直径、ふしの平均、ふしの配筋間隔の最大値、ふしの高さの最小値及び最大値等に関する情報が記憶されている。
【0024】
(配筋検査処理)
次に、
図3~
図6を用いて、配筋検査処理について説明する。
まず、
図3(a)に示すように、配筋検査装置20の制御部21は、撮影画像の取得処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、検査員は、検査する複数の鉄筋10のうち両端の鉄筋10の外側に、鉄筋の軸方向の直交方向に離間させてマーカーM1,M2を取り付ける。本実施形態では、マーカーM1,M2には磁石が設けられている。この磁石によりマーカーM1,M2を鉄筋10に吸着させる。
【0025】
そして、検査員は、タブレット15の撮影装置を用いて、マーカーM1,M2及びマーカーM1,M2の間の領域を含む範囲を撮影し、生成された撮影画像を配筋検査装置20に送信する。配筋検査装置20の制御部21の画像取得部211は、撮影画像を取得する。例えば、画像取得部211は、
図3(b)に示す撮影画像50を取得する。
【0026】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、輝度情報の取得処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21の検査管理部210は、マーカー画像と一致する2つの画像を撮影画像において検索する。検査管理部210は、マーカー画像を特定した場合、マーカー画像の位置と範囲特定情報を用いて、撮影画像の処理対象範囲を特定する。そして、検査管理部210は、処理対象範囲について、2つのマーカー画像を結ぶ線に対して直交方向(鉄筋の軸方向)に並んだ画素の輝度値の分布(一次元分布)を取得する。これにより、検査管理部210は、横軸に画素番号、縦に輝度値が示された波形を取得する。
【0027】
例えば、
図3(b)において、撮影画像50には縦方向に鉄筋10が並んでいるため、2つのマーカーM1,M2の位置に対して処理対象範囲A1が特定される。
更に、
図3(c)の矢印で示すように、制御部21は、処理対象範囲A1において2つのマーカーM1,M2を結ぶ線と直交する方向(鉄筋10の軸方向)の画素の輝度値を取得する。この場合、鉄筋10には等間隔でふしが並んでいるため、ふしの配置に応じた輝度値の変化が繰り返された一次元分布となる。
【0028】
次に、検査管理部210は、タブレット15に入力画面を表示し、この入力画面を介して、焦点距離(画素数)、マーク基準長に関する情報を取得して仮記憶する。マーク基準長は、各マーカーM1,M2の円形マークの直径(実際の寸法)である。
【0029】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、ふし間隔の特定処理を実行する(ステップS1-3)。この処理の詳細については、
図4を用いて後述する。
次に、配筋検査装置20の制御部21は、ふし領域の抽出処理を実行する(ステップS1-4)。この処理の詳細については、
図3(d)及び(e)を用いて後述する。
【0030】
そして、配筋検査装置20の制御部21は、鉄筋径の特定処理を実行する(ステップS1-5)。この処理の詳細については、
図5(a)を用いて後述する。
次に、配筋検査装置20の制御部21は、ピッチの特定処理を実行する(ステップS1-6)。この処理の詳細については、
図5(b)を用いて後述する。
【0031】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、出力処理を実行する(ステップS1-7)。具体的には、制御部21の出力部215は、撮影画像の上に重ねて表示するための配筋情報を生成する。この配筋情報には、算出したふし間隔、鉄筋10の本数、呼び径及びピッチを含める。そして、出力部215は、生成した配筋情報をタブレット15に送信して、タブレット15のタッチパネルディスプレイの撮影画像の上に表示する。検査員は、表示された配筋情報が設計情報と一致していない場合には、撮影画像に含まれた配筋を確認する。また、一致している場合には、残りの検査箇所のうち次の検査を行なう配筋部分を撮影し、ステップS1-1以降の処理を繰り返して実行する。
【0032】
<ふし間隔の特定処理>
次に、
図4を用いて、ふし間隔の特定処理について説明する。
まず、
図4(a)に示すように、配筋検査装置20の制御部21は、輝度値に対して窓関数の掛け合わせ処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、制御部21のふし領域抽出部212は、取得した輝度値の波形に対して、窓関数を乗算する。例えば、
図4(b)に示すように点線で囲まれた輝度値の波形に対して、
図4(c)に示す一般化ハミング窓関数を掛け合わせて、
図4(d)に示す波形を取得する。
【0033】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、フーリエ変換処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、制御部21のふし領域抽出部212は、ステップS2-1において取得した波形を、離散フーリエ変換を行なうことにより、輝度値の波形に含まれる周波数を特定する。
【0034】
例えば、
図4(e)に示すように、この離散フーリエ変換により得た波形においてピーク値P1が出現した周波数を特定する。このピーク値P1が明確に出現したことにより、撮影画像に繰り返しパターンが含まれることが把握できる。異形鉄筋の撮影画像では、鉄筋のふし部分の画像が繰り返しパターンとして特定されるため、異形鉄筋の存在の検知と、ピーク値P1の周波数に対応したふし間隔を特定することができる。
【0035】
<ふし領域の抽出処理>
次に、
図3(d)及び(e)を用いて、ふし領域の抽出処理を説明する。
この処理において、制御部21のふし領域抽出部212は、ステップS1-3において特定したふし間隔に対して予め定めた許容範囲内で、輝度値が変化する領域をふし領域と特定する。
【0036】
例えば、
図3(d)及び(e)に示すように、鉄筋10においてリブを除いた部分がふし領域F1,F2,F3として特定される。ここで、
図3(d)の鉄筋10は、リブが正面に位置しており、リブの左右の鉄筋10の領域がふし領域F1,F2と特定される。また、
図3(e)の鉄筋10は、リブが両端に位置しており、鉄筋10の両端に位置するリブを除いた鉄筋10のほぼ全体の領域がふし領域F3と特定される。
【0037】
<鉄筋径の特定処理>
次に、
図5(a)を用いて、鉄筋径の特定処理を説明する。
まず、配筋検査装置20の制御部21は、マーク径と鉄筋位置からふし間隔の算出処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、制御部21の鉄筋径特定部213は、まず、各鉄筋の位置に応じた画像からの実寸の算出処理を算出する。この算出処理の詳細については、後述する。
【0038】
そして、鉄筋径特定部213は、算出対象の鉄筋における1画素に対する実寸と、ステップS1-3において算出したふしの間隔(画素数)とを用いて、ふし間隔の実際の寸法を特定する。
【0039】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、JIS規格と照合して呼び名の特定処理を実行する(ステップS3-2)。具体的には、制御部21の鉄筋径特定部213は、ステップS3-1において特定したふし間隔の異形鉄筋の呼び径を、JIS規格情報記憶部25に記憶したJIS規格情報から抽出する。
【0040】
<各鉄筋の位置に応じた画像からの実寸の算出処理>
次に、各鉄筋の位置に応じた画像からの実寸の算出処理について説明する。
まず、制御部21の鉄筋径特定部213は、撮影画像50における円形マークの直径(画素数)を特定する。鉄筋径特定部213は、仮記憶しているマーク基準長(実寸)を、画像において特定したマークの直径(画素数)で除算することにより、マーカーM1,M2の位置における1画素に対する実寸(単位長さ)を算出する。
【0041】
次に、鉄筋径特定部213は、焦点距離(画素数)に、算出した各マーカーM1,M2の位置における1画素に対する実寸を乗算して、タブレット15から各マーク位置までの距離L1,L2を算出する。次に、タブレット15から各マーク位置までの距離L1,L2を用いて、2つのマーカーM1,M2を結んだ線上においてタブレット15から最も近い距離L3を算出する。
【0042】
そして、鉄筋径特定部213は、マーカーM1,M2から算出対象の鉄筋までの画素数と、マーカーM1,M2の位置における1画素に対する実寸とを用いて、マーカーM1,M2から算出対象の鉄筋までの実際の寸法を算出する。次に、鉄筋径特定部213は、マーカーM1,M2から算出対象の鉄筋までの実際の寸法と、算出した距離L1,L2,L3を用いて、タブレット15から算出対象の鉄筋までの距離L4を特定する。鉄筋径特定部213は、マーカーM1,M2の位置における1画素に対する実寸と、マーカーM1,M2までの距離L1,L2と、算出対象の鉄筋の距離L4とを用いて、算出対象の鉄筋における1画素に対する実寸を特定する。
【0043】
<ピッチの特定処理>
次に、
図5(b)及び
図6を用いて、ピッチの特定処理を説明する。
まず、配筋検査装置20の制御部21は、ふし領域の統合処理を実行する(ステップS4-1)。具体的には、制御部21のピッチ特定部214は、ステップS1-4において特定したふし領域のうち、隣接するふし領域の間隔が基準間隔より短いか否かを判定する。そして、ピッチ特定部214は、基準間隔より短いと判定した二つのふし領域を含む領域を、1本の鉄筋の鉄筋領域として特定する。
【0044】
図6(a)に示す画像では、2本の異形鉄筋が撮影されている。この画像では、リブの配置が異なっている。この画像では、ふし領域の抽出処理(ステップS1-4)において、ふし領域F1,F2,F3が特定される。
【0045】
ここで、
図6(a)における2つのふし領域F1,F2の間隔は、基準間隔より短い。この場合、
図6(b)に示すように、ふし領域F1,F2を含めた領域を、1つの鉄筋領域R1として特定する。また、ふし領域F3は、隣接するふし領域F2に対して判定間隔より離れているため、ふし領域F2とは別鉄筋と判定して、1つの鉄筋領域R2として特定する。このように、撮影時のリブの配置(鉄筋の正面や両脇)によって、ふし領域の見え方が異なる場合にも、各鉄筋を特定することができる。
【0046】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、鉄筋の本数及び間隔の特定処理を実行する(ステップS4-2)。具体的には、制御部21のピッチ特定部214は、ステップS4-1において認識した鉄筋領域R1,R2の数(本数)をカウントする。更に、
図6(c)に示すように、ピッチ特定部214は、画像における各鉄筋領域R1,R2の中心の距離(間隔)を算出する。
【0047】
次に、配筋検査装置20の制御部21は、マーク径と鉄筋位置からピッチの算出処理を実行する(ステップS4-3)。具体的には、制御部21のピッチ特定部214は、ステップS3-1における各鉄筋の位置に応じた画像からの実寸の算出処理を実行して、ピッチを計測する2つの鉄筋の1画素に対する実寸を特定する。そして、ピッチ特定部214は、2つの鉄筋の実寸の平均値と、ステップS4-2において算出した画像における2つの鉄筋領域の間隔とを用いて、鉄筋領域の間隔の実際の大きさ(ピッチ)を特定する。
【0048】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、撮影画像に含まれる鉄筋の軸方向に並んだ画素の輝度値の波形を周波数解析して、撮影画像に含まれる鉄筋及びそのふしの間隔を特定する。鉄筋においては複数のふしが等間隔で並んでいる。このため、撮影画像において周波数成分から鉄筋の存在、その鉄筋のふしの間隔を効率的に把握することができる。
【0049】
(2)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、鉄筋10のふしの間隔とJIS規格情報とを用いて、鉄筋10の径(呼び径)を特定する。これにより、撮影画像から、撮影画像に含まれる鉄筋10の径を効率的に特定することができる。
【0050】
(3)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、撮影画像においてマーカーM1,M2を検出し、撮影画像中における画像処理を行なう処理対象範囲を特定する。これにより、画像に含まれる鉄筋のふし間隔を特定することができる。
【0051】
(4)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、周波数解析として、輝度値に対して窓関数を掛け合わせて、フーリエ変換を行なう。これにより、輝度値の波形に含まれる周波数を特定することができるので、画像中に繰り返される画像があることを把握できる。ここで、鉄筋のふしは繰り返される画像部分であるため、鉄筋の存在を効率的に把握することができる。
【0052】
(5)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、鉄筋領域R1,R2の数をカウントすることにより、鉄筋の本数を特定する。これにより、撮影画像に含まれる鉄筋の数を特定することができる。
【0053】
(6)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、ふし領域の統合処理を実行する(ステップS4-1)。鉄筋10のリブの位置によっては、同じ鉄筋10のふし領域F1,F2が分割して検出されることがある。このため、判定間隔より短い距離で離間しているふし領域F1,F2については、1つの鉄筋領域R1として統合するので、鉄筋領域R1を的確に特定することができる。
【0054】
(7)本実施形態において、配筋検査装置20の制御部21は、マーク径及び鉄筋領域R1の鉄筋位置から、ピッチを算出する。これにより、画像に含まれる鉄筋10のピッチを特定することができる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、配筋検査装置20の制御部21は、鉄筋径の特定処理において、マーク径と鉄筋位置からふし間隔の算出処理、JIS規格と照合して呼び名の特定処理を実行した(ステップS3-1,S3-2)。鉄筋径の特定処理は、これに限られない。例えば、ふし領域の抽出処理(ステップS1-4)、ピッチの特定処理(ステップS1-6)のふし領域の統合処理(ステップS4-1)を実行した後、鉄筋領域R1の実際の幅を、マーク径と鉄筋位置から算出し、この鉄筋領域R1の幅に応じた直径を、鉄筋径として特定してもよい。
【0056】
・上記実施形態においては、配筋検査装置20の制御部21が、撮影画像に基づいて、鉄筋の本数、鉄筋の呼び径、鉄筋のピッチ等の配筋情報を特定した。配筋情報の特定は配筋検査装置20で行なう場合に限られず、例えば、タブレット15において実行してもよい。
【0057】
更に、上記実施形態においては、配筋検査装置20において特定した配筋情報は、タブレット15の撮影画像の上に表示した。特定した配筋情報の出力は、撮影画像の上に表示する場合に限られず、例えば、特定した配筋情報を撮影画像とともにデータ記憶部に記憶してもよい。この場合、撮影画像の撮影場所や撮影日時を取得して、撮影画像とともに記憶してもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、配筋検査装置20の制御部21が、配筋情報をタブレット15の撮影画像の上に表示する。そして、表示された配筋情報が、設計情報と一致しているか否かを検査員が確認した。配筋情報の確認は、検査員が実行する場合に限られず、例えば、配筋検査装置20の制御部21が実行してもよい。この場合、配筋検査装置20は、検査を行なう場所の設計図面情報を取得して記憶する。配筋検査装置20の制御部21は、特定した配筋情報が、記憶している設計図面情報と一致しているか否かを判定する。一致している場合には、次の検査を指示し、一致していない場合には、一致していない配筋情報をタブレット15に出力してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、配筋検査装置20の制御部21は、縦方向に並んだ鉄筋10の配筋情報を取得した。確認する配筋は、一方向に複数並んだ配筋に限られず、格子状の配筋であってもよい。この場合には、横方向の両端部の鉄筋及び縦方向の両端部の鉄筋にマーカーM1,M2を取り付けてもよい。この場合、配筋検査装置20の制御部21は、2つのマーカーを結んだ線と直交する線上(縦方向及び横方向)の画素に基づいて輝度値の波形(一次元分布)を取得する。また、どちらか一方向の両端部の鉄筋にマーカーM1,M2を取り付け、縦方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布と、横方向に並んだ画素の画像指標値による一次元分布とを取得してもよい。これにより、横方向に配置された鉄筋のふし間隔と縦方向に配置された鉄筋のふし間隔を特定することができる。
【0060】
・上記実施形態においては、配筋検査装置20の制御部21は、輝度値の波形に対して一般化ハミング窓関数を掛け合わせた後、離散フーリエ変換を行なった。周波数解析に用いる関数や手法は、一般化ハミング窓関数や離散フーリエ変換に限られない。例えば、他の窓関数を用いてもよいし、ウェーブレット関数などの直交変換の関数を掛けて、その中におけるピーク値から、ふしの間隔を示す波長を算出してもよい。
【0061】
・上記実施形態においては、配筋検査装置20の制御部21は、ふしの間隔を特定するために、撮影画像において鉄筋の軸方向に並んだ画素の輝度値を並べた一次元分布(波形)を取得した。ふしの間隔を特定するための画像指標値の一次元分布は、輝度値に限られない。例えば、画像における一次元の色分布を、画像指標値として用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
A1…処理対象範囲、F1,F2,F3…ふし領域、L1,L2,L3,L4…距離、R1,R2…鉄筋領域、M1,M2…マーカー、P1…ピーク値、H10…情報処理装置、H11…通信装置、H12…入力装置、H13…表示装置、H14…記憶部、H15…プロセッサ、10…鉄筋、15…タブレット、20…配筋検査装置、21…制御部、25…JIS規格情報記憶部、50…撮影画像、210…検査管理部、211…画像取得部、212…領域抽出部、213…鉄筋径特定部、214…ピッチ特定部、215…出力部。