(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】建築仕様決定システム及び、建築営業システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230821BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021109083
(22)【出願日】2021-06-30
(62)【分割の表示】P 2018229301の分割
【原出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】511204854
【氏名又は名称】株式会社アントール
(73)【特許権者】
【識別番号】511104048
【氏名又は名称】電子模型製作所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 孝一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 忠史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健蔵
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-350094(JP,A)
【文献】特開平09-147141(JP,A)
【文献】特開2013-131003(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客と請負者との間で建築物の仕様を決定するための建築仕様決定システムであって、
所定の建築仕様を反映した前記建築物のモデルデータを作成するモデルデータ作成手段と、壁や床の模様などのデータを作成する画像処理ソフトと、前記モデルデータ作成手段において作成されたモデルデータ
及び、前記画像処理ソフトで作成された、前記壁や床の模様などのデータに基づいて所定の操作を加えることで動かすことが可能で前記建築仕様を反映した前記建築物の画像を含む可動画像を作成する可動画像作成手段と、を合わせたアプリ作成ツールと、
前記可動画像作成手段において作成された可動画像を前記請負者が前記顧客に通信によって提供可能とする可動画像提供手段と、
前記顧客が、前記可動画像提供手段によって通信によって提供した前記可動画像を受信する端末と、
前記顧客から
前記端末を用いて送信された、前記建築仕様の修正依頼の情報または承認の情報を含む仕様確認情報を前記請負者側において通信によって受領可能とする仕様確認情報受領手段と、
を有
し、
前記可動画像は、該可動画像に反映された前記建築仕様を前記顧客により前記端末を用いて変更可能に作成されており、
前記仕様確認情報に含まれる前記顧客からの前記建築仕様の修正依頼の情報は、前記顧客により前記端末を用いて前記建築仕様が変更された前記可動画像を含むことを特徴とする、建築仕様決定システム。
【請求項2】
前記可動画像作成手段は、前記モデルデータ作成手段において作成されたモデルデータが適用されるゲームエンジンプログラムであることを特徴とする、請求項1に記載の建築仕様決定システム。
【請求項3】
前記所定の建築仕様は、前記顧客から予め提供された前記顧客の希望する仕様を含む顧客希望仕様であることを特徴とする、請求項1または2に記載の建築仕様決定システム。
【請求項4】
前記端末によって、前記可動画像作成手段において作成された前記可動画像を表示し前記所定の操作を加えることが可能
であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の建築仕様決定システム。
【請求項5】
前記建築仕様は前記建築物の間取りを含み、
前記可動画像は、
前記端末において、一人称視点の画像と三人称視点の画像を切換え可能であり、前記建築物における各場所に視点を移動して前記建築物の内部を表示可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の建築仕様決定システム。
【請求項6】
前記可動画像は、
前記端末において、前記建築物における各場所に視点を移動して前記建築物の内部を表示可能であり、
前記建築物の各場所における前記建築物の内部の画像が表示される際には、当該場所における間取り以外の仕様の選択用のタブが表示され、
前記顧客は、
前記端末において、前記タブを選択することで前記建築仕様を変更可能であることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の建築仕様決定システム。
【請求項7】
前記可動画像は、
前記端末において、所定のゲーム操作を加えることによってゲームとして機能することを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の建築仕様決定システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の建築仕様決定システムにより決定された建築仕様に基づき、
前記顧客から前記請負者への見積り依頼の情報または、前記請負者から前記顧客への見積り情報の伝達を、前記顧客
が有する前記端末と
前記請負者が有する請負者側端末の間の通信によって実行可能とする、建築営業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の建造またはリフォームに関わり、特に、顧客と請負者の間で建築物の仕様を決定する建築仕様決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CAD技術、シミュレーション技術の発展に伴い、建築物の3D画像を請負者が作成し、顧客がディスプレイ上で確認するシステムは公知である。これに関しては、顧客が建築物について目視で確認するには、請負者との打ち合わせの際に、請負者が事務所等において提示する画像をディスプレイ上で確認する他なく、建築物の仕様決定に時間と手間を要するとともに、実際の建築物と画像の見え方の相違等からトラブルになる場合もあった。
【0003】
これに関しては、インターネット等を介して、利用者が希望する住宅の概略外観デザインと内部レイアウトとを、希望条件に基づいて又はサーバーが提示した選択肢の中から検索することによって概略設計図等と、有償の場合のサービス内容、流れ、費用等を無償で提示する段階1~8と、希望する利用者に希望条件に基づいてサーバーが提示した選択肢の中から具体的設計図等を有償で提示し、発注し、施工を指示し、建築することを支援する段階9~14とからなるインターネット等による住宅建築方法が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この技術においては、利用者はインターネットを介して概略設計図等を見ることができるものの、実際の建築物と利用者が確認可能な画像との差によりトラブルが生じる危険性は逆に増加するものと考えられた。
【0005】
また、建築業者側コンピュータ1と施主側コンピュータ2とをインターネット回線3で双方向通信可能とし、両コンピュータに、建築物の間取り設計の共通のソフト及び建具・内装装置・備品等の共通のデータとして間取り設計ソフト部A,そのデータ部AD,間取り設計ソフトJ,そのデータ部JDを保有させ、更に建築業者側コンピュータ1には外観・内観の三次元視覚画像を生成させる。プレゼンテーション資材作成部B及び住宅ローン試算ソフト部C,仕様書作成ソフト部D,見積り作成ソフト部Eとを保有させる技術が公知である(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、この技術においては、建築業者側コンピュータ1と施主側コンピュータ2とにおいて共通のソフトを保有させる必要があり、システムのコスト及び、準備に必要な作業が増大する可能性があった。また、このような場合には、ソフトを施主に提供することが必要で、ソフトのセキュリティの問題が生じることも考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-16137号公報
【文献】特開2002-251427号公報
【文献】特開2015-125761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、建築物の建造またはリフォームに関わるコストを低減可能であるとともに、仕様に関する顧客と請負者
との認識の相違に起因するトラブルを防止可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、顧客と請負者との間で建築物の仕様を決定するための建築仕様決定方法であって、
所定の建築仕様を反映した前記建築物のモデルデータを前記請負者側において作成するモデルデータ作成工程と、
前記モデルデータ作成工程において作成されたモデルデータに基づいて、前記請負者側において、所定の操作を加えることで動かすことが可能で前記建築仕様を反映した前記建築物の画像を含む可動画像を作成する可動画像作成工程と、
前記可動画像作成工程において作成された可動画像を前記請負者が前記顧客に提供する可動画像提供工程と、
前記顧客からの前記建築仕様の修正依頼の情報または承認の情報を含む仕様確認情報を前記請負者側において受領する仕様確認情報受領工程と、
を有することを特徴とする、建築仕様決定方法である。
【0010】
すなわち、本発明においては、建築会社、建築士事務所等の請負者側において、所定の建築仕様を反映した形でモデルデータを作成する。そして、このモデルデータに基づいてさらに可動画像を作成する。この可動画像は、所定の操作を加えることで動かすことが可能な画像である。ここで画像を動かすとは、例えば、建築物の内部を移動しているかのように画像を変化させる制御であってもよい。そして、本発明においては、この可動画像を顧客に提供して、顧客において建築仕様を確認可能とする。これにより、顧客は、提供された可動画像を操作することで、例えば、建築物の各場所に移動するように画像を動かして各場所おける仕様をゲーム感覚で確認することが可能となる。
【0011】
そして、顧客は、提供された可動画像に表示された仕様に対し、修正依頼をするかまたは承認する。そして、顧客から仕様の修正依頼があった場合には、請負者は再度、モデルデータ作成工程、可動画像作成工程及び可動画像提供工程を実行することで、建築仕様を修正した新たな可能画像を顧客に提供する。そして、顧客が可動画像に表示された建築仕様を承認するまで、これらの工程が繰り返し実行される。
【0012】
これにより、顧客は、好きな時間及び場所で、より楽しく、自分が納得できるまで建築仕様の確認をすることができる。その結果、建築仕様決定までの時間的・工数的な効率を高めて、コスト低減することが可能となる。また、顧客は、実使用により近い状態で建築仕様を確認できるため、顧客側と請負者側の建築仕様に対する認識の相違によるトラブルの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記可動画像作成工程においては、前記モデルデータ作成工程において作成されたモデルデータを、ゲームエンジンプログラムである可動画像作成手段に適用することで、前記可動画像を作成するようにしてもよい。ここで、可動画像作成手段として所謂ゲームエンジンプログラムを使用することで、より容易に、より鮮明で高画質の可動画像を作成することが可能となる。また、可動画像の動かし方についてもより高度な動かし方とすることが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、前記所定の建築仕様は、前記顧客から予め提供された前記顧客の希望する仕様を含む顧客希望仕様であることとしてもよい。これによれば、先ずは、顧客からの希望仕様を請負者側に伝え、最初から顧客の希望仕様を反映した可動画像を顧客に提供することができ、仕様決定までの時間的・工数的な効率をさらに高めることが可能である。
【0015】
また、本発明においては、前記可動画像作成工程において作成された可動画像を再生し前記所定の操作を加えることが可能な端末を前記顧客に提供する端末提供工程をさらに有するようにしてもよい。これによれば、可動画像を再生し操作するための端末を保有しない顧客についても、例えば端末を貸与することで、顧客が建築仕様を確認することが可能となる。ここで、顧客に提供する端末とはタブレット端末やスマートフォン、あるいは専用端末であってもよい。
【0016】
また、本発明においては、前記建築仕様は前記建築物の間取りを含み、前記可動画像は、一人称視点の画像と三人称視点の画像を切換え可能であり、前記建築物における各場所に視点を移動して前記建築物の内部を表示可能としてもよい。これによれば、顧客は仕様確認時に、住人の目線で、あるいは、住人の存在を含めた目線で、建築仕様を確認することができる。さらに、住人が建築物の内部を移動する間隔で、建築仕様を確認することができる。
【0017】
また、本発明においては、前記可動画像提供工程において前記顧客に提供された可動画像は、該可動画像に反映された前記建築仕様を前記顧客により変更可能に作成されており、
前記仕様確認情報に含まれる前記顧客からの前記建築仕様の修正依頼の情報は、前記顧客により前記建築仕様が変更された前記可動画像を含むようにしてもよい。
【0018】
すなわち、この場合には、顧客が請負者に仕様の変更依頼をする場合に、直接に可動画像を修正することで、明確に変更内容を伝達することが可能である。また、変更後の内容を確実に確認した上で、変更依頼することが可能である。これにより、顧客と請負者の間の仕様の変更に対する認識の相違によるトラブルや、顧客による仕様変更後の結果に対する誤認識によるトラブルの発生を抑制できる。
【0019】
また、この場合においては、前記可動画像は、前記建築物における各場所に視点を移動して前記建築物の内部を表示可能であり、
前記建築物の各場所における前記建築物の内部の画像が表示される際には、当該場所における間取り以外の仕様の選択用のタブが表示され、
前記顧客は、前記タブを選択することで前記建築仕様を変更可能としてもよい。
【0020】
これによれば、顧客は、可動画像を見ながら仕様を変更した場合には、画像に表示されたタブを選択することで、より簡単に仕様変更後の画像を確認することができる。
【0021】
また、本発明においては、前記可能画像は、所定のゲーム操作を加えることによってゲームとして機能するようにしてもよい。これによれば、顧客は、可動画像の閲覧時において、ただ建築物の中を移動するだけでなく、様々なゲームを楽しむことが可能となり、より楽しく、建築仕様の確認をすることができる。また、その時点における建築仕様に係る建築物の使い勝手をゲーム中で確認することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、上記のいずれかの建築仕様決定方法により建築仕様を決定し、
前記顧客から前記請負者への見積り依頼の情報または、前記請負者から前記顧客への見積り情報の伝達は、前記顧客と前記請負者とが有する端末間の通信によって実行可能とする、建築営業方法であってもよい。
【0023】
すなわち、上記の建築仕様決定方法により、より簡単・確実に仕様を決定可能とするとともに、顧客からの見積もり依頼や、見積もり業務自体を端末間で行うことで、建築営業全般の効率を高めることが可能となる。また、顧客は請負者と直接顔を合わせて打ち合わせる必要がなくなるため、請負者に業務の打診を行う際の心理的な障壁を低下させること
が可能となる。
【0024】
なお、上記の手段は、可能な限り互いに組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、建築物の建造またはリフォームに関わるコストを低減可能であるとともに、仕様に関する顧客と請負者との認識の相違に起因するトラブルを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例に係る建築仕様決定方法のフロー図である。
【
図2】本発明の実施例に係る建築仕様決定方法を実現するためのシステム構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施例に係る建築仕様決定方法におけるデータフローを示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係る端末の表示画面の第一の例である。
【
図5】本発明の実施例に係る端末の表示画面の第二の例である。
【
図6】本発明の実施例に係る端末の表示画面の第三の例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0028】
<実施例1>
図1には、本実施例において建築仕様を決定する方法のフローについて示す。本フローにおいては、先ずステップS1において、例えば建築物の施主である顧客から、建設会社、建築事務所等の請負者に設計依頼がある。本実施例では、この設計依頼はWEBサイト、SNSを介して行うことが可能となっている(もちろん、電話、電子メールによる設計依頼も可能である。)。請負者はステップS3においてこの依頼に対して受任処理を行う。次に、請負者は、ステップS5の処理において、必要であれば顧客に携帯端末を貸し出す。この携帯端末は所謂タブレット端末でもよいし、スマートフォンであってもよい。ステップS5の工程は本実施例において端末提供工程に相当する。また、ステップS7において顧客から建築物の希望仕様が連絡される。この希望仕様については、ステップS5で貸し出された携帯端末を用いて連絡されてもよい。また、ステップS1において設計依頼をする際に同時に行っても構わない。この希望仕様は、本実施例において顧客希望仕様に相当する。
【0029】
そして、請負者はステップS9において、ステップS7で顧客から連絡のあった希望仕様を織り込んだアプリケーション(以下、単にアプリともいう。)を作成する。このアプリは、所謂ゲームエンジンソフトを用いて作成されるアプリで、機能としては、(a)建築物の構造、壁面・床面等のデザイン、設備が再現されている。(b)建築物の外側及び内側をウォークスルーで、あるいは移動先を選択することで移動可能となっている。(c)建築物の各場所(各部屋)において、壁面・床面等のデザイン、設備を変更して視覚的に確認可能となっている。その他、(d)建築物を舞台として簡単なゲーム機能を有していてもよい。このステップS9の工程は本実施例におけるモデルデータ作成工程及び可動画像作成工程に相当する。
【0030】
ステップS9で作成されたアプリは顧客に送付される。このアプリの送付は、電子メールに添付して送付する方法で行われても良いし、オンラインデータストレージにアップロードし、URLとパスワードを電子メールで送付する方法で行われても良い。顧客におけ
る端末によっては、アプリを格納した光ディスク等を郵送等する方法でも構わない。この工程は本実施例における可動画像提供工程に相当する。次に、ステップS11において顧客によってアプリがダウンロード及び実行され、アプリ内の建築物の仕様の確認がなされる。
【0031】
そして、顧客は、アプリ内の建築物の仕様に対して変更希望がある場合には、請負者に仕様の修正依頼をする。実際には、アプリの実行中に仕様変更した後のアプリを保存して返送しても構わないし、変更箇所のみを電子メールやラインなどの通信手段を用いて連絡しても構わない。この工程は本実施例において仕様確認情報受領工程に相当する。そして、顧客から仕様の修正依頼があった場合には、ステップS13において請負者によるアプリのデータ修正が行われ、修正後のアプリが再度顧客に送付され、再度ステップS11において顧客によってアプリがダウンロード及び実行され、アプリ内の建築物の仕様の確認がなされる。ここでは、ステップS11において顧客がアプリ内で表示される仕様を承認するまで、ステップS11の処理と、ステップS13の処理が繰り返し行われる。
【0032】
そして、ステップS11のアプリ確認において顧客によって建築仕様が承認された場合には、その旨が請負者に連絡され、ステップS15において、請負者が承認されたアプリにおける建築仕様の内容を確認する。次に、ステップS17において、承認された建築仕様に基づく見積りの作成が行われ、顧客に連絡される。
【0033】
以上、説明したように、本実施例における建築仕様決定のフローでは、顧客は請負者と直接会って打ち合わせをする必要はなく、基本的にデータのやり取りのみで建築仕様を決定することが可能である。よって、建築仕様決定に係る時間的、費用的なコストを低減することができる。また、顧客は請負者に面と向かって伝え難い内容を充分に仕様に反映させることが可能となる。さらに、本実施例では、建築仕様は、ゲームエンジンプログラムを用いて作成したアプリケーションを顧客がダウンロード・実行することで確認される。よって、顧客はゲーム感覚で、正確にシミュレートされた建築物の内部を移動して、間取りの他、壁面や床面、扉や設備の仕様を確認することが可能である。これにより、請負者としては展示場(モデルハウス)等の施設が不要となり、内見会の手間やコストを省略することが可能である。また、本実施例では、必要に応じ、請負者から顧客に携帯端末が貸与されるので、ネット環境が整っていない顧客であっても、容易にアプリによる仕様確認を行うことが可能となる。
【0034】
次に、
図2には、本実施例における建築仕様決定方法を実施する際に使用する各装置のハードウェア構成を示す。
図2においては、請負者側のサーバー5及び、顧客側の携帯端末7のハードウェア構成が示されている。
【0035】
請負者側に設置されるサーバー5は、CPU51、RAM52、ROM53、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置54、及びゲートウェイ等を介してインターネットNに接続される通信部55を備えるコンピュータである。CPU51は、中央処理装置であり、RAM52等に展開された命令及びデータを処理することで、RAM52、補助記憶装置54等を制御する。RAM52は、主記憶装置であり、CPU51によって制御され、各種命令やデータが書き込まれ、読み出される。補助記憶装置54は、不揮発性の記憶装置であり、各種プログラム、永続的な保存が求められるデータ等が記憶される。
図2では、サーバー5は1台のコンピュータで例示されているが、サーバー5は、例えば、ネットワークで接続された複数台のコンピュータにより構成されてもよい。
【0036】
一方、貸与等されて顧客側に設置される携帯端末7は、CPU(Central Pr
ocessing Unit)71、RAM(Random Access Memory
)72、ROM(Read Only Memory)73、SSD(Solid Sta
te Drive)等の補助記憶装置74、インターネットNに接続される通信部75、
タッチパネル等の操作部76、ディスプレイ等の表示部77を備えたタブレット端末やスマートフォン等である。なお、通信部75は、例えば、無線LANのアクセスポイント等を介してインターネットNに接続されるNIC(Network interface controller)の他、LTE(Long Term Evolution)等の携帯電話通信網を介してインターネットNと接続されてもよい。
図2に示すように、本発明のハードウェア構成は、顧客毎に保有または貸与された複数台の携帯端末7を含んでいる。
【0037】
図3は、本実施例の建築仕様に係る情報の処理についてより詳細に説明するための図である。図に示すように、本実施例では、まず、ステップS100において、請負者によって、その時点の建築仕様を反映した建築物のモデルデータが作成される。このモデルデータは、例えば、(例えばブレンダー等に代表される)3Dグラフィックスソフトを用いて作成される。また、壁や床の模様等のデータについてはさらに、画像処理ソフト(PHOTOSHOP(登録商標)や、イラストレーター(登録商標)等でもよい。)を用いて作成されてもよい。このステップS100の工程は、本実施例においてモデルデータ作成工程に相当する。
【0038】
次に、ステップS101において、上述のように請負者がゲームエンジンソフトを用いて、建築物の3D画像を表示および操作可能なアプリを開発する。このゲームエンジンソフトは上述のサーバー5に格納されていてもよいが、他のコンピュータに格納されていてもよい。ゲームエンジンソフト(例えば、UNREAL ENGINE(登録商標)、U
nity、CryENGINE(登録商標)等でもよい。)によって、建築物の3D画像を顧客がゲーム感覚で動かせるアプリケーションプログラムを作成する。ステップS101の工程は本実施例において可動画像作成工程に相当する。また、
図3において、アプリ作成ツール10は、3Dグラフィックスソフト、画像処理ソフトとゲームエンジンソフトを合わせたツールを指し、ゲームエンジンソフトは可動画像作成手段に相当する。また、
図1におけるステップS9は、
図3におけるステップS100とステップS101の工程を合わせた工程に相当すると言える。
【0039】
そして、
図3に示すように、作成したアプリを、ステップS103において、オンラインデータストレージ20にアップロードする。その際のファイル形式は、例えばAPKファイル等であってもよい。このオンラインデータストレージ20は、例えば、GoogleDriveや、Dropbox(登録商標)のようなものでもよい。そして、ステップS105では、オンラインデータストレージ20においてこのアプリデータが保存・管理される。そして、オンラインデータストレージ20から、顧客が保有しまたは顧客に貸与されたタブレット端末30に対して、ステップS107において、オンラインデータストレージ20にアクセスするための共有URLとパスワードが電子メールにて送信される。
図3において、S103、S105及びS107の工程は、本実施例における可動画像提供工程に相当する。
【0040】
タブレット端末30においては、顧客がステップS109においてメールを受信し、オンラインデータストレージ20にアクセスして、アプリをインストールする。さらに、ステップS113において顧客がアプリを起動し操作することで、建築仕様の内容を確認する。顧客が建築仕様を確認して、当該仕様に修正が必要と判断した場合には、ステップS115において修正・要望等の情報を請負者に送信する。このステップS115の工程は本実施例において仕様確認情報受領工程に相当する。請負者側においては、ステップS117において、建築仕様に関わるデータの修正が行われる。
【0041】
その後、ステップS100に戻り、モデルデータが再度作成され、さらにステップS101においてゲームエンジンソフトを用いてアプリが再度作成される。そして、ステップ
S121で更新アプリファイルが、オンラインデータストレージ20にアップロードされ、ステップS123で、オンラインデータストレージ20にアクセスするための共有URLとパスワードが再度、電子メールにて送信される。そして、ステップS113において、顧客がアプリを起動し建築仕様の内容を確認した際に、建築仕様の修正の必要が無くなり、顧客により建築仕様承認されるまで、このフローが継続される。
【0042】
図4は、本実施例におけるアプリを起動した際に見られる画像80の一例である。
図4においては、顧客が希望した建築仕様が反映された建築物81の外観を視認することが可能になっている。また、画面左上には、外壁の仕様を選択可能なタブ82が表示され、顧客がタブ82のうち、気に入った外壁のデザインを選択することで、建築物81の外壁の表示を変更することが可能となっている。また、当該アプリでは、視点を一人称視点と三人称視点で選択可能である。
【0043】
この画像80では三人称視点が選択されており、顧客を想定したキャラクター83が表示されている。そして、当該アプリではこのキャラクター83は歩行可能であり、例えば、顧客の操作に基づいて建築物81の内部を部屋毎に移動することが可能である。画像80の右上には、キャラクター83が建築物81の何れの場所に居るかを表示するウィンドウ84が設けられている。また、画面の下部には、移動先を選択可能なラジオボタン85が表示されており、これを適切に選択することで、目的とする移動先にキャラクター83を移動させることも可能である。
【0044】
次に、
図5は、建築物における一つの移動先の部屋91に移動した場合の画像90を示している。このように、顧客は建築物における各部屋の内装、設備(照明、家具、ファブリックを含む)などを確認することができる。また、
図5の画面左上には、床色の仕様を選択可能なタブ92が表示され、顧客がタブ92のうち、気に入った床色のデザインを選択することで、部屋91の床の表示を変更することが可能となっている。なお、
図4、
図5においてタブ82、92で選択可能な外壁や床色のデザインでは、経年変化した後のものを選択、確認できるようにしてもよい。
図6には、
図5と同じ部屋91に関して、視点を一人称視点に変更した場合の画像95を示す。
【0045】
なお、上記の実施例においては、可動画像としてのアプリを作成する場合に、3Dグラフィックスソフト、画像処理ソフトとゲームエンジンソフトを用いて作成したが、建築仕様を反映した可動画像が作成できるツールであれば、他のツールを用いてアプリを作成しても構わない。
【符号の説明】
【0046】
5・・・サーバー
7・・・携帯端末
10・・・アプリ作成ツール
20・・・オンラインデータストレージ
30・・・タブレット端末
80、90、95・・・画像
81・・・建築物画像