(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】センサおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20230821BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20230821BHJP
G04C 10/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G01D21/00 M
G04G19/00 A
G04C10/02 A
(21)【出願番号】P 2022501940
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005967
(87)【国際公開番号】W WO2021166966
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2020026631
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】福井 篤
(72)【発明者】
【氏名】清水 智之
(72)【発明者】
【氏名】京田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】吉江 智寿
(72)【発明者】
【氏名】菅田 唯仁
(72)【発明者】
【氏名】荒川 豊
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 大介
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-4664(JP,A)
【文献】特開平7-22639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G04C 1/00-99/00
G01D 1/00-21/02
H01L 21/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーハーベスティングシステムに用いられるセンサであって、
第1太陽電池モジュールと、
上記第1太陽電池モジュールに接続された第2太陽電池モジュールと、
上記第1太陽電池モジュールおよび上記第2太陽電池モジュールの一方と並列に接続されており、かつ、他方と直列に接続されている抵抗と、を備えており、
上記第1太陽電池モジュールと上記第2太陽電池モジュールとは、同一照度の環境下において、互いに異なる電流電圧特性を有しており、
上記センサは、
上記第1太陽電池モジュールの電圧である第1電圧を測定する第1電圧計と、
上記第2太陽電池モジュールの電圧である第2電圧を測定する第2電圧計と、
上記第1太陽電池モジュールおよび上記第2太陽電池モジュールによって発電された電力が供給される負荷と、をさらに備えている、センサ。
【請求項2】
上記負荷は、記憶部を有しており、
上記記憶部は、
上記第1電圧計によって測定された上記第1電圧の時系列データと、
上記第2電圧計によって測定された上記第2電圧の時系列データと、を記憶する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
上記第1太陽電池モジュールの最大出力電力をP1maxと称し、
上記第2太陽電池モジュールの最大出力電力をP2maxと称し、
照度200lxの場合に、
P1max>P2max
であり、
上記抵抗は、
上記第1太陽電池モジュールと並列に接続されており、かつ、
上記第2太陽電池モジュールと直列に接続されている、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
上記第1電圧計は、第1時間周期毎に上記第1電圧を測定し、
上記第2電圧計は、第2時間周期毎に上記第2電圧を測定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項5】
上記第1時間周期は、上記第2時間周期と等しい、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
上記センサは、加速度センサをさらに備えており、
上記加速度センサが、所定の量以上の加速度の変化を検知したタイミングにおいて、
上記第1電圧計が上記第1電圧を測定し、
上記第2電圧計が上記第2電圧を測定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項7】
上記第1太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、上記第1太陽電池モジュールの電流をIp1maxと称し、
上記第2太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、上記第2太陽電池モジュールの電流をIp2maxと称し、
照度200lxの場合に、
0.1μA<|Ip1max-Ip2max|<500μA
である、請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
上記第1太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、上記第1電圧をVp1maxと称し、
上記第2太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、上記第2電圧をVp2maxと称し、
照度200lxの場合に、
0.01V<|Vp1max-Vp2max|<3V
である、請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項9】
上記第1太陽電池モジュールの最大出力電力をP1maxと称し、
上記第2太陽電池モジュールの最大出力電力をP2maxと称し、
照度200lxの場合に、
50μW<P1max<500μW
かつ、
50μW<P2max<500μW
である、請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項10】
上記第1太陽電池モジュールの最大出力電力をP1maxと称し、
上記第2太陽電池モジュールの最大出力電力をP2maxと称し、
照度200lxおよび照度500lxのいずれの場合においても、
P1max>P2max
である、請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項11】
200lx以上かつ500lx以下の全ての照度において、
P1max>P2max
である、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のセンサを備えている、電子機器。
【請求項13】
上記第1電圧計によって測定された上記第1電圧と、
上記第2電圧計によって測定された上記第2電圧と、を解析することにより、上記電子機器の測位を行う、請求項12に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一態様は、エネルギーハーベスティングシステムに用いられるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池を有する携帯型電子機器を小型化するための技術が開示されている。特許文献1には、上記携帯型電子機器の一例として、腕時計型の機器(すなわち、ウェアラブルデバイスとしてのスマートウォッチ)が開示されている。上記携帯型電子機器は、GPS(Global Positioning System)機能による測位(GPS測位)を行うことができる。
【0003】
但し、従来の電子機器(例:特許文献1の携帯型電子機器)では、GPS衛星からの信号(GPS信号)を適切に受信できない場合、GPS測位を行うことはできない。例えば、スマートウォッチを装着しているユーザが建造物の内部に位置している場合、GPS信号が当該建造物の外壁によって遮蔽されてしまう場合が考えられる。このような場合、電子機器は、GPS測位を行うことはできない。
【0004】
GPS測位についての上述の問題点に対処すべく、非特許文献1では、エネルギーハーベスティングシステム用のセンサが提案されている。非特許文献1のセンサは、EHAAS(Energy Harvesters As A Sensor,センサとしてのエネルギーハーベスタ)と称されている。非特許文献1のセンサでは、複数の発電素子(例:太陽電池モジュール)のそれぞれによって発電された電力(より詳細には、電圧)が測定される。そして、各電圧の環境依存性に基づき、測位のための計算が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国公開特許公報「特開2019-32221号公報」
【非特許文献】
【0006】
【文献】“EHAAS:Energy Harvesters As A Sensor for Place Recognition on Wearables”,Yoshinori Umetsu et al,IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications (PerCom 2019).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
但し、後述するように、エネルギーハーベスティングシステムに用いられるセンサ内の太陽電池モジュールの周辺の回路構成には、なお改善の余地がある。本開示の一態様は、上記センサにおいて、太陽電池モジュールによって発電された電力をより効果的に利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るセンサは、エネルギーハーベスティングシステムに用いられるセンサであって、第1太陽電池モジュールと、上記第1太陽電池モジュールに接続された第2太陽電池モジュールと、上記第1太陽電池モジュールおよび上記第2太陽電池モジュールの一方と並列に接続されており、かつ、他方と直列に接続されている抵抗と、を備えており、上記第1太陽電池モジュールと上記第2太陽電池モジュールとは、同一照度の環境下において、互いに異なる電流電圧特性を有しており、上記センサは、上記第1太陽電池モジュールの電圧である第1電圧を測定する第1電圧計と、上記第2太陽電池モジュールの電圧である第2電圧を測定する第2電圧計と、上記第1太陽電池モジュールおよび上記第2太陽電池モジュールによって発電された電力が供給される負荷と、をさらに備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係るセンサによれば、太陽電池モジュールによって発電された電力をより効果的に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1のセンサの概要を示す斜視図である。
【
図3】第1太陽電池モジュールおよび第2太陽電池モジュールのそれぞれのI-V曲線の一例を示すグラフである。
【
図4】様々な照度における第1太陽電池モジュールおよび第2太陽電池モジュールの電流電圧特性の一例を示す表である。
【
図5】比較例1におけるセンサの回路構成を示す図である。
【
図6】比較例2におけるセンサの回路構成を示す図である。
【
図7】比較例3におけるセンサの回路構成を示す図である。
【
図8】実施形態2のセンサの回路構成を示す図である。
【
図9】実施形態3のセンサの回路構成を示す図である。
【
図10】実施形態4のスマートウォッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、実施形態1のセンサ100について説明する。便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、以降の各実施形態では、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。公知技術と同様の事項についても、説明を適宜省略する。各図に示されている装置構成および回路構成は、説明の便宜上のための単なる一例である。従って、各部材の位置関係は、各図の例に限定されない。さらに、明細書中において以下に述べる各数値も、単なる一例である。本明細書では、2つの数AおよびBについての「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味する。また、本明細書では、特に明示されない限り、「接続されている」は、「電気的に接続されている」を意味する。
【0012】
(センサ100の構成)
図1は、センサ100の概要を示す斜視図である。センサ100は、エネルギーハーベスティングシステムに用いられるセンサ(EHAAS)の一例である。後述の実施形態4にて述べる通り、センサ100は、例えばスマートウォッチに内蔵されてよい。センサ100は、太陽電池モジュール群10と筐体11とを備える。
【0013】
本開示の一態様に係る太陽電池モジュール群は、複数の(2つ以上の)太陽電池モジュールによって構成されている。当該太陽電池モジュール群に含まれる各太陽電池モジュールは、互いに接続されている(後述の実施形態3も参照)。実施形態1では、2つの太陽電池モジュール(第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1b)によって、太陽電池モジュール群10が構成されている。本開示の一態様に係る太陽電池モジュールは、発電素子の一例である。当該発電素子は、より具体的には、エネルギーハーベスティング発電素子と称されてもよい。
【0014】
筐体11は、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bを収容する部材である。第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bはそれぞれ、自身の受光面が露出されるように、筐体11の表面に配されている。
図1では、カード型の筐体11が例示されている。但し、筐体11の形状は、
図1の例に限定されない。
【0015】
図2は、センサ100の回路構成を示す図である。
図2に示されるように、センサ100は、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bに加え、抵抗3(第1抵抗)と、第1電圧計4aと、第2電圧計4bと、負荷6と、第1ダイオード7aと、第2ダイオード7bと、蓄電素子8と、をさらに備える。
図2の例では、負荷6は、記憶部61およびタイマ62を有する。
図2では、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bは、電流源の回路記号によって示されている。
【0016】
センサ100では、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bは、互いに並列に接続されている。以下の説明では、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bのそれぞれの電圧(出力電圧)を、V1およびV2と称する。V1およびV2はそれぞれ、第1電圧および第2電圧と称されてもよい。本明細書では、V1およびV2を総称的に、Vとも称する。
【0017】
同様に、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bのそれぞれの電流(出力電流)を、I1およびI2と称する。I1およびI2はそれぞれ、第1電流および第2電流と称されてもよい。本明細書では、I1およびI2を総称的に、Iとも称する。また、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bのそれぞれの出力電力(以下、単に「電力」とも称する)を、P1およびP2と称する。P1およびP2はそれぞれ、第1出力電力および第2出力電力と称されてもよい。本明細書では、P1およびP2を総称的に、Pとも称する。Pは、P=V×Iとして表される。
【0018】
第1電圧計4aは、第1太陽電池モジュール1aと並列に接続されている。実施形態1の例では、第1電圧計4aは、第1時間周期毎に、V1を測定する。第2電圧計4bは、第1電圧計4aと対になる電圧計である。第2電圧計4bは、第2太陽電池モジュール1bと並列に接続されている。第2電圧計4bは、第2時間周期毎に、V2を測定する。
図2の例では、第1電圧計4aは、第1時間周期毎に、V1の測定値を負荷6(より具体的には、記憶部61)に供給する。同様に、第2電圧計4bは、第2時間周期毎に、V2の測定値を負荷6に供給する。第1時間周期および第2時間周期は、それぞれ任意の時間間隔(時間周期)として設定されてよく、特に限定されない。一例として、第1時間周期および第2時間周期はそれぞれ、0.01msec(ミリ秒)~3h(時間)の、任意の時間間隔として設定されてよい。第1時間周期は、第2時間周期と等しい時間周期であってもよい。あるいは、第1時間周期は、第2時間周期とは異なる時間周期であってもよい。
【0019】
但し、第1電圧計4aおよび第2電圧計4bはそれぞれ、必ずしも一定の時間周期毎にV1およびV2を測定しなくともよい。例えば、負荷6が加速度センサを有している場合を考える。この場合、加速度センサが、所定の量以上の加速度の変化を検知したタイミングにおいて、第1電圧計4aがV1を測定し、第2電圧計4bがV2を測定してもよい。なお、加速度センサは、必ずしも負荷6に設けられなくともよい。センサ100が加速度センサを有していればよい。
【0020】
抵抗3は、(i)第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの一方と並列に接続されているとともに、かつ、(ii)他方と直列に接続されるように、設けられていればよい。抵抗3を設けることにより、V1とV2とが異なる値として出力される。
図2の例では、抵抗3は、第1太陽電池モジュール1aと並列に接続されており、かつ、第2太陽電池モジュール1bと直列に接続されている。抵抗3の抵抗値は、330Ω~50kΩである。
【0021】
第1ダイオード7aは、第1太陽電池モジュール1aと直列に接続されている。第1ダイオード7aは、第1太陽電池モジュール1aの逆電流防止のために設けられている。第2ダイオード7bは、第2太陽電池モジュール1bと直列に接続されている。第2ダイオード7bは、第2太陽電池モジュール1bの逆電流防止のために設けられている。
【0022】
負荷6および蓄電素子8は、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1b(すなわち、太陽電池モジュール群10)と互いに並列に接続されている。このため、負荷6および蓄電素子8のそれぞれには、太陽電池モジュール群10から電力が供給される。蓄電素子8は、太陽電池モジュール群10から供給された電力を蓄電する。
図2の例では、蓄電素子8は、キャパシタである。
【0023】
負荷6は、太陽電池モジュール群10から供給された電力を消費する。負荷6は、当該電力によって駆動される任意のデバイスであってよい。一例として、負荷6は、センサ100の各部を制御するマイクロコンピュータ(マイコン)であってよい。記憶部61およびタイマ62はそれぞれ、負荷6の一例として理解されてよい。
図2の例において、記憶部61は、(i)第1電圧計4aから供給されたV1の測定値と、(ii)第2電圧計4bから供給されたV2の測定値と、を記憶する。
【0024】
タイマ62は、マイコンのリアルタイムクロック機能によって実現されてよい。一例として、タイマ62は、(i)第1電圧計4aによってV1の測定値が測定された時刻(第1時刻)と、(ii)第2電圧計4bによってV2の測定値が測定された時刻(第2時刻)と、を計時する。この場合、記憶部61は、タイマ62によって経時された第1時刻と第2時刻とをさらに記憶してもよい。このように、記憶部61は、V1の測定値およびV2の測定値のそれぞれの時系列データを記憶できる。
【0025】
なお、タイマ62は、蓄電素子8に蓄電された電力が所定の値を超えた時刻を計時してもよい。この場合、記憶部61に、当該時刻をさらに記憶させてもよい。
【0026】
(各太陽電池モジュールの電流電圧特性の一例)
本開示の一態様に係る太陽電池モジュール群に含まれる各太陽電池モジュールは、同一照度の環境下において、互いに異なる電流電圧特性(I-V特性)を有するように構成されている。各太陽電池モジュールの電流電圧特性を相違させる方法としては、例えば、以下の方法1~3、
(方法1)各太陽電池モジュールを構成する太陽電池の種類を相違させる;
(方法2)上記太陽電池の直列数を相違させる;
(方法3)各太陽電池モジュールの受光面積(より具体的には、有効受光面積)を相違させる;
を挙げることができる。
【0027】
実施形態1における第1太陽電池モジュール1aは、色素増感太陽電池モジュールである。当該色素増感太陽電池モジュールでは、6つの色素増感太陽電池が直列に接続されている。第1太陽電池モジュール1aの受光面積は、30cm2である。他方、実施形態1における第2太陽電池モジュール1bは、a-Si(アモルファスシリコン)太陽電池モジュールである。当該a-Si太陽電池モジュールでは、8つのa-Si太陽電池が直列に接続されている。第2太陽電池モジュール1bの受光面積は、55cm2である。
【0028】
図3は、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bのそれぞれの電流電圧特性曲線(以下、「I-V曲線」とも称する)の一例を示すグラフである。
図3の301は、照度200lxの場合におけるI-V曲線の一例を示すグラフである。
図3の302は、照度500lxの場合におけるI-V曲線の一例を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は電流(I)を示し、縦軸は電圧(V)を示す。
【0029】
Voc1およびVoc2はそれぞれ、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの開放電圧(Voc)を表す。Isc1およびIsc2はそれぞれ、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの短絡電流(Isc)を表す。以下の説明では、第1太陽電池モジュール1aのI-V曲線を、「第1I-V曲線」とも称する。また、第2太陽電池モジュール1bのI-V曲線を、「第2I-V曲線」とも称する。
【0030】
第1I-V曲線上における、VとIとの積の最大値(すなわち、P1の最大値)を、P1maxとして表す。P1maxは、第1最大出力電力とも称される。Vp1maxは、第1I-V曲線の最適動作点(P1maxに対応する点)におけるV1(横軸の値)を示す。Vp1maxは、第1最大出力動作電圧とも称される。また、Ip1maxは、上記最適動作点におけるI1(縦軸の値)を示す。Ip1maxは、第1最大出力動作電流とも称される。
【0031】
同様に、第2I-V曲線上における、VとIとの積の最大値(すなわち、P2の最大値)を、P2maxとして表す。P2maxは、第2最大出力電力とも称される。Vp2maxは、第2I-V曲線の最適動作点におけるV2を示す。Vp2maxは、第2最大出力動作電圧とも称される。また、Ip2maxは、上記最適動作点におけるI2を示す。Ip2maxは、第2最大出力動作電流とも称される。
【0032】
本明細書では、Vp1maxおよびVp2maxを総称的に、Vpmax(最大出力動作電圧)とも称する。また、Ip1maxおよびIp2maxを総称的に、Ipmax(最大出力動作電流)とも称する。また、P1maxおよびP2maxを総称的に、Pmax(最大出力電力)とも称する。上述の通り、Pmax=Vpmax×Ipmaxという関係が成立する。このため、VpmaxおよびIpmaxはそれぞれ、Pmaxに対応するVおよびIと表現されてもよい。
【0033】
図3に示されるように、照度200lxおよび照度500lxのいずれの場合においても、以下の(i)~(iv)、
(i)Voc1>Voc2;
(ii)Vp1max>Vp2max;
(iii)Isc1>Isc2;
(iv)Ip1max>Ip2max;
の関係が成立している。このように、実施形態1における第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bは、同一照度の環境下において、互いに異なる電流電圧特性を有するように構成されている。
【0034】
上述の(i)~(iv)の関係から明らかである通り、
図3の例では、照度200lxおよび照度500lxのいずれの場合においても、P1max>P2maxという関係が成立している(
図3の点線によって示された矩形の面積も参照)。センサ100の設計容易化を考慮すると、各太陽電池モジュールの電流電圧特性の相対的関係は、照度が変更された場合であっても、なるべく同様の関係に維持されることが好ましい。
【0035】
好ましくは、センサ100では、200lx~500lxの任意の照度において、P1max>P2maxという関係が成立する。より好ましくは、センサ100では、200lx~500lxの任意の照度において、上述の(i)~(iv)の関係が成立する。
【0036】
図4は、様々な照度における第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの電流電圧特性の一例を示す表である。
図4には、「50lx、100lx、200lx、300lx、500lx、1000lx、および10000lx」という7通りの照度のそれぞれにおける、第1太陽電池モジュール1aの各特性値(P1max、Vp1max、Ip1max、Isc1、およびVoc1)が示されている。また、
図4には、「50lx、100lx、200lx、300lx、および500lx」という5通りの照度のそれぞれにおける、第2太陽電池モジュール1bの各特性値(P2max、Vp2max、Ip2max、Isc2、およびVoc2)が示されている。
【0037】
図4の各データを踏まえ、本願の発明者ら(以下、「発明者ら」と称する)は、センサ100(より詳細には、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1b)がエネルギーハーベスティングシステム向けであることを考慮し、照度200lxの場合において、以下の式(1)、
0.1μA<|Ip1max-Ip2max|<500μA …(1)
が満たされることが好ましいと結論付けた。
図4の例では、照度200lxの場合において、式(1)の関係が満たされている。
【0038】
さらに、発明者らは、照度200lxの場合において、以下の式(2)、
0.01V<|Vp1max-Vp2max|<3V …(2)
が満たされることが好ましいと結論付けた。
図4の例では、照度200lxの場合において、式(2)の関係が満たされている。
【0039】
さらに、発明者らは、照度200lxの場合において、以下の式(3)~(4)、
50μW<P1max<500μW …(3)
50μW<P2max<500μW …(4)
が満たされることが好ましいと結論付けた。
図4の例では、照度200lxの場合において、式(3)~(4)の関係が満たされている。
【0040】
さらに、発明者らは、照度500lxの場合において、以下の式(5)~(6)、
100μW<P1max<5mW …(5)
100μW<P2max<5mW …(6)
が満たされることが好ましいと結論付けた。
図4の例では、照度500lxの場合において、式(5)~(6)の関係が満たされている。
【0041】
また、発明者らは、本開示の一態様に係る太陽電池モジュール群に含まれる各太陽電池モジュールの受光面積は、0.1cm2~100cm2であることが好ましいと結論付けた。上述の通り、実施形態1では、第1太陽電池モジュール1aの受光面積は30cm2であり、第2太陽電池モジュール1bの受光面積は55cm2である。このように、実施形態1における第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの受光面積はいずれも、上記数値範囲内に含まれている。
【0042】
(比較例)
続いて、センサ100の効果の説明に先立ち、比較例に係るセンサ(EHAAS)について述べる。以下では、3つの比較例(比較例1~3)について述べる。各比較例に係る図(
図5~
図7)では、
図2に示された一部の部材(例:負荷6)の図示が省略されている。なお、各比較例に係るセンサは、センサ100とは異なり、抵抗3を有していない。
【0043】
<比較例1>
図5は、比較例1におけるセンサ100r1の回路構成を示す図である。センサ100r1では、第1サブ回路90aと第2サブ回路90bとが個別に設けられている。第1サブ回路90aは、第1太陽電池モジュール1aと第1電圧計4aと第1蓄電素子8aとによって構成されている。同様に、第2サブ回路90bは、第2太陽電池モジュール1bと第2電圧計4bと第2蓄電素子8bとによって構成されている。
【0044】
このように、比較例1では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが、独立したサブ回路の構成要素として設けられている。すなわち、比較例1では、実施形態1とは異なり、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが、互いに接続されていない。
【0045】
一般的に、エネルギーハーベスティングシステムでは、小型の太陽電池モジュールが使用される。このため、第1太陽電池モジュール1aの出力電力(P1)は、比較的小さい。それゆえ、第1サブ回路90aでは、当該第1サブ回路90a内の負荷6を駆動するための十分な電力を、当該負荷6に供給することはできない。また、第1蓄電素子8aに、負荷6を駆動するための十分な電力を蓄電することもできない。これらの点については、第2サブ回路90bに関しても同様である。
【0046】
ところで、負荷6を駆動するためには、当該負荷6を給電するための付加的な太陽電池モジュール(あるいは、ボタン電池等の付加的な電源)を、センサ100r1に設けることも考えられる。しかしながら、付加的な太陽電池モジュールによって負荷6を駆動するためには、当該付加的な太陽電池モジュールの出力電力をある程度大きく設定する必要がある。すなわち、付加的な太陽電池モジュールの受光面積を、ある程度大きく設定する必要がある。このため、付加的な太陽電池モジュールを設けることは、センサ100r1の大型化を招いてしまう。
【0047】
<比較例2>
図6は、比較例2におけるセンサ100r2の回路構成を示す図である。比較例2は、比較例1の一変形例である。比較例2では、比較例1の第1サブ回路90aと第2サブ回路90bとが直列に接続されている。比較例2によれば、比較例1とは異なり、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの両方から、共通の負荷6に電力を供給できる。しかしながら、比較例2においても、十分な電力(より詳細には、十分な電流)を負荷6に供給することはできない。
【0048】
比較例2では、実施形態1とは異なり、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが、直列に接続されている。このため、比較例2では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとの電流電圧特性の異同によらず、全ての時刻において、I1=I2の関係が成立する。その結果、比較例2では、「負荷6に供給される電流値が、I1およびI2のうち、より小さい電流値によって制限されてしまう」という問題が生じる。それゆえ、負荷6(特に、記憶部61)を駆動するための十分な電流を、当該負荷6に供給することができない。
【0049】
<比較例3>
図7は、比較例3におけるセンサ100r3の回路構成を示す図である。比較例3は、比較例1の別の変形例である。比較例3では、比較例1の第1サブ回路90aと第2サブ回路90bとが並列に接続されている。比較例3によっても、比較例2と同様に、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの両方から、共通の負荷6に電力を供給できる。そして、比較例3では、実施形態1と同様に、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが、並列に接続されている。このため、比較例3では、比較例2の問題を解決することもできる。
【0050】
しかしながら、比較例3では、実施形態1とは異なり、抵抗3が設けられていない。このため、比較例3では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとの電流電圧特性の異同によらず、全ての時刻において、V1=V2の関係が成立する。すなわち、比較例3では、実施形態1とは異なり、ある時刻におけるV1およびV2を異なる値に設定することはできない。
【0051】
このため、比較例3では、「非特許文献1の手法による測位(以下、「電圧ベース測位」と称する)を適用することができない」という問題が生じる。電圧ベース測位では、V1およびV2のそれぞれの時系列データの変化の態様の違いに着目して、測位計算が行われるためである。
【0052】
(センサ100の効果)
センサ100では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが接続されている。このため、比較例1の問題を解決できる。すなわち、センサ100によれば、小型のセンサを実現できる。さらに、センサ100では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが並列接続されている。このため、上述の通り、比較例2の問題を解決することもできる。
【0053】
加えて、センサ100では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとの間に、抵抗3が介在している。このため、センサ100では、比較例3とは異なり、ある時刻におけるV1およびV2を異なる値に設定できる。それゆえ、センサ100では、電圧ベース測位を適用することが可能となる。以上の通り、センサ100によれば、比較例3の問題を解決することもできる。
【0054】
(補足)
非特許文献1では、センサ(EHAAS)に発電素子としての太陽電池を組み込むことが開示されている。1つの太陽電池の出力電力は小さいため、当該出力電力によってEHAAS内の負荷を駆動することは困難である。このため、当業者であれば、負荷を駆動するためには、1つの太陽電池に替えて、同種の太陽電池を直列または並列に接続した太陽電池モジュールを発電素子として用いるという着想を得るであろう(参照:比較例2・3)。
【0055】
これに対し、非特許文献1の技術では、電圧ベース測位を行うために、互いに異なる電流電圧特性を有する複数の太陽電池モジュールによって、個別の回路が設けられている(参照:比較例1)。そして、当該複数の太陽電池モジュールによって発電された電力が、蓄電素子によって蓄電されている。
【0056】
但し、非特許文献1の技術では、各太陽電池モジュールによって発電された電力は、電圧ベース測位を行うためのみに使用されている。加えて、非特許文献1では、蓄電素子によって蓄電された電力によって、負荷を駆動することについても開示されていない。さらに、非特許文献1の技術では、蓄電素子によって蓄電された電力を用いたとしても、消費電力が大きい負荷(例:記憶部を有する負荷)を駆動することはできない。
【0057】
このため、当業者であれば、比較例1において述べた通り、負荷を駆動するために、付加的な太陽電池モジュール(あるいは、付加的な電源)を設けることを試みるであろう。さらに、当業者であれば、負荷により多くの電力を供給するために、センサ内の回路の抵抗値をなるべく小さくしようと試みるであろう。それゆえ、いかに当業者であっても、公知技術に基づいてセンサ100(抵抗3を有するEHAAS)を想到することは、容易でないと言える。当業者であれば、むしろ抵抗3をセンサの構成要素から除外しようと考えることが自然であるためである(比較例1~3を参照)。
【0058】
センサ100によれば、非特許文献1の技術と同様に、電圧ベース測位を適用することができる。それゆえ、特許文献1の技術(GPS測位)に比べ、測位の利便性を向上させることができる。加えて、センサ100によれば、非特許文献1とは異なり、各太陽電池モジュールによって発電された電力を、負荷6に供給することもできる。以上のように、センサ100によれば、太陽電池モジュールによって発電された電力をより効果的に利用できる。
【0059】
〔実施形態2〕
図8は、実施形態2のセンサ200の回路構成を示す図である。センサ200は、センサ100の一変形例である。センサ200における抵抗(第1抵抗)を、抵抗23と称する。また、センサ200における第1ダイオードおよび第2ダイオードをそれぞれ、第1ダイオード27aおよび第2ダイオード27bと称する。
【0060】
センサ200では、センサ100とは異なり、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bは、互いに直列に接続されている。そして、抵抗23は、第1太陽電池モジュール1aと直列に接続されており、かつ、第2太陽電池モジュール1bと並列に接続されている。以上の回路構成を考慮し、第1ダイオード27aおよび第2ダイオード27bは、第1ダイオード7aおよび第2ダイオード7bとは異なる位置に設けられている。
【0061】
センサ200では、第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとの間に、抵抗23が介在している。抵抗23によっても、抵抗3と同様に、ある時刻におけるV1およびV2を異なる値に設定できる。また、センサ200によっても、センサ100と同様に、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bによって発電された電力を、負荷6に供給できる。それゆえ、センサ200によっても、センサ100と同様の効果を奏する。
【0062】
(補足)
センサ100またはセンサ200のいずれを採用するかについては、ある照度における第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bの電流電圧特性に応じて、決定されてよい。以下、この点について説明する。
【0063】
センサ100(第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが並列接続されている構成)において、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bによって発電される出力電力の合計値Pt1は、以下の式(7)、
Pt1=P1max+(P2max-ΔVpmax×Ip2max)…(7)
によって表される。なお、ΔVpmax=Vp1max-Vp2maxである。
【0064】
他方、センサ200(第1太陽電池モジュール1aと第2太陽電池モジュール1bとが直列接続されている構成)において、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bによって発電される出力電力の合計値Pt2は、以下の式(8)、
Pt2=P1max+(P2max-Vp2max×ΔIpmax)…(8)
によって表される。なお、ΔIpmax=Ip1max-Ip2maxである。
【0065】
負荷6をより確実に駆動するためには、第1太陽電池モジュール1aおよび第2太陽電池モジュール1bによって発電される出力電力の合計値を、大きくすることが好ましい。このため、Pt1>Pt2である場合、センサ100を採用することが好ましい。他方、Pt1<Pt2である場合、センサ200を採用することが好ましい。
【0066】
一例として、照度200lxの場合を考える。
図4の各数値を用いて、照度200lxにおけるPt1およびPt2を計算すると、Pt1=556μW、Pt2=358μWである。以上のことから、
図4の例では、照度200lxの場合、センサ100を採用することが好ましいと言える。但し、負荷6の消費電力がそれほど大きくない場合、センサ200を採用してもよい。
【0067】
〔実施形態3〕
図9は、実施形態3のセンサ300の回路構成を示す図である。
図9では、一部の部材(例:負荷6)の図示が省略されている。センサ300は、太陽電池モジュール群30を含んでいる。太陽電池モジュール群30は、n個の太陽電池モジュールによって構成されている。当該n個の太陽電池モジュールは、同一照度の環境下において互いに異なる電流電圧特性を有している。nは、2以上の任意の整数である。なお、
図2のセンサ100の構成は、
図9のセンサ300の構成において、n=2である場合に相当する。
【0068】
図9の例では、nがある程度大きい場合(例:nが4より大きい場合)が例示されている。
図9では、n個の太陽電池モジュールのうち、第1太陽電池モジュール1a~第4太陽電池モジュール1dの4つの太陽電池モジュールが図示されている。センサ300では、n個の太陽電池モジュールはそれぞれ、互いに並列に接続されている。
【0069】
実施形態3では、n個の太陽電池モジュールのうち、k番目に最大出力電力が大きい太陽電池モジュールを、第k太陽電池モジュールと称する。kは、1以上かつn以下の整数である。従って、実施形態3では、第1太陽電池モジュール1aが、n個の太陽電池モジュールのうち、Pmaxが最大の太陽電池モジュールである。実施形態1と同様に、照度200lxの場合、P1max<500μWであることが好ましい。
【0070】
センサ300では、第k太陽電池モジュールと1対1に対応するように、第kダイオードが設けられている。すなわち、第1太陽電池モジュール1a~第n太陽電池モジュール1nという、n個のダイオードが設けられている。
図9では、第1ダイオード37a~第4ダイオード37dの4つのダイオードが図示されている。第kダイオードは、第k太陽電池モジュールと直列に接続されている。
【0071】
センサ300では、第k太陽電池モジュールと1対1に対応するように、第k電圧計が設けられている。すなわち、第1電圧計4a~第n電圧計4nという、n個の電圧計が設けられている。
図9では、第1電圧計4a~第4電圧計4dの4つの電圧計が図示されている。第k電圧計は、第k太陽電池モジュールの電圧Vkを測定できるように、当該第k太陽電池モジュールと並列に接続されている。一例として、第k電圧計は、第k時間周期毎に測定したVkの測定値を、負荷6に供給する。従って、記憶部61は、V1~Vnのそれぞれの時系列データを記憶できる。第1~第n時間周期は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0072】
但し、上述の通り、第k電圧計は、必ずしも一定の時間周期毎にVkを測定しなくともよい。加速度センサが所定の量以上の加速度の変化を検知したタイミングにおいて、第k電圧計がVkを測定してもよい。
【0073】
センサ300では、n個の太陽電池モジュールと対応するように、n-1個の抵抗が設けられている。具体的には、第k太陽電池モジュールに対応する抵抗として、第k-1抵抗が設けられている。
図9では、第1抵抗31~第3抵抗33の3つの抵抗が図示されている。以下では、第k抵抗の抵抗値を、R(k)と称する。
【0074】
第k-1抵抗は、(i)第k太陽電池モジュールに直列に接続されており、かつ、(ii)当該第k太陽電池モジュールを除いたn-1個の太陽電池モジュールのそれぞれと並列に接続されている。例えば、第1抵抗31は、(i)第2太陽電池モジュール1bに直列に接続されており、かつ、(ii)「第2太陽電池モジュール1bを除いたn-1個の太陽電池モジュール(すなわち、第1太陽電池モジュール1aおよび第3太陽電池モジュール1c~第n太陽電池モジュール1n)のそれぞれ」と並列に接続されている。
【0075】
センサ300では、全てのkについて、R(k-1)>R(k)として設定されている。すなわち、R(1)>R(2)>R(3)>…>R(n-1)として、n-1個の抵抗のそれぞれの抵抗値が設定されている。このように、センサ300では、k番目に大きい抵抗値、すなわちR(k)を有する第k抵抗が、第k+1太陽電池モジュールと直列に接続されている。例えば、第1抵抗31(第2太陽電池モジュール1bと直列に接続された抵抗)は、n-1個の抵抗のうち、最大の抵抗値を有している。以上の通りR(1)~R(n-1)を設定することにより、ある時刻におけるV1~Vnのそれぞれを異なる値に設定できる。
【0076】
実施形態3では、第k太陽電池モジュールの最大出力動作電流(第k最大出力動作電流)を、Ip(k)maxと表す。Ip(k)maxとIp(k+1)maxとの間にも、上述の式(1)と同様の関係が満たされることが好ましい。すなわち、照度200lxの場合において、以下の式(9)、
0.1μA<|Ip(k)max-Ip(k+1)max|<500μA …(9)が満たされることが好ましい。
【0077】
また、実施形態3では、第k太陽電池モジュールの最大出力動作電圧(第k最大出力動作電圧)を、Vp(k)maxと表す。Vp(k)maxとVp(k+1)maxとの間にも、上述の式(2)と同様の関係が満たされることが好ましい。すなわち、照度200lxの場合において、以下の式(10)、
0.01V<|Vp(k)max-Vp(k+1)max|<3V …(10)
が満たされることが好ましい。
【0078】
(センサ300の効果)
センサ300によれば、n個の太陽電池モジュールのそれぞれの電圧(V1~Vn)を相違させることができる。加えて、n個の太陽電池モジュールのそれぞれによって発電された電力(P1~Pn)を、負荷6に供給できる。それゆえ、センサ300によっても、センサ100と同様の効果を奏する。
【0079】
さらに、電圧ベース測位の精度は、nが大きいほど(すなわち、太陽電池モジュールの数が多いほど)向上すると期待される。それゆえ、センサ300によれば、より高い測位精度を実現できる。加えて、センサ300によれば、nの増加に伴い、P1~Pnのそれぞれを小さくすることも可能である。すなわち、n個の太陽電池モジュールのそれぞれの受光面積を小さく設定した場合であっても、負荷6を駆動するために十分な電力を発電することができる。このため、nが大きい場合であっても、小型のセンサ300を実現できる。
【0080】
〔実施形態4〕
図10は、実施形態4のスマートウォッチ1000(電子機器)を示す図である。スマートウォッチ1000は、携帯型電子機器の一例である。より具体的には、スマートウォッチ1000は、ユーザの身体に装着可能な情報処理装置(ウェアラブルデバイス)の一例である。但し、本開示の一態様に係る携帯型電子機器は、ウェアラブルデバイスに限定されない。
【0081】
スマートウォッチ1000は、本開示の一態様に係るセンサ(例:センサ100)を備えている。
図10の例では、センサ100は、スマートウォッチ1000の文字盤の下部に配置されている。つまり、センサ100は、スマートウォッチ1000の装着時に、ユーザから見て表面側に配置されている。このようにセンサ100を配置することにより、各太陽電池モジュールに向けて照射される光が、ユーザの身体によって遮光されにくくなる。それゆえ、センサ100の配置は、各太陽電池モジュールによる発電に好適である。
【0082】
スマートウォッチ1000の制御部(不図示)は、記憶部61から、V1およびV2のそれぞれの測定値(好ましくは、V1およびV2のそれぞれの時系列データ)を取得する。そして、制御部は、当該測定値(好ましくは、当該時系列データ)を解析することにより、電圧ベース測位を実行する。すなわち、スマートウォッチ1000は、上記当該測定値を解析することにより、ある時点(ある時刻,例:現在の時刻)における当該スマートウォッチ1000の位置を測位する。
【0083】
なお、負荷6には、必ずしも記憶部61およびタイマ62が設けられていなくともよい。この場合、タイマ62は、スマートウォッチ1000に設けられていればよい。そして、スマートウォッチ1000の制御部は、第1電圧計4aおよび第2電圧計4bから、V1およびV2のそれぞれの測定値を取得すればよい。センサ100には、(i)スマートウォッチ1000の制御部と、(ii)第1電圧計4aおよび第2電圧計4bと、の間の通信のための、任意の通信インターフェースが設けられてよい。
【0084】
〔変形例〕
(1)本開示の一態様に係る電子機器は、必ずしも携帯型電子機器に限定されない。当該電子機器は、据え置き型の電子機器であってもよい。但し、本開示の一態様に係るセンサは、一般的には小型のセンサとして実現される。このため、当該センサは、携帯型電子機器への適用に特に好適である。携帯型電子機器の場合、据え置き型の電子機器に比べ、機器の小型化に対するニーズが高いためである。さらに、携帯型電子機器の方が、据え置き型の電子機器に比べ、電圧ベース測位機能を設けるニーズが高いためである。
【0085】
(2)本開示の一態様において、電圧ベース測位機能は、必ずしもセンサ100を備えた電子機器に設けらなくともよい。センサ100は、例えば、不図示のクラウドサーバと通信可能に接続されていてもよい。この場合、クラウドサーバに電圧ベース測位機能が設けられてもよい。一例として、クラウドサーバは、第1電圧計4aおよび第2電圧計4bから、V1およびV2のそれぞれの測定値を取得する。そして、クラウドサーバは、電圧ベース測位を実行する。続いて、クラウドサーバは、電圧ベース測位によって得られた測位情報(ある時刻におけるセンサ100を示す情報)を、スマートウォッチ1000に供給する。
【0086】
(3)本開示の一態様において、センサ100に電圧ベース測位機能を設けることもできる。一例として、負荷6が比較的高性能なプロセッサを含んでいる場合には、センサ100に電圧ベース測位機能を設けることができる。
【0087】
〔ソフトウェアによる実現例〕
センサ100~300およびスマートウォッチ1000の制御ブロック(特に、負荷6およびスマートウォッチ1000の制御部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0088】
後者の場合、センサ100~300およびスマートウォッチ1000は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の一態様の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0089】
〔付記事項〕
本開示の一態様は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
【0090】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月19日に出願された日本国特許出願:特願2020-026631に対して優先権の利益を主張するものであり、それを参照することにより、その内容の全てが本書に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1a 第1太陽電池モジュール
1b 第2太陽電池モジュール
3、23 抵抗
4a 第1電圧計
4b 第2電圧計
6 負荷
10、30 太陽電池モジュール群
31 第1抵抗(抵抗)
61 記憶部
62 タイマ
100、200、300 センサ
1000 スマートウォッチ(電子機器)
P1max 第1最大出力電力(第1太陽電池モジュールの最大出力電力)
P2max 第2最大出力電力(第2太陽電池モジュールの最大出力電力)
Ip1max 第1最大出力動作電流(第1太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、当該第1太陽電池モジュールの電流)
Ip2max 第2最大出力動作電流(第2太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、当該第2太陽電池モジュールの電流)
Vp1max 第1最大出力動作電圧(第1太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、当該第1太陽電池モジュールの電圧)
Vp2max 第2最大出力動作電圧(第2太陽電池モジュールの最大出力電力が得られる場合における、当該第2太陽電池モジュールの電圧)
V1 第1太陽電池モジュールの電圧(第1電圧)
V2 第2太陽電池モジュールの電圧(第2電圧)