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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】フォトマスク容器
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/66 20120101AFI20230821BHJP
   B65D 85/38 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G03F1/66
B65D85/38 310
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022544017
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030541
(87)【国際公開番号】W WO2022039254
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020140441
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503424336
【氏名又は名称】株式会社 ネットプラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北條 智也
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 智孝
(72)【発明者】
【氏名】前田 健人
(72)【発明者】
【氏名】福井 幹夫
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-91296(JP,A)
【文献】特表2008-531416(JP,A)
【文献】特開2003-140324(JP,A)
【文献】特表2008-522414(JP,A)
【文献】特開2019-210473(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060271(WO,A1)
【文献】特開2017-217866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋体によりフォトマスク基板収納部が形成されてなり、フォトマスク基板収納部にフォトマスク基板を収納した状態で保存、輸送するためのフォトマスク容器であって、容器本体は、メルトフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から略直角方向に設置された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層中空構造体であることを特徴とするフォトマスク容器。
【請求項2】
容器本体は、ブロー成形法により一体的に成形されていることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク容器。
【請求項3】
基部にフォトマスク基板を保持固定するフォトマスク基板保持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスク容器。
【請求項4】
側壁部が中空部を有し、基部の厚さより厚いことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項5】
基部の内壁及び/又は側壁部の内壁がフォトマスク基板収納部側(上方又は内方)に変形され、中空部を有するフォトマスク基板保持部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項6】
蓋体が、メルトフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から略直角方向に設置された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層中空構造体であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項7】
容器本体及び蓋体の少なくとも一方の側壁部の上端部が側方に延設されて把手部が形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項8】
容器本体及び蓋体の少なくとも一方に貫通孔が穿設されると共に該貫通孔にはフィルターが設置されて、ガス抜き部が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項9】
基部に多数条のリブが形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項10】
表面固有抵抗値が10Ω以上、1010Ω未満であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【請求項11】
基部の内壁(フォトマスク基板収納部側)に帯電防止シート又は帯電防止成型体が積層されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項記載のフォトマスク容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク基板を保存、輸送するためのフォトマスク容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイパネル等の表示装置を製造するには、フォトマスク基板をクリ-ンルームを有する工場で作成し、作成されたフォトマスク基板を次工程の工場に輸送して液晶ディスプレイパネル等の表示装置を製造している。
【0003】
液晶ディスプレイパネル等の表示装置は精密機器であり、フォトマスク基板を輸送する際に、表面にゴミ(微細粒子)が付着したり、電気的ダメージなどが原因で基板回路や基板自体に破損があると表示装置を製造することができなくなることがあった。
【0004】
又、フォトマスク基板は、液晶ディスプレイパネル等の表示装置の大画面化や、生産性向上、省力化のために複数の表示装置を一度に焼き付けるために巨大化(大面積化)が要求されており、750×750mm以上の大きさが必要とされている。又、フォトマスク基板の製造から液晶ディスプレイパネル等の表示装置等の最終製品の製造は、グローバル化の影響により、一工場内だけではなく、国内外の遠隔地で行われるため、フォトマスク基板はフォトマスク容器に収納され、トラック、船舶、飛行機等で輸送されている。
【0005】
従って、上記フォトマスク容器は、フォトマスク基板を強固に保持することができ、表面にゴミ(微細粒子)が付着したり、破損することなく輸送することができ、且つ、軽量で機械的強度の優れていることが望まれていた。又、飛行機で空輸する際には、減圧下や低温下で輸送されるので、フォトマスク基板やフォトマスク容器に不要な応力が付加されることがないこと、フォトマスク容器のフォトマスク基板収納部に結露することが抑制されること、クリーン度が優れていること等が望まれている。
【0006】
そのため、輸送に好適なフォトマスク容器が種々提案されている。例えば、「フォトマスク基板を収納した状態で搬送するためのマスクケースであって、前記フォトマスク基板を保持する保持手段と、この保持手段が設けられた基部と、この基部に着脱自在に取り付けられ、前記フォトマスク基板を覆う蓋部とを備えたことを特徴とするマスクケース。」(例えば、特許文献1参照。)、「互いに当接されるシール用周縁部を有する概ね対称構造の本体部と蓋体部とからなり、内部に大型の精密シート状製品または半製品(以下、「精密シート状(半)製品」と総称する)を収容するための容器であって、本体部と蓋体部とはそれぞれ互いに平面的に延在し中間当接部で互いに接合される複数の制電性樹脂板からなり、接合部では外側から金属製補強帯状体を沿わせ接合される樹脂板へと密封性ボルト止めした構造を有し、本体部の底部には、精密シート状(半)製品を、互いに直交するX,YおよびZ方向(すなわち精密シート状(半)製品の縦・横および厚さ方向)に固定・支持可能な固定支持構造を有し、前記固定支持構造が、その上に精密シート状(半)製品を載置するための支承部と、該支承部上に載置された精密シート状(半)製品の端縁部に少なくとも厚さ方向への押圧力を印加する固定支持具との組の、少なくとも1組を有し、固定支持具は、本体部底部に固定された脚部と;該脚部に、支承部上に載置された精密シート状(半)製品の端縁部に少なくともその厚さ方向に押圧力を印加してこれを固定支持する倒立位置と、支承部上に精密シート状(半)製品を載置可能とする転倒開放位置と、の間で回動可能に軸支された可動部と、を有することを特徴とする大型精密シート状(半)製品用密封容器。」(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記フォトマスク容器は、部品点数が多くそれぞれの部品を製造する為の工数がかかることにより、生産効率の向上に限界があることや、品質安定性を維持することに多大な時間を要し、重量が大きく運びにくいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-32915号公報
【文献】特許第-4476727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、軽量で機械的強度が優れており、フォトマスク基板を強固に保持することができ、フォトマスク基板収納部の結露発生が抑制されており、クリーン度が優れており、フォトマスク基板表面にゴミ(微細粒子)が付着しにくく、安全、容易に輸送でき、且つ、製造しやすく、生産効率、品質安定性の高い安価なフォトマスク容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、
[1]容器本体と蓋体によりフォトマスク基板収納部が形成されてなり、フォトマスク基板収納部にフォトマスク基板を収納した状態で保存、輸送するためのフォトマスク容器であって、容器本体は、メルトフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から略直角方向に設置された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層中空構造体であることを特徴とするフォトマスク容器、
[2]容器本体は、ブロー成形法により一体的に成形されていることを特徴とする前記[1]記載のフォトマスク容器、
[3]基部にフォトマスク基板を保持固定するフォトマスク基板保持部が形成されていることを特徴とする前記[1]又は[2]記載のフォトマスク容器、
[4]側壁部が中空部を有し、基部の厚さより厚いことを特徴とする前記[1]~[3]のいずれか1項記載のフォトマスク容器、
[5] 基部の内壁及び/又は側壁部の内壁がフォトマスク基板収納部側(上方又は内方)に変形され、中空部を有するフォトマスク基板保持部が一体的に形成されていることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか1項記載のフォトマスク容器
[6]蓋体が、メルトフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から略直角方向に設置された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層中空構造体であることを特徴とする前記[1]~[5]のいずれか1項記載のフォトマスク容器、
[7]容器本体及び蓋体の少なくとも一方の側壁部の上端部が側方に延設されて把手部が形成されていることを特徴とする前記[1]~[6]のいずれか1項記載のフォトマスク容器、
[8]容器本体及び蓋体の少なくとも一方に貫通孔が穿設されると共に該貫通孔にはフィルターが設置されて、ガス抜き部が形成されていることを特徴とする前記[1]~[7]のいずれか1項記載のフォトマスク容器、
[9]基部に多数条のリブが形成されていることを特徴とする前記[1]~[8]のいずれか1項記載のフォトマスク容器、
[10]表面固有抵抗値が10Ω以上、1010Ω未満であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載のフォトマスク容器、及び、
[11]基部の内壁(フォトマスク基板収納部側)に帯電防止シート又は帯電防止成型体が積層されていることを特徴とする前記[1]~[10]のいずれか1項記載のフォトマスク容器
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフォトマスク容器の構成は上述の通りであり、フォトマスク容器は、製造しやすく、安価であり、軽量で機械的強度が優れており、フォトマスク基板を強固に保持することができ、表面にゴミ(微細粒子)が付着したり、変形したりすることなく保存、輸送することができる。従って、減圧下や低温下で保存・輸送されたとしても、フォトマスク基板やフォトマスク容器に不要な応力が負荷されることがなく、フォトマスク容器のフォトマスク基板収納部の結露が抑制され、クリーン度が優れているので、飛行機で好適に空輸することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のフォトマスク容器の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明のフォトマスク容器の容器本体の一例を示す平面図である。
図3図2におけるA-A断面図である。
図4図2におけるB-B断面図である。
図5】本発明のフォトマスク容器の容器本体の異なる例を示す例を示す平面図である。
図6図5におけるC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフォトマスク容器は、容器本体と蓋体によりフォトマスク基板収納部が形成されてなり、フォトマスク基板収納部にフォトマスク基板を収納した状態で保存、輸送するためのフォトマスク容器であって、容器本体は、メルトフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から略直角方向に設置された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層中空構造体であることを特徴とする。
【0014】
上記容器本体は、ブロー成形法により一体的に成形され、輸送時や保存時に変形や破壊されにくいよう機械的強度が大きいのが好ましいので、高密度ポリエチレン樹脂よりなる。高密度ポリエチレン樹脂は、中低圧法で重合され、密度が0.945~0.965g/cmのポリエチレン樹脂であり、微量のプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等のαーオレフィンが共重合されていてもよい。
【0015】
上記高密度ポリエチレン樹脂はメルトフローレイト(MFR)が小さいほうが、フィルム成形性が優れており、特に、ブロー成形に適しており、且つ、機械的強度においても優れているので、メルトフローレイト(MFR)は0.6(g/10分)以下であり、0.2(g/10分)以下が好ましく、より好ましくは0.01~0.1(g/10分)である。尚、MFRとは、JIS K 7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。
【0016】
又、上記高密度ポリエチレン樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が10万未満の場合には、機械的強度又は耐クリープ性等が低下し、逆に、50万を超えると、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形性が低下し、均一な容器本体が得られにくくなるので10万~50万が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0017】
上記高密度ポリエチレン樹脂に、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ペンテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のオレフィン系樹脂が、機械的強度等の物性が低下しない範囲で少量添加されてもよい。
【0018】
又、上記高密度ポリエチレン樹脂に、必要に応じて、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、難燃剤、着色剤等が添加されてもよい。
【0019】
上記容器本体は高密度ポリエチレン樹脂よりなるので、帯電し易く、ゴミ(微細粒子)を吸着し易い。従って、フォトマスク基板の表面にゴミ(微細粒子)が付着し易く、汚染し易いので、帯電防止剤が添加されているのが好ましく、その表面固有抵抗値は10Ω以上、1010Ω未満であるのが好ましい。
【0020】
帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、有機ホウ素系帯電防止剤等のプラスチックの加工に従来から使用されている帯電防止剤、カーボンブラック等が挙げられる。
【0021】
上記帯電防止剤としては、有機ホウ素系帯電防止剤が好ましく、有機ホウ素系帯電防止剤としては、例えば、一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤が挙げられる。
【化1】
【0022】
式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH、C、CHOH、COH、CHCH(CH)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。
【0023】
一般式(1)で表される帯電防止剤の具体的な例としては、例えば、下記化学式(2)~(12)で表される。
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
上記一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤は、無機充填剤粉末の表面に吸着にさせて粉末状帯電防止剤としてもよい。無機充填剤粉末としては、従来からプラスチック成形体に使用している無機充填剤粉末であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0035】
又、上記帯電防止剤が表面に吸着した無機充填剤粉末を製造する方法は、特に限定されず、例えば、帯電防止剤を溶解した有機溶媒に無機充填剤粉末を供給し、撹拌混合して帯電防止剤を無機充填剤粉末の表面に吸着させた後、有機溶媒を蒸発する方法が挙げられる。
【0036】
上記有機溶媒としては、上記帯電防止剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤の添加量は、高密度ポリエチレン樹脂100重量部に対し、一般に0.01~1.0重量部が好ましい。
【0038】
次に本発明のフォトマスク容器を、図面を参照して説明する。図1は本発明のフォトマスク容器の一例を示す概略断面図である。図中1は容器本体であり、2は蓋体である。容器本体1と蓋体2は共に箱状体であり、容器本体1に蓋体2を被せることによりフォトマスク基板収納部3が形成されている。4,4・・はフォトマスク基板支持固定部であり、容器本体1と蓋体2のフォトマスク基板収納部3側形成されており、容器本体1に蓋体2を被せた際に、容器本体1のフォトマスク基板支持固定部4と蓋体2のフォトマスク基板支持固定部4が対向するように形成されている。尚、5は把手部である。
【0039】
上記フォトマスク容器にフォトマスク基板6を収納、固定するには、例えば、蓋体2の取り外された容器本体1を横置きし、フォトマスク基板6を容器本体1のフォトマスク基板支持固定部4上に載置する。次に、蓋体2をフォトマスク基板収納部3が形成されるように載置すると共に容器本体1のフォトマスク基板支持固定部4と蓋体2のフォトマスク基板支持固定部4によりフォトマスク基板6を挟持し、固定する。最後に、合成樹脂製帯状体、金属製帯状体等の帯状体で結束固定する、又は、パッチン錠、ラチェト・バックル錠等の固定治具等で固定する。
【0040】
上記フォトマスク基板6が収納されたフォトマスク容器1を輸送するにはこのまま横置きで輸送してもよいが、フォトマスク容器1にキャスターを取り付け、キャスターが下側になるよう立ち上げて、フォトマスク基板6が立った状態で輸送してもよい。
【0041】
図2は本発明のフォトマスク容器の容器本体1の一例を示す平面図であり、図3図2におけるA-A断面図であり、図4図2におけるB-B断面図である。図中、1は容器本体であり、略平板状の基部11と、基部11の端部から略直角方向に設置された側壁部12よりなる箱状体である。基部11は内壁111と外壁112よりなり、その間に部分的に中空部113を形成することによりリブ13が設けられている2層中空構造体である。尚、基部11は内壁111と外壁112が密着された2層構造体であってもよい。
【0042】
又、側壁部12は、内壁111と外壁112よりなり、その間に中空部113が形成されている2層中空構造体であり、その厚さは、軽量化及び補強のため基部の厚さより厚くなされている。
【0043】
又、5,5・・は、指を差し込んでフォトマスク容器を移動させるための把手部であり、側壁部12の上端部に複数形成されている。把手部5は、側壁部12の上端部が側方に延設された側縁部に貫通孔が設けられて形成されている。
【0044】
図中、4,4・・は、フォトマスク基板を載置し、支持固定するための、オレフィン系樹脂、ABS樹脂等製の中実柱状体からなるフォトマスク基板支持固定部であり、ボルト41により基部11のフォトマスク基板収納部3側に固定されている。
【0045】
尚、42は、ボルト41と基部11の間に介在し、両者を密に固定するためのパッキンであり、43は、フォトマスク基板支持固定部4の下方内部に固定され、ボルト41を螺合することにより基部11とフォトマスク基板収納部3を固定するためのインサートナットである。上記フォトマスク基板支持固定部4には、従来公知の任意の支持用保持手段、位置決め用保持手段(例えば、特許文献1,2参照)等が併用されてもよい。
【0046】
図中、7は、フォトマスク基板収納部3内部と外部が連通し、内外のガスが移動可能であり、内外の温度、湿度、圧力等同一に保つためのガス抜き部である。ガス抜き部7は、基部11の内壁111と外壁112に段差部72が形成されるように貫通孔71が穿設されており、段差部72に貫通孔71を塞ぐようにフィルター73が積層され、フィルター73はリング状の固定具74により基部11に固定されて形成されている。
【0047】
上記ガス抜き部7が形成されることにより、フォトマスク基板収納部3内部と外部の内外のガスが連通し、フォトマスク基板収納部3内と外部の気圧、湿度及び温度に差がなくなり、飛行機で輸送する際に気圧差により、フォトマスク容器が変形、破壊したり、温度差によりフォトマスク基板収納部3内に結露が発生することが抑止される。
【0048】
図中、8は、フォトマスク基板収納部3内を視察して、収納されているフォトマスク基板6を観察するためののぞき窓部である。のぞき窓部8は、基部11に貫通孔を穿設し、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の透明樹脂板、ガラス板等を嵌入することにより形成されている。
【0049】
図中、9は、容器本体1に蓋体2を被せてフォトマスク基板収納部3を形成した際にフォトマスク基板収納部3を強固に密閉するためのOリングであり、Oリング9は容器本体1の側壁部12の上面に形成された凹溝に嵌め込まれている。Oリング9は、シリコン系ゴム、フッ素ゴム、ウレタン系ゴム、ノルボルネン系ゴム等の弾性樹脂よりなるのが好ましい。
【0050】
図中、13,13・・は、容器本体1を補強するために基部11に設けられたリブである。リブ13は、内壁111と外壁112の間に中空部113を設けることにより形成されている。尚、リブ13は、内壁111又は/及び外壁112を屈曲することにより、中空部113を形成することにより又は中空部113を形成せずに形成されてもよい。又、リブ13は多数条設けられるのが好ましく、側壁部12にも設けられてもよい。
【0051】
図中、14,14・・は、容器本体1に蓋体2を被せ、フォトマスク基板収納部が形成されてなるフォトマスク容器を密閉固定するための固定治具(例えば、パッチン錠、ラチェト・バックル錠等)を設置するための、側壁部12の上端部付近に設けられた切り欠き部である。又、フォトマスク容器を密閉固定するには、合成樹脂や金属製の紐状体、帯状体で結束してもよい。
【0052】
図5は本発明のフォトマスク容器の容器本体の異なる例を示す平面図であり、図6図5におけるC-C断面図である。1は容器本体であり、容器本体1は、ブロー成形により一体的に成形されている、略平板状の基部11と、基部11の端部から略直角方向に設置された側壁部12よりなる箱状体であり、且つ、基部11及び側壁部12は内壁111と外壁112よりなる部分的に中空な2層中空構造体である。
【0053】
図中、12は、基部11の端部から略直角方向に設置された側壁部であり、側壁部12は内壁111と外壁112により内部に中空部113が形成されている中空2層構造体である。側壁部12は中空2層構造体なので、基部11の厚さより厚くなされており、側壁部12の上面には凹溝が形成され、凹溝にはOリング9が嵌め込まれている。
【0054】
図中、4,4・・は、フォトマスク基板を載置し、支持固定するための、フォトマスク基板支持固定部である。フォトマスク基板支持固定部4は、基部11の内壁111及び/又は側壁部12の内壁111がフォトマスク基板収納部側(上方又は内方)に変形され、基部11及び側壁部12の内壁111と外壁112の間に中空部113が形成され、基部11及び側壁部12と一体的に成形されている。
【0055】
フォトマスク基板支持固定部4は、中空部113により内側が低い段差部が形成されている。段差部は内側が低く、低い段差部の上面はフォトマスク基板載置部44となされ、段差部の外側の高い側面は横方向位置決め部45となされている。即ち、保存、輸送するフォトマスク基板は、その端部をフォトマスク基板載置部44,44・・上に載置される共に、横方向位置決め部45、45・・により位置決めされ強固に固定される。
【0056】
上記容器本体1はブロー成形法により成形されるのが好ましい。ブロー成形法とは、熱可塑性樹脂を溶融状態で押出成形して筒状のパリソンを成形し、次いで、得られたパリソンを成形金型に供給し、パリソン内にガスを吹き込みながら、成形金型を型締めして成形体を製造する方法である。
【0057】
ブロー成形法により成形することにより、大型の容器本体1を一体的に且つ容易に成形することができ、得られた容器本体1は内壁と外壁の2層構造であり、部分的に中空部を有し、且つ、継目なく一体的に成形されており、軽量で機械的強度が優れている。
【0058】
蓋体2は、容器本体1の蓋として機能するものであれば特に限定されないが、蓋体2が容器本体1と同一形状であれば、図1に示したように、フォトマスク基板6をフォトマスク基板収納部3内に容易に収納、保持することができるので好ましい。即ち、蓋体が、メルフローレイト(MFR)が0.6(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂よりなる、略平板状の基部と、基部の端部から垂設された側壁部よりなる箱状体であり、且つ、内壁と外壁よりなる2層構造体であるのが好ましい。
【0059】
又、フォトマスク基板収納部内が帯電しないように、基部の内壁(フォトマスク基板収納部側)に帯電防止シート、帯電防止成形体等が積層されてもよいし、帯電防止塗料が塗布、積層されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のフォトマスク容器は、軽量で機械的強度が優れており、フォトマスク基板を強固に保持することができ、表面にゴミ(微細粒子)が付着したり、変形したりすることなく輸送することができる。減圧下や低温下で輸送されたとしても、フォトマスク基板やフォトマスク容器に不要な応力が負荷されることがなく、フォトマスク容器のフォトマスク基板収納部の結露が抑制され、クリーン度が優れているので、飛行機で好適に空輸することができるので、フォトマスクを保存、輸送する際のフォトマスク容器として好適に使用することできる。
【符号の説明】
【0061】
1 容器本体
11 基部
111 内壁
112 外壁
113 中空部113
12 側壁部
13 リブ
14 切り欠き凹部
2 蓋体
3 フォトマスク基板収納部
4 フォトマスク基板支持固定部
41 ボルト
42 パッキン
43 インサートナット
44 フォトマスク基板載置部
45 横方向位置決め部
5 把手部
6 フォトマスク基板
7 ガス抜き部
71 貫通孔
72 段差部
73 フィルター
74 固定具
8 のぞき窓部
9 Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6