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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】基礎杭支持層深度推定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
E02D5/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019058882
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159034
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505047784
【氏名又は名称】株式会社オムテック
(74)【代理人】
【識別番号】100120145
【弁理士】
【氏名又は名称】田坂 一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰博
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅弘
(72)【発明者】
【氏名】小室 龍馬
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193876(JP,A)
【文献】特開2013-072271(JP,A)
【文献】特開2007-139454(JP,A)
【文献】特開2000-160550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定する基礎杭支持層深度推定装置であって、
前記基礎杭の杭芯の位置を示す杭芯位置情報を取得する杭芯位置取得手段と、
前記杭芯位置情報に基づき、複数の前記参照位置を選定する選定手段と、
選定された前記参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度を示す参照位置支持層深度情報を、複数の前記参照位置毎に取得する地盤データ取得手段と、
複数の前記参照位置及びこれらの前記参照位置支持層深度情報に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定する推定手段と、を備え、
前記選定手段は、前記杭芯の位置を囲む3つの前記参照位置を選定し、
前記推定手段は、
前記選定手段が選定した3つの前記参照位置に対して、前記参照位置における基準面から前記参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、前記参照位置に含まれるX座標及びY座標、当該参照位置の前記参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定し、
これらの3つの前記参照地点により形成される三角形の仮想平面を算出し、
前記仮想平面における前記杭芯位置情報に含まれるX座標及びY座標によって特定される位置のZ座標を、前記基礎杭支持層深度と推定することを特徴とする基礎杭支持層深度推定装置。
【請求項2】
前記杭芯の位置から、前記参照位置までの距離である参照位置距離を算出する距離算出手段を、更に備え、
前記選定手段は、前記参照位置距離が所定距離以内の前記参照位置を選定することを特徴とする請求項1に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記参照位置の前記参照位置距離に応じた係数を、当該参照位置の前記参照位置支持層深度に乗じた補正値に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定することを特徴とする請求項2に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記参照位置の前記参照位置距離の逆数を、当該参照位置の前記係数とした前記補正値に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定することを特徴とする請求項3に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【請求項5】
基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定する基礎杭支持層深度推定装置が実行する方法であって、
前記基礎杭の杭芯の位置を示す杭芯位置情報を取得するステップと、
前記杭芯位置情報に基づき、複数の前記参照位置を選定するステップと、
選定した前記参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度を示す参照位置支持層深度情報を、複数の前記参照位置毎に取得するステップと、
複数の前記参照位置及びこれらの前記参照位置支持層深度情報に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定するステップと、を含み、
前記選定するステップにおいて、前記杭芯の位置を囲む3つの前記参照位置を選定し、
前記推定するステップにおいて、
定した3つの前記参照位置に対して、前記参照位置における基準面から前記参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、前記参照位置に含まれるX座標及びY座標、当該参照位置の前記参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定し、
これらの3つの前記参照地点により形成される三角形の仮想平面を算出し、
前記仮想平面における前記杭芯位置情報に含まれるX座標及びY座標によって特定される位置のZ座標を、前記基礎杭支持層深度と推定することを特徴とする基礎杭支持層深度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭支持層深度推定装置及びその方法に関し、詳しくは、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定する基礎杭支持層深度推定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭の施工費用を算出する場合、施工場所の地盤データに基づき、施工費用を算出する。
【0003】
例えば、特許文献1には、施工現場の地盤調査の結果等の地盤情報等を、コンピュータに入力し、このコンピュータに入力された地盤情報等に基づいて、杭の仕様等を選定し、見積もりを計算することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-97632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ある施工場所における基礎杭の見積を算出する段階では、施工場所の地盤調査が行われておらず、当該施工場所の地盤データが存在しないのが一般的である。このような場合、当該施工場所周辺の地盤データを参考に、当該施工場所における支持層の深度を推定し、杭長を設定する。
【0006】
しかしながら、地中に存在する支持層は、視認することはできず、地盤面が比較的平坦であっても、傾斜している場合がある。このような場合、推定した支持層の深度と、実際の支持層の深度とが大きく異なることとなる。
【0007】
本発明は、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能な基礎杭支持層深度推定装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定する基礎杭支持層深度推定装置であって、
前記基礎杭の杭芯の位置を示す杭芯位置情報を取得する杭芯位置取得手段と、
前記杭芯位置情報に基づき、複数の前記参照位置を選定する選定手段と、
選定された前記参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度を示す参照位置支持層深度情報を、複数の前記参照位置毎に取得する地盤データ取得手段と、
複数の前記参照位置及びこれらの前記参照位置支持層深度情報に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定する推定手段と、を備え
前記選定手段は、前記杭芯の位置を囲む3つの前記参照位置を選定し、
前記推定手段は、
前記選定手段が選定した3つの前記参照位置に対して、前記参照位置における基準面から前記参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、前記参照位置に含まれるX座標及びY座標、当該参照位置の前記参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定し、
これらの3つの前記参照地点により形成される三角形の仮想平面を算出し、
前記仮想平面における前記杭芯位置情報に含まれるX座標及びY座標によって特定される位置のZ座標を、前記基礎杭支持層深度と推定することを特徴とする基礎杭支持層深度推定装置。
【0009】
(1)の発明によれば、基礎杭支持層深度推定装置は、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定し、杭芯位置取得手段と、選定手段と、地盤データ取得手段と、推定手段と、を備える。
杭芯位置取得手段は、基礎杭の杭芯の位置を示す杭芯位置情報を取得する。
選定手段は、杭芯位置情報に基づき、複数の参照位置を選定する。
地盤データ取得手段は、選定された参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度を示す参照位置支持層深度情報を、複数の参照位置毎に取得する。
推定手段は、複数の参照位置及びこれらの参照位置支持層深度情報に基づき、基礎杭支持層深度を推定する。
【0010】
これにより、複数の測定済みの地盤データの参照位置を選定し、選定したこれらの参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度に基づき、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能となる。また、本発明は、基礎杭支持層深度推定装置の発明であるが、基礎杭支持層深度推定方法であっても、同様の作用効果を奏する。
【0011】
(2) 前記杭芯の位置から、前記参照位置までの距離である参照位置距離を算出する距離算出手段を、更に備え、
前記選定手段は、前記参照位置距離が所定距離以内の前記参照位置を選定することを特徴とする(1)に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【0012】
これにより、杭芯の位置から、参照位置までの距離である参照位置距離が所定距離以内の参照位置を選定し、選定したこれらの参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度に基づき、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【0014】
(3)の発明によれば、杭芯の位置を囲む3つの参照位置に対して、これらの参照位置における基準面から参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、参照位置に含まれるX座標及びY座標、当該参照位置の参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定する。そして、これらの3つの参照地点により形成される三角形の仮想平面における基礎杭の杭芯の位置におけるZ座標を、基礎杭支持層深度と推定する。
【0015】
これにより、測定済みの地盤データから、杭芯の位置を含む支持層の仮想平面を想定し、この想定した仮想平面に基づき、基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【0016】
(4) 前記推定手段は、前記参照位置の前記参照位置距離に応じた係数を、当該参照位置の前記参照位置支持層深度に乗じた補正値に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定することを特徴とする(2)に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【0017】
これにより、参照位置の参照位置距離に応じた係数を、当該参照位置の参照位置支持層深度に乗じた補正値に基づき、基礎杭支持層深度を推定するので、杭芯の位置から比較的離れた参照位置の参照位置支持層深度も適正に用いることも可能となり、仮に、杭芯の位置から比較的近い参照位置に関するデータが無い場合でも、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能となる。
【0018】
(5) 前記推定手段は、前記参照位置の前記参照位置距離の逆数を、当該参照位置の前記係数とした前記補正値に基づき、前記基礎杭支持層深度を推定することを特徴とする(4)に記載の基礎杭支持層深度推定装置。
【0019】
これにより、参照位置の参照位置距離の逆数を、当該参照位置の係数とした補正値に基づき、基礎杭支持層深度を推定するので、杭芯の位置から比較的離れた参照位置の参照位置支持層深度もより適正に用いることが可能となり、仮に、杭芯の位置から比較的近い参照位置に関するデータが無い場合でも、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能な基礎杭支持層深度推定装置及びその方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る基礎杭支持層深度推定装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】参照位置の地盤データを、模式的に示す図である。
図3】基礎杭支持層深度推定装置が実行する基礎杭支持層深度を推定する第1方法を説明する図である。
図4】第1方法における推定手段の推定例を説明する図である。
図5】第2方法における推定手段の推定例を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る基礎杭支持層深度推定装置が実行する基礎杭支持層深度推定処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る基礎杭支持層深度推定装置の機能構成を示すブロック図である。基礎杭支持層深度推定装置1は、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を、測定済みの地盤データの参照位置における支持層の深度から推定する。基礎杭支持層深度推定装置1は、制御手段10と、記憶手段100と、を備える。
【0024】
制御手段10は、杭芯位置取得手段11と、地盤データ取得手段12と、距離算出手段13と、選定手段14と、推定手段15と、を備える。
【0025】
杭芯位置取得手段11は、基礎杭の杭芯の位置を示す杭芯位置情報を取得する。具体的には、例えば、杭芯位置取得手段11は、ユーザの操作に基づき入出力装置から入力された杭芯位置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。杭芯位置情報は、例えば、緯度・経度を示す情報や、所在地を示す情報である。
【0026】
地盤データ取得手段12は、杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報が示す位置周辺の測定済みの地盤データ110を取得し、記憶手段100に記憶する。測定済みの地盤データには、支持層の深度が測定された位置を示す測定済み位置を示す情報(例えば、緯度・経度を示す情報や、所在地を示す情報)と、当該測定済み位置の支持層の深度(参照位置支持層深度)を示す情報とが含まれる。地盤データ取得手段12は、測定済みの地盤データ110を、外部の装置(例えば、インターネットにおいて、地盤データを公表しているサイトのサーバ等)から取得してもよいし、入力手段によるユーザの入力により取得してもよい。測定済み位置の支持層の深度(参照位置支持層深度)を示す情報は、例えば、N値が所定値(例えば、50)以上となる地層の深度である。
【0027】
また、地盤データ取得手段12は、測定済みの地盤データ110から、後述する選定手段14が選定した複数の参照位置の参照位置支持層深度を、複数の参照位置毎に取得し、参照位置の地盤データ120として記憶手段100に記憶する。
【0028】
図2は、参照位置の地盤データを、模式的に示す図である。
参照位置の地盤データ120は、参照位置を識別する識別情報としての参照位置No.に、各参照位置の緯度・経度(図2に示す例では、緯度・経度を10進法で示している。)と、各参照位置の支持地盤深度(基準面(地盤面や、いわゆる海抜等)からの深度(m))と、が対応付けられて、記憶手段100に記憶されている。
【0029】
距離算出手段13は、杭芯の位置から、参照位置までの距離である参照位置距離を算出する。詳細には、距離算出手段13は、杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報が示す杭芯の位置から、記憶手段100に記憶された測定済みの地盤データ110の測定済み位置を示す情報が示す位置までの距離を算出する。なお、参照位置は、後述する選定手段14により、地盤データ110の測定済み位置から選定されるものである。すなわち、地盤データ110の測定済み位置には、参照位置が含まれる。よって、距離算出手段13は、杭芯の位置から、参照位置までの距離である参照位置距離を算出する距離算出手段の一例である。
【0030】
選定手段14は、杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報に基づき、地盤データ取得手段12が取得した測定済みの地盤データ110から、複数の参照位置を選定する。詳細には、選定手段14は、参照位置距離が所定距離(例えば、1500m)以内の参照位置を選定する。なお、選定手段14は、参照位置を選定する範囲を予め設定した所定距離以内としてもよいし、参照位置に選定する測定済み位置の数(例えば、3箇所、20箇所等)を予め設定し、杭芯の位置からの距離が近い順に、予め設定した数の測定済み位置を、参照位置に選定してもよい。
【0031】
推定手段15は、複数の参照位置及びこれらの参照位置支持層深度情報に基づき、基礎杭支持層深度を推定する。詳細には、推定手段15は、選定手段14が選定した複数の参照位置の参照位置支持層深度情報を、記憶手段100の参照位置の地盤データ120から読み込み、所定の方法(例えば、後述する第1方法や、第2方法等)により、杭芯位置取得手段11が取得した基礎杭の杭芯の位置の基礎杭支持層深度を推定する。
【0032】
基礎杭支持層深度推定装置1が実行する基礎杭支持層深度を推定する第1方法について説明する。
図3は、基礎杭支持層深度推定装置が実行する基礎杭支持層深度を推定する第1方法を説明する図である。
第1方法において、選定手段14は、杭芯の位置Pを囲む3つの参照位置(図3に示す例では、No.8、No.13、No.16)を選定する。例えば、選定手段14は、杭芯の位置Pに最も近い参照位置No.13を選定し、次に、杭芯の位置P及び選定した杭芯の位置Pに最も近い参照位置No.13より、緯度が大きいものと、小さいものをそれぞれ1点ずつ仮選定し、これらの選定した1点と仮選定した2点とで形成される三角形内に、杭芯の位置Pが存在するか否かを判定する。そして、選定手段14は、杭芯の位置Pが存在しない場合には、杭芯の位置Pに最も近い参照位置No.13の選定を固定し、杭芯の位置P及び選定した杭芯の位置Pに最も近い参照位置No.13より、緯度が大きいものと、小さいものとで仮選定する2点を、例えば、杭芯の位置Pに近い順に変えていき、選定を固定した杭芯の位置Pに最も近い参照位置No.13と、仮選定した2点とで形成される三角形内に、杭芯の位置Pが存在すると判定した場合には、仮選定した2点(図3に示す例では、No.8、No.16)を選定することで、計3つの参照位置を選定する。
【0033】
推定手段15は、選定手段14が選定した3つの参照位置に対して、参照位置における基準面から参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、参照位置に含まれるX座標(経度)及びY座標(緯度)、当該参照位置の参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定する。推定手段15は、これらの3つの参照地点により形成される三角形の仮想平面を算出する。そして、推定手段15は、仮想平面における杭芯の位置Pの杭芯位置情報に含まれるX座標及びY座標によって特定される位置のZ座標を、基礎杭支持層深度と推定する。
【0034】
図4は、第1方法における推定手段の推定例を説明する図である。
第1方法において、推定手段15は、例えば、選定手段14が選定した3つの参照位置により形成される三角形の平面の方程式におけるZの値を、ベクトルの外積と法線ベクトルを用いて求める。
推定手段15は、図4に示す方程式のZを、推定する杭芯の位置Pの基礎杭支持層深度として、このZを、参照位置の地盤データ120(図2参照)に記憶された杭芯の位置PのX座標(経度)及びY座標(緯度)と、選定手段14が選定した参照位置No.8,13,16のX座標(経度)、Y座標(緯度)及び支持地盤深度を用いて求める。
【0035】
次に、基礎杭支持層深度推定装置1が実行する基礎杭支持層深度を推定する第2方法について説明する。
第2方法において、選定手段14は、参照位置距離が所定距離(例えば、1500m)以内の参照位置を選定する(図5に示す例では、No.1~20)。
【0036】
推定手段15は、距離算出手段13が算出した参照位置の参照位置距離に応じた係数を、当該参照位置の参照位置支持層深度に乗じた補正値に基づき、基礎杭支持層深度を推定する。
図5は、第2方法における推定手段の推定例を説明する図である。
具体的には、推定手段15は、参照位置の参照位置距離の逆数を、当該参照位置の係数Bとし、この係数(B)を参照位置支持層深度(A)に乗じた補正値(A×B)に基づき、基礎杭支持層深度を推定する。詳細には、推定手段15は、選定手段14が選定した参照位置(図5に示す例では、No.1~20)に対して、それぞれ、参照位置距離の逆数を算出し(例えば、参照位置No.1であれば1/1,204=0.0008308)し、この逆数を係数(B)とし、この係数(B)に参照位置支持層深度(A)に乗じた補正値(A×B)を算出する。そして、推定手段15は、選定手段14が選定した参照位置それぞれに算出した係数(B)を合算し、合算係数(Σ(B))を算出する(図5に示す例では0.0456810)。また、推定手段15は、選定手段14が選定した参照位置それぞれに算出した補正値(A×B)を合算し、合算補正値(Σ(A×B))を算出する(図5に示す例では0.5604268)。
そして、推定手段15は、合算補正値(Σ(A×B))(図5に示す例では0.5604268)を、合算係数(Σ(B))(図5に示す例では0.0456810)で除算することで算出した値(図5に示す例では12.3)を、基礎杭支持層深度と推定する。
【0037】
上記の基礎杭支持層深度推定装置1の機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理手段は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶手段100に格納されたコンピュータ・プログラム(例えば、基幹ソフト等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶手段100に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、キーボードやマウス等の入出力装置、ディスプレイ等の表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。
【0038】
次に、基礎杭支持層深度推定装置1が実行する基礎杭支持層深度推定処理について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る基礎杭支持層深度推定装置が実行する基礎杭支持層深度推定処理フローを示す図である。
【0039】
ステップS1において、杭芯位置取得手段11は、ユーザの操作に基づき入出力装置から入力された杭芯位置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0040】
ステップS2において、地盤データ取得手段12は、ステップS1で杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報が示す位置周辺の測定済みの地盤データ110を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0041】
ステップS3において、距離算出手段13は、ステップS1で杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報が示す杭芯の位置から、ステップS2で地盤データ取得手段12により記憶手段100に記憶された測定済みの地盤データ110の測定済み位置を示す情報が示す位置までの距離を算出する。
【0042】
ステップS4において、選定手段14は、ステップS1で杭芯位置取得手段11が取得した杭芯位置情報に基づき、ステップS2で地盤データ取得手段12が取得した測定済みの地盤データ110から、参照位置距離が所定距離(例えば、上述の第1方法であれば150m、第2方法であれば1500m)以内の複数の参照位置を選定する。
【0043】
ステップS5において、推定手段15は、ステップS4で選定手段14が選定した複数の参照位置の参照位置支持層深度情報を、記憶手段100の参照位置の地盤データ120から読み込み、所定の方法(例えば、第1方法(図3,4参照)や、第2方法(図5参照))により、ステップS1で杭芯位置取得手段11が取得した基礎杭の杭芯の位置の基礎杭支持層深度を推定する。
【0044】
このように、本実施形態の基礎杭支持層深度推定装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
基礎杭支持層深度推定装置1によれば、複数の測定済みの地盤データの参照位置を選定し、選定したこれらの参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度に基づき、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能となる。
【0045】
また、基礎杭支持層深度推定装置1によれば、杭芯の位置から、参照位置までの距離である参照位置距離が所定距離以内の参照位置を選定し、選定したこれらの参照位置の支持層の深度である参照位置支持層深度に基づき、基礎杭の支持層の深度である基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【0046】
また、基礎杭支持層深度推定装置1によれば、杭芯の位置を囲む3つの参照位置(図3に示す例では、No.8、No.13、No.16)に対して、これらの参照位置における基準面から参照位置支持層深度に達した位置である参照地点を、参照位置に含まれるX座標及びY座標、当該参照位置の参照位置支持層深度をZ座標として、それぞれ特定する。そして、これらの3つの参照地点により形成される三角形の仮想平面における基礎杭の杭芯の位置におけるZ座標を、基礎杭支持層深度と推定する。
【0047】
これにより、測定済みの地盤データから、杭芯の位置を含む支持層の仮想平面を想定し、この想定した仮想平面に基づき、基礎杭支持層深度を推定できるので、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【0048】
また、基礎杭支持層深度推定装置1によれば、参照位置の参照位置距離に応じた係数(B)を、当該参照位置の参照位置支持層深度に乗じた補正値(A×B)に基づき、基礎杭支持層深度を推定するので、杭芯の位置から比較的離れた参照位置の参照位置支持層深度も適正に用いることも可能となり、仮に、杭芯の位置から比較的近い参照位置に関するデータが無い場合でも、推定した支持層の深度の信頼性を向上することが可能となる。
【0049】
また、基礎杭支持層深度推定装置1によれば、参照位置の参照位置距離の逆数を、当該参照位置の係数(B)とした補正値(A×B)に基づき、基礎杭支持層深度を推定するので、杭芯の位置から比較的離れた参照位置の参照位置支持層深度もより適正に用いることが可能となり、仮に、杭芯の位置から比較的近い参照位置に関するデータが無い場合でも、推定した支持層の深度の信頼性をより向上することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 基礎杭支持層深度推定装置
10 制御手段
11 杭芯位置取得手段
12 地盤データ取得手段
13 距離算出手段
14 選定手段
15 推定手段
100 記憶手段
110 測定済みの地盤データ
120 参照位置の地盤データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6