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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ミスト供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20230821BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L9/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019073855
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020171390
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】益留 純
(72)【発明者】
【氏名】二村 はるか
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 至洋
(72)【発明者】
【氏名】北野 司
(72)【発明者】
【氏名】郭 志強
(72)【発明者】
【氏名】小川 亜由美
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/095816(WO,A1)
【文献】特開2006-204968(JP,A)
【文献】米国特許第09533064(US,B1)
【文献】特開2006-296617(JP,A)
【文献】特開2007-075243(JP,A)
【文献】特開平04-118066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
A61L 9/14
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除染対象室の内部に除染剤をミスト化して供給する供給装置であって、
ミスト発生手段と、ミスト微細化手段と、供給口とを有し、
前記ミスト発生手段は、前記除染剤を1次ミストに変換して前記ミスト微細化手段に供給し、
前記ミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、
前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストに前記音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミストとし、
発生した前記2次ミストは、前記供給口を介して前記除染対象室の内部に供給されることを特徴とするミスト供給装置。
【請求項2】
前記ミスト発生手段は、スプレーノズル(1流体ノズル若しくは2流体ノズル)、又は、超音波によるミスト発生器(超音波加湿器若しくはネブライザー)であることを特徴とする請求項1に記載のミスト供給装置。
【請求項3】
前記ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤を具備し、
対をなす前記震動盤は、互いにその盤面を前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストの外周部側から対向させて配置することにより、
前記音響流による超音波振動が前記1次ミストに集中して作用するように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト供給装置。
【請求項4】
前記ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤と反射盤との組み合わせを具備し、
対をなす前記震動盤と反射盤との組み合わせは、互いの震動面と反射面とを前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストの外周部側から対向させて配置することにより、
前記震動盤から発生した音響流と前記反射盤により反射した音響流とによる超音波振動が前記1次ミストに集中して作用するように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト供給装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記震動盤の全部又は一部の盤面を前記2次ミストの供給手段として有し、
当該盤面から発生する音響流の音響放射圧による押圧を前記2次ミストに作用させることにより、当該2次ミストを前記除染対象室の内部に供給することを特徴とする請求項4に記載のミスト供給装置。
【請求項6】
前記震動盤は、基盤と複数の送波器とを具備し、
前記基盤の平面上に前記複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、
前記複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようにして、前記震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のミスト供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除染剤をミスト化して供給するミスト供給装置に関するものであり、特に、1次ミストを更に微細化した2次ミストとして供給するミスト供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品或いは食品などを製造する製造現場、或いは、手術室などの医療現場においては、室内の無菌状態を維持することが重要である。特に医薬品製造の作業室である無菌室の除染においては、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションを完了させる必要がある。
【0003】
近年、無菌室などの作業室(以下、除染対象室という)の除染には、過酸化水素(ガス又はミスト)が広く採用されている。この過酸化水素は、強力な滅菌効果を有し、安価で入手しやすく、且つ、最終的には酸素と水に分解する環境に優しい除染ガスとして有効である。そこで、除染対象室の内部に過酸化水素水をガス化して効率よく供給する提案が下記特許文献1など多くなされている。
【0004】
一方、過酸化水素による除染効果は、除染対象部位の表面に凝縮する過酸化水素水の凝縮膜によるものであることが下記特許文献1に記載されている。つまり、ガス化して供給した過酸化水素ガスを除染対象室の壁面など除染対象部位の表面に凝縮させることにより除染が行われる。従って、除染対象室の除染効果の完璧を図ると共に除染操作の効率化を図るためには、過酸化水素ガスの供給量を多くして過酸化水素水の凝縮膜を速やかに発生させるか、或いは、過酸化水素水を液状のまま(例えば、液滴で)供給することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-320392号公報
【文献】特公昭61-4543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、除染対象室に過剰量の過酸化水素ガスを供給し、或いは、過酸化水素水の液滴を直接供給すれば過度な凝縮やムラの多い凝縮が起こり、除染対象室の内部に配置されている各種製造設備や精密測定機器或いは除染対象室の壁面などが発生した高濃度の過酸化水素水の凝縮膜により腐食されるという不具合が生じる。また、過酸化水素による除染の後には、除染対象室の内部に残留した過酸化水素や凝縮膜を清浄空気で除去するエアレーションを行う。しかし、過剰量の過酸化水素ガスや過酸化水素水の液滴を供給した場合には、除染対象室の壁面などに発生した高濃度の過酸化水素水の凝縮膜を除去するエアレーションに多くに時間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、除染剤を微細なミストとすることにより、除染対象室に適正量の除染剤を供給することができ、除染効果の完璧を図ると共に、エアレーションなどの作業時間を短縮して除染作業の効率化を図ることのできるミスト供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、除染剤をミスト化すると共に、これに超音波振動を作用させることで更に微細化したミストとなることを見出し本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明に係るミスト供給装置は、請求項1の記載によれば、
除染対象室の内部に除染剤をミスト化して供給する供給装置(10、110、210)であって、
ミスト発生手段(30、130、230)と、ミスト微細化手段(40、140、240)と、供給口(50、150、250)とを有し、
前記ミスト発生手段は、前記除染剤を1次ミスト(32、132、232)に変換して前記ミスト微細化手段に供給し、
前記ミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤(41、42、141、142)を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面(41a、42a、141a、142a)から垂直方向に超音波による音響流を発生させ、
前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストに前記音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミスト(33、133、233)とし、
発生した前記2次ミストは、前記供給口を介して前記除染対象室の内部に供給されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のミスト供給装置であって、
前記ミスト発生手段は、スプレーノズル(1流体ノズル若しくは2流体ノズル(31))、又は、超音波によるミスト発生器(超音波加湿器若しくはネブライザー(131、231))であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載のミスト供給装置であって、
前記ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤を具備し、
対をなす前記震動盤は、互いにその盤面を前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストの外周部側から対向させて配置することにより、
前記音響流による超音波振動が前記1次ミストに集中して作用するように制御されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1又は2に記載のミスト供給装置であって、
前記ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤(241)と反射盤(242)との組み合わせを具備し、
対をなす前記震動盤と反射盤との組み合わせは、互いの震動面(241a)と反射面(242a)とを前記ミスト発生手段から供給された前記1次ミストの外周部側から対向させて配置することにより、
前記震動盤から発生した音響流と前記反射盤により反射した音響流とによる超音波振動が前記1次ミストに集中して作用するように制御されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載のミスト供給装置であって、
前記供給口は、前記震動盤の全部又は一部の盤面を前記2次ミストの供給手段として有し、
当該盤面から発生する音響流の音響放射圧による押圧を前記2次ミストに作用させることにより、当該2次ミストを前記除染対象室の内部に供給することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1~5のいずれか1つに記載のミスト供給装置であって、
前記震動盤(41)は、基盤(61)と複数の送波器(63)とを具備し、
前記基盤の平面(62)上に前記複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、
前記複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようにして、前記震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、本発明に係るミスト供給装置は、ミスト発生手段とミスト微細化手段と供給口とを有している。ミスト発生手段は、除染剤を1次ミストに変換してミスト微細化手段に供給する。ミスト微細化手段は、1又は2以上の震動盤を具備し、当該震動盤を超音波振動させて盤面から垂直方向に超音波による音響流を発生させる。ミスト発生手段から供給された1次ミストに音響流による超音波振動を作用させることにより、当該1次ミストを更に微細化した2次ミストとする。発生した2次ミストは、供給口を介して除染対象室の内部に供給される。
【0016】
このように、上記構成によれば、除染剤を微細なミストとすることにより、除染対象室に適正量の除染剤を供給することができ、除染効果の完璧を図ると共に、エアレーションなどの作業時間を短縮して除染作業の効率化を図ることのできるミスト供給装置を提供することができる。
【0017】
また、上記構成によれば、ミスト発生手段は、スプレーノズル(1流体ノズル若しくは2流体ノズル)、又は、超音波によるミスト発生器(超音波加湿器若しくはネブライザー)でであってもよい。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0018】
また、上記構成によれば、ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤を具備していてもよい。この対をなす震動盤は、互いにその盤面をミスト発生手段から供給された1次ミストの外周部側から対向させて配置する。このことにより、音響流による超音波振動が1次ミストに集中して作用するように制御される。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0019】
また、上記構成によれば、ミスト微細化手段は、1対又は2対以上の震動盤と反射盤との組み合わせを具備していてもよい。この対をなす震動盤と反射盤との組み合わせは、互いの震動面と反射面とをミスト発生手段から供給された1次ミストの外周部側から対向させて配置する。このことにより、震動盤から発生した音響流と反射盤により反射した音響流とによる超音波振動が1次ミストに集中して作用する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0020】
また、上記構成によれば、供給口は、震動盤の全部又は一部の盤面を2次ミストの供給手段として有していてもよい。この盤面から発生する音響流の音響放射圧による押圧を2次ミストに作用させる。このことにより、2次ミストを除染対象室の内部に供給する。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0021】
また、上記構成によれば、震動盤は、基盤と複数の送波器とを具備し、基盤の平面上に複数の送波器の送波方向を統一して配置すると共にこれらの送波器を同位相で作動させるようにしてもよい。その結果、複数の送波器の正面方向の超音波を互いに強め合うと共に、当該複数の送波器の横方向の超音波を互いに打ち消し合うようになる。このことにより、震動盤の盤面から垂直方向に指向性の強い超音波による音響流を発生させることができる。よって、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るミスト供給装置の内部を側面から見た断面図である。
図2】第1実施形態に係るミスト微細化装置が具備する震動盤においてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置した状態を示す概要斜視図である。
図3】第2実施形態に係るミスト供給装置の内部を側面から見た断面図である。
図4】第3実施形態に係るミスト供給装置の(A)正面図、(B)内部を側面から見た断面図である。
図5】第1実施形態に係るミスト供給装置を配置したアイソレーターの内部を側面から見た概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るミスト供給装置は、除染対象室としてクリーンルームやアイソレーター、或いは、これらの除染対象室に連接するパスボックスなどの内部、又は、これらの除染対象室の内部に配置された除染対象装置又は除染対象物品などを除染するために、これらの除染対象室の内部に除染剤を供給するための供給装置をいう。また、本発明に係るミスト供給装置は、除染剤をガス化して供給する従来の供給装置とは異なり、除染剤を微細なミストに変換して供給する供給装置をいう。
【0024】
また、本発明に係るミスト供給装置は、除染剤を微細なミストに変換して供給するのみならず、水など他の液体を微細なミストに変換して供給する際にも使用される。例えば、除染に先立ってアイソレーター内部の調湿を行う際に、本発明に係るミスト供給装置を使用して微細な水のミスト(フォグともいう)を室内に供給して、除染に最適な湿度に調湿する際に使用してもよい。
【0025】
また、本発明において「ミスト」とは、広義に解釈するものであって、微細化して空気中に浮遊する除染剤の液滴の状態、除染剤のガスと液滴が混在した状態、除染剤がガスと液滴との間で凝縮と蒸発との相変化を繰り返している状態などを含むものとする。また、粒径に関しても、場合によって細かく区分されるミスト・フォグ・液滴などを含んで広義に解釈する。
【0026】
よって、本発明において1次ミストとは、ミスト(10μm以下と定義される場合もある)或いはフォグ(5μm以下と定義される場合もある)と呼ばれるもの、及び、それ以上の粒径を有するものも含むものとする。また、本発明において2次ミストとは、1次ミストが超音波振動の作用を受けて微細化したものをいう。特に、本発明における2次ミストは、超音波振動の作用により、ミスト・フォグ・液滴などの1次ミスト(3μm~10μm或いはそれ以上の液滴)が、3μm以下の超微細粒子に均一化されて短時間においても高度な除染効果を発揮するものと考えられる(後述する)。
【0027】
以下、本発明に係るミスト供給装置を各実施形態により詳細に説明する。なお、本発明は、下記の各実施形態にのみ限定されるものではない。以下に示す各実施形態に係るミスト供給装置においては、除染剤として過酸化水素水を使用する。なお、本発明に係るミスト供給装置で供給する除染剤は、過酸化水素水に限るものではなく、過酢酸の水溶液など液状の除染剤であればよい。
【0028】
<第1実施形態>
本第1実施形態は、アイソレーターなどの底壁面に連通して除染剤としての過酸化水素水ミストをアイソレーターなどの内部に供給するミスト供給装置に関するものである。図1は、本第1実施形態に係るミスト供給装置の内部を側面から見た断面図である。図1において、ミスト供給装置10は、ステンレス製金属板からなる筐体20と、1次ミストを発生するミスト発生装置30と、発生した1次ミストを更に微細化して2次ミストとするミスト微細化装置40と、発生した2次ミストを放出する供給口50とを有している。
【0029】
ミスト発生装置30は、除染剤を1次ミストに変換してミスト微細化装置40に供給する。なお、本第1実施形態においては、ミスト発生装置30として二流体スプレーノズル31を使用し、筐体20の底壁面21に配置されている。また、本第1実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(35W/V%)を使用した。
【0030】
二流体スプレーノズル31は、コンプレッサー(図示せず)からの圧縮空気により過酸化水素水を1次ミスト化して過酸化水素水ミスト32とし、ミスト微細化装置40に供給する。なお、第1実施形態においては、ミスト発生装置に関しては二流体スプレーノズルに限るものではなく、ミスト発生手段及び出力等について特に限定するものではない。
【0031】
ミスト微細化装置40は、2台の震動盤41、42を具備している。2台の震動盤41、42は、筐体20の対向する2面の側壁面22、23の内部を背にして、震動面41a、42aを水平方向に対向させて二流体スプレーノズル31のミスト放出口31aの上部に向けて配置されている。また、ミスト微細化装置40は、二流体スプレーノズル31が1次ミストとして発生させた過酸化水素水ミスト32を微細化した2次ミストの微細ミスト33とする。なお、微細化の詳細については後述する。
【0032】
供給口50は、筐体20の上壁面24に開口して、ミスト微細化装置40が2次ミストとして微細化した微細ミスト33を筐体20の上部に連通したアイソレーター(図示せず)の内部に供給する。
【0033】
ここで、震動盤41(42も同じ)について説明する。図2は、本第1実施形態に係るミスト微細化装置40が具備する震動盤においてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置した状態を示す概要斜視図である。図2において、震動盤41は、基盤と複数の送波器とを具備している。本第1実施形態においては、基盤としてスピーカー基盤61を使用し、送波器として超音波スピーカー63を使用した。本第1実施形態においては、スピーカー基盤61の平面62上に25個の超音波スピーカー63をそれらの震動面64の送波方向(図示正面左方向)を統一して配置されている。なお、超音波スピーカーの個数は、特に限定するものではない。
【0034】
本第1実施形態においては、超音波スピーカー63として超指向性の超音波スピーカーを使用した。具体的には、周波数40KHz付近の超音波を送波する周波数変調方式の超音波スピーカー(DC12V、50mA)を使用した。なお、超音波スピーカーの種類、大きさと構造、出力等に関しては、特に限定するものではない。また、第1実施形態においては、ミスト微細化装置40が具備する震動盤に関しては超音波スピーカーに限るものではなく、超音波の発生手段、周波数域及び出力等について特に限定するものではない。
【0035】
本第1実施形態において、複数(25個)の超音波スピーカー63の震動面64の送波方向を統一すると共にこれらの送波器を同位相で作動させることにより、各超音波スピーカー63の正面方向の超音波が互いに強め合うと共に、各超音波スピーカー63の横方向の超音波が互いに打ち消し合うようになる。その結果、スピーカー基盤61に配置された超音波スピーカー63が超音波振動すると、各震動面64から垂直方向に空気中を進行する指向性の強い音響流が発生する。なお、超音波制御装置(図示せず)により超音波スピーカー63の周波数と出力を制御することにより、効率的な微細化効果を得ることができる。
【0036】
次に、上記構成に係るミスト供給装置10の内部における過酸化水素水ミスト32と微細ミスト33の挙動について、図1を用いて説明する。
【0037】
この状態で各震動盤41、42の超音波スピーカー63が超音波振動すると、2つの震動面41a、42aからそれぞれ垂直方向に進行する指向性の強い音響流(盤面から矢印で表示)が発生する。これらの震動盤41、42の震動面41a、42aから発生した音響流は、二流体スプレーノズル31から放出された過酸化水素水ミスト32に作用する。この過酸化水素水ミスト32は、二流体スプレーノズル31からの放出圧により図示上方(供給口50の方向)に向かって進行する。このとき、過酸化水素水ミスト32は、震動面41a、42aから発生した音響流による超音波振動の作用により高度に微細化された微細ミスト33となり、図示上方に向かって進行し供給口50から上部に連通したアイソレーター(図示せず)の内部に供給される。
【0038】
このとき、微細ミスト33は、超音波振動の作用で微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、微細ミスト33は、高度に微細化されたミストでありアイソレーターの内壁面及び内部に配置された機器類の外表面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。従ってアイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に無駄な凝縮を起こすことがない。
【0039】
このように、過酸化水素の微細ミスト33は、超音波振動の作用を受けながらアイソレーターの内部に供給されるので、蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながら除染効果を発揮する。このことにより、アイソレーターの内部には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0040】
また、アイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、微細ミスト33中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、アイソレーターの内部に残留した微細ミスト33の凝縮膜のエアレーションの効率も向上し除染操作の短時間化が可能となる。
【0041】
<第2実施形態>
本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、アイソレーターなどの底壁面に連通して除染剤としての過酸化水素水ミストをアイソレーターなどの内部に供給するミスト供給装置に関するものである。なお、本第2実施形態においては、ミスト発生装置の構造が異なる。図3は、本第2実施形態に係るミスト供給装置の内部を側面から見た断面図である。図3において、ミスト供給装置110は、ステンレス製金属板からなる筐体120と、1次ミストを発生するミスト発生装置130と、発生した1次ミストを更に微細化して2次ミストとするミスト微細化装置140と、発生した2次ミストを放出する供給口150とを有している。
【0042】
ミスト発生装置130は、除染剤を1次ミストに変換してミスト微細化装置140に供給する。なお、本第2実施形態においては、ミスト発生装置130としてネブライザー131を使用し、筐体120の底壁面121に配置されている。また、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、除染剤として過酸化水素水(35W/V%)を使用した。
【0043】
ネブライザー131は、外部から供給される過酸化水素水を収容しミスト放出口131aを備えた本体容器131bと、その内部に配置された超音波振動子131cとを具備している。この状態で、過酸化水素水に浸漬された超音波振動子131cが超音波振動することにより過酸化水素水を1次ミスト化して過酸化水素水ミスト132とし、ミスト微細化装置140に供給する。なお、本第2実施形態においては、ミスト発生装置に関してはネブライザーに限るものではなく、ミスト発生手段及び出力等について特に限定するものではない。
【0044】
ミスト微細化装置140は、上記第1実施形態と同様の構成をしており、2台の震動盤141、142を具備している。2台の震動盤141、142は、筐体120の対向する2面の側壁面122、123の内部を背にして、震動面141a、142aを水平方向に対向させてネブライザー131の本体容器131bのミスト放出口131aの上部に向けて配置されている。また、ミスト微細化装置140は、ネブライザー131が1次ミストとして発生させた過酸化水素水ミスト132を微細化した2次ミストの微細ミスト133とする。なお、微細化の詳細については後述する。なお、2台の震動盤141、142の構造については、上記第1実施形態と同様である(図2参照)。
【0045】
供給口150は、筐体120の上壁面124に開口して、ミスト微細化装置140が2次ミストとして微細化した微細ミスト133を筐体120の上部に連通したアイソレーター(図示せず)の内部に供給する。
【0046】
次に、上記構成に係るミスト供給装置110の内部における過酸化水素水ミスト132と微細ミスト133の挙動について、図3を用いて説明する。
【0047】
この状態で各震動盤141、142の超音波スピーカー63(図2参照)が超音波振動すると、2つの震動面141a、142aからそれぞれ垂直方向に進行する指向性の強い音響流(盤面から矢印で表示)が発生する。これらの震動盤141、142の震動面141a、142aから発生した音響流は、ネブライザー131から放出された過酸化水素水ミスト132に作用する。この過酸化水素水ミスト132は、ネブライザー131からの放出圧により図示上方(供給口150の方向)に向かって進行する。このとき、過酸化水素水ミスト132は、震動面141a、142aから発生した音響流による超音波振動の作用により高度に微細化された微細ミスト133となり、図示上方に向かって進行し供給口150から上部に連通したアイソレーター(図示せず)の内部に供給される。
【0048】
このとき、微細ミスト133は、超音波振動の作用で微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、微細ミスト133は、高度に微細化されたミストでありアイソレーターの内壁面及び内部に配置された機器類の外表面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。従ってアイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に無駄な凝縮を起こすことがない。
【0049】
このように、過酸化水素の微細ミスト133は、超音波振動の作用を受けながらアイソレーターの内部に供給されるので、蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながら除染効果を発揮する。このことにより、アイソレーターの内部には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0050】
また、アイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、微細ミスト133中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、アイソレーターの内部に残留した微細ミスト133の凝縮膜のエアレーションの効率も向上し除染操作の短時間化が可能となる。
【0051】
<第3実施形態>
本第3実施形態においては、上記第1及び第2実施形態と異なり、アイソレーターの内部に配置されて除染剤としての過酸化水素水ミストをアイソレーターの内部に供給するミスト供給装置に関するものである。図4は、本第3実施形態に係るミスト供給装置の(A)正面図、(B)内部を側面から見た断面図である。図4において、ミスト供給装置210は、ステンレス製金属板からなる筐体220と、1次ミストを発生するミスト発生装置230と、発生した1次ミストを更に微細化して2次ミストとするミスト微細化装置240と、発生した2次ミストを放出する供給口250とを有している。
【0052】
なお、本第3実施形態において、ミスト供給装置210は、その底壁面221をアイソレーター本体(図示せず)の底壁面301の内壁面に接するように、また、その側壁面222をアイソレーター本体の側壁面302の内壁面に接するように配置され、供給口250をアイソレーター本体の内部に開口している。
【0053】
ミスト発生装置230は、除染剤を1次ミストに変換してミスト微細化装置240に供給する。なお、本第3実施形態においては、ミスト発生装置230としてネブライザー231を使用する。また、本第3実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、除染剤として過酸化水素水(35W/V%)を使用した。
【0054】
ネブライザー231は、筐体220の基底部を構成し、その内部に超音波振動子231cを具備している。この状態で、過酸化水素水に浸漬された超音波振動子231cが超音波振動することにより過酸化水素水を1次ミスト化して過酸化水素水ミスト232とし、ミスト微細化装置240に供給する。なお、本第3実施形態においては、ミスト発生装置に関してはネブライザーに限るものではなく、ミスト発生手段及び出力等について特に限定するものではない。
【0055】
ミスト微細化装置240は、1対の震動盤241と反射盤242とを具備している。1対の震動盤241と反射盤242とは、筐体220の上下方向中央部に対向するように震動面241aと反射面242aとを水平方向に対向させてネブライザー231の上部に向けて配置されている。また、震動盤241は、高さ及び横幅において反射盤242よりも広く配置されており、震動面241aのうち反射盤242に対向しない部分は、アイソレーターの内部に向けて開放されている(図4(A)参照)。このように構成されたミスト微細化装置240は、ネブライザー231が1次ミストとして発生させた過酸化水素水ミスト232を微細化した2次ミストの微細ミスト233とする。なお、微細化の詳細については後述する。なお、震動盤241の構造については、上記第1実施形態と同様である(図2参照)。
【0056】
供給口250は、筐体220の上部の反射盤242の上部及び左右側部に開口して、ミスト微細化装置240が2次ミストとして微細化した微細ミスト233をアイソレーター(図示せず)の内部に供給する(図4(A)参照)。
【0057】
次に、上記構成に係るミスト供給装置210の内部における過酸化水素水ミスト232と微細ミスト233の挙動について、図4を用いて説明する。
【0058】
この状態で各震動盤241の超音波スピーカー63(図2参照)が超音波振動すると、震動面241aから垂直方向に進行する指向性の強い音響流(図4(B)の盤面から矢印で表示)が発生する。この震動盤241の震動面241aから発生した音響流は、反射盤242に反射した音響流と共にネブライザー231から放出された過酸化水素水ミスト232に作用する。この過酸化水素水ミスト232は、ネブライザー231からの放出圧により図示上方(供給口250の方向)に向かって進行する。このとき、過酸化水素水ミスト232は、震動面241aから発生した音響流と反射盤242に反射した音響流とによる超音波振動の作用により高度に微細化された微細ミスト233となり、図4(A)の図示上方及び左右に向かって拡散し供給口250からアイソレーター(図示せず)の内部に供給される。
【0059】
また、供給口250から上方及び左右に向かって拡散した微細ミスト233は、震動盤241の震動面241aのうち反射盤242に対向しない部分から発生する音響流の音響放射圧の押圧を受けて、アイソレーターの内部に循環分散される。この様子を図4(A)及び(B)の白抜き矢印で示している。
【0060】
このとき、微細ミスト233は、超音波振動の作用で微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、微細ミスト233は、高度に微細化されたミストでありアイソレーターの内壁面及び内部に配置された機器類の外表面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。従ってアイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に無駄な凝縮を起こすことがない。
【0061】
このように、過酸化水素の微細ミスト233は、超音波振動の作用を受けながらアイソレーターの内部に供給されるので、蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながら除染効果を発揮する。このことにより、アイソレーターの内部には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0062】
また、アイソレーターの内壁面や内部の機器類の外表面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、微細ミスト233中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、アイソレーターの内部に残留した微細ミスト233の凝縮膜のエアレーションの効率も向上し除染操作の短時間化が可能となる。
【0063】
これまで説明したように、上記各実施形態によれば、除染剤を微細なミストとすることにより、除染対象室に適正量の除染剤を供給することができ、除染効果の完璧を図ると共に、エアレーションなどの作業時間を短縮して除染作業の効率化を図ることのできるミスト供給装置を提供することができる。
【実施例
【0064】
ここで、上記構成に係るミスト供給装置の使用状態を実施例により説明する。図5は、上記第1実施形態に係るミスト供給装置を配置したアイソレーターの内部を側面から見た概要断面図である。
【0065】
図5において、アイソレーター400は、その底壁面401の外部に上記第1実施形態に係るミスト供給装置10を配置している。ミスト供給装置10の構成は、上述の通りである。また、本実施例においては、除染剤として過酸化水素水(35W/V%)を使用した。
【0066】
本実施例においては、ミスト供給装置10からアイソレーター400の内部に供給された微細ミスト33の循環分散に2台の超音波振動盤411、412を採用した。なお、微細ミスト33の循環分散は、超音波振動盤に限るものではなく、通常の循環ファンなどを採用するようにしてもよい。
【0067】
ここで、アイソレーター400の内部における微細ミスト33の循環分散について説明する。本実施例においては、アイソレーター400の内部に2台の震動盤411、412を具備している。2台の震動盤411、412は、アイソレーター400の内部の図示右壁面下部及び図示左壁面上部の2か所に側壁面402、403を背にして震動面411a、412aをアイソレーター400の内部に水平方向に向けて配置されている。これら2台の震動盤411、412は、互いに盤面(震動面)を対向(盤面同士が互いに正面に向き合うこと)させることなく配置されている。2台の震動盤411、412を対向させずに配置する理由、及び、微細ミスト33の挙動については後述する。なお、震動盤411(412も同じ)の構造については、上記第1実施形態で説明したスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置した構造と同様である(図2参照)。
【0068】
次に、ミスト供給装置10からアイソレーター400の内部に供給された微細ミスト33の挙動について説明する。なお、図5においては、アイソレーター400の内部の図示右下に配置した震動盤411は、その震動面411aを図示左方向に向けている。この状態で超音波スピーカー63(図2参照)が超音波振動すると、震動面411aから垂直方向(図示左方向)に進行する指向性の強い音響流411bがミスト供給装置10から供給された微細ミスト33を取り込んで、音響放射圧による押圧を作用させ、音響流411bの進行方向(図示左方向)に移動させる。この際に微細ミスト33は、音響流411bによる超音波振動の作用により更に微細化された微細ミスト33aとなりアイソレーター400の内部に循環分散される。
【0069】
一方、アイソレーター400の内部の図示左上に配置した震動盤412は、その震動面412aを図示右方向に向けている。この状態で、超音波スピーカー63(図2参照)が超音波振動すると、震動面412aから垂直方向(図示右方向)に進行する指向性の強い音響流412bが音響流411bの作用により更に微細化され送られてきた微細ミスト33aに音響放射圧による押圧を作用させ、音響流412bの進行方向(図示右方向)に移動させる。この際に微細ミスト33aは、音響流412bによる超音波振動の作用により更に安定した微細ミスト33bとなりアイソレーター400の内部に循環分散される。
【0070】
このように、アイソレーター400の内部では、震動盤411と震動盤412とが互いの震動面411a、412aを正面から対向させずに配置されている。震動盤411の震動面411aと震動盤412の震動面412aが正面から対向した場合には、各震動盤411、412から発生する超音波が互いに作用して定在波音場を発生させる。定在波音場が発生した場合には、微細ミスト33a、33bが音響放射圧による押圧を受けることがなく移動できないからである。
【0071】
このように、アイソレーター400の内部では、音響流411b及び音響流412bにより高度に微細安定化された微細ミスト33a、33bが、図示矢印方法(図示右回り)に旋回するように循環する。なお、音響流411b及び音響流412bは、平面上で伝わる安定した定常波の縦波であって、ミストノズルからの直接方式やファン方式に比べ、風速差のない気流として伝搬する。
【0072】
このとき、微細ミスト33a、33bは、超音波振動の作用で更に微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、微細ミスト33a、33bは、高度に微細化されたミストでありアイソレーター400の内壁面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。従って、従来の除染操作に比べアイソレーター400の内壁面に部分的でムラ及び厚みのある凝縮膜を生じさせることがない。
【0073】
このように、過酸化水素の微細ミスト33a、33bは、超音波振動の作用を常に受けながらアイソレーター400の内部で蒸発と凝縮と微細化を繰り返しながら循環する。また、アイソレーター400の内壁面においても、超音波振動の作用を常に受け均一且つ薄層の凝縮膜の再蒸発と凝縮とが繰り返される。これらのことにより、アイソレーター400の内部には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0074】
また、アイソレーター400の内壁面に均一且つ薄層で形成された凝縮膜が再蒸発と凝縮とを繰り返すことにより、除染ミスト中の除染剤濃度を上げることが可能で、少量の除染剤で効率の良い除染を可能にする。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、除染後のエアレーションの効率も向上し除染操作の短時間化も可能である。更に、副次的効果であるが、音響流411b及び音響流412bによる超音波振動及び音響放射圧によって、アイソレーター400の内壁面への付着物の除去効果も得られる。
【0075】
このように、本実施例においては、アイソレーター400の内部に供給される微細ミスト33が既に高度に微細化されていることに加え、アイソレーター400の内部の2台の震動盤411、412の音響波からの超音波振動の作用を常に受けながらアイソレーター10の内部で蒸発と凝縮と微細化を繰り返す。また、音響波による音響放射圧の押圧によりアイソレーター400の内部を循環する。よって、本実施例においては、本発明に係るミスト供給装置を有効に利用して効率的な除染を可能とする。
【0076】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、ミスト供給装置の震動盤としてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置したものを使用した。しかし、これに限るものではなく、震動盤として一定面積を有するステンレス板にランジュバン型震動子を固定した震動盤やその他の超音波振動する盤面を有するものであればどのような震動盤を使用するようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、ミスト供給装置の震動盤としてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置したものを使用し、超音波スピーカーの送波方向を統一して配置すると共にこれらの超音波スピーカーを同位相で作動させるようにした。しかし、これに限るものではなく、複数の超音波スピーカーを異なる位相で作動させるようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(H水溶液)を使用した。しかし、これに限るものではなく、除染剤として使用される液体状の除染剤であればどのようなものを使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10、110、210…ミスト供給装置、20、120、230…筐体、
21、22、23、24、121、122、123、124、221、222…壁面、
30、130、230…ミスト発生装置、
31…二流体スプレーノズル、131、231…ネブライザー、
31a、131a…ミスト放出口、131b…本体容器、
131c、231c…超音波振動子、
32、132、232…過酸化水素水ミスト、33、133、233…微細ミスト、
40、140、240…ミスト微細化装置、
41、42、141、142、241…震動盤、242…反射盤、
41a、42a、141a、142a、241a…震動面、242a…反射面、
50、150、250…供給口、
61…スピーカー基盤、62…スピーカー基盤の平面、
63…超音波スピーカー、64…超音波スピーカーの震動面、
400…アイソレーター、301、302、401、402、403、404…壁面、
411、412…震動盤、411a、412a…震動面、411b、412b…音響流。
図1
図2
図3
図4
図5