(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】継手構造及び継手構造の組み付け方法
(51)【国際特許分類】
F16L 19/03 20060101AFI20230821BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F16L19/03
F16L23/02 D
(21)【出願番号】P 2019195855
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 謙士
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017381(JP,A)
【文献】実開平03-084492(JP,U)
【文献】特開昭59-026668(JP,A)
【文献】特開2001-349430(JP,A)
【文献】米国特許第05681064(US,A)
【文献】米国特許第05145219(US,A)
【文献】米国特許第05829796(US,A)
【文献】特開昭59-050288(JP,A)
【文献】特表2001-516862(JP,A)
【文献】特開2016-014468(JP,A)
【文献】特表2002-504213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/03
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に第1流体流路が形成されるとともに外周に雄ねじが形成される第1継手部材と、
前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するナット部材と、
内周に第2流体流路が形成され、端部が前記ナット部材内に係止される第2継手部材と、
前記第1継手部材の突き合わせ端面と前記第2継手部材の突き合わせ端面との間に介装されるガスケットと、
前記第1継手部材又は前記第2継手部材の外周側に取り付けられ、前記ガスケットを保持するリテーナと、を備え、
前記第1継手部材の突き合わせ端面には、前記リテーナが当接する第1当接領域と、前記第1当接領域よりも内側に位置するとともに前記ガスケットの一方の端面に押し付けられる第1突起と、が設けられ、
前記第2継手部材の突き合わせ端面には、前記リテーナが当接可能な第2当接領域と、前記第2当接領域よりも内側に位置するとともに前記ガスケットの他方の端面に押し付けられる第2突起と、が設けられ、
前記リテーナは、前記第1当接領域と前記第2当接領域との間に挟持され
、
前記リテーナは、
前記第1当接領域と前記ガスケットが当接する第1挟持部と、
前記第2当接領域と前記ガスケットが当接する第2挟持部と、
前記ガスケットが収容され、前記第1挟持部と前記第2挟持部とを接続する接続部と、を有し、
前記ガスケットは、前記第1挟持部と前記第2挟持部との間に挟持される、
継手構造。
【請求項2】
前記接続部は、前記ナット部材の前記雌ねじと接触しないように前記ガスケットと前記雌ねじとの間に位置する、
請求項
1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記ガスケットは、形状記憶合金から構成される、
請求項1
又は2に記載の継手構造。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の継手構造を組み付ける継手構造の組み付け方法であって、
前記ガスケットを前記リテーナに保持させる工程と、
前記ガスケットが保持された前記リテーナを前記第1継手部材又は前記第2継手部材の外周側に取り付ける工程と、
前記第2継手部材を前記ナット部材に挿入する工程と、
前記リテーナが前記第1当接領域と前記第2当接領域との間に挟持されるとともに前記ナット部材に挿入された前記第2継手部材の端部が係止されるように前記第1継手部材に前記ナット部材をねじ込む工程と、を備える、
継手構造の組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造及び継手構造の組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外周に雄ねじが形成される第1継手部材と、雄ねじに螺合するナット部材と、ナット部材に挿入される第2継手部材と、第1継手部材と第2継手部材との間に設けられるガスケットと、ガスケットを保持するリテーナと、を備える継手構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の継手構造では、第1継手部材の突き合わせ端面及び第2継手部材の突き合わせ端面に過剰締め付け防止用環状突起が設けられるため、第1継手部材及び第2継手部材の構造が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、継手部材の簡素化を図りながらガスケットへの過剰締め付けを防止することができる継手構造及び継手構造の組み付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、内周に第1流体流路が形成されるとともに外周に雄ねじが形成される第1継手部材と、前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するナット部材と、内周に第2流体流路が形成され、端部が前記ナット部材内に係止される第2継手部材と、前記第1継手部材の突き合わせ端面と前記第2継手部材の突き合わせ端面との間に介装されるガスケットと、前記第1継手部材又は前記第2継手部材の外周側に取り付けられ、前記ガスケットを保持するリテーナと、を備え、前記第1継手部材の突き合わせ端面には、前記リテーナが当接する第1当接領域と、前記第1当接領域よりも内側に位置するとともに前記ガスケットの一方の端面に押し付けられる第1突起と、が設けられ、前記第2継手部材の突き合わせ端面には、前記リテーナが当接可能な第2当接領域と、前記第2当接領域よりも内側に位置するとともに前記ガスケットの他方の端面に押し付けられる第2突起と、が設けられ、前記リテーナは、前記第1当接領域と前記第2当接領域との間に挟持される継手構造が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、継手部材の簡素化を図りながらガスケットへの過剰締め付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る継手構造を示す断面図である。
【
図3】継手構造を組み付ける継手構造の組み付け方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態と称する。)について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一の要素には同一の符号を付する。
【0010】
まず、
図1から
図2Cを参照しながら本実施形態に係る継手構造1について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る継手構造1を示す断面図である。なお、
図1では、第1継手部材2及び第2継手部材4の一部を省略している。
図2Aは、リテーナ7を示す斜視図である。
図2Bは、リテーナ7を示す正面図である。
図2Cは、リテーナ7を示す背面図である。また、図中において、継手構造1の軸方向を単に軸方向、継手構造1の径方向を単に径方向と称する。
【0012】
本実施形態に係る継手構造1は、例えば、流体としてのプロセスガス又はパージガスを供給するために流体供給ユニットに用いられる。流体供給ユニット(図示しない)は、半導体製造装置(CVD装置、スパッタリング装置、エッチング装置等)におけるプロセスガス及びパージガスの供給手段に用いられる。
【0013】
図1に示すように、継手構造1は、第1継手部材2、ナット部材3、第2継手部材4、ベアリング5、ガスケット6及びリテーナ7を備える。
【0014】
第1継手部材2は、プロセスガス又はパージガスを半導体製造装置へ供給するための金属製の管部材であり、略筒状(具体的には、略円筒状)に形成される。第1継手部材2は、内周に形成される第1流体流路21と、外周の一部に形成される保持部としての段差部22と、外周の他の一部に形成される雄ねじ23と、を有する。
【0015】
第1流体流路21は、その一端が第1継手部材2の突き合わせ端面24で開口する。第1流体流路21を通じてプロセスガス又はパージガスが半導体製造装置へ供給される。
【0016】
段差部22は、筒状(具体的には、円筒状)に形成され、リテーナ7の後述する被保持部71を保持するための保持部である。段差部22は、第1継手部材2の外周において突き合わせ端面24から軸方向に延在する。雄ねじ23は、ナット部材3の後述する雌ねじ33に螺合するための雄ねじである。雄ねじ23は、段差部22と干渉しないように形成される。
【0017】
ガスケット6の一方の端面に対向する第1継手部材2の環状(具体的には円環状)の突き合わせ端面24には、第1当接領域25及び第1突起26が設けられる。第1突起26は、第1当接領域25よりも径方向の内側に位置する。
【0018】
第1当接領域25は、リテーナ7の後述する第1挟持部72に当接するための平坦面である。第1当接領域25は、突き合わせ端面24の外周縁に環状(具体的には、円環状)に形成される。
【0019】
第1突起26は、ガスケット6の一方の端面に押し付けられる。第1突起26は、突き合わせ端面24から突出するように環状(具体的には、円環状)に形成される。また、第1突起26は、その先端に向かうに従って先細りに形成される。
【0020】
ナット部材3は、第1継手部材2の端部及び第2継手部材4の端部を収容するための金属製の袋ナットである。ナット部材3は、略有底筒状(具体的には、略有底円筒状)に形成される。ナット部材3の底面部31には、底面部31を貫通する貫通孔32が形成される。貫通孔32には第2継手部材4が挿通される。ナット部材3の先端側の内周には、第1継手部材2の雄ねじ23に螺合する雌ねじ33が形成される。
【0021】
第2継手部材4は、第1継手部材2と同様に、プロセスガス又はパージガスを半導体製造装置へ供給するための金属製の管部材であり、略筒状(具体的には、略円筒状)に形成される。第2継手部材4は、その端部がナット部材3に係止される。なお、第1継手部材2と第2継手部材4とは、同軸に配置される。第2継手部材4は、内周に形成される第2流体流路41と、端部の外周に設けられるフランジ42と、を有する。
【0022】
第2流体流路41は、その一端が第2継手部材4の突き合わせ端面43で開口する。第2流体流路41を通じてプロセスガス又はパージガスが半導体製造装置へ供給される。なお、第1流体流路21と第2流体流路41とを同径に形成することが好ましい。
【0023】
本実施形態では、フランジ42とナット部材3の底面部31との間には、共回り防止用のベアリング5が設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、ベアリング5を設けなくてもよい。
【0024】
第1継手部材2と同様に、ガスケット6の他方の端面に対向する第2継手部材4における環状(具体的には円環状)の突き合わせ端面43には、第2当接領域44及び第2突起45が設けられる。第2突起45は、第2当接領域44よりも径方向の内側に位置する。
【0025】
第2当接領域44は、リテーナ7の後述する第2挟持部73に当接するための平坦面である。第2当接領域44は、第1当接領域25と同様に、突き合わせ端面43の外周縁に環状(具体的には、円環状)に形成される。
【0026】
第2突起45は、ガスケット6の一方の端面に押し付けられる。第2突起45は、第1突起26と同様に、突き合わせ端面43から突出するように環状(具体的には、円環状)に形成される。また、第2突起45は、その先端に向かうに従って先細りに形成される。
【0027】
第1突起26は、その突出量(すなわち、第1当接領域25から第1突起26の先端までの距離)が第2突起45の突出量(すなわち、第2当接領域44から第2突起45の先端までの距離)と一致する。また、第1突起26の先端と第2突起45の先端とは、同一円周上に形成される。
【0028】
ガスケット6は、第1継手部材2の突き合わせ端面24と第2継手部材4の突き合わせ端面43との間に介装される環状(具体的には円環状)のシール材である。ガスケット6は、単一の外径を有する。これにより、ガスケット6の簡素化を図ることができる。
【0029】
また、ガスケット6は、形状記憶合金から構成される。これにより、継手構造1のガスケット6として使用されたガスケット6に対し加熱等の工程を行うことにより、このガスケット6の形状を元に戻すことができるので、ガスケット6を使い捨てることなく、繰り返して再利用することができる。このため、ガスケット6の再利用による継手構造1の低コスト化を図ることができる。
【0030】
図1から
図2Cに示すように、リテーナ7は、第1継手部材2の段差部22に取り付けられ、ガスケット6を保持するための保持部材である。なお、リテーナ7、第1継手部材2及び第2継手部材4は、同じ金属製の材質から構成される。さらに、リテーナ7、第1継手部材2及び第2継手部材4の硬度は、ガスケット6の硬度よりも高い。
【0031】
リテーナ7は、第1継手部材2における第1当接領域25及び第2継手部材4における第2当接領域44に当接する。そして、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、ガスケット6を保持したリテーナ7は、第1当接領域25と第2当接領域44との間に挟持される。これにより、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、第1当接領域25と第2当接領域44との間のクリアランス(すなわち、第1継手部材2の突き合わせ端面24と第2継手部材4の突き合わせ端面43との間のクリアランス)は、ガスケット6及びリテーナ7の存在により保たれるので、ガスケット6への過剰締め付けを防止することができる。
【0032】
リテーナ7は、第1継手部材2の外周面(具体的には、段差部22)に保持される被保持部71と、第1当接領域25とガスケット6の一方の端面における外縁とに当接する第1挟持部72と、第2当接領域44とガスケット6の他方の端面における外縁とに当接する第2挟持部73と、第1挟持部72と第2挟持部73とを接続する接続部74と、を有する。なお、ガスケット6は、第1挟持部72と第2挟持部73との間に挟持される。
【0033】
被保持部71は、同一円周上に異なる間隔を空けて形成される複数(ここでは、三つ)の被保持爪71a,71b,71cから構成される。複数の被保持爪71a,71b,71cは、略軸方向に延在して形成される。また、複数の被保持爪71a,71b,71cの基端は、それぞれ、第1挟持部72の後述する複数(ここでは、三つ)のベローズ72a,72b,72cに接続される。
【0034】
第1挟持部72は、同一円周上に異なる間隔を空けて形成される複数の挟持爪としてのベローズ72a,72b,72cから構成される。ベローズ72a,72b,72cは、径方向に延在して形成される。また、ベローズ72a,72b,72cは、それぞれ被保持爪71a,71b,71cの基端に接続される第1折曲部721a,721b,721cと、第1折曲部721a,721b,721cと径方向に重なるように第1折曲部721a,721b,721cに接続される第2折曲部722a,722b,722cと、を有する。
【0035】
第1折曲部721a,721b,721cは第1当接領域25に当接するとともに、第2折曲部722a,722b,722cはガスケット6の一方の端面における外縁に当接する。なお、ベローズ72a,72b,72cは、その厚み(すなわち第1折曲部721a,721b,721c及び第2折曲部722a,722b,722cの厚みの合計)が第1突起26の突出量よりも僅かに小さい。
【0036】
接続部74は、ナット部材3の雌ねじ33と接触しないようにガスケット6の外周面と雌ねじ33との間に位置する。これにより、接続部74の熱膨張による雌ねじ33への食い込みを防止することができる。
【0037】
接続部74は、同一円周上に異なる間隔を空けて形成される複数(ここでは、三つ)の接続片74a,74b,74cから構成される。接続片74a,74b,74cは、軸方向に延在して形成される。接続片74a,74b,74cの内側には、ガスケット6が収容される。また、接続片74a,74b,74cは、それぞれベローズ72a,72b,72cと第2挟持部73とを接続する。
【0038】
そして、被保持爪71a,71b,71c、ベローズ72a,72b,72c及び接続片74a,74b,74cは、それぞれ同一円周上に異なる間隔を空けて形成される略矩形状の板片75a,75b,75cを複数回折り曲げて構成される。これにより、被保持爪71a,71b,71c、ベローズ72a,72b,72c及び接続片74a,74b,74cを板片75a,75b,75cにより容易に形成することができる。また、被保持爪71a,71b,71c、ベローズ72a,72b,72c及び接続片74a,74b,74cの数は、板片75a,75b,75cの数と同じである。
【0039】
隣接する板片75a,75b間の間隔は、隣接する板片75a,75c間の間隔及び隣接する板片75b,75c間の間隔よりも大きい。これにより、隣接する板片75a,75c間の間隔からガスケット6を径方向に沿って第1挟持部72と第2挟持部73との間に圧入させることができる。
【0040】
第2挟持部73は、接続片74a,74b,74c(すなわち、板片75a,75b,75cの基端)に接続されるベース731と、ベース731と径方向に重なるようにベース731に接続される増厚部732と、を有する。なお、第2挟持部73は、その厚み(すなわち、ベース731及び増厚部732の厚みの合計)が第1挟持部72の厚みと一致し、第2突起45の突出量よりも僅かに小さい。
【0041】
これにより、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、第1当接領域25からガスケット6の一方の端面までの距離と、第2当接領域44からガスケット6の他方の端面までの距離とを同一にすることができる。さらに、上述したように、第1突起26の突出量と第2突起45の突出量とが一致するので、ガスケット6の一方の端面への第1突起26の食い込み量(すなわち、第1突起26の突出量と第1挟持部72の厚みとの差分)と、ガスケット6の他方の端面への第2突起45の食い込み量(すなわち、第2突起45の突出量と第2挟持部73の厚みとの差分)とを同一にすることができる。
【0042】
ベース731は、環状(具体的には、円環状)に構成され、ガスケット6の他方の端面における外縁に当接する。ベース731の一方の端面における外周縁には、複数の接続片74a,74b,74cが接続される。一方、ベース731の他方の端面における内周縁には、複数の増厚片732a,732b,732cが接続される。
【0043】
増厚部732は、第2当接領域44に当接する。また、増厚部732は、同一円周上に異なる間隔を空けて形成される複数(ここでは、三つ)の増厚片732a,732b,732cをそれぞれ径方向に折り曲げて構成される。なお、複数の増厚片732a,732b,732cは、それぞれ複数の板片75a,75b,75cの位置に対応して設けられる。
【0044】
また、本実施形態では、第2挟持部73は、ベース731及び増厚部732の両方から構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、増厚部732を有することなく、ベース731のみから構成されてもよい。この場合、ベース731は、その厚みが本実施形態の第1挟持部72の厚みの合計となるように形成される。
【0045】
ガスケット6は、第1挟持部72と第2挟持部73との間に挟持されるようにリテーナ7により保持される。これにより、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、第1当接領域25と第2当接領域44との間のクリアランスは、ガスケット6、第1挟持部72及び第2挟持部73により保たれるので、ガスケット6への過剰締め付けを防止することができる。
【0046】
次に、
図3を参照しながら継手構造1を組み付ける継手構造1の組み付け方法について説明する。
【0047】
図3は、継手構造1を組み付ける継手構造1の組み付け方法を示すフローチャートである。
【0048】
図3に示すように、まず、工程S1において、ガスケット6をリテーナ7に保持させる。具体的には、工程S1において、隣接する板片75a,75c間の間隔からガスケット6を径方向に沿って第1挟持部72と第2挟持部73との間に圧入させることにより、ガスケット6をリテーナ7に保持させる。なお、このとき、ガスケット6は、第1挟持部72と第2挟持部73との間に挟持される。
【0049】
次に、工程S2において、ガスケット6が保持されたリテーナ7を第1継手部材2の外周面(具体的には、段差部22)に取り付ける。具体的には、工程S2において、リテーナ7の被保持部71を第1継手部材2の段差部22に対し摺動させて外嵌する。
【0050】
次に、工程S3において、第2継手部材4をナット部材3に挿入する。具体的には、工程S3において、ベアリング5を第2継手部材4の外周面に取り付けた状態で、第2継手部材4をナット部材3の貫通孔32に貫通させるようにナット部材3に挿入する。このとき、ベアリング5は、ナット部材3の底面部31と第2継手部材4のフランジ42との間に位置する。
【0051】
次に、工程S4において、リテーナ7が第1当接領域25と第2当接領域44との間に挟持されるとともにナット部材3に挿入された第2継手部材4の端部が係止されるようにリテーナ7が取り付けられた第1継手部材2にナット部材3をねじ込む。
【0052】
具体的には、工程S4において、第1継手部材2にナット部材3をねじ込むと、第1継手部材2の第1当接領域25と第2継手部材4の第2当接領域44との間のクリアランスが小さくなる。そして、リテーナ7の第1挟持部72が第1当接領域25とガスケット6の一方の端面における外縁とに当接するとともにリテーナ7の第2挟持部73が第2当接領域44とガスケット6の他方の端面における外縁とに当接すると、第1当接領域25と第2当接領域44との間のクリアランスが保たれる。したがって、ガスケット6への過剰締め付けを防止することができる。
【0053】
本実施形態では、継手構造1の組み付け方法は、工程S1、工程S2及び工程S3の順に行われているが、これに限定されるものではなく、例えば、工程S1、工程S3及び工程S2の順に行われてもよい。又は工程S3、工程S1及び工程S2の順に行われてもよい。
【0054】
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係る継手構造1は、内周に第1流体流路21が形成されるとともに外周に雄ねじ23が形成される第1継手部材2と、雄ねじ23に螺合する雌ねじ33を有するナット部材3と、内周に第2流体流路41が形成され、端部がナット部材3内に係止される第2継手部材4と、第1継手部材2の突き合わせ端面24と第2継手部材4の突き合わせ端面43との間に介装されるガスケット6と、第1継手部材2の外周側に取り付けられ、ガスケット6を保持するリテーナ7と、を備える。第1継手部材2の突き合わせ端面24には、リテーナ7が当接する第1当接領域25と、第1当接領域25よりも内側に位置するとともにガスケット6の一方の端面に押し付けられる第1突起26と、が設けられ、第2継手部材4の突き合わせ端面43には、リテーナ7が当接する第2当接領域44と、第2当接領域44よりも内側に位置するとともにガスケット6の他方の端面に押し付けられる第2突起45と、が設けられ、リテーナ7は、第1当接領域25と第2当接領域44との間に挟持される。
【0056】
本実施形態に係る継手構造1の組み付け方法は、ガスケット6をリテーナ7に保持させる工程S1と、ガスケット6が保持されたリテーナ7を第1継手部材2の外周側に取り付ける工程S2と、第2継手部材4をナット部材3に挿入する工程S3と、リテーナ7が第1当接領域25と第2当接領域44との間に挟持されるとともにナット部材3に挿入された第2継手部材4の端部が係止されるように第1継手部材2にナット部材3をねじ込む工程S4と、を備える。
【0057】
これらの構成によれば、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、第1当接領域25と第2当接領域44との間のクリアランスは、ガスケット6及びリテーナ7の存在により保たれるので、ガスケット6への過剰締め付けを防止することができる。
【0058】
また、リテーナ7は、第1当接領域25及び第2当接領域44に当接するので、第1継手部材2の突き合わせ端面24及び第2継手部材4の突き合わせ端面43に過剰締め付け防止用の突起を別途設ける必要がない。このため、第1継手部材2及び第2継手部材4の簡素化を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、リテーナ7は、第1当接領域25とガスケット6の一方の端面における外縁とが当接する第1挟持部72と、第2当接領域44とガスケット6の他方の端面における外縁とが当接する第2挟持部73と、ガスケット6が収容され、第1挟持部72と第2挟持部73とを接続する接続部74と、を有する。ガスケット6は、第1挟持部72と第2挟持部73との間に挟持される
【0060】
この構成によれば、ナット部材3が第1継手部材2に締め付けられた状態において、第1当接領域25と第2当接領域44との間のクリアランスは、第1挟持部72、第2挟持部73及び第1挟持部72と第2挟持部73との間に挟持されるガスケット6により保たれるので、ガスケット6への過剰締め付けを防止することができる。また、接続部74は、第1挟持部72と第2挟持部73とを接続するので、第1挟持部72、第2挟持部73及び接続部74を有するリテーナ7を一体形成することができる。この結果、継手構造1の組み付けを容易に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、接続部74は、ナット部材3の雌ねじ33と接触しないようにガスケット6と雌ねじ33との間に位置する。
【0062】
この構成によれば、接続部74の熱膨張による雌ねじ33への食い込みを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ガスケット6は、形状記憶合金から構成される。
【0064】
この構成によれば、ガスケット6への過剰締め付けによるガスケット6の潰れ(破壊)を防止することができるので、ガスケット6の形状記憶機能を維持することができる。
【0065】
以上、本実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述した実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
(変形例)
上述した実施形態では、リテーナ7の被保持部71は、第1継手部材2の外周面に取り付けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2継手部材4の外周面に取り付けられてもよい。この場合、ナット部材3の雌ねじ33は、上述した実施形態よりもナット部材3の底面部31側に形成される。
【0067】
また、上述した実施形態では、第1挟持部72は、複数のベローズ72a,72b,72cから構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、環状に形成されるベースと、ベースと径方向に重なるようにベースに接続される増厚部とから構成されてもよい。この場合、ベースの一方の端面には被保持部71が接続されるとともに、ベースの他方の端面には増厚部が接続される。また、第2挟持部73は、複数のベローズから構成される。
【0068】
また、上述した実施形態では、隣接する板片75a,75b間の間隔は、隣接する板片75a,75c間の間隔及び隣接する板片75b,75c間の間隔よりも大きく形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、隣接する板片75a,75c間の間隔及び隣接する板片75b,75c間の間隔と一致するように形成されてもよい。すなわち、板片75a,75b,75cは、同一円周上に等間隔を空けて形成される。この場合、ガスケット6を径方向に沿って第1挟持部72と第2挟持部73との間に圧入させるのではなく、軸方向に沿って第1挟持部72と第2挟持部73との間に圧入させる必要がある。
【0069】
また、上述した実施形態では、第1突起26の突出量及び第1挟持部72の厚みは、それぞれ第2突起45の突出量及び第2挟持部73の厚みと一致しているが、これに限定されるものではなく、例えば、それぞれ第2突起45の突出量及び第2挟持部73の厚みと異なってもよい。この場合、ガスケット6の一方の端面への第1突起26の食い込み量(すなわち、第1突起26の突出量と第1挟持部72の厚みとの差分)と、ガスケット6の他方の端面への第2突起45の食い込み量(すなわち、第2突起45の突出量と第2挟持部73の厚みとの差分)とが一致すれば足りる。
【符号の説明】
【0070】
1 継手構造
2 第1継手部材
3 ナット部材
4 第2継手部材
6 ガスケット
7 リテーナ
21 第1流体流路
22 凹部(保持部)
23 雄ねじ
24 突き合わせ端面(第1継手部材側)
25 第1当接領域
26 第1突起
33 雌ねじ
41 第2流体流路
43 突き合わせ端面(第2継手部材側)
44 第2当接領域
45 第2突起
71 被保持部
72 第1挟持部
73 第2挟持部
74 接続部