(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】液体圧送装置の排気弁構造
(51)【国際特許分類】
F16T 1/20 20060101AFI20230821BHJP
F16T 1/45 20060101ALI20230821BHJP
F16K 31/383 20060101ALI20230821BHJP
F16K 1/44 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F16T1/20 B
F16T1/45
F16K31/383
F16K1/44 D
(21)【出願番号】P 2021054075
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】上田 一平
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-157117(JP,A)
【文献】実開昭64-012980(JP,U)
【文献】特開平10-288266(JP,A)
【文献】特開2018-040313(JP,A)
【文献】実開昭63-180778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
31/12-31/62
F16T 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に貯留された液体を、容器内に流入された駆動流体により加圧して容器外に排出する液体圧送装置の排気弁構造であって、
前記容器内の駆動流体を排出するメイン排気通路と、
前記容器内の空間と前記メイン排気通路とを連通し、前記メイン排気通路よりも通路面積が小さいパイロット排気通路と、
前記メイン排気通路を開閉するメイン排気弁と、
駆動源に連結されて前記パイロット排気通路を開閉するパイロット排気弁と、
メイン弁シートから離間する方向に前記メイン排気弁に力を付与する第1のばね部材と、
パイロット弁シートから離間する方向に前記パイロット排気弁に力を付与するとともに、前記メイン弁シートに着座する方向に前記メイン排気弁に力を付与する第2のばね部材と、
を備えた液体圧送装置の排気弁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の液体圧送装置の排気弁構造において、前記第1のばね部材の
開弁時のばね力が、前記第1のばね部材がない状態で前記メイン排気弁を開弁させるのに必要な開弁力以上で、且つ、前記開弁力と前記第2のばね部材の
開弁時のばね力との和よりも小さく設定されている液体圧送装置の排気弁構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体圧送装置の排気弁構造において、前記メイン排気弁は、
内部に前記パイロット排気通路が形成されて軸方向の一端部で前記メイン弁シートに着座する筒状のメイン弁体と、
前記メイン弁体の他端部から径方向に延びる円盤状の底板と、
前記底板から軸方向の他端側に延びる筒部と、を有し、
前記メイン弁シートと前記底板の一端面との間に第1のばね部材が介装され、
前記底板の他端面に前記パイロット弁シートが形成されている液体圧送装置の排気弁構造。
【請求項4】
請求項3に記載の液体圧送装置の排気弁構造において、前記パイロット排気弁は、
前記筒部の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体と、
前記パイロット弁体から鍔状に延びるフランジ部と、を有し、
前記底板の他端面と前記フランジ部の一端面との間に第2のばね部材が介装されている液体圧送装置の排気弁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に貯留された液体を、容器内に流入された駆動流体により加圧して容器外に排出する液体圧送装置の排気弁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に貯留された液体を、蒸気もしくは圧縮空気を駆動流体として用いて加圧し、容器外に液体を排出する液体圧送装置がある(例えば、特許文献1)。特許文献1のような圧送装置は、ポンピングトラップと呼ばれ、電気が不要の機械式のポンプである。ポンピングトラップは、電気が不要であるので、例えば、電源供給が困難な区域に適用できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体圧送装置では、排気弁体によって開けることのできる排気弁口の開口面積が小さい。そのため、駆動流体の排気能力が低く、流入側の逆止弁の開弁が遅れて容器内への液体の流入が遅くなることがある。しかしながら、排気弁口の開口面積を大きくすると、開口面積の小さな排気弁口を開けるのに必要な開弁力よりも大きな開弁力が必要となる。
【0005】
本発明は、排気能力を高めて流入側の逆止弁を速やかに開弁させることにより、単位時間当たりの液体圧送能力を高めることができる液体圧送装置の排気弁構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の液体圧送装置の排気弁構造は、容器内に貯留された液体を、容器内に流入された駆動流体により加圧して容器外に排出する液体圧送装置の排気弁構造であって、前記容器内の駆動流体を排出するメイン排気通路と、前記容器内の空間と前記メイン排気通路とを連通して前記メイン排気通路よりも通路面積が小さいパイロット排気通路と、前記メイン排気通路を開閉するメイン排気弁と、駆動源に連結されて前記パイロット排気通路を開閉するパイロット排気弁と、メイン弁シートから離間する方向に前記メイン排気弁に力を付与する第1のばね部材と、パイロット弁シートから離間する方向に前記パイロット排気弁に力を付与するとともに、前記メイン弁シートに着座する方向に前記メイン排気弁に力を付与する第2のばね部材とを備えている。
【0007】
この構成によれば、開弁時、駆動源からの駆動力と第2のばね部材のばね力により、通路面積の小さなパイロット排気弁が最初に開く。パイロット排気弁が開くと、第2のばね部材のばね力が0となる。つまり、第2のばね部材によりメイン排気弁をメイン弁シートに着座させる方向に働く力がなくなる。その結果、駆動源からの駆動力と第1のばね部材のばね力により、通路面積の大きなメイン排気弁が開く。このように、第1のばね部材のばね力でメイン排気弁が開くので、小さな通路面積のパイロット排気弁を開くのに必要な力で、通路面積の大きなメイン排気弁が開弁する。その結果、駆動流体の排気能力が高まって液体の容器への流入側の逆止弁が速やかに開弁し、単位時間当たりの液体圧送能力を高めることができる。
【0008】
本発明において、前記第1のばね部材のばね力が、前記第1のばね部材がない状態で前記メイン排気弁を開弁させるのに必要な開弁力以上で、且つ、前記開弁力と前記第2のばね部材のばね力との和よりも小さく設定されていてもよい。この構成によれば、大きな開弁力が得られるので、メイン排気弁の動作が安定する。
【0009】
本発明において、前記メイン排気弁は、内部に前記パイロット排気通路が形成されて軸方向の一端部で前記メイン弁シートに着座する筒状のメイン弁体と、前記メイン弁体の他端部から径方向に延びる円盤状の底板と、前記底板から軸方向の他端側に延びる筒部とを有し、前記メイン弁シートと前記底板の一端面との間に第1のばね部材が介装され、前記底板の他端面に前記パイロット弁シートが形成されていてもよい。
【0010】
この場合、前記パイロット排気弁は、前記筒部の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体と、前記パイロット弁体から鍔状に延びるフランジ部とを有し、前記底板の他端面と前記フランジ部の一端面との間に第2のばね部材が介装されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体圧送装置の排気弁構造によれば、排気能力を高めて流入側の逆止弁を速やかに開弁させることにより、単位時間当たりの液体圧送能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排気弁構造を備えた液体圧送装置を示す概略構成図である。
【
図2】同液体圧送装置の
図1とは異なる状態を示す概略構成図である。
【
図4】同液体圧送装置の排出弁が閉じた第1の状態を示す縦断面図である。
【
図5】同液体圧送装置の排出弁が閉じた第2の状態を示す縦断面図である。
【
図6】同液体圧送装置の排出弁が開いた状態を示す縦断面図である。
【
図7】(A)および(B)は従来の液体圧送装置の排出弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は本発明の第1実施形態に係る排気弁構造を備えた液体圧送装置を示す概略構成図である。同圧送装置1は、容器2内に貯留された液体Wを、容器2内に導入された駆動流体Fにより加圧して容器2外に排出する。
図1は液体Wが流入している状態を示し、
図2は液体Wが排出されている状態を示す。本実施形態の液体Wは、水、詳細には、蒸気配管、蒸気機器などからの復水である。また、本実施形態の駆動流体Fは蒸気である。
【0014】
容器2に、液体Wが流入する液体流入口4と、液体Wが流出する液体流出口6が設けられている。液体流入口4に液体流入通路8が接続され、液体流出口6に液体流出通路10が接続されている。液体流入口4と液体流入通路8との間に流入側逆止弁12が接続され、液体流出口6と液体流出通路10との間に流出側逆止弁14が接続されている。
【0015】
容器2の頂部に、容器2内に駆動流体Fを流入させる駆動流体流入口16と、容器2内の駆動流体Fを容器2外に排出する駆動流体流出口18とが設けられている。駆動流体流入口16に駆動流体流入通路17が接続され、駆動流体流出口18に駆動流体流出通路19が接続されている。圧送装置1は、駆動流体流入口16を開閉する駆動弁(吸入弁)20と、駆動流体流出口18を開閉する排出弁(排気弁)22とを有している。
【0016】
容器2の内部に、容器2内に貯留された液体Wの液位WLを検知するフロート24が収納されている。駆動弁20および排出弁22は、作動部材26を介してフロート24に連結されている。作動部材26は、公知の構造であり、互いに回動自在に連結された複数のリンク部材26aと単一のばね部材26bとからなる。作動部材26は、フロート24で検知された液位WLに基づいて駆動弁20および排出弁22を作動させる。つまり、これらフロート24および作動部材26が、駆動弁20および排出弁22の駆動源を構成する。
【0017】
図1に示す液位WLが低いとき、液体Wに浮いたフロート24も低い位置にある。このとき、作動部材26の作動により、駆動弁20が閉状態となり、排出弁22は開状態となる。つまり、容器2内への駆動流体Fの流入が阻止され、容器2の内部空間が大気に開放される。液位WLが低い状態では、容器2の内部の圧力が低いので、液体流入通路8の液体Wが、流入側逆止弁12を開いて液体流入口4から容器2内に流入する。一方、容器2の内部の圧力が低いことから、流出側逆止弁14は閉止状態である。
【0018】
液体Wが容器2内に流入すると、液位WLが上昇し、これに伴い、フロート24も上昇する。液位WLが規定値を超えると、
図2に示すように、作動部材26の作動により、駆動弁20が開状態となり、排出弁22は閉状態となる。つまり、容器2内へ駆動流体Fが流入し、容器内2の駆動流体Fの外部への排出が阻止される。これにより、容器2の内部の圧力が高くなるので、容器内2の液体Wが、流出側逆止弁14を開いて液体流出口6から液体流出通路10を通って容器2外に排出される。一方、容器2の内部の圧力が高いので、流入側逆止弁12は閉止状態となる。
【0019】
液体Wが容器2外に排出されると、液位WLが下降する。これに伴い、フロート24も下降し、
図1の状態に戻る。以降、
図1の状態と
図2の状態が繰り返され、液体Wが圧送される。
【0020】
つぎに、
図3~6を用いて、排出弁22の構造の詳細を説明する。駆動弁20(
図1)の構造は、公知のものと同じであるから、説明を省略する。
図3に示すように、容器2に、作動部材26がボルトBにより着脱自在に取り付けられている。作動部材26は、容器2の内側に配置され、その一端にフロート24が取り付けられている。つまり、フロート24は、作動部材26を介して容器2に支持されている。一方、作動部材26の他端に、動力伝達部材28が連結されている。動力伝達部材28は、排出弁22に駆動源24,26の駆動力を伝達する。
【0021】
図4に示すように、本実施形態の排出弁22は、容器2内の駆動流体Fを排出するメイン排気通路30を有している。詳細には、駆動流体流出口18に円筒形状の弁座部材32が装着されており、弁座部材32の中空孔がメイン排気通路30を構成している。つまり、メイン排気通路30は、容器2の内部空間と駆動流体流出通路19とを連通している。
【0022】
排出弁22は、メイン排気通路30を開閉するメイン排気弁34を有している。メイン排気弁34は、筒状のメイン弁体36を有している。メイン弁体36は、その軸方向の一端部(
図4の上端部)でメイン排気通路30を閉止する。つまり、弁座部材32の軸方向の他端面(
図4の下端面)の縁部が、メイン弁体36が着座するメイン弁シート35を構成する。メイン弁体36の内部(中空孔)に、パイロット排気通路42が形成されている。パイロット排気通路42は、容器2内の空間とメイン排気通路30とを連通する。パイロット排気通路42は、メイン排気通路30よりも通路面積が小さく設定されている。パイロット排気通路42の詳細は後述する。
【0023】
メイン排気弁34は、さらに、メイン弁体36の他端部(
図4の下端部)から径方向に延びる円盤状の底板38と、底板38から軸方向の他端側(
図4の下端側)に延びる筒部40とを有している。本実施形態のメイン排気弁34は、メイン弁体36と、底板38と、筒部40とが不可分一体に形成されている。
【0024】
メイン弁シート35と底板38の一端面38a(
図4の上端面)との間に、第1のばね部材44が介装されている。第1のばね部材44は、メイン弁シート35から離間する方向(
図4の下方)にメイン排気弁34にばね力を付与する。第1のばね部材44は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0025】
排出弁22は、さらに、パイロット排気通路42を開閉するパイロット排気弁46を有している。パイロット排気弁46は、棒状のパイロット弁体48を有している。パイロット弁体48は、その軸方向の一端部(
図4の上端部)でパイロット排気通路42を閉止する。つまり、底板38の軸方向の他端面38b(
図4の下端面)の縁部が、パイロット弁体48が着座するパイロット弁シート50を構成する。パイロット排気弁46の他端部(
図4の下端部)に、動力伝達部材28(
図3)が連結されている。つまり、パイロット排気弁46は、動力伝達部材28を介して駆動源の一部であるフロート24(
図3)に連結されている。
【0026】
パイロット排気弁46は、さらに、パイロット弁体48から鍔状に延びるフランジ部52を有している。フランジ部52の外径は、筒部40の内径よりも若干小さく設定されている。底板38の他端面38bとフランジ部52の一端面52a(
図4の上端面)との間に、第2のばね部材54が介装されている。第2のばね部材54は、パイロット弁シート50から離間する方向(
図4の下方)にパイロット排気弁46にばね力を付与するとともに、メイン弁シート35に着座する方向(
図4の上方)にメイン排気弁34にばね力を付与する。第2のばね部材54は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0027】
第1のばね部材44がない場合にメイン排気弁34を開弁させるのに必要な開弁力をf、第1のばね部材44のばね力をK1、第2のばね部材54のばね力をK2とする。本実施形態では、第1のばね部材44のばね力K1は、開弁力f以上で、且つ、開弁力fと第2のばね部材54のばね力K2との和よりも小さく設定されている(f≦K1<(f+K2))。
【0028】
つぎに、
図4~6を用いて、本実施形態の排出弁22の動作を説明する。これに先立って、
図7(A)および(B)で、従来の排出弁100の動作を説明する。
図7(A)において、容器内部102と駆動流体流出通路104との差圧(圧力差)をP、排気弁口106の断面積をA1とすると、排出弁100を開弁(閉弁)するのに必要な力F10は、P×A1である(F10=P×A1)。
【0029】
図7(B)は、
図7(A)よりも排気弁口106の断面積A2を大きくした例を示す(A2>A1)。したがって、
図7(B)では、排出弁100を開弁(閉弁)するのに必要な力F20は、P×A2である(F20=(P×A2)>F10)。
【0030】
図7(A)の従来の液体圧送装置では、排気弁口106の開口面積が小さく、そのため、排気能力が低く、流入側の逆止弁(
図1の流入側逆止弁12)の開弁が遅れて容器内への液体の流入が遅くなることがあった。しかしながら、
図7(B)のように開口面積A2を大きくすると、開口面積の小さな排気弁口を開けるのに必要な開弁力F1よりも大きな開弁力F2が必要となる。
【0031】
図4の本実施形態では、メイン排気通路30の通路面積をA2,パイロット排気通路42の通路面積をA1とする。つまり、パイロット排気通路42の通路面積は
図7(A)の開口面積A1と同じで、メイン排気通路30の通路面積は
図7(B)の開口面積A2と同じである。したがって、第1のばね部材44がない場合にメイン排気弁34を開弁させるのに必要な開弁力fは、
図7(B)の力F20となる(f=F20)。
【0032】
このとき、メイン排気弁34を開弁(閉弁)するのに必要な力を第1の力F1、パイロット排気弁46を開弁させるのに必要な力を第2の力F2とすると、メイン排気弁34を開弁(閉弁)するのに必要な第1の力F1は、F20+K2-K1となる(F1=F20+K2-K1=f+K2-K1)。一方、パイロット排気弁46を開弁(閉弁)するのに必要な第2の力F2は、F10-K2となる(F2=F10-K2)。
【0033】
図4の排出弁22が閉まった状態(液体Wの圧送状態)から、液位WLが下がると、フロート24(
図3)も下降し、パイロット排気弁46に下方(矢印D1)の力を付与する。この力が第2のF2に達すると、パイロット排気弁46が開弁して
図5の状態となる。このとき、パイロット排気弁46を開弁(閉弁)するのに必要な力F2はF10-K2であり、第2のばね部材54のばね力K2の分だけ、
図7(A)の従来例よりも小さな力で開く(F2<F10)。
【0034】
図5の状態では、第2のばね部材54が伸びて縮み量がほぼゼロ、すなわち第2のばね部材54のばね力K2がほぼゼロになっている(K2≒0)。したがって、メイン排気弁34を開弁するのに必要な第1の力F1は、F20-K1となる(F1=F20-K1=f-K1)。上述のとおり、第1のばね部材44のばね力K1は、第1のばね部材44がない場合にメイン排気弁34を開弁させるのに必要な開弁力f以上(f≦K1)に設定されているので、第1の力F1がゼロとなり(F1=0)、駆動流体流出通路19内の駆動流体Fの圧力によりメイン排気弁34も開弁して
図6の状態(流入状態)となる。このように、通路面積の小さなパイロット排気弁46を開弁させるのに必要な力で、通路面積の大きなメイン排気弁34が開弁する。
【0035】
図6の排出弁22が開いた状態(流入状態)から、液位WLが上がると、フロート24(
図3)も上昇し、パイロット排気弁46に上方の力を付与する。ここで、第2のばね部材54の縮み量がほぼゼロ、すなわち第2のばね部材54のばね力K2がほぼゼロになっているので(K2≒0)、メイン排気弁34を閉弁するのに必要な第1の力F1は、F20-K1となる(F1=F20-K1=f-K1)。上述のとおり、第1のばね部材44のばね力K1はf≦K1に設定されているので、第1の力F1がゼロとなり(F1=0)、メイン排気弁34が閉弁する。
【0036】
図5の状態からさらに、フロート24(
図3)が上昇し、この力がF2に達すると、パイロット排気弁46が閉弁して
図4の状態(圧送状態)となる。以降、
図4~
図6の動作が繰り返される。
【0037】
上記構成によれば、開弁時、
図1の駆動源24,26からの駆動力と
図6の第2のばね部材54のばね力k2により、通路面積の小さなパイロット排気弁46が最初に開く。パイロット排気弁46が開くと、第2のばね部材54のばね力がほぼ0となる。つまり、第2のばね部材54によりメイン排気弁34をメイン弁シート35に着座させる方向に働く力がなくなる。その結果、駆動源24からの駆動力と第1のばね部材44のばね力K1により、通路面積の大きなメイン排気弁34が開く。このように、第1のばね部材44のばね力K1でメイン排気弁34が開くので、小さな通路面積のパイロット排気弁46を開くのに必要な第2の力F2で、通路面積の大きなメイン排気弁34が開弁する。その結果、排気能力が高まって流入側の逆止弁12(
図1)が速やかに開弁し、単位時間当たりの液体圧送能力を高めることができる。
【0038】
第1のばね部材44のばね力K1が、第1のばね部材44なしでメイン排気弁34を開弁させるのに必要な開弁力f以上で、且つ、開弁力fと第2のばね部材54のばね力K2との和よりも小さく設定されている(f≦K1<(f+K2))ので、大きな力が得られるから、メイン排気弁34の動作が安定する。
【0039】
メイン排気弁34は、内部にパイロット排気通路が42形成されて軸方向の一端部でメイン弁シート35に着座する筒状のメイン弁体36と、メイン弁体36の他端部から径方向に延びる円盤状の底板38と、底板38から軸方向の他端側に延びる筒部40とを有し、メイン弁シート35と底板38の一端面38aとの間に第1のばね部材44が介装され、底板38の他端面38bにパイロット弁シート50が形成されている。また、パイロット排気弁46は、筒部40の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体48と、パイロット弁体48から鍔状に延びるフランジ部52とを有し、底板38の他端面38bとフランジ部52の一端面52aとの間に第2のばね部材54が介装されている。この構成によれば、本実施形態の排気弁構造を従来の液体圧送装置にも適用できる。
【0040】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 液体圧送装置
2 容器
24 フロート(駆動源)
26 作動部材(駆動源)
30 メイン排気通路
34 メイン排気弁
35 メイン弁シート
36 メイン弁体
38 底板
40 筒部
42 パイロット排気通路
44 第1のばね部材
46 パイロット排気弁
48 パイロット弁体
50 パイロット弁シート
52 フランジ部
54 第2のばね部材
f 開弁力
K1 第1のばね部材のばね力
K2 第2のばね部材のばね力
F 駆動流体
W 液体