(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】低強度高粘性寒天
(51)【国際特許分類】
C08B 37/12 20060101AFI20230821BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20230821BHJP
A23G 3/42 20060101ALN20230821BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20230821BHJP
【FI】
C08B37/12 Z
A23G3/34 101
A23G3/42
A23G3/34 107
A23G3/34 109
A23L29/256
(21)【出願番号】P 2022122411
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2021059264の分割
【原出願日】2021-03-31
【審査請求日】2022-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉内 達弘
(72)【発明者】
【氏名】四戸 大介
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/257825(WO,A1)
【文献】特開昭64-001701(JP,A)
【文献】特開2011-103820(JP,A)
【文献】特表2008-501816(JP,A)
【文献】特公昭48-043627(JP,B1)
【文献】特公昭48-085761(JP,B1)
【文献】加藤寿美子,食品のレオロジーに関する研究(第1報) 寒天調理について,家政学雑誌,1960年,Vol.11, No.6,pp.443-449,DOI:10.11428/jhej1951.11.443
【文献】布施恒明ほか,寒天の利用に関する研究(第8報),日本農芸化学会誌,1969年,Vol.43, No.10,pp.694-698,DOI:10.1271/nogeikagaku1924.43.694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製水に加え沸騰溶解して調製された1.5%
溶液を20℃で15時間放置後、凝固せしめたゲルについて、テクスチャーアナライザー(microstable社製)を用い、円柱状の断面積1cm
2
のプランジャーをゲルに侵入させ(侵入速度20mm/分)、ゲルが破断したときに測定された応力に相当する強度が10~220g/cm
2であり、
トールビーカー(300mL)に、85℃の寒天液(寒天濃度1.5%)を300mL収容し、No.1のローターを用いてB型粘度計(Brookfield社製)により測定した、測定開始後40秒での粘度が7~30mPa・sであり、
硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下
であることを特徴とする低強度高粘性寒天。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低強度高粘性寒天に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、高糖度ゲル状食品が従来から親しまれている。高糖度ゲル状食品とは、糖度50~90の食品を指し、pHは特に規定されない。代表的な高糖度ゲル状食品としては、例えば、錦玉、羊羹、琥珀羹、乾燥ゼリー、わらびもち、ういろう、および餡などの和菓子、グミキャンディー、ヌガー、ゼリービーンズ、キャラメル、マシュマロ、グレーズ、ナパージュ、カスタードクリーム、バタークリーム、コンフィチュール、およびガナッシュなどの洋菓子が挙げられる。高糖度ゲルは、曵糸性の少ないジャム、はちみつ等に用いられる。
【0003】
高糖度ゲル状食品の製造には、寒天、ゼラチン、カラギナン、スターチ等のゲル化剤が通常用いられており、寒天を用いた物が、高糖度寒天ゲル状食品である。近年の指向として、弾力を有し、かつ噛み応えがある高糖度ゲル状食品が好まれる傾向にある。例えば、フレーバーを加えたチューイーな食感のグミキャンディーなどが挙げられる。ほとんどのゲル化剤は、弾力に富み、噛み応えのある食感の高糖度ゲル状食品を得ることができる。
【0004】
しかしながら、寒天を用いて製造した高糖度ゲル状食品は、弾力に乏しく、ゲルが包材に付着したり、喫食時には、歯へ付着するという問題もある。寒天は離水が多く、フレーバーリリース性が優れているものの、高糖度寒天ゲル状食品は、経時的に離水が生じ、いわゆる“泣き”がゲル表面に生じてしまう。これまでに、柔らかい食感や弾力のあるテクスチャーの寒天が開発されているが、これらの寒天を用いても従来の高糖度寒天ゲル状食品における問題は解決されていない。
【0005】
特許文献1に示されるゲル強度の低い寒天(以下、低強度寒天という)は、ソフトで離水を伴わないゲルを作るものであることから、一般的な寒天と比較して柔らかいテクスチャーを示す。特許文献2に示すような、低強度寒天を使用した高糖度寒天ゲル状食品は柔らかい食感となるが、付着性が強く、弾力に欠け、経時的な泣きも生じてしまうおそれがある。
【0006】
特許文献3には、20℃における1.5%寒天ゲル強度が600g/cm2以下であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度が15cp以上である寒天(以下、高粘性寒天という)が開示されている。この高粘性寒天は、粘性と保水力とを併せもつことを目的とされており、一般的な寒天と比較して弾力のあるテクスチャーを示す。こうした特許文献3の実施例に示された高粘性寒天を使用して高糖度寒天ゲル状食品を作製しようとすると、高粘性寒天を溶解した時の溶液の粘りが強く製造作業性が非常に悪い。更に製造した高糖度寒天ゲル状食品は、粘りに起因して、包材や歯へ付着が問題となるばかりか、経時的に泣きが生じるものとなる。しかも、食感は弾力に比して固さがあるものとなる。
また特許文献3には、20℃における1.5%寒天ゲル強度が220g/cm2以下であり、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・sであり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天については、具体的な製造や使用用途などの記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3023244号公報
【文献】特許第2795424号公報
【文献】特許第3758834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、従来の寒天では作ることのできなかった弾力性と柔らかい食感とを備え、表面の経時的な離水が少なく、包材や歯への付着性が低減された高糖度寒天ゲル状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であり、かつ、85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・sであり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天(以下、低強度高粘性寒天という)を使用することによって、従来では予想できない物性の高糖度ゲル状食品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る高糖度ゲル状食品は、寒天を用いた高糖度寒天ゲル状食品であって、前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2であり、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・sであり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾力と柔らかい食感とを備え、表面の経時的な離水が少なく、包材や歯への付着性が低減された高糖度寒天ゲル状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の高糖度寒天ゲル状食品に用いられる寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度、すなわち20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であるのに加えて、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度、すなわち85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・sで、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である。
20℃における1.5%寒天ゲル強度と、85℃における1.5%寒天ゾル粘度とが所定の範囲内にあり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天を用いることによって、所望の特性を備えた高糖度寒天ゲル状食品を得ることが可能となった。
【0013】
20℃における1.5%寒天ゲル強度が10g/cm2未満の場合には、ゲル形成能力が低いために弾力のある食感とならず、220g/cm2より大きいと強度の割合が弾力を上回るため柔らかく粘弾性のある食感を形成しない。20℃における1.5%寒天ゲル強度は、10~200g/cm2であることが好ましく、10g/cm2以上150g/cm2未満であることがより好ましい。
【0014】
85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7mPa・sより小さいと形成するゲルが粘弾性のある食感にならず、30mPa・sを超えた場合には、高糖度ゲル状食品を製造する際に粘度が高くなりすぎて作業性が極端に悪くなる。85℃における1.5%寒天ゾル粘度は、10~30mPa・sであることが好ましい。
【0015】
硫酸根とはSO4
2-を指し、一般的な重量法により定量することができる。寒天における硫酸根含量は、高糖度ゲル状食品の粘弾性、着色、および臭い等に影響を及ぼす。硫酸根含量は0.5質量%以上4.0質量%以下に規定される。硫酸根含量が0.5質量%未満の場合には、粘弾性に乏しいため食感が悪く、4.0質量%を超えるものは臭いや着色が激しく商品として成り立たない。硫酸根含量は、0.8質量%以上3.5質量%以下であることが好ましい。
【0016】
20℃における1.5%寒天ゲル強度、85℃における1.5%寒天ゾル粘度、および硫酸根含量のいずれか1つでも所定範囲から外れた寒天を用いた場合には、本発明の高糖度寒天ゲル状食品は得られない。すなわち、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であるのに加えて、80℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・s、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天のみが本発明の効果を有する。
【0017】
上述したような条件を備えた寒天は、海藻原料を低温でアルカリ処理後、熱水抽出して製造することができる。その場合の温度は60℃以下が好ましく、20~60℃がより好ましく、30~40℃がさらに好ましい。また、アルカリ処理時間は3時間以内が好ましく、0.1~1時間がより好ましい。また、海藻原料の種類によっては、アルカリ処理を行なわずに熱水抽出を行なっても良い。使用し得る海藻原料としては、例えば天草(南アフリカ産)、天草(チリ産)、オゴノリ(チリ産)、オゴノリ(ブラジル産)、およびオゴノリ(日本産)等が挙げられる。具体的な製造条件は、海藻原料の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0018】
例えば、海藻原料として天草(南アフリカ産)を用いる場合には、アルカリ処理を行わないか、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰、生石灰、または水酸化アンモニウムの水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は、0.1~10.0%程度とすることができる。
【0019】
アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.8程度)で熱水により寒天成分を抽出する。抽出液を濾過し、得られた濾液をゲル化させる。さらに、脱水、乾燥、粉砕することによって、粉末状の寒天が得られる。天草(南アフリカ産)は、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0020】
海藻原料として天草(チリ産)を用いる場合には、アルカリ処理を行わないか、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.8程度)で熱水により寒天成分を抽出する。抽出液を濾過し、得られた濾液をゲル化させる。さらに、脱水、乾燥、粉砕することによって、粉末状の寒天が得られる。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0021】
海藻原料としてオゴノリ(ブラジル産)を用いる場合には、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、上述したものを用いることができる。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.7程度)で熱水により寒天成分を抽出する。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0022】
海藻原料としてオゴノリ(チリ産)を用いる場合には、45~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、上述したものを用いることができる。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.7程度)で熱水により寒天成分を抽出する。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0023】
海藻原料として、天草(南アフリカ産)、天草(チリ産)、オゴノリ(ブラジル産)、オゴノリ(チリ産)のいずれを用いた場合でも、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2、かつ80℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・s、さらに硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天が得られる。こうした寒天を用いることによって、弾力性があり柔らかい食感で、表面の経時的な離水が少なく、包材や歯への付着性が低減された高糖度寒天ゲル状食品の製造が可能となった。
【0024】
高糖度寒天ゲル状食品としては、糖度が高ければ特に限定されないが、錦玉、羊羹、琥珀羹、乾燥ゼリー、わらびもち、ういろう、および餡などの和菓子、グミキャンディー、ヌガー、ゼリービーンズ、キャラメル、マシュマロ、グレーズ、ナパージュ、カスタードクリーム、バタークリーム、コンフィチュール、およびガナッシュなどの洋菓子などが挙げられる。高糖度ゲル状食品の糖度は50~90であることが好ましい。使用する糖は特に限定されず、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、オリゴ糖、デキストリン、水飴など水溶性の糖であればよい。
【0025】
本発明の高糖度寒天ゲル状食品は、その種類に応じた適切な原料を適切な量で配合し、一般的な方法により製造することができる。
【0026】
本発明の高糖度寒天ゲル状食品には、寒天以外のゲル化剤も併用することができる。寒天以外のゲル化剤は、カラギーナン、グルコマンナン、カシヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、フェネグリークガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、プルラン、アラビアガム、ペクチン、大豆多糖類、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、トラガントガム、ガティガム、シロキクラゲ多糖、カードラン、および澱粉から選択される。これらは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の高糖度寒天ゲル状食品は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、かつ1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・sであり、さらに硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天が用いられているので、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、表面の経時的な離水が少ない。しかも、包材や歯への付着性が低減されるという、従来の高糖度寒天ゲル状食品にはない優れた特性を備えている。良好な粘弾性を有し、着色や臭いがないことも、本発明の高糖度寒天ゲル状食品の利点である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0029】
試料として、下記に示す寒天を準備した。
寒天1:ZH(伊那食品工業(株))
寒天2:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理せずに、pH5.5で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天3:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理せずに、中性(pH7.0)で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天4:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(60℃、0.5時間)した後、pH6.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天5:天草(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH6.2で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天6:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天7:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天8:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天9:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(30℃、0.5時間)した後、中性(pH7.0)で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天10:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理せずに、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天11:UX-100(伊那食品工業)
寒天12:天草(チリ産)をアルカリ処理(40℃、2時間)した後、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天13:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(80℃、1時間)した後、pH4.3で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天14:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(30℃、4時間)した後、pH6.2で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天15:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(50℃、2.5時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天16:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(50℃、1時間)した後、pH6.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天17:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天18:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
【0030】
各寒天について、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃でのゲル強度(1.5%寒天ゲル強度)、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃でのゾル粘度(1.5%寒天ゾル粘度)、および硫酸根含量を、以下の方法により測定した。評価方法は、以下のとおりである。
【0031】
<20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)>
寒天を精製水に加え沸騰溶解し1.5%溶液を調製し、20℃で15時間放置後、凝固せしめたゲルについて、以下のようにゲル強度を測定した。
テクスチャーアナライザー(microstable社製)を用い、円柱状の断面積1cm2のプランジャーをゲルに侵入させ(侵入速度20mm/分)、ゲルが破断したときの応力を測定しゲル強度とした。
なお、参考として本発明のゲル強度範囲内ではテクスチャーアナライザーによる測定値と日寒水式のゲル強度測定値はほぼ同一であった。
【0032】
<85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)>
トールビーカー(300mL)に、85℃の寒天液(寒天濃度1.5%)を300mL収容した。No.1のローターを用い、測定開始後40秒での粘度をB型粘度計(Brookfield社製)により測定した。
【0033】
<硫酸根含量(SO4)>
通常行われる重量法により測定した。寒天溶液に塩酸や過酸化水素水を使用して寒天を加水分解する。この溶液に塩化バリウム溶液を加えて、硫酸基を硫酸バリウムとして沈殿させ、この質量から硫酸根(硫酸基)を算出する。
各寒天の20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)、および硫酸根含量(SO4)を下記表1にまとめる。
【0034】
【表1】
*(I):テクスチャーアナライザーでの測定値
(II):日寒水式での測定値
(-):日寒水式ではゲル強度100g/cm
2未満は測定できないことから、(-)で表した
【0035】
寒天1は、従来から一般に用いられている寒天である。寒天11は特許文献1(特許第3023244号)に記載の低強度寒天である。寒天3,17および寒天18は、特許文献3(特許第3758834号公報)の高粘性寒天に相当する。
【0036】
次に、各種原料を寒天に配合して高糖度寒天ゲル食品を製造し、得られた食品の物性を評価した。食品の製造に用いる原料は、以下のとおりである。
・ゼラチン:イナゲルA-81P(伊那食品工業(株))
・水あめ:マルトーカ(加藤化学(株))
・グラニュー糖:三井製糖(株)
・環状デキストリン:α-サイクロデキストリン((株)シクロケム)
・並餡:田中製餡(株)
・生クリーム:フレッシュクリーム大雪原45(森永乳業(株))
・濃縮赤ブドウ果汁:雄山商事(株)
・無水結晶クエン酸:磐田化学工業(株)
・クエン酸三ナトリウム:磐田化学工業(株)
【0037】
評価方法は、以下のとおりである。
<高糖度寒天ゲル食品の破断応力、侵入距離>
テクスチャーアナライザー(microstable社製)を用い、円柱状の断面積1cm2のプランジャーをゲルに侵入させて(侵入速度20mm/分)、ゲルが破断したときの応力(Pa)、およびその際の侵入距離(mm)を測定した。高糖度寒天ゲル状食品に求められる良好な食感(粘弾性A)を、下記式(1)により求める。
粘弾性A(Pa/mm)=破断応力(Pa)÷侵入距離(mm) 式(1)
粘弾性Aは、一般的には、100~150(Pa/mm)の範囲内であることが好ましいが、高糖度寒天状ゲル食品の種類によって最適な値は異なる。マシュマロ等の含気された食品や、グミキャンディーやソフトキャラメルのように粘弾性の高い食品の場合は圧縮されても組織が破壊されないため測定が困難な場合もある。
【0038】
<食感>
パネラー10名により官能評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:弾力があり、チューイーな食感である
○:◎には劣るが、弾力があり、チューイーな食感である
△:×よりは弾力があるが、若干崩れるような噛み応えである
×:弾力がなく、崩れるような噛み応えである
食感の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
【0039】
<経時的な離水し易さ>
高糖度寒天ゲル状食品を常温で保管し、3か月経過後のゲル表面の泣きの状態から離水し易さを評価した。保管の際は、アルミ包装を行うことで水分の蒸発を防いだ。パネラー10名による官能評価を行って、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:ゲル表面の泣きが全くない(離水しない)
○:◎には劣るが、ほとんど泣きがない(ほとんど離水しない)
△:ゲル表面にうっすらと泣きがみられる(軽度に離水した)
×:ゲル表面に泣きがみられる(離水が生じた)
経時的な離水し易さの評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
なお、高糖度ゲル状食品の“泣き”(離水)は微量であり、生じた離水は高糖度のため付着性の高い粘質液となる。粘質液のためゲル状食品との分離が困難であり、定量測定が困難となるため官能試験による評価を行った。
【0040】
<喫食時の歯への付着性>
高糖度寒天ゲル状食品の歯への付着性について、パネラー10名による官能評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:歯への付着性が全くない
○:◎には劣るが、ほとんど歯に付着しない
△:×には勝るが、歯への付着がある
×:べたべたと歯に付着する
付着性の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
【0041】
<作業性>
製造中の作業性について10名のパネラーによる評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:さらさらとしており製造上全く問題ない
○:◎には劣るが製造上ほとんど問題ない
△:粘度が高く、製造に支障があるが、問題なく充填できる
×:粘度が高く、充填前にゲル化してしまう
作業性の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
上記4つの評価のうち、1つでも“△”または“×”があればNGである。
【0042】
<実験例1>
下記表2に示す配合(質量部)で、糖度75の錦玉を作製した。具体的には、水に寒天を分散させ、加熱溶解後、水あめとグラニュー糖を加え、再加熱して糖度を75に調整した。アルミ蒸着性のフィルム容器に充填し、常温で3か月間保管して、経時的な泣きを確認するためのサンプルを得た。
【0043】
【0044】
寒天2は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、寒天2を用いて、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1)。
一方、従来から一般的に使用されている寒天1は、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超え、しかも85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天1を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例1に示されている。
【0045】
<実験例2>
寒天2~8を用い、下記表3に示す処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例2、実施例2~6)。下記表3には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0046】
【0047】
寒天2,4~8は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、これらの寒天を用いて、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1~6)。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例2に示されている。
なお、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10より低い寒天は、寒天の製造が困難であったため、評価は得られていない。
【0048】
<実験例3>
寒天3,6,7,9~13を用い、下記表4に示した処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例2~6、実施例5,7,8)。
【0049】
【0050】
寒天9,11は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲外である。このため、寒天9,11を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例3,4に示されている。
また、寒天3,12,13は硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)220g/cm2を超えている。さらに、寒天12,13は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲外である。このように、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)220g/cm2を超える場合は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)がいかなる値であっても所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例2,5,6に示されている。
特に、寒天9,12のように85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が30mPa・sを超えた寒天を用いて錦玉を製造しようとした場合、製造過程での作業性が非常に悪く製造が困難であることが比較例3,5に示されている。
【0051】
<実験例4>
寒天14~18を用い、下記表5に示した処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例7~9、実施例9,10)。下記表5には、実施例1,4,5の錦玉の評価も併せて示す。
【0052】
【表5】
食感(*):着色(微褐色)あり。
海藻臭多い
【0053】
寒天2,6,7,15,16は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、寒天2,6,7,15,16を使用した錦玉は弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないものであった。(実施例1,4,5,9,10)
寒天14,17,18は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であるが、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲外である。このため、寒天14,17,18を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例7,8,9に示されている。
【0054】
<実験例5>
寒天2を用い、下記表6に示した処方で、実験例1と同様に錦玉を作製した(実施例11~19)。下記表6には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0055】
【0056】
寒天2は20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲
内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。ゆえに、寒天2を用いた場合には、いずれの添加量であっても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1,11~19)。
【0057】
<実験例6>
寒天2を用い、下記表7に示した処方で、実験例1と同様に錦玉を作製した(実施例20~27)。最終糖度は、表7に示した値になるように調整した。下記表7には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0058】
【0059】
寒天2は20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲
内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。ゆえに寒天2を用いた場合には、いずれの糖度であっても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1,20~27)。
【0060】
<実験例7>
寒天1,2を用い、下記表8に示した処方で糖度77の赤ブドウ味のグミキャンディーを作製した(比較例10、実施例28)。具体的には、水に寒天を分散させ、加熱溶解後、水あめ、グラニュー糖、およびα-CDを加えて再加熱した。糖度を79に調整し、次いで、濃縮赤ブドウ果汁、結晶クエン酸、クエン酸三ナトリウムを添加した。経時的な泣きを確認するためのサンプルは、アルミ蒸着性のフィルム容器に充填し、常温で保管した。
【0061】
【0062】
寒天2を用いた場合には、酸味があり、pHが3.8より低い処方においても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないグミキャンディーを製造することができた(実施例28)。
寒天1を用いた場合には、所望の特性を備えたグミキャンディーは得られないことが比較例10に示されている。
【0063】
<実験例8>
寒天11、寒天2を用い、下記表9に示した処方で糖度71のマシュマロを作製した(比較例11、実施例29)。具体的には、寒天とゼラチンを水に分散させ、加熱溶解後、水あめ、グラニュー糖を加えた。これを攪拌して気泡させた後、スターチモールドに充填してゲル化させた。
【0064】
【0065】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないマシュマロを製造することができた(実施例29)。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたマシュマロは得られないことが、比較例11に示されている。
【0066】
<実験例9>
寒天1、寒天2を用い。下記表10に示した処方で糖度が68の羊羹を作製した(比較例12、実施例30)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめ、並餡を添加した後、再加熱して糖度を68に調整した。
【0067】
【0068】
寒天2を用いた場合には、弾力を有し経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない羊羹を製造することができた(実施例30)。実施例30の羊羹は、ねっとりと粘りのある良好な食感であった。
寒天1は、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超え、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天1を使用しても所望の特性を備えた羊羹は得られないことが、比較例12に示されている。
【0069】
<実験例10>
寒天11、寒天2を用い、下記表11に示した処方でソフトキャラメルを作製した(比較例13、実施例31)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめ、生クリームを添加した後、再加熱して糖度を90に調整した。
【0070】
【0071】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないキャラメルを製造することができた(実施例31)。得られたキャラメルはプランジャーが侵入することによる破断が生じなかったため、破断応力および侵入距離は測定不可能であった。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたキャラメルは得られないことが、比較例13に示されている。
【0072】
<実験例11>
寒天11、寒天2を用い、下記表12に示した処方で糖度67のナパージュを作製した(比較例14.実施例32)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめを添加した後、再加熱して糖度を67に調整した。
【0073】
【0074】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないナパージュを製造することができた(実施例32)。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたナパージュは得られないことが、比較例14に示されている。
【0075】
本発明によれば、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、喫食時の歯への付着や包材への付着が少ない高糖度寒天ゲル状食品を製造することができる。また、離水により経時的にゲル表面に生じる泣きがなく、見栄えの良い高糖度寒天ゲル状食品が製造可能となる。