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特許7334013合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法
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  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図1
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図2
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図3
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図4
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図5
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図6
  • 特許-合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230821BHJP
   B65D 1/46 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019217245
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084696
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073756(JP,A)
【文献】特開2005-075414(JP,A)
【文献】特開2013-184723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収容空間を形成する筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備える合成樹脂製容器であって、
前記胴部の下部には、径方向内側に凹むくびれ部が設けられており、
該くびれ部の下部壁と前記底部の外側壁部とが相互に重なると共に下方に向かって径方向外側に延びて自立脚部を形成し、前記下部壁と前記外側壁部は、下端部で折り返し部により連結されており、
前記くびれ部には、該くびれ部の上部壁と前記下部壁との間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられ、前記折り返し部の径方向外側への拡径を抑制する補強リブが形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記補強リブは、径方向外側に向かって周方向の幅が狭くなるように形成されている、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記くびれ部の前記下部壁と前記底部の前記外側壁部は、下端部において、中空部を有する環状の前記折り返し部により連結されている、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記底部は、前記外側壁部の径方向内側に設けられ、径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記底部は、前記外側壁部の上端部よりも下方に設けられた液溜まり部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
内容物の収容空間を形成する筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えた中間容器体であって、
前記胴部の下部には、径方向内側に凹むくびれ部が設けられており、
前記くびれ部には、該くびれ部の上部壁と下部壁との間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられた補強リブが形成され、
前記底部は、外側壁部と、該外側壁部の径方向内側に設けられた内側壁部とを有し、該内側壁部は屈曲部を介して該外側壁部と連結され、該内側壁部及び該外側壁部は前記胴部の内側に向けて凸形状をなすように前記屈曲部において屈曲可能であり、
前記底部の前記外側壁部は折り返し部を介して前記くびれ部の前記下部壁と連結され、前記外側壁部及び前記下部壁は前記胴部の外側に向けて凸形状をなすように前記折り返し部において折り返し可能であり、
前記補強リブは、前記折り返し部の径方向外側への拡径を抑制することを特徴とする中間容器体。
【請求項7】
自立脚部を備える合成樹脂製容器の製造方法であって、
請求項6に記載の中間容器体を形成するステップと、
前記中間容器体の前記外側壁部が前記下部壁に重なるように前記外側壁部を前記折り返し部において折り返すと共に、前記内側壁部及び前記外側壁部が前記胴部の内側に向けて凸形状をなすように前記屈曲部において屈曲させて自立脚部を形成するステップと
を含むことを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内容物の収容空間を形成する胴部と、胴部の下端を閉塞する底部とを備えた合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、洗浄料又は飲料等の内容物を収容可能な合成樹脂製容器としては、例えば特許文献1に示すような、筒状の口部と内容物の収容空間を形成する胴部を備えた合成樹脂製容器が知られている。また、この種の合成樹脂製容器では、例えば特許文献2に示すように、環境問題への配慮やコスト低減を目的として胴部や底部を薄肉化しても、自立脚部の形成により自立姿勢を確保することが可能なものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-211607号公報
【文献】特開2011- 73756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2の合成樹脂製容器では、例えば、浴室等での使用時に容器内の温度が上昇したり、利用者が容器を手に取った際に強く握るなどして内圧が高まると、上方に反転させていた底部が元の形状に戻って下方に突出したり、胴部及び底部の薄肉化により座屈強度が十分に確保できない場合があり、これらの点において未だ改善の余地があった。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、安定した自立姿勢を確保できるとともに、高い剛性を備えた合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の合成樹脂製容器は、
内容物の収容空間を形成する筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備える合成樹脂製容器であって、
前記胴部の下部には、径方向内側に凹むくびれ部が設けられており、
該くびれ部の下部壁と前記底部の外側壁部とが相互に重なると共に下方に向かって径方向外側に延びて自立脚部を形成し、前記下部壁と前記外側壁部は、下端部で折り返し部により連結されており、
前記くびれ部には、該くびれ部の上部壁と前記下部壁との間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられ、前記折り返し部の径方向外側への拡径を抑制する補強リブが形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本開示の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記補強リブは、径方向外側に向かって周方向の幅が狭くなるように形成されていることが好ましい。
【0008】
また、本開示の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記くびれ部の前記下部壁と前記底部の前記外側壁部は、下端部において、中空部を有する環状の前記折り返し部により連結されていることが好ましい。
【0009】
また、本開示の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記底部は、前記外側壁部の径方向内側に設けられ、径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部を有することが好ましい。
【0010】
また、本開示の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記底部は、前記外側壁部の上端部よりも下方に設けられた液溜まり部を有することが好ましい。
【0011】
また、本開示の中間容器体は、
内容物の収容空間を形成する筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えた中間容器体であって、
前記胴部の下部には、径方向内側に凹むくびれ部が設けられており、
前記くびれ部には、該くびれ部の上部壁と下部壁との間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられた補強リブが形成され、
前記底部は、外側壁部と、該外側壁部の径方向内側に設けられた内側壁部とを有し、該内側壁部は屈曲部を介して該外側壁部と連結され、該内側壁部及び該外側壁部は前記胴部の内側に向けて凸形状をなすように前記屈曲部において屈曲可能であり、
前記底部の前記外側壁部は折り返し部を介して前記くびれ部の前記下部壁と連結され、前記外側壁部及び前記下部壁は前記胴部の外側に向けて凸形状をなすように前記折り返し部において折り返し可能であり、
前記補強リブは、前記折り返し部の径方向外側への拡径を抑制することを特徴とする。
【0012】
また、本開示の合成樹脂製容器の製造方法は、
自立脚部を備える合成樹脂製容器の製造方法であって、
上記記載の中間容器体を形成するステップと、
前記中間容器体の前記外側壁部が前記下部壁に重なるように前記外側壁部を前記折り返し部において折り返すと共に、前記内側壁部及び前記外側壁部が前記胴部の内側に向けて凸形状をなすように前記屈曲部において屈曲させて自立脚部を形成するステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、安定した自立姿勢を確保できるとともに、高い剛性を備えた合成樹脂製容器、中間容器体、及び合成樹脂製容器の製造方法を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る合成樹脂製容器の正面図である。
図2図1における胴部下部及び底部部分の拡大半断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法を実施する手順を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る合成樹脂製容器の製造に用いる中間容器体の正面図である。
図5図4における胴部下部及び底部部分の拡大半断面図である。
図6図4におけるA-A断面による断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る合成樹脂製容器の製造に用いる中間容器体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示をより具体的に説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態である合成樹脂製容器100を示す。合成樹脂製容器100は、収容空間M内に収容された化粧料、洗浄料、又は食品等の内容物を注出する口部3と、口部3の下方に連なり内容物の収容空間Mを形成する胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部1とを備えている。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、口部3が位置する側を上方(図1における上側)とし、底部1が位置する側を下方(図1における下側)とする。また、径方向外側とは、図1における合成樹脂製容器100の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0017】
本実施形態において、合成樹脂製容器100の口部3は、平面視で略円形状を有する筒状体である。口部3に設けられている雄ねじ部3aは、キャップ又はキャップ付きの吐出具等をねじ係合により口部3に装着するための係合部であり、口部3の外周壁に一体形成されている。なお、係合部として、雄ねじ部3aに代えて打栓係合のための係合突部を設けてもよいし、雄ねじ部3aと打栓係合のための係合突部の双方が設けられ、装着物に応じて両者を使い分けるようにしてもよい。
【0018】
口部3の下方には、口部3の下端部に肩部を介して連なり略円筒形状を備えた胴部2が設けられている。胴部2の内側は、内容物の収容空間Mを形成している。本実施形態では、口部3にポンプを装着し、ポンプを作動させて収容空間M内の内容物を注出することを想定しているが、合成樹脂製容器100の材質及び胴部2の肉厚を適切に選択することによって、胴部2の押圧(スクイズ)により収容空間M内の内容物を加圧してから注出させることもできる。
【0019】
胴部2の下部には、図1に示すように、径方向内側に凹むくびれ部5が設けられている。くびれ部5は、図2に示すように、上方に向かって径方向外側に方向付けされた上部壁5aと、下方に向かって径方向外側に方向付けされた下部壁5bとを有している。くびれ部5には、上部壁5aと下部壁5bとの間を上下方向に架け渡す補強リブ5rが設けられている。補強リブ5rは、後述するように、周方向の8箇所に等間隔で間欠的に設けられている(図6参照)。
【0020】
図2に示すように、くびれ部5の下部壁5bは、底部1の外側壁部1cと折り返し部4を介して連結されている。押出ブロー成形によって図4及び図5に示す中間容器体101を形成した後、底部1の外側壁部1cが下部壁5bと重なるように外側壁部1cを折り返し部4において折り返すことによって、図2に示すように、下部壁5b、折り返し部4及び外側壁部1cから構成される自立脚部10が形成されている。自立脚部10は、図2に示すように、くびれ部5の下部壁5bと底部1の外側壁部1cとが相互に重なった状態で、下方に向かって径方向外側に延びると共に、下端部で折り返し部4を介して互いに連結されている。このように、本実施形態では、自立脚部10が下部壁5bと外側壁部1cを重ねて構成されているために剛性が高い。従って、自立脚部10によって合成樹脂製容器100を安定して支持することができる。
【0021】
折り返し部4は、図2に示す断面において略円形状の中空部を有する環状の部位である。図5に示す中間容器体101において、胴部2の外側に凸となる略半円形状の断面を有する初期状態から、外側壁部1cが下部壁5bと重なるように外側壁部1cを折り返すことで、図2に示すような略円形状の中空部を形成している。
【0022】
底部1は、上述の外側壁部1cと、外側壁部1cの径方向内側に屈曲部6を介して設けられた内側壁部1bと、内側壁部1bの径方向内側且つ底部1の径方向中央位置に設けられた液溜まり部1aとを備えている。
【0023】
内側壁部1bは、図2に示すように、外側壁部1cの内周端と屈曲部6を介して連結されている。屈曲部6は、胴部2の内側に凸となる円弧状形状を有している。図5に示す中間容器体101の初期状態から、外側壁部1cが下部壁5bと重なるように折り返し部4で折り返すことによって、図2に示すように、内側壁部1b及び外側壁部1cが胴部2の内側に凸形状をなすように屈曲部6において屈曲し、内側壁部1b及び液溜まり部1aが上方に持ち上げられた状態となる。これによって、底部1は、上端部の屈曲部6から径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部1b、及び径方向中央に設けられた液溜まり部1aに液体内容物を溜めることが可能な下げ底形状を形成している。
【0024】
なお、本実施形態では、外側壁部1cの径方向内側に内側壁部1bと液溜まり部1aの双方を設けるように構成したが、この態様には限定されない。外側壁部1cの径方向内側において、屈曲部6よりも下方に設けられた部位が液溜め機能を有するため、内側壁部1bと液溜まり部1aのいずれか一方のみが設けられる構成としてもよい。本実施形態では、内側壁部1bと液溜まり部1aは、共に液溜め機能を有している。
【0025】
次に、図1及び図2に示す本実施形態に係る合成樹脂製容器100の製造方法について図3から図7等を用いて説明する。
【0026】
本実施形態に係る合成樹脂製容器100を製造するに際しては、まず、押出ブロー成形によって、図4に示す中間容器体101を形成する(図3のステップS101)。中間容器体101は、底部1が折り返し部4を支点に胴部2の内側に折り返されていない点を除いて図1に示す合成樹脂製容器100の構成と略同一である。従って、ここでは、合成樹脂製容器100との差異点に絞って説明する。また、中間容器体101の各部位に対して、対応する合成樹脂製容器100の各部位に付した符号と同一の符号を付して説明する。
【0027】
中間容器体101の底部1は、図5に示すように、胴部2の下部に設けられたくびれ部5の下部壁5bに折り返し部4を介して連結された外側壁部1cと、外側壁部1cの径方向内側に屈曲部6を介して設けられた内側壁部1bと、内側壁部1bの径方向内側且つ底部1の径方向中央位置に設けられた液溜まり部1aとを備えている。
【0028】
外側壁部1cは、くびれ部5の下部壁5bと折り返し部4を介して一体に連結されており、図5に示すように、外側壁部1c及び下部壁5bは胴部2の外側に凸形状をなすように折り返し部4において僅かに屈曲している。折り返し部4は、図5に示す断面において胴部2の外側に凸となる略半円形状を有する環状の部位である。
【0029】
内側壁部1bは、図5に示すように、外側壁部1cの内周端と屈曲部6を介して連結されている。図5に示す中間容器体101では、屈曲部6が胴部2の内側に向かって凸となる略円弧形状を有している。また、内側壁部1b及び外側壁部1cは、胴部2の外側に向かって僅かに凸形状をなすように屈曲部6において屈曲している。
【0030】
図4及び図5に示す状態から、外側壁部1cが下部壁5bと重なるように折り返し部4で折り返すことによって、図2に示すように、内側壁部1b及び外側壁部1cが胴部2の内側に向かって凸形状をなすように屈曲部6において屈曲して、内側壁部1b及び液溜まり部1aが上方に持ち上げられた状態となる。これによって、下部壁5b、折り返し部4及び外側壁部1cから構成される自立脚部10が形成される(図3のステップS103)。また、底部1は、上端部の屈曲部6から径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部1bと、径方向中央に設けられた液溜まり部1aに液体内容物を溜めることが可能な下げ底形状を形成する。
【0031】
図4及び図5に示すように、中間容器体101のくびれ部5には、上部壁5aと下部壁5bとの間を上下方向に架け渡す補強リブ5rが設けられている。補強リブ5rは、図6に示すように、周方向の8箇所に等間隔で間欠的に設けられている。この補強リブ5rは、くびれ部5の上部壁5aと下部壁5bのなす角度が変化するのを抑制するように作用する。また、補強リブ5rの作用によって、折り返し部4が径方向外側に拡径するのを抑制することができる。図2に示す合成樹脂製容器100において、折り返し部4を支点にして上方に折り返された底部1を再び下方に押し戻すためには、折り返し部4が拡径する必要があるが、補強リブ5rを設けることで折り返し部4が拡径しにくくなっている。従って、くびれ部5に補強リブ5rを設けることによって、図2に示す合成樹脂製容器100において、折り返し部4を支点にして上方に折り返された底部1が、温度上昇等による収容空間M内の内圧上昇により再び下方に押し戻されて元の中間容器体101の形状に戻ってしまうのを抑制することができる。なお、補強リブ5rは、2箇所のみでは足りず、周方向の最低4箇所に設けられていれば、くびれ部5の上記補強を行うことができる。
【0032】
図4から図6に示すように、補強リブ5rは、径方向外側に向かって周方向の幅が狭くなるように構成されている。このような構成の採用によって、中間容器体101を成形した後の型開き時の際に、金型が補強リブ5rに引っ掛かるのを抑制することができる。また、折り返し部4の拡径を必要最小限の樹脂材料で抑制することができるため、樹脂材料の使用量を抑制することができる。
【0033】
底部1の下面には、図5及び図7に示すように、中間容器体101を押出ブロー成形により形成する場合に、ブロー成形用金型によって一部が食い切られたピンチオフ部1eが形成されている。このように底部1から下方にピンチオフ部1eが突出していても、図5に示す状態から底部1を胴部2の内側に向けて折り返すことで、図2に示すように、ピンチオフ部1eが折り返し部4よりも上方に位置決めされる。従って、合成樹脂製容器100は安定した自立姿勢を確保することができる。
【0034】
本実施形態において、中間容器体101は、例えば、合成樹脂素材により形成されたパリソンに対し押出ブロー成形を行うことによって形作ることができる。また、中間容器体101は、射出成形、圧縮成形、押出成形等の手段により形成されたプリフォームに対して二軸延伸ブロー成形を行うことによって形成することもできる。ここで、中間容器体101及び合成樹脂製容器100の材料には、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、ポリプロピレン(ホモPP、ランダムPP、ブロックPP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料を用いることができる。
【0035】
以上述べたように、本実施形態は、内容物の収容空間Mを形成する筒状の胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部1とを備える合成樹脂製容器100であって、胴部2の下部には、径方向内側に凹むくびれ部5が設けられており、くびれ部5の下部壁5bと底部1の外側壁部1cとが相互に重なると共に下方に向かって径方向外側に延びて自立脚部10を形成し、下部壁5bと外側壁部1cは、下端部で連結されており、くびれ部5には、くびれ部5の上部壁5aと下部壁5bとの間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられた補強リブ5rが形成されるように構成した。このような構成の採用によって、折り返し部4が径方向外側に拡径するのを抑制することができるので、折り返し部4を支点にして上方に折り返された底部1が、温度上昇等による収容空間M内の内圧上昇により再び下方に押し戻されてしまうのを抑制することができる。また、補強リブ5rの作用によって、鉛直方向荷重に対する合成樹脂製容器100の座屈強度が向上するので、積載荷重や口部3にポンプ等を装着する際の荷重により合成樹脂製容器100が座屈してしまうのを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、補強リブ5rは、径方向外側に向かって周方向の幅が狭くなるように構成した。このような構成の採用によって、中間容器体101を成形した後の型開き時の際に、金型が補強リブ5rに引っ掛かるのを抑制することができる。また、折り返し部4の拡径を必要最小限の樹脂材料で抑制することができるため、樹脂材料の使用量を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、くびれ部5の下部壁5bと底部1の外側壁部1cは、下端部において、中空部を有する環状の折り返し部4により連結されるように構成した。このような構成の採用によって、肉厚を変更することなく折り返し部4を形成することができるので、折り返し部4の近傍における肉厚のばらつきを抑制することができる。また、折り返し部4の下面を合成樹脂製容器100の設置面とした場合に、中空部によりクッション性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、底部1は、外側壁部1cの径方向内側に設けられ、径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部1bを有するように構成した。このような構成の採用によって、残量が少なくなった内容物を底部1の径方向中央部に集めることができる。従って、合成樹脂製容器100の口部3に吐出具を装着し、吐出具から吸い上げパイプを底部1の径方向中央部近傍まで垂下させることにより、収容空間M内の内容物を最後まで使い切ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、底部1は、外側壁部1cの上端部(屈曲部6)よりも下方に設けられた液溜まり部1aを有するように構成した。このような構成の採用によって、残量が少なくなった内容物を底部1の径方向中央部に集めることができる。従って、合成樹脂製容器100の口部3に吐出具を装着し、吐出具から吸い上げパイプを底部1の径方向中央部近傍まで垂下させることにより、収容空間M内の内容物を最後まで使い切ることができる。
【0040】
また、本実施形態は、内容物の収容空間Mを形成する筒状の胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部1とを備えた中間容器体101であって、胴部2の下部には、径方向内側に凹むくびれ部5が設けられており、くびれ部5には、くびれ部5の上部壁5aと下部壁5bとの間を上下方向に架け渡すと共に周方向に間欠的に設けられた補強リブ5rが形成され、底部1は、外側壁部1cと、外側壁部1cの径方向内側に設けられた内側壁部1bとを有し、内側壁部1bは屈曲部6を介して外側壁部1cと連結され、内側壁部1b及び外側壁部1cは胴部2の内側に向けて凸形状をなすように屈曲部6において屈曲可能であり、底部1の外側壁部1cは、折り返し部4を介してくびれ部5の下部壁5bと連結され、外側壁部1c及び下部壁5bは胴部2の外側に向けて凸形状をなすように折り返し部4において折り返し可能であるように構成した。このような構成の採用によって、折り返し部4が径方向外側に拡径するのを抑制することができるので、折り返し部4を支点にして底部1を上方に折り返して形成された合成樹脂製容器100において、底部1が温度上昇等による収容空間M内の内圧上昇により再び下方に押し戻されてしまうのを抑制することができる。また、補強リブ5rの作用によって、鉛直方向荷重に対する中間容器体101から形成した合成樹脂製容器100の座屈強度が向上するので、積載荷重や口部3にポンプ等を装着する際の荷重により合成樹脂製容器100が座屈してしまうのを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態は、自立脚部10を備える合成樹脂製容器100の製造方法であって、上記中間容器体101を形成するステップと、中間容器体101の外側壁部1cが下部壁5bに重なるように外側壁部1cを折り返し部4において折り返すと共に、内側壁部1b及び外側壁部1cが胴部2の内側に向けて凸形状をなすように屈曲部6において屈曲させて自立脚部10を形成するステップとを含むように構成した。このような構成の採用によって、折り返し部4が径方向外側に拡径するのを抑制することができるので、折り返し部4を支点にして底部1を上方に折り返して形成された合成樹脂製容器100において、底部1が温度上昇等による収容空間M内の内圧上昇により再び下方に押し戻されてしまうのを抑制することができる。また、補強リブ5rの作用によって、鉛直方向荷重に対する合成樹脂製容器100の座屈強度が向上するので、積載荷重や口部3にポンプ等を装着する際の荷重により合成樹脂製容器100が座屈してしまうのを抑制することができる。
【0042】
本実施形態のように、中間容器体101において下方に突出する底部1を後工程で胴部2の内側に向かって反転させることで、下げ底形状の合成樹脂製容器100を押出ブロー成形により形成する場合に、水平方向への型開きの際に底部1部分の金型が型開きを阻害することが無い。従って、底部1を下げ底形状としつつ、押出ブロー成形用金型の構成を簡素化することができる。
【0043】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0044】
例えば、本実施形態では、補強リブ5rは、径方向外側に向かって周方向の幅が狭くなるように構成したが、この態様には限定されない。補強リブ5rは、径方向外側に向かって周方向に等幅であってもよいし、径方向外側に向かって周方向の幅が広くなるように構成してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、くびれ部5の下部壁5bと底部1の外側壁部1cは、下端部において、中空部を有する環状の折り返し部4により連結されるように構成したが、この態様には限定されない。折り返し部4は、例えば、薄肉部を有するヒンジ部等により構成されていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、底部1は、外側壁部1cの径方向内側に設けられ、径方向内側に向かって下方に傾斜する内側壁部1b、及び外側壁部1cの上端部(屈曲部6)よりも下方に設けられた液溜まり部1aを有するように構成したが、この態様には限定されない。底部が上記いずれかの液溜め機能のみを備えていてもよいし、いずれの液溜め機能も備えていなくてもよい。
【実施例
【0047】
本実施形態に係る補強リブ5r付きくびれ部5を胴部2に備えた合成樹脂製容器100の効果を確認するために、補強リブ5rを備えた実施例及び補強リブ5rを備えていない比較例各5サンプルについて、(a)底部1が折り返す前の形状に戻るのに必要な収容空間M内の圧力(表1参照)、及び(b)鉛直方向荷重に対して座屈を開始する荷重(座屈強度)、及び座屈開始時の口部3の上面の鉛直方向変位量(表2参照)を測定した。
【0048】
実施例において、補強リブ5rは、図6に示すように周方向に等間隔で8箇所に設けられている。また、実施例、比較例共に、容器の重量は13g、内容量は450ml、胴部2の平均肉厚は約0.3mm、胴部2の全長(図1において肩部の上端部から折り返し部4の下面までの鉛直方向距離)は約149mm、胴部2の外径はφ65mmである。
【0049】
以下の表1は、実施例及び比較例各5つのサンプルについて、底部1が折り返し前の下方に凸となる形状(図4及び図5の状態)に戻るのに必要な収容空間M内の圧力(単位:kPa)を測定した結果である。
【0050】
【表1】
【0051】
表1より、くびれ部5に補強リブ5rを設けることによって、底部1が折り返し前の下方に凸となる形状に戻るのに必要な収容空間M内の圧力(平均値)が、3.07[kPa](比較例)から9.30[kPa](実施例)へと約3倍に向上している。補強リブ5rを設けることで折り返し部4の拡径が抑制され、折り返された底部1を戻り難くする顕著な効果があることが分かる。
【0052】
以下の表2は、実施例及び比較例各5つのサンプルについて、22℃の温度環境下で、口部3の上面に鉛直方向下向き荷重を加え、座屈を開始する荷重(座屈強度、単位:N)、及び座屈開始時の口部3の上面の鉛直方向変位量(圧縮量、単位:mm)を測定した結果である。
【0053】
【表2】
【0054】
表2より、くびれ部5に補強リブ5rを設けることによって、容器が座屈を開始する時の鉛直方向荷重である座屈強度の平均値は、77.7[N](比較例)から84.1[N](実施例)へと向上し、座屈開始時の容器の圧縮量の平均値も、4.19[mm](比較例)から3.23[mm]へと向上(減少)した。これは、実施例においては、補強リブ5rを設けた効果によって、くびれ部5において上部壁5aと下部壁5bのなす角度が変化するのを抑制するように作用するため、胴部下部ズグミ(胴部2の下部であるくびれ部5が鉛直方向に潰れていく現象)を抑制することができるからであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示によれば、安定した自立姿勢を確保できるとともに、高い剛性を備えた合成樹脂製容器100、中間容器体101、及び合成樹脂製容器100の製造方法を提案することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 底部
1a 液溜まり部
1b 内側壁部
1c 外側壁部
1e ピンチオフ部
2 胴部
3 口部
3a 雄ねじ部
4 折り返し部
5 くびれ部
5a 上部壁
5b 下部壁
5r 補強リブ
6 屈曲部
10 自立脚部
100 合成樹脂製容器
101 中間容器体
M 収容空間
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7