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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】PC鋼材吊上げ治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
E04G21/12 104F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023078357
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃幸
(72)【発明者】
【氏名】栗山 昌之
(72)【発明者】
【氏名】堀 英児
(72)【発明者】
【氏名】立花 弘
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-088478(JP,U)
【文献】実開昭62-055782(JP,U)
【文献】特開2011-132717(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0047258(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04G 21/16
B66C 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼材を固定して揚重機のフックに掛け止めて吊り上げるためのPC鋼材吊上げ治具であって、
ウェッジの外形に対応した下方に行くに従って縮径するテーパー状の切欠き孔を有した治具本体と、前記ウェッジを治具本体に押さえ付けて固定する押えプレートと、を備え、
前記押えプレートと前記治具本体とが脱着自在にボルト接合されており、
前記治具本体には、過締め防止用ボルトを装着するための雌ねじ部が形成されていること
徴とするPC鋼材吊上げ治具。
【請求項2】
前記治具本体の端部には、吊り孔が形成された吊り用プレートが取り付けられていること
徴とする請求項1に記載のPC鋼材吊上げ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼材吊上げ治具に関し、詳しくは、PC鋼線より線吊上げ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、VSL(Vorspann System Losinger)工法などのポストテンション方式で建築物や構造物にプレストレスを導入して大スパンのPC(Prestressed Concrete)構造物を構築することが行われている。
【0003】
このようなVSL工法では、PC構造物の型枠や鉄筋に緊張定着具を取り付け、シース管を配管し、そのシース管内にPC鋼線より線を挿通し、コンクリートを打設してコンクリートが所定の強度が発現した後、緊張してプレストレスを導入している。このため、PC鋼線より線などのPC鋼材を所定の位置まで搬入場所からクレーン等の揚重機で吊り上げて搬送する必要がある。また、PC鋼材は、プレストレスの緊張力に耐え得る適切なジョイント方法でなければ接続することができないため、必然的に長く、重くなる。
【0004】
その上、PC鋼材に誤って傷をつけると緊張力導入時にその傷から破断するおそれがあり、PC鋼材を損傷するおそれがなく、吊り上げることができる吊上げ治具が望まれていた。従来、PC鋼材吊上げ治具としては、長大なPC鋼材の端部を治具の孔に挿通して装着し、吊り上げる吊上げ治具が存在している。しかし、従来のPC鋼材吊上げ治具は、長大なPC鋼材の一端部を吊り上げてPC鋼材全長を吊り上げるため、必然的に揚重距離が長くなり、より大きな揚重機が必要となっていた。つまり、揚重機のコストがアップするだけでなく、建設現場へ揚重機を搬入できなかったり、揚重機を設置するスペースを確保することができなかったりするという問題が発生していた。このため、長さ方向の中央付近などのPC鋼材を任意位置で固定して吊り上げることができるPC鋼材吊上げ治具が切望されていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、上端にガイドケーブルに固着する固着部を備え、下端にPC鋼より線束の各PC鋼より線の心線を取り付ける取付部を備えたPC構築物の施工用金具が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項3,4、明細書の段落[0022]、図面の図1図2等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のPC構築物の施工用金具は、PC鋼より線束30の一端に連結金具40を取り付けてPC鋼より線束30の全長を吊り上げるため、必然的に揚重距離が長くなり、より大きな揚重機が必要となる。つまり、前述のように、揚重機のコストがアップするだけでなく、建設現場へ揚重機を搬入できなかったり、揚重機を設置するスペースを確保することができなかったりするという問題を解消することができなかった。
【0007】
他の吊上げ治具の先行技術としては、例えば、特許文献2には、吊り下げワイヤー30を介して吊り下げ装置に吊り下げられるとともに、吊り下げ対象となる柱筋10の上部に連結して、当該柱筋10を吊り下げる少なくとも3つの吊り下げ部材を有する支持部材20を備え、先組みした柱筋の外径と、柱筋を直接吊り下げるワイヤーとの位置関係を適切に調整することができる柱筋の吊り治具が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0018]~[0028]、図面の図2等参照)。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の柱筋の吊り治具は、前述の従来のPC鋼材吊上げ治具と同様に、長さ方向の中央付近などのPC鋼材を任意位置で固定して吊り上げることができず、必然的に揚重距離が長くなり、揚重機が大きくなることに起因するデメリットを解決することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-241633号公報
【文献】特開2019-167762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、PC鋼材を任意位置で固定して吊り上げることができるPC鋼材吊上げ治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係るPC鋼材吊上げ治具は、PC鋼材を固定して揚重機のフックに掛け止めて吊り上げるためのPC鋼材吊上げ治具であって、ウェッジの外形に対応した下方に行くに従って縮径するテーパー状の切欠き孔を有した治具本体と、前記ウェッジを治具本体に押さえ付けて固定する押えプレートと、を備え、前記押えプレートと前記治具本体とが脱着自在にボルト接合されており、前記治具本体には、過締め防止用ボルトを装着するための雌ねじ部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項に係るPC鋼材吊上げ治具は、請求項1に係るPC鋼材吊上げ治具において、前記治具本体の端部には、吊り孔が形成された吊り用プレートが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1又は2に係る発明によれば、PC鋼材を長手方向の端部や中央部付近など任意位置で固定して吊り上げることができる。このため、揚重機で吊り上げる際の使い勝手が向上するだけでなく、揚重距離が長くなるという問題を解決することできる。また、これにより、大型の揚重機を必要とせず、揚重機のコストアップや建設現場へ揚重機を搬入の問題や揚重機を設置スペースの問題を解消することができる。
その上、請求項1又は2に係る発明によれば、治具本体には、過締め防止用ボルトを装着するための雌ねじ部が形成されているので、過締め防止用ボルトで押えプレートと治具本体との間隔を調整することができる。このため、押えプレートと治具本体ボルトとを接合するボルトを締め過ぎてウェッジを損傷することを防ぐことができる。
【0016】
特に、請求項に係る発明によれば、吊り孔が形成された吊り用プレートが取り付けられているので、シャックル等を用いてPC鋼材吊上げ治具を揚重機のフックに掛け止めることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具を示す平面図である。
図2図2は、同上のPC鋼材吊上げ治具を示す図1のA-A線断面図である。
図3図3は、同上のPC鋼材吊上げ治具の治具本体を示す斜視図である。
図4図4は、同上の治具本体を示す正面図である。
図5図5は、同上の治具本体を示す平面図である。
図6図6は、同上の治具本体を示す底面図である。
図7図7は、同上の治具本体を示す側面図である。
図8図8は、同上のPC鋼材吊上げ治具の一対の押えプレートを示す斜視図である。
図9図9は、同上のPC鋼材吊上げ治具の一対の押えプレートを示す平面図である。
図10図10は、同上のPC鋼材吊上げ治具でPC鋼材の端部を固定して揚重機で吊り上げている状態を示す写真である。
図11図11は、同上のPC鋼材吊上げ治具でPC鋼材の中間部を固定して揚重機で吊り上げている状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るPC鋼材吊上げ治具の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
<PC鋼材吊上げ治具>
【0020】
先ず、図1図9を用いて、本発明の実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具1について説明する。本発明の実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具1は、クレーンなどの揚重機で吊り上げるために、PC鋼材P1を固定して揚重機のフックに掛け止めて吊り上げる治具である。図1は、本発明の実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具1を示す平面図であり、図2は、PC鋼材吊上げ治具1を示す図1のA-A線断面図である。
【0021】
PC鋼材吊上げ治具1は、図1図2に示すように、基体となる治具本体2と、この治具本体2に取り付けられた吊り用プレート3と、PC鋼材P1を挟持して固定する複数のウェッジ4と、これらのウェッジ4を治具本体2に押さえ付けて固定する押えプレート5など、から構成されている。
【0022】
(治具本体)
治具本体2は、図3図7に示すように、JISG310に規定された一般構造用圧延鋼材SS400からなる厚さ32mmの長方形状の鋼板からなる本体プレート20を基体とする部材である。図3は、PC鋼材吊上げ治具1の治具本体2を示す斜視図であり、図4は、治具本体2を示す正面図である。また、図5は、治具本体2を示す平面図であり、図6は、治具本体2を示す底面図であり、図7は、治具本体2を示す側面図である。
【0023】
勿論、本体プレート20は、一般構造用圧延鋼材SS400に限られず、他の鋼材から構成されていても構わない。但し、PC鋼材吊上げ治具1を繰り返し使用するためには、PC鋼材P1と擦れても持つように一定程度の硬度を有することが好ましい。
【0024】
また、この本体プレート20には、ウェッジ4の円錐台の外表面の形状(外形)に対応したウェッジ4を掛け止める円錐台状の複数(図示形態では、2列×6か所=12か所)の切欠き孔21,・・・,21が形成されている。この切欠き孔21は、ウェッジ4の外表面と密着して掛け止める下方に行くに従って縮径するテーパー状のウェッジ当接部21aと、このウェッジ当接部21aにウェッジ4を装着したPC鋼材P1を挿通するための切欠き部21bとから構成されている。
【0025】
そして、本体プレート20の長手方向の両端部付近には、押えプレート5をボルト接合するための貫通孔である各二対、計4か所のボルト孔22が形成されている。このため、押えプレート5と治具本体2とは、後述のボルト6により脱着自在となっている。また、各二対のボルト孔22の外側の本体プレート20の長手方向の両端部には、M10からなる過締め防止用ボルト23を装着するための雌ねじ部24が形成されている。
【0026】
(吊り用プレート)
また、本体プレート20の長手方向の端部には、吊り用プレート3が取り付けられている。具体的には、吊り用プレート3は、本体プレート20の長手方向の端部に全周隅肉溶接で接合されている。
【0027】
この吊り用プレート3は、治具本体2と同様に、一般構造用圧延鋼材SS400からなる厚さ12mmの長方形状の鋼板からなるプレート本体30を基体とするプレートである。このプレート本体30には、揚重機のフックに掛け止めるシャックル等を挿通するための直径20mmの吊り孔31が穿設されている。
【0028】
(ウェッジ)
ウェッジ4は、図2に示すように、PC鋼材P1を挟み込んで固定するためのものであり、PC鋼材P1を挿通するための孔が形成された半割り円錐台状となっている。
【0029】
(押えプレート)
次に、図8図9を用いて、押えプレート5について説明する。図8は、PC鋼材吊上げ治具1の一対の押えプレート5,5を示す斜視図であり、図9は、一対の押えプレート5,5を示す平面図である。
【0030】
図8図9図2に示すように、押えプレート5は、左右対称の一対の部材であり、ウェッジ4で挟持されたPC鋼材P1を挿通するとともに、ウェッジ4を治具本体2に押さえ付けて固定する機能を有している。
【0031】
この押えプレート5は、治具本体2と同様に、一般構造用圧延鋼材SS400からなる厚さ16mmの長方形状の鋼板からなるプレート本体50を基体とするプレートであり、このプレート本体50には、PC鋼材P1を挿通する複数(図示形態では、6か所)の切欠き51が形成されている(図2も参照)。
【0032】
また、プレート本体50の長手方向の両端部には、前述の治具本体2のボルト孔22に対応する位置に、それぞれ治具本体2とM16のボルト6を挿通するためのボルト孔52,52が穿設されている。
【0033】
<PC鋼材吊上げ治具の使用方法>
次に、図1図2図10図11を用いて、前述のPC鋼材吊上げ治具1の使用方法について説明する。図10は、PC鋼材吊上げ治具1でPC鋼材P1の端部を固定してクレーンで吊り上げている状態を示す写真であり、図11は、PC鋼材吊上げ治具1でPC鋼材P1の中間部を固定してクレーンで吊り上げている状態を示す写真である。
【0034】
図1図2に示すように、PC鋼材P1に半割りのウェッジ4を嵌合して装着し、ウェッジ4が装着されたPC鋼材P1を、それぞれウェッジ4に外形に対応した円錐台状の切欠き孔21に挿通する。
【0035】
そして、ボルト6を押えプレート5のボルト孔52及び治具本体2のボルト孔22に挿通してナットを締め付けることで押えプレート5を治具本体2にボルト接合してウェッジ4を治具本体2の切欠き孔21の下に行くに従って縮径するテーパー状のウェッジ当接部21aに押し付けて固定する。
【0036】
また、このとき、治具本体2には、過締め防止用ボルト23を装着するための雌ねじ部24が形成されているので、過締め防止用ボルト23で押えプレート5と治具本体2との間隔を調整することができる。このため、ボルト6を締め過ぎてウェッジ4を損傷することを防ぐことができる。
【0037】
そして、図10図11に示すように、ウェッジ4を固定した状態で、吊り用プレート3の吊り孔31にシャックル等を用いてワイヤロープでクレーンのフックに掛け止めてPC鋼材P1が固定されたPC鋼材吊上げ治具1を吊り上げる。
【0038】
また、このとき、PC鋼材吊上げ治具1は、ウェッジ4を装着したPC鋼材P1の任意の位置で固定できるため、図10に示すように、PC鋼材P1の長手方向の端部を吊り上げることもできるし、図11に示すように、PC鋼材P1の長手方向の中央部付近などの中間部を吊り上げることもできる。
【0039】
以上説明した本実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具1によれば、PC鋼材P1を長手方向の端部や中央部付近など任意位置で固定して吊り上げることができる。このため、クレーンなどの揚重機で吊り上げる際の使い勝手が向上するだけでなく、揚重距離が長くなるという問題を解決することできる。
【0040】
また、これにより、大型の揚重機を必要とせず、揚重機のコストアップや建設現場へ揚重機を搬入の問題や揚重機を設置スペースの問題を解消することができる。
【0041】
さらに、PC鋼材吊上げ治具1によれば、吊り孔31が形成された吊り用プレート3が取り付けられているので、シャックル等を用いてPC鋼材吊上げ治具1を揚重機のフックに掛け止めることが容易である。
【0042】
以上、本発明の実施形態に係るPC鋼材吊上げ治具について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、実施形態として例示したPC鋼材吊上げ治具の各部材の径や寸法等は、あくまでも例示であってPC鋼材の径に応じて適宜設計変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1:PC鋼材吊上げ治具
2:治具本体
20:本体プレート
21:切欠き孔
21a:ウェッジ当接部
21b:切欠き部
22:ボルト孔
23:過締め防止用ボルト
24:雌ねじ部
3:吊り用プレート
30:プレート本体
31:吊り孔
4:ウェッジ
5:押えプレート
50:プレート本体
51:切欠き
52:ボルト孔
6:ボルト
P1:PC鋼材
【要約】
【課題】PC鋼材を任意位置で固定して吊り上げることができるPC鋼材吊上げ治具を提供する。
【解決手段】PC鋼材P1を固定して揚重機のフックに掛け止めて吊り上げるためのPC鋼材吊上げ治具1において、ウェッジ4の外形に対応した下方に行くに従って縮径するテーパー状の切欠き孔21を有した治具本体2と、ウェッジ4を治具本体2に押さえ付けて固定する押えプレート5と、を備え、押えプレート5と治具本体2を脱着自在にボルト接合する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11