(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】果実用包装及び被包装果実
(51)【国際特許分類】
B65D 85/34 20060101AFI20230821BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B65D85/34 100
B65D77/04 E
(21)【出願番号】P 2018131929
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2020-06-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 平成30年7月4日 ウェブサイトのアドレス https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=41805110200100 消費者庁ウェブサイト 機能性表示食品の検索データベース 商品名:GABA Select(ギャバセレクト)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】公文 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 聰
(72)【発明者】
【氏名】征 夢楠
(72)【発明者】
【氏名】今森 久弥
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-135434(JP,A)
【文献】特開2016-196326(JP,A)
【文献】特開2018-79985(JP,A)
【文献】特開2004-73077(JP,A)
【文献】伊藤和彦、「トマトのMA包装内における酸素と二酸化炭素濃度の変化予測」、日本食品工学会誌、2004年9月、Vol.5、No.3、p.177-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
B65D 85/34
B65D 85/50
B65D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装果実であって、それを構成するのは、少なくとも、次のとおりである:
果実、及び、
MAフィルム:その用途は、外装であり、及び、
内装箱:その材質は、吸湿材であり、かつ、
それを構成するのは、少なくとも、次のとおりである:
底面:ここに置かれるのは、前記果実であり、及び、
側面:これが設けられているのは、前記底面の周部であり、かつ、 その上端に設けられているのは、天面であり、かつ、前記天面が迫り出している方向は、前記内装箱の内側であり、かつ、前記天面で支えられるのは、前記MAフィルムであり、かつ、
前記底面から前記MAフィルムまでの距離は、前記果実の高さよりも大きく、それによって、前記果実及び前記MAフィルムの間に形成されるのは、空隙であり、かつ、前記空隙の機能は、前記果実のカビ又はシミを防止することである。
【請求項2】
請求項1の被包装果実であって、
前記吸湿材は、紙である。
【請求項3】
被包装果実であって、それを構成するのは、少なくとも、次のとおりである:
果実、
内装箱:その材質は、吸湿材であり、かつ、
それを構成するのは、少なくとも、次のとおり:
底面:ここに置かれるのは、前記果実であり、及び、
側面:これが設けられているのは、前記底面の周部であり、かつ、 その高さは、前記果実の高さよりも大きく、及び、
天面:これが設けられているのは、前記側面の上端であり、かつ、これが迫り出している方向は、前記内装箱の内側であり、及び、
MAフィルム:これで包むのは、前記内装箱及び前記果実であり、かつ、
これを支えるのは、前記天面であり、かつ、
前記底面から前記MAフィルムまでの距離は、前記果実の高さよりも大きく、それによって、前記果実及び前記MAフィルムの間に形成されるのは、空隙であり、かつ、前記空隙の機能は、前記果実のカビ又はシミを防止することである。
【請求項4】
請求項3の被包装果実であって、
前記吸湿材は、紙である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、果実用包装、並びに、被包装果実及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
青果物の鮮度保持技術は、広く知られており、例示すると、MA(Modified Atmosphere)包装技術である。この技術で実現される環境は、大気よりも低酸素かつ高二酸化炭素である。例えば、特許文献1に開示されているのは、青果物用の包装袋である。具体的には、青果物をピロー包装するのに用いるのは、MAフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、果実の軟化を遅らせながら、果実の障害を減らすことである。確かに、MAフィルムを用いれば、果実の軟化が遅れる。しかし、MAフィルムを用いると、果実の障害が増えてしまう。トマトを例にすれば、ヘタカビ、黒シミ、果実カビ等である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、本願発明者が着目したのは、包装内の湿度及び包装フィルムと果実との接触度合いである。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0006】
本発明に係る果実用包装を構成するのは、少なくとも、Modified Atmospfereフィルム(以下、「MAフィルム」という。)及び内装箱である。当該MAフィルムの用途は、外装である。当該内装箱を構成するのは、少なくとも、底面である。この底面に置かれるのは、果実である。当該底面から当該MAフィルムまでの距離は、当該果実の高さよりも大きい。当該果実は、例示すると、トマト、葡萄や桃などである。当該内装箱を構成するのは、更に、側面である。この側面が設けられているのは、当該底面の周部である。当該側面の高さは、当該被包装果実の高さよりも大きい。当該内装箱の材質は、例示すると、吸湿材である。この吸湿材は、例示すると、紙である。
【0007】
本発明に係る被包装果実を構成するのは、少なくとも、果実、MAフィルム、及び内装箱である。果実は、例示すると、トマト、葡萄や桃などである。その他の説明は、前述に同旨である。
【0008】
本発明に係る被包装果実の製造方法を構成するのは、箱詰、及びMAフィルム包装である。果実は、箱詰される。次に、箱詰された果実は、MAフィルム包装される。ここで、MAフィルム包装とは、包装であって、それに用いる資材がMAフィルムであることをいう。当該包装によって形成されるのは、空隙である。この空隙が形成されるのは、当該箱詰された果実の上部とMAフィルムとの間である。当該箱詰で用いるのは、吸湿材である。この吸湿材は、例示すると、紙である。
【発明の効果】
【0009】
本発明が可能にするのは、果実の軟化を遅らせながら、果実の障害を減らすことである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
<果実用包装>
図1で示されるのは、果実用包装1の側断面図である。果実用包装1を構成するのは、MAフィルム10、及び内装箱20である。内装箱20に置かれるのは、果実30である。内装箱20及び果実30を包んでいるのは、MAフィルム10である。
【0012】
<被包装果実>
図2で示されるのは、被包装果実40の側断面図である。
図3で示されるのは、被包装果実40の外観写真である。被包装果実40を構成するのは、MAフィルム10、内装箱20、及び果実30である。空隙Sが形成されるのは、果実30の上部とMAフィルム10との間である。空隙Sの機能は、果実における障害(シミ、カビ等)の防止である。
【0013】
<MAフィルム>
MAフィルム10とは、樹脂フィルムであって、そのガス透過速度及び青果物の呼吸速度のバランスが調節されたものをいう。MAフィルム10が実現するのは、低酸素かつ高二酸化炭素の雰囲気である。本実施の形態において、MAフィルムの用途の一つは、外装である。MAフィルム10は、広く流通しているが、例示すると、Pプラス(登録商標)シリーズ(住友ベークライト社製)である(例えば、特許5401020号公報を参照)。
【0014】
<内装箱>
内装箱20を構成するのは、底面21、及び側面22である。底面21に置かれるのは、果実30である。側面22が設けられているのは、底面21の周部21aである。側面22の上端22aが支えているのは、MAフィルム10である。側面22の高さH1は、果実30のうち最も大きな果実30aの高さhよりも大きい。高さH1を定めるにあたり参照するのは、果実30aの高さhの平均値や最大値等であるが、これらに限らない。つまり、底面21からMAフィルム10までの距離H2は、果実30aの高さhよりも大きい。内装箱20の材質は、吸湿材であり、より具体的には、紙(紙トレイ)である。
【0015】
<内装箱の変形例>
図4で示されるのは、内装箱20の変形例である。
図5で示されるのは、この変形例に係る上面視外観写真である。
図6で示されるのは、この変形例に係る斜視外観写真である。内装箱20を更に構成するのは、天面23である。天面23が設けられているのは、側面22の上端である。天面23が迫り出しているのは、内装箱20の内側である。天面23が支えているのは、MAフィルム10である。
【0016】
<果実>
果実30は、広く一般に知られているものであるが、例示すると、桃、葡萄、トマト等である。以下、本実施の形態で取り上げるのは、トマトである。
【0017】
<被包装果実の製造方法>
被包装果実40の製造方法を構成するのは、箱詰、及びMAフィルム包装である。果実30は、箱詰される。ここで用いるのは、内装箱20である。箱詰される果実30の高さhは、内装箱20の側面の高さHより低い。言い換えれば、箱詰される果実30は、選別されてもよく、その選別時期は、箱詰と同時又はその前である。次に、箱詰された果実30は、MAフィルム包装される。ここで、MAフィルム包装とは、包装であって、それに用いる資材がMAフィルム10であることをいう。好ましい包装方法は、ピロー包装であるが、首止め包装も妨げられない。当該包装によって形成されるのは、空隙Sである。空隙Sが形成されるのは、当該箱詰された果実30の上部とMAフィルム10との間である。空隙Sの機能は、果実における障害(シミ、カビ等)の防止である。
【0018】
<試験区分>
効果を確認するため準備した試験区分は、3区分である。
図7で示されるとおり、比較例1は、トマト3個(約240g)を、非MAフィルム(ポリプロピレンフィルム)のみで包装したものである。
図8で示されるとおり、比較例2は、トマト3個(約240g)を、MAフィルム「P‐プラス」(登録商標)のみで包装したものである。
図3で示されるとおり、実施例は、トマト3個(約240g)を紙トレイ(サイズ:10cm×10cm×6cm)に載置して、MAフィルム「P‐プラス」(登録商標)で包装したものである。各試験区分とも準備したのは、トマト3個を包装したものを2袋ずつである。
【0019】
<試験条件>
設定した温度は、20℃である。設定したインキュベーターの湿度は、65%である。
【0020】
<外観調査結果>
表1が示しているのは、外観調査結果である。ここで、ヘタカビとは、トマトのカビのうち蔕部分の生じるものをいう。黒シミとは、トマト果皮の変色をいう。果実カビとは、トマトのカビのうち果皮部分に生じるものをいう。
【0021】
【0022】
<考察>
比較例1並びに比較例2及び実施例を比較すると、後2者では軟化の発生率も低く抑えられた。このことから、MAフィルムを用いたことで、軟化の発生率も低く抑えられたといえる。比較例2及び実施例を比較すると、ヘタカビの発生及び黒シミの発生が抑制された。このことから、紙トレイを用い、かつ、MAフィルムとトマトとを接触させなかったことで、ヘタカビの発生及び黒シミの発生が抑制されたといえる。以上のとおり、本発明によれば、軟化等の追熟を遅らせながら、果実の障害を減らせる。