(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】異相ポリマー組成物を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20230821BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230821BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230821BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08L23/12
C08J3/20 Z CES
C08K5/00
C08L23/06
(21)【出願番号】P 2018513482
(86)(22)【出願日】2016-09-02
(86)【国際出願番号】 US2016050188
(87)【国際公開番号】W WO2017044387
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2018-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2015-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、ジョセフ・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トレナー、スコット・アール.
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】藤原 浩子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-041040(JP,A)
【文献】特開2000-154270(JP,A)
【文献】特表2013-516530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C
C08F
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異相ポリマー組成物を改変するための方法であって、
(a)ラジカル付加反応においてフリーラジカルと反応できる官能基を2個以上含む相溶化剤を用意する工程;
ここで、相溶化剤は、以下から選ばれる;
(1)少なくとも1個の窒素酸化物ラジカルを含む化合物
(2)少なくとも1個のニトロン基を含む化合物
(3)380kJ/mol以下の結合-解離エネルギーを有する少なくとも1個の第3級炭素-水素結合を含む化合物
(4)少なくとも1個のフルベン部分を含む化合物
(5)式(BI)の化合物
【化1】
式中、R
51は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(BV)の基からなる群から選択され、
【化2】
式中、
R
55およびR
56は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはR
55およびR
56は、組み合わせて環状構造を形成することができ、変数xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり、R
52は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、R
51およびR
52が両方とも芳香族基である場合、(i)R
51およびR
52は、直接結合、アルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子によって架橋され、または(ii)R
51およびR
52の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、R
53およびR
54は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および式(BVI)および(BVII)の基からなる群から選択され、
【化3】
【化4】
式中、R
57は、独立に、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、R
58は、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、R
53およびR
54の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(BVI)および(BVII)の基からなる群から選択され、
(6)式(BX)の化合物
【化5】
式中、R
10は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および式(BXV)の基からなる群から選択され、
【化6】
式中、R
15は、R
16とR
17の間の直接結合、酸素原子、アルカンジイル基、および置換アルカンジイル基からなる群から選択され、R
16およびR
17は、独立に、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および上述した式(BVI)、(BVII)の基からなる群から選択され、R
11およびR
12の少なくとも1つ、ならびにR
13およびR
14の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(BVI)、(BVII)からなる群から選択され
(7)式(BXX)の化合物
【化7】
式中、R
20は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基から選ばれる2価の連結基であり、R
21およびR
22は、シアノ基、ニトロ基、上述した式(BVI)および(BVII)の基からなる群から選択され、R
23、R
24、R
25、およR
26は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および上述した式(BV)の構造に一致する基からなる群から選択され、R
23およびR
24の少なくとも1つ、ならびにR
25およびR
26の少なくとも1つは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(BV)の基からなる群から選択され、さらに、R
23およびR
24が両方とも芳香族基である場合、(i)R
23およびR
24は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R
23およびR
24の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、そして、R
25およびR
26が両方とも芳香族基である場合、(i)R
25およびR
26は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R
25およびR
26の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、
(b)
エチレンランの数平均連鎖長が4以上である異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを用意する工程;
ここで、異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーは、、(i)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンとエチレンおよび/またはC
4
~C
10
α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相であって、連続相のプロピレン含有量は、80重量%以上であるもの、ならびに(ii)エチレンとC
3
~C
10
α-オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエラストマーエチレンポリマーを含む不連続相であって、不連続相のエチレン含有量が8~90重量%であるものを含み
(c)前記相溶化剤と前記異相ポリマー組成物を混合する工程;ならびに
(d)前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相中でフリーラジカルを生成する工程
を含み、それによって前記相溶化剤の少なくとも一部が前記プロピレンポリマー相と前記エチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、前記プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合および前記エチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する、方法。
【請求項2】
前記異相ポリマー組成物が、前記異相ポリマー組成物の全重量に基づいて6重量%以上のエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異相ポリマー組成物が、10重量%以上のキシレン可溶分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異相ポリマー組成物中に存在する前記エチレンの5モル%以上が、エチレントライアドで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異相ポリマー組成物の60℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在する前記エチレンの30モル%以上が、エチレントライアドで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異相ポリマー組成物の80℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在する前記エチレンの30モル%以上が、エチレントライアドで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記異相ポリマー組成物の100℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在する前記エチレンの5モル%以上が、エチレントライアドで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記異相ポリマー組成物の60℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長が、3以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記異相ポリマー組成物の80℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長が、7以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記異相ポリマー組成物の100℃昇温溶離分別法(TREF)画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長が、10以上である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、増大したメルトフローレートおよび高い衝撃強さを有する異相ポリオレフィン組成物、ならびにこのような組成物を作製するための方法を対象とする。特に興味深いのは、改変されたポリプロピレン耐衝撃性コポリマーである。
【背景】
【0002】
[0002]ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は、その分子量の関数である。一般に、メルトフローレートを増大させると、樹脂をより低温で処理することおよび樹脂が複雑な部品形状を埋めることが可能になる。メルトフローレートを増大させる種々の先行技術の方法は、押出機中で樹脂とフリーラジカル、例えば過酸化物を生成可能な化合物とを溶融ブレンディングすることを含む。これが行なわれると、ポリマーの重量平均分子量が減少し、MFRが増大する。ポリオレフィンポリマーの分子量を減少させることによってメルトフローレートを増大させることは、しかしながら、改変されたポリマーの強度に有害な影響を及ぼすことが多くの場合に判明している。例えば、ポリマーの分子量を減少させると、ポリマーの耐衝撃性が著しく低下し得る。そしてこの低下した耐衝撃性は、ポリマーを特定の用途または最終用途で使用するのに適さないようにする可能性がある。したがって、現存する技術を利用する場合、ポリマーのメルトフローレートを増大させることと耐衝撃性を望ましくなく低下させることとの間で妥協点に達しなければならない。この妥協は、メルトフローレートが所望のレベルまで増大していないことをしばしば表し、これはより高い加工温度を必要とし、および/またはより低いスループットをもたらす。
【0003】
[0003]したがって、ポリマーの耐衝撃性を維持し、またはさらには向上させながら増大した高いメルトフローを有するポリマー組成物を生成することができる添加剤および方法が依然として必要とされている。
【発明の簡単な概要】
【0004】
[0004]第1の態様では、本発明は、異相ポリマー組成物を改変するための方法であって、
(a)ラジカル付加反応においてフリーラジカルと反応できる官能基を2個以上含む相溶化剤を用意する工程;
(b)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相を含み、かつエチレンランの数平均連鎖長(number-average sequence length of ethylene run)が3以上である異相ポリマー組成物を用意する工程;
(c)相溶化剤と異相ポリマー組成物を混合する工程;ならびに
(d)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相中でフリーラジカルを生成する工程
を含み、それによって相溶化剤の少なくとも一部がプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合およびエチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する、方法を提供する。
【詳細な説明】
【0005】
[0001]以下の定義は、本出願を通して使用されるいくつかの用語を定義するために提供されている。
【0006】
[0002]ここで使用される場合、用語「ヒドロカルビル基」は、炭化水素の炭素原子から水素原子を除去することにより炭化水素から誘導された一価の官能基を意味する。
【0007】
[0003]ここで使用される場合、用語「置換ヒドロカルビル基」は、置換炭化水素の炭素原子から水素原子を除去することにより置換炭化水素から誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換炭化水素」は、非環式、単環式、および多環式、非分枝および分枝状炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非ヒドロカルビル官能基(例えば、ヒドロキシ基もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖は、酸素原子(例えば、エーテルのように)、窒素原子(例えば、アミンのように)、もしくは硫黄原子(例えば、硫化物のように)によって分断されている。
【0008】
[0004]ここで使用される場合、用語「置換アルキル基」は、アルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより置換アルカンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アルカン」は、非環式非分枝および分枝状炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖は、酸素原子(エーテルのように)、窒素原子(アミンのように)、もしくは硫黄原子(硫化物のように)によって分断されている。
【0009】
[0005]ここで使用される場合、用語「置換シクロアルキル基」は、シクロアルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより置換シクロアルカンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換シクロアルカン」は、飽和単環式および多環式炭化水素(側鎖を含むまたは含まない)から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖は、酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子によって分断されている。
【0010】
[0006]ここで使用される場合、用語「アルケニル基」は、オレフィンの炭素原子から水素原子を除去することにより非環式、非分枝および分枝状オレフィン(すなわち、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素)から誘導された一価の官能基を意味する。
【0011】
[0007]ここで使用される場合、用語「置換アルケニル基」は、オレフィンの炭素原子から水素原子を除去することにより非環式、置換オレフィンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換オレフィン」は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する非環式、非分枝および分枝状炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素-炭素鎖は、酸素原子(エーテルのように)もしくは硫黄原子(硫化物のように)によって分断されている。
【0012】
[0008]ここで使用される場合、用語「置換シクロアルケニル基」は、シクロアルケンの炭素原子から水素原子を除去することにより置換シクロアルケンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換シクロアルケン」は、単環式および多環式オレフィン(すなわち、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素)から誘導された化合物を意味し、そのオレフィンの1種以上の水素原子が非水素原子(例えば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、またはヘテロアリール基)で置きかえられている。
【0013】
[0009]ここで使用される場合、用語「置換アリール基」は、環炭素原子から水素原子を除去することにより置換アレーンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0014】
[0010]ここで使用される場合、用語「置換ヘテロアリール基」は、環原子から水素原子を除去することにより置換ヘテロアレーンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換ヘテロアレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられており、および(2)炭化水素の少なくとも1種のメチン基(-C=)は、3価のヘテロ原子と置きかえられており、ならびに/または炭化水素の少なくとも1種のビニリデン基(-CH=CH-)は、2価のヘテロ原子と置きかえられている。
【0015】
[0011]ここで使用される場合、用語「アルカンジイル基」は、アルカンから2個の水素原子を除去することによりアルカンから誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、アルカン上の同じ炭素原子(エタン-1,1-ジイルのように)または異なる炭素原子(エタン-1,2-ジイルのように)から除去することができる。
【0016】
[0012]ここで使用される場合、用語「置換アルカンジイル基」は、アルカンから2個の水素原子を除去することにより置換アルカンから誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、置換アルカン上の同じ炭素原子(2-フルオロエタン-1,1-ジイルのように)または異なる炭素原子(1-フルオロエタン-1,2-ジイルのように)から除去することができる。この定義では、用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0017】
[0013]ここで使用される場合、用語「シクロアルカンジイル基」は、シクロアルカンから2個の水素原子を除去することによりシクロアルカン(単環式および多環式)から誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、シクロアルカン上の同じ炭素原子または異なる炭素原子から除去することができる。
【0018】
[0014]ここで使用される場合、用語「置換シクロアルカンジイル基」は、シクロアルカンから2個の水素原子を除去することにより置換シクロアルカンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換シクロアルカン」は、置換シクロアルキル基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0019】
[0015]ここで使用される場合、用語「シクロアルケンジイル基」は、シクロアルケンから2個の水素原子を除去することによりシクロアルケン(単環式および多環式)から誘導された二価の官能基を意味する。これらの水素原子は、シクロアルケン上の同じ炭素原子または異なる炭素原子から除去することができる。
【0020】
[0016]ここで使用される場合、用語「置換シクロアルケンジイル基」は、シクロアルケンから2個の水素原子を除去することにより置換シクロアルケンから誘導された二価の官能基を意味する。これらの水素原子は、シクロアルケン上の同じ炭素原子または異なる炭素原子から除去することができる。この定義では、用語「置換シクロアルケン」は、置換シクロアルケン基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0021】
[0017]ここで使用される場合、用語「アレーンジイル基」は、環炭素原子から2個の水素原子を除去することによりアレーン(単環式および多環芳香族炭化水素)から誘導された2価の官能基を意味する。
【0022】
[0018]ここで使用される場合、用語「置換アレーンジイル基」は、環炭素原子から2個の水素原子を除去することにより置換アレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0023】
[0019]ここで使用される場合、用語「ヘテロアレーンジイル基」は、環原子から2個の水素原子を除去することによりヘテロアレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「ヘテロアレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の少なくとも1種のメチン基(-C=)は、3価のヘテロ原子と置きかえられており、ならびに/または炭化水素の少なくとも1種のビニリデン基(-CH=CH-)は、2価のヘテロ原子と置きかえられている。
【0024】
[0020]ここで使用される場合、用語「置換ヘテロアレーンジイル基」は、環原子から2個の水素原子を除去することにより置換ヘテロアレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換ヘテロアレーン」は、置換ヘテロアリール基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0025】
[0021]特に指示がない限り、条件は25℃、1気圧および50%相対湿度であり、濃度は重量により、分子量は重量平均分子量に基づいている。本出願で使用されている用語「ポリマー」は、重量平均分子量(Mw)が少なくとも5,000である材料を示す。用語「コポリマー」は、2個以上の異なるモノマー単位を含有するポリマー、例えばターポリマーを含むようにその広い意味で使用され、特に指示がない限り、ランダム、ブロック、および統計コポリマーを含む。特定の相中または異相組成物中のエチレンまたはプロピレンの濃度は、任意の充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤を除く、それぞれ相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に対する、反応したエチレン単位またはプロピレン単位の重量に基づいている。全体的に不均一なポリマー組成物中の各相の濃度は、任意の充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤またはポリマーを除く、異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に基づいている。後述されている官能基の構造では、断ち切られた結合(すなわち、波線によって断ち切られた結合)は、例示されている基を含有する化合物の他の部分との結合を表す。
【0026】
[0022]第1の態様では、本発明は、異相ポリマー組成物を改変するための方法を提供する。この方法は、(a)相溶化剤を用意する工程、(b)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相を含む異相ポリマー組成物を用意する工程、(c)相溶化剤と異相ポリマー組成物を混合する工程、ならびに(d)プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相中でフリーラジカルを生成する工程を含む。そうして、相溶化剤の少なくとも一部は、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の両方のフリーラジカルと反応して、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとの結合およびエチレンポリマー相中のエチレンポリマーとの結合を形成する。
【0027】
[0023]相溶化剤は、ラジカル付加反応においてフリーラジカルと反応できる2個以上の官能基(このような官能基はそれぞれ、以下「反応性官能基」と呼んでもよい)を含む有機または有機金属化合物である。相溶化剤に適した反応性官能基には、炭素-炭素多重結合(例えば、環式および非環式炭素-炭素二重結合および炭素-炭素三重結合)、窒素酸化物ラジカル(ポリマーの処理中にin situで窒素酸化物ラジカルを形成する官能基または部分を含む)、ニトロン、および少なくとも1個の第3級炭素-水素結合(例えば、約380kJ/mol以下の結合-解離エネルギーを有する1個の第3級炭素-水素結合)を含有する基があるが、それだけには限定されない。炭素-炭素多重結合を含有する基の適当な例には、ビニル基、アリル基、アクリレート基、およびメタクリレート基があるが、それだけには限定されない。相溶化剤は、2個以上の同じ反応性官能基を含有していてよく、または2種以上の反応性官能基が相溶化剤上に存在していてよい。
【0028】
[0024]好ましい一態様では、相溶化剤は、窒素酸化物ラジカルまたはポリマーの処理中に窒素酸化物ラジカルを形成する官能基もしくは部分を含む。本発明の相溶化剤として使用できる窒素酸化物化合物の例は、Synthetic Chemistry of Stable Nitroxides、L.B.Volodarskyら CRC Press,Inc.(1994)で見つけることができる。窒素酸化物化合物は、5または6員の複素環化合物であってよく、これは、環構造にニトロキシド窒素(nitroxide nitrogen)を組込むことができる。例えば、相溶化剤は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、例えば以下の式(AI)~(AVII):
【0029】
【0030】
【0031】
の化合物に基づいていてよい。式(AI)~(AVI)の構造では、R1は、ラジカル付加反応においてフリーラジカルと反応できる官能基である。好ましくは、R1は、不飽和炭素-炭素結合、例えば炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含む。適当な例には、脂肪族アルケニル基およびアルケニル置換芳香族基、例えばフェニルがあるが、それだけには限定されない。別の好ましい態様では、アルケニル基は、C1~C10アルケニル基、より好ましくはC1~C8アルケニル基、C1~C6アルケニル基、またはC1~C4アルケニル基からなる群から選択される。式(AI)~(AVI)の1つに一致し、相溶化剤としての使用に適した化合物の具体例には、4-(メタクリロイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、(「TEMPO-メタクリレート」)、4-(アクリロイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(「TEMPO-アクリレート」)、および4-[(4-ビニルベンジル)オキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(「TEMPO-スチレン」)があるが、それだけには限定されない。式(AVII)の構造では、R2は、2つのTEMPO部分を連結している二価基である。好ましい一態様では、R2は、式-O-(CH2CH2O)n-の基であり、ここでnは1以上の整数(例えば、1から100)である。好ましい態様では、R2は、以下の式(AVIII)
【0032】
【0033】
の構造に一致する基である。式(AVIII)の構造では、R5は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、シクロアルケンジイル基、置換シクロアルケンジイル基、アレーンジイル基、および置換アレーンジイル基からなる群から選択される二価基である。好ましくは、R5は、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、およびシクロアルケンジイル基からなる群から選択される。式(AVII)の構造に一致し、相溶化剤としての使用に適した化合物の具体例には、ビス-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケートおよび4,4’-[ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジイルビス(カルボニルオキシ)]ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)があるが、それだけには限定されない。
【0034】
[0025]上記のように、相溶化剤に適した反応性官能基には、炭素-炭素 多重結合、好ましくは炭素-炭素二重結合が含まれる。したがって、別の好ましい態様では、相溶化剤は、2個以上の炭素-炭素二重結合、好ましくは2個以上の非環式炭素-炭素二重結合を含む化合物である。複数の非環式炭素-炭素二重結合を組込んでいる相溶化剤の例には、ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン)、多官能アクリレート、および多価イオンのアクリル酸塩があるが、それだけには限定されない。そのような相溶化剤の一般構造は、後述されている。例えば、式(AIX)
【0035】
【0036】
の構造は、適当なジビニル化合物の一般構造を示す。式(AIX)の構造では、R6は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、シクロアルケンジイル基、置換シクロアルケンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される二価基である。好ましい態様では、R6は、アレーンジイル基および置換アレーンジイル基からなる群から選択され、フェンジイルが特に好ましい。式(AX)
【0037】
【0038】
の構造は、多官能アクリレート、具体的にジアクリレートの一般構造を示す。式(AX)の構造では、R7およびR8は、独立に、水素およびアルキル基(例えば、メチル)からなる群から選択される。R9は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、シクロアルケンジイル基、置換シクロアルケンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される二価基である。より好ましくは、R9は、アルカンジイル基、例えばC1~C8アルカンジイル基からなる群から選択される。このようなジアクリレート化合物の適当な一例は、ブタンジオールジメタクリレートである。式(AXI)
【0039】
【0040】
の構造は、相溶化剤としての使用に適したアクリル酸塩の一般構造を示す。式(AXI)の構造では、R7は、水素およびアルキル基(例えば、メチル)からなる群から選択される。M1は、金属カチオンであり、変数kは、金属カチオンM1の原子価であり、2以上の正の整数である。変数mは、1以上の正の整数であり、金属カチオンM1の数を表す。変数qは、2以上の正の整数である。変数k、m、およびqは、以下の式k・m=qを満たす。好ましい態様では、M1は、アルカリ土類金属および遷移金属(すなわち、元素の周期表のdブロックおよびfブロックに分類されるそれらの元素)からなる群から選択される。相溶化剤としての使用に適したアクリル酸塩の一例は、亜鉛ジメタクリレートである。
【0041】
[0026]別の好ましい一態様では、相溶化剤は、式(BI)の構造に一致する化合物からなる群から選択される。
【0042】
【0043】
式(BI)の構造では、R51は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(BV)の構造に一致する基からなる群から選択される。
【0044】
【0045】
式(V)の構造では、R55およびR56は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはR55およびR56は、組み合わせて環状構造を形成することができる。変数xは、0、1、および2からなる群から選択される整数である。好ましい態様では、変数xは、0であり、R55は、水素であり、R56は、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C12ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C12置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。
【0046】
[0027]式(BI)の構造では、R52は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。R51およびR52が両方とも芳香族基である場合、(i)R51およびR52は、直接結合、アルカンジイル基(例えばメタンジイル基)、酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子(例えば、-N(H)-基)によって架橋され、または(ii)R51およびR52の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0047】
[0028]式(BI)の構造の好ましい態様では、R51およびR52の少なくとも1つは、式(C)、(CX)、または(CXV)の構造に一致する基である。
【0048】
【0049】
式(C)の構造では、R100は、C(H)、C(R101)、および窒素原子からなる群から選択される。変数aは、0~4の整数である。各R101は、独立に、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6~C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C2~C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C1~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR101基は、連結して、多環式アリール基などの縮合環構造を形成することができる。式(CX)の構造では、R110は、酸素原子、硫黄原子、およびN(R115)からなる群から選択される。R115は、水素、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、および置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)からなる群から選択される。R111は、C(H)、C(R112)、および窒素原子からなる群から選択される。R112は、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6~C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1~C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C2~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR112基は、連結して、多環式アリール基などの縮合環構造を形成することができる。変数bは、0~2の整数である。式(CXV)の構造では、R110およびR112は、式(CX)について上述したものと同じ基から選択され、変数cは、0~3の整数である。
【0050】
[0029]式(BI)の構造では、R53およびR54は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および式(BVI)、(BVII)、(BVIII)、または(BIX)の構造に一致する基からなる群から選択される。
【0051】
【0052】
式(BVI)、(BVII)、(BVIII)、および(BIX)の構造では、R57およびR59は、独立に、アルキル基(例えば、C1~C22アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C22置換アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C3~C22シクロアルキル基)、置換シクロアルキル基(例えば、C3~C22置換シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6~C22アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C22置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C22ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C22置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。R58は、水素、アルキル基(例えば、C1~C22アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C22置換アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C3~C22シクロアルキル基)、置換シクロアルキル基(例えば、C3~C22置換シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6~C22アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C22置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C22ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C22置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。式(VIII)の構造に一致する基では、R57およびR59は、組み合わせて環状構造を形成することができる。最後に、式(I)の構造では、R53およびR54の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される。好ましい態様では、R53およびR54は、独立に、水素、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)の構造に一致する基からなる群から選択され、式中、R57は、アルキル基(例えば、C1~C22アルキル基)である。
【0053】
[0030]別の好ましい態様では、相溶化剤は、式(BX)の構造に一致する化合物からなる群から選択される。
【0054】
【0055】
式(BX)の構造では、R10は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および式(BXV)
の構造に一致する基からなる群から選択される。
【0056】
【0057】
式(BXV)の構造では、R15は、R16とR17の間の直接結合、酸素原子、アルカンジイル基、および置換アルカンジイル基からなる群から選択される。R16およびR17は、独立に、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様では、R10は、式(CXX)、(CXXV)、(CXXX)、および(CXXXV)からなる群から選択される構造に一致する基である。
【0058】
【0059】
式(CXXX)および(CXXXV)の構造では、R140は、酸素原子、硫黄原子、-N(H)-、および-N(R145)-からなる群から選択され、式中、R145は、C1~C10アルキル基およびC6~C12アリール基からなる群から選択される。式(CXX)、(CXXV)、(CXXX)、および(CXXXV)の構造では、各R141は、ハロゲン原子からなる群から選択される。変数dは、0~2の整数であり、変数eは、0~4の整数である。別の好ましい態様では、R10は、R15が直接結合および酸素原子から選択され、R16およびR17が式(CXX)の構造に一致する基である、式(BXV)の構造に一致する基である。
【0060】
[0031]式(BX)の構造では、R11、R12、R13、およびR14は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および上述した式(BVI)、(BVII)、(BVIII)、または(BIX)の構造に一致する基からなる群から選択される。式(BX)の構造では、R11およびR12の少なくとも1つ、ならびにR13およびR14の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(BVI)、(BVII)、(BVIII)、または(BIX)の構造に一致する基からなる群から選択される。
【0061】
[0032]別の好ましい態様では、相溶化剤は、式(BXX)の構造に一致する化合物からなる群から選択される。
【0062】
【0063】
(BXX)の構造では、R20は、2価の連結基である。2価の連結基は、任意の適当な2価の連結基であってよい。適当な2価の連結基には、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基があるが、それだけには限定されない。好ましい一態様では、R20は、式(BXXV)の構造に一致する基である。
【0064】
【0065】
式(BXXV)の構造では、R27は、酸素原子、-N(H)-、および-N(R29)-からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択される。R28は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様では、どちらのR27も、酸素原子であり、R28は、アルカンジイル基(例えば、C1~C8アルカンジイル基)である。別の好ましい態様では、R20は、式(BXXX)の構造に一致する基である。
【0066】
【0067】
式(BXXX)の構造では、R30は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択される。R31は、酸素原子、-N(H)-、および-N(R29)-からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択される。R32は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および-R35R36-からなる群から選択され、式中、R35は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、R36は、アルカンジイル基(例えば、C1~C4アルカンジイル基)からなる群から選択される。好ましい態様では、R30は、アルカンジイル基(例えば、C1~C8アルカンジイル基)であり、どちらのR31も、酸素原子であり、どちらのR32も、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および-R35R36-から選択される。より具体的には、このような好ましい態様では、R32は、好ましくは式(BXL)
【0068】
【0069】
の構造に一致する。
【0070】
[0033]式(BXX)の構造では、R21およびR22は、シアノ基、ニトロ基、および上述した式(BVI)、(BVII)、(BVIII)、または(BIX)の構造に一致する基からなる群から選択される。R23、R24、R25、およびR26は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および上述した式(BV)の構造に一致する基からなる群から選択される。式(BXX)の構造では、R23およびR24の少なくとも1つ、ならびにR25およびR26の少なくとも1つは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(BV)の構造に一致する基からなる群から選択される。さらに、R23およびR24が両方とも芳香族基である場合、(i)R23およびR24は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R23およびR24の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。そして、R25およびR26が両方とも芳香族基である場合、(i)R25およびR26は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R25およびR26の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0071】
[0034]別の好ましい態様では、相溶化剤は、(i)少なくとも1個の第3級炭素-水素結合および(ii)少なくとも1個の非環式炭素-炭素二重結合を含む。相溶化剤中の第3級炭素-水素結合は、好ましくは比較的弱くまたは不安定であり、ホモリシスによって相溶化剤から水素原子を解離させることができると考えられており、第3級炭素原子上に不対電子を有する相溶化剤のラジカル形態をもたらす。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、この炭素原子の第3級の性質は、異相ポリマー組成物中に形成されたポリマーラジカルと反応するのに十分な安定性を示すラジカルを生じると考えられている。第3級炭素-水素結合の相対強度または不安定性は、結合-解離エネルギーを特徴としていてもよい。第3級炭素-水素結合の結合-解離エネルギーは、ホモリシスによって第3級炭素-水素結合を切断するのに必要とされるエンタルピー(1モル当たり)である。相溶化剤中の第3級炭素-水素結合は、したがって相溶化剤が貯蔵下で安定であり、上記のような異相ポリマー組成物中にラジカルをさらに形成するのに十分低い任意の結合-解離エネルギーを有していてよい。好ましくは、第3級炭素-水素結合は、298Kで約380kJ/mol以下(約90.8kcal/mol以下)の結合-解離エネルギーを有する。より好ましくは、第3級炭素-水素結合は、約377kJ/mol以下(約90kcal/mol以下)、約375kJ/mol以下(約89.6kcal/mol以下)、約355kJ/mol以下(約85kcal/mol以下)、約345kJ/mol以下(約82.5kcal/mol以下)、約343kJ/mol以下(約82kcal/mol以下)、約341kJ/mol以下(約81.5kcal/mol以下)、約339kJ/mol以下(約81kcal/mol以下)、または約337kJ/mol以下(約80.5kcal/mol以下)の結合-解離エネルギーを有する。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、本発明者らは、第3級炭素-水素結合に許容され得る結合-解離エネルギーが、少なくとも部分的に、相溶化剤中に存在する非環式炭素-炭素二重結合の数に依存し得ると考えている。例えば、相溶化剤が2個以上の非環式炭素-炭素二重結合を含む場合、相溶化剤は、第3級炭素-水素結合の結合-解離エネルギーが上記に列挙した範囲内でより高い場合に良好な性能を示すことができる。他方では、相溶化剤がただ1個の非環式炭素-炭素二重結合を含む場合、第3級炭素-水素結合の結合解離エネルギーは、好ましくは上記列挙した範囲内ではより低い。例えば、相溶化剤がただ1個の非環式炭素-炭素二重結合を含む場合、第3級炭素-水素結合の結合解離エネルギーは、好ましくは約355kJ/mol以下(約85kcal/mol以下)であり、より好ましくは約345kJ/mol以下(約82.5kcal/mol以下)であり、より好ましくは約343kJ/mol以下(約82kcal/mol以下)であり、最も好ましくは約341kJ/mol以下(約81.5kcal/mol以下)である。上記に列挙した全ての結合-解離エネルギーは、298Kの温度における第3級炭素-水素結合の均一開裂のためのものである。
【0072】
[0035]第3級炭素-水素結合の結合-解離エネルギーは、任意の適当な手段によって決定することができる。分子内の結合の結合-解離エネルギーを直接測定することに付随する困難さを考慮に入れると、結合-解離エネルギーは通常、市販されている分子モデリングソフトウェアを使用して相溶化剤の分子モデルから計算される。例えば、結合-解離エネルギーは、B3LYP汎関数を含む密度汎関数理論を用いて計算することができる。分子M中の第3級炭素-水素結合の結合-解離エネルギー(ΔH°(C-H))は、以下の式1
【0073】
【0074】
で定義される。式1では、H°(M)、H°(M・)およびH°(H・)は、それぞれ分子M、M・ラジカルおよびH・ラジカルの298Kにおける絶対エンタルピーである。絶対エンタルピーは、例えば、Biovia製のMaterials Studio(バージョン8.0)ソフトウェアツール中のDmol3プログラムで計算することができる。Dmol3プログラムを使用しているとき、計算のための入力パラメーターは、分子Mについては表A、ラジカルM・およびH・については表Bに示す。H°(H・)の値は、-0.496344ハートリー(1ハートリー(Ha)=627.51kcal/mol)で計算される。
【0075】
【0076】
【0077】
相溶化剤中の第3級炭素-水素結合の結合-解離エネルギーは、好ましくは上記の手順を使用して計算される。
【0078】
[0036]相溶化剤を説明するのに利用されるように、用語「非環式炭素-炭素二重結合」は、芳香族環などの環式系内に含有されていない炭素-炭素二重結合を意味する。したがって、例えば、フェニル環内に含有されているビニリデン基(-CH=CH-)中の炭素-炭素二重結合は、非環式炭素-炭素二重結合ではない。しかしながら、化合物スチレン(すなわち、フェニルエテン)のビニル基内に含有されている炭素-炭素二重結合は、非環式炭素-炭素二重結合である。さらに、環式系に懸垂(pendant)している炭素-炭素二重結合(例えば、炭素-炭素結合は、環式系の一部である第1の炭素原子と環式系の一部ではない第2の炭素原子との間で形成される)も非環式炭素-炭素二重結合である。好ましい態様では、相溶化剤中の非環式炭素-炭素二重結合は、非環式炭素-炭素二重結合中の炭素原子と結合している少なくとも2個の水素原子を有している。これらの水素原子は、非環式炭素-炭素二重結合中、例えばビニル基中の同じ炭素原子と結合していてよく、またはこれらの水素原子は、非環式炭素-炭素二重結合中、例えば2-フェニルエテニル基中のそれぞれの炭素原子と結合していてよい。好ましい態様では、非環式炭素-炭素二重結合は、非環式炭素-炭素二重結合中の炭素原子の1つと結合している2個の水素原子を含む。
【0079】
[0037]好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DI)
【0080】
【0081】
の構造に一致する。式(DI)の構造では、R201、R202、およびR203は、独立に、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、電子求引基、および以下の式(DV)、式(DVI)、式(DVII)、または式(DVIII)の構造に一致する基からなる群から選択される。式(DV)の構造は、
【0082】
【0083】
である。式(DV)の構造では、X201は、酸素および-N(H)-からなる群から選択され、R205は、アルケニル基、置換アルケニル基、置換アリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、ただし、置換アリール基および置換ヘテロアリール基は、少なくとも1種のアルケニル基または置換アルケニル基を含む。式(DVI)の構造は、
【0084】
【0085】
である。式(DVI)の構造では、R206は、アルカンジイル基および置換アルカンジイル基からなる群から選択され、X201およびR205は、式(DV)の構造について上述されている基から選択される。式(DVII)の構造は、
【0086】
【0087】
である。式(DVII)の構造では、X203は、酸素、-N(H)-、および-N(R7)-からなる群から選択される。R207は、アルケニル基、置換アルケニル基、置換アリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、ただし、置換アリール基および置換ヘテロアリール基は、少なくとも1種のアルケニル基または置換アルケニル基を含む。式(DVIII)の構造は、
【0088】
【0089】
である。式(DVIII)の構造では、R208は、アルカンジイル基からなる群から選択され、X203およびR207は、式(DVII)の構造について上述されている基から選択される。式(DI)の構造では、R201、R202、およびR203の2種以上が芳香族基である場合、基のうちの2つは、直接結合、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される連結要素によって縮合されていてもよい。さらに、式(DI)の構造の好ましい態様では、R201、R202、およびR203の少なくとも1つは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。最後に、R201、R202、およびR203の少なくとも1つは、少なくとも1種の非環式炭素-炭素二重結合を含む。式(DI)の構造の特定の一態様では、R201は、シアノ基であり、R202は、フェニル基であり、R203は、4-エテニルフェニル基である。
【0090】
[0038]より具体的な好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DX)
【0091】
【0092】
の構造に一致する。式(DX)の構造では、R210、R211、およびR212は、独立に、水素、ハロゲン、アルケニル基、置換アルケニル基、式(DV)の構造に一致する基(式(DI)の構造の説明において上記で定義したとおりである)、および構造-O-R215に一致する基からなる群から選択され、ここでR215は、アルケニル基および置換アルケニル基からなる群から選択される。式(DX)の構造では、R210、R211、およびR212の少なくとも1つは、少なくとも1種の非環式炭素-炭素二重結合を含む。
【0093】
[0039]別の好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DXL)
【0094】
【0095】
の構造に一致する。式(DXL)の構造では、R241は、式(DV)または式(DVII)の構造に一致する基(式(DI)の構造の説明において上記で定義したとおりである)からなる群から選択される。式(DXL)の構造の特定の一態様では、R241は、式(DVII)の構造に一致する基であり、X203は、-N(H)-であり、R207は、置換アリール基、好ましくは4-エテニルフェニル基である。式(DXL)の構造の別の特定の態様では、R241は、式(DV)の構造に一致する基であり、X201は、-N(H)-であり、R205は、置換アルケニル基、好ましくは2-フェニルエテニル基である。
【0096】
[0040]別の好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DL)
【0097】
【0098】
の構造に一致する。式(DL)の構造では、R251は、直接結合および酸素からなる群から選択され、R255は、置換アリール基、式(DV)の構造に一致する基(式(DI)の構造の説明において上記で定義したとおりである)、および式(DVI)の構造に一致する基(式(DI)の構造の説明において上記で定義したとおりである)からなる群から選択される。式(DL)の構造の特定の態様では、R251は、直接結合であり、R255は、4-エテニルフェニル基である。式(DL)の構造の別の特定の態様では、R251は、酸素であり、R255は、4-エテニルフェニル基である。式(DL)の構造の別の特定の態様では、R251は、直接結合であり、R255は、式(DV)の構造に一致する基であり、X201は、酸素であり、R205は、1-メチルエテニル基である。式(DL)の構造の別の特定の態様では、R251は、直接結合であり、R255は、式(DVIII)の構造に一致する基であり、R208は、メタンジイル基であり、X203は、-N(H)-であり、R207は、4-エテニルフェニル基である。
【0099】
[0041]別の好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DXX)
【0100】
【0101】
の構造に一致する。式(DXX)の構造では、X220は、酸素および-N(H)-からなる群から選択され、R220およびR221は、独立に、水素、C1~C4アルキル基、および式(DV)の構造に一致する基(上記式(DI)の構造に関連して上記で定義したとおりである)からなる群から選択される。R222は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。式(DXX)の構造では、R220、R221、およびR222の少なくとも1つは、少なくとも1種の非環式炭素-炭素二重結合を含む。
【0102】
[0042]別の好ましい態様では、相溶化剤は、以下の式(DXXX)
【0103】
【0104】
の構造に一致する。式(DXXX)の構造では、R230は、置換アリール基および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、ただし、置換アリール基および置換ヘテロアリール基は、少なくとも1種のアルケニル基または置換アルケニル基を含む。
【0105】
[0043]別の好ましい態様では、相溶化剤は、フルベン部分またはフルベン由来部分を含む任意の有機化合物であってよい。その部分は、置換されていなくても置換されていてもよく、その部分の中の環状の水素および/または末端ビニル炭素原子は、非水素基で置きかえられていてもよいことを意味する。したがって、好ましい態様では、相溶化剤は、式(EI)の構造に一致する部分を含む化合物、式(EIII)の構造に一致する部分を含む化合物、および式(EV)の構造に一致する化合物からなる群から選択される。
【0106】
【0107】
式(EI)および式(EIII)の構造では、R301、R302、R303、およびR304は、独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基、および置換ヒドロカルビル基からなる群から選択され、ただし、隣接するヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基は、組み合わせてその部分の環と縮合した第2の環を形成することができる。さらに、R301、R302、R303、およびR304の少なくとも1つは、水素であり;好ましくは、R301、R302、R303、およびR304の少なくとも2つは、水素である。末端ビニル炭素原子(式(EI)と式(EIII)の両方における)および環の中の隣接する炭素原子(式(EIII)における)に結合した断ち切られた結合(すなわち、波線によって断ち切られた結合)は、相溶化剤の他の部分との結合を表す。式(EV)の構造では、R305、R306、R307、およびR308は、独立に、ハロゲンからなる群から選択される。
【0108】
[0044]好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。適当なアルキル基には、直鎖状および分枝C1~C18アルキル基があるが、それだけには限定されない。適当な置換アルキル基には、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の非水素基により置換された、直鎖状および分枝C1~C18アルキル基があるが、それだけには限定されない。適当なアリール基には、アリール基、例えばフェニルおよびナフチルがあるが、それだけには限定されない。適当な置換アリール基には、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1種以上の非水素基により置換された、単環式および多環式アリール基があるが、それだけには限定されない。適当なヘテロアリール基には、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニルおよびこのような基のベンゼン環化した類似体、例えばベンゾイミダゾリルがあるが、それだけには限定されない。適当な置換ヘテロアリール基には、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される1種以上の非水素基により置換された、直前に説明したヘテロアリール基があるが、それだけには限定されない。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素である。
【0109】
[0045]より具体的な態様では、相溶化剤は、以下の式(EX)
【0110】
【0111】
の構造に一致する化合物であってよい。式(EX)の構造では、R301、R302、R303、およびR304は、式(EI)の構造について上記で列挙した基から独立に選択され、R311およびR312は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アミン基、置換アミン基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から独立に選択される個々の置換基であるか、またはR311とR312は一緒になって、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される単一の置換基を形成する。好ましくは、R311およびR312のうちのわずか1個だけが水素であってよい。
【0112】
[0046]好ましい態様では、R311およびR312は、独立に、式(F)、式(FX)、および式(FXV)からなる群から選択される構造に一致する基である。
【0113】
【0114】
式(F)の構造では、R400、R401、およびR402は、独立に、C(H)、C(R401)、および窒素原子からなる群から選択される。変数fは、0から4の整数であるが、5-zに等しい値を超えず、ここでzは、環の中の窒素原子の数である。R401はそれぞれ、独立に、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6~C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C2~C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C1~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR401基は、連結して、縮合環構造、例えば多環式アリール基を形成することができる。式(FX)の構造では、R410は、酸素原子、硫黄原子、およびN(R415)からなる群から選択される。R415は、水素、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、および置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)からなる群から選択される。R411は、C(H)、C(R112)、および窒素原子からなる群から選択される。R412は、アルキル基(例えば、C1~C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1~C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6~C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6~C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4~C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4~C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1~C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6~C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1~C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2~C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C2~C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6~C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR412基は、連結して、縮合環構造、例えば多環式アリール基を形成することができる。変数gは、0から2の整数である。式(FXV)の構造では、R410およびR412は、式(FX)について上述したものと同じ基から選択され、変数hは、0から3の整数である。
【0115】
[0047]好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれフェニル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれ4-クロロフェニル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれ4-フルオロフェニル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、メチル基であり、R312は、フェニルである。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、2-チエニル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、3-チエニル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、メチル基であり、R312は、2-フリル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、ジメチルアミノ基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311およびR312は、それぞれC1~C8アルキル基、好ましくはプロピル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304は、それぞれ水素であり、R311は、水素であり、R312は、2-フェニルエテニル基である。
【0116】
[0048]相溶化剤は、複数のフルベン部分を含んでもよい。例えば、相溶化剤は、2つのフルベン部分を含み、以下の式(EXX):
【0117】
【0118】
の構造に一致してもよい。式(EXX)の構造では、R301、R302、R303、およびR304はそれぞれ、式(EI)の構造において上記で列挙した基から独立に選択され、R311はそれぞれ、式(EX)の構造において上記で列挙した基から独立に選択され、R321は、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304はそれぞれ、水素であり、R311はそれぞれ、芳香族基であり、R321は、アレーンジイル基である。より具体的には、そのような好ましい態様では、R301、R302、R303、およびR304はそれぞれ、水素であり、R311はそれぞれ、フェニル基であり、R321は、フェン-1,4-ジイル基である。別の好ましい態様では、R301、R302、R303、R304、およびR311はそれぞれ、水素であり、R321は、アレーンジイル基、好ましくはフェン-1,4-ジイル基である。
【0119】
[0049]場合によっては、相溶化剤は、自己ディールス-アルダー反応を介して二量化またはオリゴマー化を受けてもよい。そのような自己ディールス-アルダー反応では、相溶化剤の1分子中のシクロペンタジエニル部分は、ジエンとして作用し、相溶化剤の別の分子のシクロペンタジエニル部分中の二重結合は、ジエノフィルとして作用する。式(EI)の構造に一致するフルベン部分がディールス-アルダー反応におけるジエノフィルである場合、そのフルベン部分は、上記の式(EIII)の構造に一致する部分に変換される。上記の式(EIII)の構造では、環の中の隣接する炭素原子に結合した断ち切られた結合は、ジエンとの反応から生じる環状部分の一部を形成する結合を表す。したがって、上記の式(EIII)の構造に一致する部分を含む相溶化剤のより具体的な例では、相溶化剤は、以下の式(EIIIA)
【0120】
【0121】
の構造に一致する部分を含んでもよい。式(EIIIA)の構造では、R301、R302、R303、およびR304は、上記で列挙した基から選択され、R306は、少なくとも1つの二重結合、例えば二価の環状部分(例えば、二価シクロペンテニル部分)を含む近接した二価部分である。R306が二価の環状部分(例えば、二価シクロペンテニル部分)である場合、相溶化剤は、環状部分の中の隣接する炭素原子との結合によって形成される二環式部分を含む。
【0122】
[0050]上記の式(EX)の構造に一致する相溶化剤の自己ディールス-アルダー反応から生じる二量体は、以下の式(EXA)
【0123】
【0124】
の構造に一致するであろう。式(EXA)の構造では、R301、R302、R303、R304、R311、およびR312は、式(EX)の構造に一致する化合物について上記で開示した基から選択される。二量体は、エンドまたはエキソ異性体のいずれかであってよい。さらに、式(EXA)の構造を持っている二量体は、後続のジエンとのディールス-アルダー反応においてジエノフィルとして作用してもよく、そのような後続の反応は種々のオリゴマー種をもたらす。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、上記の二量体およびオリゴマー種は、逆ディールス-アルダー反応を受けて、二量体およびオリゴマー種が元来由来するフルベン含有化合物をもたらし得ると考えられている。この逆ディールス-アルダー反応は、二量体またはオリゴマー種を含有するポリマー組成物が処理中に加熱されるとき、例えばポリマー組成物が押出されるときに起こる加熱、に起こり得ると考えられている。
【0125】
[0051]相溶化剤は、任意の適当なモル質量を有していてもよい。当業者に理解されるように、化合物のモル質量は、他の要因と併せて、化合物の融点および沸点に影響する。したがって、より高いモル質量を有する化合物は、一般により高い融点および沸点を有する。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、相溶化剤の融点および沸点は、本発明の組成物中の相溶化剤の効力に影響することがあると考えられている。例えば、比較的低いモル質量および低い沸点(例えば、ポリマー組成物が押出される温度よりも著しく低い沸点)を有する相溶化剤は、押出しプロセス中にかなりの程度まで揮発し得ると考えられており、それによってポリマー組成物の特性を改変する相溶化剤が少なくなる。したがって、相溶化剤は、好ましくはポリマー組成物が押し出される温度よりも高い沸点を相溶化剤が示すのに十分高いモル質量を有する。一連の好ましい態様では、相溶化剤は、好ましくは約130g/mol以上、約140g/mol以上、約150g/mol以上、または約160g/mol以上のモル質量を有している。また、比較的高い融点(例えば、ポリマー組成物が押し出される温度よりも高い融点)を有する相溶化剤は、押出しプロセス中に溶融ポリマー中に十分に分散しないかもしれない、または少なくとも押出し温度よりも低い融点を有する相溶化剤と同様には分散しないと考えられている。そして、相溶化剤の分散が不十分だと、十分に分散した相溶化剤と比較して達成できる物理的性質の改善に負の影響を与えることになる。したがって、一連の好ましい態様では、相溶化剤は、約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または200℃以下の融点を有する。
【0126】
[0052]組成物中の相溶化剤の濃度は、最終消費者の目的を満たすように変えることができる。例えば、濃度は、ポリマーの強度、特に衝撃強さの最小限の低下(または潜在的には増大)で、ポリマー組成物のMFRの所望の増大を達成するために変えることができる。好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、または約200ppm以上の量で存在し得る。別の好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約5重量%(50,000ppm)以下、約4重量%(40,000ppm)以下、約3重量%(30,000ppm)以下、約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、または約0.5重量%(5,000ppm)以下の量で存在し得る。したがって、いくつかの好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約10~約50,000ppm、約100~約10,000ppm、または約200~約5,000ppmの量で存在し得る。
【0127】
[0053]化学的フリーラジカル発生剤を使用した場合(以下に説明するように)、ポリマー組成物中の相溶化剤の濃度は、相溶化剤の量と化学的フリーラジカル発生剤の量との比によって付加的または代替的に表すことができる。相溶化剤の分子量および化学的フリーラジカル発生剤中の過酸化物結合の数の違いに関してこの比を標準化するために、比は、組成物中に存在する相溶化剤のモル数対化学的フリーラジカル発生剤の添加から存在する過酸化物結合(O-O結合)のモル当量の比として通常表される。好ましくは、比(すなわち、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比)は、約1:10以上、約1:5以上、約3:10以上、約2:5以上、約1:2以上、約3:5以上、約7:10以上、約4:5以上、約9:10以上、または約1:1以上である。別の好ましい態様では、比は、約10:1以下、約5:1以下、約10:3以下、約5:2以下、約2:1以下、約5:3以下、約10:7以下、約5:4以下、約10:9以下、または約1:1以下である。したがって、一連の好ましい態様では、相溶化剤は、組成物中に、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量との比が約1:10~約10:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約3:10~約10:3、約2:5~約5:2、または約1:2~約2:1で存在し得る。
【0128】
[0054]本発明の方法の第2の工程は、異相ポリマー組成物を提供することを伴う。異相ポリマー組成物は、好ましくは異相ポリオレフィンポリマー組成物である。本発明の方法によって有利には改変されていてもよい対象の異相ポリオレフィンポリマーは、少なくとも2つの異なる相:プロピレンポリマー相;およびエチレンポリマー相を特徴とする。プロピレンポリマー相は、好ましくはポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含む。エチレンポリマー相は、好ましくはエチレンホモポリマーおよびエチレンとC3~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含む。エチレンポリマー相のエチレン含有量は、好ましくは少なくとも8重量%である。エチレン相がエチレンとC3~C10α-オレフィンとのコポリマーである場合、エチレン相のエチレン含有量は、8~90重量%の範囲であってもよい。一態様では、エチレン相のエチレン含有量は、好ましくは少なくとも50重量%である。プロピレンポリマー相またはエチレンポリマー相のいずれかは、組成物の連続相を形成していてもよく、もう一方は、組成物の離散または分散相を形成することになる。例えば、エチレンポリマー相は、不連続相であってもよく、ポリプロピレンポリマー相は、連続相であってもよい。本発明の一態様では、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、好ましくはエチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも多い。
【0129】
[0055]異相ポリマー組成物中のプロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の相対濃度は、広範囲にわたって変化していてもよい。一例として、エチレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量の5~80重量%を占めていてもよく、プロピレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量の20~95重量%を占めていてもよい。
【0130】
[0056]本発明の種々の態様では、(i)エチレン含有量は、異相組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー含有量に基づいて、5~75重量%、またはさらには5~60重量%の範囲であってもよく、(ii)エチレンポリマー相は、エチレン-プロピレンまたはエチレン-オクテンエラストマーであってもよく、かつ/または(iii)プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、80重量%以上であってもよい。
【0131】
[0057]本発明の方法は、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを改変するのに特に有用である。適当な耐衝撃性コポリマーは、(i)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4~C10α-オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相、ならびに(ii)エチレンとC3~C10α-オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエラストマーエチレンポリマーを含む不連続相を特徴としていてもよい。好ましくは、エチレンポリマーは、エチレン含有量が8~90重量%である。
【0132】
[0058]プロピレン耐衝撃性コポリマーを対象とした本発明の種々の態様では、(i)不連続相のエチレン含有量は、8~80重量%であってもよく、(ii)異相組成物のエチレン含有量は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーに基づいて、5~30重量%であってもよく;(iii)連続相のプロピレン含有量は、80重量%以上であってもよく、かつ/または(iv)不連続相は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの5~35重量%であってもよい。
【0133】
[0059]改変されていてもよい異相ポリオレフィンポリマーの例は、比較的硬質なポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)およびエチレン-プロピレンゴム(EPR)粒子の微細分散相を特徴とする耐衝撃性コポリマーである。このようなポリプロピレン耐衝撃性コポリマーは、二段プロセスで作製されていてもよく、その場合、ポリプロピレンホモポリマーが第一段で重合され、エチレン-プロピレンゴムが第二段で重合される。あるいは、当技術分野で公知のように、耐衝撃性コポリマーは、三段以上で作製されていてもよい。適当なプロセスは、以下の参考文献:米国特許第5,639,822号および米国特許第7,649,052 B2号で見つけることができる。ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを作製するための適当なプロセスの例は、当業界で商品名Spheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、Mitsui法、Novolen法、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、Chisso法、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)、およびSinopec法で知られている。これらのプロセスは、重合を達成するために、不均一または均一チーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒を使用することができる。
【0134】
[0060]異相ポリマー組成物は、2つ以上のポリマー組成物を溶融混合することによって形成されてもよく、これは固体状態で少なくとも2つの異なる相を形成する。一例として、異相組成物は、3つの異なる相を含んでいてもよい。異相ポリマー組成物は、2種以上のリサイクルポリマー組成物(例えば、ポリオレフィンポリマー組成物)の溶融混合の結果として生じ得る。したがって、本明細書では、表現「異相ポリマー組成物を提供すること」には、既に異相であるプロセスでポリマー組成物を使用すること、ならびにプロセス中に2つ以上のポリマー組成物を溶融混合することが含まれ、ここで、2つ以上のポリマー組成物は、異相系を形成する。例えば、異相ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマー、例えばエチレン/ブテンエラストマーを溶融混合することによって作製してもよい。適当なエチレン/α-オレフィンコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)、およびAffinity(商標)という名前で市販されている。さらに、異相ポリマー組成物を形成するポリマー成分の混和性は、系中の連続相の融点以上に加熱されると異なることがあるが、それにもかかわらず系は、冷却および固化すると2つ以上の相を形成することになることが理解されよう。異相ポリマー組成物の例は、米国特許第8,207,272 B2号および欧州特許第1 391 482 B1号に見出すことができる。
【0135】
[0061]バルク異相ポリマー組成物のいくつかの特性(相溶化剤で処理する前に測定した)は、相溶化剤の組込みによって実現される物理的性質の改善(例えば、衝撃強さの増大)に影響を与えることが見出されている。特に、異相ポリマー組成物のバルク特性に関して、エチレンは、好ましくは異相ポリマー組成物の全重量の約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、または約9重量%以上を占めていてもよい。異相ポリマー組成物は、好ましくは約10重量%以上、約12重量%以上、約15重量%以上、もしくは約16重量%以上のキシレン可溶分または非晶質含有量を含有する。さらに、異相ポリマー組成物中に存在するエチレンの約5モル%以上、約7モル%以上、約8モル%以上、または約9モル%以上は、好ましくはエチレントライアド(すなわち、順番に結合した3つのエチレンモノマー単位のグループ)で存在する。最後に、異相ポリマー組成物中のエチレンラン(順番に結合したエチレンモノマー単位)の数平均連鎖長は、好ましくは約3以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、または約4以上である。エチレントライアド中のエチレンのモル%およびエチレンランの数平均連鎖長は、両方とも当技術分野で公知の13C核磁気共鳴(NMR)技術を用いて測定することができる。異相ポリマー組成物は、この段落で説明した特性のうちのいずれか1つを示すことができる。好ましくは、異相ポリマー組成物は、この段落で説明した特性の2つ以上を示す。最も好ましくは、異相ポリマー組成物は、この段落で説明した全ての特性を示す。
【0136】
[0062]異相ポリマー組成物のエチレン相のいくつかの特性(相溶化剤で処理する前に測定した)は、相溶化剤の組込みによって実現される物理的性質の改善(例えば、衝撃強さの増大)に影響を与えることが見出されている。組成物のエチレン相の特性は、任意の適当な技術、例えば昇温溶離分別法(TREF)および得られた画分の13C NMR分析を使用して測定することができる。好ましい態様では、異相ポリマー組成物の60℃ TREF画分中に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上は、エチレントライアドで存在する。別の好ましい態様では、異相ポリマー組成物の80℃ TREF画分中に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上は、エチレントライアドで存在する。別の好ましい態様では、異相ポリマー組成物の100℃ TREF画分中に存在するエチレンの約5モル%以上、約10モル%以上、約15モル%以上、または約20モル%以上は、エチレントライアドで存在する。異相ポリマー組成物の60℃ TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約3以上、約4以上、約5以上、または約6以上である。異相ポリマー組成物の80℃ TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約7以上、約8以上、約9以上、または約10以上である。異相ポリマー組成物の100℃ TREF画分中に存在するエチレンランの数平均連鎖長は、好ましくは約10以上、約12以上、約15以上、または約16以上である。異相ポリマー組成物は、上記のTREF画分特性のうちのいずれか1つまたは上記のTREF画分特性の任意の適当な組合せを示すことができる。好ましい態様では、異相ポリマー組成物は、上記の全てのTREF画分特性(すなわち、上記の60℃、80℃、および100℃ TREF画分のエチレントライアドおよび数平均連鎖長特性)を示す。
【0137】
[0063]2つの先行する段落で説明した特性を示す異相ポリマー組成物は、これらの特性を示さない異相ポリマー組成物よりも相溶化剤の添加に対してより好ましく応答することが観察されている。特に、これらの特性を示す異相ポリマー組成物は、本発明の方法に従って処理した場合、衝撃強さの著しい改善を示すが、これらの特性を示さない異相ポリマー組成物は、同じ条件下で処理した場合にそのような顕著な改善を示さない。この差異のある応答および性能は、異なるポリマー組成物がほぼ同じ総エチレン含有量を有する(すなわち、各ポリマー組成物中のエチレン割合がほぼ同じである)場合でも観察されている。この結果は、驚くべきことであり、予期されていなかった。
【0138】
[0064]本発明の一態様では、異相ポリマー組成物は、不飽和結合を有する任意のポリオレフィン構成成分を有していない。特に、プロピレン相中のプロピレンポリマーとエチレン相中のエチレンポリマーの両方は、不飽和結合を含んでいない。
【0139】
[0065]本発明の別の態様では、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー成分に加えて、異相ポリマー組成物は、エラストマー、例えばエラストマーエチレンコポリマー、エラストマープロピレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、例えばスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)およびスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、プラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、LLDPE、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、および非晶質ポリオレフィンをさらに含んでいてもよい。ゴムは、未使用であっても、またはリサイクルであってもよい。
【0140】
[0066]上記のように、この方法は、相溶化剤と異相ポリマー組成物を混合する工程を伴う。相溶化剤および異相ポリマー組成物は、任意の適当な技術または装置を使用して混合することができる。本発明の一態様では、異相ポリオレフィンポリマー組成物は、組成物中に生成したフリーラジカルの存在下でポリマー組成物と相溶化剤を溶融混合することによって改変される。溶融混合工程は、組成物が、組成物の主要なポリオレフィン成分の溶融温度以上に加熱され、溶融状態にある間に混合されるような条件下で実施される。適当な溶融混合プロセスの例には、溶融コンパウンディング、例えば押出機中、射出成形、およびバンバリーミキサーまたはニーダー中での混合が含まれる。一例として、混合物は、160℃~300℃の温度で溶融混合されてもよい。特に、プロピレン耐衝撃性コポリマーは、180℃~290℃の温度で溶融混合されてもよい。異相ポリマー組成物(プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相)、相溶化剤および有機過酸化物は、組成物中の全てのポリオレフィンポリマーの溶融温度以上の温度において、押出機中で溶融コンパウンドされてもよい。
【0141】
[0067]本発明の別の態様では、異相ポリマー組成物は、溶媒中で溶解されていてもよく、相溶化剤は、得られたポリマー溶液に加えられていてもよく、フリーラジカルは、溶液中で生成されていてもよい。Macromolecules、「Ester Functionalization of Polypropylene via Controlled Decomposition of Benzoyl Perioxide during Solid-State Shear Pulverization」-vol.46、pp.7834~7844(2013)に記載されているように、本発明の別の態様では、相溶化剤は、固体状態の異相ポリマー組成物と合わせてもよく、フリーラジカルは、固相剪断粉砕中に生成され得る。
【0142】
[0068]従来の処理装置は、例えば有機過酸化物など、混合物に加えられる、または例えば剪断力、紫外線などによってin-situで生成される、いずれかのフリーラジカルの存在下で、単一工程で異相ポリマー組成物(例えば、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー)と相溶化剤を一緒に混合するために使用してもよい。それにもかかわらず、本明細書に記載されているように、複数の工程および種々の配列中の成分の種々の組合せを混合し、続いて混合物を相溶化剤がポリオレフィンポリマーと反応する条件にさらすことも可能である。
【0143】
[0069]例えば、相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤(化合物を使用した場合)は、一またはマスターバッチ組成物の形態でポリマーに加えることができる。適当なマスターバッチ組成物は、担体樹脂中に相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤を含むことができる。相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤は、マスターバッチ組成物中に、組成物の全重量に基づいて約1重量%~約80重量%の量で存在し得る。任意の適当な担体樹脂、例えば任意の適当な熱可塑性ポリマーは、マスターバッチ組成物中で使用することができる。例えば、マスターバッチ組成物のための担体樹脂は、ポリオレフィンポリマー、例えばポリプロピレン耐衝撃性コポリマー、ポリオレフィンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンポリマー、ポリオレフィンワックス、またはこのようなポリマーの混合物であってよい。担体樹脂は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマーもしくはエチレンポリマーと同じまたは類似しているプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーであってもよい。このようなマスターバッチ組成物は、最終消費者が異相ポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマー(複数可)対エチレンポリマー(複数可)の比を操作することを可能にするはずである。これは、所望のセットの特性(例えば、耐衝撃性と剛性のバランス)を達成するために、最終消費者が商用の樹脂グレードのプロピレン対エチレン比を改変する必要がある場合に好ましい可能性がある。
【0144】
[0070]この方法は、相溶化剤と異相ポリマー組成物の得られた混合物中でフリーラジカルを生成する工程をさらに含む。より具体的には、この工程は、異相ポリマー組成物のプロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相中でフリーラジカルを生成することを含む。フリーラジカルは、任意の適当な手段によって異相ポリマー組成物中で生成することができる。
【0145】
[0071]フリーラジカル発生剤は、異相ポリマー組成物中のプロピレンおよびエチレンポリマーとの相溶化剤の反応を促進するのに十分なフリーラジカルを発生させながら、ポリマー鎖の切断を引き起こし、それによって異相ポリマー組成物のMFRに積極的に影響を与える(すなわち、増大する)ために本発明で使用されている。フリーラジカル発生剤は、化合物、例えば有機過酸化物またはビス-アゾ化合物であってもよく、あるいはフリーラジカルは、相溶化剤と異相ポリマー組成物の混合物に、超音波、剪断力、電子線(例えばβ線)、光(例えば紫外線)、熱および放射線(例えばγ線およびX線)、または前述の組合せを施すことによって発生させてもよい。
【0146】
[0072]1個以上のO-O官能基を有する有機過酸化物は、本発明の方法におけるフリーラジカル発生剤として特に有用である。このような有機過酸化物の例には、:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-(エチルアセテート)-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド;t-ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシドおよび2,5-ジメチルへキセン-2,5-ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルパーネオデカノエート、tert-ブチル-パーネオデカノエート、tert-ブチルパーピバレート、tert-アミルパーピバレート、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペルマレエート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロ-ヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルイソノナノエート、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジベンゾエート、tert-ブチルペルアセテート、tert-アミルペルベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3-tert-ブチルペルオキシ-3-フェニルフタリド、ジ-tert-アミルペルオキシド、α,α’-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5-ジメチル-1,2-ジオキソラン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ-α-ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたはtert-ブチルヒドロペルオキシドが含まれる。
【0147】
[0073]有機過酸化物は、任意の適当な量でポリマー組成物中に存在し得る。有機過酸化物の適当な量は、いくつかの要因、例えば組成物中で使用されている特定のポリマー、異相ポリマー組成物の初期MFR、および異相ポリマー組成物のMFRの所望の変化によって決まることになる。好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約10ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上の量で存在し得る。別の好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、約0.5重量%(5,000ppm)以下、約0.4重量%(4,000ppm)以下、約0.3重量%(3,000ppm)以下、約0.2重量%(2,000ppm)以下、または約0.1重量%(1,000ppm)以下の量で存在し得る。したがって、一連の好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約10~約20,000ppm、約50~約5,000ppm、約100~約2,000ppm、または約100~約1,000ppmの量で存在し得る。上述したように、有機過酸化物の量は、相溶化剤と過酸化物結合のモル比の点から表すこともできる。
【0148】
[0074]適当なビスアゾ化合物も、フリーラジカルの供給源として使用していてもよい。このようなアゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジハイドレート、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、ジメチル 2,2’-アゾビスイソブチレート、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチル-プロパン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)を、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}および2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}を含む。
【0149】
[0075]フリーラジカル発生剤として有用な他の化合物には、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンおよび立体障害ヒドロキシルアミンエステルが含まれる。上記の種々のフリーラジカル発生剤は、単独でまたは組み合わせて用いてもよい。
【0150】
[0076]一般に上述したように、プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相中に生成したフリーラジカルの少なくとも一部分は、相溶化剤上に存在する反応性官能基と反応する。具体的には、フリーラジカルおよび反応性官能基は、ラジカル付加反応で反応し、それによって相溶化剤をポリマーに結合する。プロピレンポリマー相中のフリーラジカルおよびエチレンポリマー相中のフリーラジカルと反応する場合、相溶化剤は、2つの相の間に連結または橋をもたらす。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の間のこの連結または橋は、本発明の方法に従って改変された異相ポリマー組成物において観察される強度の増大の原因であると考えられている。
【0151】
[0077]本発明の異相ポリマー組成物は、安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤、難燃剤、酸中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、スクラッチ防止剤、加工助剤、発泡剤、着色剤、乳白剤、透明剤、および/または成核剤を含む、熱可塑性組成物に従来使用されている各種添加剤と相溶性がある。さらなる例として、組成物は、充填剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ガラス球、無機ウィスカー、例えばMilliken Chemical、USAから入手可能なHyperform(登録商標)HPR-803i、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、雲母、珪灰石、粘土、例えばモンモリロナイト、およびバイオ源または天然充填剤を含んでいてもよい。添加剤は、改変された異相ポリマー組成物中の全成分の最大75重量%までを占めていてもよい。
【0152】
[0078]本発明の異相ポリマー組成物は、射出成形、薄肉射出成形、一軸配合、二軸配合、バンバリー混合、共ニーダー混合、二本ロール練り、シート押出、繊維押出、フィルム押出、パイプ押出、異形押出、押出コーティング、押出吹込み成形、射出吹込み成形、射出延伸吹込み成形、圧縮成形、押出圧縮成形、圧縮吹込二次成形、圧縮延伸吹込二次成形、熱成形、および回転成形を含むが、それだけには限定されない従来のポリマー加工用途で使用してもよい。本発明の異相ポリマー組成物を使用して作製した製品は、本発明の異相ポリマー組成物を含有する1つまたは任意の適当な数の複数の層を含んでいる、複数の層からなっていてもよい。一例として、典型的な最終用途製品には、容器、包装、自動車部品、ボトル、発泡または起泡製品、家庭電気器具部品、ふた、カップ、家具、家庭用品、バッテリーケース、枠箱、パレット、フィルム、シート、繊維、パイプ、および回転成形部品が含まれる。
【0153】
[0079]以下の例は、上述の主題をさらに例示しているが、当然ながら、いかなる形でもその範囲を限定するものとしてみなすべきではない。以下の方法は、言及されていない限り、以下の例に記載された特性を決定するために使用された。
【0154】
[0080]それぞれの組成物は、約1分間密閉容器中で成分をブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、ポリプロピレン射出成形グレードの通常の処理条件を使用して、二軸押出機上で溶融コンパウンドした。各ポリプロピレンコポリマー組成物の押出物(ストランドの形態)は、水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0155】
[0081]次いでペレット化した組成物を使用して、ISOサイズの試料試験片を作製するためのポリプロピレン射出成形グレードの通常の条件下で、組成物を射出成形することによって試験片(bar)を形成した。得られた試験片は、寸法が長さ約80mm、幅約10mm、および厚さ約4.0mmであった。
【0156】
[0082]メルトフローレート(MFR)は、(ASTM D1238)に基づいてポリプロピレンでは2.16kgの荷重で230℃でペレット化した組成物について決定した。
【0157】
[0083]試験片のノッチ付アイゾッド衝撃強さをISO法180/Aに基づいて測定した。ノッチ付アイゾッド衝撃強さは、+23℃または-30°のいずれかに調節された試験片について+23℃で測定した。
【0158】
[0084]昇温溶離分別法(TREF)を以下のように実施した:ポリマー約3.0gおよび2.0重量%Irganox 1010(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を、ガラス反応器中130℃でキシレン300mLに溶解させた。次いで反応器を温度制御された油浴に移し、砂(白水晶、Sigma-Aldrich、南アフリカ)で充填し、結晶化の補助として使用した。油浴および補助をどちらも130℃で予熱した。次いで油浴を1℃/時間の制御された速度で冷却して、ポリマーの制御された結晶化を促進した。次いで結晶化した混合物をステンレス鋼カラムに詰め込み、それを溶離工程のために改質ガスクロマトグラフィーオーブンに挿入した。キシレン(予熱した)を溶離剤として使用して、オーブンの温度を上昇させながら所定の間隔で画分を回収した。アセトン中の沈殿によって画分を単離し、続いて恒量になるまで乾燥させた。画分を開始温度から画分の最終温度まで回収し、つまり回収中に温度を徐々に上昇させるにつれて、30℃画分は室温から30℃までで回収し、60℃画分は30℃~60℃で回収した物質であり、80℃画分は60℃~80℃で回収した物質であり、100℃画分は80℃~100℃で回収した物質である。
【0159】
[0085]全てのNMR測定のために以下の実験条件を使用して13C NMR分光法を行なった:600MHz Varian Unity instrument、炭素-13について150MHzの共鳴周波数、窒素雰囲気下120℃で分析を実施、取り込み0.79秒、遅延時間15秒、1試料当たり2500スキャン、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン中に溶解させた試料約60mg。相対モル%エチレンおよびプロピレンならびにシーケンス分析(エチレントライアドの相対モル%または%EEEを含む)を、標準積分技術を使用して達成した。エチレンの数平均連鎖長(nE)を、NMRシーケンシングから%EEおよび%EPを使用して以下の式に従って計算した:
【0160】
【0161】
ここで、%EEは、別のエチレンモノマー単位と結合しているエチレンモノマー単位の相対モル比であり、%EPは、プロピレンモノマー単位と結合しているエチレンモノマー単位の相対モル比であり、特定の試料または試料画分のNMR積分によって決定した。
【0162】
例1
[0086]以下の例は、本発明の方法において改変されていない異相ポリオレフィン組成物中のエチレンの数平均連鎖長の効果を示す。
【0163】
[0087]4種の異相ポリマー組成物を生成した。組成物中の過酸化物結合(O-O)対相溶化剤のモル比が1:1になるように、異相ポリマーを過酸化物、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7)、および相溶化剤、ジフェニルフルベン(CAS# 2175-90-8)と混合することによって、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマー、試料1A~1Dを改変した。上記の手順に従って、試料A~Dをそれぞれ混合し、押出し、射出成形した。次いで試験片を、上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。上記の方法に従って13C NMRを使用してそれぞれの異相ポリマー組成物(相溶化剤での処理の前)のエチレンの数平均連鎖長を決定した。
【0164】
【0165】
[0085]表1に示した衝撃強さにおいて得られた変化は、異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマー中のエチレンの数平均連鎖長が約3の場合、試料1B、1Cおよび1Dに示すように、相溶化剤が耐衝撃性/MFRバランスにおいて比較的緩やかな増加を達成することを示す。驚くべきことに、異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマー中のエチレンの数平均連鎖長が4の場合、MFRが増大する間に、相溶化剤は、衝撃強さにおいて大きな増加をもたらす。試料1Aに示すとおり、充填量を減らして相溶化剤を使用しても大きな増加が観察された。相溶化剤で改変された場合、試料1Aは、未処理の樹脂に比べてMFRが著しく増大し、その衝撃強さは、13.6kJ/m2での完全な破壊からより延性のある非破壊挙動に変化し、これは望ましいことである。改変された樹脂の剛性は、改変されていない樹脂から著しく変化しなかった。
【0166】
例2
[0089]以下の例は、本発明の方法において異相ポリオレフィン組成物中のエチレントライアドの相対モル%の効果を示す
[0090]6種の異相ポリマー組成物を生成し、試料2A~2Dを2つの異なるポリプロピレン耐衝撃性コポリマー、樹脂2-1および樹脂2-2から生成した。組成物中の過酸化物結合(O-O)対相溶化剤のモル比が0.5:1になるように、試料2Aおよび2Bは、樹脂2-1または樹脂2-2のいずれかを過酸化物、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7)、および相溶化剤、2-(2-フリルメチレン)マロノニトリル(CAS# 3237-22-7)と混合することによって作製された。組成物中の過酸化物結合(O-O)対相溶化剤のモル比が2:1になるように、試料2Cおよび2Dは、樹脂2-1または樹脂2-2のいずれかを過酸化物、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7、Luperox 101)、および相溶化剤、TEMPO-メタクリレート(CAS# 15051-46-4)と混合することによって作製された。試料2A~2Dの組成物を表2に示す。改変されていない樹脂2-1および改変されていない樹脂2-2からなる比較例(Comp.2AおよびComp.2B)も表2に示す。
【0167】
【0168】
[0091]上記の手順に従って、試料2A~2Dをそれぞれ混合し、押出し、射出成形した。次いで試験片を、上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。昇温溶離分別法(TREF)を用いて試料を分別し、上記の方法に従って13C NMRを使用してそれぞれの画分中の相対モル%エチレントライアド(%EEE)を決定した。樹脂画分の%EEEを表3に示す。Comp.2A、Comp.2B、および試料2A~2Dの耐衝撃性およびMFRレート性能を表4に示す。
【0169】
【0170】
【0171】
[0092]表4の結果は、未処理樹脂2-1および樹脂2-2が類似の物理的性質を示すことを示す。しかしながら、表3のデータは、2つの樹脂が化学組成またはポリマー構造の点で異なることを示す。特に、表3のデータは、樹脂2-1が、樹脂2-2と比較して、エチレントライアド中により多くの量のエチレンを含有していたことを示す。例えば、樹脂2-1のいくつかの画分は、樹脂2-2からの対応する画分よりもエチレントライアド中に10モル%以上のエチレンを含有していた。表4のデータは、次いで化学またはポリマー構造のこれらの違いの効果を例示する。表4のデータは、本発明の方法を使用して処理した場合、樹脂2-1および樹脂2-2の両方においてメルトフローレートが増加した(試料2Aおよび2Bが示すとおり)が、樹脂2-1で達成された衝撃強さの増大が樹脂2-2と比較して驚くほど高かったことを示す。特に、樹脂は、95J/m完全破壊から非破壊挙動への耐衝撃性の改善を示した(試料2A参照)。この挙動は、衝撃強さが99J/m完全破壊から121J/mに増大し完全な破壊不良が残る試料2B(改質樹脂2-2を含有する)と対照的である。この差異のある性能は、2種のポリマー間の物理的類似性を考慮に入れると驚くべきことである。
【0172】
例3
[0093]以下の例は、本発明の方法において異相ポリプロピレン組成物中のエチレントライアドの割合およびエチレンの数平均連鎖長の増加の影響を例示する。
【0173】
[0094]8種の異相ポリマー組成物を生成した。比較試料3A(Comp.3A)は、上記のような13CNMRを使用して測定したように、エチレンの数平均連鎖長が3である改変されていない異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマー(表5の「ICP」)であった。比較試料3B(Comp.3B)は、同じ改変されていない異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを少量の高密度ポリエチレンポリマー(表5の「HDPE」)と配合することによって作製した。比較試料3Cは、同じ異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを高密度ポリエチレンポリマーおよび過酸化物、すなわち2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7)と配合することによって作製した。比較試料3Dは、同じ異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを過酸化物(すなわち、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7))、および相溶化剤(すなわち、TEMPO-メタクリレート(CAS# 15051-46-4))と配合することによって作製した。試料3E~3Hは、同じ異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを少量のポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレンポリマー(「HDPE」)、低密度ポリエチレンポリマー(「LDPE」”)、直鎖状低密度ポリエチレンポリマー(「LLDPE」)、およびエチレン/α-オレフィンエラストマー耐衝撃性改良剤(「EIM」))、過酸化物(すなわち、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(CAS# 78-63-7))、および相溶化剤(すなわち、TEMPO-メタクリレート(CAS# 15051-46-4))と配合することによって作製した。これらの試料の処方は、表5に記載されている。
【0174】
【0175】
[0095]上記の手順に従って、表5に列挙した組成物をそれぞれ混合し、押出し、射出成形した。次いで試験片を、上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
【0176】
【0177】
[0096]表6の結果は、エチレンの数平均連鎖長が3である改変されていない異相ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーであるComp.3Aが、本発明の方法に従って処理した場合に衝撃強さの低レベルの改善を示すことを示す(Comp.3D参照)。この挙動は、耐衝撃性コポリマー中のエチレンのより低い数平均連鎖長に起因すると考えられている。組成物全体におけるエチレンの数平均連鎖長を増加させるのに役立つであろう高密度ポリエチレンの添加は、過酸化物のビスブレーキングの有無にかかわらず行なわれた場合、単独で衝撃強さを著しく改善するものではない(Comp.3Bおよび3C参照)。しかしながら、耐衝撃性コポリマーがポリエチレンポリマーでドープされ、本発明の方法に従って処理される場合、組成物は、衝撃強さにおいて著しい改善を示した。これは、Comp.3Dと比較して、試料3E~3Hの衝撃強さ測定によって示されている。この結果は、エチレンの数平均連鎖長の重要性を例示すると考えられている(すなわち、数平均連鎖長が増加した組成物は、衝撃強さにおいてより大きな増大を示した)。この結果はまた、衝撃強さのより大きな改善をもたらすために所与のポリマー組成物を改変し得る方法を例示すると考えられている。
【0178】
[0097]ここで引用した刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体がここに記載された場合と同程度に参照によりここに組み込まれる。
【0179】
[0098]本出願の主題を説明する状況において(特に以下の特許請求の範囲において)用語「a」および「an」および「the」および同様の指示対象の使用は、ここで特に指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に指摘がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、限定されない」の意味)として解釈されるべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここで特に指示がない限り、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に参照する簡単な方法として役立つように単に意図されており、それぞれ別の値は、ここで個々に引用されたかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載した全ての方法は、ここで特に指示がない、または明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の適当な順番で行なうことができる。ここで提供される任意および全ての例、または例示的な言い回し(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく解明するように意図されており、特に特許請求しない限り主題の範囲を限定するものではない。本明細書内の言語は、ここで記載されている主題の実施に不可欠なものとしてどんな特許請求していない要素も示しているように解釈されるべきでない。
【0180】
[0099]特許請求した主題を実施するために発明者らに知られている最良のモードを含めた、本出願の主題の好ましい態様は、ここに記載されている。それらの好ましい態様の変形形態は、前述の説明を読むことにより、当業者に明らかになり得る。発明者らは、当業者がこのような変形形態を適宜使用することを期待し、また発明者らは、ここに具体的に記載されている以外の方法でここに記載されている主題が実施されることを意図している。したがって、この開示は、準拠法によって許可されるようにここに添付された特許請求の範囲で列挙された主題の全ての変更形態および相当物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態における前述の要素の任意の組合せは、ここで特に指示がない、または明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示によって包含される。