(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】メモリーT細胞から作られるベト細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230821BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230821BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230821BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230821BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230821BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230821BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/38 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/54 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230821BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230821BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230821BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230821BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230821BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/12
A61L27/38
A61L27/38 300
A61L27/36 100
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/407
A61K35/26
A61K35/34
A61K35/36
A61K35/30
A61K35/39
A61K35/22
A61K35/42
A61K35/38
A61K35/54
A61K35/28
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
C12N5/0786
(21)【出願番号】P 2018567129
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(86)【国際出願番号】 IL2017050716
(87)【国際公開番号】W WO2018002924
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-25
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516040109
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YEDA RESEARCH AND DEVELOPMENT CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science, P.O.Box 95, 7610002 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ライズナー, イェアー
(72)【発明者】
【氏名】オア-ゲヴァ, ノガ
(72)【発明者】
【氏名】ギドロン ブドヴスキー, ロテム
(72)【発明者】
【氏名】バッチャー-ルスティグ, エスター
(72)【発明者】
【氏名】ラスク, アサフ
(72)【発明者】
【氏名】カガン, シヴァン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0212071(US,A1)
【文献】特表2014-526244(JP,A)
【文献】特表2013-537187(JP,A)
【文献】Cell Transplantation,2015年,Vol.24,p.1167-1181
【文献】BLOOD,2010年,Vol.115, No.10,p.2095-2104
【文献】Bone Marrow Transplantation,2014年,Vol.49,p.138-144
【文献】Bone Marrow Transplantation,2015年,Vol.50,p.968-977
【文献】The Journal of Clinical Investigation,2015年,Vol.125, No.7,p.2677-2689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非移植片対宿主病(GvHD)誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞の単離された集合が、ベト免疫寛容誘発性細胞を含み、抗ウイルス活性、抗細菌活性、または抗腫瘍活性を有し、前記方法は、
(a)少なくとも
70%のメモリーT細胞を含むT細胞
を含む細胞の集合を与えることと、
(b)IL-21存在下、抗原反応性細胞を濃縮するように、前記細胞の集合と、ウイルス性抗原、細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、
(c)IL-21、IL-15、および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)における少なくとも
70%のメモリーT細胞を含むT細胞
を含む前記細胞の集合が、前記ウイルス性抗原、細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原に対して濃縮される、および/または
工程(a)における前記細胞の集合が、末梢血単核細胞(PBMC)を、CD4
+、CD56
+、およびCD45RA
+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で、またはCD45RO
+、CD8
+細胞を選択することが可能な薬剤で処理することによって得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも
70%のメモリーT細胞を含むT細胞
を含む前記細胞の集合を与える前に、細胞ドナーを、ウイルス性抗原、細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原で処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞の単離された集合が、ベト免疫寛容誘発性細胞を含み、抗ウイルス活性、抗細菌活性、または抗腫瘍活性を有し、前記方法は、
(a)末梢血単核細胞(PBMC)を、CD45RO
+CD45RA
-CD8
+表現型を含むメモリーT細胞
において濃縮されたT細胞
を含む細胞の集合を与えるように、CD4
+、CD56
+、およびCD45RA
+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で、またはCD45RO
+、CD8
+細胞を選択することが可能な薬剤で処理することと、
(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、IL-21存在下、
工程(a)から得られた細胞の集合と、ウイルス性抗原、細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、
(c)IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することと、を含む、方法。
【請求項5】
前記細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原が、
自己抗原提示細胞、非自己抗原提示細胞、人工ビヒクルまたは人工抗原提示細胞によって提示される、および/または
前記メモリーT細胞と同じ由来の抗原提示細胞によって提示される、
請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、自己抗原提示細胞、非自己抗原提示細胞、人工ビヒクルまたは人工抗原提示細胞によって提示される、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、前記PBMCと同じ由来の抗原提示細胞によって提示される、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、2種類以上のウイルスペプチドを含む、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、EBVペプチド、CMVペプチド、アデノウイルス(Adv)ペプチド、および/またはBKウイルスペプチドを含む、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、3種類のEBVペプチド、2種類のCMVペプチドおよび2種類のアデノウイルス(Adv)ペプチドを含む、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペントンおよびAdv-ヘキソンからなる群から選択される、および/または
前記1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原が、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペントンおよびAdv-ヘキソンのうち2種類以上を含む、
請求項1または4に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記IL-21存在下、前記細胞の集合と、前記ウイルス性抗原、細菌性抗原、または腫瘍性抗原の1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることが、
12時間~5日間行われるか、または
3日間行われる、
および/または
(ii)IL-21、IL-15、および/またはIL-7存在下、工程(b)から得られた細胞を培養することが、
12時間~15日間行われるか、または
4日間~10日間行われるか、または
6~9日間行われる、
請求項1または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記
工程(a)における細胞の集合が、CD4
+T細胞、CD56
+NK細胞、および/またはCD45RA
+ナイーブT細胞を枯渇させている、請求項1、2、4、または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非GvHD誘発細胞を生成する時間の全長が10日間である、および/またはex-vivoで行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)の後に前記Tcm表現型を含む前記細胞からアロ反応性細胞を枯渇させることをさらに含み、任意で前記アロ反応性細胞を枯渇させることが、前記Tcm表現型を含む前記細胞と宿主抗原提示細胞(APC)とを接触させることによるCD137+および/またはCD25+細胞の枯渇によって行われ、および/または
前記Tcm表現型を含む前記細胞は、CD3
+、CD8
+、CD62L
+、CD45RA
-、CD45RO
+シグネチャを含む、
請求項1、4または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を有する細胞を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合であって、前記Tcm表現型を有する前記細胞が、CD3
+、CD8
+、CD62L
+、CD45RA
-、CD45RO
+のシグネチャを含み、前記細胞の単離された集合の少なくとも50%が、前記シグネチャを有し、前記細胞の単離された集合が、ベト免疫寛容誘発性細胞を含み、抗ウイルス活性、抗細菌活性、または抗腫瘍活性を有し、前記細胞が、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によってメモリーT細胞から生成される、単離された集合。
【請求項12】
活性成分として請求項11に記載の細胞の前記単離された集合と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
細胞または組織の移植が必要な被験体において、疾患を治療するために用いられる、請求項11に記載の細胞の単離された集合。
【請求項14】
細胞の前記単離された集合が、同時にまたは互いに続いて投与される細胞または組織の移植をさらに含む、請求項13に記載の細胞の単離された集合。
【請求項15】
前記被験体が、細胞または組織の移植を必要としており、前記被験体への前記細胞または組織の移植のための補助薬物療法として用いられる、請求項11に記載の単離された集合。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、メモリーT細胞から作られるベト細胞に関し、排他的ではないが、より特定的には、その製造方法、移植および疾患の治療におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
証拠の蓄積から、ヒトにおいて、CD45RAが枯渇した末梢血単核細胞(PBMC)は、移植片対宿主(GvH)反応性の低下を示す。この手法の前提は、抗原を経験したT細胞でのCD45RA発現のダウンレギュレーションに関し、したがって、CD45RA+細胞を枯渇させることによって、機能的な抗原を経験した細胞(メモリーT細胞を含む)を保持しつつ、ナイーブT細胞が除去される。その結果、移植片対宿主病(GvHD)のリスクは、顕著に減少し、生着、免疫再構成および移植片対白血病/リンパ腫(GvL)は、T細胞が枯渇した幹細胞(TCD)移植のみを用いた手法と比較して向上している。さらに、T制御細胞(Treg)も、CD45RA-集合に属しており、おそらく、この細胞調製によって示される免疫寛容効果に寄与するだろう。この手法は、マウスCD4メモリーT細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞が、移植片対宿主(GvH)反応性を欠いていることを示す前臨床試験に基づくものである[非特許文献1]。
【0003】
しかし、Zhengら[非特許文献2]は、CD8+セントラルメモリーT細胞(Tcm)が、ナイーブT細胞と比較して、顕著に、ある程度の減少したGvHDを示すことを示した。この減少したGvHDが、メモリーT細胞の抗原を経験したプールにおいて、アロ反応性クローンの頻度が減少していることと関係があり得ることを考慮して、Juchemらは、さらに、レシピエントで偏在的に発現する抗体ペプチドに対して指向する同様のレベルのTCR導入遺伝子を発現するナイーブT細胞とメモリーT細胞の間のあり得る固有の差を調べた[非特許文献3]。この試験は、エフェクターメモリーT細胞(Tem)が、低いGvH反応性を示すことを示し、これは、おそらく、異なるホーミングパターンおよび/またはこれらの細胞がINFγを分泌する異なる能力に起因すると思われ、Tcmは、ナイーブT細胞に匹敵する高いGvH活性を示す[非特許文献3]。
【0004】
近年、白血病患者へのCD45RA+が枯渇した造血幹細胞移植(HSCT)を使用しようとする2つの主要な研究が企てられた[非特許文献4]が、GvHDの発生は完全にはなくならなかった。このことは、多数の注入されたCD45RA+T細胞と、TcmがGvHDの強力な誘発因子であることを明確に示した前臨床データには関係なく、CD45RAが枯渇したフラクションが、TemとTcmを両方とも含むという事実に起因するだろう。
【0005】
抗サードパーティドナーに由来するセントラルメモリーCD8+T細胞(ベトTcm)は、骨髄を破壊せずに減少させて調整しつつ、同種異系のT細胞が枯渇した骨髄移植(TDBMT)の生着を助けることが既に示されており、GvHDを引き起こすことなく、ドナー型の臓器移植片に対する耐性が生じる[非特許文献5]。さらに、GvH反応性を欠く耐性誘発性細胞(例えば、ベト細胞)の生成、移植片の移植のための補助薬物療法としての使用のために種々の手法が想定されており、いくつかを上にまとめている。
【0006】
特許文献1は、ドナー由来の移植片をレシピエントに移植する方法を開示し、この方法は、(a)前記移植片をレシピエントに移植する工程と、(b)前記レシピエントに、非アロ反応性抗サードパーティ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む投薬量を投与し、非アロ反応性抗サードパーティCTLが、サードパーティの1種類の抗原または複数の抗原に対してドナーのTリンパ球が指向することによって作られ(外因性IL-2非存在下)、前記投薬量が、アロ反応性CTLに成長することが可能なTリンパ球(例えば、CD4+T細胞および/またはCD56+ナチュラルキラー細胞)が実質的に枯渇しており、それによって、レシピエントによる移植拒絶および移植片対宿主病を両方とも予防または軽減する工程を含む。
【0007】
特許文献2は、被験体における非同系移植片の移植拒絶を減らすか、または予防するための免疫寛容性細胞の塩宇を開示している。開示されている免疫寛容性T制御細胞(例えば、CD4+CD25+細胞)は、被験体および移植片の両方と非同系の任意のドナー(「サードパーティ」免疫寛容性細胞)から誘導されてもよい。移植片(例えば、骨髄)は、被験体と同種異系または異種の任意の移植ドナーから誘導されてもよい。
【0008】
特許文献3は、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する非GvHD誘発性抗サードパーティ細胞を含む細胞の単離された集合を開示し、この細胞は耐性誘発性細胞であり、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である。特許文献3によれば、細胞は、(a)非同系の末梢血単核細胞(PBMC)とサードパーティの1種類の抗原または複数の抗原とを、GVH反応性細胞を除去可能な条件で(例えば、サイトカインが枯渇した培養物)接触させ、(b)工程(a)から得られた細胞を、IL-15存在下、Tcm表現型を含む細胞を増幅させる条件(例えば、IL-7および/またはIL-21存在下)で培養することによって作られる。
【0009】
特許文献4は、(a)非同系細胞または組織移植片を被験体に移植することと、(b)被験体に、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する非移植片対宿主(GvHD)誘発性抗サードパーティ細胞を含む細胞の単離された集合を治療に有効な量投与することとを含み、この細胞が耐性誘発性細胞であり、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である、被験体において疾患を治療する方法を開示する。特許文献4によれば、細胞は、(a)PBMCとサードパーティの1種類の抗原または複数の抗原とを、IL-21存在下または非存在下で、GVH反応性細胞を除去可能な条件で接触させ(例えば、1~5日間培養する)、(b)工程(a)から得られた細胞を、IL-15存在下、Tcm表現型を含む細胞を増幅させる条件(例えば、さらにIL-7存在下)で、抗原を含まない環境で培養することによって作られる。
【0010】
特許文献5は、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する抗サードパーティ細胞を含む細胞の単離された集合を生成する新しい方法を開示し、この細胞は、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能である。特許文献5によれば、細胞は、(a)IL-21存在下、抗原反応性細胞を濃縮可能なように、PBMCと、サードパーティの1種類の抗原または複数の抗原とを接触させ、(b)工程(a)から得られた細胞を、IL-21、IL-15およびIL-7存在下、Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、抗原を含まない環境で培養することによって作られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2001/49243号
【文献】WO2007/023491号
【文献】WO2010/049935号
【文献】WO2012/032526号
【文献】WO2013/035099号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Anderson BEら J Clin Invest(2003)112(1):101-8
【文献】Zheng H.ら、Immunol.(2009)182(10):5938-48
【文献】Juchem KWら Blood.(2011)118(23):6209-19
【文献】Bleakley M.ら J Clin Invest.(2015)125(7):2677-89;Triplett、B.M.ら、Bone Marrow Transplant.(2015)50(7):968-977
【文献】Ophir、E.ら、Blood.(2013)121(7):1220-1228
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非移植片対宿主病(GvHD)誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)少なくとも70%のメモリーT細胞の集合を与えることと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、前記メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、(c)サイトカイン存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を、CD45RA-CD8+表現型を含むメモリーT細胞の集合を与えるように、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で処理することと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、IL-21存在下、前記メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、(c)IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を、CD45RA-CD8+表現型を含むメモリーT細胞の集合を与えるように、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で処理することと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、IL-21存在下、前記メモリーT細胞の集合と、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原とを接触させることと、(c)IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合であって、前記細胞が、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成する、単離された集合が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、活性成分として、本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞の単離された集合と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、疾患の治療が必要な被験体において、前記疾患を治療する方法であって、前記方法が、被験体に、治療に有効な量の本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞の単離された集合を投与することを含み、それによって、前記被験体の疾患を治療する方法が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、疾患の治療が必要な被験体において、前記疾患を治療するために同定される医薬の製造のための、本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞の単離された集合の使用が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、疾患の治療が必要な被験体において疾患を治療する方法であって、前記方法が、(a)前記疾患に関連する1種類の抗原または複数の抗原の存在について、被験体の生体サンプルを分析することと、(b)前記疾患に関連する1種類の抗原または複数の抗原に対し、抗原反応性細胞を濃縮するように、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することと、(c)前記被験体に、治療に有効な量の(b)の非GvHD誘発細胞の単離された集合を投与することによって、前記被験体の疾患を治療することとを含む、方法が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、細胞または組織の移植が必要な被験体を治療する方法であって、前記方法が、(a)細胞または組織の移植を前記被験体に移植することと、(b)前記被験体に、治療に有効な量の本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞の単離された集合を投与することとを含み、それによって、細胞または組織の移植が必要な被験体を治療する方法が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、被験体が、組織または細胞の移植を必要としており、前記被験体への前記細胞または組織の移植のための補助薬物療法として同定される医薬の製造のための、本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞の単離された集合の使用が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD45RA+細胞が枯渇している。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD4+細胞および/またはCD56+細胞が枯渇している。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21存在下、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることが行われる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、サイトカイン存在下、工程(b)から得られた細胞を培養することは、IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記細胞を培養することを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、さらに、少なくとも70%のメモリーT細胞の集合を与える前に、細胞ドナーを、1種類の抗原または複数の抗原で処理することを含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも70%のメモリーT細胞の集合は、上述の1種類の抗原または複数の抗原を豊富に含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、ウイルス性抗原、細菌性抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患に関連する抗原、タンパク質抽出物、精製されたタンパク質および合成ペプチドからなる群から選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、自己抗原提示細胞、非自己抗原提示細胞、人工ビヒクルまたは人工抗原提示細胞によって提示される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、メモリーT細胞と同じ由来の抗原提示細胞によって提示される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、自己抗原提示細胞、非自己抗原提示細胞、人工ビヒクルまたは人工抗原提示細胞によって提示される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、PBMCと同じ由来の抗原提示細胞によって提示される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗原提示細胞は、樹状細胞である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、2種類以上のウイルスペプチドを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、EBVペプチド、CMVペプチドおよび/またはアデノウイルス(Adv)ペプチドを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、3種類のEBVペプチド、2種類のCMVペプチドおよび2種類のアデノウイルス(Adv)ペプチドを含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペントンおよびAdv-ヘキソンからなる群から選択される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペントンおよびAdv-ヘキソンのうち2種類以上を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原は、さらに、細菌性抗原を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21存在下、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることは、12時間~5日間行われる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21存在下、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることは、3日間行われる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、工程(b)から得られた細胞を培養することは、12時間~10日間行われる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21、IL-15およびIL-7存在下、工程(b)から得られた細胞を培養することは、4日間~8日間行われる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IL-21、IL-15およびIL-7存在下、工程(b)から得られた細胞を培養することは、6日間行われる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非GvHD誘発細胞を生成するための時間の全長は、10日間である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、さらに、工程(c)の後にアロ反応性細胞を枯渇させることを含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アロ反応性細胞を枯渇させることが、前記Tcm表現型を含む細胞と宿主抗原提示細胞(APC)とを接触させることによるCD137+および/またはCD25+細胞の枯渇によって行われる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、ex-vivoで行われる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、PBMCは、被験体に関して非同系である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、PBMCは、被験体に関して同種異系である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、セントラルメモリー表現型を有する細胞は、CD3+、CD8+、CD62L+、CD45RA-、CD45RO+シグネチャを含む。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、血液、血漿、血清、髄液、リンパ液および組織生検からなる群から選択される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、ウイルス性抗原、細菌性抗原、腫瘍抗原および自己免疫疾患に関連する抗原からなる群から選択される。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、さらに、細胞または組織の移植を被験体に移植することを含む。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬は、さらに、細胞または組織の移植を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、移植は、非GvHD誘発細胞の単離された集合の投与と同時に、非GvHD誘発細胞の単離された集合を投与する前に、または非GvHD誘発細胞の単離された集合の投与の後に行われる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、疾患は、悪性疾患である。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、疾患は、非悪性疾患である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非GvHD誘発細胞の単離された集合は、細胞または組織の移植の前に、細胞または組織の移植と当時に、または細胞または組織の移植の後に投与されるためのものである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法において、(b)が(a)の前に行われる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法において、(a)と(b)は同時に行われる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、さらに、移植の前に、被験体を亜致死状態、致死状体または超致死状態に調整することを含む。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非GvHD誘発細胞の単離された集合の使用は、さらに、亜致死、致死または超致死に調整するプロトコルを含む。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、亜致死、致死または超致死を調整することは、全身照射(TBI)、部分的な身体照射、骨髄破壊による調整、骨髄を破壊しない調整、共刺激による遮断、化学療法剤および抗体免疫治療からなる群から選択される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植は、被験体と非同系である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植と、非GvHD誘発細胞の単離された集合は、同じドナーから得られる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植は、HLAが同一の同種異系のドナー、HLAが非同一の同種異系のドナーおよび異種のドナーからなる群から選択されるドナーに由来する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植は、未熟な造血細胞を含む。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植は、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、腸、脳、卵巣およびリンパ系/造血細胞または組織からなる群から選択される。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞または組織の移植は、数種類の臓器の同時移植を含む。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、同時移植は、未熟な造血細胞と固形臓器の移植を含む。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態によれば、未熟な造血細胞と固形臓器は、同じドナーから得られる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態によれば、未熟な造血細胞は、固形臓器の移植の前に、固形臓器の移植と同時に、または固形臓器の移植の後に移植される。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験体は、悪性疾患を有する。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によれば、悪性疾患は、固形腫瘍または腫瘍転移である。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、悪性疾患は、血液悪性腫瘍である。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態によれば、悪性疾患は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、メラノーマ、肉腫、神経芽細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、食道癌、滑膜細胞癌、肝臓癌および膵臓癌からなる群から選択される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験体は、非悪性疾患を有する。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非悪性疾患は、臓器機能不全または臓器不全、血液疾患、移植片に関連する疾患、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症、アレルギー、外傷および損傷からなる群から選択される。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態によれば、感染性疾患は、ウイルス性疾患または細菌性疾患である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験体は、ヒト被験体である。
【0083】
他の意味であると定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および/または科学用語は、本発明が関連する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したのと類似または等価な方法および材料が、本発明の実施形態を実施し、または試験する際に使用されてもよいが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先する。これに加え、材料、方法および例は、単なる具体例であり、必ずしも限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明のいくつかの実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照しつつ、本明細書に記載される。ここで、図面を詳細に具体的に参照しつつ、示される特定のものは、例であり、本発明の実施形態を具体的に説明するためのものであることを強調しておく。この観点で、図面とともになされている説明は、本発明をどのように実施し得るかは、当業者には明らかであろう。
【
図1】
図1は、OVA免疫付与したマウス由来のCD44
+CD8
+メモリーT細胞から誘導されるベトTcm細胞を用い、減少するように調整するT細胞が枯渇した骨髄移植(TDBMT)モデルの模式図である。
【
図2A】
図2Aは、抗原を経験した細胞(CD8
+CD44
+)の集合から調製されたベトTcm細胞が、オボアルブミンを用いたOT1マウスの免疫付与後に、T細胞が枯渇した(TCD)同種異系の幹細胞移植(SCT)に対する耐性を誘発することを示すグラフである。亜致死状態になるように照射された(5.25Gy)Balb/c(H-2
d)マウスに、5×10
6の同種異系のC57BL/6ベトTcm細胞(H-2
b)またはOT-1 OVA免疫付与されたマウスから誘導される5×10
6のCD8
+CD44
+細胞と共に、またはこれらを用いずに、20×10
6のC57BL/6-ヌード(H-2
b)BM細胞を移植した。末梢血におけるドナー細胞の割合を、抗宿主(H-2D
d)抗ドナー(H-2K
b)抗体を用いるFACSによって、移植から45日間分析した。
【
図2B】
図2Bは、CD8
+CD44
+Tcm細胞が、ストリンジェントなマウスモデルにおいてGvHDを誘発しないことを示すグラフである。
【
図2C】
図2Cは、CD8
+CD44
+Tcm細胞が、ストリンジェントなマウスモデルにおいてGvHDを誘発しないことを示すグラフである。亜致死状態になるように照射された(5Gy)Balb/c(H-2d)マウスに、5×10
6または10×10
6の同種異系のOVA免疫付与した後C57BL/6(H-2b)から誘導されるCD8
+CD44
+Tcm細胞または新鮮なCD8
+CD44
+細胞を移植した。CD8
+CD44
-ナイーブ細胞をGvHDのポジティブコントロールとして使用した。(
図2B)細胞移植後62日間の平均重量変化(
図2C)生存プロットは、特定の群におけるマウスの生存時間線を示す。
【
図2D】
図2Dは、天然に存在するメモリー細胞(例えば、CD44
+CD8
+抗OVA)から誘導されるTcm細胞による耐性誘発を試験するための、強度を下げるように調整する(RIC)モデルの模式図である。
【
図2E】
図2Eは、天然に存在するメモリー細胞(CD8
+CD44
+)から調製されたベトTcm細胞が、TCD alloSCTに対する耐性を誘発することを示すグラフである。亜致死状態になるように照射された(5Gy)Balb/c(H2
d)マウスに、5×10
6の同種異系のC57BL/6ベトTcm細胞(H-2
b)またはOVA免疫付与されたマウスから誘導される5×10
6のCD8
+CD44
+細胞または5×10
6の同系異種C57BL/6の新しく単離されたCD8
+CD44
+細胞と共に、またはこれらを用いずに、20×10
6のC57BL/6-ヌード(H-2
b)BM細胞を移植した。末梢血におけるドナー細胞の割合を、抗宿主(H-2D
d)抗ドナー(H-2K
b)抗体を用いるFACSによって、移植から55日間分析した。
【
図3】
図3A~Dは、ウイルスペプチドを用いた抗サードパーティCD4
-CD56
-ベトTcm細胞の生成を示すグラフである。0日目にドナーPBMCからCD4
+細胞およびCD56
+細胞を枯渇させた後に確立されたヒトCD4
-CD56
-応答物を、EBV、CMVおよびアデノウイルスのウイルスペプチドで刺激を受けた照射されたドナーに由来するDCに対して、+3日目までIL-21と共に共培養し、+3日目から+9日目までIL-21、IL-15およびIL-7を加えて培養した。(
図3A~B)0日目での応答性CD4
-CD56
-細胞(
図3A)、培養9日目にこれらから生成した抗ウイルス性Tcm細胞(
図3B)のベトTcm表現型のFACS分析。(
図3C~D)+9日目に、細胞を集め、照射された宿主PBMCに対して5日間培養し(すなわち、バルク培養)、次いで、これを集め、エフェクター表現型を誘発するためにIL-2存在下、限界希釈分析(LDA)において、照射された宿主PBMCに対して7日間、再び刺激を与えた。+21日目に、宿主由来のConA
-ブラストに対するS
35-メチオニンLDA死滅アッセイを行った。5時間の混合リンパ球反応(MLR)の後、ウェルから上清を集め、βカウンタで放射性を計測した。(
図3C)は、培養物あたりの細胞数に対して応答した培養物%のプロットを表す。(
図3D)培養物あたり、細胞数に対する非応答性培養物の割合%の線形回帰プロットを表す。特定の培養物中の抗宿主クローンの頻度(f)を、線形回帰の傾きから計算した。
【
図4A】
図4Aは、白血球除去療法によって誘導される抗ウイルス性CD4
-CD56
-CD45RA
-ヒトベトTcm細胞を生成し、その抗宿主反応性を試験するためのプロトコルの模式図である。
【
図4B】
図4Bは、ウイルスペプチドをロードしたヒト成熟樹状細胞の生成の模式図である。
【
図5A】
図5Aは、サードパーティ刺激としてウイルスペプチドをロードした自家性DCを用い、CD4
-CD56
-CD45RA
-応答物から作られた抗ウイルス性ベトTcm細胞を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、サードパーティ刺激としてウイルスペプチドをロードした自家性DCを用い、CD4
-CD56
-CD45RA
-応答物から作られた抗ウイルス性ベトTcm細胞を示すグラフである。(
図5A)0日目のCD4
-CD56
-応答物および+9日目のTcm細胞の表現型(右側パネル)。(
図5B)0日目のCD4
-CD56
-CD45RA
-応答物および+9日目のTcm細胞の表現型(右側パネル)。
【
図5C】
図5Cは、CD4
-CD56
-CD45RA
-細胞フラクションおよびCD4
-CD56
-細胞フラクションから作られる抗ウイルスTcm細胞において、新鮮なCD4
-CD56
-CD19
-T細胞と比較して、抗宿主CTL前駆対の頻度の限界希釈分析(LDA)を示すグラフである。+9日目に、新鮮なCD4
-CD56
-CD19
-細胞のコントロール集合を、新鮮な解凍したドナー細胞からビーズ選別した。3種類全てのドナー細胞調製物(すなわち、抗ウイルス性ベトTcm CD4
-CD56
-、抗ウイルス性ベトTcm CD4
-CD56
-CD45RA
-および新鮮なCD4
-CD56
-CD19
-細胞)を、照射された宿主PBMCに対し、+9日目に5日間培養し(すなわち、バルク培養)、次いで、これを集め、エフェクター表現型を誘発するためにIL-2存在下、LDA中、照射された宿主PBMCに対して7日間、再び刺激を与えた。+21日目に、宿主由来のConA
-ブラストに対するS
35-メチオニンLDA死滅アッセイを行った。5時間のMLRの後、ウェルから上清を集め、βカウンタで放射性を計測した。培養物あたり、細胞数に対する非応答性培養物の割合%の線形回帰プロットを示している。特定の培養物中の抗宿主クローンの頻度(f)を、線形回帰の傾きから計算した。
【
図6】
図6は、ウイルスペプチドに対して指向するベトTcm細胞の生成前と生成後の抗宿主T細胞の枯渇をまとめた表である(
図4Aおよび
図5A~Cにおいて行われた通り)。注目すべきは、LDAアッセイに基づく、低い抗宿主CTL-p頻度と、総抗宿主CTL-pレベルである(グラフ上に円で囲まれている)。
【
図7】
図7は、メモリーT細胞から誘導され、自己抗原提示細胞の観点で、ウイルス性抗原に対して培養したヒトベトTcm細胞を生成するためのプロトコルの一実施形態の模式図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されるプロトコルによって、ベトTcm細胞をメモリーT細胞から生成した10回の実験をまとめた表である。注目すべきは、細胞の回収率と純度が、非常に再現性があることであった。
【
図9】
図9A~Hは、
図7に示されるプロトコルによってメモリーT細胞から作られたベトTcm細胞の純度を示す1つの実験の典型的なFACS分析を示すグラフである。この図は、
図8に示される各工程のFACS分析が以下の通りであることを示す。
図9A~Bは、精製前の末梢血単核細胞(PBMC)のFACS分析を示す。
図9C~Dは、CD4
-CD56
-精製後のFACS分析を示す。
図9E~Fは、CD4
-CD56
-CD45RA
-精製後のFACS分析を示す(すなわち、CD4
-CD56
-CD45RO
+細胞の濃縮)。
図9G~Hは、抗ウイルスTcm細胞のFACS分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、メモリーT細胞から作られるベト細胞に関し、排他的ではないが、より特定的には、その製造方法、移植および疾患の治療におけるこれらの使用に関する。
【0086】
本発明の原理および操作は、図面および添付の記載を参照しつつ、よりよく理解されるだろう。
【0087】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その用途において、以下の説明に示されるか、または実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、または種々の様式で実施または実行することが可能である。また、本明細書で使用される句および用語は、説明のためのものであり、限定するものとみなすべきではないことが理解されるべきである。
【0088】
骨髄(BM)移植は、血液悪性腫瘍および他の障害(例えば、血液疾患、臓器不全)を有する多くの患者のための治療的措置を与える。さらに、BMは、キメラ現象の誘発によって移植の成功率を高めるために、種々の他の臓器(例えば、同じ臓器ドナーに由来する腎臓または肝臓の移植)と共に同時移植されてもよい。しかし、BM移植は、宿主抗原(Ag)に応答し、複数系統の移植片対宿主病(GvHD)を引き起こすドナーT細胞を含む。GvHDの問題は、このような設定において、ほとんどが一様に致死となるが、T細胞が枯渇した骨髄(TDBMT)の移植によって防ぐことができる。しかし、GvHD予防の利点は、顕著に高い移植拒絶率によって相殺され得る。
【0089】
同種異系のTDBMTの拒絶を克服するための手法の1つは、PCT出願公開番号第WO2001/49243号、第WO2007/023491号、第WO2010/049935号、第WO2012/032526号、第WO2013/035099号によって教示されるような、種々のベト細胞調製物を利用したものである。しかし、移植拒絶とGvHDは、養子細胞治療において、特に、同種異系の設定において、いまだ大きな関心事である。
【0090】
実施のために本発明を縮小しつつ、本願発明者らは、移植片対宿主(GvH)反応を誘発することなく、抗疾患活性(例えば、抗ウイルス活性)も含む、ベト細胞の改良された集合を明らかにした。これらの新規細胞は、抗原活性化によって、メモリーT細胞からアロ反応性クローンを枯渇させることによって作られる。
【0091】
本明細書で以下に示され、以下の実施例の章に示されるように、本願発明者らは、メモリーT細胞から出発するHLAが適合しない(例えば、同種異系の)用途のためにベト細胞を生成する新しい方法を提供する。具体的には、
図1に示すように、本願発明者らは、天然に存在するメモリーT細胞由来のベトTcm細胞を生成するためにマウスモデルを利用した。メモリーT細胞から作られるTcm細胞は、下げるように調整したT細胞が枯渇した骨髄移植(TDBMT)モデルにおいて、移植片対宿主反応性を有さずに、耐性を誘発し(
図2A)、強度を下げるように調整するプロトコルの後、キメラ現象の顕著な向上を示した(
図2E)。しかし、新鮮なCD8
+CD44
+メモリー細胞(抗原活性化を受けなかった)は、GvHDに起因する顕著な致死性と体重減少を誘発した(
図2B~C)。
【0092】
次に、ウイルス性抗原を使用し、CD4
-CD56
-細胞集合からヒトTcmベト細胞を生成した。
図3A~Bに示されるように、細胞をウイルス性抗原存在下で培養し、自己樹状細胞上に提示し、培養開始から9日目に、93%のTcm表現型(CD62
+CD45RO
+細胞)を含んでいた。さらに、これらのTcm細胞は、新鮮なCD4
-CD56
-細胞と比較して、宿主アロ反応性クローンの2logでの枯渇を得た(以下の
図3C~Dと表2)。次いで、まず、CD4
+、CD56
+およびCD45RA
+細胞の細胞ドナーから得られた末梢血単核細胞(PBMC)を枯渇させることによって、ヒトメモリー細胞からベト細胞を生成した(
図4A)。したがって、この細胞の残りの集合は、ドナーのメモリーCD8
+T細胞を含んでいた。メモリーCD8
+T細胞を、(同じ細胞ドナーの)樹状細胞と一緒に培養し、ここで、樹状細胞は、抗原(例えば、EBV、CMVおよびアデノウイルスを含むウイルス性抗原カクテル)を発現するように操作されている。最初の3日間、細胞培養物にIL-21を追加し、次いで、3日目から9日目まで、IL-21、IL-15およびIL-7を培養物に加えた。得られた細胞の集合は、Tcm表現型を含んでいたが、抗宿主反応性を発揮しなかった(
図5A~Cと
図6に示す通り)。
【0093】
合わせると、抗原活性化による(例えば、ウイルス性抗原、腫瘍抗原を用いる)、T細胞メモリープールにおけるアロ反応性クローンの枯渇は、メモリーT細胞プール中に残っている残留GvHDの問題を解決し得る。さらに、これらの結果は、移植耐性の誘発、GvHD合併症がないことと、疾患の治療(例えば、抗ウイルス用途または抗癌用途)のために、メモリー細胞から作られるベト細胞の新規な調製を、細胞治療に使用可能であることを示唆している。
【0094】
したがって、本発明の一態様によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非移植片対宿主病(GvHD)誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、耐性誘発性細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)少なくとも70%のメモリーT細胞の集合を与えることと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、前記メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、(c)サイトカイン存在下、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GVHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0095】
「細胞の単離された集合」との句は、本明細書で使用される場合、その天然環境(例えば、ヒトの身体)から単離された細胞を指す。
【0096】
「非移植片対宿主病」または「非GvHD」との用語は、本明細書で使用される場合、移植片対宿主(GvH)誘発反応性がかなり減っているか、またはないことを指す。したがって、本発明の細胞は、移植から30~120日後の移植された被験体の生存、体重および全体的な外観によって実証されるように、顕著な移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさないものとして作られる。GvHDの減少について被験体を評価する方法は、当業者によく知られている。
【0097】
一実施形態によれば、本発明の細胞は、本教示に従って作成されていない細胞と比較して、宿主に対する反応性が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはさらに100%減少している。
【0098】
「セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型」との句は、本明細書で使用される場合、リンパ節に対してホーミングするT細胞傷害性細胞の部分集合を指す。Tcm表現型を有する細胞は、典型的には、CD3+/CD8+/CD62L+/CD45RO+/CD45RA-シグネチャを含む。Tcm細胞は、1つの細胞で全てのシグネチャマーカーを発現してもよく、または1つの細胞で、シグネチャマーカーの一部のみを発現してもよいことが理解されるだろう。細胞表現型の決定は、当業者に知られている任意の方法によって、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)または捕捉ELISA標識によって行われてもよい。
【0099】
一実施形態によれば、細胞の単離された集合の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはさらに100%が、Tcm細胞シグネチャを有している。
【0100】
特定の実施形態によれば、上述の細胞の単離された集合の約20~40%、約30~50%、約40~60%、約50~70%、約60~80%、約70~90%、約80~100%、または約90~100%は、Tcm細胞シグネチャを有する。
【0101】
本発明の非GvHD誘発細胞の単離された集合は、本明細書では、「Tcm細胞」とも呼ばれる。
【0102】
上述のように、Tcm細胞は、典型的には、移植後に、リンパ節に対してホーミングする。いくつかの実施形態によれば、本発明の細胞の単離された集合は、移植後にリンパ節のいずれか(例えば、末梢リンパ節および腸間膜リンパ節)に対してホーミングしてもよい。これらの細胞のホーミング性によって、これらの細胞が、迅速かつ効率的な様式でベト活性を発揮する。
【0103】
本発明のTcm細胞の単離された集合は、耐性誘発性細胞である。
【0104】
「耐性誘発性細胞」との細胞は、本明細書で使用される場合、レシピエントの細胞と接触したときに、投与された耐性誘発性細胞が存在しないレシピエントの細胞の応答性と比較して、レシピエントの細胞(例えば、レシピエントのT細胞)の応答性が低下した細胞を指す。耐性誘発性細胞は、PCT出願公開第WO2001/049243号および第WO2002/102971号に既に記載されているように、ベト細胞(すなわち、宿主T細胞と接触したときに、宿主T細胞のアポトーシスを引き起こすT細胞)を含む。
【0105】
「ベト活性」との用語は、ベト細胞を認識し、これに結合したときに、抗ドナーレシピエントT細胞を不活性化させる免疫細胞(例えば、ドナー由来のT細胞)に関する。一実施形態によれば、この不活性化によって、抗-ドナーレシピエントT細胞のアポトーシスが起こる。
【0106】
これに加えて、またはこれに代えて、本発明のTcm細胞の単離された集合は、抗疾患活性を含む。
【0107】
「抗疾患活性」との用語は、疾患細胞に対するTcm細胞の機能を指す。抗疾患活性は、疾患細胞に対して直接的なものであってもよく、例えば、疾患細胞の能力を殺してもよい。この活性は、LFA1-I/CAM1結合が介在するTCR依存性の死滅に起因するものであってもよい[Ardittiら、Blood(2005)105(8):3365-71.Epub 2004年7月6日]。これに加えて、またはこれに代えて、抗疾患活性は、例えば、疾患細胞の死を引き起こすことによって(例えば、死滅、アポトーシスによって、または例えば、抗体、サイトカインなどの他の因子の分泌によって)、他の種類の細胞(例えば、CD4+T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞)の活性化によって、間接的であってもよい。
【0108】
疾患細胞は、例えば、ウイルス感染した細胞、細菌感染した細胞、癌細胞[例えば、固形腫瘍細胞または白血病/リンパ腫細胞、Tcm細胞の移植片対白血病(GVL)活性とも呼ばれる]、自己免疫疾患に関連する細胞、アレルギー反応に関連する細胞、またはストレス、照射または年齢に起因して変化した細胞を含んでいてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、本発明のTcm細胞は、遺伝的に改変されていない細胞または遺伝的に改変された細胞であってもよい(例えば、特定の遺伝子、マーカーまたはペプチドを発現するか、または発現しないように遺伝的に操作された細胞、または特定のサイトカインを分泌するか、または分泌しないように遺伝的に操作された細胞)。当該技術分野で知られている任意の方法を、例えば、関連する遺伝子/複数の遺伝子の不活性化によって、またはポリペプチドの発現を妨害するアンチセンスRNAの挿入によって(例えば、本明細書で参考として組み込まれるWO/2000/039294号を参照)、細胞を遺伝子操作する際に実施してもよい。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記方法が、(a)メモリーT細胞の集合を与えることと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、前記メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、(c)サイトカイン存在下、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養することとを含む方法が提供される。
【0111】
「メモリーT細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、以前に抗原に遭遇し、応答したTリンパ球の部分集合を指し、抗原を経験したT細胞とも呼ばれる。
【0112】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、細胞の集合の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはさらに100%含まれる。
【0113】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD8マーカーを発現する細胞傷害性T細胞(すなわち、CD8+T細胞)を含む。
【0114】
別の実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD8+CD45RO+表現型を含む。
【0115】
別の実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD8+CD45RA-表現型を含む。
【0116】
別の実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD8+CD45RO+CD45RA-表現型を含む。
【0117】
メモリーCD8+T細胞の選択は、CD8+およびCD45RA-を一緒に発現する細胞および/またはCD8+およびCD45RO+を一緒に発現する細胞の選択によって行われてもよく、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、例えば、アフィニティに基づく精製によって(例えば、MACSビーズ、FACSソーターおよび/または捕捉ELISA標識を用いることによって)行われてもよい。
【0118】
メモリーCD8+T細胞の選択は、エフェクターT細胞およびセントラルメモリーT細胞の選択によって、さらに行われてもよい。後者は、例えば、CD62L、CCR7、CD27および/またはCD28を発現する。
【0119】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。
【0120】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、リンパ系組織から、例えば、リンパ節または脾臓から得られる。
【0121】
高純度のメモリーT細胞(例えば、少なくとも約50~70%のメモリーT細胞)を含む細胞の集合を得るために、またはメモリーT細胞の数を増やすために、PBMCは、ナイーブ細胞(例えば、CD45RA+細胞)、付着性細胞(例えば、単球、マクロファージ)、CD4+細胞(例えば、Tヘルパー細胞)、CD56+細胞(例えば、NK細胞)、またはメモリーT細胞表現型を含まない任意の他の細胞が枯渇していてもよい。
【0122】
ナイーブT細胞(例えば、CD45RA+細胞を発現する)、CD4+および/またはCD56+細胞の枯渇は、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、例えば、アフィニティに基づく精製によって(例えば、MACSビーズ、FACSソーターおよび/または捕捉ELISA標識を用いることによって)行われてもよい。
【0123】
付着性細胞の枯渇は、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、例えば、細胞培養皿でPBMCを培養し(例えば、2~6時間)、非付着性細胞を集めることによって、行われてもよい。
【0124】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD45RA+細胞が枯渇している。
【0125】
一実施形態によれば、メモリーT細胞は、CD4+細胞および/またはCD56+細胞が枯渇している。
【0126】
メモリーT細胞プールからアロ反応性クローンを枯渇させるために、メモリーT細胞を、1種類の抗原または複数の抗原と接触させる。
【0127】
本明細書で使用される場合、「1種類の抗原または複数の抗原」との句は、免疫応答を誘発することができる可溶性または不溶性の(例えば、膜に会合する)分子を指す。
【0128】
例えば、1種類の抗原または複数の抗原は、全細胞(例えば、生きた細胞または死んだ細胞)、細胞フラクション(例えば、溶解した細胞)、細胞抗原(例えば、細胞表面抗原)、タンパク質抽出物、精製されたタンパク質または合成ペプチドであってもよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態の1種類の抗原または複数の抗原は、悪性疾患に関連する抗原(例えば、腫瘍抗原)、自己免疫疾患に関連する抗原(すなわち、自己免疫抗原)、アレルギー反応に関連する抗原(すなわち、アレルギー抗原)、ウイルスの抗原(すなわち、ウイルス性抗原)、細菌の抗原(すなわち、細菌性抗原)または真菌の抗原(例えば、真菌抗原)を含む。
【0129】
ある実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、典型的には免疫力が低下した被験体(例えば移植患者)に影響を与える感染性有機体(例えば、ウイルス、細菌、真菌といった有機体)の抗原である。免疫力が低下した患者に影響を与え得る例示的な感染性有機体としては、限定されないが、ウイルス、例えば、パルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19)、ロタウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヘルペス単純ウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、Epstein-Barrウイルス(EBV)、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルス);細菌、例えば、S pneumoniae、P aeruginosa、Legionella pneumophila、L monocytogenes、Nocardia species、Mycobacterium species、S aureus、Nocardia species、P aeruginosa、Serratia species、Chromobacterium、streptococci、Burkholderia、マイコバクテリウム(例えば、Mycobacterium avium-intracellulare complex)、封入された細菌、例えば、S pneumoniae、H influenzaeおよびN meningitidis;真菌、例えば、P jiroveci、CandidaおよびAspergillus;および寄生生物、例えば、トキソプラズマ種、クリプトスポリジウム種、ストロンギロイデス種が挙げられる。
【0130】
一実施形態によれば、抗原は、ウイルス性抗原であり、例えば限定されないが、Epstein-Barrウイルス(EBV)、アデノウイルス(Adv)、サイトメガロウイルス(CMV)、風邪ウイルス、流感ウイルス、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、ヘルペス単純、HIV、インフルエンザ、日本脳炎、麻疹、ポリオ、狂犬病、呼吸器多核体、風疹、天然痘、水痘帯状疱疹、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルス)またはジカウイルスの抗原である。
【0131】
ウイルス性抗原のさらに特定的な例として、アデノウイルス抗原としては、限定されないが、Adv-ペントンまたはAdv-ヘキソンが挙げられ、CMV抗原としては、限定されないが、エンベロープ糖タンパク質B、CMV IE-1およびCMV pp65が挙げられ、EBV抗原としては、限定されないが、EBV LMP2、EBV BZLF1、EBV EBNA1、EBV P18およびEBV P23が挙げられ、肝炎抗原としては、限定されないが、B型肝炎ウイルスのS、MおよびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのpre-S抗原、HBCAG DELTA、HBV HBE、C型肝炎ウイルス性RNA、HCV NS3およびHCV NS4が挙げられ、ヘルペス単純ウイルス性抗原としては、限定されないが、最初期遺伝子タンパク質および糖タンパク質Dが挙げられ、HIV抗原としては、限定されないが、gag、pol、およびenv遺伝子の遺伝子産物、例えば、HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質および逆転写酵素が挙げられ、インフルエンザ抗原としては、限定されないが、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼが挙げられ、日本脳炎ウイルス性抗原としては、限定されないが、タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2Aおよび80% Eが挙げられ、麻疹抗原としては、限定されないが、麻疹ウイルス融合タンパク質が挙げられ、狂犬病抗原としては、限定されないが、狂犬病糖タンパク質および狂犬病ヌクレオタンパク質が挙げられ、呼吸器多核体ウイルス性抗原としては、限定されないが、RSV融合タンパク質およびM2タンパク質が挙げられ、ロラウイルス性抗原としては、限定されないが、VP7scが挙げられ、風疹抗原としては、限定されないが、タンパク質E1およびE2が挙げられ、水痘帯状疱疹ウイルス性抗原としては、限定されないが、gplおよびgpllが挙げられる。
【0132】
一実施形態によれば、抗原は、細菌性抗原であり、例えば限定されないが、炭疽病、グラム陰性菌、クラミジア、ジフテリア、インフルエンザ菌、ヘリコバクターピロリ、マラリア、ヒト結核菌、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、連鎖球菌および破傷風の抗原が挙げられる。
【0133】
細菌性抗原のさらなる特定の例として、炭疽病抗原としては、限定されないが、炭疽病保護抗原が挙げられ、グラム陰性菌抗原としては、限定されないが、リポ多糖体が挙げられ、インフルエンザ菌抗原としては、限定されないが、莢膜多糖類が挙げられ、ジフテリア抗原としては、限定されないが、ジフテリア毒素が挙げられ、ヒト結核菌抗原としては、限定されないが、ミコール酸、ヒートショックタンパク質65(HSP65)、30kDaの主要な分泌タンパクおよび抗原85Aが挙げられ、百日咳毒素抗原としては、限定されないが、血球凝集素、パータクチン、FIM2、FIM3およびアデニル酸シクラーゼが挙げられ、肺炎球菌抗原としては、限定されないが、ニューモリシンおよびニューモリシン莢膜多糖類が挙げられ、リケッチア抗原としては、限定されないが、rompAが挙げられ、連鎖球菌抗原としては、限定されないが、Mタンパク質が挙げられ、破傷風抗原としては、限定されないが、破傷風毒素が挙げられる。
【0134】
一実施形態によれば、抗原は、スーパー耐性菌抗原である(例えば、多剤耐性菌)。スーパー耐性菌の例としては、限定されないが、Enterococcus faecium、Clostridium difficile、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacteriaceae(Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter spp.を含む)が挙げられる。
【0135】
一実施形態によれば、抗原は、真菌性抗原である。真菌の例としては、限定されないが、カンジダ、コクシジオデス(coccidiodes)、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、リーシュマニア、マラリア原虫、原生動物、寄生生物、住血吸虫、白癬、トキソプラズマおよびクルーズ・トリパノソーマが挙げられる。
【0136】
真菌性抗原のさらなる特定的な例として、コクシジオデス(coccidiodes)抗原としては、限定されないが、球状体抗原が挙げられ、クリプトコッカス抗原としては、限定されないが、莢膜多糖が挙げられ、ヒストプラズマ抗原としては、限定されないが、ヒートショックタンパク質60(HSP60)が挙げられ、リーシュマニア抗原としては、限定されないが、gp63およびリポホスホグリカンが挙げられ、マラリア原虫抗原としては、限定されないが、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母体/ガメート表面抗原、155/RESAの血液ステージ抗原を含む原生動物および他の寄生生物性抗原が挙げられ、住血吸虫抗原としては、限定されないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼおよびパラミオシンが挙げられ、白癬真菌性抗原としては、限定されないが、トリコフィトンが挙げられ、トキソプラズマ抗原としては、限定されないが、SAG-1およびp30が挙げられ、クルーズ・トリパノソーマ抗原としては、限定されないが、75~77kDa抗原および56kDa抗原が挙げられる。
【0137】
一実施形態によれば、抗原は、望まない自己免疫状態またはアレルギー状態に関連する細胞によって発現される抗原である。例示的な自己免疫状態としては、限定されないが、急性壊死性出血性脳症、アレルギー喘息、円形脱毛症、貧血、アフター性潰瘍、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、喘息、自己免疫甲状腺炎、結膜炎、クローン病、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、糖尿病(diabetes)、糖尿病(diabetes mellitus)、癩性結節性紅斑、角結膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、強皮症、シェーグレン症候群(シェーグレン症候群に対して二次的な乾性角結膜炎を含む)、スティーブンス・ジョンソン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性結腸炎、膣炎およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0138】
自己免疫抗原の例としては、限定されないが、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD 65)、ネイティブDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体要素、サイログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体が挙げられる。
【0139】
アレルギー抗原の例としては、限定されないが、花粉抗原、例えば、スギ花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ドクムギ花粉抗原、動物由来の抗原(例えば、イエダニ抗原およびネコ抗原)、組織適合性抗原およびペニシリン、および他の治療薬が挙げられる。
【0140】
一実施形態によれば、抗原は、腫瘍細胞によって発現する抗原(またはその一部、例えば、抗原エピトープ)である。一実施形態によれば、抗原(またはその一部)は、造血組織で発現するタンパク質から誘導され(例えば、造血悪性腫瘍、例えば、白血病抗原)、または固形腫瘍(例えば、メラノーマ、膵臓癌、肝臓癌、胃腸癌など)で発現するタンパク質から誘導される。
【0141】
腫瘍抗原の例としては、限定されないが、A33、BAGE、Bcl-2、B細胞成熟抗原(BCMA)、BCR-ABL、β-カテニン、癌精巣抗原(CTA、例えば、MAGE-1、MAGE-A2/A3およびNY-ESO-1)、CA l25、CA 19-9、CA 50、CA 27.29(BR 27.29)、CA 15-3、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33、CD37、CD45、CD123、CEA、c-Met、CS-1、サイクリンB1、DAGE、EBNA、EGFR、ELA2、エフリンB2、エストロゲン受容体、FAP、フェリチン、葉酸結合タンパク質、GAGE、G250/CA IX、GD-2、GM2、gp75、gp100(Pmel 17)、HA-1、HA-2、HER-2/neu、HM1.24、HPV E6、HPV E7、hTERT、Ki-67、LRP、メソテリン、ムチン様癌関連抗原(MCA)、MUC1、p53、PR1、PRAME、PRTN3、RHAMM(CD168)、WT-1が挙げられる。さらなる腫瘍抗原は、Molldrem J.Biology of Blood and Marrow Transplantation(2006)12:13-18;Alatrash G.およびMolldrem J.,Expert Rev Hematol.(2011)4(1):37-50;Renkvistら、Cancer lmmunol lmmunother(2001)50:3-15;van der Bruggen P、Stroobant V、Vigneron N、Van den Eynde B.Peptide database:T cell-defined tumor antigens.Cancer Immun(2013)、www(dot)cancerimmunity(dot)org/peptide/;Rittenhouse、ManderinoおよびHass,Laboratory Medicine(1985)16(9)556-560に与えられ、これらは全て本明細書に参考として組み込まれる。
【0142】
以下は、本発明のいくつかの実施形態の教示に従って使用可能な腫瘍抗原のリストである。
【0143】
【0144】
一実施形態によれば、抗原は、1種類の抗原(例えば、ウイルス性抗原、細菌性抗原または腫瘍抗原)を含む。
【0145】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、2種類以上の抗原を含む(例えば、ある抗原群、例えば、ウイルス性抗原、腫瘍抗原などの抗原の混合物;または異なる抗原群からの抗原の混合物、例えば、ウイルス性抗原と細菌性抗原、ウイルス性抗原と腫瘍抗原、ウイルス性抗原と自己免疫抗原、腫瘍抗原と自己免疫抗原、または自己免疫抗原とアレルギー抗原)。
【0146】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、2種類、3種類、4種類、5種類またはより多くの抗原を含む(例えば、1つの製剤中に、またはいくつかの製剤中に)。
【0147】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、2種類、3種類、4種類、5種類またはより多くの腫瘍抗原を含む(例えば、1つの製剤中に、またはいくつかの製剤中に)。
【0148】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、2種類、3種類、4種類、5種類またはより多くのウイルス性抗原を含む(例えば、1つの製剤中に、またはいくつかの製剤中に)。
【0149】
特定の実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、3種類のウイルス性抗原、例えば、EBVペプチド、CMVペプチドおよびAdvペプチドを含む。
【0150】
特定の実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペントンおよびAdv-ヘキソンのうち2種類以上(例えば、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、または7種類全ての抗原)を含む。
【0151】
特定の実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、CMV、EBVおよびAdenoの3種類のウイルスの全タンパク質配列におよぶ重複しているペプチドライブラリー(例えば、11アミノ酸によって重複している15マー)であるペプミックスの混合物を含む(このようなペプミックスは、例えば、JPT Technologies、ベルリン、ドイツから市販的に購買できる)。
【0152】
別の特定の実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、EBV-LMP2、EBV-BZLF1、EBV-EBNA1、CMV-pp65、CMV-IE-1、Adv-ペプトンおよびAdv-ヘキソンにわたる7種類のペプミックスの混合物を、例えば、この7種類のペプチドを100ng/ペプチドまたは700ng/混合物の濃度で含む。
【0153】
特定の実施形態によれば、ウイルス性抗原は、さらに、1種類の細菌性抗原または複数の細菌性抗原を含む。
【0154】
メモリーT細胞の免疫応答を刺激するために、例えば、限定されないが、オボアルブミン、DNP(ジニトロフェニル)、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)などのさらなる刺激抗原を使用してもよい。
【0155】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、「サードパーティの1種類の抗原または複数の抗原」であり、すなわち、ドナーまたはレシピエントのいずれにも存在しない可溶性または不溶性の(例えば、膜に会合する)1種類の抗原または複数の抗原である。例えば、サードパーティ抗原は、サードパーティ細胞であってもよい。
【0156】
サードパーティ細胞は、ドナーおよびレシピエントに対して同種異系または異種のいずれかであってもよい(本明細書で以下にさらに詳細に説明する)。同種異系のサードパーティ細胞の場合、このような細胞は、ドナーのHLA抗原とは異なるが、レシピエントのHLA抗原と交差反応性ではないHLA抗原を有しており、その結果、このような細胞に対して作られる抗サードパーティ細胞は、移植またはレシピエント抗原に対して反応性ではない。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、同種異系または異種のサードパーティ細胞は、末梢血リンパ球(PBL)、脾臓またはリンパ節から精製される細胞、サイトカインが動員されるPBL、in vitroで拡張される抗原提示細胞(APC)、in vitroで拡張される樹状細胞(DC)および人工抗原提示細胞からなる群から選択される刺激細胞である。
【0158】
本発明の抗原は、細胞、ウイルス、真菌または細菌の表面に提示されてもよく、またはこれらから誘導されてもよく、および/またはこれらから精製されてもよい。さらに、ウイルス性、真菌性、細菌性の抗原は、感染した細胞上に提示されてもよく、または細胞抗原は、人工ビヒクル(例えば、リポソーム)または人工抗原提示細胞(例えば、1種類の抗原または複数の抗原でトランスフェクトされた細胞株)上に提示されてもよい。したがって、ウイルス性、細菌性または真菌性の抗原は、これらを用いて感染した細胞、または他の方法でウイルス/細菌/真菌ペプチドを発現するように作られた細胞によって提示されてもよい。同様に、腫瘍抗原、自己免疫抗原またはアレルギー抗原は、これらのタンパク質を発現するために作られる細胞によって提示されてもよい。
【0159】
細胞を利用すると、抗原としてのウイルス感染した細胞、細菌感染した細胞、ウイルスペプチドを提示する細胞、または細菌ペプチドを提示する細胞は、このような抗原は、多種多様な抗原決定因子を含み、それ自体が多様な集合のTcm細胞の生成を指令するため、特に有利であり、例えば、致死または亜致死状態の照射または化学療法手技の後に(以下に詳細に記載する通り)、または疾患と闘うために(以下に詳細に記載する通り)このような再構成が必要とされる場合には、さらに、T細胞の迅速な再構成に役立ち得る。
【0160】
したがって、抗原提示細胞(以下に記載するように、自家性または非自家性)、細胞株、人工ビヒクル(例えばリポソーム)または人工抗原提示細胞(例えば、1種類の抗原または複数の抗原でトランスフェクトされた白血病または線維芽細胞株)を使用し、これに融合またはロードされた短い合成ペプチドを提示するか、またはタンパク質抽出物または精製されたタンパク質を提示することができる。このような短いペプチド、タンパク質抽出物または精製されたタンパク質は、任意の他の抗原を表す1つ以上のペプチドに由来する、ウイルス性、細菌性、真菌性、腫瘍、自己免疫またはアレルギー抗原であってもよい。
【0161】
専用ソフトウェアを使用し、ウイルス性、細菌性、真菌性、腫瘍、自己免疫またはアレルギー抗原の配列を分析し、免疫原性の短いペプチド、すなわち、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIまたはMHCクラスIIの観点で提示可能なペプチドを同定することができる。
【0162】
さらに、本発明の人工ビヒクルまたは人工APCは、外因性ペプチドを用いて刺激されることなく、MHCを示すように操作されてもよい。したがって、一実施形態によれば、人工APCは、MHC決定因子でトランスフェクトされたK562腫瘍細胞(例えば、メモリーT細胞に関して自家性)と共刺激分子とを含む[例えば、Suhoski MMら、Mol Ther.(2007)15(5):981-8に既に記載されている通り]、またはこれらでトランスフェクトされた線維芽細胞を含む。
【0163】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、MHCクラスIまたはMHCクラスIIの観点でメモリーT細胞の認識を可能にするために、メモリーT細胞に関して自家性の、例えば、(例えば同じドナーの)同じ由来の抗原提示細胞(例えば、DC)によって提示される。
【0164】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原は、メモリーT細胞によって認識可能なMHC抗原(ヒト白血球抗原(HLA)とも呼ばれる)を示す遺伝的に改変された抗原提示細胞または人工抗原提示細胞によって提示される。
【0165】
一実施形態によれば、抗原提示細胞は、ヒト細胞を含む。
【0166】
一実施形態によれば、抗原提示細胞は、樹状細胞(DC)を含む。
【0167】
一実施形態によれば、抗原提示細胞は、成熟した樹状細胞を含む。
【0168】
一実施形態によれば、抗原提示細胞は、照射された樹状細胞を含む。
【0169】
したがって、一実施形態によれば、DCは、約5~10Gy、約10~20Gy、約20~30Gy、約20~40Gy、約20~50Gy、約10~50Gy照射される。特定の実施形態によれば、DCは、約10~50Gy(例えば、30Gy)照射される。
【0170】
樹状細胞をAPCとして利用する方法は、当該技術分野で知られている。したがって、非限定例として、末梢血単核細胞(PBMC)は、細胞ドナーから[例えば、メモリーT細胞と同じ細胞ドナーから]得られてもよい。PBMCを培養プレートに播種し、ヒト血清(例えば、1%ヒト血清)およびペニシリン/ストレプトマイシン(例えば、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を追加したDC細胞培地(例えば、Cellgro DC培地)を用い、37℃、5% CO2/O2で1~5時間(例えば3時間)インキュベートする。上清細胞(T細胞を含む)を捨て、残りの細胞(すなわち、付着性細胞)を、サイトカインGM-CSF(例えば、800~1600IU/ml)およびIL-4(例えば、750IU/ml)(例えば、Peprotech、ハンブルグ、ドイツから入手可能)を加えつつ、同じ培養条件でさらに48~96時間(例えば、72時間)インキュベートする。2~4日(例えば、3日)後、浮遊細胞を集め(すなわち、大部分が未熟な樹状細胞を含む)、DCの成熟のために、例えば、GM-CSF(例えば、800IU/ml)、IL-4(例えば、750IU/ml)、LPS(例えば、E.coli O55:B5から、例えば、40ng/mlで)およびIFN-γ(例えば、200IU/ml)(例えば、Peprotech、ハンブルグ、ドイツから入手可能)などのサイトカインと共に播種し、一晩インキュベートする。次の日に、付着していない細胞を捨ててもよく、付着した成熟DCを、氷上で10~60分間(例えば30分間)インキュベートした後、例えば、2mM EDTAおよび1% HSを含む、例えば冷PBSを用い、穏やかに除去してもよく、それによって、成熟DCからなる大きな細胞を得てもよい。
【0171】
APC(例えば、成熟DC)上に1種類の抗原または複数の抗原を提示するために、1種類の抗原または複数の抗原をAPC(例えば、DC)と共に、37℃、5% CO2/O2で、約30分~3時間(例えば、1時間)培養する。例えば、37℃、5% CO2/O2で約1時間インキュベートすることによって、DCを、ペプミックス(ウイルスペプチド)のカクテルと共にロードしてもよい。次いで、抗原をロードしたAPC(例えば、DC)は、本発明のいくつかの実施形態に従ってメモリーT細胞の集合からTcm細胞を生成するために使用する準備ができた。
【0172】
本発明のTcm細胞は、典型的には、まず、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原(例えば上述のもの)とを、IL-21を追加した培養物中(例えば、それ以外のサイトカインを含まない培養物中、すなわち、さらなるサイトカインを添加しないで)接触させることによって作られる。この工程は、典型的には、約12~24時間、約12~36時間、約12~72時間、12~96時間、12~120時間、約24~36時間、約24~48時間、約24~72時間、約36~48時間、約36~72時間、約48~72時間、約48~96時間、約48~120時間、0.5~1日間、0.5~2日間、0.5~3日間、0.5~5日間、1~2日間、1~3日間、1~5日間、1~7日間、1~10日間、2~3日間、2~4日間、2~5日間、2~6日間、2~8日間、3~4日間、3~5日間、3~7日間、4~5日間、4~8日間、5~7日間、6~8日間または8~10日間行われるか、または抗原反応性細胞の濃縮を可能にする時間行われる。
【0173】
特定の実施形態によれば、IL-21を追加した培養物(その他のサイトカインを含まない培養物)中、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原(例えば上述のもの)とを接触させることは、1~5日間(例えば、3日間)行われる。
【0174】
IL-21を追加した培養物中、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原(例えば上述のもの)とを接触させることは、典型的には、約0.001~3000IU/ml、0.01~3000IU/ml、0.1~3000IU/ml、1~3000IU/ml、10~3000IU/ml、100~3000IU/ml、1000~3000IU/ml、0.001~1000IU/ml、0.01~1000IU/ml、0.1~1000IU/ml、1~1000IU/ml、10~1000IU/ml、100~1000IU/ml、250~1000IU/ml、500~1000IU/ml、750~1000IU/ml、10~500IU/ml、50~500IU/ml、100~500IU/ml、250~500IU/ml、100~250IU/ml、0.1~100IU/ml、1~100IU/ml、10~100IU/ml、30~100IU/ml、50~100IU/ml、1~50IU/ml、10~50IU/ml、20~50IU/ml、30~50IU/ml、1~30IU/ml、10~30IU/ml、20~30IU/ml、10~20IU/ml、0.1~10IU/mlまたは1~10IU/mlのIL-21存在下で行われる。特定の実施形態によれば、IL-21の濃度は、50~500IU/ml(例えば、100IU/ml)である。
【0175】
特定の実施形態によれば、メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることは、サイトカインを含まない培養物(例えば、IL-21のみが追加された)中で行われ、このような培養条件によって、これらの細胞が、生存を可能にする(これらの培養条件では、残りの細胞は全て死滅する)サイトカイン(例えば、IL-2)を分泌するため、1種類の抗原または複数の抗原によって刺激および活性化を受けた細胞(すなわち、抗原反応性細胞)の生存および濃縮が可能になる。
【0176】
1種類の抗原または複数の抗原(例えば、抗原によって刺激を与えられた樹状細胞などのAPC上に提示される)とメモリーT細胞との比率は、典型的には、約1:2~約1:10、例えば、約1:4、約1:5、約1:6、約1:8または約1:10である。特定の実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原(例えば、APC上に提示される)とメモリーT細胞との比率は、約1:2~約1:8(例えば、1:5)である。
【0177】
次に、得られたメモリーT細胞(すなわち、IL-21と共に培養した後)を、Tcm表現型を含む細胞を増殖させるように、抗原を含まない(すなわち、1種類の抗原または複数の抗原を添加しない)環境で、IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下で培養する。この工程は、典型的には、約12~24時間、約12~36時間、約12~72時間、約12~96時間、約12~120時間、約12~240時間、24~36時間、24~48時間、約24~72時間、24~96時間、24~120時間、24~240時間、約48~72時間、約48~120時間、約48~240時間、約96~240時間、約120~144時間、約120~240時間、約144~240時間、0.5~1日間、0.5~2日間、0.5~3日間、0.5~5日間、0.5~10日間、1~2日間、1~3日間、1~4日間、1~6日間、1~8日間、1~10日間、1~15日間、2~3日間、2~4日間、2~5日間、2~6日間、2~8日間、2~10日間、4~5日間、4~6日間、4~8日間、4~10日間、5~6日間、5~7日間、5~8日間、5~10日間、5~15日間、6~7日間、6~8日間、6~10日間、7~8日間、7~9日間、7~10日間、7~13日間、7~15日間、8~10日間、10~12日間、10~14日間、12~14日間、14~16日間、14~18日間、16~18日間または18~20日間行われる。特定の実施形態によれば、得られたメモリーT細胞(すなわち、IL-21と共に培養した後)を、抗原を含まない環境で、IL-21、IL-15およびIL-7存在下で約4~8日間(例えば、6日間)培養する。
【0178】
この工程は、典型的には、約0.001~3000IU/ml、0.01~3000IU/ml、0.1~3000IU/ml、1~3000IU/ml、10~3000IU/ml、100~3000IU/ml、1000~3000IU/ml、0.001~1000IU/ml、0.01~1000IU/ml、0.1~1000IU/ml、1~1000IU/ml、10~1000IU/ml、100~1000IU/ml、250~1000IU/ml、500~1000IU/ml、750~1000IU/ml、10~500IU/ml、50~500IU/ml、100~500IU/ml、250~500IU/ml、100~250IU/ml、0.1~100IU/ml、1~100IU/ml、10~100IU/ml、30~100IU/ml、50~100IU/ml、1~50IU/ml、10~50IU/ml、20~50IU/ml、30~50IU/ml、1~30IU/ml、10~30IU/ml、20~30IU/ml、10~20IU/ml、0.1~10IU/mlまたは1~10IU/mlの濃度のIL-21存在下で行われる。特定の実施形態によれば、IL-21の濃度は、50~500IU/ml(例えば、100IU/ml)である。
【0179】
この工程は、さらに、約0.001~3000IU/ml、0.01~3000IU/ml、0.1~3000IU/ml、1~3000IU/ml、10~3000IU/ml、100~3000IU/ml、125~3000IU/ml、1000~3000IU/ml、0.001~1000IU/ml、0.01~1000IU/ml、0.1~1000IU/ml、1~1000IU/ml、10~1000IU/ml、100~1000IU/ml、125~1000IU/ml、250~1000IU/ml、500~1000IU/ml、750~1000IU/ml、10~500IU/ml、50~500IU/ml、100~500IU/ml、125~500IU/ml、250~500IU/ml、250~500IU/ml、125~250IU/ml、100~250IU/ml、0.1~100IU/ml、1~100IU/ml、10~100IU/ml、30~100IU/ml、50~100IU/ml、1~50IU/ml、10~50IU/ml、20~50IU/ml、30~50IU/ml、1~30IU/ml、10~30IU/ml、20~30IU/ml、10~20IU/ml、0.1~10IU/mlまたは1~10IU/mlの濃度のIL-15存在下で行われる。特定の実施形態によれば、IL-15の濃度は、50~500IU/ml(例えば、125IU/ml)である。
【0180】
この工程は、さらに、約0.001~3000IU/ml、0.01~3000IU/ml、0.1~3000IU/ml、1~3000IU/ml、10~3000IU/ml、30~3000IU/ml、100~3000IU/ml、1000~3000IU/ml、0.001~1000IU/ml、0.01~1000IU/ml、0.1~1000IU/ml、1~1000IU/ml、10~1000IU/ml、30~1000IU/ml、100~1000IU/ml、250~1000IU/ml、500~1000IU/ml、750~1000IU/ml、10~500IU/ml、30~500IU/ml、50~500IU/ml、100~500IU/ml、250~500IU/ml、100~250IU/ml、0.1~100IU/ml、1~100IU/ml、10~100IU/ml、30~100IU/ml、50~100IU/ml、1~50IU/ml、10~50IU/ml、20~50IU/ml、30~50IU/ml、1~30IU/ml、10~30IU/ml、20~30IU/ml、10~20IU/ml、0.1~10IU/mlまたは1~10IU/mlの濃度のIL-7存在下で行われる。特定の実施形態によれば、IL-7の濃度は、1~100IU/ml(30IU/ml)である。
【0181】
IL-21と共に培養した後(すなわち、例えば、IL-21、IL-15およびIL-7の添加を含むTcm増幅工程において)、1種類の抗原または複数の抗原が、細胞培養物中に存在していてもよいことが理解されるだろう。したがって、抗原を含まない環境は、補助的な1種類の抗原または複数の抗原の添加を行わない細胞培養に関する。
【0182】
本教示に従って実施し得るさらなる工程は、IL-21、IL-15およびIL-7存在下(すなわち、抗原を含まない環境を作り出す前)、得られたメモリーT細胞(すなわち、IL-21と共に培養した後)と1種類の抗原または複数の抗原とを培養することを含む。この工程は、典型的には、約12~24時間、約12~36時間、約12~72時間、24~48時間、24~36時間、約24~72時間、約48~72時間、1~2日間、2~3日間、1~3日間、2~4日間、1~5日間または2~5日間行われ、上に示すのと同じ用量のIL-21、IL-15およびIL-7で行われる。特定の実施形態によれば、IL-21、IL-15およびIL-7存在下、メモリー細胞と、1種類の抗原または複数の抗原とを培養することは、約12時間~4日間(例えば、1~2日間)行われる。一実施形態によれば、Tcm細胞を生成する時間の全長は、約7、8、9、10、11または12日間(例えば、9日間)である。
【0183】
本教示に従って行われ得るさらなる工程は、活性化された細胞の選択および除去を含む。このような選択工程は、潜在的な宿主反応性T細胞の除去に役立つ。
【0184】
活性化された細胞を単離することは、2段階の手法によって行われてもよい。第1の段階において、活性化された細胞は、IL-21、IL-15およびIL-7の存在下で細胞を培養する前に選択される。この第1の段階は、典型的には、IL-21存在下、メモリーT細胞と1種類の抗原または複数の抗原とを最初に接触させた後に行われる。この選択プロセスは、1種類の抗原または複数の抗原(例えば、以下に記載する発現活性化マーカー)によって活性化される細胞のみを選び、典型的には、メモリーT細胞と1種類の抗原または複数の抗原とを最初に接触させた後、約12~24時間、約24~36時間、約12~36時間、約36~48時間、約12~48時間、約48~60時間、約12~60時間、約60~72時間、約12~72時間、約72~84時間、約12~84時間、約84~96時間、約12~96時間行われる。特定の実施形態によれば、選択プロセスは、メモリーT細胞と1種類の抗原または複数の抗原とを最初に接触させた後、約12~24時間(例えば、14時間)行われる。
【0185】
活性化された細胞を単離することは、アフィニティに基づく精製によって(例えば、MACSビーズ、FACSソーターおよび/または捕捉ELISA標識を用いることによって)行われてもよく、細胞表面マーカーを含む任意の活性化マーカー(例えば、限定されないが、CD69、CD44、CD25、CFSE、CD137)または非細胞表面マーカー(例えば、限定されないが、IFN-γおよびIL-2)に対して行われてもよい。また、活性化された細胞を単離することは、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて(例えば、FACSによって)、形態に基づく精製(例えば、大きな細胞を単離すること)によって行われてもよい。さらに、典型的には、活性化された細胞は、CD8+細胞の発現について選択される。さらに、上述の方法の任意の組み合わせを利用し、活性化された細胞を効率的に単離してもよい。
【0186】
本発明のある実施形態によれば、活性化された細胞の選択は、CD137+細胞および/またはCD25+細胞の選択によって行われる。
【0187】
活性化された細胞の単離の第2の段階は、典型的には、培養終了時(すなわち、IL-21、IL-15およびIL-7と共に、抗原を含まない環境で培養した後)に行われる。この段階は、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)と、照射された宿主抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞)とを接触させた後に活性化されたこれらの細胞の枯渇によって、アロ反応性細胞を枯渇させる。上述のように、活性化された細胞を単離することは、アフィニティに基づく精製によって(例えば、MACSビーズ、FACSソーターおよび/または捕捉ELISA標識を用いることによって)行われてもよく、細胞表面マーカーを含む任意の活性化マーカー(例えば、限定されないが、CD69、CD44、CD25、CFSE、CD137)または非細胞表面マーカー(例えば、限定されないが、IFN-γおよびIL-2)に対して行われてもよい。
【0188】
本発明のある実施形態によれば、アロ反応性細胞を枯渇させることは、CD137+細胞および/またはCD25+細胞の枯渇によって行われる。
【0189】
本発明のある実施形態によれば、アロ反応性細胞を枯渇させることは、Tcm細胞と、照射された宿主抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞)とを、例えば、12~24時間(例えば、16時間)、培養開始(すなわち、メモリーT細胞と1種類の抗原または複数の抗原とを培養する最初の日が0日目)から約6~9日間(例えば、8日目)培養することによって行われる。
【0190】
一実施形態によれば、活性化された細胞の単離は、上述の第1の段階の使用によってのみ行われる。
【0191】
別の実施形態によれば、活性化された細胞の単離は、上述の第2の段階の使用によってのみ行われる。
【0192】
一実施形態によれば、本発明のセントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する非GvHD誘発細胞は、天然には存在せず、天然産物ではない。これらの細胞は、典型的には、ex-vivo操作によって作られる(すなわち、特定のサイトカイン存在下、1種類の抗原または複数の抗原にさらす)。
【0193】
本発明の一実施形態によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、ベト細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を、CD45RA-CD8+表現型を含むメモリーT細胞の集合を与えるように、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で処理することと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、IL-21存在下、前記メモリーT細胞の集合と、1種類の抗原または複数の抗原とを接触させることと、(c)IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0194】
本発明の一実施形態によれば、セントラルメモリーT-リンパ球(Tcm)表現型を含む非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成する方法であって、前記細胞が、ベト細胞であり、および/または抗疾患活性を付与し、移植後にリンパ節にホーミングすることが可能であり、前記方法は、(a)非接着性末梢血単核細胞(PBMC)を、CD45RA-CD8+表現型を含むメモリーT細胞の集合を与えるように、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞を枯渇させることが可能な薬剤で処理することと、(b)抗原反応性細胞を濃縮するように、IL-21存在下、前記メモリーT細胞の集合と、1種類のウイルス性抗原または複数のウイルス性抗原とを接触させることと、(c)IL-21、IL-15および/またはIL-7存在下、前記Tcm表現型を含む細胞を増幅させるように、工程(b)から得られた前記細胞を培養し、それによって、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することとを含む、方法が提供される。
【0195】
一実施形態によれば、1種類の抗原または複数の抗原に特異的なメモリーT細胞を得るために、抗原/複数の抗原(例えば、腫瘍抗原、ウイルス性抗原)を、これらからメモリーT細胞を得る前に(例えば、少なくとも70%のメモリーT細胞の集合を与える前に)メモリーT細胞ドナーに投与する。免疫原性の応答(例えば、メモリーT細胞の性正)を誘発するために、抗原に対して細胞ドナーを免疫付与する方法を使用してもよい。
【0196】
抗原は、そのまま投与されてもよく、またはアジュバント(例えば、完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA))を含む組成物の一部として投与されてもよい。一実施形態によれば、抗原は、メモリーT細胞ドナーに1回投与される。一実施形態によれば、メモリーT細胞ドナーは、抗原の少なくとも1つのさらなる(例えば、ブースト)投与(例えば、2回、3回、4回、またはより多くの投与)を受ける。このようなさらなる投与は、抗原を最初に投与してから1、3、5、7、10、12、14、21、30日後、またはより後に行われてもよい。
【0197】
本発明のいくつかの実施形態と共に使用可能な腫瘍抗原(例えば、細胞系ワクチン、例えば、ペプチド特異的なDCワクチン、特定されていないエピトープに対するDCワクチン、ワクチン化のために使用される白血病から誘導されるDC、GVAX(登録商標)プラットフォーム)に対して被験体を免疫付与するさらなる方法は、Alatrash G.and Molldrem J.,Expert Rev Hematol.(2011)4(1):37-50に記載されており、本明細書に参考として組み込まれる。
【0198】
特定の抗原/複数の抗原に対してメモリーT細胞をさらに濃縮し、メモリーT細胞プールからアロ反応性クローンを枯渇させるために、本明細書で上に記載するように、メモリーT細胞を、さらに、同じ1種類の抗原または複数の抗原(例えば、細胞ドナーに投与されるのと同じ抗原)と接触させてもよい。
【0199】
上述のプロトコルは、典型的には、非同系用途に使用され、そのため、使用されるメモリーT細胞またはPBMCは、典型的には、被験体に対して同種異系である(例えば、同種異系のドナーに由来)。同様に、異種の用途が有益であり得る場合には、使用されるメモリーT細胞またはPBMCは、以下に記載するように、異種由来であってもよい。
【0200】
しかし、同系用途が有利であり得る場合、使用されるメモリーT細胞またはPBMCは、被験体に対して自家性であってもよい(例えば、被験体由来)。このような決定は、特に、提供されている開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0201】
したがって、上述のように、メモリーT細胞またはPBMCは、被験体に対して同系または非同系であってもよい。
【0202】
本明細書で使用される場合、「同系」細胞との用語は、被験体と本質的に遺伝的に同一であるか、または本質的に全てが被験体のリンパ球である細胞を指す。同系細胞の例としては、被験体に由来する細胞(当該技術分野では「自家性」とも呼ばれる)、被験体のクローンに由来する細胞、または被験体の一卵性双生児に由来する細胞が挙げられる。
【0203】
本明細書で使用される場合、「非同系」細胞との用語は、被験体と本質的に遺伝的に同一でないか、または本質的に全てが被験体のリンパ球ではない細胞(例えば、同種異系の細胞または異種細胞)を指す。
【0204】
本明細書で使用される場合、「同種異系」との用語は、被験体と同じ種であるドナーに由来するが、実質的に被験体のクローンではない細胞を指す。典型的には、同じ種の非近交系、非接合性の双子の哺乳動物は、互いに同種異系である。同種異系の細胞は、被験体とHLAが同一であってもよく、HLAが部分的に同一であってもよく、またはHLAが非同一であってもよい(すなわち、1つ以上の全く異なるHLA決定因子を示す)。
【0205】
一実施形態によれば、細胞ドナーは、ヒトである。
【0206】
本明細書で使用される場合、「異種」との用語は、被験体のリンパ球のうちかなりの割合の種に対して異なる種の抗原を実質的に発現する細胞を指す。典型的には、異なる種の非近交系の哺乳動物が、互いに異種である。
【0207】
本発明は、異種の細胞が、さまざまな種から誘導されることを想定している。したがって、一実施形態によれば、細胞は、哺乳動物から誘導されてもよい。細胞の由来となる適切な種は、主要な飼育動物または家畜動物および霊長類を含む。このような動物としては、限定されないが、ブタ類(例えば、ブタ)、ウシ類(例えば、ウシ)、ウマ類(例えば、ウマ)、ヒツジ類(例えば、ヤギ、ヒツジ)、ネコ類(例えば、Felis domestica)、イヌ類(例えば、Canis domestica)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター)および霊長類(例えば、チンパンジー、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット)が挙げられる。
【0208】
異種由来の細胞(例えば、ブタ由来)は、好ましくは、動物原性感染症、例えば、ブタ内因性レトロウイルスを含まないことが知られている供給源から得られる。同様に、ヒト由来の細胞または組織は、好ましくは、実質的に病原体を有しない供給源から得られる。
【0209】
したがって、メモリーT細胞またはPBMCの供給源は、意図する細胞の使用に関して決定されるだろう(本明細書で以下にさらに詳細に記載)。これは、特に、本明細書に与えられる詳細な記載の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0210】
ベト細胞の使用は、特に、移植拒絶をなくし、移植片対宿主病(GvHD)を克服することが必要な状況、例えば、同種異系または異種の細胞または組織の移植において有益である。
【0211】
上述のように、本発明のベト細胞は、さらに、抗疾患活性を与え、したがって、被験体(例えば、移植された被験体)が、移植前または移植後(例えば、免疫再構成が達成される前)に、ある疾患または状態(例えば、悪性、ウイルス性、細菌性、真菌性、自己免疫またはアレルギー疾患または状態)を有する状況において有益である。
【0212】
したがって、本発明の別の態様によれば、疾患の治療が必要な被験体において、前記疾患を治療する方法であって、前記方法が、被験体に、治療に有効な量の本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞(すなわち、Tcm細胞)の単離された集合を投与することを含み、それによって、前記被験体の疾患を治療する方法が提供される。
【0213】
本発明の別の態様によれば、細胞または組織の移植が必要な被験体を治療する方法であって、前記方法が、(a)細胞または組織の移植を前記被験体に移植することと、(b)前記被験体に、治療に有効な量の本発明のいくつかの実施形態の非GvHD誘発細胞(すなわち、Tcm細胞)の単離された集合を投与することとを含み、それによって、細胞または組織の移植が必要な被験体を治療する方法が提供される。
【0214】
本明細書で使用される場合、「治療する」との用語は、ある状態の進行を無効にし、実質的に抑制し、遅らせるか、または逆行させること、ある状態の臨床的または美的な症状を実質的に緩和すること、またはある状態の臨床的または美的な症状の外観を実質的に予防することを含む。
【0215】
本明細書で使用される場合、「被験体」または「疾患の治療が必要な被験体」との用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指し、細胞または組織の移植が必要であるか、またはTcm細胞を用いて治療可能な疾患を患う任意の年齢の男性または女性を指す。典型的には、被験体は、障害または病的な状態または望ましくない状態、状況、または症候群、または細胞または組織の移植による治療で修正可能な物理的、形態的または生理学的な異常に起因して、細胞または組織の移植が必要である(本明細書ではレシピエントとも呼ばれる)。このような障害の例は、以下にさらに与えられる。
【0216】
本明細書で使用される場合、「治療に有効な量」との用語は、寛容化(すなわち、ベト効果)、抗疾患効果、抗腫瘍効果および/またはGvHDを誘発しない免疫再構築に効果的なTcm細胞の量である。本発明のTcm細胞は、移植後にリンパ節に対してホーミングするため、細胞の有益な効果/複数の効果(例えば、寛容化、抗疾患効果、抗腫瘍効果および/または免疫再構築)を達成するのに必要な細胞はより少ない量であり得る(既に使用されている細胞の用量と比較して、例えば、第WO2001/049243号を参照)。本発明のTcm細胞と組み合わせて、必要な免疫抑制薬(以下に記載)の量は少なくてよいことが理解されるだろう(例えば、治療プロトコルからのラパマイシンの除外)。
【0217】
治療に有効な量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0218】
本発明の方法で使用される任意の調製物の場合、治療に有効な量または投薬量は、最初に、in vitroの細胞培養アッセイから概算することができる。例えば、投薬量は、所望な濃度またはタイターを達成するために、動物モデルで配合されてもよい。このような情報を使用し、ヒトに有用な用量をさらに正確に決定することができる。
【0219】
例えば、細胞移植の場合には、レシピエントに注入されるTcm細胞の数は、1×104/体重(Kg)より多くなければならない。レシピエントに注入されるTcm細胞の数は、典型的には、1x103/体重(Kg)~1x104/体重(Kg)の範囲、1x104/体重(Kg)~1x105/体重(Kg)の範囲、1x104/体重(Kg)~1x106/体重(Kg)の範囲、1x104/体重(Kg)~10x107/体重(Kg)の範囲、1x104/体重(Kg)~1x108/体重(Kg)の範囲、1x103/体重(Kg)~1x105/体重(Kg)の範囲、1x104/体重(Kg)~1x106/体重(Kg)の範囲、1x106/体重(Kg)~10x107/体重(Kg)の範囲、1x105/体重(Kg)~10x107/体重(Kg)の範囲、1x106/体重(Kg)~1x108/体重(Kg)の範囲でなければならない。特定の実施形態によれば、レシピエントに注入されるTcm細胞の数は、1x105/体重(Kg)~10x107/体重(Kg)の範囲でなければならない。
【0220】
したがって、本発明の方法は、限定されないが、悪性疾患、移植片の移植に関連する疾患(例えば、移植拒絶、移植片対宿主病)、感染性疾患(例えば、ウイルス性疾患、真菌性疾患または細菌性疾患)、炎症性疾患、自己免疫疾患および/またはアレルギー疾患または状態などの任意の疾患を治療するために適用されてもよい。
【0221】
一実施形態によれば、被験体は、悪性疾患を有する。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態の方法によって治療可能な悪性疾患(癌とも呼ばれる)は、任意の固形腫瘍または非固形腫瘍および/または腫瘍転移であってもよい。
【0223】
癌の例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられる。このような癌のさらに特定的な例としては、扁平上皮細胞癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、メラノーマ、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺の扁平上皮癌腫)、腹膜の癌、肝細胞癌、腹部または胃の癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜または子宮の癌腫、カルチノイド癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、中皮腫、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、およびさまざまな種類の頭頸部癌(例えば、脳腫瘍)が挙げられる。本発明の治療のために修正可能な癌性状態としては、転移性癌が挙げられる。
【0224】
一実施形態によれば、悪性疾患は、血液悪性腫瘍である。例示的な血液悪性腫瘍としては、限定されないが、白血病[例えば、急性リンパ性、急性リンパ芽球性、急性リンパ芽球性プレB細胞、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性、単球性、急性骨髄性(myelogenous)、急性骨髄性(myeloid)、好酸球増多を伴う急性骨髄性、B細胞、好塩基性、慢性骨髄性、慢性、B細胞、好酸球性、フレンド、顆粒球性または骨髄球性、ヘアリー細胞、リンパ球性、巨核芽球性、単球性、単球性-マクロファージ、骨髄芽球性、骨髄性、骨髄単核性、血漿細胞、プレB細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系新生物、骨髄性悪性腫瘍の傾向、急性非リンパ球性白血病、T細胞急性リンパ球性白血病(T-ALL)およびB細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)]およびリンパ腫[例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキット、皮膚T細胞、組織球性、リンパ芽球性、T細胞、胸腺、B細胞、低グレード/濾胞性;小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;バルキー疾患NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンストレームマクログロブリン血症]が挙げられる。
【0225】
特定の実施形態によれば、悪性疾患は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、メラノーマ、肉腫、神経芽細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、食道癌、滑膜細胞癌、肝臓癌および膵臓癌である。
【0226】
一実施形態によれば、被験体は、非悪性疾患を有する。
【0227】
一実施形態によれば、非悪性疾患は、臓器機能不全または臓器不全、血液疾患、移植片に関連する疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、外傷および損傷である。
【0228】
炎症性疾患としては、限定されないが、慢性炎症性疾患および急性炎症性疾患が挙げられる。
【0229】
過敏症を伴う炎症性疾患
過敏症の例としては、限定されないが、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時過敏症、抗体媒介過敏症、免疫複合体が介在する過敏症、Tリンパ球が介在する過敏症およびDTHが挙げられる。
【0230】
I型過敏症または即時過敏症、例えば喘息
【0231】
II型過敏症としては、限定されないが、リウマチ様疾患、リウマチ様自己免疫疾患、関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791)、脊椎炎、強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1-2):49)、硬化症、全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)、腺疾患、腺自己免疫疾患、膵臓自己免疫疾患、糖尿病、I型糖尿病(Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、甲状腺疾患、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339)、甲状腺炎、自然発生自己免疫甲状腺炎(Braley-Mullen H.およびYu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、粘液水腫、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759);自己免疫生殖疾患、卵巣疾患、卵巣自己免疫(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol. 2000 Mar;43(3):134)、繰り返しの胎児消失(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、神経変性疾患、神経学的疾患、神経学的自己免疫疾患、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1-2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.And Kraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1-2):83)、運動性ニューロパシー(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191)、ギラン・バレー症候群、ニューロパシーおよび自己免疫ニューロパシー(Kusunoki S.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力性疾患、ランバート・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204)、神経学的腫瘍随伴疾患、小脳萎縮症、傍腫瘍性小脳萎縮、非傍腫瘍性スティフマン症候群、小脳萎縮症、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、多腺性内分泌障害、自己免疫多腺性内分泌障害(Antoine JC. and Honnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23);ニューロパシー、免疫性ニューロパシー(Nobile-Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);ニューロミオトニア、後天性ニューロミオトニア、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、心血管疾患、心血管自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15-16):660);抗factor VIII自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157);脈管炎、壊死性小血管脈管炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、糸球体腎炎、pauci-immune型病巣壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178);抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999;14(4):171);心不全、心不全におけるアゴニスト様β-アドレナリン受容体抗体(Wallukat G.ら、Am J Cardiol.1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr-Jun;14(2):114);溶血性貧血、自己免疫溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3-4):285)、胃腸疾患、胃腸管の自己免疫疾患、腸疾患、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE. and Shoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、筋肉組織の自己免疫疾患、筋炎、自己免疫筋炎、シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92);平滑筋自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5-6):234)、肝臓疾患、肝臓自己免疫疾患、自己免疫肝炎(Manns MP. J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)および原発性胆汁性肝硬変(Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol.1999 Jun;11(6):595)が挙げられる。
【0232】
IV型またはT細胞が介在する過敏症としては、限定されないが、リウマチ様疾患、関節リウマチ(Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci U S A 1994 Jan 18;91(2):437)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Datta SK.,Lupus 1998;7(9):591)、腺疾患、腺自己免疫疾患、膵臓疾患、膵臓自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L. and Eisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647);甲状腺疾患、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77);卵巣疾患(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、前立腺炎、自己免疫前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997 Dec;50(6):893)、多腺性症候群、多腺性自己免疫症候群、I型多腺性自己免疫症候群(Hara T.ら、Blood.1991 Mar 1;77(5):1127)、神経学的疾患、自己免疫神経学的疾患、多発性硬化症、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57(5):544)、重症筋無力症(Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、スティフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci U S A 2001 Mar 27;98(7):3988)、心血管疾患、シャーガス病の心臓自己免疫(Cunha-Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)、自己免疫血小板減少性紫斑病(Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998;11(1):9)、溶血性貧血(Sallah S.ら、Ann Hematol 1997 Mar;74(3):139)、肝臓疾患、肝臓自己免疫疾患、肝炎、慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci(Colch)1996 Nov;91(5):551)、腎臓疾患、腎臓自己免疫疾患、腎炎、腸腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)、結合組織疾患、耳疾患、自己免疫結合組織疾患、自己免疫耳疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)、内耳の疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)、皮膚(skin)疾患、皮膚(cutaneous)疾患、真皮疾患、水疱性皮膚疾患、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡が挙げられる。
【0233】
遅延型過敏症の例としては、限定されないが、接触皮膚炎および薬疹が挙げられる。
【0234】
Tリンパ球が介在する過敏症の例としては、限定されないが、ヘルパーTリンパ球および細胞傷害性Tリンパ球が挙げられる。
【0235】
ヘルパーTリンパ球が介在する過敏症の例としては、限定されないが、0h1リンパ球が介在する過敏症および0h2リンパ球が介在する過敏症が挙げられる。
自己免疫疾患
【0236】
限定されないが、心血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝臓疾患、神経疾患、筋肉疾患、腎臓疾患、生殖に関連する疾患、結合組織疾患および全身性疾患が挙げられる。
【0237】
自己免疫心血管疾患の例としては、限定されないが、アテローム性動脈硬化症(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15-16):660)、抗factor VIII自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157)、壊死性小血管脈管炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、pauci-immune型病巣壊死性糸球体腎炎および半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999;14(4):171)、抗体誘発性心不全(Wallukat G.ら、Am J Cardiol.1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr-Jun;14(2):114;Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、自己免疫溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3-4):285;Sallah S.ら、Ann Hematol 1997 Mar;74(3):139)、シャーガス病の心臓自己免疫(Cunha-Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)および抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998;11(1):9)が挙げられる。
【0238】
自己免疫リウマチ様疾患の例としては、限定されないが、関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791;Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci units S A 1994 Jan 18;91(2):437)および強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)が挙げられる。
【0239】
自己免疫腺疾患としては、限定されないが、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、自然発生自己免疫甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫抗精子不妊症、自己免疫前立腺炎およびI型多腺性自己免疫症候群が挙げられる。疾患としては、限定されないが、膵臓の自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L.and Eisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647;Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J. Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339;Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77)、自然発生自己免疫甲状腺炎(Braley-Mullen H. and Yu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759)、卵巣自己免疫(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000 Mar;43(3):134)、自己免疫前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997 Dec;50(6):893)およびI型多腺性自己免疫症候群(Hara T.ら、Blood.1991 Mar 1;77(5):1127)が挙げられる。
【0240】
自己免疫胃腸疾患の例としては、限定されないが、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE. and Shoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、大腸炎、回腸炎およびクローン病が挙げられる。
【0241】
自己免疫皮膚疾患としては、限定されないが、自己免疫水疱性皮膚疾患、例えば、限定されないが、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡が挙げられる。
【0242】
自己免疫肝臓疾患の例としては、限定されないが、肝炎、自己免疫慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.Clin Sci(Colch)1996 Nov;91(5):551;Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol.1999 Jun;11(6):595)および自己免疫肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)が挙げられる。
【0243】
自己免疫神経学的疾患の例としては、限定されないが、多発性硬化症Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1-2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.And Kraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1-2):83;Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、ニューロパシー、運動性ニューロパシー(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191);ギラン・バレー症候群および自己免疫ニューロパシー(Kusunoki S.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力性疾患、ランバート・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204);神経学的腫瘍随伴疾患、小脳萎縮症、傍腫瘍性小脳萎縮、スティフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci units S A 2001 Mar 27;98(7):3988);非傍腫瘍性スティフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群および多腺性内分泌障害(Antoine JC. and Honnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23);免疫性ニューロパシー(Nobile-Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);後天性ニューロミオトニア、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57(5):544)および神経変性疾患が挙げられる。
【0244】
自己免疫筋肉疾患としては、限定されないが、筋炎、自己免疫筋炎および原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92)および平滑筋自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5-6):234)が挙げられる。
【0245】
自己免疫腎臓疾患としては、限定されないが、腎炎および自己免疫腸腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)が挙げられる。
【0246】
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、限定されないが、反復性胎児喪失が挙げられる(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)。
【0247】
自己免疫結合組織疾患の例としては、限定されないが、耳の疾患、自己免疫性の耳の疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)および内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)が挙げられる。
【0248】
自己免疫全身性疾患の例としては、限定されないが、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1-2):49)および全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)が挙げられる。
感染性疾患
【0249】
感染性疾患の例としては、限定されないが、慢性感染性疾患、亜急性感染性疾患、急性感染性疾患、ウイルス性疾患、細菌性疾患、原生動物性疾患、寄生生物性疾患、真菌性疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が挙げられる。
【0250】
本発明の教示に従って治療可能な感染性疾患を引き起こす具体的な種類のウイルス性病原体としては、限定されないが、レトロウイルス、サーコウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、イリドウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、アレナウイルスおよびフィロウイルスが挙げられる。
【0251】
本発明の教示に従って治療可能なウイルス性感染の具体例としては、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって誘発される後天性免疫不全症候群(AIDS)によって引き起こされる感染、インフルエンザ、ライノウイルス感染、ウイルス性髄膜炎、Epstein-Barrウイルス(EBV)感染、A型、B型またはC型の肝炎ウイルス感染、麻疹、パピローマウイルス感染/疣贅、サイトメガロウイルス(CMV)感染、ヘルペス単純ウイルス感染、黄熱病、エボラウイルス感染、狂犬病、アデノウイルス(Adv)、風邪ウイルス、流感ウイルス、日本脳炎、ポリオ、呼吸器合胞体ウイルス、風疹、天然痘、水痘帯状疱疹、ロタウイルス、ウエストナイルウイルスおよびジカウイルスが挙げられる。
【0252】
本発明の教示に従って治療可能な細菌性感染の具体例としては、限定されないが、炭疽病、グラム陰性菌、クラミジア、ジフテリア、インフルエンザ菌、ヘリコバクターピロリ、マラリア、ヒト結核菌、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、連鎖球菌および破傷風によって引き起こされる感染が挙げられる。
【0253】
本発明の教示に従って治療可能なスーパー耐性菌感染の具体例(例えば、多剤耐性菌)としては、限定されないが、Enterococcus faecium、Clostridium difficile、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacteriaceae(Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter spp.を含む)によって引き起こされる感染が挙げられる。
【0254】
本発明の教示に従って治療可能な真菌感染の具体例としては、限定されないが、カンジダ、コクシジオデス(coccidiodes)、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、リーシュマニア、マラリア原虫、原生動物、寄生生物、住血吸虫、白癬、トキソプラズマおよびクルーズ・トリパノソーマによって引き起こされる感染が挙げられる。
移植拒絶疾患
【0255】
他の実施形態によれば、疾患は、移植片の移植に関連する。移植片の移植に関連する疾患の例としては、限定されないが、移植拒絶、慢性移植拒絶、亜急性移植拒絶、超急性移植拒絶、急性移植拒絶、同種移植拒絶、異種移植拒絶および移植片対宿主病(GVHD)が挙げられる。
アレルギー疾患
【0256】
アレルギー疾患の例としては、限定されないが、喘息、蕁麻疹、皮膚の掻痒、花粉アレルギー、イエダニアレルギー、毒アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学物質アレルギー、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー、動物の鱗屑アレルギー、イラクサアレルギー、ツタウルシアレルギーおよび食物アレルギーが挙げられる。
非悪性血液疾患
【0257】
非悪性血液疾患の例としては、限定されないが、貧血、骨髄障害、深部静脈血栓症/肺塞栓、先天性赤芽球癆貧血、ヘモクロマトーシス、血友病、免疫血液障害、鉄代謝障害、鎌状細胞疾患、サラセミア、血小板減少症およびフォンウィルブランド病が挙げられる。
【0258】
Tcm細胞の抗疾患活性を高めるために、治療すべき疾患に関連する1種類の抗原または複数の抗原を選択し、治療のために抗原特異的なTcm細胞を生成することが有益である。
【0259】
したがって、一実施形態によれば、本方法は、(a)前記疾患に関連する1種類の抗原または複数の抗原の存在について、被験体の生体サンプルを分析することと、(b)前記疾患に関連する1種類の抗原または複数の抗原に対し、抗原反応性細胞を濃縮するように、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非GvHD誘発細胞の単離された集合を生成することと、(c)前記被験体に、治療に有効な量の(b)の非GvHD誘発細胞の単離された集合を投与することによって、前記被験体の疾患を治療することとを含む。
【0260】
本明細書で使用される場合、「生体サンプル」は、被験体から誘導される流体サンプルまたは組織サンプルを指す。「生体サンプル」の例としては、限定されないが、全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液、組織生検、および呼吸、腸および生殖器官の種々の外部分泌、涙、唾液、乳および白血球細胞、組織、細胞培養物、例えば、一次培養物が挙げられる。
【0261】
このような生体サンプルを得る方法は、当該技術分野で知られており、限定されないが、標準的な血液回収手順、尿の収集、腰椎穿孔が挙げられる。
【0262】
生体サンプルにおいて1種類の抗原または複数の抗原の存在を決定することは、当該技術分野で知られている任意の方法、例えば、血清学によって(病原体の存在について試験する)、細菌培養、細菌感受性試験、真菌、ウイルス、マイコバクテリウムおよび/または寄生生物の試験(AFB試験)、電気泳動、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット分析および蛍光活性化セル選別(FACS)によって行われてもよい。
【0263】
分析が行われると、1種類の抗原または複数の抗原が選択され、上述のように、疾患に特異的な1種類の抗原または複数の抗原(例えば、腫瘍抗原、ウイルス性抗原、細菌性抗原など)を用いてメモリーT細胞の集合からTcm細胞が作られ、これを、治療のために被験体に投与する。
【0264】
上述のように、本発明のTcm細胞は、ベト活性を付与する。したがって、本発明のTcm細胞を、細胞または組織の移植のための補助療法として使用してもよい。本発明のTcm細胞は抗疾患活性も付与するため、本発明の方法は、細胞または移植の生着を促進しつつ、同時に、被験体において疾患に対して有利に適用することができる。
【0265】
血漿、本明細書で使用される場合、「細胞または組織の移植」との句は、身体の細胞(例えば、1つの細胞または細胞群)、または組織(例えば、固形組織/臓器または軟組織、全体または一部が移植されてもよい)を指す。本教示に従って移植され得る例示的な組織または臓器としては、限定されないが、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、腸およびリンパ系/造血組織(例えば、リンパ節、パイエル板、胸腺または骨髄)が挙げられる。本教示に従って移植され得る例示的な細胞としては、限定されないが、未熟な造血細胞が挙げられ、これは、幹細胞、心筋細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、脾臓細胞、肺細胞、脳細胞、腎臓細胞、腸/胃細胞、卵巣細胞、皮膚細胞(例えば、これらのいずれかの細胞の単離された集合)を含む。さらに、本発明は、臓器全体、例えば、腎臓、心臓、肝臓または皮膚などの移植も包含する。
【0266】
用途に応じて、本方法は、被験体と同系または非同系の細胞または組織を用いて行われてもよい。
【0267】
本発明のある実施形態によれば、被験体とドナーは、両方ともヒトである。
【0268】
用途および利用可能な供給源に応じて、本発明の細胞または組織は、出生前の生物、出生後の生物、成体ドナーまたは死体ドナーから得られてもよい。さらに、必要な用途に応じて、細胞または組織は、ナイーブであってもよく、または遺伝的に改変されていてもよい。このような決定因子は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0269】
当該技術分野で知られている任意の方法を使用し、(例えば移植のための)細胞または組織を得てもよい。
【0270】
細胞または組織を被験体に移植することは、例えば、細胞または組織の種類、レシピエントの疾患の種類、段階または重篤度(例えば、臓器不全)、被験体に固有の物理的または生理学的なパラメータ、および/または望ましい治療結果などの種々のパラメータに依存して、多くの様式で行われてもよい。
【0271】
本発明の細胞または組織の移植片の移植は、その用途に応じて、種々の解剖学的位置のいずれかへの細胞または組織の移植片の移植によって行われてもよい。細胞または組織の移植は、同所の解剖学的位置に移植されてもよく(移植のための通常の解剖学的位置)、または異所の解剖学的位置に移植されてもよい(移植のための異常な解剖学的位置)。用途に応じて、細胞または組織の移植は、有利には、腎被膜下、腎臓内、精巣の脂肪、皮下組織、大網、門脈、肝臓、脾臓、心腔、心臓、胸腔、肺、皮膚、膵臓、および/または腹腔内に移植されてもよい。
【0272】
例えば、本教示の肝臓組織は、肝臓、門脈、腎被膜、皮下組織、大網、脾臓、胃の中の空間に移植されてもよい。これらのような種々の解剖学的位置への肝臓の移植は、一般的に、当該技術分野では、肝臓移植による治療で修正可能な疾患(例えば、肝不全)を治療するために実施される。同様に、本発明の膵臓組織への移植は、有利には、組織を門脈、肝臓、膵臓、精巣の脂肪、皮下組織、大網、腸係蹄(小腸のU字型ループの漿膜下組織)および/または腹腔内に移植することによって行われてもよい。膵臓組織の移植を使用し、膵臓移植を介する治療によって修正可能な疾患(例えば糖尿病)を治療してもよい。同様に、例えば、腎臓、心臓、肺または皮膚組織などの組織の移植は、例えば、腎不全、心不全、肺不全または皮膚損傷(例えば、火傷)を患うレシピエントを治療する目的のために、上述の解剖学的位置に行われてもよい。単離された細胞が移植される場合、このような細胞は、例えば、静脈内経路、気管内経路、腹腔内経路または経鼻経路によって投与されてもよい。
【0273】
また、本発明の方法は、例えば、未熟な造血細胞の移植を必要とする疾患を患うレシピエントを治療するために使用されてもよい。
【0274】
後者の場合に、例えば、ドナーの骨髄、動員された末梢血(例えば、白血球除去療法による)、胎児肝臓、卵黄嚢および/または臍帯血に由来していてもよい未熟な自家性、同種異系または異種の造血細胞(幹細胞を含む)は、疾患を患うレシピエントに移植されてもよい。一実施形態によれば、未熟な造血細胞は、T細胞が枯渇したCD34+未熟造血細胞である。このような疾患としては、限定されないが、白血病[例えば、急性リンパ性、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性プレB細胞、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球細胞性、単球性、急性骨髄性(acute myelogenous)、急性骨髄性(acute myeloid)、好酸球増多を伴う急性骨髄性、B細胞、好塩基性、慢性骨髄性、慢性B細胞、好酸球性、フレンド、顆粒球性または骨髄球性、急性骨髄球性白血病(AML)または慢性骨髄球性白血病(CML)、ヘアリー細胞、リンパ球性、巨核芽球性、単球性、単球性-マクロファージ、骨髄芽球性、骨髄性、骨髄単核性、血漿細胞、プレB細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系新生物、骨髄性悪性腫瘍の傾向、急性非リンパ球性白血病、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、T細胞急性リンパ球性白血病(T-ALL)およびB細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)]、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞、バーキット、皮膚T細胞、組織球性、リンパ芽球性、T細胞、胸腺)、重症複合免疫不全症候群(SCID)(アデノシンデアミナーゼ(ADA)を含む)、大理石骨病、無形成性貧血、ゴーシェ病、サラセミアおよび他の先天性または遺伝的に決定される造血性異常が挙げられる。
【0275】
細胞移植のための当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、例えば、限定されないが、細胞注入(例えば、静脈内)によって、または腹腔内経路によって、本発明の未熟な自家性、同種異系または異種の造血細胞をレシピエントに移植してもよいことが理解されるだろう。
【0276】
場合により、本発明の細胞または組織の移植片が、欠陥のある臓器を有する被験体に移植される場合、移植片の最適な成長、被験体の解剖学/生理学との一体化を可能にするために、まず、被験体から欠陥のある臓器を少なくとも部分的に除去することが有利な場合がある。
【0277】
一実施形態によれば、細胞または組織の移植は、同種異系のドナーに由来する。一実施形態によれば、細胞または組織の移植は、HLAが同一の同種異系のドナーから誘導されるか、またはHLAが非同一の同種異系のドナーから誘導される。一実施形態によれば、細胞または組織の移植は、異種のドナーから誘導される。
【0278】
一実施形態によれば、細胞または組織の移植およびTcmの単離された集合は、同じ(例えば、非同系の)ドナーから誘導される。
【0279】
一実施形態によれば、細胞または組織の移植およびTcmの単離された集合は、異なる(例えば、非同系の)ドナーから誘導される。したがって、細胞または組織の移植は、Tcm細胞と非同系であってもよい。
【0280】
一実施形態によれば、未熟な造血細胞とTcm細胞の単離された集合は、同じ(例えば、非同系の)ドナーから誘導される。
【0281】
一実施形態によれば、未熟な造血細胞とTcm細胞の単離された集合は、異なる(例えば、非同系の)ドナーから誘導される。したがって、未熟な造血細胞は、Tcm細胞と非同系であってもよい。
【0282】
本発明の方法は、被験体がこのような同時移植の手技によって有利な影響を受け得る場合には、いくつかの臓器(心臓と肺組織)の同時移植も想定している。
【0283】
一実施形態によれば、同時移植は、未熟な造血細胞と固形組織/臓器または多くの固形臓器/組織の移植を含む。
【0284】
一実施形態によれば、未熟な造血細胞と固形臓器は、同じドナーから得られる。
【0285】
別の実施形態によれば、未熟な造血細胞と固形臓器/組織または臓器/組織は、異なる(例えば非同系の)ドナーから得られる。
【0286】
一実施形態によれば、未熟な造血細胞は、固形臓器の移植の前に、固形臓器の移植と同時に、または固形臓器の移植の後に移植される。
【0287】
ある実施形態によれば、まず、造血キメラ現象が、本発明のTcm細胞と組み合わせた未熟な造血細胞の移植によって、被験体に導入され、同じドナーから移植された他の組織/臓器の耐性を生じさせる。
【0288】
ある実施形態によれば、本発明のTcm細胞は、それ自体が、同じドナーから移植される、移植した組織/臓器の拒絶を減らすために使用される。
【0289】
本教示に従う被験体への細胞または組織の移植片の移植の後、標準的な医療の実施に従って、種々の標準的な技術のいずれか1つに従って臓器の成長機能と免疫適合性を監視するように助言が可能である。例えば、移植後に、標準的な膵臓機能試験(例えば、血中インスリンレベルの分析)によって、膵臓組織移植の機能を監視してもよい。同様に、肝臓組織の移植は、移植後に、標準的な肝臓機能試験(例えば、血清アルブミンレベル、総タンパク質、ALT、ASTおよびビリルビンの分析、血液凝固時間の分析)によって監視されてもよい。細胞または組織の構造的な成長は、コンピュータ断層撮影または超音波撮像によって監視されてもよい。
【0290】
移植の内容に応じて、細胞または組織の移植片の生着を容易にするために、本方法は、さらに、有利には、移植の前に被験体を亜致死、致死または超致死の状態に調整することを含んでいてもよい。
【0291】
本明細書で使用される場合、「亜致死」、「致死」、「超致死」との用語は、本発明の被験体を調整することに関する場合、それぞれ、被験体の代表的な集合に適用される場合、典型的には、通常の無菌条件で、集合の本質的に全てが非致死状態、ある程度が致死だが、集合の全てではない状態、または集合の本質的に全てが致死状態になる、骨髄毒性および/またはリンパ細胞傷害性の治療を指す。
【0292】
本発明のいくつかの実施形態によれば、亜致死、致死または超致死に調整することは、全身照射(TBI)、全リンパ系照射(TLI、すなわち、全てのリンパ節、胸腺および脾臓への曝露)、部分的な身体照射(例えば、肺、腎臓、脳などへの特定的な曝露)、骨髄破壊による調整および/または骨髄を破壊しない調整を含み、例えば、限定されないが、共刺激による遮断、化学療法剤および/または抗体免疫治療を含む異なる組み合わせを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、調整することは、上述の調整するプロトコルのいずれかの組み合わせを含む(例えば、化学療法剤とTBI、共刺激による遮断と化学療法剤、抗体免疫治療と化学療法剤など)。
【0293】
一実施形態によれば、TBIは、0.5~1Gy、0.5~1.5Gy、0.5~2.5Gy、0.5~5Gy、0.5~7.5Gy、0.5~10Gy、0.5~15Gy、1~1.5Gy、1~2Gy、1~2.5Gy、1~3Gy、1~3.5Gy、1~4Gy、1~4.5Gy、1~1.5Gy、1~7.5Gy、1~10Gy、2~3Gy、2~4Gy、2~5Gy、2~6Gy、2~7Gy、2~8Gy、2~9Gy、2~10Gy、3~4Gy、3~5Gy、3~6Gy、3~7Gy、3~8Gy、3~9Gy、3~10Gy、4~5Gy、4~6Gy、4~7Gy、4~8Gy、4~9Gy、4~10Gy、5~6Gy、5~7Gy、5~8Gy、5~9Gy、5~10Gy、6~7Gy、6~8Gy、6~9Gy、6~10Gy、7~8Gy、7~9Gy、7~10Gy、8~9Gy、8~10Gy、10~12Gyまたは10~15Gyの範囲内の1回の照射、またはフラクション化した照射を含む。
【0294】
特定の実施形態によれば、TBIは、1~7.5Gyの範囲内の1回の照射、またはフラクション化した照射を含む。
【0295】
一実施形態によれば、調整することは、被験体を超致死状態で(例えば骨髄破壊状態で)調整することによって行われる。
【0296】
または、調整することは、被験体を致死または亜致死の状態に調整することによって、例えば、被験体を骨髄を破壊する状態または骨髄を破壊しない状態に調整することによって、行われてもよい。
【0297】
一実施形態によれば、調整することは、骨髄を破壊する薬(例えば、ブスルファンまたはメルファラン)または骨髄を破壊しない薬(例えば、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビン)を用いて被験体を調整することによって行われる。
【0298】
被験体を調整するために使用可能な、調整する薬剤の例としては、限定されないが、照射、薬理学的薬剤および耐性誘発性細胞(本明細書に記載するような)が挙げられる。
【0299】
薬理学的薬剤の例としては、骨髄毒性薬、リンパ細胞傷害性薬および免疫抑制薬が挙げられる(以下に詳細に記載)。
【0300】
骨髄毒性薬の例としては、限定されないが、ブスルファン、ジメチルミレラン、メルファランおよびチオテパが挙げられる。
【0301】
これに加えて、またはこれに代えて、本方法は、さらに、細胞または組織の移植の前に、移植と同時に、または移植の後に、免疫抑制計画を用いて被験体を調整することをさらに含んでいてもよい。
【0302】
適切な種類の免疫抑制計画の例としては、免疫抑制薬、耐性誘発性細胞の集合(例えば、本明細書で上に詳細に記載したように、Tcm細胞)の投与および/または免疫抑制照射を含む。
【0303】
移植のための適切な免疫抑制計画を選択し、投与するための十分なガイダンスは、当該技術分野のあ文献内に与えられている(例えば、Kirkpatrick CH.およびRowlands DT Jr.,1992.JAMA.268、2952;Higgins RM.ら、1996.Lancet 348、1208;Suthanthiran M.およびStrom TB.,1996.New Engl.J.Med.331、365;Midthun DE.ら、1997.Mayo Clin Proc.72、175;Morrison VA.ら、1994.Am J Med.97、14;Hanto DW.,1995.Annu Rev Med.46、381;Senderowicz AM.ら、1997.Ann Intern Med.126、882;Vincenti F.ら、1998.New Engl.J.Med.338、161;Dantal J.ら、1998.Lancet 351、623を参照のこと)。
【0304】
好ましくは、免疫抑制計画は、少なくとも1つの免疫抑制剤を被験体に投与することからなる。
【0305】
免疫抑制剤の例としては、限定されないが、タクロリムス(FK-506またはフジマイシンとも呼ばれる、商品名Prograf、Advagraf、Protopic)、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、プレドニゾン、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリンA、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン)、金塩、D-ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(REMICADE)、エタネルセプト、TNFαブロッカー、炎症性サイトカインを標的とする生物学的薬剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。NSAIDの例としては、限定されないが、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サラサレート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、ナプロキセン、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、Cox-2阻害剤、トラマドール、ラパマイシン(シロリムス)およびラパマイシン類似体(例えば、CCI-779、RAD001、AP23573)が挙げられる。これらの薬剤を個々に投与してもよく、または組み合わせて投与してもよい。
【0306】
移植の種類にかかわらず、移植拒絶および移植片対宿主病を避けるために、本発明の方法は、新規なTcm細胞を利用する(本明細書で上に詳細に記載した通り)。
【0307】
本発明の方法によれば、これらのTcm細胞は、細胞または組織の移植と同時に、この移植の前に、または移植の後に投与される。
【0308】
Tcm細胞は、細胞移植のための技術分野で知られている任意の方法によって、例えば限定されないが、細胞注入(例えば、静脈内)によって、または腹腔内経路によって、投与されてもよい。
【0309】
本発明の実施形態のTcm細胞は、有機体にそのまま投与されてもよく、または適切な担体または賦形剤と混合した医薬組成物で投与されてもよい。
【0310】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本明細書に記載の1つ以上の活性成分と他の化学成分(例えば、生理学的に適した担体および賦形剤)との調製物を指す。医薬組成物の目的は、有機体への化合物の投与を容易にすることである。
【0311】
ここで、「活性成分」との用語は、生物学的効果について責任を負うTcm細胞を指す。
【0312】
以下、「生理学的に許容される担体」および「医薬的に許容される担体」との句は、相互に置き換え可能に使用されてもよく、有機体に顕著な刺激を引き起こさず、投与される化合物の生体活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。アジュバントは、これらの句に含まれる。
【0313】
ここで、「賦形剤」との用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために、医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類およびさまざまなデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0314】
薬物を配合し、投与するための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.(イーストン、PA)、最新版の中に見出すことができ、本明細書に参考として組み込まれる。
【0315】
適切な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に、経鼻、腸または非経口送達(筋肉内、皮下および髄内への注射、ならびにくも膜下、直接脳室内、心腔内、例えば、右または左の心室腔、共通の冠状動脈、静脈内、腹腔内、鼻内または眼球内への注射を挙げ得る。
【0316】
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来の方法としては、脳神経外科的戦略(例えば、大脳内注射または脳室内注入);薬剤の分子操作(例えば、BBBの内因性輸送経路の1つを活用しようとする企てにおいて、それ自体はBBBを通過することができない薬剤と組み合わせて内皮細胞表面分子への親和性を有する油相ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生);薬剤の脂質溶解度を高めるように設計された薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤を脂質またはコレステロール担体に接合);高浸透圧破壊によって、BBBの一体性を一時的に破壊すること(マンニトール溶液を頸動脈に注入することから生じるか、またはアンギオテンシンペプチドなどの生体活性薬剤の使用によって生じる)が挙げられる。しかし、これらそれぞれの戦略には制限があり、例えば、侵襲性の外科手技に関連する固有のリスク、内因性輸送系に固有の制限によって生じる大きさの制限、CNSの外側で活性であり得る担体モチーフで構成されるキメラ分子の全身性投与に関連する、潜在的に望ましくない生体での副作用、BBBが破壊される脳の領域内の脳損傷のリスクの可能性があり、これらにより、最適な送達方法とはなっていない。
【0317】
または、医薬組成物を、全身様式ではなく、例えば、患者のある組織領域に医薬組成物を直接注射することによって、局所的に投与してもよい。
【0318】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当該技術分野でよく知られたプロセス、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル封入、封入または凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。
【0319】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための医薬組成物は、活性成分から調製物への加工を容易にし、医薬的に使用することが可能な賦形剤および補助物質を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路に依存して変わる。
【0320】
注射のために、医薬組成物の活性成分は、水溶液に、好ましくは、生理学的に適合性のバッファー、例えば、Hank溶液、Ringer溶液または生理学的塩緩衝液に配合されてもよい。経粘膜投与のために、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0321】
経口投与のために、医薬組成物は、活性化合物と、当該技術分野でよく知られている医薬的に許容される担体とを合わせることによって、容易に配合することができる。このような担体によって、医薬組成物を、患者が経口摂取するための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などに配合することができる。経口使用のための薬理学的調製物は、固体の賦形剤を用いて製造し、場合により、得られた混合物を粉砕し、所望な場合には適切な補助物質を加えた後に顆粒の混合物を処理し、錠剤または糖衣錠のコアを得ることができる。適切な賦形剤は、特に、フィラー、例えば、糖類(ラクトース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む)、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロース;および/または生理学的に許容されるポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)である。所望な場合、例えば、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を加えてもよい。
【0322】
糖衣錠コアは、適切なコーティングを伴って与えられる。この目的のために、濃縮糖溶液を使用してもよく、この溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒、または溶媒混合物を含んでいてもよい。識別のために、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0323】
経口で使用可能な医薬組成物としては、ゼラチンから作られるプッシュフィットカプセル、ゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作られる軟らかい密封したカプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、フィラー、例えば、ラクトース、バインダー、例えば、デンプン、滑沢剤、例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムと、場合により安定剤を含む混合物の状態で活性成分を含有していてもよい。軟質カプセルにおいて、活性成分を、例えば、脂肪族油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁してもよい。これに加え、安定化剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、選択した投与経路に適した投薬量でなければならない。
【0324】
口腔投与のために、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチ剤の形態をしていてもよい。
【0325】
経鼻吸入による投与のために、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための活性成分は、簡便には、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)を用い、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量した量を運ぶためのバルブを設けることによって決定されてもよい。カプセルおよびカートリッジ、例えば、ディスペンサに使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように配合されてもよい。
【0326】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続静注による非経口投与のために配合されてもよい。注射のための製剤は、単位剤形で(例えば、アンプルで)、または場合により防腐剤を添加した複数回投薬容器で提示されてもよい。組成物は、油性または水性のビヒクルの懸濁物、溶液またはエマルションであってもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの配合薬剤を含んでいてもよい。
【0327】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態での活性調製物の水溶液を含む。さらに、活性成分の懸濁物は、適切な場合、油性または水性の注射用懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪族油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を上げる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランを含んでいてもよい。場合により、懸濁物は、高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、適切な安定化剤または活性成分の溶解度を上げる薬剤を含んでいてもよい。
【0328】
または、活性成分は、使用前の適切なビヒクルを用いた構成(例えば、滅菌のパイロジェンフリー水性溶液)のための粉末形態であってもよい。
【0329】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、例えば、従来の坐剤基剤、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドを用い、直腸組成物(例えば、坐剤または保持浣腸)で配合されてもよい。
【0330】
本発明のいくつかの実施形態で使用するのに適した医薬組成物としては、意図する目的を達成するのに有効な量で活性成分を含む組成物が挙げられる。さらに特定的には、治療に有効な量は、ある障害(例えば、悪性疾患または非悪性疾患)の症状を予防し、軽減し、または改善するか、または治療される被験体の生存を延ばすのに効果的な活性成分(Tcm細胞)の量を意味する。
【0331】
治療に有効な量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0332】
本発明の方法で使用される任意の調製物の場合、治療に有効な量または投薬量は、最初に、in vitroの細胞培養アッセイから概算することができる。例えば、投薬量は、所望な濃度またはタイターを達成するために、動物モデルで配合されてもよい。このような情報を使用し、ヒトに有用な用量をさらに正確に決定することができる。
【0333】
本明細書に記載される活性成分の毒性および治療効能は、in vitroで、細胞培養物で、または実験動物で、標準的な医薬手順によって決定することができる。これらのin vitro、細胞培養アッセイ、動物実験から得られたデータを、ヒトに使用するある範囲の投薬量を配合する際に使用してもよい。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して変動してもよい。実際の製剤、投与経路、投薬量は、患者の状態という観点で、個々の医師が選択することができる。(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Ch.1 p.1を参照。)
【0334】
投薬量および投薬間隔は、生物学的効果を誘発するか、または抑制するのに十分である豊富なレベルの活性成分を与えるように、個々に調節されてもよい(最小有効濃度、MEC)。MECは、それぞれの調製物についてさまざまであるが、in vitroでのデータから概算することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴および投与経路に依存して変わるだろう。検出アッセイを使用し、血漿濃度を決定してもよい。
【0335】
治療される状態の重篤度および応答性に応じて、投薬は、1回の投与または複数回の投与であってもよく、一連の治療は、数日間から数週間続くか、または治癒が起こるか、または疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0336】
治療される状態の重篤度および応答性に応じて、投薬は、1回の投与または複数回の投与であってもよく、一連の治療は、数日間から数週間続くか、または治癒が起こるか、または疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0337】
もちろん、投与される組成物の量は、治療される被験体、罹患の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存して変わるだろう。
【0338】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、所望な場合、パックまたはディスペンサデバイス(例えば、FDAが承認したキット)で提示されてもよく、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含んでいてもよい。パックは、金属箔またはプラスチック箔(例えばブリスターパック)を含んでいてもよい。パックまたはディスペンサデバイスは、投与のための指示書を伴っていてもよい。パックまたはディスペンサは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形態で容器に付けられた注意書きを伴っていてもよく、注意書きは、組成物またはヒトまたは動物への投与の形態で機関によって承認されたものを反映している。このような注意書きは、例えば、処方薬のためのU.S. Food and Drug Administrationによって承認されたラベルであってもよく、または承認された製品添付書類であってもよい。また、上にさらに詳細に示したように、適合性の医薬担体に配合された本発明の調製物を含む組成物が調製され、適切な容器に入れられ、適応する状態の治療のためにラベルが付けられてもよい。
【0339】
本明細書で使用される場合、「約」との用語は、±10%を指す。
【0340】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」およびこれらの活用形は、「~を含むが、それに限定されない」を意味する。
【0341】
「~からなる」との用語は、「~を含み、これに限定される」ことを意味する。
【0342】
「~から本質的になる」との用語は、組成物、方法または構造が、さらなる成分、工程および/または部品が、請求されている組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を大きく変えない場合にかぎり、さらなる成分、工程および/または部品を含んでいてもよいことを意味する。
【0343】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」といった単数形は、その内容が明確に他の意味であることを示していない限り、複数の対象物も含む。例えば、「1つの化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物」との用語は、その混合物を含め、複数の化合物を含んでいてもよい。
【0344】
本出願全体で、本発明の種々の実施形態を、ある範囲の形態で示している場合がある。範囲の形態での記載は、単に簡便に簡略化するためのものであり、本発明の範囲の柔軟性のない限定であると解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、ある範囲の記載は、全ての可能な部分範囲と、その範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、ある範囲の記載(例えば、1~6)は、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲と、その範囲内の個々の数字(例えば、1、2、3、4、5、6)を具体的に開示していると考えるべきである。このことは、その範囲の幅にかかわらず適用される。
【0345】
数値範囲が本明細書に示されている場合はいつでも、示されている範囲内の引用されている数字(分数または積分)を含むことを意味している。第1の示されている数字から第2の示されている数字「の範囲」という句、第1の示されている数字「から」第2の示されている範囲「までの範囲」という句は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、第1の示されている数字と第2の示されている数字と、その間の分数および整数を含むことを意図している。
【0346】
本明細書で使用される場合、「方法」との用語は、限定されないが、化学、医薬学、生物学、生化学および医学分野の実施者によって既に知られているか、既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるこれらの様式、手段、技術および手順を含め、所与の作業を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0347】
本発明の特定の特徴は、明確性のために、別個の実施形態の観点で記載されているが、1つの実施形態で組み合わせて与えられてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、1つの実施形態の観点で記載されている本発明の種々の特徴も、別個に提供されてもよく、または任意の適切な部分的な組み合わせで、または本発明の任意の他の記載されている実施形態に適するものとして提供されてもよい。種々の実施形態の観点で記載されている特定の特徴は、これらの要素がないと実施形態が操作不可能になる場合を除き、これらの実施形態の必須の特徴であると考えるべきではない。
【0348】
上に記載され、以下の特許請求の範囲の章で請求される、本発明の種々の実施形態および態様は、以下の実施例に実験的な裏付けが見出される。
【実施例】
【0349】
ここで、上の記載と合わせて、本発明を非限定的な様式で示す以下の実施例を参照する。
【0350】
一般的に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験手順は、分子学、生化学、微生物学、組換えDNAの技術を含む。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」、Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、Volumes I-III Ausubel,R.M.編集(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley&Sons、New York(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、New York;Birrenら(編集)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、Vol.1-4、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号、第5,272,057号に記載される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、Volume I-III Cellis,J.E.編集(1994);「Current Protocols in Immunology」、Volume I-III Coligan J.E.編集(1994);Stitesら(編集)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994);Mishell and Shiigi(編集)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照。利用可能な免疫アッセイは、特許および科学文献に広く記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号、第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編集(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames, B.D.およびHiggins S.J.編集(1985);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.,およびHiggins S.J.編集(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編集(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」、Vol.1-317、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、San Diego、CA(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996)を参照。これらは全て、本明細書に完全に記載されているかのように参考として組み込まれる。他の一般的な参考文献は、本文書全体で与えられている。その手順は、当該技術分野でよく知られていると考えられ、読者が簡便なように与えられている。ここに含まれる全ての情報は、本明細書に参考として組み込まれる。
一般的な材料および実験手順
動物
【0351】
雌の6~12週齢のBALB/c、FVB、C57BL/6およびBALB/c-NUDEマウスを、Harlan Laboratoriesから得た。コンジェニックB6.SJL、C57BL/6-Tg(CAG-OVA)916Jen/Jマウス(OVAを発現するマウス)およびOT1マウス(H2Kb MHC-Iの観点でオボアルブミン(OVA)の残基257~264を認識するように設計されたトランスジェニック(Tg)TCRを発現する)およびOT1/Rag-/CD45.1を、Weizmann Institute Animal Centerで飼育した。全てのマウスを小さなケージに入れ(殻ケージに5匹の動物)、滅菌餌と酸性水を与えた。The Weizmann Institute of Science Institutional Animal Care and Use Committeeは、これらの試験を承認した。
マウスメモリーT細胞からのベト細胞の生成
【0352】
H2Kb MHC-Iの観点でオボアルブミン(OVA)の残基257~264を認識するように設計されたトランスジェニック(Tg)TCRを発現するOT1マウスを使用した。これらのマウスは、ベトTcm細胞のドナーとして役立った。これらのOT1 CD8 T細胞を収集する前に、マウスに、完全フロイントアジュバント(CFA)と混合したOVA-ペプチドで免疫付与し、OVA-ペプチド+不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いた初期のチャレンジから14日間、免疫付与を促進した。免疫付与から7~14日後に、マウスを屠殺し、その脾臓およびリンパ節を取り出し、粉砕し、磁気ビーズ選別を利用し、一般的なCD8+細胞プールからメモリー細胞(CD8+CD44+)を単離した。得られた集合に対し、サイトカイン枯渇状態で、OVAを発現するマウスの脾臓から作られた、照射された脾臓細胞と共に培養することによって、サードパーティの刺激を与えた。培養開始から60時間後、野生型(WT)Tcmについて、細胞が以下に記載するようなTcm様表現型(すなわち、既に記載したベトTcm細胞)を発現するようにするため、hIL-15(10ng/ml)を培養物に加え、これは既に実証されているように全脾臓細胞または末梢血単核細胞から調製される[Ophir,E.(2013)、前出])。
ウイルスペプチドをロードしたヒト樹状細胞の生成
【0353】
ウイルスペプチドをロードしたヒト樹状細胞(DC)を、
図4Bに示すように調製した。簡単に言うと、ドナー末梢血単核細胞(PBMC)を培養プレートに播種し、37℃、5%のCO
2/O
2で3時間インキュベートした。上清細胞(T細胞を含む)を捨て、付着した細胞を、サイトカインIL-4およびGM-CSFを添加し、(同じ培養条件で)さらに72時間インキュベートした。3日後、浮遊細胞を集め(未熟な樹状細胞)、播種し、DCを成熟させるために、INF-γ、IL-4、GM-CSFおよびLPSといったサイトカインと共に、一晩インキュベートした。4日目に、付着した細胞(成熟DC、すなわち、mDC)を剥がし、ウイルスペプチドのカクテルを加え、37℃で1時間インキュベートした。ウイルスカクテルは、EBV、CMVおよびアデノウイルス(Adv)の7種類のペプミックスを含んでいる。ペプミックスは、JPT Technologies(ベルリン、ドイツ)から購入した、目的抗原の全タンパク質配列の11アミノ酸が重複している15マーである。EBV(LMP2、BZLF1、EBNA1)、Adv-(ペントン、ヘキソン)およびCMV-(pp65、IE-1)に及ぶペプミックスを使用した。次いで、ウイルスペプチドをロードしたヒトmDCに30Gyを照射し、これを以下に記載したようにT細胞フラクションに加えた。
ウイルスペプチドを用いたヒト抗サードパーティTcm細胞の生成
【0354】
まず、CD4+およびCD56+細胞の細胞ドナーから得られた末梢血単核細胞(PBMC)を枯渇させることによって、抗サードパーティヒトベト細胞を生成した(Milteni Biotecから得た磁気ビーズを用いた磁気セル選別を用いる)。
【0355】
細胞の残りの集合を、(同じ細胞ドナーの)照射した(30Gy)樹状細胞と一緒に培養し、ここで、樹状細胞は、サードパーティ抗原(例えば、EBV、CMVおよびアデノウイルスを含むウイルス性抗原カクテル)を発現するように刺激を受けていた。培養の最初の3日間、細胞にIL-21のみを追加し、次いで、+3日目から+9日目まで、IL-21、IL-15およびIL-7を培養物に加えた。
ウイルスペプチドを用いた、メモリーT細胞からのヒトベトTcm細胞の生成
【0356】
まず、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞の細胞ドナーから得られた末梢血単核細胞(PBMC)を枯渇させることによって、ヒトメモリー細胞からベト細胞を生成した(Milteni Biotecから得た磁気ビーズを用いた磁気セル選別を用いる)。この細胞の残りの集合は、CD8+CD45RO+メモリーT細胞を含んでいた。次に、メモリーCD8+CD45RO+T細胞を、(同じ細胞ドナーの)照射した(30Gy)樹状細胞と一緒に培養し、ここで、樹状細胞は、抗原(例えば、EBV、CMVおよびアデノウイルスを含むウイルス性抗原カクテル)を発現するように刺激を受けていた。培養の最初の3日間、細胞にIL-21のみを追加し、次いで、+3日目から+9日目まで、IL-21、IL-15およびIL-7を培養物に加えた。
腫瘍ペプチドを用いた、メモリーT細胞からのヒトベトTcm細胞の生成
【0357】
ベト細胞は、まず、完全フロイントアジュバント(CFA)を用い、細胞ドナーを腫瘍ペプチド(例えば、BCR-ABL、ELA2、G250/炭酸脱水酵素IX、HA-1、HA-2、hTERT、MAGE-1、MUC1、NY-ESO-1、PRAME、PR1、PRTN3、RHAMMおよびWT-1、またはこれらの組み合わせ、Molldrem J.Biology of Blood and Marrow Transplantation(2006)12:13-18;Alatrash G.およびMolldrem J.,Expert Rev Hematol.(2011)4(1):37-50)に記載されている通り)で免疫付与し、腫瘍ペプチド+不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いた初期のチャレンジから14日間かけて免疫付与することによって、ヒトメモリー細胞から作られる。次いで、末梢血単核細胞(PBMC)が得られ、これは、CD4+、CD56+およびCD45RA+細胞が枯渇している(Milteni Biotecから得た磁気ビーズを用いた磁気セル選別を用いる)。この細胞の残りの集合は、CD8+CD45RO+メモリーT細胞を含んでいる。次に、メモリーCD8+CD45RO+T細胞を、(同じ細胞ドナーの)照射した(30Gy)樹状細胞と一緒に培養し、ここで、樹状細胞は、腫瘍抗原を発現するように刺激を受けている。培養の最初の3日間、細胞にIL-21のみを追加し、次いで、+3日目から+9日目まで、IL-21、IL-15およびIL-7を培養物に加える。
フローサイトメトリー分析
【0358】
蛍光活性化セル選別(FACS)分析は、Becton Dickinson FACScanto IIを用いて行われ、生成したTcm細胞の純度と表現型(すなわち、CD8+CD45RO+CD62L+およびCD4-CD56-CD45RA-)のレベルを決定した。以下の標識された抗体を用い、細胞を2つのパネルで染色した。
【0359】
パネル1:CD8-フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、CD45RO-フィコエリトリン(PE)、CD62L-アロフィコシアニン(APC)、CD56-APC-Cy7、CD3-Brilliant Violet 711、CD16-PE-Cy7および7AAD-PerCp。
【0360】
パネル2:CD3-Brilliant Violet 711、CD8-FITC、CD45RA-PE-Cy7、CD45RO-APC-Cy7、CD20-PEおよび7AAD-PerCp。
限界希釈分析(LDA)および35S-メチオニン死滅アッセイ
【0361】
異なる精製段階で、例えば、CD4-CD56-(すなわち、濃縮されたCD8+細胞)またはCD4-CD56-CD45RA-(すなわち、メモリー細胞)でPBMCから作られる抗サードパーティTcm培養物内に残留する抗宿主反応性細胞の頻度を評価するために、新鮮なCD4-CD56-CD19-細胞(同種異系のポジティブコントロールとして働く)と比較して、制限希釈分析(LDA)を行った。上述の3種類の試験した細胞調製物を、照射された宿主PBMCに対し、MLR培養物中で5日間培養し(すなわち、バルク培養)、抗宿主活性を誘発させた。5日後、エフェクター細胞をMLR培養物から集め、Ficoll上で分離した。エフェクター細胞を、96ウェルの丸底プレート(入力数あたり16個ずつ)に、異なる希釈率で播種した(範囲、ウェルあたり1~40000個の細胞)。バルクMLRで使用する照射された(30Gy)宿主刺激因子を各ウェルに加えた。限界希釈培養物を使用し、抗宿主シグナルの終点を滴定し、IL-2存在下、エフェクターシグナルを増幅させるために7日間維持した。
【0362】
7日後、35S-メチオニン標識された細胞に対し、標準的な5時間アッセイで細胞傷害性活性を測定した。簡単に言うと、標的細胞として使用する宿主由来のコンカナバリンA調製ブラスト(Sigma、セントルイス、MO)を35S-メチオニンで標識し、試験する誘発されたエフェクター細胞の種々の希釈物と共に播種した。5時間インキュベートした後、16個ずつのサンプルの上清の平均放射活性を計算し、以下の式によって、特異的な溶解物の割合を計算した。100x(平均実験放出度-平均自然放出度)/(平均全放出度-平均自然放出度)。標的細胞によって放出される35S-メチオニンのレベルは、抗宿主活性のレベルを表す死滅レベルを表す。
【0363】
制限希釈培養の読みから頻度を計算するために、以下の式を使用した。lny=-fx+lna(ポアソン分布の0次項を表す)。ここで、yは、非応答培養物の割合であり、xは、培養物あたりの応答する細胞の数であり、fは、応答前駆体の頻度であり、aは、理論的に100%に等しいyの切片である。標的細胞のみを含む16ウェルの平均と3標準偏差の和は、バックグラウンド放射活性のカットオフ値として決定された。カットオフ値を超えている場合、実験ウェルを溶解について陽性であるとスコア付けした。応答する培養物の割合は、正の培養物の割合を計算することによって定義された。データの線形回帰分析を利用して描かれた線の勾配から、CTL-p頻度(f)および標準誤差(SE)を決定した。
IFN-γ-Elispot分析
【0364】
酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイは、単細胞レベルでサイトカインを分泌する細胞の頻度を測定する高感度免疫アッセイであり、これを使用した。具体的には、IFN-γは、活性化されたT細胞およびNK細胞によって主に産生されるため、INF-γ(インターフェロン-ガンマ)ELISpotアッセイを使用し、抗サードパーティTcm培養物内に残留する抗宿主反応性細胞の頻度を評価した。
【0365】
簡単に言うと、96ウェルPVDF膜マイクロタイタープレートの膜表面を、アッセイするサイトカイン(IFN-γ)の特異的なエピトープに結合する捕捉抗体(精製された抗ヒトINF-γ)でコーティングした。16時間のMLRと刺激工程の間、試験する細胞の種々の希釈物(ウェルあたり、1~40,000細胞の範囲)を、照射された抗宿主刺激因子と共にプレートのウェルに播種した。これらは、ウェルの膜表面上に単層を生成した。抗宿主特異的細胞が活性化すると、これらの細胞は、IFN-γを放出し、固定された抗体によって膜表面に直接的に捕捉される。したがって、IFN-γは、培地に拡散する機会が与えられる前に、またはプロテアーゼによって分解され、そばにある細胞の受容体に結合する前に、分泌する細胞の周囲の領域に直接的に「捕捉される」。その後の検出工程は、固定されたIFN-γをImmunoSpotとして視覚化する。ウェルを洗浄して、細胞、屑片および培地成分を除去した後、ヒトIFN-γに特異的なビオチン化抗体をウェルに加えた。この抗体は、IFN-γサイトカインの固有のエピトープと反応性であるため、これを使用し、捕捉されたサイトカインを検出する。結合していないビオチン化抗体を除去するために洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ酵素(HRP)および沈殿基質(例えば、AEC、BCIP/NBT)に接合したストレプトアビジンを用い、検出されたサイトカインを視覚化した。着色した最終生成物(赤色のスポット(HRPの場合))は、典型的には、個々のIFNーγを産生する細胞を表す。スポットを手動で計測した(例えば、実体顕微鏡を用いて)、または自動化されたリーダーを用い、マイクロウェルの画像を捕捉し、スポットの数と大きさを分析した。
【0366】
(実施例1)
同族抗原に対して拡張されたTCRトランスジェニックCD8メモリーT細胞は、完全に同種異系のT細胞が枯渇したBMの生着を顕著に向上させる。
【0367】
メモリーT細胞がGvHDのリスク減少に関連している可能性は、過去10年間にわたって議論されてきた。原理的に、メモリープールは、抗ウイルス性クローンで濃縮されるため、含まれるアロ反応性T細胞のレベルが少なくなるだろう。しかし、きわめて最近、白血病患者へのCD45RA+が枯渇したHSCTを使用しようとする2つの主要な研究で、移植後のGvHD予防を用いた場合であっても顕著なレベルのGvHDが報告された[Bleakley M.ら J Clin Invest.(2015)125(7):2677-89;Triplett、B.M.ら Bone Marrow Transplant.(2015)50(7):968-977]。したがって、抗サードパーティT細胞の活性化および拡張によるT細胞メモリープールからのアロ反応性クローンの枯渇は、CD45RA細胞の枯渇後に残ってしまう残留するGvHDの問題を解決し得る。さらに、一般的なウイルス性抗原ペプチドをサードパーティ刺激として使用すると、アロ活性を枯渇させ、抗ウイルス活性を付与するベトTcmを潜在的に作成することができる。
【0368】
この目的のために、本願発明者らは、既存のメモリーT細胞プールのTCRが指向される特異的なペプチドを用いた刺激を確立することによって、抗サードパーティベトTcm細胞の生成のための以前のプロトコルを改変した。したがって、H2Kb MHC-Iの観点でオボアルブミン(OVA)の残基257~264を認識するように設計されたトランスジェニック(Tg)TCRを発現するOT1マウスを使用し、概念実験の証明をマウスモデルで行った。これらのマウスは、ベトTcm細胞のドナーとして役立った。これらのOT1 CD8 T細胞を収集する前に、マウスに、完全フロイントアジュバント(CFA)と混合したOVA-ペプチドで免疫付与し、OVA-ペプチド+不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いた初期のチャレンジから14日間、免疫付与を促進した(
図1の説明を参照)。免疫付与から7~14日後に、マウスを屠殺し、その脾臓およびリンパ節を取り出し、粉砕し、磁気ビーズ選別を利用し、一般的なCD8
+細胞プールからメモリー細胞(CD8
+CD44
+)を単離した。得られた集合に対し、サイトカイン枯渇状態で、OVAを発現するマウスの脾臓から作られた、照射された脾臓細胞と共に培養することによって、サードパーティの刺激を与えた。培養開始から60時間後、細胞にWT Tcm(すなわち、以下に記載するように、「一般的な」Tcm細胞)について上に記載したようなTcm様表現型を発現させるために、hIL-15(10ng/ml)を培養物に加えた。
【0369】
図2Aに示されるように、メモリー細胞(CD8
+CD44
+)の出発物質の集合から調製されたOT-1 Tcm細胞は、「一般的な」抗サードパーティTcm細胞(すなわち、既に実証されているような全脾臓または末梢血単核細胞から調製される、既に記載したベトTcm細胞)によって誘発されるキメラ現象と同様に、同種異系のT細胞が枯渇した骨髄移植の生着を高めることができた[Ophir,E.(2013)、前出])。まとめると、これらの結果は、同族ペプチドに対して拡張されたCD8
+CD44
+から誘導されるTcm細胞は、実際に、GvHDを起こすことなく、耐性を誘発することができることを強く示している。
【0370】
(実施例2)
CD8メモリーT細胞から作られるTcmベト細胞は、GVHDのリスクを減らしつつ、顕著なベト活性を与える
【0371】
次に、本願発明者らは、OVAで免疫付与した後のB6-WT メモリーCD8 T細胞からTcm細胞を得ようと企てた。この目的のために、C57BL/6マウスを免疫付与した後、CD8+CD44+メモリーT細胞を磁気選別し、全てのOVA刺激因子を用いたTcm生成について同じプロトコルを行った。最初に、本願発明者らは、これらのCD8+CD44+Tcm細胞がGvHDを誘発する能力を、クリニックで以前使用した出発物質であるCD8+CD44+の集合の能力と比較して試験したいと考えた。CD8+CD44+Tcm細胞は、関連するTCRを保有するT細胞クローンのみを選択的に活性化するOVAペプチドを用いた抗原刺激に起因して、アロ反応性クローンが枯渇していると予想された。
【0372】
実際に、CD8
+CD44
+Tcm細胞は、動物モデルにおいて顕著なGvHD症状を誘発せず、一方、サードパーティ活性化を受けていなかったCD8
+CD44
+の新鮮なメモリー細胞は、GvHDに起因して、顕著な致死および体重減少を誘発したことが示された(
図2B~C)。次に、本願発明者らは、これらの細胞が、強度を下げるように調整する(RIC)モデルにおいて耐性を誘発することができるかどうかを評価したいと考えた(
図2Dに示される)。
図2Eからわかるように、CD8
+CD44
+Tcmは、C57BL-Nude-BMを、5Gy TBIで調整されたBalb/cレシピエントに移植した後のキメラ現象の顕著な向上を示した。
【0373】
(実施例3)
ウイルス性抗原を用いた抗サードパーティヒトTcm細胞の生成
【0374】
本願発明者らは、アロ活性の枯渇のための2段階の磁気選別手法を用い、CD4-CD56-細胞の出発物質の集合から、GvHDのリスクを最小限にしつつ、ヒト由来の抗サードパーティベト細胞を生成するためのプロトコルを既に開発している。このプロトコルは、3種類の細胞ドナーを用いて開発され、サードパーティドナーは、GvHDを予防するために、HLAクラスI対立遺伝子が、いずれも宿主のHLAクラスI対立遺伝子と共通ではないように選択された。
【0375】
現在の実験では、マウス概念実証実験について上に記載したのと同様に、本願発明者らは、ベトTcm細胞を調製するために、天然に存在するメモリーCD8細胞を出発物質として使用することを利用した。これらの細胞は、ナイーブ細胞と比較して、GvHD誘発の傾向が小さいことが報告されているからである。この選択肢は、近年、ナイーブT細胞の枯渇のためのGMPグレードのCD45RA磁気ビーズのリリースにより、現実のものとなった。上述のように、上の「分野と背景技術」の章において、CD45RA-細胞を注入する手法は、白血病患者の2つの臨床試験で試験されている[Bleakley M.ら(2015)、前出、Triplett、B.M.ら(2015)、前出]しかし、GvHDは、防がれておらず、何人かの患者は、移植後に免疫抑制治療がされていても、重篤な形態のGvHDを示している。これらのデータから、本願発明者らは、特定の抗原に対するCD45RAが枯渇したCD8 T細胞の刺激が、全てのGvH反応性を完全に失わせ得る可能性を評価した。このメモリープール中の大部分の細胞のTCRは、一般的なウイルス性抗原および細菌性抗原に指向しているため、通常は宿主アロ反応性はほとんどないと思われるため、本願発明者らは、刺激因子としてドナーDC(すなわち、Tcm細胞と同じ細胞ドナー)にロードしたウイルス性抗原ペプチド(例えば、CMV、EBVおよびアデノウイルス)を簡便に使用することができると予想した。この手法を用い、これらの細胞の可能な抗ウイルス活性の利点が、これらのベト活性に加えて得られると思われ、このことは、ウイルスの再活性化が一般的に有害な事象である移植設定にとって特に魅力的な属性である。
【0376】
この予想に取り組むために、予備実験を開始した。予備実験では、ベトTcm細胞の同じ培養条件を使用したが、但し、抗原に対する刺激は、サードパーティDCのためのサードHLAを渇望するドナーの代わりに、3種類の著名なウイルス(EBV、CMVおよびアデノウイルス)のウイルスペプチド混合物を用いて刺激を与えたドナーDCに対して行われた。注目すべきことに、この実験は、既に記載しているCD4
-CD56
-集合から開始した(すなわち、CD45RA
+細胞は除去しなかった)。
図3A~3Bからわかるように、ベトTcm細胞は、この抗ウイルス刺激に応答して十分に成長し、+9日目に10倍の拡張を示し、高い割合の細胞(93.2%)がベトTcm表現型を示している。
【0377】
限界希釈分析(LDA)によって分析される抗宿主反応性を
図3C~Dに示し、関連するパラメータを以下の表2にまとめている。結果は、この方法によって、渇望するHLAドナーに対する「一般的な」サードパーティ活性化を用いた以前の結果と同様に、宿主アロ反応性クローンの2logの枯渇が得られたことを示していた。これらの結果を、さらに、IFNγ-Elispot分析(バルク培養の後に行われた)によって補強し、宿主活性化が起こると、新鮮な細胞(CD4
-CD56
-CD19
-)は、約25,000スポット/10
6 T細胞を生成し、ベトTcm細胞培養物ではスポットは検出することができなかった(データは示していない)。
【0378】
表2:ウイルスペプチドに対して指向するベトTcm細胞を生成する前および後の抗宿主T細胞の枯渇
【0379】
(実施例4)
ウイルス性抗原を用いた、メモリーT細胞からのヒトベト細胞の生成
【0380】
次に、本願発明者らは、ドナー(すなわち、Tcm細胞と同じ細胞ドナーの)DC上に提示されたウイルス性抗原に対して活性化された、CD45RAが枯渇した集合から成長したTcm細胞の反応性を試験した(
図4Aおよび
図4Bに示される)。
【0381】
この出発物質(CD4
-CD56
-CD45RA
-細胞)の集合から成長したベトTcm細胞の反応性を、LDA死滅アッセイを用いて試験した。この結果からわかるように、メモリー細胞から作られるベト細胞は、抗宿主反応性を発揮しないことが明らかである(
図5A~Cおよび
図6)。
【0382】
合わせると、これらの結果は、刺激因子としての抗ウイルスペプチドの手法を、GvHD傾向が比較的低いことが知られているCD45RAが枯渇した応答性細胞(例えば、CD4-CD56-CD45RA-細胞)の出発物質の集合に適用することができることを強く示唆している。示されているように、この細胞集合は、さらに、抗ウイルス性刺激を受けつつ、推定抗宿主クローンでさらに希釈されてもよく、きわめて安全で、GvHDを含まない細胞調製物を得ることができた。
【0383】
(実施例5)
非ウイルス性抗原を用いた、メモリーT細胞からのヒトベト細胞の生成
【0384】
本願発明者らは、癌(例えば、固形腫瘍または造血悪性腫瘍)と共に同定されたペプチドを含む非ウイルスペプチドに対して刺激を受けたメモリー細胞の出発物質の集合(CD45RA-細胞)からベト細胞を生成する。
【0385】
上述のように、ベト細胞は、ドナーから得たメモリーT細胞(すなわち、CD45RAが枯渇した集合)を、ドナーDC上に提示された腫瘍抗原にさらすことによって生成する。
【0386】
または、ベト細胞は、まず、細胞ドナーを、腫瘍ペプチド(上の「一般的な材料および実験手順」の章に記載)を用い、完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて免疫付与し、腫瘍ペプチド+不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いた初期のチャレンジの後14日間、免疫付与を促進することによって作られる。次に、末梢血単核細胞(PBMC)を被験体から得て、CD4+CD56+CD45RA+細胞が枯渇している。この細胞の残りの集合(すなわち、CD8+CD45RO+メモリーT細胞)を、ドナーDC上に提示された腫瘍抗原と共に培養する。
【0387】
これらの細胞を、残った癌細胞を治療により除去するためにさらに使用してもよい。
【0388】
(実施例6)
抗ウイルス性セントラルメモリーCD8ベトT細胞(Tcm)の大規模生産のための適性製造基準(GMP)プロトコル
【0389】
本願発明者らは、自己抗原提示細胞上に提示されたウイルス性抗原を用い、メモリーT細胞からヒトベト細胞を生成するためのプロトコルを10回、首尾良く繰り返した(
図7)。
図8および
図9A~Hからわかるように、新規プロトコルの細胞の回収率および純度は、非常に再現性があった。
【0390】
本発明を、具体的な実施形態と組み合わせて記載してきたが、多くの変更、改変および変形が当業者には明らかであることは明確である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれるこのような全ての変更、改変および変形を包含することを意図している。
【0391】
本明細書で述べられる全ての刊行物、特許および特許明細書は、それぞれの個々の刊行物、特許および特許明細書が、具体的かつ個々に本明細書に参考として組み込まれるように示されているかのように同程度まで、その全体が本明細書に組み込まれる。加えて、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の従来技術として利用可能であることを認めたものであると解釈すべきではない。章の見出しが使用される程度まで、これらの見出しは、必ずしも限定するものであると解釈すべきではない。