(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】スラリー製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230821BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230821BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2019056461
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅見 圭一
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-145966(JP,A)
【文献】特開2006-341191(JP,A)
【文献】特開2011-210738(JP,A)
【文献】特開2015-035344(JP,A)
【文献】特表2015-500975(JP,A)
【文献】特開2017-100117(JP,A)
【文献】特開2007-132602(JP,A)
【文献】特開2014-234174(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140516(WO,A1)
【文献】特開2012-250145(JP,A)
【文献】特開平03-118872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
H01M 4/04
H01M 10/0562
B01F 21/00-25/90
B01J 4/00-7/02
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と粉体とを混合してスラリーを製造する混合装置と、
フィーダとホッパとを有し、前記フィーダからの粉体を前記ホッパの開口部を介して前記ホッパ内に受け入れて、前記ホッパから前記混合装置に粉体を供給する粉体供給装置と、
少なくとも前記粉体供給装置の
前記開口部を収納する粉体用ドライボックスと、
前記混合装置及び前記粉体用ドライボックスを収納する第1ドライブースと、
を備えるスラリー製造装置。
【請求項2】
前記第1ドライブースを収納する第2ドライブースを備える、請求項1に記載のスラリー製造装置。
【請求項3】
前記第1ドライブースの第1設定露点温度が、前記粉体用ドライボックスの第2設定露点温度よりも高い、請求項1又は2に記載のスラリー製造装置。
【請求項4】
前記粉体用ドライボックスの気圧が前記第1ドライブースの気圧よりも高い、請求項1~3のいずれか1項に記載のスラリー製造装置。
【請求項5】
前記スラリーが、全固体電池の製造に用いられる正極活物質層スラリー、負極活物質スラリー、または固体電解質スラリーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のスラリー製造装置。
【請求項6】
前記粉体が硫化物固体電解質を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のスラリー製造装置。
【請求項7】
前記第1ドライブースの排気部にフィルタが設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のスラリー製造装置。
【請求項8】
前記粉体用ドライボックスに第3露点温度の空気を送り込む除湿ユニットと、
前記粉体用ドライボックスの露点温度を第2設定露点温度に調整するように、前記除湿ユニットから前記粉体用ドライボックスに送り込む前記第3露点温度の空気の第1流量を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記粉体用ドライボックスの露点温度が前記第2設定露点温度以下になると、前記除湿ユニットから前記第1ドライブースに送り込む前記第3露点温度の空気の第2流量の調整、及び、前記粉体用ドライボックスから前記第1ドライブースに送り込む空気の第3流量の調整の少なくともいずれかを行う、請求項1~7のいずれか1項に記載のスラリー製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体と液体とを混合してスラリーを製造するスラリー製造装置が用いられている。特許文献1には、ホッパに供給された粉体と液体とを遠心式分散混合ポンプで吸引・混合する分散システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラリーの材料となる粉体の中には、空気中の水分を吸収して変質したり、固まってしまうものも存在する。そのような粉体を用いて特許文献1の装置でスラリーを製造する場合、以下の問題を生じる。特許文献1の装置では、ホッパの上側の入口は開放されている。そうすると、ホッパに粉体が投入される際や、ホッパに貯留された粉体が撹拌される際に、粉体が周囲の空気の水分を吸収してしまい、スラリーの品質が悪化してしまう。
そこで、粉体が水分を吸収しないように粉体のホッパへの投入部分の装置及び粉体の撹拌部分の装置等の各部の装置を、除湿して低露点温度化したグローブボックス等の密閉容器内に設置することが考えられる。グローブボックスは、内部が外気と遮断されたボックスであり、グローブボックスの外から密閉されたグローブを介して内部に手を挿入可能である。
【0005】
しかし、グローブボックス内の空間は、作業者がグローブを介して作業が行える程度の限られた空間である。さらに、グローブを介した作業のため作業範囲は狭小でありグローブボックス内部への物品の搬入及び排出は、パスボックス(グローブボックスに設けられた開口部)の大きさにより制限される。そのため、粉体のホッパへの投入部分の装置及び粉体の撹拌部分各部の装置等を含む全体の分散装置をグローブボックス内へ露点温度を悪化させること無く配置することが困難である。また、各部の装置をグローブボックスに配置する場合でも、各部の装置に大きさの制限が課されるとともに作業が制限される。さらに、各部の装置それぞれをグローブボックス内に配置すると、各部の装置を連結して分散装置を構成することが困難である。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スラリー品質低下を抑制可能なスラリー製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成1〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の特徴構成は、
液体と粉体とを混合してスラリーを製造する混合装置と、
フィーダとホッパとを有し、前記フィーダからの粉体を前記ホッパの開口部を介して前記ホッパ内に受け入れて、前記ホッパから前記混合装置に粉体を供給する粉体供給装置と、
少なくとも前記粉体供給装置の前記開口部を収納する粉体用ドライボックスと、
前記混合装置及び前記粉体用ドライボックスを収納する第1ドライブースと、
を備える点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、粉体供給装置の開口部が粉体用ドライボックスに収納されているため、粉体が湿った空気に触れる事態を回避し、スラリーの品質悪化を抑制することができる。
【0009】
さらに、混合装置及び粉体用ドライボックスが第1ドライブースに収納されている。よって、粉体供給装置の開口部は、粉体用ドライボックスに収納されるとともに、さらに第1ドライブースに収納されており、粉体と湿った空気との接触をより抑制できる。また、粉体供給装置の開口部に加えて混合装置も第1ドライブースの内に収容されているため、粉体供給装置から混合装置に粉体が供給される場合においても粉体と湿った空気との接触を抑制できる。よって、水分を吸収して品質の悪化した粉体が混合装置に導入されることを抑制し、結果として混合装置で生成されるスラリーの品質が悪化することを抑制できる。
【0010】
〔構成2〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、
前記第1ドライブースを収納する第2ドライブースを備える点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、第1ドライブースが第2ドライブースに収納されているため、第1ドライブース内を外部の空気からさらに隔離できる。これにより、第1ドライブース及び粉体用ドライボックスに収納された粉体供給装置の開口部において粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。また、粉体供給装置から混合装置への粉体の供給の際にも粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。よって、スラリーの品質が悪化することをさらに抑制できる。
【0012】
〔構成3〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、前記第1ドライブースの第1設定露点温度が、前記粉体用ドライボックスの第2設定露点温度よりも高い点にある。
【0013】
粉体用ドライボックスでは、粉体を粉体供給装置に投入する際、粉体を撹拌する際などに粉体が空気に触れる可能性がある。一方、液体と粉体とを混合する混合装置は閉じられた空間からなるため、当該混合装置を収納する第1ドライブースの内部では、粉体が空気に直接露出する可能性が小さい。よって、第1ドライブースに要求される乾燥度は、粉体用ドライボックスに比べて低い。上記の特徴構成のように、第1ドライブースの第1設定露点温度を粉体用ドライボックスの第2設定露点温度よりも高くできるため、ランニングコスト増大を抑制できる。
また、外側から第1ドライブース及び粉体用ドライボックスに向かって段階的に露点温度を低くできる。よって、粉体用ドライボックスの内部の露点温度を低く調整することが容易であり、ランニングコストを低下できる。
【0014】
〔構成4〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、前記粉体用ドライボックスの気圧が前記第1ドライブースの気圧よりも高い点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、粉体用ドライボックスの気圧が第1ドライブースの気圧よりも高いため、第1ドライブースの空気が粉体用ドライボックスに流入することを抑制できる。これにより、粉体用ドライボックス内の粉体供給装置の開口部において、粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。
【0016】
〔構成5〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、前記スラリーが、全固体電池の製造に用いられる正極活物質層スラリー、負極活物質スラリー、または固体電解質スラリーである点にある。
【0017】
上述の通り、上記のスラリー製造装置では、スラリー製造に用いる粉体が湿った空気に触れて品質が悪化することを抑制できる。よって、上記特徴構成のように正極活物質層スラリー、負極活物質スラリー、または固体電解質スラリーの製造に上記のスラリー製造装置を用いることで、これらのスラリーの品質が悪化することを抑制できる。これにより、全固体電池の品質の悪化を抑制できる。
【0018】
〔構成6〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、前記粉体が硫化物固体電解質を含有する点にある。
【0019】
上述の通り、上記のスラリー製造装置では、粉体である硫化物固体電解質によりスラリーを製造する場合に、当該粉体が湿った空気に触れることを抑制できる。よって、上記特徴構成のように粉体として硫化物固体電解質を用いた場合、硫化物固体電解質が湿った空気に触れて有毒の硫化水素が発生することを抑制できる。よって、硫化物固体電解質と湿った空気との接触を抑えた状態でスラリーを製造し、電池を製造することで、出力特性の低下及び寿命の短縮など電池性能の低下を抑制できる。
また、硫化水素の発生を抑制できるため、硫化水素を除去するためのフィルタ装置などの装置を別途設ける必要がないか、あるいは当該装置の駆動を減らしてランニングコストを削減することもできる。
【0020】
〔構成7〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、前前第1ドライブースの排気部にフィルタが設けられている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、臭気及び有害ガス等をフィルタによりろ過することで、第1ドライブースの外に臭気及び有害ガス等が排出されるのが抑制される。
【0022】
〔構成8〕
上記目的を達成するためのスラリー製造装置の更なる特徴構成は、
前記粉体用ドライボックスに第3露点温度の空気を送り込む除湿ユニットと、
前記粉体用ドライボックスの露点温度を第2設定露点温度に調整するように、前記除湿ユニットから前記粉体用ドライボックスに送り込む前記第3露点温度の空気の第1流量を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記粉体用ドライボックスの露点温度が前記第2設定露点温度以下になると、前記除湿ユニットから前記第1ドライブースに送り込む前記第3露点温度の空気の第2流量の調整、及び、前記粉体用ドライボックスから前記第1ドライブースに送り込む空気の第3流量の調整の少なくともいずれかを行う点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、制御部は、粉体用ドライボックスを第2設定露点温度に調整するように、除湿ユニットから粉体用ドライボックスに送り込む第3露点温度の空気の第1流量を調整している。さらに、粉体用ドライボックスの露点温度が所望の第2設定露点温度以下になると、制御部は、除湿ユニットから第1ドライブースに送り込む第3露点温度の空気の第2流量を調整する。これにより、除湿ユニットから粉体用ドライボックスに送り込まれていた第3露点温度の空気の一部が第1ドライブースの露点温度の調整に用いられる。これにより、除湿ユニットからの第3露点温度の空気を、第1ドライブースを第1設定露点温度にするために有効に活用できる。
また、粉体用ドライボックスの露点温度が所望の第2設定露点温度以下になると、制御部は、粉体用ドライボックスから第1ドライブースに送り込む空気の第3流量を調整する。これにより、粉体用ドライボックス内を所望の第2設定露点温度に維持しつつ、粉体用ドライボックス内の空気を、第1ドライブースを所望の第1設定露点温度にするために有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】遠心式の分散混合部を備えた分散システムの概略構成図
【
図7】本体ケーシングの前壁部、ステータ、区画板及びロータの組付構成を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)スラリー製造装置の構成
(1-1)全体構成
本実施形態に係るスラリー製造装置200は、
図1に示されるように、分散システム100と、除湿ユニット233と、粉体用ドライボックス230と、第1ドライブース300と、第2ドライブース310と、制御部Cとを備えて構成されている。
【0026】
(1-2)分散システムの概略構成
以下に分散システム100の各部の構成を簡単に説明し、詳細構成については後で詳述する。
分散システム100は、粉体供給装置Xと、分散混合部Yと、ミキシング機構60と、再循環機構部70と、冷却装置250と、タンク260と、圧力抜き部270とを備えて構成されている。
【0027】
粉体供給装置Xは、フィーダホッパ210と、フィーダ220と、ホッパ31と、定量供給部40(
図2等)とを備えて構成されている。
【0028】
フィーダホッパ210は、上流からドライ搬送される粉体Pを一時的に貯留するホッパである。フィーダホッパ210は、粉体用ドライボックス230に接続されたエア抜き口211を有する。エア抜き口211は、上流からの粉体Pの投入に伴ってフィーダホッパ210の内圧が高まった際に、フィーダホッパ210の内部の乾燥した空気を第1ドライブース300へ排出する。なお、エア抜き口211には逆止弁を設け、フィーダホッパ210に圧力がかかっていない時は、粉体Pが湿気の影響を受けないよう、フィーダホッパ210が閉塞されていることが好ましい。
エア抜き口211の排出口にはフィルタを設け、前述のフィーダホッパ210の内部の乾燥した空気を、当該フィルタを介してエア抜き口211から第1ドライブース300へ排出してもよい。また、エア抜き口211の排出口にフィルタを設け、前述のフィーダホッパ210の内部の乾燥した空気を第1ドライブース300に排出せず、大気に開放しても構わない。
【0029】
フィーダ220は、フィーダホッパ210に貯留された粉体Pを、計量しながら粉体排出口221(開口部の例)から排出する。フィーダ220は例えば、スクリュー式フィーダである。粉体排出口221は、粉体用ドライボックス230の内部に配置されている。粉体排出口221から排出された粉体Pは、ホッパ31の上部開口部31aからホッパ31へ投入される。
【0030】
ホッパ31は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状の部材であって、上部開口部31aから受け入れた粉体Pを下部開口部31bから排出させて、定量供給部40(
図2等)を介してミキシング機構60へ供給する。
【0031】
ミキシング機構60は、タンク260から供給される液体R(あるいはスラリーF)を粉体Pに混合する。
分散混合部Yは、ミキシング機構60で混合された粉体Pと液体Rとを分散混合する。
再循環機構部70は、完全に溶解していない粉体Pを含む液体R(以下、未溶解スラリーFr)を分散混合部Yに循環供給する。
【0032】
冷却装置250は、温度上昇によるスラリーFの変質を抑制するため、分散混合部Yを冷却する装置である。具体的には冷却装置250は、供給された冷水が内部を通流する冷水ジャケットであって、分散混合部Yの本体ケーシング1および再循環機構部70を覆って設けられている。
なお、第1ドライブース300内の露点温度が-40℃(第1設定露点温度)に設定されており、この第1ドライブース300内に冷却装置250が収納されているため、冷却装置250の表面の結露発生を抑制することができ好適である。
【0033】
タンク260は、タンク260内の液体Rを設定流量で分散混合部Yに連続的に供給するように構成されている。よって、タンク260は、液体Rを分散混合部Yに供給する溶媒供給源として機能する。また、タンク260には、再循環機構部70からスラリーFが供給される。よって、タンク260は、スラリーFを回収するスラリー回収源として機能する。
【0034】
圧力抜き部270は、タンク260から排気してタンク260の圧力を低下させる。具体的には圧力抜き部270は気体流路であって、タンク260の内部と粉体用ドライボックス230とをバルブを介して接続する。当該バルブから分岐して、タンク260から外部へ排気する気体流路が設けられ、その気体流路にフィルタ271が配置されている。タンク260から外部へ排気する際、タンク260内の気体はフィルタ271を通って排気される。これにより悪臭や物質の飛散が抑制される。
【0035】
スラリー製造装置200の分散システム100では、概略次の様にしてスラリーFが製造される。粉体供給装置Xから供給された粉体Pと、タンク260からポンプ261により供給された液体R(あるいはスラリーF)とが、ミキシング機構60で混合されて分散混合部Yに供給される。分散混合部Yでは、粉体Pと液体Rとが分散混合され、再循環機構部70へ送られる。再循環機構部70は、完全に溶解していない粉体Pを含む液体R(以下、未溶解スラリーFr)を分散混合部Yに循環供給し、スラリーFをタンク260へ送出する。タンク260の内部のスラリーFは、タンク撹拌モータM4によって撹拌される。
【0036】
(1-3)除湿ユニット
除湿ユニット233は、除湿部233a及び流量調整部233bを有し、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内の空気を除湿する。粉体用ドライボックス230の内部の空気は例えば-80℃の露点温度に調整され、第1ドライブース300の内部の空気は例えば-40℃の露点温度に調整される。このため、除湿部233aは、露点温度が-80℃以下、例えば露点温度が-80℃の空気を供給可能に構成されている。以下では、このような露点温度の関係を例に挙げて説明する。
【0037】
除湿部233aは、例えば露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を、第1流量Q1で流量調整部233bを介して後述の粉体用ドライボックス230に送り込む。流量調整部233bは、制御部Cの制御に応じて第1流量Q1を制御し、粉体用ドライボックス230内の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に調整する。
【0038】
除湿部233aは、例えば露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を、第2流量Q2で流量調整部233bを介して後述の第1ドライブース300に送り込む。流量調整部233bは、制御部Cの制御に応じて第2流量Q2を制御する。
【0039】
流量調整部233bは、制御部Cからの制御に応じて開度が調整可能なダンパーである。流量調整部233bの開度が調整されることで、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込まれる空気の第1流量Q1と、除湿部233aから第1ドライブース300に送り込まれる空気の第2流量Q2とが調整される。
本実施形態では、除湿部233aが送り出す露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気の流量は一定であるものとする。よって、除湿部233aから粉体用ドライボックス230への第1流量Q1と、除湿部233aから第1ドライブース300への第2流量Q2との和は一定である。ただし、除湿部233aが送り出す露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気の流量は一定でなくてもよい。
【0040】
なお、除湿部233aには、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込まれた空気が、後述のダンパ234を介して戻る。また、除湿部233aには、除湿部233aから第1ドライブース300を経た空気が後述のフィルタ301を介して戻る。また、除湿部233aには、除湿部233aから粉体用ドライボックス230、後述のダンパ237、第1ドライブース300を経た空気が後述のフィルタ301を介して戻る。
【0041】
上記では、除湿部233aが送り出す空気の露点温度は-80℃であるが、スラリー製造装置200で扱われる粉体が湿った空気に触れることを抑制できる露点温度であれば特に限定されない。例えば、除湿部233aが送り出す空気の露点温度は-40℃~-90℃であってもよい。
【0042】
同様に、上記では、粉体用ドライボックス230内の露点温度を-80℃とし、第1ドライブース300内の露点温度を-40℃としたが、スラリー製造装置200で扱われる粉体が湿った空気に触れることを抑制できる露点温度であれば特に限定されない。例えば、粉体用ドライボックス230内の露点温度は-40℃~-90℃であってもよい。また、第1ドライブース300内の露点温度は-30℃以下であってもよい。なお、第1ドライブース300内の露点温度は、第1ドライブース300内に設置された冷却装置250において結露が生じないような露点温度であればよく、例えば、-20℃~-30℃であってもよい。
【0043】
上記では、除湿ユニット233は、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内の空気を除湿しているが、第2ドライブース310内の空気を除湿してもよい。
【0044】
(1-4)粉体用ドライボックス、第1ドライブース及び第2ドライブース
粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310は、それぞれの内部の空間の雰囲気を所定の状態に保持するために外部空間と区分けする仕切である。特に、粉体用ドライボックス230は、スラリー製造装置200のうち限られた必要箇所の雰囲気のみを所定の状態に保持するための仕切りである。これらの仕切りは例えば合成樹脂のパネルである。ただし、粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310は、これらを用いることで内部空間の粉体Pの湿気を防ぐことができればよく、ビニールカーテンや断熱性を有する各種素材、及び、金属製等であってもよい。
【0045】
以上の粉体用ドライボックス230と第1ドライブース300及び第2ドライブース310の関係を見ると、粉体用ドライボックス230は第1ドライブース300に収納され、第1ドライブース300は第2ドライブース310に収納されている。
以下に粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310のそれぞれについて説明する。
【0046】
粉体用ドライボックス230は、粉体供給装置Xの開口部であるフィーダ220の粉体排出口221(開口部の一例)、およびホッパ31の上部開口部31a(開口部の一例)を収納している。
前述の通り、粉体用ドライボックス230は、露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が除湿部233aから送り込まれており、空間内の空気が-80℃(第2設定露点温度)に調整されている。よって、このように露点温度が調整された粉体用ドライボックス230内に粉体供給装置Xの粉体排出口221及び上部開口部31a等の開口部が収納されているため、粉体が湿った空気に触れる事態を回避し、スラリーの品質悪化を抑制することができる。
特に、粉体供給装置Xの粉体排出口221から排出された粉体Pは、粉体用ドライボックス230の内部を落下して、ホッパ31の上部開口部31aからホッパ31へ投入される。そして、上部開口部31aもまた粉体用ドライボックス230内に収納されているため、粉体が湿った空気に触れることが抑制されている。
【0047】
粉体用ドライボックス230には、粉体用ドライボックス230と除湿ユニット233の除湿部233aとを連通するダンパ234と、粉体用ドライボックス230と第1ドライブース300との連通を開閉するダンパ237とが設けられている。ダンパ234及びダンパ237の開閉の程度は調整可能である。ダンパ237は、制御部Cからの制御に応じて開閉の程度を調整し、粉体用ドライボックス230内の-80℃(第2設定露点温度)の空気を第3流量Q3で第1ドライブース300に送り込むようにする。ダンパ234は、制御部Cからの制御に応じて開閉の程度を調整し、粉体用ドライボックス230内の空気を第4流量Q4で除湿ユニット233の除湿部233aに戻すようにする。
【0048】
本実施形態では、制御部Cの制御に応じて例えば次のように粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300の露点温度が調整される。
まず、流量調整部233bの開度が調整されることで、露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が、除湿部233aから第1流量Q1で粉体用ドライボックス230に送り込まれる。そして、粉体用ドライボックス230に送り込まれた空気は、ダンパ234を介して第4流量Q4で除湿部233aに戻る。本実施形態では、第4流量Q4は、概ね第1流量Q1と同じであり、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)になるまで、除湿部233aと粉体用ドライボックス230との間で空気が循環される。つまり、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)になるまで、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に露点温度が-80℃(第2設定露点温度)の空気が送り込まれ続ける。
【0049】
次に、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)になると、ダンパ234が閉じられる。そして、流量調整部233bの開度が調整されることで、露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が、除湿部233aから第2流量Q2で第1ドライブース300に送り込まれる。さらに、制御部Cからの制御に応じてダンパ237の開度が調整されることで、粉体用ドライボックス230内の-80℃(第2設定露点温度)の空気が第3流量Q3で第1ドライブース300に送り込まれる。
このような制御により、粉体用ドライボックス230内を-80℃(第2設定露点温度)に調整可能であり、また、第1ドライブース300内を-40℃(第1設定露点温度)に調整可能である。
【0050】
ここで、本実施形態では、
図1に示すように、粉体供給装置Xのフィーダホッパ210およびフィーダ220と、粉体用ドライボックス230とが、架台280の上に載置されて、分散混合部Y(混合装置)の上方に配置されている。ホッパ31の上部開口部31aは、架台280よりも上方に配置される。ホッパ31の下部開口部(31b)は、架台280よりも下方に配置される。
このような配置において、ダンパ237は、粉体用ドライボックス230の下部に下方に開口して設けられている。これにより、ダンパ237が開口されると、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃の空気は、第1ドライブース300内を下方に進むように粉体用ドライボックス230から送り込まれる。
【0051】
また、第1ドライブース300は、粉体用ドライボックス230と、混合装置とを収納している。混合装置は、例えば、分散混合部Yと、ミキシング機構60と、再循環機構部70と、冷却装置250と、タンク260と、圧力抜き部270とを含む。
なお、本実施形態では、
図1に示すように、フィーダホッパ210、フィーダ220及びエア抜き口211等は、第1ドライブース300には収納されていないが、第1ドライブース内に収納されても構わない。
【0052】
前述の通り、第1ドライブース300は、露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が除湿部233aから送り込まれており、空間内の空気が-40℃(第1設定露点温度)に調整されている。粉体供給装置Xの粉体排出口221及び上部開口部31a等の開口部は、露点温度が調整された粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300に収納されており、粉体が湿った空気に触れることをより抑制できる。
また、粉体供給装置Xの開口部に加えて混合装置も第1ドライブース300の内に収容されているため、粉体供給装置Xから混合装置に粉体が供給される場合においても粉体が湿った空気に触れることを抑制できる。よって、水分を吸収して品質の悪化した粉体が混合装置に導入されることを抑制し、結果として混合装置で生成されるスラリーの品質が悪化することを抑制できる。
【0053】
また、上述の通り、第1ドライブース300内の空気の設定露点温度が-40℃(第1設定露点温度)であり、粉体用ドライボックス230内の空気の設定露点温度が-80℃(第2設定露点温度)よりも高い。この場合、除湿ユニットを複数台設けることにより、より精密に露点温度を管理できる。複数の除湿ユニットには、第1ドライブース300の露点温度を調整するための除湿ユニット、及び、粉体用ドライボックス230の露点温度を調整するための除湿ユニットが含まれる。
粉体用ドライボックス230では、粉体を粉体供給装置Xに投入する際、粉体を撹拌する際などに粉体が空気に触れる可能性がある。一方、液体と粉体とを混合する混合装置は閉じられた空間からなるため、当該混合装置を収納する第1ドライブース300の内部では、粉体が空気に直接露出する可能性が小さい。よって、第1ドライブース300に要求される乾燥度は、粉体用ドライボックス230に比べて低い。上記のように、第1ドライブース300の設定露点温度(-40℃:第1設定露点温度)を、粉体用ドライボックスの設定露点温度(-80℃:第2設定露点温度)よりも高くできるため、ランニングコスト増大を抑制できる。
また、外側から第1ドライブース300及び粉体用ドライボックス230に向かって段階的に露点温度を低くできる。よって、粉体用ドライボックス230の内部の露点温度を低く調整することが容易であり、ランニングコストを低下できる。
【0054】
第1ドライブース300から排気された空気は除湿ユニット233に戻るが、第1ドライブース300の排気部にフィルタ301が設けられていると好ましい。フィルタ301は、臭気及び有害ガス等をろ過可能な素材で形成されていることが好ましい。これにより、臭気及び有害ガス等が除湿ユニット233に導入され、さらに粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300に導入されることを抑制し、これらの内部の空気の汚染を抑制できる。
【0055】
また、第2ドライブース310は、第1ドライブース300を収納している。
第1ドライブース300が第2ドライブース310に収納されているため、第1ドライブース300内を外部の空気からさらに隔離できる。これにより、第1ドライブース300及び粉体用ドライボックス230に収納された粉体供給装置Xの開口部において粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。また、粉体供給装置Xから混合装置への粉体の供給の際にも粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。よって、スラリーの品質が悪化することをさらに抑制できる。
なお、本実施形態では、
図1に示すように、フィーダホッパ210と、フィーダ220及びエア抜き口211等は、第2ドライブース310には収納されていないが、第2ドライブース内に収納されても構わない。
【0056】
制御部Cの制御によって、粉体用ドライボックス230の気圧は第2ドライブース310の外側の気圧(以下「外気圧」と記す。)よりも陽圧に調整される。粉体用ドライボックス230の気圧は、例えば外気圧よりも5Pa程度高い。これにより、外気が粉体用ドライボックス230に流入することを抑制できる。よって、粉体用ドライボックス230内の露点温度を低く維持でき、粉体供給装置Xの開口部において粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。
【0057】
また、制御部Cの制御によって、第1ドライブース300の気圧が外気圧よりも陽圧に調整される。第1ドライブース300の気圧は、例えば外気圧よりも2~3Pa程度高い。これにより、外気が第1ドライブース300に流入することを抑制できる。よって、第1ドライブース300に収納された粉体用ドライボックス230内の粉体供給装置Xの開口部において、粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。また、粉体供給装置Xから混合装置への粉体の供給の際にも粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。
なお、上述したが、除湿ユニット233は、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内の空気の除湿に加えて、
図1中の二点鎖線に示すように第2ドライブース310内の空気を除湿してもよい。そして、第2ドライブース310の気圧を第1ドライブース300の気圧より高くした場合にも第1ドライブース300への外気の流入を防ぐことが可能となる。
【0058】
上記の通り、粉体用ドライボックス230の気圧(外気圧よりも5Pa程度高い)が、第1ドライブース300の気圧(外気圧よりも2~3Pa程度高い)よりも高い。よって、第1ドライブース300の空気が粉体用ドライボックス230に流入することを抑制できる。これにより、粉体用ドライボックス230内の粉体供給装置Xの開口部において、粉体が湿った空気に触れることをさらに抑制できる。
【0059】
また、制御部Cの制御によって、第2ドライブース310の気圧が外気圧よりも陰圧(外気圧よりも2~3Pa程度低い)に調整される。よって、第2ドライブース310内の空気が外に流出することを抑制できる。これにより、粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310内のいずれかの空間の空気が外に流出することが抑制され、例えばこれらの空間内の臭気及び有害ガス等が外に流出することを抑制できる。
なお、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内の気圧が外気圧よりも陽圧であるため、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内の空気が第2ドライブース310に流出する場合がある。第2ドライブース310内の気圧を外気圧よりも陰圧にすることで、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300内に外から空気が流入することを抑制しつつ、粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310内の臭気及び有害ガス等が外に流出することを抑制できる。
【0060】
ここで、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃以下に、第1ドライブース300の露点温度が-40℃以下に保持される場合、空気の流れは、例えば次の通りとなる。第1に、除湿ユニット233から、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300を経て除湿ユニット233に戻る流れの循環で空気が流れる。第2に、除湿ユニット233から、第1ドライブース300を経て除湿ユニット233に戻る流れの循環で空気が流れる。
このように空気の流れを構成することで、除湿ユニット233を、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300により共用でき、第1ドライブース300用の除湿ユニットを、除湿ユニット233とは別体に設ける必要がなく、コストアップを抑制できる。
【0061】
(1-5)制御部
制御部Cは、CPUや記憶部等を備えた演算処理装置からなり、スラリー製造装置200の全体の動作を制御する。特に制御部Cは、除湿ユニット233から粉体用ドライボックス230および第1ドライブース300への空気の流量の調整、粉体用ドライボックス230から第1ドライブース300への空気の流量の調整を行う。
【0062】
制御部Cは、まず、粉体用ドライボックス230の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に調整するように、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込む-80℃(第3露点温度)の空気の第1流量Q1を調整する。この場合、制御部Cは流量調整部233bの開度を調整することで、第1流量Q1を調整する。ただし、この時点では、粉体用ドライボックス230の露点温度は-80℃以下となっていないので、制御部Cは、除湿部233aからの-80℃(第3露点温度)の空気が、粉体用ドライボックス230にのみに送り込まれ、第1ドライブース300に送り込まれないように流量調整部233bの開度を調整する。よって、この時の第1流量Q1は、例えば除湿部233aの最大排気量であり得る。
また、制御部Cは、粉体用ドライボックス230のダンパ234を開いており、粉体用ドライボックス230に送り込まれた空気を、ダンパ234を介して第4流量Q4で除湿部233aに戻す。制御部Cは、例えば、第4流量Q4と第1流量Q1とを概ね同じ程度に調整し、除湿部233aと粉体用ドライボックス230との間で空気を循環させる。これにより、粉体用ドライボックス230の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に安定させる。
【0063】
次に、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、ダンパ234を閉じ、次の調整を行う。
制御部Cは、流量調整部233bを制御し、除湿部233aから第1ドライブース300に送り込む-80℃(第3露点温度)の空気の第2流量Q2の第1調整を行う。なお、本実施形態では、除湿部233aから送り出される-80℃(第3露点温度)の空気の流量は、第1流量Q1と第2流量Q2との和であり一定である。よって、第1流量Q1を増加させた場合には第2流量Q2は減少し、逆に第1流量Q1を減少させた場合には第2流量Q2は増加する。制御部Cは、第1流量Q1と第2流量Q2とがこのような関係となるように流量調整部233bを制御する。
【0064】
さらに、制御部Cは、ダンパ237を制御し、粉体用ドライボックス230内の空気を第1ドライブース300に送り込む空気の第3流量Q3の第2調整も行う。
以上のように、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、ダンパ234を閉じ、除湿部233aから露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を第1ドライブース300に送り込むとともに(第1調整)、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)に調整された空気を第1ドライブース300に送り込む(第2調整)。これにより、粉体用ドライボックス230内が-80℃(第2設定露点温度)に調整され、また、第1ドライブース300内が-40℃(第1設定露点温度)に調整される。
【0065】
前述の第1調整により、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込まれていた-80℃(第3露点温度)の空気の一部である第2流量Q2が第1ドライブース300の露点温度の調整に用いられる。これにより、粉体用ドライボックス230内を所望の-80℃(第2設定露点温度)にするのに用いていた-80℃(第3露点温度)の空気を、第1ドライブース300を-40℃(第1設定露点温度)にするために有効に活用できる。
【0066】
また、前述の第2調整により、粉体用ドライボックス230内を所望の-80℃(第2設定露点温度)に維持しつつ、粉体用ドライボックス230内の空気を、第1ドライブース300を所望の-40℃(第1設定露点温度)にするために有効に活用できる。
【0067】
さらに、制御部Cが第1調整及び第2調整の両方を行うことによって、除湿部233aからの-80℃(第3露点温度)の空気及び粉体用ドライボックス230内の空気を、第1ドライブース300を所望の-40℃(第1設定露点温度)にするために有効に活用できる。
【0068】
上記では、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、前述の第1調整及び第2調整の両方を行っているが、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、第1調整及び第2調整のいずれかのみを行ってもよい。これについて次に説明する。
【0069】
粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になり、第1調整のみを行う場合には、例えば以下のような制御となる。粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、制御部Cはダンパ234を閉じる。また、制御部Cは、ダンパ237を閉じ、粉体用ドライボックス230内の空気を第1ドライブース300に送り込まない。なお、このような制御は、粉体排出口221から粉体Pがホッパ31へ投入され、分散システム100に粉体Pが供給された後に行われるのが好ましい。
さらに、制御部Cは、流量調整部233bの開度を調整し、除湿部233aから露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を第1流量Q1で粉体用ドライボックス230に送り込み、除湿部233aから露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を第2流量Q2で第1ドライブース300に送り込むように制御する。これにより、粉体用ドライボックス230内が-80℃(第2設定露点温度)に調整され、また、第1ドライブース300内が-40℃(第1設定露点温度)に調整される。
【0070】
一方、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になり、第2調整のみを行う場合には、例えば以下のような制御となる。粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、制御部Cはダンパ234を閉じる。また、制御部Cは、除湿部233aから露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を粉体用ドライボックス230のみに送り込み、第1ドライブース300に送り込まないように流量調整部233bの開度を調整する。
さらに、制御部Cは、ダンパ237を制御し、粉体用ドライボックス230から第1ドライブース300に送り込む空気の第3流量Q3の調整を行う。これにより、粉体用ドライボックス230内が-80℃(第2設定露点温度)に調整され、また、第1ドライブース300内が-40℃(第1設定露点温度)に調整される。
【0071】
なお、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)より高くなると、再び除湿部233aと粉体用ドライボックス230との間で空気を循環させる制御を行うことができる。
また、上記では、粉体用ドライボックス230内の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)になると、ダンパ234を閉じているが、ダンパ234の開度を調整することもできる。
【0072】
また、制御部Cは、前述した通り、除湿ユニット233を制御することで、粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310内の気圧も制御する。制御部Cは、粉体用ドライボックス230の気圧を例えば外気圧よりも5Pa程度高い陽圧に制御する。同様に、制御部Cは、第1ドライブース300の気圧を外気圧よりも2~3Pa程度高い陽圧に制御し、第2ドライブース310の気圧を外気圧よりも2~3Pa程度低い陰圧に制御する。
【0073】
(2)スラリー製造装置で生成されるスラリー
スラリー製造装置200では、様々な種類の粉体Pと液体Rを用いてスラリーFを製造することが可能である。特に、全固体電池の正極、負極、または固体電解質を製造するためのスラリー、すなわち正極活物質層スラリー、負極活物質スラリー、または固体電解質スラリーの製造に、スラリー製造装置200が好適に使用できる。
上記のスラリー製造装置200では、スラリー製造に用いる粉体が湿った空気に触れて品質が悪化することを抑制できる。よって、正極活物質層スラリー、負極活物質スラリー、または固体電解質スラリーの製造に上記のスラリー製造装置200を用いることで、これらのスラリーの品質が悪化することを抑制できる。これにより、全固体電池の品質の悪化を抑制できる。
【0074】
正極活物質スラリーは、正極活物質、導電助剤、バインダー等を溶媒に分散させて製造する。負極活物質スラリーは、負極活物質、導電助剤、バインダー等を溶媒に分散させて製造する。固体電解質スラリーは、固体電解質、導電助剤、バインダー等を溶媒に分散させて製造する。正極活物質スラリーが固体電解質を含有してもよい。負極活物質スラリーが固体電解質を含有してもよい。
【0075】
正極活物質としては、オリビン型正極活物質が例示される。オリビン型正極活物質は、オリビン型構造を有する物質であり、リチウムイオン電池に用いることができる正極活物質であれば特に限定されない。オリビン型正極活物質としては、例えばLixMyPOz(M=Fe、Mn、Co、及びNi、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7)の化学式によって表される活物質を上げることができる。中でも、材料の安定性が高く、かつ理論容量が大きいオリビン型正極活物質である、LiFePO4が好ましい。また、大気中の湿気によりアルカリ化する高ニッケルを含有する正極材にも適用が可能である。
【0076】
負極活物質としては、リチウムイオン等を吸蔵・放出可能であれば特に限定されない。負極活物質の具体例としては、金属、例えば、Li、Sn、Si、若しくはIn等、LiとTi、Mg若しくはAlとの合金、若しくは炭素材料、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン若しくはグラファイト等、又はこれらの組み合わせ等を挙げることができる。特に、サイクル特性及び放電特性の観点から、チタン酸リチウム(LTO、Li4Ti5O12)、リチウム含有合金が好ましい。
【0077】
固体電解質としては、全固体電池の固体電解質として用いられる硫化物固体電解質を用いることができる。例えば、Li2S-SiS2、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-Li2O-P2S5、Li2S-P2S5、Li3PS4-LiI-LiBr等が挙げられる。なお、ここで「X」はI及び/又はBrを表す。
上記のスラリー製造装置200では、粉体である硫化物固体電解質によりスラリーを製造する場合に、当該粉体が湿った空気に触れることを抑制できる。よって、粉体として硫化物固体電解質を用いた場合、硫化物固体電解質が湿った空気に触れて有毒の硫化水素が発生することを抑制できる。よって、硫化物固体電解質と湿った空気との接触を抑えた状態でスラリーを製造し、電池を製造することで、出力特性の低下及び寿命の短縮など電池性能の低下を抑制できる。
また、硫化水素の発生を抑制できるため、硫化水素を除去するためのフィルタ装置などの別途の装置を設ける必要がないか、あるいは当該装置の駆動を減らしてランニングコストを削減することもできる。
【0078】
導電助剤としては、気相法炭素繊維(VGCF)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、又はカーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料の他、ニッケル・アルミニウム・ステンレス鋼等の金属、又はこれらの組み合わせが例示される。
【0079】
バインダーとしては、ポリマー樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、若しくはカルボキシメチルセルロース(CMC)等、又はこれらの組み合わせが例示される。
【0080】
溶媒としては、酪酸ブチル、脱水ヘプタンが例示される。
【0081】
(3)スラリー製造装置の詳細構成
以下、スラリー製造装置200の構成うち、分散システム100の一部の構成及び制御部Cについて更に詳しく説明する。
【0082】
〔粉体供給装置〕
図2に示すように、粉体供給装置Xは、上部開口部31aから受け入れた粉体Pを下部開口部31bから排出させるホッパ31と、ホッパ31内の粉体Pを撹拌する撹拌機構32と、ホッパ31の上部開口部31aが大気開放された状態で、下部開口部31bの下流側に接続された分散混合部Yの吸引により下部開口部31bに作用する負圧吸引力によって、下部開口部31bから排出された粉体Pを分散混合部Yに定量供給する容積式の定量供給部40とを備えている。
【0083】
ホッパ31は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に構成され、その中心軸A1が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。そのホッパ31の上部開口部31a及び下部開口部31b夫々の横断面形状は、
図2の上下方向視で、中心軸A1中心とする円形状とされ、又、ホッパ31における逆円錐形状の内側壁面の傾斜角度は、一般的に水平面に対して略60度とされる。ただし、粉体の性状に応じて傾斜角度を変更可能である。例えば、粉体がカーボンブラックである場合には、傾斜角度は例えば略45度とできる。
【0084】
撹拌機構32は、ホッパ31内に配設されて、ホッパ31内の粉体Pを撹拌する撹拌羽根32Aと、当該撹拌羽根32Aをホッパ31の中心軸A1周りに回転させる羽根駆動モータM1と、羽根駆動モータM1をホッパ31の上部開口部31aの上方に位置させて支持する取付部材32Bと、羽根駆動モータM1の回転駆動力を撹拌羽根32Aに伝動させる伝動部材32Cとを備えて構成される。
【0085】
撹拌羽根32Aは、棒状部材を概略V字形状に屈曲して構成され、その一方の辺部がホッパ31の内側壁面に沿う状態で、他方の辺部の端部がホッパ31の中心軸A1と同軸で回転自在に枢支されて配設されている。また、当該撹拌羽根32Aは、横断面形状が三角形に形成されており、三角形の一辺を形成する面がホッパ31の内側壁面と略平行となるように配設されている。これにより、撹拌羽根32Aは、ホッパ31の内側壁面に沿って中心軸A1周りに回転可能に配設されている。
【0086】
図2~
図4に示すように、容積式の定量供給部40は、ホッパ31の下部開口部31bから供給される粉体Pを下流側の分散混合部Yに所定量ずつ定量供給する機構である。
具体的には、ホッパ31の下部開口部31bに接続される導入部41と、供給口43a及び排出口43bを備えたケーシング43と、ケーシング43内に回転可能に配設された計量回転体44と、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2とを備えて構成される。
【0087】
導入部41は、ホッパ31の下部開口部31bとケーシング43の上部に形成された供給口43aとを連通する筒状に形成され、最下端には、ケーシング43の供給口43aと同形状のスリット状の開口が形成されている。この導入部41は、ケーシング43の供給口43a側ほど細くなる先細り状に形成されている。当該スリット状の開口の形状は、ホッパ31の大きさ、粉体Pの供給量、粉体Pの特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば、スリット状の開口の長さ方向の寸法を20~100mm程度、幅方向の寸法を1~5mm程度に設定するようにする。
【0088】
ケーシング43は、概略直方体形状に形成され、水平方向(
図2の左右方向)に対して45度傾斜した姿勢で、導入部41を介してホッパ31に接続されている例を示したが、水平に設置しても構わない。
図3及び
図4に示すように、ケーシング43の上面には、導入部41のスリット状の開口に対応したスリット状の供給口43aが設けられ、ホッパ31の下部開口部31bからの粉体Pをケーシング43内に供給可能に構成されている。傾斜状に配置されたケーシング43の下方側の側面(
図3において右側面)の下部には、計量回転体44にて定量供給された粉体Pを膨張室47を介して下流側の分散混合部Yに排出する排出口43bが設けられ、その排出口43bには、粉体排出管45が接続されている。当該膨張室47は、供給口43aから計量回転体44の粉体収容室44bに供給された粉体Pが定量供給されるケーシング43内の位置に設けられ、排出口43bから作用する負圧吸引力によって、供給口43aよりも低圧に維持される(例えば、-0.06MPa程度)。すなわち、排出口43bは、分散混合部Yの一次側に接続されることによって、負圧吸引力が膨張室47に作用し供給口43aよりも低圧状態に維持されるようにしている。計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bの状態が負圧状態(例えば、-0.06MPa程度)と当該負圧状態よりも高圧の状態に変化するように構成されている。
【0089】
計量回転体44は、計量回転体駆動モータM2の駆動軸48に配設した円盤部材49に、複数(例えば、8枚)の板状隔壁44aを円盤部材49の中心部を除いて放射状に等間隔に取り付けて構成され、周方向で等間隔に粉体収容室44bを複数区画(例えば、8室)形成するように構成されている。粉体収容室44bは、計量回転体44の外周面及び中心部において開口するように構成されている。計量回転体44の中心部には、開口閉鎖部材42が周方向に偏在して固定状に配設され、各粉体収容室44bの中心部側の開口をその回転位相に応じて閉塞或いは開放可能に構成されている。なお、粉体Pの供給量は、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2による計量回転体44の回転数を変化させることで、調整できる。
【0090】
計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bが、膨張室47に開放される膨張室開放状態、膨張室47及び供給口43aと連通しない第1密閉状態、供給口43aに開放される供給口開放状態、供給口43a及び膨張室47と連通しない第2密閉状態の順で、その状態が繰り返して変化するように構成されている。なお、計量回転体44の外周面側の開口が第1密閉状態及び第2密閉状態において閉鎖されるようにケーシング43が形成されるとともに、計量回転体44の中心部側の開口が第1密閉状態、供給口開放状態及び第2密閉状態において閉鎖されるように、開口閉鎖部材42がケーシング43に固定して配設される。
【0091】
従って、粉体供給装置Xにおいては、ホッパ31内に貯留された粉体Pが撹拌羽根32Aにより撹拌されながら定量供給部40に供給され、定量供給部40により、粉体Pが排出口43bから粉体排出管45を通して分散混合部Yに定量供給される。
【0092】
具体的に説明すると、定量供給部40の排出口43bの下流側に接続された分散混合部Yからの負圧吸引力により、ケーシング43内における膨張室47の圧力が負圧状態(例えば、-0.06MPa程度)となる。一方で、ホッパ31の上部開口部31aは大気開放されているので、ホッパ31内は大気圧程度の状態となる。膨張室47と計量回転体44の隙間を介して連通する導入部41の内部及び下部開口部31bの近傍は、上記負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態となる。
【0093】
この状態で、ホッパ31の内壁面及び下部開口部31bの近傍の粉体Pが、撹拌機構32の撹拌羽根32Aにより撹拌されることで、撹拌羽根32Aによるせん断作用によりホッパ31内の粉体Pが解砕され、一方、計量回転体44は計量回転体駆動モータM2により回転させられることで、空の粉体収容室44bが次々と供給口43aに連通する状態となる。そして、ホッパ31内の粉体Pは下部開口部31bから導入部41を流下し、次々と供給口43aに連通する状態となる計量回転体44の粉体収容室44bに所定量ずつ収容されて、その粉体収容室44bに収容された粉体Pは膨張室47に流下し、排出口43bから排出される。従って、粉体供給装置Xにより、粉体Pを粉体排出管45を通して所定量ずつ連続して分散混合部Yの供給口11に定量供給することができる。
上記では、ホッパ31内の粉体Pは、定量供給部40を介して分散混合部Yに供給される。ただし、付着性を有する粉体Pの場合には、定量供給部40を用いず、例えば、フィーダ220から、その回転を制御して、ホッパ31を介して直接に分散混合部Yに供給するようにしてもよいし、ホッパ31と分散混合部Yとを直接つなぐ通路を別途形成し、粉体Pの性状に応じて、ホッパ31から定量供給部40を介して分散混合部Yへ粉体Pを供給するか、あるいは、ホッパ31から分散混合部Yへ粉体Pを供給するかを切り換え可能に構成してもよい。
【0094】
図2に示すように、粉体排出管45には、分散混合部Yの供給口11への粉体Pの供給を停止可能なシャッタバルブ46が配設されている。
【0095】
〔タンク、ミキシング機構〕
図1及び
図2に示すように、タンク260は、タンク260内の液体Rを設定流量で分散混合部Yの供給口11に連続的に供給するように構成されている。よって、タンク260は、液体Rを分散混合部Yに供給する溶媒供給源として機能する。また、タンク260には、再循環機構部70から排出路22を介してスラリーFが供給される。よって、タンク260は、スラリーFを回収するスラリー回収源として機能する。
タンク260には、タンク260とミキシング機構60とを接続し、液体Rが内部を通過する溶媒供給管52と、溶媒供給管52に設けられ、タンク260から溶媒供給管52を介してミキシング機構60に液体Rを送出するポンプ261と、タンク260から溶媒供給管52に送出される液体Rの流量を設定流量に調整する流量調整バルブ(図示せず)とを備えている。
【0096】
ミキシング機構60は、設定流量に調整された液体Rを、定量供給部40から定量供給される粉体Pに混合して供給口11に供給する。
図5に示すように、ミキシング機構60は、粉体排出管45と溶媒供給管52とを供給口11に連通接続するミキシング部材61を備えて構成されている。
このミキシング部材61は、円筒状の供給口11よりも小径に構成されて、供給口11との間に環状のスリット63を形成すべく供給口11に挿入状態で配設される筒状部62、及び、環状のスリット63に全周にわたって連通する状態で供給口11の外周部に環状流路64を形成する環状流路形成部65を備えて構成されている。
ミキシング部材61には、粉体排出管45が筒状部62に連通する状態で接続されると共に、溶媒供給管52が環状流路64に対して液体Rを接線方向に供給するように接続される。
粉体排出管45、ミキシング部材61の筒状部62及び供給口11は、それらの軸心A2を供給方向が下向きとなる傾斜姿勢(水平面(
図2の左右方向)に対する角度が45度程度)となるように傾斜させて配置されている。
【0097】
つまり、定量供給部40の排出口43bから粉体排出管45に排出された粉体Pは、ミキシング部材61の筒状部62を通して軸心A2に沿って供給口11に導入される。一方、液体Rは、環状流路64に接線方向から供給されるので、環状流路64の内周側に形成される環状のスリット63を介して、切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で供給口11に供給される。
従って、円筒状の供給口11により、粉体Pと液体Rとが均等に予備混合され、その予備混合物Fpが分散混合部Yの供給室13内に吸引導入される。
【0098】
〔分散混合部〕
図2、
図5~
図8に基づいて、分散混合部Yについて説明を加える。
図5に示すように、分散混合部Yは、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備えた本体ケーシング1を備え、その本体ケーシング1の内部に同心状で回転駆動自在に設けられたロータ5と、その本体ケーシング1の内部に同心状で前壁部2に固定配設された円筒状のステータ7と、ロータ5を回転駆動するポンプ駆動モータM3等を備えて構成されている。
【0099】
図6にも示すように、ロータ5の径方向の外方側には、複数の回転翼6が、前壁部2側である前方側(
図5の左側)に突出し且つ周方向に等間隔で並ぶ状態でロータ5と一体的に備えられている。
円筒状のステータ7には、複数の透孔7a,7bが周方向に夫々並べて備えられ、そのステータ7が、ロータ5の前方側(
図5の左側)で且つ回転翼6の径方向の内側に位置させて前壁部2に固定配設されて、そのステータ7と本体ケーシング1の外周壁部4との間に、回転翼6が周回する環状の翼室8が形成される。
【0100】
図5~
図7に示すように、ミキシング機構60にて粉体Pと液体Rとが予備混合された予備混合物Fpを回転翼6の回転により本体ケーシング1の内部に吸引導入する供給口11が、前壁部2の中心軸(本体ケーシング1の軸心A3)よりも外周側に偏移した位置に設けられている。
図5、
図7に示すように、本体ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成され、環状溝10と連通する状態で供給口11が設けられている。
図5及び
図6に示すように、粉体Pと液体Rとが混合されて生成されたスラリーFを吐出する円筒状の吐出部12が、本体ケーシング1の円筒状の外周壁部4の周方向における1箇所に、その外周壁部4の接線方向に延びて翼室8に連通する状態で設けられている。
【0101】
図2及び
図5に示すように、この実施形態では、吐出部12から吐出されたスラリーFは、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、その再循環機構部70の分離部である円筒状容器71にて気泡が分離された未溶解スラリーFrを、循環路16を介して本体ケーシング1内に循環供給する導入口17が本体ケーシング1の前壁部2の中央部(軸心A3と同心状)に設けられている。
又、
図5~
図7に示すように、ステータ7の内周側を前壁部2側の供給室13とロータ5側の導入室14とに区画する区画板15が、ロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けられると共に、区画板15の前壁部2側に掻出翼9が設けられている。掻出翼9は、同心状に、周方向において均等間隔で複数(
図7では、4つ)備えられ、各掻出翼9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設されている。
【0102】
供給室13及び導入室14は、ステータ7の複数の透孔7a,7bを介して翼室8と連通されるように構成され、供給口11が供給室13に連通し、導入口17が導入室14に連通するように構成されている。
具体的には、供給室13と翼室8とは、ステータ7における供給室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の供給室側透孔7aにて連通され、導入室14と翼室8とは、ステータ7における導入室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の導入室側透孔7bにて連通されている。
【0103】
分散混合部Yの各部について、説明を加える。
図5に示すように、ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されると共に、その外周側に、複数の回転翼6が前方に突出する状態で等間隔に並べて設けられている。なお、
図6では、周方向に等間隔に10個の回転翼6が配設されている。また、この回転翼6は、内周側から外周側に向かうに連れて、回転方向後方に傾斜するようにロータ5の外周側から内周側に突出形成されており、回転翼6の先端部の内径は、ステータ7の外径よりも若干大径に形成されている。
このロータ5が、本体ケーシング1内において本体ケーシング1と同心状に位置する状態で、後壁部3を貫通して本体ケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータM3の駆動軸19に連結されて、そのポンプ駆動モータM3により回転駆動される。
このロータ5が、その軸心方向視(
図6に示すような
図5のVI-VI方向視)において回転翼6の先端部が前側となる向きに回転駆動されることにより、回転翼6の回転方向の後側となる面(背面)6aには、いわゆる局所沸騰(キャビテーション)が発生するように構成されている。
【0104】
図5、
図7及び
図8に示すように、区画板15は、ステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成されている。この漏斗状の区画板15は、具体的には、その中央部に、頂部が円筒状に突出する筒状摺接部15aにて開口された漏斗状部15bを備えると共に、その漏斗状部15bの外周部に、前面及び後面共に本体ケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部15cを備える形状に構成されている。
そして、
図5及び
図6に示すように、この区画板15が、頂部の筒状摺接部15aが本体ケーシング1の前壁部2側を向く姿勢で、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では、4箇所)に配設された間隔保持部材20を介して、ロータ5の前面の取付部5aに取り付けられる。
【0105】
図6及び
図8(c)に示すように、区画板15を複数箇所夫々で間隔保持部材20を介してロータ5に取り付ける際には、撹拌羽根21が、本体ケーシング1の後壁部3側に向く姿勢で区画板15に一体的に組み付けられ、ロータ5が回転駆動されると、4枚の撹拌羽根21がロータ5と一体的に回転するように構成されている。
【0106】
図5及び
図7に示すように、この実施形態では、円筒状の導入口17が、本体ケーシング1と同心状で、その本体ケーシング1の前壁部2の中心部に設けられている。この導入口17には、循環路16の内径よりも小径で、区画板15の筒状摺接部15aよりも小径となり流路面積が小さな絞り部14aが形成されている。ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介してスラリーFが吐出され、導入口17の絞り部14aを介して未溶解スラリーFrが導入されることになるので、分散混合部Y内が減圧される。
【0107】
図5~
図7に示すように、供給口11は、その本体ケーシング1内に開口する開口部(入口部)が、環状溝10における周方向の一部を内部に含む状態で、本体ケーシング1内に対する導入口17の開口部の横側方に位置するように、前壁部2に設けられている。又、供給口11は、平面視(
図2及び
図5の上下方向視)において軸心A2が本体ケーシング1の軸心A3と平行となり、且つ、本体ケーシング1の軸心A3に直交する水平方向視(
図2及び
図5の紙面表裏方向視)において、軸心A2が本体ケーシング1の前壁部2に近付くほど本体ケーシング1の軸心A3に近づく下向きの傾斜姿勢で、本体ケーシング1の前壁部2に設けられている。ちなみに、供給口11の水平方向(
図2及び
図5の左右方向)に対する下向きの傾斜角度は、上述したように45度程度である。
【0108】
図5及び
図7に示すように、ステータ7は、本体ケーシング1の前壁部2の内面(ロータ5に対向する面)に取り付けられて、本体ケーシング1の前壁部2とステータ7とが一体となるように固定されている。ステータ7において、供給室13に臨む部分に配設された複数の供給室側透孔7aは、概略円形状に形成され、供給室13の流路面積よりも複数の供給室側透孔7aの合計流路面積が小さくなるように設定されており、また、導入室14に臨む部分に配設された複数の導入室側透孔7bは、概略楕円形状に形成され、導入室14の流路面積よりも複数の導入室側透孔7bの合計流路面積が小さくなるように設定されている。ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介してスラリーFが吐出され、供給室13の供給室側透孔7aを介して予備混合物Fpが供給されるとともに、導入口17を介して未溶解スラリーFrが導入されることになるので、分散混合部Y内が減圧される。
【0109】
図7及び
図8に示すように、この実施形態では、各掻出翼9が棒状に形成され、ロータ5の径方向視(
図8(b)の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほど前壁部2側に位置し、且つ、ロータ5の軸心方向視(
図8(a)の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほどロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻出翼9の基端部9Bがロータ5と一体回転するように固定され、ロータ5が、その軸心方向視(
図8(a)の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向き(
図5~
図8において矢印にて示す向き)に回転駆動される。
【0110】
図6~
図8に基づいて、掻出翼9について説明を加える。
掻出翼9は、区画板15に固定される基端部9B、供給室13に露呈する状態となる中間部9M、環状溝10に嵌め込まれる(即ち、進入する)状態となる先端部9Tを基端から先端に向けて一連に備えた棒状に構成されている。
【0111】
図6、
図7、
図8(b)に示すように、掻出翼9の基端部9Bは、概ね矩形板状に構成されている。
図6、
図7、
図8(a)及び(b)に示すように、掻出翼9の中間部9Mは、横断面形状が概ね三角形状になる概ね三角柱状に構成されている(特に、
図6参照)。そして、掻出翼9が上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、三角柱状の中間部9Mの三側面のうちのロータ5の回転方向前側を向く一側面9m(以下、放散面と記載する場合がある)は、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)ように構成されている(特に、
図7、
図8参照)。
【0112】
つまり、棒状の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、掻出翼9のうち供給室13に露呈する中間部9Mが環状溝10に嵌め込まれる先端部9Tよりもロータ5の径方向外方に位置し、しかも、その中間部9Mの回転方向前側を向く放散面9mが、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して斜め外向きに傾斜している。これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻出翼9の中間部9Mの放散面9mにより、供給室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。
【0113】
図7、
図8(a)及び(b)に示すように、掻出翼9の先端部9Tは、横断面形状が概ね矩形状になる概ね四角柱状であり、ロータ5の軸心方向視(
図8(a)の紙面表裏方向視)において、四側面のうちのロータ5の径方向外方側に向く外向き側面9oが環状溝10の内面における径方向内方側を向く内向き内面に沿い、且つ、四側面のうちのロータ5の径方向内方側に内向き側面9iが環状溝10の内面における径方向外方側を向く外向き内面に沿う状態となる弧状に構成されている。
又、四角柱状の先端部9Tの四側面のうちの、ロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9fは、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)になるように構成されている。
これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻出翼9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて供給室13内に放出されることになる。
更に、掻出翼9の先端部9Tの先端面9tは、その先端部9Tが環状溝10に嵌め込まれた状態で環状溝10の底面と平行になるように構成されている。
【0114】
また、ロータ5が、その軸心方向視(
図8(a)の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向きに回転駆動されると、掻出翼9の基端部9B、中間部9M、先端部9Tそれぞれに、回転方向の後側となる面(背面)9aが形成される。
【0115】
上述のような形状に構成された4個の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを区画板15の環状平板部15cに固定して設けられている。
【0116】
図5に示すように、掻出翼9が設けられた区画板15が、間隔保持部材20によりロータ5の前面と間隔を隔てた状態でロータ5の前面の取付部5aに取り付けられ、このロータ5が、区画板15の筒状摺接部15aが導入口17に摺接回転可能に嵌めこまれた状態で、本体ケーシング1内に配設される。
すると、ロータ5の膨出状の前面と区画板15の後面との間に、本体ケーシング1の前壁部2側ほど小径となる先細り状の導入室14が形成され、導入口17が区画板15の筒状摺接部15aを介して導入室14に連通するように構成されている。
又、本体ケーシング1の前壁部2と区画板15の前面との間に、供給口11に連通する環状の供給室13が形成される。
【0117】
そして、ロータ5が回転駆動されると、筒状摺接部15aが導入口17に摺接する状態で、区画板15がロータ5と一体的に回転することになり、ロータ5及び区画板15が回転する状態でも、導入口17が区画板15の筒状摺接部15aを介して導入室14に連通する状態が維持されるように構成されている。
【0118】
〔再循環機構部〕
再循環機構部(分離部の一例)70は、円筒状容器71内において比重によって溶解液を分離するように構成され、
図2に示すように、分散混合部Yの吐出部12から吐出路18を通して供給されるスラリーFから、完全に溶解していない粉体Pを含む可能性がある状態の未溶解スラリーFrを循環路16に、粉体Pが略完全に溶解した状態のスラリーFを排出路22にそれぞれ分離するように構成されている。吐出路18及び循環路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続され、排出路22は、円筒状容器71の上部とスラリーFの供給先であるタンク260とに接続される。
ここで、再循環機構部70は、図示しないが、吐出路18が接続される導入パイプを円筒状容器71の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器71の上部に排出路22に接続される排出部を備えるとともに、下部に循環路16に接続される循環部を備え、導入パイプの吐出上端に、導入パイプから吐出されるスラリーFの流れを旋回させる捻り板を配設して構成されている。これにより、スラリーF内から液体Rの気泡を分離して、循環路16に循環供給される未溶解スラリーFrから液体Rの気泡を分離した状態で導入室14内に供給することができる。
【0119】
〔制御部〕
制御部Cは、スラリー製造装置200の全体の動作を制御するが、例えば、ロータ5(回転翼6)の回転数を制御する。具体的には、制御部Cは、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7b(絞り透孔)の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って液体Rの飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となるように回転翼6の回転数を設定する。そして、制御部Cが当該設定された回転数で回転翼6を回転することで、少なくともステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域が、翼室8内の全周に亘って連続して、液体Rの微細気泡(マイクロバブル)が多数発生した微細気泡領域として形成される。
その他、制御部Cは、前述の通り、粉体用ドライボックス230および第1ドライブース300の露点温度及び粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310の気圧も制御する。
【0120】
〔スラリー製造装置の動作〕
次に、このスラリー製造装置200の動作について説明する。
まず、粉体用ドライボックス230、第1ドライブース300及び第2ドライブース310を運転して、露点温度を低下させる。また、冷却装置250を運転する。除湿ユニット233の調整により、粉体用ドライボックス230の気圧を陽圧(外気圧より5Pa程度高い状態)とし、第1ドライブース300の気圧を陽圧(外気圧より2~3Pa程度高い状態)とし、第2ドライブース310の気圧を陰圧(外気圧より2~3Pa程度低い状態)とする。
【0121】
次に、シャッタバルブ46を閉止して粉体排出管45を介する粉体Pの吸引を停止した状態で、ロータ5を回転させた後に、ポンプ261作動させてタンク260の液体Rのみを供給し、分散混合部Yの運転を開始する。ロータ5を回転させた後に液体Rを分散混合部Yに供給することで、ロータ5の背面のメカニカルシールがロータ5に密着し、ロータ5背面からの液漏れを防止することができる。
分散混合部Yの負圧吸引力により、液体Rが、ミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給される。
所定の運転時間が経過して、分散混合部Y内が、負圧状態(例えば、-0.06MPa程度の真空状態)となると、シャッタバルブ46を開放する。これによって、粉体供給装置Xの膨張室47を負圧状態(-0.06MPa程度)とし、導入部41の内部及びホッパ31の下部開口部31b近傍を当該負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態にする。
【0122】
そして粉体供給装置Xを作動させ、フィーダ220からホッパ31へ粉体Pを供給する。ホッパ31内に貯留された粉体Pを、撹拌羽根32Aの撹拌作用及び分散混合部Yの負圧吸引力により、ホッパ31の下部開口部31bから定量供給部40の膨張室47を介してミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。
この場合、粉体の性状によっては、定量供給部40を使用せず、フィーダ220からホッパ31を介して直接的にミキシング機構60へ所定量の粉体を供給してもよい。このとき、ミキシング機構60の粉体処理能力を超えないように、フィーダ220の供給速度を制御して粉体をミキシング機構60に供給する。
【0123】
ミキシング機構60のミキシング部材61からは、粉体Pがミキシング部材61の筒状部62を通して供給口11に供給されると共に、液体Rが、環状のスリット63を通して切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で供給口11に供給され、供給口11により、粉体Pと液体Rとが予備混合され、その予備混合物Fpが環状溝10に導入される。
【0124】
所定量の粉体Pの供給が終了すると、粉体排出口221及びシャッタバルブ46を閉止して粉体排出管45を介する粉体Pの吸引を停止し、粉体供給装置Xから分散混合部Yへの粉体の供給を停止する。
【0125】
ロータ5が回転駆動されて、そのロータ5と一体的に区画板15が回転すると、その区画板15に同心状に設けられた掻出翼9が、環状溝10に先端部9Tが嵌め込まれた状態で周回する。
【0126】
すると、
図5及び
図6において実線矢印にて示すように、供給口11を流動して環状溝10に導入された予備混合物Fpは、環状溝10に嵌め込まれて周回する掻出翼9の先端部9Tにより掻き出され、その掻き出された予備混合物Fpは、概略的には、供給室13内を区画板15における漏斗状部15bの前面と環状平板部15cの前面とに沿いながらロータ5の回転方向に流動し、更に、ステータ7の供給室側透孔7aを通過して翼室8に流入し、その翼室8内をロータ5の回転方向に流動して、吐出部12から吐出される。
【0127】
環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻出翼9の先端部9Tにより掻き出されるときに、せん断作用を受ける。この場合、掻出翼9の先端部9Tの外向き側面9oと内側の環状溝10の内向き内面との間、及び、掻出翼9の先端部9Tの内向き側面9iと内側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働く。また、ステータ7の供給室側透孔7aを通過する際に、せん断作用が働く。
【0128】
つまり、供給室13内の予備混合物Fpにせん断力を作用させることができるので、掻き出される予備混合物Fpは、掻出翼9及び供給室側透孔7aからせん断作用を受けて混合されることにより、液体Rに対する粉体Pの分散がより良好に行われることとなる。よって、このような予備混合物Fpを供給することができ、翼室8内において液体Rに対する粉体Pの良好な分散を期待することができる。
【0129】
吐出部12から吐出されたスラリーFは、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、再循環機構部70において、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解スラリーFrと、粉体Pが略完全に溶解した状態のスラリーFとに分離されるとともに、液体Rの気泡が分離されて、未溶解スラリーFrは循環路16を通して再び分散混合部Yの導入口17に供給され、スラリーFは排出路22を通してタンク260に供給される。
【0130】
未溶解スラリーFrは、導入口17の絞り部14aを介して流量が制限された状態で導入室14内に導入される。その導入室14内においては、回転する複数の撹拌羽根21によりせん断作用を受けて、更に細かく解砕され、更に、導入室側透孔7bの通過の際にもせん断作用を受けて解砕される。この際には、導入室側透孔7bを介して流量が制限された状態で翼室8に導入される。そして、翼室8内において、高速で回転する回転翼6によりせん断作用及び回転翼6の回転方向の後側となる面(背面)6aにおける局所沸騰(キャビテーション)の発生を受けて解砕され、粉体Pの凝集物(ダマ)が更に少なくなったスラリーFが供給室13からのスラリーFと混合されて吐出部12から吐出される。
【0131】
ここで、制御部により、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域である翼室8内の圧力がその全周に亘って液体Rの飽和蒸気圧以下となるように回転翼6の回転数が設定され、当該設定された回転数で回転翼6を回転させる。
これにより、回転翼6の回転数設定により、当該出口領域である翼室8内の圧力は、その全周に亘って液体Rの飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となるから、少なくともステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域では、液体Rの気化による微細気泡(マイクロバブル)の発生が促進され、当該領域が、翼室8内の全周に亘って連続して微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成される状態となる。
【0132】
ここで発生したキャビテーションによる気泡の膨張及び収縮により粉体Pの凝集体の解砕が促進される。その結果、翼室8内の全周に存在するスラリーFのほぼ全体に亘って、液体R中での粉体Pの分散が良好な高品質のスラリーFを生成することができる。
【0133】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、粉体供給装置Xがフィーダホッパ210、フィーダ220、ホッパ31等を有して構成された。粉体供給装置Xの他の形態として、粉体Pを収容する袋からホース等で粉体Pを吸引する形態も可能である。この形態では、粉体供給装置Xの開口部は袋の開口、およびホースの吸引口であり、これら開口部が粉体用ドライボックス230に収納される。
【0134】
(2)上記実施形態では、粉体用ドライボックス230は、粉体供給装置Xの開口部であるフィーダ220の粉体排出口221(開口部の一例)、およびホッパ31の上部開口部31a(開口部の一例)を収納している。また、フィーダホッパ210、フィーダ220及びエア抜き口211等は、
図1に示すように、第1ドライブース300及び第2ドライブース310には収納されていない。しかし、フィーダホッパ210、フィーダ220及びエア抜き口211等は、第1ドライブース300及び第2ドライブース310の少なくともいずれかに収納されていてもよい。
【0135】
(3)上記実施形態では、分散システム100が、粉体供給装置Xと、分散混合部Yと、ミキシング機構60と、再循環機構部70と、冷却装置250と、タンク260と、圧力抜き部270とから構成されている。そして、混合装置の例として、分散混合部Yと、ミキシング機構60と、再循環機構部70と、冷却装置250と、タンク260と、圧力抜き部270とを挙げた。第1ドライブース300は、混合装置を収納するものであるが、混合装置は、分散混合部Y、ミキシング機構60、再循環機構部70、冷却装置250、タンク260及び圧力抜き部270の少なくともいずれかを含んでいればよい。さらに言えば、混合装置は、これらのうち、少なくともミキシング機構60を含んでいればよい。つまり、混合装置の一例であるミキシング機構60は、設定流量に調整された液体Rを、粉体供給装置Xから定量供給される粉体Pに混合するが、第1ドライブース300は、少なくともこのミキシング機構60を収納していればよい。
【0136】
(4)上記実施形態では、除湿ユニット233は、流量調整部233bを有しており、除湿部233aから露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300に導入される。さらに、上記実施形態では、粉体用ドライボックス230にダンパ237が設けられており、粉体用ドライボックス230内の空気が第1ドライブース300に導入される。
しかし、除湿部233a及び流量調整部233bを有する除湿ユニット233は設けられているが、ダンパ237が設けられていなくてもよい。この場合、除湿部233aから流量調整部233bを介して露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気が、粉体用ドライボックス230及び第1ドライブース300に導入される。そして、第1ドライブース300から除湿ユニット233に空気が戻る。
【0137】
この場合、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に調整するように、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込む-80℃(第3露点温度)の空気の第1流量Q1を調整する。第1流量Q1は、例えば除湿部233aの最大排気量であり得る。このとき、制御部Cはダンパ234を開いており、除湿部233aから粉体用ドライボックス230へ、粉体用ドライボックス230から除湿部233aに空気が循環し、粉体用ドライボックス230の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に調整される。
そして、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、ダンパ234を閉じ、流量調整部233bを制御し、除湿部233aから第1ドライブース300に送り込む-80℃(第3露点温度)の空気の第2流量Q2の第1調整を行う。
【0138】
また、上記とは異なり、流量調整部233bが設けられておらず、除湿部233aが粉体用ドライボックス230のみに露点温度が-80℃(第3露点温度)の空気を導入してもよい。粉体用ドライボックス230内の空気は、ダンパ237を介して第1ドライブース300に導入される。そして、第1ドライブース300から除湿ユニット233に空気が戻る。
【0139】
この場合、制御部Cは、粉体用ドライボックス230の露点温度を-80℃(第2設定露点温度)に調整するように、除湿部233aから粉体用ドライボックス230に送り込む-80℃(第3露点温度)の空気の第1流量Q1を調整する。
そして、粉体用ドライボックス230の露点温度が-80℃(第2設定露点温度)以下になると、粉体用ドライボックス230から、ダンパ237制御し、粉体用ドライボックス230内の空気を第1ドライブース300に送り込む空気の第3流量Q3の第2調整を行う。
【0140】
(5)上記実施形態の構成に加えて、ホッパ31に投入される粉体Pの量を監視する構成を追加してもよい。
例えば、ホッパ31の最下端から所定位置の下部に粉体Pを検出可能なセンサAを設ける。センサAにより、ホッパ31の最下端から所定位置まで粉体Pがホッパ31に投入されていることが検出できる。センサAが粉体Pを検出した場合には、図示しない制御部がフィーダ220からホッパ31への粉体Pの供給速度を遅くする。これにより、ホッパ31に過度に粉体Pが供給されることを抑制し、ホッパ31での粉体Pの詰まり等を抑制できる。
さらに、ホッパ31の概ね全体に粉体Pが溜まったことを検出するセンサBを、ホッパ31の最上端近傍に設けてもよい。センサBが粉体Pを検出した場合には、図示しない制御部がフィーダ220からホッパ31への粉体Pの供給を停止する。これにより、ホッパ31から粉体Pが溢れてしまうことを抑制できる。
【0141】
(6)上記実施形態では、分散システム100は、粉体供給機構Xと、分散混合部Yと、ミキシング機構60と、再循環器後部70と、冷却装置250と、タンク260等による事例を示したが、粉体をタンク上部より投入し、自公転する撹拌翼にて分散されるミキサーや、二軸の混練機を用いても構わない。
【0142】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
31a :上部開口部
60 :ミキシング機構
200 :スラリー製造装置
210 :フィーダホッパ
221 :粉体排出口
230 :粉体用ドライボックス
233 :除湿ユニット
233a :除湿部
233b :流量調整部
237 :ダンパ
250 :冷却装置
300 :第1ドライブース
310 :第2ドライブース
F :スラリー
Fp :予備混合物
Fr :未溶解スラリー
P :粉体
R :液体
X :粉体供給装置
Y :分散混合部