(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】回転軸部材保持機構及び減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20230821BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F16H57/021
F16H1/32 A
(21)【出願番号】P 2019089801
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】王 陽昆
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 州一
(72)【発明者】
【氏名】栩川 佑樹
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130536(JP,A)
【文献】実開昭60-183561(JP,U)
【文献】特開平3-181610(JP,A)
【文献】実開平2-098216(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材によって回転可能に支持された回転軸部材と、
介在部材を介して前記回転軸部材を支持し、前記回転軸部材の軸方向への移動を規制する規制部材と、を備え
、
前記介在部材が前記規制部材及び前記回転軸部材に対して回転可能とされた板状部材であり、
前記規制部材が、前記回転軸部材に軸方向で対向する対向面から窪み、前記規制部材の外周に開口しない収容凹部を有し、
前記収容凹部に前記板状部材が収容される回転軸部材保持機構。
【請求項2】
前記ベース部材が雌ねじ部を含む内周面を有し、
前記規制部材が前記ベース部材の雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部を有する請求項1に記載の回転軸部材保持機構。
【請求項3】
雌ねじ部を含む内周面を有するベース部材と、
前記ベース部材によって回転可能に支持された回転軸部材と、
前記雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部を有すると共に、前記回転軸部材に対して回転可能とされた板状部材を介して前記回転軸部材を支持し、前記回転軸部材の軸方向への移動を規制する規制部材と、を備え
、
前記規制部材が、前記回転軸部材に軸方向で対向する対向面から窪み、前記規制部材の外周に開口しない収容凹部を有し、
前記収容凹部に前記板状部材が収容される回転軸部材保持機構。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載の回転軸部材保持機構と、
前記ベース部材を内側で相対的に回転可能に配する外筒と、
前記外筒の内側に配されて前記回転軸部材の回転に伴って揺動回転する揺動歯車と、を備え、
前記回転軸部材は、前記揺動歯車の揺動回転に基づいて前記回転軸部材の回転速度よりも遅い速度で前記外筒及び前記ベース部材を相対的に回転させるクランク軸である減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転軸部材保持機構及び減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸部材(クランク軸)をベース部材(キャリア)の内周面に回転可能に支持させ、雄ねじ部を有する規制部材をベース部材の内周面に形成された雌ねじ部に噛み合わせた回転軸部材保持機構が開示されている。この回転軸部材保持機構では、ベース部材に取り付けられた規制部材が回転軸部材の軸方向への移動を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の回転軸部材保持機構では、回転軸部材が規制部材に対して軸方向に押し付けられた状態で回転すると、回転軸部材と規制部材との間に生じる摩擦力によって、回転軸部材のスキュー力が規制部材に作用し、規制部材がベース部材に対して回転してしまう。この場合、軸方向における規制部材の位置がベース部材に対して軸方向にずれてしまうことがあり、好ましくない。
【0005】
本発明は、規制部材がベース部材に対して位置ずれすることを抑制できる回転軸部材保持機構及び減速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る回転軸部材保持機構は、ベース部材と、前記ベース部材によって回転可能に支持された回転軸部材と、介在部材を介して前記回転軸部材を支持し、前記回転軸部材の軸方向への移動を規制する規制部材と、を備え、前記介在部材が前記規制部材及び前記回転軸部材に対して回転可能とされた板状部材であり、前記規制部材が、前記回転軸部材に軸方向で対向する対向面から窪み、前記規制部材の外周に開口しない収容凹部を有し、前記収容凹部に前記板状部材が収容される。
【0007】
このように構成することで、規制部材が回転軸部材に直接接触する場合と比較して、規制部材に伝わる回転軸部材のスキュー力が小さくなる。これにより、規制部材がベース部材に対して回転することを抑えることができる。したがって、軸方向における規制部材の位置がベース部材に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
また、このように構成することで、回転軸部材が板状部材に接触している状態で回転しても、板状部材の回転速度を回転軸部材の回転速度よりも小さくできる。このため、板状部材が規制部材に接触していても、回転軸部材の回転が規制部材に伝わることを抑制できる。すなわち、規制部材に作用する回転軸部材のスキュー力を確実に小さくできる。これにより、規制部材がベース部材に対して回転することを効果的に抑えて、軸方向における規制部材の位置がベース部材に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0008】
上記構成であって、前記ベース部材が雌ねじ部を含む内周面を有し、前記規制部材が前記ベース部材の雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部を有してもよい。
雌ねじ部は、ベース部材の一部であって、ベース部材の他の部材と一体に形成されていても良い。また、雄ねじ部は、規制部材の一部であって、規制部材の他の部材と一体に形成されていても良い。
【0009】
規制部材の雄ねじ部をベース部材の雌ねじ部に噛み合わせた構成であっても、規制部材がベース部材に対して回転することを効果的に抑えることができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る回転軸部材保持機構は、雌ねじ部を含む内周面を有するベース部材と、前記ベース部材によって回転可能に支持された回転軸部材と、前記雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部を有すると共に、前記回転軸部材に対して回転可能とされた板状部材を介して前記回転軸部材を支持し、前記回転軸部材の軸方向への移動を規制する規制部材と、を備え、前記規制部材が、前記回転軸部材に軸方向で対向する対向面から窪み、前記規制部材の外周に開口しない収容凹部を有し、前記収容凹部に前記板状部材が収容される。
【0021】
このように構成することで、規制部材に作用する回転軸部材のスキュー力が小さくなる。これにより、規制部材がベース部材に対して回転することを抑えることができる。したがって、軸方向における規制部材の位置がベース部材に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0028】
本発明の一態様に係る減速機は、前記回転軸部材保持機構と、前記ベース部材を内側で相対的に回転可能に配する外筒と、前記外筒の内側に配されて前記回転軸部材の回転に伴って揺動回転する揺動歯車とを備える。前記回転軸部材は、前記揺動歯車の揺動回転に基づいて前記回転軸部材の回転速度よりも遅い速度で前記外筒及び前記ベース部材を相対的に回転させるクランク軸である。
【0029】
このように構成することで、減速機がベース部材に対する規制部材の位置ずれを抑制できる回転軸部材保持機構を含むため、減速機の信頼性を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
上述の回転軸部材保持機構及び減速機では、軸方向における規制部材の位置がベース部材に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る減速機を示す断面図である。
【
図2】
図1の減速機のうち第一規制部材及びその近傍を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1の減速機のうち第二規制部材及びその近傍を示す拡大断面図である。
【
図4】
図3の第二規制部材の要部及びその近傍を示す拡大断面図である。
【
図5】第一実施形態の減速機の変形例を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る減速機の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る減速機1は、外筒2と、外筒2の内側に配されるキャリア(ベース部材)3及び揺動歯車4と、キャリア3及び揺動歯車4に取り付けられるクランク軸(回転軸部材)5と、キャリア3に取り付けられる規制部材6と、を備える。
キャリア3、クランク軸5及び規制部材6は、本実施形態に係る回転軸部材保持機構100を構成する。回転軸部材保持機構100は、規制部材6によってクランク軸5をキャリア3に対して保持する機構である。
【0033】
外筒2は、軸C1を中心とする円筒状に形成されている。外筒2は、その内周に複数の内歯21を有する。具体的に、外筒2は、円筒状の本体筒部22と、本体筒部22の内周に取り付けられ、本体筒部22の周方向に等間隔で並べられた複数の内歯ピン23を有する。内歯ピン23は、前述の内歯21をなす。内歯ピン23は、外筒2の軸C1方向に延びる円柱状に形成されている。
【0034】
キャリア3は、外筒2の内側に配される。キャリア3は、外筒2に対して軸C1を中心に相対的に回転可能となっている。具体的に、減速機1は、外筒2の内周とキャリア3の外周との間に設けられた主軸受B1を備える。主軸受B1は、軸C1方向に間隔をあけて二つ設けられている。二つの主軸受B1は、軸C1方向における外筒2の内歯21の両側に位置する。主軸受B1は、外筒2とキャリア3との相対的な回転を許容する。
【0035】
キャリア3は、軸C1方向で後述する揺動歯車4を挟むように構成されている。キャリア3は、軸C1方向に並ぶ第一部材31及び第二部材32を有する。また、キャリア3は、軸C1方向で第一、第二部材31,32の間に配されるシャフト部33を有する。シャフト部33により、第一部材31と第二部材32との間には揺動歯車4を配する空間が形成される。シャフト部33は、キャリア3の周方向に間隔をあけて複数(例えば三つ)配列される。シャフト部33は、図示例のように第二部材32に一体に形成されてもよいし、例えば第一部材31に一体に形成されてもよい。
第一部材31と第二部材32とは、ねじ等の締結部材T1によって互いに締結される。図示例では、締結部材T1は、第一部材31と第二部材32に一体に形成されたシャフト部33とを締結しているが、これに限ることはない。
【0036】
キャリア3には、軸C1方向に貫通する中央孔31a,32aが形成されている。中央孔31a,32aは、第一部材31及び第二部材32にそれぞれ形成されている。中央孔31a,32aは、径方向におけるキャリア3の中心部分に位置する。中央孔31a,32aは、例えば軸C1を中心とする孔であってよい。
【0037】
キャリア3は、後述するクランク軸5が挿入される挿入孔31b,32bを有する。挿入孔31b,32bは、第一部材31及び第二部材32にそれぞれ形成されている。第一部材31及び第二部材32に形成された二つの挿入孔31b,32bの軸線は、互いに一致する。第一、第二部材31,32の挿入孔31b,32bの一方は、例えば貫通しなくてもよい。本実施形態の挿入孔31b,32bは、第一部材31及び第二部材32の両方を貫通する。
【0038】
挿入孔31b,32bの内周面31e,32eは、雌ねじ部31f,32fを有する。雌ねじ部31f,32fは、挿入孔31b,32bのうち軸C1方向におけるキャリア3の端部に形成される。具体的に、雌ねじ部31f,32fは、第一、第二部材31,32の配列方向の外側に位置する第一、第二部材31,32の外側端部31d,32dにそれぞれ形成される。
【0039】
また、挿入孔31b,32bの内周面31e,32eは、段差部31g,32gと、径方向支持部31h,32hとを有する。段差部31g,32gは、軸C1方向でキャリア3の外側に向く面である。径方向支持部31h,32hは、後述するクランク軸5を径方向から支持する面である。径方向支持部31h,32hの径寸法は、雌ねじ部31f,32fの径寸法よりも小さい。段差部31g,32g及び径方向支持部31h,32hは、第一、第二部材31,32の両方に形成される。
【0040】
雌ねじ部31f,32f、段差部31g,32g及び径方向支持部31h,32hは、この順番で軸C1方向におけるキャリア3の両端部(外側端部31d,32d)からキャリア3の内側に向けて並ぶ。具体的に、第一部材31の雌ねじ部31f、段差部31g及び径方向支持部31hは、この順番で第一部材31の外側端部31dから内側端部31cに向けて並ぶ。また、第二部材32に形成された雌ねじ部32f、段差部32g及び径方向支持部32hは、この順番で第二部材32の外側端部32dから内側端部32cに向けて並ぶ。
【0041】
クランク軸5は、キャリア3の挿入孔31b,32bの内周面31e,32eに回転可能に支持される。
具体的に、クランク軸5は、第一、第二ジャーナル部51,52を有する。第一、第二ジャーナル部51,52の軸線は互いに一致する。第一、第二ジャーナル部51,52は、クランク軸5の軸方向に互いに間隔をあけて位置する。第一ジャーナル部51は、第一部材31の挿入孔31bの径方向支持部31hに回転可能に支持される。また、第二ジャーナル部52は、第二部材32の挿入孔32bの径方向支持部32hに回転可能に支持される。
【0042】
減速機1は、挿入孔31b,32bの径方向支持部31h,32hとクランク軸5の外周との間に設けられたクランク軸受(回転軸受)7を備える。クランク軸受7は、キャリア3に対するクランク軸5の回転を許容する。クランク軸受7は、円柱状に形成され、挿入孔31b,32bの内周面31e,32eの周方向に配列された複数の転動体を有する。クランク軸受7は、転動体の軸方向がクランク軸5の軸線に平行する針軸受である。
具体的に、クランク軸受7は、第一部材31の挿入孔31bの径方向支持部31hと第一ジャーナル部51との間に設けられる。また、クランク軸受7は、第二部材32の挿入孔32bの径方向支持部32hと第二ジャーナル部52との間に設けられる。
【0043】
また、クランク軸5は、第一、第二ジャーナル部51,52よりも径寸法が小さい小径部53を有する。小径部53の軸線は、第一、第二ジャーナル部51,52の軸線と一致する。小径部53は、クランク軸5の軸方向で第二ジャーナル部52との間に第一ジャーナル部51が位置するように、第一ジャーナル部51から軸方向に延びる。小径部53の一部は、軸方向におけるキャリア3の外側(具体的には第一部材31の外側端部31dの外側)に位置する。なお、小径部53はなくてもよく、例えば第一ジャーナル部51の一部が軸方向におけるキャリア3の外側まで延びてもよい。
【0044】
また、クランク軸5は、第一、第二ジャーナル部51,52及び小径部53に対して偏心する偏心部54を有する。偏心部54は、クランク軸5の軸方向で第一、第二ジャーナル部51,52の間に位置する。偏心部54は、キャリア3の第一部材31と第二部材32との間の空間に配される。本実施形態の偏心部54は、軸方向に並ぶ第一偏心部54A及び第二偏心部54Bを有する。第一、第二偏心部54A,54Bは互いに偏心する。
以上のように構成されるクランク軸5は、キャリア3と共に外筒2の内側に配される。図示しないが、クランク軸5は、キャリア3の周方向に互いに間隔をあけて複数(例えば三つ)配列される。
【0045】
揺動歯車4は、キャリア3と同様に外筒2の内側に配される。また、揺動歯車4は、軸C1方向でキャリア3の第一、第二部材31,32の間に配される。揺動歯車4は、偏心部軸受8を介してクランク軸5の偏心部54に取り付けられる。揺動歯車4は、前述したクランク軸5の回転に伴って外筒2の内側で揺動回転する。
【0046】
本実施形態の揺動歯車4は、クランク軸5の第一偏心部54Aに取り付けられる第一揺動歯車41と、第二偏心部54Bに取り付けられる第二揺動歯車42とを有する。第一、第二揺動歯車41,42は、軸C1方向に並ぶ。
第一揺動歯車41には、軸C1方向に貫通して第一偏心部54Aが挿入される第一挿入孔41aが形成されている。減速機1は、第一偏心部54Aの外周と第一挿入孔41aの内周との間に設けられた第一偏心部軸受81を備える。第一偏心部軸受81は、第一揺動歯車41に対する第一偏心部54Aの回転を許容する。
【0047】
第二揺動歯車42には、軸C1方向に貫通して第二偏心部54Bが挿入される第二挿入孔42aが形成されている。減速機1は、第二偏心部54Bの外周と第二挿入孔42aの内周との間に設けられた第二偏心部軸受82を備える。第二偏心部軸受82は、第二揺動歯車42に対する第二偏心部54Bの回転を許容する。
第一、第二偏心部軸受81,82は、クランク軸受7と同様の針軸受である。すなわち、第一、第二偏心部軸受81,82は、円柱状に形成され、周方向に配列された複数の転動体を有する。当該転動体の軸方向はクランク軸5の軸線に平行する。
【0048】
第一、第二揺動歯車41,42は、それぞれ外周に複数の外歯41b,42bを有する。複数の外歯41b,42bは、周方向に配列されている。第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bは、前述した外筒2の内歯21に噛み合う。第一、第二揺動歯車41,42の外周の周方向の長さは、外筒2の内周の周方向の長さよりも小さい。第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bの数は、外筒2の内歯21の数よりも少ない。
第一、第二揺動歯車41,42には、それぞれ、キャリア3の中央孔31a,32aの位置に対応する中央孔41c,42c、及び、キャリア3のシャフト部33が通る貫通孔41d、42dも形成されている。
【0049】
本実施形態の減速機1は、クランク軸5に駆動力を伝達してクランク軸5を回転させる伝達歯車9をさらに備える。クランク軸5に対する伝達歯車9の取り付け位置は任意であってよい。本実施形態では、伝達歯車9は、軸C1方向でキャリア3の外側に位置するクランク軸5の小径部53に取り付けられる。伝達歯車9は、小径部53の軸を中心に回転する。伝達歯車9は、外周に複数の外歯91を有する。伝達歯車9の外歯91がモータの入力軸(不図示)等に噛み合うことで、伝達歯車9はモータの駆動力をクランク軸5に伝達する。
【0050】
このように構成される本実施形態の減速機1では、伝達歯車9から駆動力を受けてクランク軸5が回転すると、第一、第二偏心部54A,54Bの偏心した回転によって、第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bと外筒2の内歯21との噛み合わせ位置が周方向に移動するように、第一、第二揺動歯車41,42が外筒2に対して揺動回転する。
【0051】
また、第一偏心部54Aと第二偏心部54Bとが互いに偏心しているため、第一揺動歯車41の外歯41b、及び、第二揺動歯車42の外歯42bは、周方向で互いに異なる位置で外筒2の内歯21に噛み合う。これにより、第一揺動歯車41と第二揺動歯車42とは、外筒2の内部で互いに異なる位相で揺動回転する。
【0052】
そして、第一、第二揺動歯車41,42の揺動回転がクランク軸5を介してキャリア3に伝わることで、軸C1を中心としてキャリア3が外筒2に対して回転する。すなわち、外筒2とキャリア3とが相対的に回転する。この相対的な回転速度は、クランク軸5の回転速度よりも遅い。すなわち、入力されたクランク軸5の回転に対して減速したキャリア3あるいは外筒2の回転を出力できる。
【0053】
図1~3に示すように、規制部材6は、キャリア3の挿入孔31b,32bの雌ねじ部31f,32fに噛み合う雄ねじ部61a,62aを有する。すなわち、規制部材6はその雄ねじ部61a,62aをキャリア3の雌ねじ部31f,32fに噛み合わせることで、キャリア3の挿入孔31b,32bに取り付けられる。規制部材6は、クランク軸5の軸方向への移動を規制する。
【0054】
規制部材6は、小径部53を除くクランク軸5の軸方向の両端に隣り合わせて配される第一規制部材61及び第二規制部材62を有する。第一規制部材61及び第二規制部材62は、クランク軸5を軸方向から挟む。これにより、第一規制部材61及び第二規制部材62は、軸方向におけるクランク軸5の移動を規制する。
【0055】
第一規制部材61は、クランク軸5の軸方向から見て円形状に形成される。
図1,2に示すように、第一規制部材61は、キャリア3の第二部材32に取り付けられ、軸方向でクランク軸5の第二ジャーナル部52の隣に配される。軸方向で第二ジャーナル部52に対向する第一規制部材61の端面61bのうち外周領域は、第二部材32の挿入孔32bの段差部32gに接触する。これにより、第一規制部材61は、軸方向で第二部材32に対して位置決めされる。
【0056】
図2に示すように、第一規制部材61は、クランク軸5を軸方向から支持する軸方向支持部(支持部)63を有する。軸方向支持部63は、径方向(半径方向)におけるクランク軸5(特に第二ジャーナル部52)の中間よりも径方向の内側でクランク軸5を支持する。径方向におけるクランク軸5(第二ジャーナル部52)の中間は、径方向におけるクランク軸5の回転中心(軸線)とクランク軸5の周縁との中間の位置である、また、クランク軸5の径寸法の半分となるクランク軸5の位置である。
軸方向支持部63は、軸方向で第一規制部材61に対向する第二ジャーナル部52の端面52aのうち、径方向における端面52aの中間よりも内側に位置する内側領域52bと重なる第一規制部材61の部位、あるいは、径方向で内側領域52bよりも内側に位置する第一規制部材61の部位である。
図2における軸方向支持部63は、径方向で内側領域52bよりも内側に位置する第一規制部材61の部位である。
【0057】
軸方向支持部63は、例えば第一規制部材61のうち第二ジャーナル部52(クランク軸5)の軸線を中心とする円環状の部位であってよい。本実施形態における軸方向支持部63は、第一規制部材61のうち第二ジャーナル部52(クランク軸5)の軸線を中心とする円形状の部位である。すなわち、本実施形態の軸方向支持部63は、径方向における第二ジャーナル部52(クランク軸5)の中心部分に位置する。
【0058】
本実施形態の減速機1は、軸方向で第二ジャーナル部52(クランク軸5)と第一規制部材61との間に介在する球状部材(介在部材)10を備える。すなわち、第一規制部材61は、球状部材10を介して第二ジャーナル部52(クランク軸5)を支持する。球状部材10は、キャリア3、クランク軸5、規制部材6と共に本実施形態の回転軸部材保持機構100を構成する。
本実施形態では、球状部材10が第二ジャーナル部52と第一規制部材61の軸方向支持部63との間に介在する。球状部材10は、クランク軸5の軸方向から見て第一規制部材61の軸方向支持部63に対応する位置に配されればよい。本実施形態の球状部材10は、軸方向支持部63と同様に径方向における第二ジャーナル部52(クランク軸5)の中心部分に位置する。
【0059】
本実施形態の球状部材10は、第二ジャーナル部52(クランク軸5)や第一規制部材61に対して径方向に移動しないように、第二ジャーナル部52に保持される。すなわち、第二ジャーナル部52は、球状部材10を保持する保持部55を有する。保持部55は、第二ジャーナル部52の端面52aのうち内側領域52bに位置すればよい。
本実施形態の保持部55は、第二ジャーナル部52の端面52aから窪む有底の穴である。保持部55は、任意形状の穴であってよいが、本実施形態では円錐状の穴である。保持部55が円錐状の穴であることで、保持部55を高い精度で形成しなくても、球状部材10が第二ジャーナル部52や第一規制部材61に対して径方向に移動することを簡単に防止できる。
【0060】
図1,3に示す第二規制部材62は、第一規制部材61と同様に、クランク軸5の軸方向から見て円形状に形成される。第二規制部材62は、キャリア3の第一部材31に取り付けられ、軸方向でクランク軸5の第一ジャーナル部51の隣に配される。このため、第二規制部材62には、これを軸方向に貫通してクランク軸5の小径部53が通る貫通孔62cが形成されている。
【0061】
図3,4に示すように、第二規制部材62は、クランク軸5の軸方向で第一ジャーナル部51に対向する端面(対向面)62bから軸方向の一方側に延びる環状の第一環状突起(環状突起)65を有する。軸方向の一方側は、軸方向で第二規制部材62側から第一ジャーナル部51側に向かう方向(
図3,4では下方向)である。
第一環状突起65は、第二規制部材62の端面62bのうち第一部材31の挿入孔31bの段差部31gに対向する外周領域に配される。第一環状突起65は、軸方向の一方側に向かうにしたがって径方向外側に延びる第一テーパ面(テーパ面)65aを有する。第一テーパ面65aは、第一環状突起65の内周に形成される。第一テーパ面65aには、後述する第二環状突起34が押し付けられる。
【0062】
キャリア3の第一部材31は、第一環状突起65の径方向内側に配される環状の第二環状突起(環状突起)34を有する。第二環状突起34は、第一部材31の挿入孔31bの段差部31gから軸方向の他方側(
図3,4では上方向)に延びる、すなわち、第一環状突起65に向けて延びる。第二環状突起34は、軸方向の一方側に向かうにしたがって径方向外側に延びる第二テーパ面(テーパ面)34aを有する。第二テーパ面34aは、第二環状突起34の外周に形成される。第二テーパ面34aには、前述した第一環状突起65が押し付けられる。
本実施形態では、第一環状突起65の第一テーパ面65aと第二環状突起34の第二テーパ面34aとが互いに面接触する。すなわち、軸方向に対する第一、第二テーパ面65a,34aの傾斜角度が互いに等しい。
【0063】
第二規制部材62が第一環状突起65を有し、キャリア3の第一部材31が第二環状突起34を有することで、第二規制部材62を第一部材31に取り付けて第一ジャーナル部51に向けて進めると、第二規制部材62の第一環状突起65が第一、第二テーパ面65a,34aによって径方向の外側に押し付けられる。このため、雄ねじ部62aを含む第二規制部材62の外周部分が第一部材31の雌ねじ部31f,32fに押し付けられる。すなわち、第二規制部材62を第一部材31に対して保持する力が生じる。
【0064】
第一環状突起65の第一テーパ面65aと第二環状突起34の第二テーパ面34aとを面接触させた状態では、第二環状突起34が第二規制部材62の端面62bに対して軸方向に間隔をあけて位置するとよい。第二環状突起34を第二規制部材62の端面62bに対して間隔をあけて配するためには、例えば、第一環状突起65の突出方向の基端に位置する第一テーパ面65aの端部における径寸法D1(第一環状突起65の内径寸法D1)は、第二環状突起34の突出方向の先端に位置する第二テーパ面34aの端部における径寸法D2よりも小さいとよい。また、軸方向における第一環状突起65の長さ寸法L1が、軸方向における第二環状突起34の長さ寸法L2以下であるとよい。すなわち、以下の二つの式を満たすとよい。
D1<D2
L1≦L2
【0065】
このように、第一実施形態の回転軸部材保持機構100及び減速機1では、第一規制部材61が球状部材10を介してクランク軸5を支持する。このため、第一規制部材61がクランク軸5に直接接触する場合と比較して、第一規制部材61に伝わるクランク軸5のスキュー力が小さくなる。特に、第一規制部材61と球状部材10とを非常に小さい面積で接触させることができる。同様に、クランク軸5と球状部材10とを非常に小さい面積で接触させることができる。このため、第一規制部材61に伝わるクランク軸5のスキュー力が特に小さくなる。これにより、球状部材10が第一規制部材61に接触していても、クランク軸5の回転が第一規制部材61に伝わることを抑制できる。このため、第一規制部材61がキャリア3に対して回転することを抑えることができる。したがって、軸方向における第一規制部材61の位置がキャリア3に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。また、第一規制部材61の位置ずれを抑制できることで、減速機1の信頼性を向上できる。
【0066】
上記した効果は、キャリア3が雌ねじ部32fを有し、第一規制部材61が雌ねじ部32fに噛み合う雄ねじ部61aを有する場合に、特に有効である。
【0067】
また、第一規制部材61は、径方向(半径方向)におけるクランク軸5の中間よりも径方向の内側でクランク軸5を支持する軸方向支持部63を備える。このため、第一規制部材61がクランク軸5の中間よりも径方向の外側でクランク軸5を支持する場合と比較して、クランク軸5のスキュー力によって第一規制部材61に作用するモーメントが小さくなる。すなわち、第一規制部材61に作用するクランク軸5のスキュー力が小さくなる。これにより、第一規制部材61がキャリア3(特に第二部材32)に対して回転することをさらに抑えることができる。したがって、軸方向における第一規制部材61の位置がキャリア3に対して軸方向にずれてしまうことを効果的に抑制できる。
【0068】
さらに、クランク軸5と第一規制部材61との間に生じる摩擦力が小さくなるため、クランク軸5を小さい力で効率よく回転させることができる。
【0069】
また、第一規制部材61の軸方向支持部63は、径方向におけるクランク軸5の中心部分に位置する。このため、第一規制部材61に作用するクランク軸5のスキュー力をさらに小さくすることができる。これにより、第一規制部材61がキャリア3に対して回転することを効果的に抑えて、軸方向における第一規制部材61の位置がキャリア3に対して軸方向にずれてしまうことをさらに抑制できる。
【0070】
さらに、第一実施形態の回転軸部材保持機構100及び減速機1では、第二規制部材62がクランク軸5に軸方向で対向する端面62bから軸方向の一方側(
図3,4で下方向)に延びる第一環状突起65を有する。また、キャリア3が第一環状突起65の径方向内側に配される第二環状突起34を有する。このため、第二規制部材62をキャリア3に対して回転させて軸方向の一方側に進めると、第二規制部材62の第一環状突起65をキャリア3の第二環状突起34径方向外側に押し付けることができる。そして、第二規制部材62の外周部分をキャリア3の雌ねじ部31fに押し付けることができる。
【0071】
特に、本実施形態では、第二規制部材62の第一環状突起65が第一テーパ面65aを有する。また、第一環状突起65の径方向内側に配されるキャリア3の第二環状突起34が第二テーパ面34aを有する。このため、第二規制部材62の第一環状突起65を第一、第二テーパ面65a,34aによって確実に径方向外側に押し付けることができる。すなわち、第二規制部材62の外周部分をキャリア3の雌ねじ部31fに押し付けることができる。
これにより、クランク軸5のスキュー力が第二規制部材62に作用しても、雄ねじ部62aを含む第二規制部材62の外周部分をキャリア3の雌ねじ部31fに押し付ける押付力によって、第二規制部材62がキャリア3に対して回転することを抑えることができる。したがって、軸方向における第二規制部材62の位置がキャリア3に対して軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0072】
また、第一環状突起65の第一テーパ面65aと第二環状突起34の第二テーパ面34aとが互いに面接触する。このため、第一環状突起65と第二環状突起34との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、クランク軸5のスキュー力が第二規制部材62に作用しても、第二規制部材62がキャリア3に対して回転することをさらに効果的に抑えて、軸方向における第二規制部材62の位置がキャリア3に対して軸方向にずれてしまうことをさらに抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の回転軸部材保持機構100では、以下の二つの式を満たす。
D1<D2
L1≦L2
D1:第一環状突起65の突出方向の基端に位置する第一テーパ面65aの端部における径寸法
D2:第二環状突起34の突出方向の先端に位置する第二テーパ面34aの端部における径寸法
L1:軸C1方向における第一環状突起65の長さ寸法L1
L2:軸C1方向における第二環状突起34部の長さ寸法
これにより、第一テーパ面65aと第二テーパ面34aとを面接触させた状態では、第二環状突起34を第二規制部材62の端面62bに対して軸方向に間隔をあけて位置させることができる。すなわち、第二環状突起34が軸方向で第二規制部材62の端面62bに押し付けられることで、第一、第二テーパ面65a,34aによる第一環状突起65の径方向外側への押し付けが弱まったり、無くなったりすることを防止できる。
【0074】
上述した第一実施形態では、例えば
図5に示すように、第一規制部材61が球状部材10を保持する保持部64を有してよい。第一規制部材61の保持部64は、第一規制部材61の軸方向支持部63に配されればよい。第一規制部材61の保持部64は、例えばクランク軸5の保持部55と同様に、クランク軸5に対向する第一規制部材61の端面61bから窪む有底の穴であってよい。
図4の構成では、クランク軸5及び第一規制部材61の両方が保持部55,64を有するが、例えば第一規制部材61だけが保持部64を有してもよい。
【0075】
上述した第一実施形態では、例えば、第一規制部材61の軸方向支持部63がクランク軸5に直接接触してもよい。この場合、第一規制部材61の軸方向支持部63は、第一規制部材61の他の部位に対してクランク軸5に向けて軸C1方向に突出する柱状又は筒状の突起を有するとよい。なお、柱状又は筒状の突起は、例えばクランク軸5に設けられてもよい。
【0076】
上述した第一実施形態では、例えば第二規制部材62が、第一規制部材61と同様の軸方向支持部63を有してよい。また、例えば球状部材10がクランク軸5(第一ジャーナル部51)と第二規制部材62との間に介在してもよい。
【0077】
上述した第一実施形態では、第一環状突起65及び第二環状突起34の両方がテーパ面を有するが、例えば第一環状突起65及び第二環状突起34の一方だけがテーパ面を有してもよい。
【0078】
上述した第一実施形態では、例えば第一規制部材61が第二規制部材62と同様の第一環状突起65を有し、キャリア3の第二部材32が第一部材31と同様の第二環状突起34を有してもよい。
【0079】
〔第二実施形態〕
次に、
図6を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0080】
図6に示すように、第二実施形態の減速機1Xは、第一実施形態と同様に、キャリア3と、クランク軸5と、規制部材6とを有する回転軸部材保持機構100Xを備える。第二実施形態の減速機1Xの他の構成は、第一実施形態の減速機1(
図1参照)と同様である。
回転軸部材保持機構100Xを構成する第二規制部材62Xは、第一実施形態と同様に、キャリア3の第一部材31に取り付けられ、軸方向でクランク軸5の第一ジャーナル部51の隣に配される。第二規制部材62Xは、その雄ねじ部62aが第一部材31の雌ねじ部31fに噛み合うことで、第一部材31に取り付けられる。
【0081】
ただし、本実施形態の回転軸部材保持機構100Xは、クランク軸5の軸方向(
図6では上下方向)で第二規制部材62Xとクランク軸5の第一ジャーナル部51との間に介在する板状部材(介在部材)11Xを備える。すなわち、第二規制部材62Xは、板状部材11Xを介して第一ジャーナル部51(クランク軸5)を支持する。板状部材11Xは、第二規制部材62X及び第一ジャーナル部51に対して回転可能とされている。
軸方向で互いに反対側に向く板状部材11Xの第一主面11Xa、第二主面11Xbは、それぞれ第二規制部材62X、第一ジャーナル部51に接触可能である。
【0082】
また、板状部材11Xは、軸方向で、第一ジャーナル部51の外周側に設けられたクランク軸受7と第二規制部材62Xとの間にも介在する。このため、板状部材11Xの第二主面11Xbは、クランク軸受7にも接触可能である。
板状部材11X(特に第一主面11Xa、第二主面11Xb)の摩擦係数は小さいことが好ましい。本実施形態では、板状部材11Xを鉄で形成することで、板状部材11Xの摩擦係数を小さく抑えている。
【0083】
本実施形態の板状部材11Xには、第二規制部材62Xと同様に小径部53が通る貫通孔11Xcが形成されている。このため、板状部材11Xは環状に形成されている。軸方向から見た板状部材11Xの外形形状は、例えば多角形状でもよいが、円形状であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態では、第二規制部材62Xが、板状部材11Xを収容する収容凹部66Xを有する。収容凹部66Xは、軸方向で第一ジャーナル部51(クランク軸5)に対向する第二規制部材62Xの端面62bから窪む。収容凹部66Xは、雄ねじ部62aを形成した第二規制部材62Xの外周に開口しない。収容凹部66Xは、例えば環状に形成された第二規制部材62Xの内周に開口しなくてもよいが、本実施形態では第二規制部材62Xの内周に開口している。
【0085】
第二実施形態の回転軸部材保持機構100X及び減速機1Xは、第二規制部材62Xとクランク軸5との間に介在して、第二規制部材62X及びクランク軸5に対して回転可能とされた板状部材11Xを備える。また、板状部材11Xは、第二規制部材62Xとクランク軸受7との間にも介在する。このため、第二規制部材62Xがクランク軸5やクランク軸受7に直接接触する場合と比較して、第二規制部材62Xに伝わるクランク軸5やクランク軸受7のスキュー力が小さくなる。例えば、板状部材11Xがクランク軸5やクランク軸受7に接触していると、板状部材11Xとクランク軸5やクランク軸受7との摩擦により、板状部材11Xはクランク軸5やクランク軸受7と共に回転する。ただし、板状部材11Xの回転速度をクランク軸5やクランク軸受7の回転速度よりも小さくできる。これにより、板状部材11Xが第二規制部材62Xに接触していても、クランク軸5の回転が第二規制部材62Xに伝わることを抑制できる。これにより、第二規制部材62Xがキャリア3に対して回転することを抑えることができる。したがって、第一実施形態の場合と同様に、軸C1方向における第二規制部材62Xの位置がキャリア3に対して軸C1方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0086】
また、板状部材11Xと、クランク軸5や第二規制部材62X、クランク軸受7との間に生じる摩擦力も小さくなる。特に、板状部材11Xの摩擦係数が小さい場合には、板状部材11Xと、クランク軸5や第二規制部材62X、クランク軸受7との摩擦力をより小さく抑えることができる。これにより、クランク軸5を小さい力で効率よく回転させることができる。
【0087】
また、第二規制部材62Xは、第二規制部材62Xの端面62bから窪み、第二規制部材62Xの外周に開口しない収容凹部66Xを有する。この収容凹部66Xに板状部材11Xを収容することで、第二規制部材62X及び板状部材11Xの両方を含む軸方向の寸法を、板状部材11Xが無い第二規制部材62Xのみの寸法と同等(同じ又は微小に異なる)とすることができる。
【0088】
このため、板状部材11Xの有無によらず第二規制部材62X及び板状部材11Xの両方を含む軸方向の寸法を変化させない場合には、単純に板状部材11Xを第二規制部材62Xに重ねる場合と比較して、第二規制部材62Xの外周における軸方向の寸法を大きく確保できる。これにより、軸方向におけるキャリア3の雌ねじ部31fと第二規制部材62Xの雄ねじ部62aとの噛み合わせの長さを確保できる。
一方、板状部材11Xの有無によらず第二規制部材62Xの軸方向の寸法を変化させない場合には、単純に板状部材11Xを規制部材6に重ねる場合と比較して、規制部材6及び板状部材11Xの両方を含む軸方向の寸法を小さくできる。すなわち、回転軸部材保持機構100Xや減速機1Xの小型化を図ることができる。
【0089】
上述した第二実施形態における板状部材11Xは、第一実施形態の回転軸部材保持機構100に適用されてもよい。板状部材11Xは、例えば第一実施形態の第一規制部材61とクランク軸5(第二ジャーナル部52)との間に介在してもよいし、第一実施形態の第二規制部材62とクランク軸5(第一ジャーナル部51)との間に介在してもよい。
【0090】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0091】
本発明の減速機における揺動歯車の数は、例えば一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。また、クランク軸における偏心部の数は、揺動歯車の数に対応していればよい。
【0092】
本発明に係る回転軸部材保持機構は、減速機に適用されることに限らず、任意の機械や装置に適用されてよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1X…減速機、2…外筒、3…キャリア(ベース部材)、4…揺動歯車、5…クランク軸(回転軸部材)、6…規制部材、10…球状部材(介在部材)、11X…板状部材(介在部材)、31…第一部材、31e…内周面、31f…雌ねじ部、34…第二環状突起、34a…第二テーパ面(テーパ面)、32…第二部材、32e…内周面、32f…雌ねじ部、55…保持部、61…第一規制部材、61a…雄ねじ部、62,62X…第二規制部材、62a…雄ねじ部、62b…端面(対向面)、63…軸方向支持部(支持部)、64…保持部、65…第一環状突起、65a…第一テーパ面(テーパ面)、66X…収容凹部、100,100X…回転軸部材保持機構