(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20230821BHJP
B02C 17/18 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B02C17/16 B
B02C17/18 Z
(21)【出願番号】P 2019134056
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年6月20日に、環境資源工学会第138回学術講演会にて発表した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000174965
【氏名又は名称】日本コークス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】所 千晴
(72)【発明者】
【氏名】関根 靖由
(72)【発明者】
【氏名】岩本 玄徳
(72)【発明者】
【氏名】奥山 杏子
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-027699(JP,A)
【文献】中国実用新案第208894076(CN,U)
【文献】特開2010-284588(JP,A)
【文献】特開2002-095988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
B01F 25/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物及び粉砕メディアを収容する
軸線が水平に設置された筒状の粉砕容器と、前記粉砕容器の内部を撹拌する撹拌機と、を備え、前記処理物を微細粒子に粉砕する粉砕機であって、
前記撹拌機は、前記粉砕容器に挿入され、前記粉砕容器の軸線に対して平行に延びる回転軸と、
前記回転軸を回転する駆動機構と、
前記回転軸の周面から突出すると共に、先端が前記回転軸の端部に向かって傾いた複数のアームと、を備え
、
前記複数のアームは、それぞれ所定の直径寸法を有する棒部材によって形成され、前記回転軸を挟んで反対向きに突出する第1アーム及び第2アームを有するアーム組を構成し、
前記粉砕容器の周面方向から前記撹拌機を見たとき、前記回転軸の軸方向に対して斜めに交差する任意の直線を基準直線とするとき、前記第1アームと前記第2アームは、互いの突出方向が同一の基準直線に一致する
ことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載された粉砕機において、
前記複数のアーム
は、前記回転軸の軸方向に沿って並んで設けられ、
隣接する一対のアームの先端同士の、前記回転軸の軸方向に沿った間隔は、前記アームの直径寸法の1.5倍以下の長さに設定されている
ことを特徴とする粉砕機。
【請求項3】
請求項2に記載された粉砕機において、
前記第1アームの先端と前記第2アームの先端との、前記回転軸の軸方向に沿った間隔は、前記アームの直径寸法の1.5倍以下の長さに設定されている
ことを特徴とする粉砕機。
【請求項4】
請求項3に記載された粉砕機において、
前記アーム組は、前記回転軸の軸方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられ、前記アーム組同士の間隔は、前記アームの直径寸法の1.5倍以下の長さに設定されている
ことを特徴とする粉砕機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された粉砕機において、
前記複数のアームは、前記回転軸
の軸方向
に沿って並ぶと共に、前記回転軸が回転したときのアーム軌道の周囲に形成される撹拌領域を連続させる位置に設けられている
ことを特徴とする粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理物及び粉砕メディアを収容する筒状の粉砕容器と、粉砕容器の内部を撹拌する撹拌機と、を備え、撹拌機が、粉砕容器に挿入されると共に粉砕容器の軸方向に対して平行に延びる回転軸と、回転軸を回転する駆動機構と、回転軸の外周面から突出する複数のアームと、を有する粉砕機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の粉砕機では、複数のアームが、それぞれ回転軸の軸方向に直交する方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粉砕機では、複数のアームが回転軸の軸方向に対して直交する方向に延在しているため、アームが移動して処理物及び粉砕メディアを撹拌したときの粉砕メディアの動きがランダムになりにくい。そのため、粉砕容器の内部に、粉砕メディアの動きが激しい領域と粉砕メディアの動きが鈍い領域とが生じてしまう。そして、粉砕メディアの動きが鈍い領域には処理物が集まってきて、時間の経過とともに粉砕容器の内周面に付着し、次第に大きく成長する傾向がある。つまり、粉砕容器の内周面に処理物の付着が生じてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、粉砕容器の内周面への処理物の付着を防止できる粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の粉砕機は、処理物及び粉砕メディアを収容する軸線が水平に設置された筒状の粉砕容器と、粉砕容器の内部を撹拌する撹拌機と、を備え、処理物を微細粒子に粉砕する粉砕機である。ここで、撹拌機は、回転軸と、駆動機構と、複数のアームと、を備える。回転軸は、粉砕容器に挿入され、粉砕容器の軸線に対して平行に延びる。また、駆動機構は、回転軸を回転駆動する。複数のアームは、回転軸の周面から突出すると共に、先端が回転軸の端部に向かって傾いている。さらに、複数のアームは、それぞれ所定の直径寸法を有する棒部材によって形成され、回転軸を挟んで反対向きに突出する第1アーム及び第2アームを有するアーム組を構成する。そして、粉砕容器の周面方向から撹拌機を見たとき、回転軸の軸方向に対して斜めに交差する任意の直線を基準直線とするとき、第1アームと第2アームは、互いの突出方向が同一の基準直線に一致する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、回転軸の周面から突出した複数のアームの先端が回転軸の端部に向かって傾いており、回転軸が回転したときのアーム軌道の周囲に形成される撹拌領域は、回転軸の軸線に対して傾斜する。これにより、粉砕メディアの動きがランダムになり、粉砕メディアの動きの激しさに偏りが生じにくくなる。このため、粉砕メディアの動きの鈍い領域に処理物が集まることがなく、粉砕容器の内周面への処理物の付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例1の粉砕機の要部を拡大した側面図である。
【
図4】実施例1の撹拌機が回転したときのアーム軌道及び撹拌領域を示す説明図である。
【
図5】(a)比較例の粉砕機を示す概略側面図である。(b)
図5(a)のB-B断面図である。
【
図6】比較例の粉砕機における撹拌機が回転したときのアーム軌道及び撹拌領域を示す説明図である。
【
図9】実施例2の粉砕機の要部を拡大した側面図である。
【
図10】実施例2の撹拌機が回転したときのアーム軌道及び撹拌領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の粉砕機を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1の粉砕機10の構成を、
図1~
図4に基づいて説明する。
【0011】
実施例1の粉砕機10は、軸線が水平に設置された横型円筒状の粉砕容器20と、粉砕容器20の内部を撹拌する撹拌機30と、を備えたメディア撹拌型の乾式粉砕機である。なお、湿式粉砕が、液体中に固体粒子を懸濁したスラリー状態の処理物を粉砕するのに対し、乾式粉砕では、固体粒子のままの処理物を粉砕する。固体粒子が付着水分などの液体を含んでいる場合も、スラリー状態としない限り乾式粉砕と称する。
【0012】
また、粉砕機10は、粉砕容器20に収容した粉砕メディアを排出しないことで、繰り返しバッチ処理を行う。つまり、予め粉砕メディアを収容した粉砕容器20に処理物を投入し、処理物及び粉砕メディアを粉砕容器20に閉じ込めて粉砕処理を行う。粉砕処理が終了した後には、処理物を粉砕容器20から排出すると共に、粉砕メディアが粉砕容器20内に留まるようにする。なお、粉砕容器20には、処理物及び粉砕メディアを投入するための投入口と、処理物及び粉砕メディアを排出するための排出口とが形成され、排出口には着脱可能なスクリーンが設けられている。また、粉砕容器20は、外周面にジャケット構造を設け、内部を冷却可能としてもよい。
【0013】
撹拌機30は、粉砕容器20に挿入される回転軸31と、この回転軸31を回転させる駆動機構32と、回転軸31の周面から突出した複数のアーム33と、を備えている。
【0014】
回転軸31は、軸方向Xが粉砕容器20の軸線に対して平行に(ここでは一致して)延びる円柱状の棒部材である。この回転軸31は、粉砕容器20の一端面21に形成された挿入開口から粉砕容器20に挿入され、先端31aが粉砕容器20の他端面22に対向している。なお、挿入開口と回転軸31の基部31bとの間には、図示しない軸受が介装され、回転軸31は軸受を介して基部31bが粉砕容器20の一端面21に回転可能に保持されている。さらに、軸受と回転軸31との間、及び、軸受と粉砕容器20との間には、隙間をシールする不図示の軸封部が設けられる。
【0015】
駆動機構32は、電動モータであり、図示しない一次電源からの電力を用いて回転軸31を回転駆動する。
【0016】
複数のアーム33は、いずれも所定の直径寸法dを有する同一形状の円柱状の棒部材によって形成され、回転軸31の外周面から、回転軸31の径方向に突出している。そして、各アーム33は、先端33aが回転軸31の端部(先端31a又は基部31b)に向かって傾いている。ここで、各アーム33の突出方向Yと、回転軸31の軸方向Xに対する直交方向Zとでなす角θは、3°~15°が好ましく、5°~10°がより好ましい。
【0017】
また、この実施例1では、複数のアーム33によって、回転軸31の軸方向Xを中心に反対向きに突出し、互いの突出方向Yが同一の基準直線に一致する第1アーム34aと第2アーム34bとを有するアーム組35A~35Eを複数(ここでは5組)構成している。なお、「基準直線」とは、粉砕容器20の周面方向から攪拌機30を見たとき、回転軸31の軸方向Xに対して斜めに交差する任意の直線である。
【0018】
そして、複数のアーム組35A~35Eは、回転軸31の軸方向Xに沿って所定の間隔をあけて並ぶと共に、回転軸31の軸方向Xを中心にして、所定の角度(ここでは108°)ずつ相互に回転して設けられている。つまり、粉砕容器20の端面側(
図2では一端面21)から撹拌機30を見たとき、
図2に示すように、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接するアーム組35Aとアーム組35Bの第1アーム34aの突出方向Yによってなす角θ
1は108°となる。また、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接するアーム組35Bとアーム組35Cの第1アーム34aの突出方向Yによってなす角θ
2は108°となる。また、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接するアーム組35Cとアーム組35Dの第1アーム34aの突出方向Yによってなす角θ
3は108°となる。さらに、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接するアーム組35Dとアーム組35Eの第1アーム34aの突出方向Yによってなす角θ
4は108°となる。
【0019】
また、
図3に示すように、各アーム組35A~35Eは、回転軸31の軸方向Xに沿った幅、つまり、第1アーム34aの先端34cと第2アーム34bの先端34dとの、回転軸31の軸方向Xに沿った間隔Δmは、実施例1ではアーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されている。ただし、間隔Δmは、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに限定されるものではない。この間隔Δmは、アーム33の直径寸法dの2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム33の直径寸法d以下の長さに設定されることがさらに好ましい。
【0020】
さらに、各アーム組35A~35Eの間隔Δnは、実施例1ではアーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されている。ただし、間隔Δnは、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに限定されるものではない。この間隔Δnは、アーム33の直径寸法dの2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム33の直径寸法d以下の長さに設定されることがさらに好ましい。ここで、「アーム組35A~35Eの間隔」とは、所定のアーム組(例えば、アーム組35A)の第2アーム34bの先端34dと、隣接する他のアーム組(例えば、アーム組35B)の第1アーム34aの先端34cとの、回転軸31の軸方向Xに沿った間隔(距離)である。
【0021】
なお、この実施例1では、間隔Δmの方が、間隔Δnよりも短くなるように設定されている。
【0022】
そして、間隔Δm及び間隔Δnが、いずれもアーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されたことで、この実施例1の撹拌機30では、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接する一対のアーム33の間隔が、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されることとなる。なお、この隣接する一対のアーム33の間隔についても、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに限定されるものではない。隣接する一対のアーム33の間隔は、アーム33の直径寸法dの2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム33の直径寸法d以下の長さに設定されることがさらに好ましい。
【0023】
また、撹拌機30では、
図4に示すように、回転軸31の回転に伴って各アーム33が移動すると、各アーム33によってアーム軌道33x(
図4において二点鎖線で示す)が描かれる。このアーム軌道33xは、アーム33の移動によって粉砕メディアに剪断力や衝撃力が直接作用する領域である。そして、このアーム軌道33xの周囲には、
図4において着色して示す撹拌領域αが形成される。撹拌領域αは、アーム33が移動して粉砕メディアに剪断力や衝撃力が作用したことで、粉砕メディアが激しく動く領域である。この撹拌領域αは、回転軸31の回転速度や粉砕メディアの材質、質量、形状等に応じて範囲が規定される。
【0024】
ここで、撹拌領域αはアーム軌道33xの周囲に形成されるため、回転軸31の軸方向Xに対してアーム33が傾くことで、撹拌領域αの延在方向も傾斜する。さらに、この実施例1では、複数のアーム33によって、第1アーム34aと第2アーム34bとを有するアーム組35A~35Eを複数構成しているため、隣接する撹拌領域α同士は、少なくとも一部が確実に重複する。
【0025】
しかも、複数のアーム33は、粉砕容器20の内周面23に撹拌領域αが接触する領域を連続させる位置に設けられている。つまり、所定のアーム33(例えば、アーム組35Aの第1アーム34a)のアーム軌道33xの周囲に形成される撹拌領域αが粉砕容器20の内周面23に接する領域(
図4においてβで示す)は、隣接する撹拌領域αが粉砕容器20の内周面23に接する領域(
図4においてγで示す)と隙間なくつながる。これにより、撹拌領域αが連続し、粉砕容器20の内周面23は撹拌領域αによって覆われる。
【0026】
以下、比較例の粉砕機100の構成及び課題を
図5に基づいて説明する。
【0027】
図5(a)に示す比較例の粉砕機100は、粉砕容器101と、撹拌機102と、を備えている。粉砕容器101は、軸線が水平に設置された横型円筒形状を呈している。一方、撹拌機102は、粉砕容器101の内部に挿入される回転軸103と、この回転軸103を回転させる駆動機構(不図示)と、回転軸103の外周面から突出した複数のアーム104a、104bと、を備えている。
【0028】
ここで、回転軸103は、軸方向Xが粉砕容器101の軸線に一致する向きに設置されている。また、複数のアーム104a、104bは、それぞれ回転軸103の軸方向Xに対して直交する方向に延びている。なお、この複数のアーム104a、104bは、回転軸103を挟んで反対向きに延びる一対のアーム104a、104aと、回転軸103を挟んで反対向きに延びると共に、一対のアーム104a、104aに対して延在方向が90°異なる一対のアーム104b、104bとが、回転軸103の軸方向Xに沿って所定の間隔をあけて交互に配置されている。
【0029】
そして、
図6に示すように、回転軸103を回転したときのアーム軌道104xの周囲に形成される撹拌領域α(
図6において着色して示す領域)は、アーム104a、104bと同様、回転軸103の軸方向Xに対して直交する方向に延びる。
【0030】
これにより、隣接するアーム104a、104bのそれぞれのアーム軌道104xの周囲に形成される撹拌領域αは、互いの延在方向が同じ向きとなる。これにより、粉砕メディアの動きがランダムになりにくく、特に撹拌領域αから外れた領域では、粉砕メディアの動きが撹拌領域αと比べて顕著に鈍くなる。
【0031】
これに対し、処理物は、粉砕メディアの動きが激しい領域から粉砕メディアの動きが鈍い領域へと移動し、粉砕容器101の内周面101a付近に集まる傾向がある。そのため、撹拌領域αとそれ以外の領域とで粉砕メディアの動きに差があると、時間の経過とともに撹拌メディアの動きが鈍い領域では、
図6において一点鎖線Aで囲むように、内周面101aに処理物が付着し、次第に大きく成長する。
【0032】
なお、この比較例の粉砕機100は、軸線が水平に設置された横型の粉砕容器101を有しているため、粉砕容器101の上部に付着した処理物は、ある程度集まると自重で落下する。これにより、粉砕容器101の上部に付着した処理物が大きく成長することはほとんどない。つまり、処理物の付着は、粉砕容器101の下部において発生する。
【0033】
実施例1の粉砕機10の作用効果を説明する。
【0034】
実施例1の粉砕機10において処理物を粉砕するには、粉砕容器20に処理物及び粉砕メディアを収容すると共に、空気や非活性ガスを充填する。そして、撹拌機30の回転軸31を回転させ、処理物及び粉砕メディアを所定時間撹拌する。この撹拌によって、粉砕メディア間に剪断力や衝撃力が発生し、処理物を微細粒子に粉砕する。
【0035】
ここで、回転軸31が回転すると、この回転軸31の外周面から突出した複数のアーム33も回転軸31と一体になって回転する。このとき、各アーム33によって描かれるアーム軌道33xの周囲には撹拌領域αが形成されるが、複数のアーム33の先端33aが回転軸31の端部(先端31a又は基部31b)に向かって傾いているため、撹拌領域αの延在方向は、回転軸31の軸方向Xに対して傾斜する。
【0036】
そして、撹拌領域αの延在方向が回転軸31の軸方向Xに対して傾斜していることで、比較例の粉砕機100と比べて、撹拌される粉砕メディアの動きがランダムになり、撹拌領域αから外れた領域であっても、粉砕メディアの動きが撹拌領域αと比べて顕著に鈍くなることが少ない。
【0037】
この結果、粉砕メディアの動きの激しさが粉砕容器20内の全域で同じ程度となり、粉砕メディアの動きに偏りが生じにくくなる。このため、処理物が特定の領域に集まることがなく、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着を防止できる。そして、処理物の内周面23への付着を防止できることで、精度の高い粉砕処理を行うことができる。
【0038】
また、実施例1の粉砕機10では、複数のアーム33は、いずれも所定の直径寸法dを有する円柱状の棒部材によって形成され、回転軸31の軸方向Xに沿って並んで設けられている。そして、回転軸31の軸方向Xに沿って隣接する一対のアーム33の間隔は、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されている。これにより、隣接する一対のアーム33のそれぞれのアーム軌道33xの周囲に形成される撹拌領域αの少なくとも一部が重複しやすくなる。そのため、粉砕メディアの動きをさらにランダムにすることができ、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着をさらに防止することができる。
【0039】
特に、実施例1の粉砕機10では、複数のアーム33によって、回転軸31を挟んで反対向きに突出する第1アーム34a及び第2アーム34bを有するアーム組35A~35Eを構成している。これにより、第1アーム34aによって描かれるアーム軌道33xの位置と、第2アーム34bによって描かれるアーム軌道33x位置とが一致せず、異なる位置で粉砕メディアを撹拌することができる。一方、比較例の粉砕機100では、複数のアーム104a、104bが回転軸103の軸方向Xに対して直交している。そのため、回転軸103を挟んで反対向きに突出する一対のアーム104a、104aによって描かれるアーム軌道104xは一致し、一対のアーム104b、104bによって描かれるアーム軌道104xは一致する。
【0040】
このように、実施例1の粉砕機10では、回転軸31を挟んで反対向きに突出する一対のアーム(第1アーム34a及び第2アーム34b)を有するアーム組35A~35Eを構成することで、内周面23の付近を通過するアーム軌道33xを比較例の粉砕機100と比べて多くすることができる。そのため、粉砕メディアの動きがさらにランダムになりやすく、動きの激しさに偏りが生じることをさらに防止できる。よって、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着をさらに防止することができる。
【0041】
そして、この実施例1では、第1アーム34aの先端34cと第2アーム34bの先端34dとの、回転軸31の軸方向Xに沿った間隔Δmは、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されている。このため、第1アーム34aのアーム軌道33xの周囲に形成される撹拌領域αと、第2アーム34bのアーム軌道33xの周囲に形成される撹拌領域αとは、少なくとも一部が確実に重複する。これにより、撹拌領域α間の隙間を小さくして、粉砕メディアの動きが鈍くなる領域を生じにくくできる。よって、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着をさらに防止できる。
【0042】
さらに、実施例1では、複数(5組)のアーム組35A~35Eが回転軸31の軸方向Xに沿って所定の間隔をあけて設けられ、アーム組35A~35E同士の間隔Δnは、アーム33の直径寸法dの1.5倍以下の長さに設定されている。これにより、隣接する一対のアーム組(例えば、アーム組35Aとアーム組35B等)の間において、撹拌領域αの少なくとも一部が重複する。そのため、アーム組35A~35Eの間においても、撹拌領域α間の隙間を小さくして、粉砕メディアの動きが鈍くなる領域が生じにくく、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着を防止できる。
【0043】
そして、この実施例1の粉砕機10では、複数のアーム33は、粉砕容器20の内周面23に撹拌領域αが接触する領域を連続させる位置に設けられ、粉砕容器20の内周面23は、撹拌領域αによって覆われる。そのため、粉砕容器20の内周面23上に、撹拌領域αから外れて、粉砕メディアの動きが鈍くなる領域が生じず、粉砕メディアを十分に撹拌することができる。よって、内周面23への処理物の付着を適切に防止することができる。
【0044】
(実施例2)
実施例2の粉砕機50の構成を、
図7~
図10に基づいて説明する。なお、以下の説明では、実施例1と同様の構成については、実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
実施例2の粉砕機50は、
図7に示すように、軸線が水平に設置された横型円筒状の粉砕容器20と、粉砕容器20の内部を撹拌する撹拌機60と、を備えたメディア撹拌型の乾式粉砕機である。ここで、撹拌機60は、粉砕容器20の内部に挿入される回転軸31と、この回転軸31を回転させる駆動機構32と、回転軸31の周面から突出した複数のアーム63と、を備えている。
【0046】
複数のアーム63は、いずれも所定の直径寸法d´を有する円柱状の棒部材によって形成され、回転軸31の外周面から、回転軸31の径方向に突出している。そして、各アーム63は、先端63aが回転軸31の端部(先端31a又は基部31b)に向かって傾いている。
【0047】
また、この実施例2では、複数のアーム63によって、回転軸31の軸方向Xを中心に反対向きに突出し、互いの突出方向Yが同一の基準直線に一致する第1アーム64aと第2アーム64bとを有するアーム組65A~65Fを複数(ここでは6組)構成している。しかも、この複数のアーム組65A~65Fは、延在方向が90°異なる二組のアーム組(アーム組65Aとアーム組65B、アーム組65Cとアーム組65D、アーム組65Eとアーム組65F)の基準直線が、回転軸31の軸方向X上で交差する。
【0048】
また、
図9に示すように、基準直線が回転軸31の軸方向X上で交差する二組のアーム組(例えば、アーム組65Aとアーム組65B)において、延在方向が90°異なる第1アーム64a同士の回転軸31の軸方向Xに沿った間隔Δr1が、アーム63の直径寸法d´の1.5倍以下の長さに設定されている。なお、間隔Δr1は、アーム63の直径寸法d´の2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム63の直径寸法d´以下の長さに設定されることがさらに好ましい。
【0049】
また、実施例2の粉砕機50では、基準直線が回転軸31の軸方向X上で交差する二組のアーム組(例えば、アーム組65Aとアーム組65B)において、延在方向が90°異なる第2アーム64b同士の回転軸31の軸方向Xに沿った間隔Δr2が、アーム63の直径寸法d´の1.5倍以下の長さに設定されている。ただし、間隔Δr2の大きさは、アーム63の直径寸法d´の1.5倍以下の長さに限定されるものではない。この間隔Δr2は、アーム63の直径寸法d´の2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム63の直径寸法d´以下の長さに設定されることがさらに好ましい。
【0050】
さらに、この実施例2では、基準直線が回転軸31の軸方向X上で交差する二組のアーム組(例えば、アーム組65Aとアーム組65B)において、延在方向が90°異なる第1アーム64aと第2アーム64bとのアーム間隔Δsは、アーム63の直径寸法d´の1.5倍以下の長さに設定されている。ただし、アーム間隔Δsは、アーム63の直径寸法d´の1.5倍以下の長さに限定されるものではない。このアーム間隔Δsは、アーム63の直径寸法d´の2倍以下の長さに設定されることが好ましく、アーム63の直径寸法d´以下の長さに設定されることがさらに好ましい。ここで、「アーム間隔Δs」とは、所定のアーム組(例えば、アーム組65A)の第2アーム64bの先端64dと、これに直交する他のアーム組(例えば、アーム組65B)の第1アーム64aの先端64cとの、回転軸31の軸方向Xに沿った間隔(距離)である。
【0051】
そして、撹拌機60においても、
図10に示すように、回転軸31の回転に伴って各アーム63が移動すると、各アーム63によってアーム軌道63xが描かれる。そして、このアーム軌道63xの周囲には、
図10において着色して示す撹拌領域αが形成される。この撹拌領域αの延在方向は、回転軸31の軸方向Xに対してアーム63が傾いているため、アーム63と同様に回転軸31の軸方向Xに対して傾斜している。さらに、この実施例2においても、複数のアーム63によって、第1アーム64aと第2アーム64bとを有するアーム組65A~65Fを複数構成しているため、隣接する撹拌領域α同士は、少なくとも一部が確実に重複する。さらに、複数のアーム63は、粉砕容器20の内周面23に撹拌領域αが接触する領域を連続させる位置に設けられている。
【0052】
これにより、実施例2の粉砕機50において処理物の粉砕処理を行うと、撹拌メディアの動きがランダムになり、粉砕メディアの動きの激しさに偏りが生じることを防止して、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着を防止することができる。
【0053】
特に、この実施例2の粉砕機50では、延在方向が90°異なる二組のアーム組の基準直線が、回転軸31の軸方向X上で交差する。これにより、所定のアーム組(例えば、アーム組65A)の第1アーム64aのアーム軌道63xと、第2アーム64bのアーム軌道63xとの間に、これに交差するアーム組(例えば、アーム組65B)の第1アーム64aのアーム軌道63xを重複させることができる。そのため、粉砕メディアの動きをさらにランダムにすることが可能となる。そして、粉砕メディアを適切に撹拌し、粉砕容器20の内周面23への処理物の付着を防止することができる。
【0054】
以上、本発明の粉砕機を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0055】
実施例1及び実施例2では、粉砕容器20が円筒状である例を示した。しかしながらこれに限らない。粉砕容器20は、筒状の周壁部の両端がそれぞれ端面によって閉鎖されていればよく、例えば、直方体等の多面体の筒形状に設定してもよい。
【0056】
また、実施例1及び実施例2では、アーム33、63が、いずれも所定の直径寸法d、d´を有する円柱状の棒部材によって形成されている例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば角柱状の棒部材であってもよい。
【0057】
また、実施例2では、二組のアーム組(例えばアーム組65Aとアーム組65B)の基準直線が、回転軸31の軸方向X上で交差する例を示したが、これに限らない。三組以上のアーム組の基準直線が、回転軸31の軸方向X上で交差するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10、50 粉砕機
20 粉砕容器
23 内周面
30、60 撹拌機
31 回転軸
32 駆動機構
33、63 アーム
34a、64a 第1アーム
34b、64b 第2アーム
35A~35E、65A~65F アーム組
33x、63x アーム軌道
α 撹拌領域