(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シートロール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230821BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230821BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/30
(21)【出願番号】P 2019149737
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260897(JP,A)
【文献】特開2018-056282(JP,A)
【文献】特開2019-104870(JP,A)
【文献】特開2013-023539(JP,A)
【文献】特開2008-256748(JP,A)
【文献】特開2007-114731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれて構成された保護膜形成用複合シートロールであって、
前記保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面上に設けられた剥離フィルムと、を備え、
前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、前記保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれて
おり、
前記保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出した直後に、前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面における帯電圧を測定したとき、前記帯電圧が3.0kV以下となる、保護膜形成用複合シートロール。
【請求項2】
前記保護膜形成用フィルムが、熱硬化性又はエネルギー線硬化性である、請求項1に記載の保護膜形成用複合シートロール。
【請求項3】
前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、
前記粘着剤層が、前記基材と前記保護膜形成用フィルムとの間に配置されている、請求項1又は2に記載の保護膜形成用複合シートロール。
【請求項4】
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性である、請求項3に記載の保護膜形成用複合シートロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用複合シートロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用して、半導体装置が製造されている。フェースダウン方式においては、回路形成面上にバンプ等の突状電極を有する半導体チップが用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路形成面とは反対側の面(裏面)は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止するために利用される。
【0004】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シートを備え、保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを、さらに前記支持シートの一方の面上に備えて構成された保護膜形成用複合シートが使用される。
保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。支持シートは、例えば、保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体ウエハを、半導体チップへ分割するときに、半導体ウエハを固定するために、ダイシングシートとして利用可能である。また、半導体ウエハ若しくは半導体チップへ貼付されている状態の保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断するときにも利用可能である。
【0005】
保護膜付き半導体チップの製造時には、例えば、複数個の半導体チップが整列して固定された状態の半導体チップ群の裏面、又は、半導体チップへと容易に分割可能な状態の半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用複合シートが貼付された構造の積層物を作製することがある。前記半導体チップ群は、半導体ウエハの一部が分割されていない未分割領域を有していてもよい。このような状態の半導体チップ群又は半導体ウエハの作製方法については、後ほど詳しく説明する。このとき、保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成用フィルムによって、前記半導体チップ群又は半導体ウエハの裏面に貼付される。
【0006】
前記積層物を作製後は、以下に示す手順で、保護膜付き半導体チップを製造できる。
すなわち、まず、この積層物中の保護膜形成用複合シートを冷却しながら、その表面に対して平行な方向に引き延ばす、所謂クールエキスパンドを行うことによって、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断する。すなわち、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、その硬化のタイミングは任意である。クールエキスパンドは、通常、前記積層物中の保護膜形成用複合シートをテーブル(所謂エキスパンドテーブル)上に配置して行う。クールエキスパンドによって、半導体チップに貼付されている保護膜形成用フィルム又は保護膜は、半導体チップの外周に沿った位置で切断される。一方、保護膜形成用フィルム又は保護膜が、前記未分割領域又は半導体ウエハに貼付されている場合には、これら未分割領域又は半導体ウエハで半導体チップへの分割が行われるとともに、その分割位置に沿って保護膜形成用フィルム又は保護膜が切断される。
次いで、切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体チップを、支持シートから引き離してピックアップする。
保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムの硬化(すなわち、保護膜の形成)は、必要に応じていずれかのタイミングで行えばよい。保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、半導体チップ群又は半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムを保護膜と見做す。
以上により、半導体チップと、その裏面に設けられた保護膜と、を備えて構成された、保護膜付き半導体チップが得られる。
【0007】
保護膜形成用複合シートは、通常、その保護膜形成用フィルム側の最表層に、剥離フィルムを備えた状態で保管される。さらに、このような剥離フィルムを備えた保護膜形成用複合シートは、ロール状に巻かれて保管されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ロール状に巻かれた保護膜形成用複合シートを繰り出した後、上述の保護膜付き半導体チップの製造に使用すると、クールエキスパンド時に、裏面に保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた半導体チップが支持シートから剥離して飛散してしまう、所謂チップ飛びが生じることがあるという問題点があった。そして、このようなチップ飛びが一度生じると、以降、同じエキスパンドテーブルを用いて、続けてクールエキスパンドを行うと、このときもチップ飛びが生じてしまい、チップ飛びが繰り返し生じることがあるという問題点があった。
【0009】
本発明は、支持シート、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを備えた保護膜形成用複合シートが、ロール状に巻かれて構成され、保護膜形成用複合シートを繰り出して使用し、クールエキスパンドを行ったときに、チップ飛びを抑制できる、保護膜形成用複合シートロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれて構成された保護膜形成用複合シートロールであって、前記保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面上に設けられた剥離フィルムと、を備え、前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、前記保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれている、保護膜形成用複合シートロールを提供する。
本発明の保護膜形成用複合シートロールにおいては、前記保護膜形成用フィルムが、熱硬化性又はエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0011】
本発明の保護膜形成用複合シートロールにおいては、前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記粘着剤層が、前記基材と前記保護膜形成用フィルムとの間に配置されていることが好ましい。
本発明の保護膜形成用複合シートロールにおいては、前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であってもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートロールにおいては、前記保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出した直後に、前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面における帯電圧を測定したとき、前記帯電圧が3.0kV以下となることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、支持シート、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを備えた保護膜形成用複合シートが、ロール状に巻かれて構成され、保護膜形成用複合シートを繰り出して使用し、クールエキスパンドを行ったときに、チップ飛びを抑制できる、保護膜形成用複合シートロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートロールの一例を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】ロール状に巻いている途中の保護膜形成用複合シート、又は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートロールから保護膜形成用複合シートを繰り出している状態、の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
◇保護膜形成用複合シートロール
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートロール(本明細書においては、単に「ロール」と略記することがある)は、保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれて構成されており、前記保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面上に設けられた剥離フィルムと、を備え、前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、前記保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれている。換言すると、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールにおいては、保護膜形成用複合シートの支持シート側の最表面が、ロールの径方向における最も内側の面となるように、前記保護膜形成用複合シートがロール状に巻かれている。
以下、本明細書においては、特に断りのない限り、「最も外側」及び「最も内側」とは、いずれもロールの径方向における位置を意味する。
【0015】
前記保護膜形成用フィルムは、保護膜を形成可能であり、後述するように、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。
硬化性の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
【0016】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
また、本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0017】
従来の保護膜形成用複合シートロールにおいては、保護膜形成用複合シート中の支持シートの露出面が最も外側の面となっていた。本発明者らは、従来の保護膜形成用複合シートロールから保護膜形成用複合シートを繰り出して使用し、保護膜付き半導体チップを製造する過程において、支持シートに異物が付着することが多いことを見出した。この状態を是正せずに保護膜付き半導体チップの製造を進めると、半導体ウエハのダイシング、保護膜形成用フィルム又は保護膜のクールエキスパンド等を行う際に、対象物を載置するためのテーブルと、支持シートと、の間に異物が挟まり、チップ飛びの発生原因となってしまう。支持シートに異物が付着し易い理由は、保護膜形成用複合シートロールの保管中に、最表層である支持シートが空気中に暴露されていることにより、支持シートの露出面に静電気等によって異物が付着し易いからであると推測される。
【0018】
これに対して、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールにおいては、上記のように、保護膜形成用複合シートの支持シート側ではなく、剥離フィルム側の最表面が、最も外側の面となっている。そのため、保護膜形成用複合シートロールの保管中には、最も内側の面となっている支持シート側の最表面には、異物が付着しにくく、さらに、最も外側の面となっている剥離フィルム側の最表面に異物が付着したとしても、ロールから繰り出した保護膜形成用複合シートを使用するときには、剥離フィルムを取り除いてしまう。したがって、テーブルと支持シートとの間の異物の挟まりが抑制され、その結果、チップ飛びが抑制される。
【0019】
本明細書においては、半導体ウエハ及び半導体チップの回路形成面とは反対側の面を、いずれの場合も「裏面」と称する。
また、裏面に保護膜を備えた半導体チップを「保護膜付き半導体チップ」と称し、裏面に保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを「保護膜形成用フィルム付き半導体チップ」と称することがある。
また、複数個の半導体チップが整列して固定された状態のものを、「半導体チップ群」と称することがある。
また、複数個の保護膜形成用フィルム付き半導体チップが整列して固定された状態のものを、「保護膜形成用フィルム付き半導体チップ群」と称することがある。
また、半導体チップ群中の個々の半導体チップの裏面に、一纏めに1枚の保護膜形成用複合シートを備えたものを「保護膜形成用複合シート付き半導体チップ群」と称することがある。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールについて、詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0021】
はじめに、ロール状に巻く対象となる保護膜形成用複合シートについて説明する。
図1は、前記保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【0022】
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面10a上に設けられた保護膜形成用フィルム13と、保護膜形成用フィルム13の支持シート10側とは反対側の面13a上に設けられた剥離フィルム15と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12、保護膜形成用フィルム13及び剥離フィルム15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
【0023】
支持シート10の前記面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面12aと同じである。
剥離フィルム15の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面15aと、支持シート10の前記面10aとは反対側の面10bは、いずれも、保護膜形成用複合シート101の最表面である。支持シート10の前記面10bは、基材11の前記面11aとは反対側の面11bと同じである。
【0024】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成用フィルム13上に、治具用接着剤層16を備えている。
【0025】
保護膜形成用複合シート101においては、基材11の前記面11aの全面又はほぼ全面に、粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の前記面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の前記面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成用フィルム13の前記面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面16aに、剥離フィルム15が積層されている。
図1中、符号13bは、保護膜形成用フィルム13の前記面13aとは反対側の面を示している。
【0026】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造を有していてもよい。
【0027】
さらに、保護膜形成用複合シート101は、切れ込み17を有する。
切れ込み17は、保護膜形成用複合シート101を支持シート10側の上方から見下ろして平面視したときに、支持シート10及び保護膜形成用フィルム13の積層体である第1積層シート1011を円形等の目的とする形状に分割するように形成されている。また、切れ込み17は、保護膜形成用複合シート101の厚さ方向においては、支持シート10の前記面10bから、治具用接着剤層16の前記面16aにまで、連続して形成されている。切れ込み17を有していることにより、保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15を取り除いた後、切れ込み17よりも中央寄りの領域が使用される。
なお、切れ込み17は任意の構成であり、保護膜形成用複合シート101は、切れ込み17を有していなくてもよい。
【0028】
保護膜形成用複合シート101は、例えば、その1枚あたり、支持シート10、保護膜形成用フィルム13及び治具用接着剤層16の積層体である第2積層シート1012を複数枚有し、これら複数枚の第2積層シート1012が、その中の保護膜形成用フィルム13の前記面13aと、治具用接着剤層16の前記面16aと、において、1枚の剥離フィルム15に積層されていてもよい。
このように、保護膜形成用複合シート101が複数枚の第2積層シート1012を有する場合、例えば、剥離フィルム15が長尺の矩形状であり、剥離フィルム15の長手方向に沿って、複数枚の第2積層シート1012が配置されていてもよい。
【0029】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の前記面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の前記面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0030】
図2は前記保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状が異なる点と、治具用接着剤層16を備えていない点、以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0031】
保護膜形成用複合シート102においては、基材11の前記面11aの全面又はほぼ全面に、粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の前記面12aの一部、すなわち、中央寄りの領域(換言すると周縁部近傍を除いた領域)に、保護膜形成用フィルム23が積層されている。そして、保護膜形成用フィルム23の前記面23aの全面又はほぼ全面と、粘着剤層12の前記面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域(換言すると周縁部近傍の領域)と、の両方に、剥離フィルム15が積層されている。
図2中、符号23bは、保護膜形成用フィルム23の前記面23aとは反対側の面を示している。
【0032】
保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成用フィルム23の前記面23aは、粘着剤層12の前記面12aよりも、表面積が小さい。
【0033】
保護膜形成用複合シート102中の切れ込み27は、その形成されている領域が支持シート10のみにとどまる点を除けば、保護膜形成用複合シート101中の切れ込み17と同じである。
【0034】
保護膜形成用複合シート102は、例えば、その1枚あたり、支持シート10及び保護膜形成用フィルム23の積層体である第1積層シート1021を複数枚有し、これら複数枚の第1積層シート1021が、その中の保護膜形成用フィルム23の前記面23aと、粘着剤層12の前記面12aと、において、1枚の剥離フィルム15に積層されていてもよい。
このように、保護膜形成用複合シート102が複数枚の第1積層シート1021を有する場合、例えば、剥離フィルム15は長尺の矩形状であり、剥離フィルム15の長手方向に沿って、複数枚の第1積層シート1021が配置されていてもよい。
【0035】
前記保護膜形成用複合シートは、
図1~
図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1~
図2に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0036】
ここまでは、支持シートとして、基材及び粘着剤層のみを備えたものを示しているが、支持シートは、これら以外の他の層(例えば中間層)を備えていてもよいし、基材のみからなるものであってもよい。このような他の支持シートについては、後ほど詳しく説明する。
好ましい保護膜形成用複合シート及び保護膜形成用複合シートロールとしては、支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、粘着剤層が、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置されているものが挙げられる。
【0037】
ここまでは、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートについては、
図1に示す保護膜形成用複合シート101のみを示しているが、例えば、
図2に示す保護膜形成用複合シート102が、粘着剤層12の前記面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、
図1等に示すものと同様の治具用接着剤層を備えていてもよい。その場合、切れ込み27は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101中の切れ込み17と同様に、支持シート10の前記面10bから連続して、治具用接着剤層を貫通して形成されていてもよい。ただし、これは、治具用接着剤層を備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0038】
ここまでは、保護膜形成用複合シートを構成するものとして、基材、粘着剤層、中間層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを示しているが、前記保護膜形成用複合シートは、これらのいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
前記保護膜形成用複合シートが前記他の層を備えている場合、その配置位置は、特に限定されない。
【0039】
前記保護膜形成用複合シートにおいて、各層の大きさ及び形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0040】
次に、前記保護膜形成用複合シートを用いた、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールについて説明する。
図3は、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールの一例を拡大して模式的に示す拡大断面図であり、
図4は、ロール状に巻いている途中の前記保護膜形成用複合シート、又は、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出している状態、の一例を模式的に示す斜視図である。ここでは、
図2に示す保護膜形成用複合シート102を用いた場合のロールについて、説明する。
図2は、
図4に示す保護膜形成用複合シート102のI-I線における断面図であると見做せる。また、
図3は、
図4に示す保護膜形成用複合シートロール102RのII-II線における断面図であると見做せる。
【0041】
ここに示す保護膜形成用複合シートロール102Rは、保護膜形成用複合シート102の剥離フィルム15側の最表面、より具体的には、剥離フィルム15の前記面15aが、最も外側の面となるように、保護膜形成用複合シート102がロール状に巻かれて、構成されている。すなわち、保護膜形成用複合シートロール102Rにおいては、保護膜形成用複合シート102の支持シート10側の最表面、より具体的には、支持シート10の前記面10bが、最も内側の面となっている。
【0042】
このように保護膜形成用複合シート102が巻かれていることにより、ロール102Rの径方向(
図3中の矢印Xの方向)においては、ロール102Rの内側から外側へ向けて、支持シート10、保護膜形成用フィルム23及び剥離フィルム15からなる積層単位が、同じ向きで繰り返し配置されている。そして、すべての前記積層単位においては、保護膜形成用フィルム23及び剥離フィルム15が、支持シート10よりも、前記径方向Xの外側に位置している。すなわち、ロール102Rは、剥離フィルム15を外巻きとし、支持シート10を内巻きとして、構成されている。
【0043】
このように保護膜形成用複合シート102が巻かれていることにより、保護膜形成用複合シートロール102Rから繰り出された保護膜形成用複合シート102を使用し、クールエキスパンドを行ったときに、チップ飛びを抑制できる。その理由は、先に説明したとおり、支持シート10の前記面10bには異物が付着しにくく、さらに、剥離フィルム15の前記面15aに異物が付着したとしても、保護膜形成用複合シート102の使用時に剥離フィルム15を取り除いてしまうからである。
また、このように、支持シート10の前記面10bにおいて、異物の付着を抑制できることで、エキスパンドテーブル上への異物の付着も抑制できるため、以降、クールエキスパンドを引き続き行うときにも、チップ飛びが繰り返し生じることが抑制される。
【0044】
本実施形態の保護膜形成用複合シートロールは、
図3~
図4に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図3~
図4に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0045】
ここまでは、
図2に示す保護膜形成用複合シート102を用いた場合の保護膜形成用複合シートロールについて説明したが、本実施形態のロールは、例えば、
図1に示す保護膜形成用複合シート101等、他の保護膜形成用複合シートを用いたものであってもよい。
他の保護膜形成用複合シートを用いた場合であっても、保護膜形成用複合シートロールは、保護膜形成用複合シートの剥離フィルム側の最表面を最も外側の面として、剥離フィルム側の最表層を外巻きとし、支持シート側の最表層を内巻きとして、ロール状に巻かれて構成されていることにより、保護膜形成用複合シートロール102Rの場合と同様の効果を奏する。
【0046】
前記保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出した直後に、前記保護膜形成用複合シートにおいて、前記剥離フィルム側の最表面における帯電圧を測定したとき、前記帯電圧は3.0kV以下となってもよい。このような保護膜形成用複合シートロールから繰り出した直後の、保護膜形成用複合シートにおいては、支持シート側の最表面も帯電圧が低い傾向にあり、その場合、保護膜形成用複合シートのクールエキスパンドを行ったときに、チップ飛びの抑制効果がより高くな傾向にある。
なお、保護膜形成用複合シートにおいて、剥離フィルム側の最表層が剥離フィルムである場合には、「剥離フィルム側の最表面」とは「剥離フィルムの露出面」であり、支持シート側の最表層が支持シートである場合には、「支持シート側の最表面」とは「支持シートの露出面」である。
【0047】
上述の効果がより高くなる点から、前記保護膜形成用複合シートロールにおいて、前記帯電圧は2.0kV以下、及び1.0kV以下のいずれかであってもよい。
【0048】
前記保護膜形成用複合シートロールにおいて、前記帯電圧は低いほど好ましく、前記帯電圧の下限値は特に限定されない。
前記帯電圧は、例えば、0.01kV以上であってもよい。
【0049】
前記保護膜形成用複合シートロールにおいて、前記帯電圧は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記帯電圧は、0.01~3.0kV、0.01~2.0kV、及び0.01~1.0kVのいずれかであってもよい。
【0050】
前記保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出した時点を基準として、前記帯電圧を測定するまでの時間は、5秒以内であることが好ましい。このように繰り出した直後の保護膜形成用複合シートにおいて、速やかにその剥離フィルム側の最表面における帯電圧を測定することにより、保護膜形成用複合シートロール及び保護膜形成用複合シートの帯電のし難さを、より高精度に判定できる。
【0051】
前記帯電圧の測定に供する保護膜形成用複合シートロールは、空気雰囲気下において、温度を23℃とし、7日間以上静置保管されたものであることが好ましい。このような条件で保管後の保護膜形成用複合シートロールを用いることで、保護膜形成用複合シートロール及び保護膜形成用複合シートの帯電のし難さを、より高精度に判定できる。
ただし、ここに示すのは、前記帯電圧の測定に供する保護膜形成用複合シートロールの保管条件の一例であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールの使用時の保管条件は、特に限定されず、目的に応じて任意に設定できる。
【0052】
前記保護膜形成用複合シートロールにおける前記帯電圧は、例えば、剥離フィルム側の最表層の含有成分の種類及び含有量、支持シート側の最表層の含有成分の種類及び含有量等を調節することで、調節できる。
【0053】
ロールとするのに用いる保護膜形成用複合シートの大きさは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
例えば、保護膜形成用複合シートの汎用性が高いという点では、巻く方向の保護膜形成用複合シートの長さは、10~100mであることが好ましく、巻く方向とは直交する方向の保護膜形成用複合シートの長さは、15~45cmであることが好ましい。例えば、保護膜形成用複合シートが長尺の矩形状である場合には、保護膜形成用複合シートの長手方向が、巻く方向であることが好ましい。この場合、巻く方向の保護膜形成用複合シートの長さとは、前記シートの長手方向の長さであり、巻く方向とは直交する方向の保護膜形成用複合シートの長さとは、前記シートの幅である。
【0054】
保護膜形成用複合シートが前記第1積層シート又は第2積層シートを複数枚有する場合、1枚の剥離フィルムに積層されている第1積層シート又は第2積層シートの枚数(換言すると、保護膜形成用複合シートロール1本あたりの第1積層シート又は第2積層シートの枚数)は、特に限定されず、例えば、20~300枚であってもよい。
【0055】
保護膜形成用複合シートが前記第1積層シート又は第2積層シートを複数枚有する場合、隣接する第1積層シート間又は第2積層シート間の距離は、特に限定されず、例えば、0.5~5cmであってもよい。
ここで、「隣接する第1積層シート間又は第2積層シート間の距離」とは、隣接する第1積層シートの周縁部間、又は、隣接する第2積層シートの周縁部間、の最短距離を意味する。
【0056】
保護膜形成用複合シートロール及び保護膜形成用複合シートを構成する各層の個別の厚さについては、別途、後述するが、保護膜形成用複合シートの厚さ(すなわち、保護膜形成用複合シートを構成するすべて層の合計の厚さ)は、100~200μmであることが好ましい。
【0057】
保護膜形成用複合シートロールの外径は、特に限定されず、例えば、100~300mmであってもよい。
保護膜形成用複合シートロールの内径は、特に限定されず、例えば、30~200mmであってもよい。
次に、前記保護膜形成用複合シート及び保護膜形成用複合シートロールを構成する各層について、より詳細に説明する。
【0058】
◎支持シート
前記支持シートは、保護膜形成用フィルム若しくは保護膜を裏面に備えた、半導体ウエハ又は半導体チップ群を固定するために利用できる。
【0059】
前記支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた中間層と、を備えたもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた中間層と、を備えたもの等が挙げられる。支持シートが前記粘着剤層又は中間層を備えている場合、粘着剤層又は中間層は、後述する保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
前記中間層は、前記粘着剤層以外として機能する層であり、その具体例としては、例えば、剥離性改善層が挙げられる。前記剥離性改善層は、支持シートからの保護膜形成用フィルムの剥離性(取り除き易さ)を改善するための層である。ただし、中間層は剥離性改善層に限定されない。
【0060】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
基材、粘着剤層及び中間層を備えた支持シートを用いた場合には、支持シート又は保護膜形成用複合シートへの、新たな機能の付与が可能である。また、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を、上述の粘着剤層の場合よりもさらに容易に調節できる。
【0061】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
【0062】
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリエーテルサルフォン(PES);ポリアクリル酸エステル;ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0063】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
基材は1層からなるものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
【0064】
基材の厚さは、40~300μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましく、60~100μmであることがさらに好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップ群への貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、2層以上からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0065】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0066】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0067】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0068】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
【0069】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、中間層、保護膜形成用フィルム等)との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートロールを保存する際に、前記シート同士が接着すること、又は前記シートに異物が付着することを防止する層;基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有していてもよい。
また、基材は、その上に設けられる層に対する剥離性を向上させるための剥離処理層を有していてもよい。基材が有する前記剥離処理層は、後述する中間層における剥離処理層と同様のものである。
【0070】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0071】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0072】
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0073】
粘着剤層は1層からなるものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
【0074】
粘着剤層の厚さは1~14μmであることが好ましく、2~12μmであることがより好ましく、例えば、3~8μmであってもよい。粘着剤層の厚さが前記下限値以上であることで、粘着剤層を設けたことによる効果が、より顕著に得られる。粘着剤層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味する。
【0075】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。例えば、後述する保護膜付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性の粘着剤層を硬化させることにより、これら半導体チップをより容易にピックアップできる。このように、半導体チップをより容易にピックアップできる点では、粘着剤層はエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0076】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0077】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよい。粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0078】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。
【0079】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0080】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0081】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0082】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)における前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0083】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0084】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0085】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0086】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0087】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0088】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、前記アクリル系重合体等の前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0089】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましい。
【0090】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0091】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0092】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着剤組成物(I-2)及び(I-3)における前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0093】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0094】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0096】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0097】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)及び(I-3)における前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0098】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
【0099】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0100】
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましい。
【0101】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0102】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0103】
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)又は(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0104】
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、及び0.01~25質量部のいずれかであってもよい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、0.01~20質量部、及び0.01~10質量部のいずれかであってもよい。
【0105】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0106】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0107】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0108】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、例えば、0.01~10質量部、及び0.01~5質量部のいずれかであってもよい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0109】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0110】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0111】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0112】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
なお、本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0113】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0114】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0115】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0116】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0117】
○中間層
前記中間層は、シート状又はフィルム状である。
前記中間層は、保護膜形成用複合シート中では、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
中間層の種類は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0118】
中間層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
【0119】
中間層は、その種類に応じて、公知の方法で形成できる。例えば、樹脂を主要構成成分とする中間層は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで形成できる。
【0120】
中間層として、例えば、その一方の面が剥離処理されている剥離性改善層が挙げられる。
【0121】
・剥離性改善層
剥離性改善層としては、例えば、樹脂層と、前記樹脂層上に形成された剥離処理層と、を備えて構成された、複数層からなるものが挙げられる。
保護膜形成用複合シート中で、剥離性改善層は、その剥離処理層を保護膜形成用フィルム側に向けて、配置されている。
【0122】
前記剥離処理層は、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系等の、公知の各種剥離剤により、樹脂層を処理することで形成でき、シリコーン系剥離剤により形成することが好ましい。
【0123】
前記樹脂層の構成材料である樹脂は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記樹脂で好ましいものとしては、例えば、前記基材の構成材料である樹脂と同様のものが挙げられる。
【0124】
前記樹脂層は、1層からなるものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
【0125】
剥離性改善層の厚さ(樹脂層及び剥離処理層の合計の厚さ)は、10~2000nmであることが好ましく、25~1500nmであることがより好ましく、50~1200nmであることが特に好ましい。剥離性改善層の厚さが前記下限値以上であることで、剥離性改善層の作用がより顕著となり、さらに、剥離性改善層の切断等の破損を抑制する効果がより高くなる。剥離性改善層の厚さが前記上限値以下であることで、後述する保護膜又は保護膜形成用フィルムを裏面に備えた半導体チップを、より容易にピックアップできる。
【0126】
◎保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、半導体ウエハ及び半導体チップの裏面を保護するための保護膜を形成する。
保護膜形成用フィルムは、軟質であり、半導体ウエハ又は半導体チップ等の貼付対象物に、容易に貼付できる。
【0127】
前記保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。硬化していない状態で保護膜として機能する前記保護膜形成用フィルムは、半導体ウエハ又は半導体チップ群の裏面に貼付された段階で、保護膜を形成したと見做せる。
【0128】
保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護性能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成用フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用複合シートは耐熱性を有する必要がなく、幅広い範囲の保護膜形成用複合シートを構成できる。また、エネルギー線の照射によって、短時間で硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付き半導体チップを製造できる。
【0129】
保護膜形成用フィルムは、保護性能がより高い保護膜を形成できる点では、熱硬化性又はエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0130】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムは、1層からなるものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
【0131】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることがさらに好ましく、7~25μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護性能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味する。
【0132】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0133】
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成用フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0134】
保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0135】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成用フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0136】
以下、熱硬化性保護膜形成用フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム及び非硬化性保護膜形成用フィルムについて、順次説明する。
【0137】
○熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されない。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~3時間であることがより好ましく、1~2時間であることが特に好ましい。
【0138】
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0139】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0140】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0141】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0142】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0143】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0144】
アクリル系樹脂が2種以上の構成単位を有する場合には、そのアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、Foxの式を用いて算出できる。このとき用いる、前記構成単位を誘導するモノマーのTgとしては、高分子データ・ハンドブック又は粘着ハンドブックに記載されている値を使用できる。
【0145】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0146】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イミド、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0147】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0148】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0149】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0150】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0151】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0152】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0153】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0154】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0155】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、例えば、20~45質量%、及び20~35質量%のいずれかであってもよく、35~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよい。
【0156】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0157】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0158】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0159】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0160】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0161】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性が向上する。
【0162】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0163】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0164】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよい。
【0165】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0166】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0167】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0168】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0169】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0170】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0171】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0172】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、5~120質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましく、例えば、5~40質量部、5~20質量部、及び5~10質量部のいずれかであってもよく、40~80質量部、50~75質量部、及び60~75質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0173】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0174】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0175】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。
【0176】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0177】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0178】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0179】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、15~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましく、例えば、35~60質量%、40~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよく、30~55質量%、30~50質量%、及び30~45質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、熱硬化性保護膜形成用フィルムと保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0180】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0181】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0182】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0183】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0184】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0185】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0186】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0187】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0188】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0189】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0190】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0191】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0192】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0193】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0194】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0195】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0196】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、上述の粘着剤組成物が含有していてもよい光重合開始剤と同じものが挙げられる。
【0197】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0198】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0199】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。着色剤(I)を用いることにより、保護膜形成用フィルム及び保護膜の光透過率を、より容易に調節できる。
【0200】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0201】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0202】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0203】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0204】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルム及び保護膜の光透過率を調節する場合には、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合)は、0.05~12質量%、0.05~9質量%及び0.1~7質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0205】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0206】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0207】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
【0208】
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0209】
組成物(III-1)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0210】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0211】
<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
熱硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0212】
○エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0213】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0214】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0215】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0216】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0217】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0218】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0219】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0220】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0221】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0222】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0223】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0224】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0225】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0226】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0227】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0228】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0229】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0230】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0231】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0232】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0233】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0234】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0235】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0236】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0237】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0238】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0239】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0240】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0241】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0242】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0243】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0244】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0245】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0246】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0247】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0248】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0249】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、先に説明した、アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマー(アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)と同じものが挙げられる。
【0250】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0251】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0252】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0253】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0254】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0255】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0256】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0257】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0258】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0259】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0260】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0261】
組成物(IV-1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0262】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0263】
例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
また、前記エネルギー線硬化性成分及び着色剤を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0264】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0265】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0266】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0267】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0268】
○非硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0269】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)(本明細書においては、単に「組成物(V-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0270】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III-1)の含有成分として挙げた、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0271】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0272】
組成物(V-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。
【0273】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルムと、同様の効果を奏する。
【0274】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材としては、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0275】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0276】
組成物(V-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III-1)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成用フィルム(すなわち保護膜)の熱膨張係数の調整が、より容易となる。
【0277】
組成物(V-1)は、前記熱可塑性樹脂及び充填材以外に、目的に応じて、他の成分を含有していてもよい。
例えば、前記他の成分として、着色剤を含有する組成物(V-1)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成用フィルム(換言すると保護膜)は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0278】
組成物(V-1)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0279】
組成物(V-1)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0280】
組成物(V-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0281】
<非硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(V-1)等の非硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0282】
◎剥離フィルム
前記剥離フィルムは、公知のものであってよい。
前記剥離フィルムとしては、例えば、上述の剥離性改善層と同様のもの、すなわち、樹脂層と、前記樹脂層上に形成された剥離処理層と、を備えて構成された、複数層からなるものが挙げられる。
【0283】
前記剥離フィルムの厚さ(樹脂層及び剥離処理層の合計の厚さ)は、10~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、20~100μmであることが特に好ましい。剥離フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、剥離フィルムの切断等の破損を抑制する効果がより高くなる。剥離フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
【0284】
本明細書においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成用フィルムの硬化物(例えば保護膜)と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0285】
前記保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、基材と、粘着剤層と、中間層と、保護膜形成用フィルムと、剥離フィルムと、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
前記他の層の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層の配置位置、形状、大きさ等も、その種類に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0286】
前記保護膜形成用複合シートの使用対象である半導体ウエハの厚さは、特に限定されないが、後述する半導体チップへの分割がより容易となる点では、30~700μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましい。
【0287】
◇保護膜形成用複合シートロールの製造方法
以下、保護膜形成用複合シートロールの製造方法について説明する。
まず、ロールとする保護膜形成用複合シートの製造方法について説明する。
【0288】
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0289】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に中間層又は前記他の層を積層する場合にも適用できる。
【0290】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に中間層又は前記他の層を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0291】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0292】
ここまでの製造方法の説明で記載した前記剥離フィルムは、前記保護膜形成用複合シートを構成する剥離フィルム自体である必要性はなく、最終的に得られた保護膜形成用複合シートが目的とする剥離フィルムを備えるように調節すればよい。
ただし、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、保護膜形成用複合シートを製造する場合には、最表層を構成する層を形成するための組成物を、本実施形態の保護膜形成用複合シートを構成する剥離フィルム自体に塗工し、この剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、前記保護膜形成用複合シートが得られる。
次に、本実施形態の保護膜形成用複合シートロールの製造方法について説明する。
【0293】
本実施形態の保護膜形成用複合シートロールは、前記保護膜形成用複合シートの前記剥離フィルム側の最表面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、前記保護膜形成用複合シートをロール状に巻くことにより、製造できる。このときの保護膜形成用複合シートを巻く方向については、先に説明したとおりである。
【0294】
保護膜形成用複合シートが長尺の矩形状である場合には、保護膜形成用複合シートの長手方向が、巻く方向であることが好ましい。
【0295】
保護膜形成用複合シートを巻くときには、積層された保護膜形成用複合シート同士の間(より具体的には、一方の保護膜形成用複合シート中の剥離フィルム側の最表層と、他方の保護膜形成用複合シート中の支持シート側の最表層と、の間)に隙間が生じず、これら保護膜形成用複合シート同士が密着した状態となるように巻くことが好ましい。
【0296】
◇保護膜形成用複合シートロールの使用方法(保護膜付き半導体チップの製造方法)
本実施形態の保護膜形成用複合シートロールは、保護膜付き半導体チップの製造時に、公知の保護膜形成用複合シートロールの場合と同じ方法で使用できる。前記ロールの使用方法の一例を以下に示す。
すなわち、まず、保護膜形成用複合シートの使用に先立ち、半導体ウエハを半導体チップへと分割するか、又は半導体チップへと容易に分割可能な状態に加工する。このときの分割又は加工は、例えば、ステルスダイシング(登録商標)によって行うことができる。
【0297】
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割(切断)の起点となる。
【0298】
次いで、半導体ウエハに力を加えることによって、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製するか、又は、半導体ウエハを分割せずにそのままの状態としておく。半導体ウエハは、その裏面を研削して厚さを調節することがあるが、そのとき、研削手段によって半導体ウエハに力が加えられる。したがって、改質層を形成後の半導体ウエハの裏面を研削し、このときの力を利用することによって、半導体ウエハを分割できる。なお、半導体ウエハの裏面を研削する場合には、通常、半導体ウエハの回路形成面にはバックグラインドテープが貼付される。
半導体ウエハに力を加えることによって、半導体チップへの分割が完結している場合には、半導体チップが一様に整列した状態の半導体チップ群が得られ、完結していない場合には、半導体ウエハの一部が分割されていない未分割領域を有する半導体チップ群が得られる。前記ロールの使用時には、このように半導体ウエハの一部が分割されていなくてもよい。本明細書においては、未分割領域を有する半導体チップ群は半導体チップ群に含めて取り扱う。
このような未分割領域と、上述の改質層が形成され、分割されていない半導体ウエハは、いずれも上述の「半導体チップへと容易に分割可能な状態の半導体ウエハ」であるといえる。
【0299】
次いで、半導体チップ群の裏面、又は、改質層が形成され、分割されていない半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付する。
次いで、このように半導体チップ群又は半導体ウエハに貼付された状態の保護膜形成用複合シートを、これを冷却した状態で、その表面に対して平行な方向に引き延ばす、所謂クールエキスパンドを行う。クールエキスパンド時は、通常、保護膜形成用複合シートをテーブル(所謂エキスパンドテーブル)上に配置して行う。これにより、保護膜形成用複合シートが半導体チップ群に貼付されている場合には、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜を、半導体チップの外周に沿った位置で切断する。前記未分割領域を有する半導体チップ群を用いた場合には、クールエキスパンド時の力を前記未分割領域に加えることによって、前記未分割領域において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製するとともに、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜を、このときの半導体ウエハの分割位置に沿って切断する。一方、保護膜形成用複合シートが半導体ウエハに貼付されている場合には、クールエキスパンド時の力を半導体ウエハに加えることによって、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製するとともに、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜を、このときの半導体ウエハの分割位置に沿って切断する。
【0300】
次いで、切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体チップを、支持シートから引き離してピックアップする。
保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムの硬化(すなわち、保護膜の形成)は、必要に応じていずれかのタイミングで行えばよい。保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、半導体チップ群又は半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムを保護膜と見做す。
以上により、半導体チップと、その裏面に設けられた保護膜と、を備えて構成された、保護膜付き半導体チップが得られる。
【実施例】
【0301】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0302】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
【0303】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量370000、ガラス転移温度6℃)
[熱硬化性成分(B1)]
(B1)-1:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びアクリルゴム微粒子の混合物(日本触媒社製「BPA328」、エポキシ当量235g/eq)
(B1)-2:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER1055」、分子量1600、軟化点93℃、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製「A-1110」)
[着色剤(I)]
(I)-1:3種の有機顔料が混合されて調製された黒色顔料(大日精化社製)
【0304】
[実施例1]
<<保護膜形成用複合シートロールの製造>>
<支持シートの製造>
(粘着剤組成物(I-4)の製造)
粘着性樹脂(I-1a)-1(100質量部)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828」、分子量370、エポキシ当量184~194g/eq)(16質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート-D110N」)(20質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が33質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。また、粘着性樹脂(I-1a)-1は、2EHA(80質量部)と、HEA(20質量部)と、の共重合体で、重量平均分子量が600000のアクリル系重合体である。
【0305】
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された長尺の剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)-1を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、基材として長尺のポリプロピレン(PP)製フィルム(厚さ80μm、無色)を貼り合せることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された長尺の積層シート、すなわち、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0306】
表面抵抗率計(アドバンテスト社製「R12704 Resistivity chamber」)を用い、印加電圧を100Vとして、前記ポリプロピレン製フィルムの表面抵抗率を測定したところ、1.0×1015Ω/m2であった。
【0307】
<保護膜形成用フィルムの製造>
(保護膜形成用組成物(III-1)の製造)
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、熱硬化性成分(B1)-2(10質量部)、熱硬化性成分(B1)-3(30質量部)、熱硬化剤(B2)-1(2.4質量部)、硬化促進剤(C)-1(2.4質量部)、充填材(D)-1(320質量部)、カップリング剤(E)-1(2質量部)、及び着色剤(I)-1(3質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0308】
(保護膜形成用フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された長尺の剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さが25μmで長尺の熱硬化性の保護膜形成用フィルムを形成した。
【0309】
さらに、直径が300mmである複数の円が、前記剥離フィルムの長手方向に沿って一列に配置された平面形状となるように、上記で得られた長尺の保護膜形成用フィルムを抜き加工した。
以上により、長尺の剥離フィルムと、この剥離フィルムの一方の面上に、一列に配置された円形の保護膜形成用フィルムと、を備えて構成された長尺の積層フィルムを得た。
【0310】
<保護膜形成用複合シートの製造>
上記で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除いた。そして、これにより生じた、支持シート中の粘着剤層の露出面と、上記の積層フィルム中の保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせた。
次いで、支持シートの、保護膜形成用フィルムが貼り合わされている領域を含む円形領域を形成するように、支持シートの一部の領域を取り除く(前記切れ込みを形成する)抜き加工を行った。このとき、リングフレームのサイズを考慮して、目的とする保護膜形成用複合シートがリングフレームに固定可能となるように、円形の支持シートのサイズを調節した。また、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムが、すべて同心状となるように調節した。
【0311】
以上により、
図2に示すように、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、長さが50mであり、幅が450mmである、長尺の矩形状の保護膜形成用複合シートを製造した。
得られた保護膜形成用複合シートにおいては、
図4に示すように、剥離フィルムの長手方向に沿って、110枚の、支持シート及び保護膜形成用フィルムの円形の積層体(第1積層シート)が配置されていた。隣接する第1積層シート間の距離は3cmであった。
【0312】
<保護膜形成用複合シートロールの製造>
上記で得られた保護膜形成用複合シート中の剥離フィルムの露出面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、保護膜形成用複合シートを直径3インチの巻き芯上でロール状に巻くことにより、剥離フィルムを外巻きとして、外径が10.8cmの保護膜形成用複合シートロールを得た。
【0313】
<<保護膜形成用複合シートロールの評価>>
<剥離フィルムの帯電圧の測定>
上記で得られた保護膜形成用複合シートロールを、空気雰囲気下において、温度を23℃とし、7日間静置保管した。
次いで、前記保護膜形成用複合シートロールから前記保護膜形成用複合シートを繰り出し、直ちに(5秒以内に)、電界測定器(PROSTAT CORPORATION製「PFK-100」)を用いて、剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側とは反対側の露出面における帯電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0314】
<支持シートへの異物の付着の有無の確認>
大きさが12インチのシリコンミラーウエハ(厚さ750μm)の一方の面に、バックグラインドテープ(リンテック社製「Adwill E-3100TN」)を貼付した。
次いで、レーザー光照射装置(ディスコ社製「DFL73161」)を用い、このシリコンミラーウエハの内部に焦点を設定し、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、シリコンミラーウエハの内部に改質層を形成した。このとき、前記焦点は、このシリコンミラーウエハから大きさが3mm×3mmであるシリコンチップが多数得られるように設定した。また、レーザー光は、シリコンミラーウエハのバックグラインドテープ側とは反対側の外部から、シリコンミラーウエハの内部に照射した。
次いで、グラインダーを用いて、シリコンミラーウエハの露出面(換言すると、バックグラインドテープ側とは反対側の面)を研削することにより、シリコンミラーウエハの厚さを300μmにするとともに、このときのシリコンミラーウエハに加えられる研削時の力を利用することによって、改質層の形成部位において、シリコンミラーウエハを分割し、複数個のシリコンチップを作製した。これにより、バックグラインドテープ上で、複数個のシリコンチップが整列して固定された状態のシリコンチップ群を得た。
【0315】
剥離フィルムの帯電圧を測定した後の保護膜形成用複合シートから、剥離フィルムを取り除いた。そして、これにより生じた1枚の第1積層シート中の保護膜形成用フィルムの露出面を、上記のシリコンチップ群中のすべてのシリコンチップの研削面(換言すると、バックグラインドテープ側とは反対側の面)に貼付し、さらに、支持シート中の粘着剤層の露出面のうち、周縁部近傍領域をリングフレームに貼り合わせることで、保護膜形成用複合シートをリングフレームに固定した。このように、リングフレームに固定された状態で、1枚のシリコンチップ群ごとに保護膜形成用複合シートが貼付されて構成された、バックグラインドテープ付きの、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群を20組作製した。
得られた20組の保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群中の、支持シートの露出面(換言すると、保護膜形成用フィルム側とは反対側の面、又は、基材の粘着剤層側とは反対側の面)における、異物の付着の有無を、目視により確認し、異物が付着していた保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群の数を確認した。結果を表1に示す。
【0316】
<保護膜形成用複合シートのクールエキスパンド時におけるチップ飛びの有無の確認>
上記の、支持シートへの異物の付着の有無を確認した後の、1組の保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群において、バックグラインドテープを取り除いた。
次いで、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群を、エキスパンドテーブル上に設置した。このとき、前記チップ群中の支持シートの露出面を、エキスパンドテーブルの表面に接触させた。
次いで、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群全体を冷却しながら、保護膜形成用複合シートを、その表面に対して平行な方向に引き延ばす(クールエキスパンドを行う)ことにより、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、シリコンチップの外周に沿った位置で切断した。
以上により、支持シート上で、複数個の保護膜形成用フィルム付きシリコンチップが整列して固定された状態の、保護膜形成用フィルム付きシリコンチップ群を得た。ここで、保護膜形成用フィルム付きシリコンチップ群とは、大きさが3mm×3mmであるシリコンチップと、その一方の面に設けられた、同様の大きさの保護膜形成用フィルムと、を備えて構成されたものを意味する。
【0317】
以上の工程を、支持シートへの異物の付着の有無を確認した後の、20組の保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群すべてで行った。そして、保護膜形成用フィルム付きシリコンチップの飛散、すなわちチップ飛びが発生した保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群の数を確認した。結果を表1に示す。
【0318】
[実施例2]
<<保護膜形成用複合シートロールの製造>>
<支持シートの製造>
実施例1の場合と同じ方法で、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0319】
<保護膜形成用フィルムの製造>
(保護膜形成用組成物(III-1)の製造)
実施例1の場合と同じ方法で、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を製造した。
【0320】
(保護膜形成用フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された長尺の剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さが25μmで長尺の熱硬化性の保護膜形成用フィルムを形成した。
【0321】
さらに、直径が330mmである複数の円が、前記剥離フィルムの長手方向に沿って一列に配置された平面形状となるように、上記で得られた長尺の保護膜形成用フィルムを抜き加工した。
以上により、長尺の剥離フィルムと、この剥離フィルムの一方の面上に、一列に配置された円形の保護膜形成用フィルムと、を備えて構成された長尺の積層フィルムを得た。
【0322】
別途、両面に剥離フィルムを備えた長尺の両面粘着テープ(リンテック社製「Adwill G-01DF」)を用い、一方の面の剥離フィルムを取り除いた。そして、露出した両面粘着テープに対して、その長手方向に沿って、直径が345mmである円を一列に取り除く抜き加工を行うことにより、剥離フィルム付きの長尺の加工両面粘着テープを得た。
次いで、この加工両面粘着テープの両面粘着テープ側の面と、上記で得られた積層フィルムの保護膜形成用フィルム側の面と、を貼り合わせた。このとき、加工両面粘着テープと保護膜形成用フィルムが同心状となるようにして、加工両面粘着テープの、円が取り除かれた領域内に、円形の保護膜形成用フィルムを配置した。これにより、保護膜形成用フィルムの外周部に沿って、治具用接着剤層を配置した。
【0323】
<保護膜形成用複合シートの製造>
次いで、この貼り合わせたものから、一方の剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムと治具用接着剤層を露出させた。
また、上記で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除き、粘着剤層を露出させた。
そして、保護膜形成用フィルムと治具用接着剤層の露出面を、粘着剤層の露出面と貼り合わせた。
次いで、支持シートの、保護膜形成用フィルムが貼り合わされている領域を含む円形領域を形成するように、支持シートの一部の領域を取り除き、さらに、連続して治具用接着剤層の一部の領域を取り除く(前記切れ込みを形成する)抜き加工を行った。このとき、円形の支持シートの直径を370mmとし、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び治具用接着剤層が、すべて同心状となるように調節した。
以上により、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層され、さらに、粘着剤層の周縁部近傍領域と、剥離フィルムと、の間に治具用接着剤層が積層されて構成され、長さが50mであり、幅が450mmである、長尺の矩形状の保護膜形成用複合シートを製造した。この保護膜形成用複合シートは、
図2に示す保護膜形成用複合シート102において、粘着剤層12の前記面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、治具用接着剤層を備えたもの、に相当する。
得られた保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムの長手方向に沿って、110枚の、支持シート及び保護膜形成用フィルムの円形の積層体(第1積層シート)が配置されていた。隣接する第1積層シート間の距離は3cmであった。
【0324】
<保護膜形成用複合シートロールの製造>
上記で得られた保護膜形成用複合シートを用い、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートロールを得た。
【0325】
<<保護膜形成用複合シートロールの評価>>
<剥離フィルムの帯電圧の測定>
上記で得られた保護膜形成用複合シートロールについて、実施例1の場合と同じ方法で、繰り出し直後の、第1剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側とは反対側の露出面における帯電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0326】
<支持シートへの異物の付着の有無の確認>
実施例1の場合と同じ方法で、20組の保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群中の、支持シートの露出面における、異物の付着の有無を、目視により確認し、異物が付着していた保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群の数を確認した。結果を表1に示す。ただし、このとき、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群中の粘着剤層の露出面ではなく、治具用接着剤層の露出面をリングフレームに貼り合わせることで、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群を固定した。
【0327】
<保護膜形成用複合シートのクールエキスパンド時におけるチップ飛びの有無の確認>
実施例1の場合と同じ方法で、20組の保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群について、チップ飛びが発生したものの数を確認した。結果を表1に示す。
【0328】
[実施例3]
<<保護膜形成用複合シートロールの製造>>
<支持シートの製造>
(粘着剤組成物(I-2)の製造)
粘着性樹脂(I-2a)-1(100質量部)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートHL」)(6質量部)、及び光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア184」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。また、粘着性樹脂(I-2a)-1は、2EHA(80質量部)とHEA(20質量部)との共重合体で、重量平均分子量が600000のアクリル系重合体に、MOI(前記アクリル系重合体中のHEA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.8倍となる量)を付加反応させることで得られた樹脂である。
【0329】
(支持シートの製造)
粘着剤組成物(I-4)-1に代えて、上記で得られた粘着剤組成物(I-2)-1を用い、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層ではなく、厚さ5μmのエネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0330】
<保護膜形成用フィルムの製造>
実施例2の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルムを形成し、前記積層フィルムを製造した。
【0331】
<保護膜形成用複合シート及び保護膜形成用複合シートロールの製造>
上記で得られた支持シートを用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シート及び保護膜形成用複合シートロールを製造した。
【0332】
<<保護膜形成用複合シートロールの評価>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートロールについて、実施例2の場合と同じ方法で、3項目を評価した。結果を表1に示す。
【0333】
[実施例4]
<<保護膜形成用複合シートロールの製造>>
基材として、上記の長尺のポリプロピレン(PP)製フィルム(厚さ80μm、無色)に代えて、長尺の帯電防止処理されたポリプロピレン(PP)製フィルム(厚さ80μm、無色)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートロールを製造した。
【0334】
表面抵抗率計(アドバンテスト社製「R12704 Resistivity chamber」)を用い、印加電圧を100Vとして、前記ポリプロピレン製フィルムの表面抵抗率を測定したところ、8.6×109Ω/m2であった。
【0335】
<<保護膜形成用複合シートロールの評価>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートロールについて、実施例1の場合と同じ方法で、3項目を評価した。結果を表1に示す。
【0336】
[比較例1]
<<保護膜形成用複合シートロールの製造>>
<保護膜形成用複合シートの製造>
実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
【0337】
<保護膜形成用複合シートロールの製造>
上記で得られた保護膜形成用複合シート中の剥離フィルムの露出面ではなく、基材の露出面が、ロールの径方向における最も外側の面となるように、保護膜形成用複合シートを直径3インチの巻き芯上でロール状に巻くことにより、剥離フィルムを内巻き(換言すると、基材を外巻き)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートロールを製造した。
【0338】
<<保護膜形成用複合シートロールの評価>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートロールについて、実施例1の場合と同じ方法で、3項目を評価した。結果を表1に示す。
【0339】
【0340】
上記結果から明らかなように、実施例1~4においては、すべての保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群において、支持シートへの異物の付着は認められず、また、クールエキスパンド時においても、チップ飛びが認められなかった。
実施例1~4の保護膜形成用複合シートロールにおいては、剥離フィルムが外巻きであった。
実施例1~4の保護膜形成用複合シートロールにおいては、剥離フィルムの帯電圧が0.2~1.5kVであった。
【0341】
これに対して、比較例1においては、保護膜形成用複合シート付きシリコンチップ群において、支持シートへの異物の付着が認められ、また、クールエキスパンド時においても、チップ飛びが認められた。比較例1の保護膜形成用複合シートロールにおいては、剥離フィルムが内巻きであった。
【産業上の利用可能性】
【0342】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0343】
101,102・・・保護膜形成用複合シート、102R・・・保護膜形成用複合シートロール、10・・・支持シート、10a・・・支持シートの一方の面、11・・・基材、11a・・・基材の一方の面、12・・・粘着剤層、13,23・・・保護膜形成用フィルム、13a,23a・・・保護膜形成用フィルムの支持シート側とは反対側の面、15・・・剥離フィルム、15a・・・剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側とは反対側の面