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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230821BHJP
   H01J 37/32 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01J37/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019187519
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021064482
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 泰幸
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06920312(US,B1)
【文献】特開2017-174537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01J 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に高周波力を供給する高周波電源装置であって、
周波数設定値に基づいて、高周波発振信号を生成し、出力する発振部と、
直流電力を用いて前記高周波発振信号を増幅し、高周波力を出力する電力増幅部と、 前記負荷に向けて出力される高周波力である進行波電力と前記負荷から反射されて戻ってくる高周波電力である反射波電力を検出し、それぞれに対応する進行波電力信号と反射波電力信号とを出力する高周波電力検出部と、
前記進行波電力信号が示す進行波電力値、又は、前記進行波電力値から前記反射波電力信号が示す反射波電力値を減算した有効電力値を制御対象としたときに、前記制御対象の平均値が予め取得された一定の出力電力設定値と等しくなるように、かつ、出力電力変調あるいは出力周波数変調の少なくとも一方を実行するように装置動作を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記出力電力設定値が、予め定めた第1閾値を超えたと判断した場合、又は、前記進行波電力信号あるいは前記反射波電力信号における所定の条件と予め設定された第2閾値との比較結果に基づいて前記負荷における低周期変動の発生あるいは発生のおそれを検知した場合に、前記出力電力変調および前記出力周波数変調がそれぞれ有効か無効かを示す情報に基づいて、前記出力電力変調あるいは前記出力周波数変調の何れか一方、あるいは両方を実行するかを決定する、高周波電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記出力電力変調を実行する場合、出力電力変調振幅値および出力電力変調周波数値を含む出力電力変調パラメータに基づいて前記出力電力設定値に変調成分を加えた目標電力設定値を算出し、前記制御対象の電力値が前記目標電力設定値と等しくなるように制御する、高周波電源装置。
【請求項3】
請求項において、
記制御部は、前記目標電力設定値と前記制御対象の瞬時値との差分値から前記電力増幅部における操作量を算出し、当該操作量を前記電力増幅部に出力する、高周波電源装置。
【請求項4】
請求項1からの何れか1項において、
前記制御部は、前記出力周波数変調を実行する場合、出力周波数変調振幅値および出力周波数変調周波数値を含む出力周波数変調パラメータに基づいて前記高周波発振信号を変調させる、高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源装置では、プラズマ負荷が不安定になった場合において、一定の電力を提供するような制御が実行される。例えば、特許文献1は、プラズマ負荷等に高周波電力を供給する高周波電源装置の負荷に低周波数の変動が生じたときに、出力制御にゆらぎが生じて高周波出力が変動するのを防止するために、内部の電圧や電流を制御(規制)するフィードバック制御やフィードフォワード制御ループを動作させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-77505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示した高周波電源装置を用いて、安定的に所定の周波数で一定の電力(高周波出力)をプラズマ負荷等に供給し続けたとしても、プラズマ負荷の中には、比較的低い周期で変動する周期負荷変動(プラズマオシレーション(Plasma Oscillation))が発生する場合がある。このプラズマオシレーションは比較的低い周期(数Hz:例えば3~6Hz)で変動し、プラズマ処理装置内ではプラズマのチラつき(Blinking)を引き起こす要因となる。このようなプラズマのチラつきが発生してしまうと、例えば、プラズマ処理装置による半導体や液晶等に対する薄膜の形成や表面の改質、あるいは薄膜の除去(エッチングやアッシング)等の処理が適切に行えなくなる可能性がある。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高周波電源装置が接続されたプラズマ処理装置において、プラズマ負荷の周期的変動が発生した場合に当該周期的変動を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本実施形態は、負荷に高周波出力を供給する高周波電源装置であって、周波数設定値に基づいて、高周波発振信号を生成し、出力する発振部と、直流電力を用いて高周波発振信号を増幅し、高周波出力を出力する電力増幅部と、負荷に供給される高周波出力である進行波電力信号と、負荷からの反射波電力信号を検出する高周波電力検出部と、設定パラメータに基づいて目標電力設定値を算出し、当該目標電力設定値に対して出力電力変調あるいは出力周波数変調の少なくとも一方を実行して、変調された高周波出力を出力するように装置動作を制御する制御部と、を備える高周波電源装置について開示する。
【0007】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高周波電源装置が接続されたプラズマ処理装置において、プラズマ負荷の周期的変動を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による高周波電源装置10の概略構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態による制御部17の内部構成例を示す図である。
図3】本実施形態による発振部12の内部構成例を示す図である。
図4】本実施形態によるパラメータ設定画面400の構成例を示す図である。
図5】本実施形態の高周波電源装置10における変調機能の詳細を説明するためのフローチャートである。
図6】出力電力変調のみを行ったときの出力電力波形の例を示す図である。
図7】出力周波数変調のみを行ったときの出力電力波形の例を示す図である。
図8】出力電力変調および出力周波数変調の両方を行ったときの出力電力波形の例を示す図である。
図9】プラズマオシレーションが発生している状態(変調前)の周波数スペクトルを示すグラフである。
図10図9の状態で出力電力変調を行った後の周波数スペクトルを示すグラフである。
図11】プラズマオシレーションが発生している状態(変調前)の周波数スペクトルを示すグラフである。
図12図11の状態で出力周波数変調を行った後の周波数スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<高周波電源装置の構成>
図1は、本実施形態による高周波電源装置10の概略構成例を示すブロック図である。図1に示されるように、高周波電源装置10は、直流電源部11と、発振部12と、電力増幅部13と、合成部14と、高周波電力検出部15と、制御部17と、入力部18と、表示部19と、を備え、インピーダンス整合器16を介して、プラズマ処理装置などの負荷30に対して高周波出力(RF出力)を供給する。
【0011】
直流電源部11は、制御部17からの動作指令に応答して、商用電源20の出力を直流出力に変換する。直流電源部11は、例えば、商用電源20からの交流電圧を一旦直流に変換し、それを別のレベルの直流出力に変換するDC/DCコンバータとして機能しており、当該直流出力のレベルを適宜可変に制御することができるように構成されている。直流電源部11は、内部構成として(図1には図示せず)、例えば、商用電源20から得られる交流電圧を整流する整流回路と、整流回路の出力を交流出力に変換するインバータと、インバータの出力を整流し平滑する整流平滑回路と、を含むことができる。
【0012】
発振部12は、制御部17から発振部出力周波数設定値(基本周波数)を含む各変調パラメータ値(後述)を受信し、基本周波数の交流成分あるいは周波数変調された交流成分の信号(負荷に供給する高周波出力の周波数に等しい発振信号(高周波発振信号):いわゆる小信号)であって、電力増幅部13を動作させるための信号を電力増幅部13に供給する。なお、高周波電源装置10に複数の電力増幅部13が設けられている場合、発振部12は、生成した高周波発振信号を電力増幅部13の設定数分だけ分配して出力する。図1では、2つの高周波発振信号が出力される例が示されている。もちろん、1つの高周波発振信号を出力するようにしてもよいし、3つ以上の高周波発振信号を出力するようにしてもよい。
【0013】
電力増幅部13は、制御部17から供給される操作量の値(後述)に基づいて、発振部12から供給される高周波発振信号を増幅し、直流電源部11から供給される直流出力を所定の周波数を有する高周波電力(RF出力)に変換して出力する。図1には示されていないが、電力増幅部13は複数設けることができる。1つの電力増幅部だけでは出力できる電力の大きさが限られているため、所望の電力値を得るために複数の電力増幅部を設けることがある。つまり、高周波電源装置10に接続する負荷で必要とされる出力電力が大きさによって電力増幅部の個数が決まる。図1では、2つの高周波発振信号が電力増幅部13に供給されているため、2つの電力増幅部が設けられていることになる。
【0014】
合成部14は、電力増幅部13が複数ある場合に、電力増幅部13の出力を合成し、合成された電力信号(進行波電力信号)を出力する。従って、電力増幅部13が1つの場合には、合成部14を省略できる。なお、複数の電力増幅部13を設ける場合は、例えば、特開2015-144505号公報,特開2017-201630号公報に示すように、発振部12で生成する複数の高周波発振信号に位相差を設定することによって、後述する合成部14における合成割合を調整することができる。すなわち、高周波電源装置10から出力する高周波電力(RF出力)を調整することができる。
【0015】
高周波電力検出部15は、合成部14で生成された高周波出力(RF出力:進行波電力信号)を、インピーダンス整合器16を介してプラズマ負荷(プラズマ処理装置)等の負荷30に供給する。
【0016】
インピーダンス整合器16は、負荷30を高周波電源装置10に接続したときに、高周波電源装置側の出力インピーダンスと負荷側の入力インピーダンスの整合を取る機能を有している。電力伝送を効率的に行うためである。インピーダンス整合器16は、例えば、2つの可変コンデンサ、あるいは、1つの固定コンデンサと1つの可変コンデンサを備えている。なお、インピーダンス整合が取れ、反射波電力信号がなくなったとしても上述のプラズマオシレーションは発生する可能性がある。
【0017】
高周波電力検出部15は、送信する進行波電力信号のみならず、インピーダンス整合器16においてインピーダンス整合を取りきれないときに負荷30から反射して戻ってくる反射波電力信号を検出し、進行波電力信号および反射電力信号を制御部17に対して供給する。
【0018】
制御部17は、入力部18から入力された指示、高周電力波検出部15から供給される進行波電力信号および反射波電力信号に基づいて、直流電源部11の出力制御量、発振部12の動作基本周波数値、および電力増幅部13の操作量を決定し、それぞれに対してそれぞれの制御量を出力する。なお、電力増幅部13の操作量には、上述した発振部12で生成する複数の高周波発振信号に設定される位相差も含まれる。
【0019】
インピーダンス整合器16が自動インピーダンス整合器であった場合、制御部17は、プラズマオシレーションの発生を検出したときには、本実施形態による出力電力(振幅)変調(高周波出力電力変調)処理および/あるいは出力周波数変調(高周波出力周波数変調)処理による効果(後述)を分かりやすくするため、自動インピーダンス整合器16の動作を停止させるようにしてもよい。このため、図1では、制御部17からインピーダンス整合器16に対して制御信号が供給される構成となっている。従って、インピーダンス整合器16の動作を停止させない場合には、当該制御信号の供給は不要である。なお、制御部17の内部構成は、図2に示すとおりであり、その詳細については後述する。
【0020】
入力部18は、ユーザ(オペレータ)が制御部17に対して指示を入力する手段であり、例えば、キーボード、機械的スイッチ、マウスやタッチパネルなどのポインティングデバイス、およびマイク等が該当する。後述するように、ユーザによる指示入力には、例えば、目標電力設定値(基準電力値)、各種出力電力変調パラメータ、および各種出力周波数変調パラメータが含まれる。
【0021】
表示部19は、例えば、制御部17の指令に基づいて、各種出力電力変調および出力周波数変調パラメータを入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、負荷に供給中のRF出力レベル、検出した進行波電力信号値および反射波電力信号値、プラズマオシレーションの発生の有無、出力電力変調および/または出力周波数変調が作動中であることを示す情報などを表示したりする。
【0022】
<制御部の内部構成例>
図2は、本実施形態による制御部17の内部構成例を示す図である。図2に示されるように、制御部17は、直流電源部11および電力増幅部13に対して操作量(制御量)を提供する第1構成部と、発振部12に対して出力周波数変調パラメータを供給する第2構成部と、を備えている。
【0023】
(i)第1構成部について
制御部17は、第1構成部として、出力電力設定変調部1701と、平均電力設定出力部1702と、出力電力変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1703と、出力電力変調振幅設定出力部1704と、出力電力変調位相設定出力部1705と、出力電力変調周波数設定出力部1706と、出力電力設定変調出力部が各種パラメータに基づいて変調し決定した変調出力電力設定値を目標電力設定値として出力する目標電力設定出力部1708と、高周波電力検出部15から取得した進行波電力信号および反射波電力信号と目標電力設定値とに基づいて電力増幅部への操作量(フィードバック制御量)を演算する操作量演算部1709と、を備える。
【0024】
平均電力設定出力部1702は、負荷30に供給する高周波電力(RF出力)の設定値(平均値や中心値ともいう)を出力電力設定変調部1701に供給する。当該設定値は、入力部18を介してユーザによって入力されるようにしてもよいし、あるいは平均電力設定出力部1702がメモリ(図示せず)に格納された値を読み込んで取得してもよい。
【0025】
出力電力変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1703は、出力電力設定値(出力電力値)が所定の閾値(例えば、変調開始閾値設定電力入力部402(図4参照)に対して、ユーザがプラズマオシレーション発生の可能性が高くなる電力値を閾値として設定することができる)を超えたときに、出力電力変調を実行するかしないかを示す情報を出力電力設定変調部1701に供給する。有効(Enable)か無効(Disable)かは、例えば、ユーザが入力部18を用いて設定することができる。出力電力設定変調部1701は、有効(Enable)の情報を受け取った場合、出力電力変調を実行し、無効(Disable)の情報を受け取った場合、出力電力変調を実行しない。有効(Enable)か無効(Disable)かは、例えば、ユーザが入力部18を用いてパラメータ設定画面400(図4参照)を介して設定することができる。後述のように、入力部18からは、変調対象信号(変調種別情報)が制御部17の出力電力変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1703に送られる。出力電力変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1703は、変調対象信号に基づいて、出力電力変調が有効に設定されているか判断し、プラズマオシレーションの発生等が検知されたときに出力電力変調が動作するか否かの情報を出力電力設定変調部1701に適宜受け渡す(パラメータ設定時に受け渡してもよいし、プラズマオシレーションの発生等が検知されたときに受け渡してもよい)。
【0026】
出力電力変調振幅設定出力部1704は、出力電力変調する際の振幅値(設定値)を出力電力設定変調部1701に対して供給する。出力電力変調位相設定出力部1705は、出力電力変調する際の位相値(設定値)を出力電力設定変調部1701に対して供給する。また、出力電力変調周波数設定出力部1706は、出力電力変調する際の周波数値(設定値)を出力電力設定変調部1701に対して供給する。これらの各出力変調パラメータの設定値は、例えば、ユーザが入力部18を用いて設定(任意の値を入力してもよいし、予め決められた各パラメータ値の組み合わせの中から選択するようにしてもよい)することができる。出力電力設定変調部1701は、各設定出力部1704から1706から受け取った各種電力変調パラメータを用いて、有効(Enable)の情報を受け取った場合、出力電力変調を実行し、出力電力変調された目標電力設定値(高周波出力として目指すべき電力値)を目標電力設定出力部1708に出力する。
【0027】
目標電力設定出力部1708は、出力電力設定変調部1701から受け取った出力電力変調された目標電力設定値を保持し、例えば、操作量演算処理開始のタイミングで操作量演算部1709に当該出力電力変調された目標電力設定値を提供する。目標電力設定出力部1708は、出力電力変調された目標電力設定値を操作量演算部1709に提供すると、当該目標電力設定値を削除してもよいし、次の出力電力変調された目標電力設定値を提供した後などタイミングを遅らせて当該目標電力設定値を削除してもよい。
【0028】
操作量演算部1709は、直流電源部11の出力を決定する変量および電力増幅部13のゲインなどを操作量として直流電源部11および電力増幅部13にそれぞれ提供する。例えば、操作量演算部1709は、直流電源部11の出力電圧を決定するインバータ(図示せず)のPWM制御のデューティ比を操作量とし、進行波電力を制御対象とする(進行波電力一定制御)か、もしくは進行波電力信号から反射波電力信号を減算することにより求めた有効電力を制御対象とする(負荷電力一定制御)。直流電源部11は、当該操作量を用いて、高周波電力の平均値が上記入力された平均電力設定値に保たれるように出力すべき直流電力値を決定する。また、例えば進行波電力一定制御の場合、操作量演算部1709は、出力電力変調された目標電力設定値と検出された進行波電力信号(時々刻々と変化する電力値)との差分を取って操作量(フィードバック制御量)を算出し、当該制御量を電力増幅部13に供給する。電力増幅部13のそれぞれは、制御部17(操作量演算部1709)から受け取った操作量を用いて、発振部12から供給される高周波発振信号を増幅し、直流電源部11から供給される直流出力を所定の周波数を有する高周波電力(RF出力)を出力する。
【0029】
(ii)第2構成部
制御部17は、第2構成部として、発振部出力周波数設定出力部1710と、出力周波数数変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1711と、出力周波数変調振幅設定出力部1712と、出力周波数変調位相設定出力部1713と、出力周波数変調周波数設定出力部1714と、を備える。
【0030】
発振部出力周波数設定出力部1710は、発振部12から出力される高周波発振信号(小信号)の周波数(基本出力周波数)を発振部12の出力周波数変調部1201(図3参照)に提供する。高周波発振信号の周波数の値は、例えば、入力部18を介してユーザが入力するようにしてもよいし、あるいは発振部出力周波数設定出力部1710がメモリ(図示せず)に格納された値を読み込んで取得してもよい。
【0031】
出力周波数変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1711は、出力電力設定値が所定の閾値(例えば、プラズマオシレーション発生の可能性が高くなる電力値に閾値を設定することができる)を超えたときに、出力周波数変調を実行するかしないかを示す情報を発振部12の出力周波数変調部1201に供給する。有効(Enable)か無効(Disable)かは、後述のように、例えば、ユーザが入力部18を用いてパラメータ設定画面400(図4参照)を介して設定することができる。後述のように、入力部18からは、変調対象信号(変調種別情報:上述の0、1、2、3)が制御部17の出力周波数変調有効/無効(Enable/Disable)設定出力部1711に送られ、制御部17の制御の下、出力周波数変調が有効に設定されているか(プラズマオシレーションの発生等が検知されたときに周波数変調を動作させるか否か)判断される。そして、制御部17は、出力周波数変調が有効に設定されている場合には、各種出力周波数変調のパラメータを、発振部12の出力周波数変調部1201に適宜受け渡す。
【0032】
出力周波数変調部1201は、有効(Enable)の情報を受け取った場合、出力周波数変調を実行し、無効(Disable)の情報を受け取った場合、周波数変調を実行しない。
【0033】
出力周波数変調振幅設定出力部1712は、出力周波数変調する際の振幅値(設定値)を出力周波数変調部1201に対して供給する。出力周波数変調位相設定出力部1713は、出力周波数変調する際の位相値(設定値)を出力周波数変調部1201に対して供給する。また、出力周波数変調周波数設定出力部1714は、出力周波数変調する際の周波数値(設定値)を出力周波数変調部1201に対して供給する。これらの各出力変調パラメータの設定値は、例えば、ユーザが入力部18を用いて設定(任意の値を入力してもよいし、予め決められた各パラメータ値の組み合わせの中から選択するようにしてもよい)することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、各種出力電力変調パラメータおよび各種出力周波数変調パラメータは、入力部18からユーザが入力した値(固定値)を用いたり、メモリに格納した値(固定値)を読み込んで用いたりするようにしているが、自動的に各パラメータを決定してもよい。例えば、プラズマオシレーションの発生が検出された後、高周波出力(RF出力)の1から2周期分の信号を取得し、各種変調パラメータの値を自動的に算出してもよい。
【0035】
<発振部の内部構成例>
図3は、本実施系形態による発振部12の内部構成例を示す図である。図3に示されるように、発振部12は、出力周波数変調部1201を含んでいる。
【0036】
出力周波数変調部1201は、各種パラメータ値の1つである出力周波数変調Enable/Disable信号を受け取り、出力周波数変調が有効か否か判断する。有効(Enable)の情報を受け取った場合、出力周波数変調部1201は、発振部出力周波数設定出力部1710から受け取った基本出力周波数と、他の各設定出力部1711から1714から受け取った各種出力周波数変調パラメータ値を用いて、出力周波数変調を実行する。
【0037】
周波数変調が無効(Disable)の場合には、出力周波数変調部1201は周波数変調を実行せず、発振部12は、発振部出力周波数設定出力部1710から与えられる基本出力周波数で動作することになる。
【0038】
発振部12は、上述のように、発振部出力(高周波発振信号)を電力増幅部13の設定数分出力する。各電力増幅部13は、発振部12から受け取った高周波発振信号、直流電源部11から受け取った直流出力、および制御部から受け取った操作量に基づいて、高周波出力を生成し、合成部14に出力する。
【0039】
<パラメータ設定画面構成例>
本実施形態による変調処理においては、変調対象(変調種別)の選択、出力電力変調振幅設定、出力電力変調周波数設定、出力電力変調位相設定、出力周波数変調周波数振幅設定、出力周波数変調周波数設定、出力周波数変調位相設定および変調開始閾値設定電力をパラメータ化している。例えば、変調対象が出力電力変調に設定されていた場合、負荷30への出力電力値が、変調開始閾値設定電力を超えた場合、高周波電源1は、出力電力変調振幅設定値、出力電力変調周波数設定値、および出力電力変調位相設定値に応じた、高周波電力を出力する。
【0040】
一方、変調対象が出力周波数変調に設定されていた場合は、負荷30への出力電力値が、変調開始閾値設定電力を超えたとき、高周波電源装置10は、出力周波数変調周波数振幅設定値、出力周波数変調周波数設定値、および出力周波数変調位相設定値に応じた高周波電力を出力する。
【0041】
パラメータは自由に設定することが可能であり、プラズマオシレーションの具合(状態)に応じて最適化が可能である。また、各種パラメータの値は、負荷の種類が変われば変更されるべきである。以下では、上述のような各種パラメータを入力するためのパラメータ設定画面の構成例について説明する。
【0042】
図4は、本実施形態によるパラメータ設定画面400の構成例を示す図である。パラメータ設定画面400は、例えば、表示部19の表示画面に表示されるGUI(Graphical User Interface)であって、各項目の値は入力部18を介してユーザによって入力される。
【0043】
パラメータ設定画面400は、例えば、変調対象選択入力部401と、変調開始閾値設定電力入力部402と、出力電力変調振幅設定値入力部403と、出力電力変調周波数設定値入力部404と、出力電力変調位相設定値入力部405と、アーク検出後変調再開指示入力部406と、ストレス検出後変調再開指示入力部407と、出力周波数変調周波数振幅設定値入力部408と、出力周波数変調周波数設定値入力部409と、出力周波数変調位相設定値入力部410と、を構成項目として含んでいる。
【0044】
変調対象選択入力部401は、プラズマオシレーションの発生(あるいは発生のおそれ)が検出されたときに実行される変調の種類(変調対象)をユーザが入力(選択)する際に用いられる項目欄である。例えば、出力電力変調のみを実行する場合には「1」、高周波出力周波数変調のみを実行する場合には「2」、出力電力変調および出力周波数変調の両方を実行する場合には「3」、何れも実行しない場合には「0」を入力するように構成することができる。あるいは、出力電力変調の有効および無効を示す情報(1または0)と出力周波数変調の有効および無効を示す情報(1または0)をそれぞれ入力するような形式であってもよい。なお、図4では、出力電力変調のみを実行することを示す情報である「1」が入力(選択)された状態が示されている。また、変調対象選択入力部401から入力された値(“0、1、2、あるいは3”、または“出力電力変調が1あるいは0、および出力周波数変調が1あるいは0”)は、変調対象信号(変調種別を示す情報)として、制御部17に送られる。
【0045】
変調開始閾値設定電力入力部402は、プラズマオシレーションの発生(あるいは発生のおそれ)を検知し、指定された変調を有効にする設定電力の閾値をユーザが入力するための項目欄である。設定電力値(出力電力値)が当該閾値以上の場合に変調動作が実行される。図4では、24.5kWが閾値として入力された状態が示されている。
【0046】
出力電力変調振幅設定値入力部403は、出力電力変調の際の振幅電力設定値をユーザが入力するための項目欄である。±振幅電力設定値で振幅変調が実行される。図4では、400Wが振幅設定値として入力された状態が示されている。
【0047】
出力電力変調周波数設定値入力部404は、出力電力変調の際の変調周波数設定値をユーザが入力するための項目欄である。図4では、60Hzが周波数設定値として入力された状態が示されている。
【0048】
出力電力変調位相設定値入力部405は、出力電力変調の際の位相設定値(変調周波数に対してどれだけ位相をずらすかを示す情報)をユーザが入力するための項目欄である。図4では、位相設定がされていない状態(設定位相値が0)が示されている。
【0049】
アーク検出後変調再開指示入力部406は、負荷30で発生するアーク(負荷急変)を検出した後に変調を再開するか否かを示す情報(設定値)をユーザが入力するための項目欄である。例えば、設定値「0」の場合にはアーク検出後の変調動作を再開せず、設定値「1」の場合にアーク検出後の変調動作を再開するように指定することができる。図4では、アーク検出後の変調動作を再開するように指定された状態が示されている。
【0050】
ストレス検出後変調再開指示入力部407は、負荷30におけるストレスを検出した後に変調を再開するか否かを示す情報(設定値)をユーザが入力するための項目欄である。例えば、設定値「0」の場合にはストレス検出後の変調動作を再開せず、設定値「1」の場合にストレス検出後の変調動作を再開するように指定することができる。図4では、ストレス検出後の変調動作を再開するように指定された状態が示されている。
【0051】
出力周波数変調周波数振幅設定値入力部408は、出力周波数変調の際の周波数振幅設定値をユーザが入力するための項目欄である。中心周波数±周波数振幅設定値で周波数変調が実行される。図4では、10Hzが周波数振幅設定値として入力された状態が示されている。
【0052】
出力周波数変調周波数設定値入力部409は、出力周波数変調の際の周波数設定値(変調の一周期の設定値)をユーザが入力するための項目欄である。図4では、60Hzが周波数設定値として入力された状態が示されている。
【0053】
出力周波数変調位相設定値入力部410は、出力周波数変調の際の位相設定値(変調動作を開始するタイミング(どの位のずれで変調を掛けるか)を示す情報)をユーザが入力するための項目欄である。図4では、出力周波数位相設定がされていない状態(設定位相値が0)が示されている。
【0054】
なお、図4において、出力電力変調振幅設定値入力部403、出力電力変調周波数設定値入力部404、および出力電力変調位相設定値入力部405は、高周波出力電力変調のパラメータ設定に関する項目欄であり、出力周波数変調周波数振幅設定値入力部408、出力周波数変調周波数設定値入力部409、および出力周波数変調位相設定値入力部410は、出力周波数変調のパラメータ設定に関する項目欄である。
【0055】
<変調機能の詳細>
図5は、本実施形態の高周波電源装置10における変調機能の詳細を説明するためのフローチャートである。例えば、変調機能はプログラムによって実現することができるので、制御部(CPUなどのプロセッサ)17が、メモリ(図示せず)から当該プログラムを読み込み、プロセッサ内の内部メモリに展開して変調機能を動作させる。従って、以下では、動作主体を制御部17であるとして各ステップの動作について説明する。
【0056】
(i)ステップ501
制御部17は、出力電力設定変調部1701で算出された目標電力設定値(出力電力設定値)を監視し、当該目標出力設定値が所定の閾値(第1閾値)を超えたか否か判断する。当該所定の閾値は、プラズマオシレーションの発生、あるいは発生のおそれがある場合の電圧値に設定されており、例えば、入力部18を介して、ユーザにより入力設定される。当該所定の閾値は、例えば、プラズマオシレーションの発生タイミングに関する経験則に基づいて決定することができる。
【0057】
監視している目標電力設定値が所定の閾値を超えたと判断された場合(ステップ501でYESの場合)、処理はステップ502に移行する。監視している目標電力設定値が所定の閾値を超えていないと判断された場合(ステップ501でNOの場合)、処理はステップ508に移行する。
【0058】
なお、前回の監視タイミングでは、目標電力設定値が当該所定の閾値を超えた(あるいは以上)と判断され、出力電力変調および/または出力周波数変調が実行された場合であっても、現監視タイミングで目標電力設定値が当該所定の閾値以下(あるいは未満)になった場合には、ステップ501でNOとなり、処理はステップ508に移行することになる。また、本実施形態では、目標電力設定値が所定の閾値を超えた場合に、プラズマオシレーションの発生あるはそのおそれがあると判断しているが、目標電力設定値の他、負荷値、位相値、γ(電力反射係数)値、あるいは反射波電力値など(条件)とそれぞれに対して予め設定された閾値(第2閾値)との比較に基づいて、プラズマオシレーションの発生等を判断してもよい。さらに、これらの要素のうち複数の要素を組み合わせてプラズマオシレーションの発生等を判断してもよい。
【0059】
(ii)ステップ502
制御部17は、出力電力設定変調部1701を介して、出力電力変調が有効か否かについての情報を取得し、その情報に基づいて出力電力変調が有効に設定されているか(プラズマオシレーションの発生等が検知された場合に出力電力変調を実行するか否か)を判断する。出力電力変調が有効であると判断された場合(ステップ502でYESの場合)、処理はステップ503に移行する。出力電力変調が無効であると判断された場合(ステップ502でNOの場合)、処理はステップ504に移行する。
【0060】
なお、本実施形態では、上述のパラメータ設定画面400を介して、変調対象(変調種別)の情報が入力され、それに基づいて出力電力変調の有効性について判断しているが、パラメータ設定画面400に対して直接高周波出力電力変調が有効か無効かの情報が入力設定される態様の場合には、制御部17は、出力電力変調が有効か否か直接判断することができる。
【0061】
(iii)ステップ503
制御部17は、出力周波数変調が有効か否かについての情報を取得し、その情報に基づいて出力周波数変調が有効に設定されているか(プラズマオシレーションの発生等が検知された場合に出力周波数変調を実行するか否か)を判断する。出力周波数変調が有効であると判断された場合(ステップ503でYESの場合)、処理はステップ505に移行する。出力周波数変調が無効であると判断された場合(ステップ503でNOの場合)、処理はステップ506に移行する。
【0062】
(iv)ステップ504
ステップ503と同様に、制御部17は、出力周波数変調が有効か否かについての情報を取得し、その情報に基づいて出力周波数変調が有効に設定されているか(プラズマオシレーションの発生等が検知された場合に出力周波数変調を実行するか否か)を判断する。出力周波数変調が有効であると判断された場合(ステップ504でYESの場合)、処理はステップ507に移行する。出力周波数変調が無効であると判断された場合(ステップ504でNOの場合)、処理はステップ508に移行する。
【0063】
(v)ステップ505
制御部17は、出力電力変調および出力周波数変調を有効(ON)に設定する。そして、制御部17は、出力電力設定変調部1701に対して、平均電力設定値、および出力電力変調の各種パラメータ(出力電力変調振幅設定値、出力電力変調位相設定値、および出力電力変調周波数設定値)を供給する。また、制御部17は、発振部12の出力周波数変調部1201に対して、発振部出力周波数設定値(基本出力周波数設定値)、および周波数変調の各種パラメータ(出力周波数変調振幅設定値、出力周波数変調位相設定値、および出力周波数変調周波数設定値)を供給する。
【0064】
(vi)ステップ506
制御部17は、出力電力変調を有効(ON)に、出力周波数変調を無効(OFF)に設定する。そして、制御部17は、出力電力設定変調部1701に対して、平均電力設定値、および出力電力変調の各種パラメータ(出力電力変調振幅設定値、出力電力変調位相設定値、および出力電力変調周波数設定値)を供給する。また、制御部17は、発振部12の出力周波数変調部1201に対して、出力周波数変調の各種パラメータは供給せず、発振部出力周波数設定値(基本出力周波数設定値)を提供する。
【0065】
(vii)ステップ507
制御部17は、出力電力変調を無効(OFF)に、出力周波数変調を有効(ON)に設定する。そして、制御部17は、出力電力設定変調部1701に対して、出力電力変調の各種パラメータは提供せず、平均電力設定値を供給する。また、制御部17は、発振部12の出力周波数変調部1201に対して、発振部出力周波数設定値(基本出力周波数設定値)、および周波数変調の各種パラメータ(出力周波数変調振幅設定値、出力周波数変調位相設定値、および出力周波数変調周波数設定値)を供給する。
【0066】
(viii)ステップ508
制御部17は、出力電力変調および出力周波数変調を無効(OFF)に設定する。そして、制御部17は、出力電力設定変調部1701に対して、出力電力変調の各種パラメータは提供せず、平均電力設定値を供給し、発振部12の出力周波数変調部1201に対して、出力周波数変調の各種パラメータは提供せず、発振部出力周波数設定値(基本出力周波数設定値)を供給する。
【0067】
(ix)ステップ509
ステップ505から507で設定された変調処理を実行する。
(ix-1)出力電力変調が有効(ON)の場合、出力電力設定変調部1701は、制御部17による制御の下、平均電力設定出力部1702から取得した平均電力設定値を、パラメータ設定画面400で設定された各種出力電力変調パラメータ(振幅設定値、位相設定値、および周波数設定値)で出力電力変調を行い、変調された平均電力設定値を生成し、目標電力設定出力部1708に出力する。目標電力設定出力部1708は、当該変調された平均電力設定値を目標電力設定値として、操作量演算部1709に出力する。
【0068】
操作量演算部1709は、目標電力設定値と進行波電力信号値との差分値から電力増幅の操作量(例えば、出力すべき高周波電力のレベルを決定する変数の大きさ)を演算し、当該操作量を電力増幅部13に出力する。なお、出力電力変調が行われたとしても、平均電力値(中心電力値)は同じである。当該操作量によって、高周波出力(RF出力)を目標電力設定値(平均電力設定値)に保ちつつ、出力電力値のエンベロープなどを変更することが可能となる。
【0069】
(ix-2)出力周波数変調が有効(ON)の場合、制御部17は、入力部18からユーザによって設定入力された発振部出力周波数値(基本出力周波数設定値)およびパラメータ設定画面400で設定された各種出力周波数変調パラメータ(出力周波数変調周波数振幅設定値、出力周波数変調位相設定値、および出力周波数変調周波数設定値)取得し、発振部12の出力周波数変調部1201に受け渡す。
【0070】
出力周波数変調部1201は、各種周波数パラメータに基づいて、基本出力周波数を出力周波数変調し、変調された高周波発振信号(小信号)を生成し、電力増幅部13に出力する。
【0071】
(x)ステップ510
この場合は、プラズマオシレーションが発生等していないか、たとえプラズマオシレーションが発生等していたとしても何れの変調も不実施と設定されているため、出力電力変調および出力周波数変調は実行されず、通常の高周波出力生成処理が実行され、生成された高周波出力(RF出力)が負荷30に供給される。
【0072】
具体的には、各種出力電力変調パラメータは考慮されないため、制御部17による制御の下、目標電力設定出力部1708は、目標電力設定値として平均電力設定値を操作量演算部1709に提供する。そして、制御部17による制御の下、操作量演算部1709は、目標電力設定値と進行波電力信号値との差分値から電力増幅の操作量(例えば、出力すべき高周波電力のレベルを決定する変数の大きさ)を演算し、当該操作量を電力増幅部13に出力する。当該操作量によって、高周波出力(RF出力)を目標電力設定値(平均電力設定値)に保つことが可能となる。また、発振部12は、制御部17を介して発振部出力周波数設定値(基本出力周波数設定値)を取得し、それに基づいて高周波発振信号(小信号)を生成し、電力増幅部13に出力する。
【0073】
<変調時の出力電力波形の例>
図6から8は、本実施形態による変調処理を実行したときに得られる出力電力波形の例を示す図である。図6は、出力電力変調のみを行ったときの出力電力波形の例を示す。図7は、出力周波数変調のみを行ったときの出力電力波形の例を示す。図8は、出力電力変調および出力周波数変調の両方を行ったときの出力電力波形の例を示す。
【0074】
(i)出力電力変調のみを行った場合(図6参照)
目標電力設定値(出力電力設定値)が所定の閾値を上回った場合に出力電力変調が開始される。出力電力変調が実行されている区間では、出力電力は、変調前の出力電力と中心周波数(基本出力周波数)を同一とし、出力エンベロープ(振幅)が変調パラメータに含まれる振幅値に基づいて大きくなるように変調され(可変値)、かつ振幅変化の周期が変調パラメータに含まれる周波数設定値によって変調されている(位相設定値は0)。中心周波数が変調前後で同一であるため、出力される平均電力値は変調前後で同一となっている。そして、図6を参照すると、出力電力変調後、目標電力設定値が上記所定の閾値を下回った場合には、出力電力変調が停止され、プラズマオシレーションを発生させることがない出力電力値となっていることが分かる。
【0075】
(ii)出力周波数変調のみを行った場合(図7参照)
目標電力設定値が所定の閾値を上回った場合に出力周波数変調が開始される。出力周波数変調が実行されている区間では、出力電力は、変調前の出力電力と中心周波数(基本出力周波数)を同一とし、出力周波数変調パラメータに含まれる周波数振幅設定値に基づいて出力エンベロープ(振幅)が大きくなる(一定値)ように変調され、出力電力の周期が出力周波数変調パラメータに含まれる周波数設定値によって変調されている(位相設定値は0)。中心周波数が変調前後で同一であるため、出力される平均電力値は変調前後で同一となっている。そして、図7を参照すると、出力周波数変調後、目標電力設定値が上記所定の閾値を下回った場合には、出力周波数変調が停止され、プラズマオシレーションを発生させることがない出力電力値となっていることが分かる。
【0076】
(iii)出力電力変調および出力周波数変調の両方を行った場合(図8参照)
目標電力設定値が所定の閾値を上回った場合に出力周波数変調および出力電力変調が開始される。出力周波数変調および出力電力が実行されている区間では、出力電力は、変調前の出力電力と中心周波数(基本出力周波数)を同一とし、出力エンベロープ(振幅)が出力電力変調パラメータに含まれる振幅設定値に基づいて大きくなるように変調され(可変値)、かつ振幅変化の周期が出力電力変調パラメータに含まれる出力電力変調周波数設定値によって変調されると共に、出力電力の周期が出力周波数変調パラメータに含まれる出力周波数変調周波数設定値によって変調されている(出力電力変調および出力周波数変調において、位相設定値は0)。中心周波数が変調前後で同一であるため、出力される平均電力値は変調前後で同一となっている。そして、図8を参照すると、出力電力変調後、目標電力設定値が上記所定の閾値を下回った場合には、出力電力変調および出力周波数変調が停止され、プラズマオシレーションを発生させることがない出力電力値となっていることが分かる。
【0077】
<変調前後の出力電力の比較結果>
図9から12は、出力電力変調あるいは出力周波数変調を行う前後の周波数スペクトル(フーリエ変換値)を示すグラフである。図9および11は、プラズマオシレーションが発生している状態(変調前)の周波数スペクトルを示すグラフである。図10は、図9の状態で出力電力変調を行った後の周波数スペクトルを示すグラフである。図12は、図11の状態で出力周波数変調を行った後の周波数スペクトルを示すグラフである。
【0078】
(i)出力電力変調の効果
図9に示されるように、3Hz付近に大きな振幅レベルの成分が存在している。これは、プラズマオシレーションは数Hzという低い周波数で負荷30に発生する周期変動であり、この3Hzにおける電力値成分がプラズマオシレーションに相当する。
【0079】
そこで、本実施形態で説明した出力電力変調(例えば、出力電力変調周波数設定値を60[Hz]、出力電力変調振幅設定値を±400[W]、出力電力変調位相設定値を0[deg]とした)を動作させると、図10に示されるように、プラズマオシレーションが発生していた3Hzの電力値成分が低く抑えられていることが分かる。
【0080】
(ii)出力周波数変調の効果
図9と同様に、図11でも、3Hz付近に大きな振幅レベルの成分が存在している。叙述のように、これは、プラズマオシレーションが発生している状態である。
【0081】
この状態で、本実施形態で説明した出力周波数変調(例えば、出力周波数変調周波数設定値を60[Hz]、出力周波数変調振幅設定値を±10[kHz](動作基本周波数(例えば、13.56MHz)±10kHz:13.56MHzの中心周波数(基本周波数)を10kHz分変動させるのに、一周期60Hz分の時間を掛けて変動させる。)、出力電力変調位相設定値を0[deg]とした)を動作させると、図12に示されるように、プラズマオシレーションが発生していた3Hzの電力値成分が低く抑えられていることが分かる。
【0082】
(iii)図10および12において、出力電力変調あるいは出力周波数変調を行うと、変調前になかったピークが60Hz付近に出現するが、このピークによってプラズマオシレーションは発生しない。
【0083】
なお、出力電力変調では、振幅設定値を400W以上800W以下に設定し(400W未満では効果は少ないが、振幅値を上げ過ぎると電源にストレスを与えすぎてしまうため)、出力周波数変調では、周波数設定値を50Hzから70Hzとするのか好ましいことが分かった。負荷の特性が変わったときに、この範囲内で出力電力変調あるいは出力周波数変調の各種変調パラメータを可変とすることが好ましい。
【0084】
<変形例>
(i)インピーダンス整合器16が自動で作動するとき(内部に設けられた2つのコンデンサの値が可変のとき)には、その動作と変調動作が重畳されてしまい、どの処理部が動作して、どの処理部が停止しているのか分からなくなる可能性がある。また、変調による効果(プラズマオシレーション抑制効果)が分かりづらくなる場合もある。そこで、制御部17は、プラズマオシレーションの発生、あるいはそのおそれを検知したときに、インピーダンス整合器16の動作を停止するように制御してもよい(制御部17からインピーダンス整合器16への制御信号ラインを参照)。
【0085】
(ii)図9から12で示した実施例では、基本周波数を13MHz程度としたが、400kHzから100MHz以上とすることができる。このような基本周波数であっても、本実施形態による出力変調動作を実行することによるプラズマオシレーション抑制効果は確認することができる。
【0086】
<まとめ>
(i)本実施形態のよる高周波電源装置では、設定パラメータに従って算出した目標電力設定値に対して出力電力変調あるいは出力周波数変調の少なくとも一方を実行して、変調された高周波出力を出力する。このように高周波電源装置を構成することにより、負荷30で発生したプラズマオシレーションを低減し、あるいは負荷30でのプラズマオシレーションの発生を防止することが可能となる。変調を実行するか否かは、例えば、目標電力設定値が所定の閾値(第1閾値)を超えているか否かによってまずは判断することができる。
【0087】
当該高周波電源装置は、設定入力された出力電力変調および出力周波数変調が有効か無効かを示す情報(出力電力変調Enable/Disable、出力周波数変調Enable/Disable)に基づいて、出力電力変調あるいは出力周波数変調の何れか一方、あるいは両方を実行するかを決定するように動作する。このようにすることにより、ユーザはどちらの変調方式でプラズマオシレーションを低減および防止するかを決定し、状況に応じて使い分けることができるようになる。また、当該高周波電源装置は、ユーザによって入力された、出力電力変調振幅値および出力電力変調周波数値を含む出力電力変調パラメータに基づいて、高周波電力目標値を変調させる、あるいは/および、ユーザによって入力された、出力周波数変調振幅値および出力周波数変調周波数値を含む出力周波数変調パラメータに基づいて、高周波発振信号を変調させる。このように、ユーザはどのパラメータを変更することによって変調パラメータを適宜変更することがかのうとなり、ユーザの裁量の幅が広がる。
【0088】
低周期変動の発生あるいは発生のおそれは、負荷に供給される進行波電力信号、あるいは負荷からの反射波電力信号における所定の条件(例えば、出力電力値、位相値、反射係数値、反射電力値など)と予め設定された所定の閾値(第2閾値)との比較結果に基づいて、検知される。これらの各条件に対する閾値は、ユーザがGUIを介して設定できるように構成されている。例えば、進行波電力信号を用いる場合、高周波電源装置は、検出された進行波電力信号が予め設定された閾値を超えた場合に、負荷における低周期変動の発生あるいは発生のおそれを検知し、当該検知結果に応じて、出力電力変調あるいは出力周波数変調の少なくとも一方を実行する。このようにすることにより、出力する高周波電力信号の値を変調によって直接抑えることが可能となる。
【0089】
高周波電源装置は、出力電力変調を実行する場合、変調された目標電力設定値と負荷に供給される高周波出力との差分値から電力増幅部における操作量を算出し、当該操作量を電力増幅部における電力増幅動作に反映させる。
【0090】
(ii)本開示は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0091】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0092】
さらに、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワーク(添付図面には図示せず)を介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0093】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した内容に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点において限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0094】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0095】
10 高周波電源装置
11 直流電源部
12 発振部
13 電力増幅部
14 合成部
15 高周波電力検出部
16 インピーダンス整合器
17 制御部
18 入力部
19 表示部
20 商用電源
30 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12