(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】タイル張りパネルの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
E04F13/08 102D
E04F13/08 102N
(21)【出願番号】P 2020001038
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 一挙
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-161025(JP,A)
【文献】特開平05-278017(JP,A)
【文献】特開平05-052019(JP,A)
【文献】実公平02-022432(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0094087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の開口内をタイルが通過可能とされた複数の通孔が一方向及び該一方向と交差する他方向に所定の間隔で配列されて貫通形成され、前記タイルが張られる基板上に配置される枠体と、
前記基板の上方において前記枠体を支持すると共に、前記通孔の各々の開口内に配置された前記タイルを支持する支持部材が、前記タイルの支持位置と前記タイルを通過可能に退避する退避位置とに移動可能に設けられた支持手段と、
を備えたタイル張りパネルの製造装置。
【請求項2】
前記通孔は、前記一方向及び前記他方向に沿う断面開口が前記基板側から該基板とは反対側に向かうにしたがって広げられている請求項1に記載のタイル張りパネルの製造装置。
【請求項3】
前記支持部材は、長手方向が前記一方向とされ、前記通孔の開口内の前記他方向に沿う中間位置が前記支持位置とされると共に、前記通孔の前記他方向の周縁部下側が前記退避位置とされた第1線状部材、及び長手方向が前記他方向とされ、前記通孔の開口内の前記一方向に沿う中間位置が前記支持位置とされると共に、前記通孔の前記一方向の周縁部下側が前記退避位置とされた第2線状部材を含む請求項1又は請求項2に記載のタイル張りパネルの製造装置。
【請求項4】
前記支持手段は、上側に前記枠体が配置され、下側に前記基板が配置される支持枠を備え、
前記支持部材は、前記枠体と前記基板との間において、前記支持位置と前記退避位置との間を移動可能とされた請求項1から請求項3の何れか1項に記載のタイル張りパネルの製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のタイル張りパネルの製造装置を用いたタイル張りパネルの製造方法であって、
一方の面に前記タイルを接着させる接着剤を塗した前記基板を前記枠体の下側に配置し、
前記支持手段の前記支持部材を前記通孔の各々における前記支持位置に配置し、
前記枠体の前記通孔の各々に、前記タイルの各々を投入配置した後、
前記支持部材を前記退避位置に移動させることで、前記通孔内の前記タイルの各々を前記基板上に配置させて、前記タイルの各々を前記基板に張り付ける、
ことを含むタイル張りパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル張りパネルの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の外壁には、複数のタイル(外装タイル)が縦横に張り付けられたタイル張り外壁がある。タイル張り外壁は、多数のタイルを縦横に所定の間隔で揃えながら外壁のタイル下地に張り付ける必要があるため、現地施行における作業性等の向上が要求されている。
【0003】
特許文献1の補助枠(タイル整列用補助枠)は、外周枠を形成する枠体内に複数の仕切壁を縦横に等間隔で配置して枠体に連接されており、補助枠には、各々がタイルの大きさとなるように仕切壁によって仕切られた通孔が縦横に配列されている。この補助枠をモルタル面に設置して、補助枠の通孔の各々にタイルを収容させた後に補助枠を引き上げることでタイル張りされた壁ができる。
【0004】
また、特許文献1の補助枠は、補助枠載置板に載置し、通孔の各々に底面を上にして複数のタイルを配置した後、接着剤が塗布されたネットに被着する。これにより、特許文献1では、補助枠を裏返して外すことで、複数のタイルが縦横に配列されてネットに貼着された集合タイルが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、集合タイルでは、ネットや台紙などに複数のタイルが張り付けられており、集合タイルでは、タイルが張り付けられた状態であってもネットや台紙に捻じれが生じ易い。このため、集合タイルでは、ネットや台紙などに捻じれが生じることで取り扱い難く、タイル張り壁の施行作業の作業性に低下が生じ易い。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、タイル張り外壁などの施工を容易にできるタイル張りパネルの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様のタイル張りパネルの製造装置は、各々の開口内をタイルが通過可能とされた複数の通孔が一方向及び該一方向と交差する他方向に所定の間隔で配列されて貫通形成され、前記タイルが張られる基板上に配置される枠体と、前記基板の上方において前記枠体を支持すると共に、前記通孔の各々の開口内に配置された前記タイルを支持する支持部材が、前記タイルの支持位置と前記タイルを通過可能に退避する退避位置とに移動可能に設けられた支持手段と、を備える。
【0009】
第1の態様のタイル張りパネルの製造装置では、基板をタイル下地として、基板に複数のタイルを張り付けたタイル張りパネルの製造に用いられる。枠体には、各々の開口内をタイルが通過可能にされた複数の通孔が貫通形成されており、複数の貫通孔は、枠体の一方向及び該一方向と交差する他方向に所定の間隔で配列されている。このような枠体は、例えば、所定の幅の桟部材を縦横に配列して格子状に形成することができる。
【0010】
支持手段は、枠体と基板との間に配置されて枠体を支持する。また、支持手段には、通孔の各々の開口内に配置されたタイルを支持する支持部材が設けられ、支持部材が、タイルの支持位置と通孔をタイルが通過可能にする退避位置とに移動可能とされている。この退避位置としては、例えば、所定の間隔で通孔を配列していることから、隣接する通孔との間の位置とすることができる。
【0011】
ここで、支持部材を支持位置に配置し、枠体の通孔の各々にタイルを配置することで、基板の上方において複数のタイルが配列される。また、挿通孔に配置されたタイルの各々は、支持部材が退避位置に移動されることで基板上に落とし込まれる。
【0012】
これにより、複数のタイルを一方向及び他方向に所定の間隔で配列して基板上に配置できるので、複数のタイルを一方向及び他方向に所定の間隔で配列させたタイル張りパネルを容易に製造できる。また、製造されたタイル張りパネルの基板を建物の壁に取り付けることで、タイル張り壁を施行でき、タイル張り壁の施行の作業性を向上できる。
【0013】
第2の態様のタイル張りパネルの製造装置は、第1の態様において、前記通孔は、前記一方向及び前記他方向に沿う断面開口が前記基板側から該基板とは反対側に向かうにしたがって広げられている。
【0014】
第2の態様のタイル張りパネルの製造装置では、一方向及び他方向に沿う通孔の断面開口の各々が基板側から該基板とは反対側に向かうにしたがって広げられている。このため、通孔へのタイルの配置を容易にするために通孔の上側の開口を広げても、各タイルの位置を通孔の下側の開口に合わせることができて、複数のタイルを基板上に揃えるための通孔へのタイルの配置が容易となる。
【0015】
第3の態様のタイル張りパネルの製造装置は、第1又は第2の態様において、前記支持部材は、長手方向が前記一方向とされ、前記通孔の開口内の前記他方向に沿う中間位置が前記支持位置とされると共に、前記通孔の前記他方向の周縁部下側が前記退避位置とされた第1線状部材、及び長手方向が前記他方向とされ、前記通孔の開口内の前記一方向に沿う中間位置が前記支持位置とされると共に、前記通孔の前記一方向の周縁部下側が前記退避位置とされた第2線状部材を含む。
【0016】
第3の態様のタイル張りパネルの製造装置では、支持部材として各々が線状とされた第1線状部材及び第2線状部材を用いている。通孔に配置されるタイルを支持する支持位置では、第1線状部材と第2線状部材とが交差するので、通孔に配置されたタイルを容易に支持できる。また、第1線状部材及び第2線状部材の各々は、線状とされているので、通孔の開口周縁に移動させることで容易に退避させることができ、支持部材の構成を簡略にできる。このような第1線状部材及び第2線状部材としては、互いに隣接する通孔の間隔よりも細幅であればよく、帯状であってもよい。
【0017】
第4の態様のタイル張りパネルの製造装置は、第1から第3の何れか1の態様において、前記支持手段は、上側に前記枠体が配置され、下側に前記基板が配置される支持枠を備え、前記支持部材は、前記枠体と前記基板との間において、前記支持位置と前記退避位置との間を移動可能とされている。
【0018】
第4の態様のタイル張りパネルの製造装置では、支持手段に支持枠が設けられており、支持枠内には、下側に基板が配置され、上側に枠体が配置される。このため、支持枠によって枠体と基板との位置合わせができて、基板上にタイルを精度よく配列できる。
【0019】
第5の態様のタイル張りパネルの製造方法は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のタイル張りパネルの製造装置を用いたタイル張りパネルの製造方法であって、一方の面に前記タイルを接着させる接着剤を塗した前記基板を前記枠体の下側に配置し、前記支持手段の前記支持部材を前記通孔の各々における前記支持位置に配置し、前記枠体の前記通孔の各々に、前記タイルの各々を投入配置した後、前記支持部材を前記退避位置に移動させることで、前記通孔内の前記タイルの各々を前記基板上に配置させて、前記タイルの各々を前記基板に張り付ける、ことを含む。
【0020】
これにより、複数のタイルが一方向及び他方向に所定の間隔で配列されたタイル張りパネルを容易に製造でき、基板を建物の壁に容易に取り付けることができるので、タイル張り壁の施行の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の態様のタイル張りパネルの製造装置によれば、基板上に複数のタイルを配列したタイル張りパネルを容易に製造できる、という効果を有する。また、製造したタイル張りパネルの基板を建物の壁に取り付けることでタイル張り壁を施行できるので、タイル張り壁の施行の作業性を向上できる、という効果を有する。
【0022】
第2の態様のタイル張りパネルの製造装置によれば、タイルの位置を通孔の下側の開口に合わせることができて、複数のタイルを基板上に揃えて配列できるので、タイルの位置が揃った高品質のタイル張りパネルの製造が容易になる、という効果を有する。
【0023】
第3の態様のタイル張りパネルの製造装置によれば、支持部材の構成を簡略にできる、という効果を有する。
【0024】
第4の態様のタイル張りパネルの製造装置によれば、支持枠によって基板と枠体とを位置合わせできるので、基板上にタイルを精度よく配列できて、タイルの位置が揃った高品質のタイル張りパネルの製造が容易になる、という効果を有する。
【0025】
第5の態様のタイル張りパネルの製造方法によれば、タイル張り壁の施行の作業性を向上できるタイル張りパネルの製造が容易になる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係るタイル張り装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】タイル張りパネルの概略を示す斜視図である。
【
図3】
図1の3-3線に沿うタイル張り装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、矩形状の基板に複数のタイル(tile)を縦横に配列したタイル張りパネル10の製造を説明する。
図1には、本実施形態においてタイル張りパネル10の製造に用いる製造装置としてのタイル張り装置12の概略構成が斜め上方視の分解斜視図にて示され、
図2には、本実施形態に係るタイル張りパネル10の概略が斜視図にて示されている。また、
図3には、タイル張り装置12の主要部が
図1の3-3線に沿う断面図にて示され、
図4には、タイル張り装置12の主要部が拡大された斜視図にて示されている。
【0028】
なお、本実施形態に係るタイル張り装置12は、略水平に配置(平置き)されて使用され、本実施形態では、一方向を縦方向とし、一方向と交差する他方向を横方向(左右方向)とし、縦方向及び横方向の各々と交差する方向を表裏方向としている。図面では、縦方向の上側が矢印TP、横方向の右側が矢印HR、及び表裏方向の表側が矢印SFにて示されている。本実施形態に係るタイル張り装置12は、表裏方向の表側が上方に向けられて使用され、以下の説明では、表側を上方、裏側を下方と表記することもある。
【0029】
本実施形態に係るタイル張りパネル10は、一例として建物のタイル外壁の形成に用いられる。
図2に示すように、タイル張りパネル10には、基板及び下地材(タイル下地材)としての長尺矩形状の外壁材14が用いられている。外壁材14には、建物の外壁下地に取り付けられて建物の外壁を形成する各種外壁素材を適用でき、本実施形態では、タイル下地に用いる外壁材14として矩形平板状のサイディング(siding)を適用している。
【0030】
タイル16には、矩形略平板ブロック状の外装タイルが用いられている。また、タイル16は、幅方向に沿う寸法(幅寸法W)よりも長手方向に沿う寸法(長さ寸法L)が長くされている。なお、タイル16は、幅方向寸法と長手方向寸法とが同様にされた略正方形状であってもよい。
【0031】
タイル16は、外壁材14の表側の面(表面)に縦横に配列されて外壁材14に接着される。本実施形態では、タイル16の各々の長手方向が外壁材14の横方向とされている。また、タイル張りパネル10において、横方向に配列されたタイル16の間には、所定の目地幅の目地(縦目地)18Aが形成され、縦方向に配列されたタイル16の間には、所定の目地幅の目地(横目地)18Bが形成される。本実施形態では、一例として目地18A、18Bの各々の目地幅が同様にされている。
【0032】
図1に示すように、タイル張り装置12は、タイル配列用(タイル整列用)の治具としての格子状の枠体20、及び支持手段を構成する支持部22を備えている。タイル張り装置12において、外壁材14は、表面が上方に向けられて平置きされ、外壁材14の上方に枠体20が配置されて、外壁材14と枠体20との間に支持部22が配置される。
【0033】
枠体20には、縦枠24A及び横枠24Bの各々が対で用いられ、枠体20は、縦枠24Aの長手方向の端部と横枠24Bの長手方向端部とが連結されて矩形状に枠組みされている。枠体20は、外形が外壁材14の外形と同様の長尺矩形状とされ、外形の縦寸法及び横寸法が各々外壁材14の外形の縦寸法及び横寸法と同様とされている。
【0034】
枠体20には、一対の縦枠24Aの間に複数の縦桟26が配置され、一対の横枠24Bの間に複数の横桟28が配置されている。縦桟26は、一対の縦枠24Aの間において長手方向が縦方向にされ、タイル16の長さ寸法Lに応じた間隔(等間隔)で縦枠24Aと平行に配置されており、縦桟26の各々は、長手方向端部が各々横枠24Bに連結されている。また、横桟28は、一対の横枠24Bの間において長手方向が横方向にされ、タイル16の幅寸法Wに応じた間隔(等間隔)で横枠24Bと平行に配置されており、横桟28の各々は、長手方向端部が各々縦枠24Aに連結されている。
【0035】
これにより、枠体20は格子状に形成され、枠体20には、各々にタイル16が配置可能とされた複数の通孔30が縦横に配列されている。通孔30の各々は、縦桟26(又は縦枠24A)と横桟28(又は横枠24B)とにより囲われた矩形状にされて、枠体20の表裏方向に貫通形成されている。
【0036】
図3には、タイル張り装置12の主要部の断面が縦方向視にて示されている。なお、タイル張り装置12では、縦方向視の断面と横方向視の断面との基本的構成が略同様とされており、
図3では、横方向視の断面に対応する構成における各部材の符号を括弧書きにて示している。
【0037】
図3及び
図4に示すように、縦桟26及び横桟28は、幅方向に沿う断面形状が略台形状(略三角形状でもよい)とされている。また、枠体20の縦枠24A及び横枠24Bは、縦桟26(又は横桟28)を幅方向の中間部で切断した形状の略台形状(略直角三角形状でもよい)とされている(
図3参照)。
【0038】
このため、縦桟26の幅方向の両側には、傾斜面32Aが形成され、横桟28の幅方向の両側には、傾斜面32Bが形成されている。また、縦枠24Aには、通孔30側に縦桟26と同様の傾斜面32Aが形成され、横枠24Bには、通孔30側に横桟28と同様の傾斜面32Bが形成されている。
【0039】
縦桟26の底辺側(裏側)の幅寸法は、タイル張りパネル10における目地(縦目地)18Aの幅寸法と同様にされている。また、横桟28の底辺側の幅寸法は、タイル張りパネル10における目地(横目地)18Bの幅寸法と同様にされている。さらに、通孔30は、裏側における開口の横方向に沿う長さ寸法Loがタイル16の長さ寸法Lよりも僅かに大きくされている(L<Lo)と共に、裏側における開口の縦方向に沿う幅寸法Woがタイル16の幅寸法Wよりも僅かに大きくされている(W<Wo)。これにより、タイル16は、通孔30の裏側の開口を通過となっている。
【0040】
また、通孔30は、傾斜面32A、32Bによって囲われており、通孔30は、表側における開口の横方向に沿う長さ寸法Liが長さ寸法Loより大きくされ(Lo<Li)、表側における開口の縦方向に沿う幅寸法Wiが幅寸法Woより大きくされている(Wo<Wi)。
【0041】
これにより、通孔30は、裏側から表側に向かうにしたがって開口幅が徐々に広げられ、通孔30の表側は、タイル16に比して大きく開口されている。このため、タイル16は、枠体20の表側から通孔30の開口内に配置されることで、傾斜面32A、32Bにより通孔30の裏側に案内され、通孔30の裏側の開口において枠体20に対する縦方向及び横方向の位置が揃えられる。
【0042】
一方、
図1に示すように、タイル張り装置12の支持部22は、支持枠34を備えている。支持枠34は、各々が断面略矩形で長尺の縦ガイド36及び横ガイド38が対で設けられ、縦ガイド36の長手方向端部と横ガイド38の長手方向の端部とが連結されて、矩形枠状に形成されている。
【0043】
支持枠34は、内法が外壁材14の外形寸法及び枠体20の外形寸法と同様とされている。すなわち、支持枠34は、縦ガイド36の内面間の間隔が外壁材14及び枠体20の各々の外形の幅寸法と略同様にされていると共に、横ガイド38の内面間の間隔寸法が外壁材14及び枠体20の各々の外形の長さ寸法と略同様にされている。これにより、支持枠34内には、裏側に外壁材14が配置(挿入配置)可能とされていると共に、表側に枠体20が挿入配置される。
【0044】
図3に示すように、支持枠34には、内側に支え縁40(
図1では図示省略)が取り付けられている。支え縁40は、一対の縦ガイド36の各々における表裏方向の中間部に取り付けられて縦方向に延伸されている。また、支え縁40は、枠体20の縦枠24A(横枠24B)よりも細幅とされており、支え縁40は、縦枠24A(横枠24B)から通孔30内に突出しない幅(高さ)とされている。
【0045】
これにより、支持枠34の表側から挿入された枠体20が支え縁40(縦枠24A)に当接することで、枠体20が支持枠34内に嵌め込まれて支持(保持)される。この際、枠体20の通孔30の各々は、支持枠34の裏側(下側)に向けて解放される。また、枠体20は、支持枠34の支え縁40に支持されることで、外壁材14に対して所定高さ位置に配置される。この高さ位置は、外壁材14上にタイル16を配置した状態で、タイル16の上部(表面側部分)が僅かに通孔30内に入り込む位置とされている。
【0046】
なお、支え縁40は、横ガイド38に設けられてもよく、縦ガイド36及び横ガイド38の各々に設けられてもよい。また、支え縁40に変えて枠体20の一対の縦枠24Aの表側端部から横方向の外側に延設させた外縁部を設け、枠体20の外縁部が支持枠34の縦ガイド36の表側縁部に当接することで、枠体20が支持枠34に保持されるなどの構成が適用されてもよい。このような外縁部は、枠体20の横枠24Bに設けてもよく、縦枠24A及び横枠24Bの各々に設けてもよい。また、パネル張り装置12は、支持枠34の上側に枠体20が取り付けられていてもよい。さらに、枠体20には、把手が設けられ、この把手を把持して支持枠34への枠体20の装着、支持枠34から枠体20の取り出しが可能となるようにしてもよい。
【0047】
一方、
図1及び
図3に示すように、支持枠34には、縦ガイド36の外側面(横方向の外側の面)にガイド溝42が形成され、横ガイド38の外側面(縦方向の外側の面)にガイド溝44が形成されている。ガイド溝42は、縦ガイド36の長手方向の略全域にわたって延伸され、ガイド溝44は、横ガイド38の長手方向の略全域にわたって延伸されている。また、ガイド溝42、44は、各々開口断面が略矩形状とされており、ガイド溝42、44内は、支持枠34の外側に向けて解放されている。
【0048】
縦ガイド36の各々には、ガイド溝42の底部に長孔46が貫通形成されており、長孔46は、支え縁40(枠体20)よりも裏側においてガイド溝42の長手方向の略全域(一対の横ガイド38の間の略全域)にわたって延伸されている。また、横ガイド38の各々には、ガイド溝44の底部に長孔48が貫通形成されており、長孔48は、支え縁40(枠体20)よりも裏側においてガイド溝44の長手方向に略全域(一対の縦ガイド36の間の略全域)にわたって延伸されている。
【0049】
支持枠34には、タイル16の支持機構を構成するスライダ50、52が取り付けられている。スライダ50は、対で設けられて縦ガイド36の各々においてガイド溝42内に摺動可能に配置されている。また、スライダ52は、対で設けられて横ガイド38の各々においてガイド溝44内に摺動可能に配置されている。
【0050】
各々が縦ガイド36のガイド溝42内に配置された一対のスライダ50の間には、支持部材及び第2線状部材(又は第1線状部材)としての複数本のワイヤ54が取り付けられている。また、各々が横ガイド38のガイド溝44内に配置された一対のスライダ52の間には、支持部材及び第1線状部材(又は第2線状部材)としての複数本のワイヤ56が取り付けられている。
【0051】
ワイヤ54は、長手方向の先端の各々が縦ガイド36の長孔46に挿通されてガイド溝42内のスライダ50に連結されており、ワイヤ54の各々は、支持枠34の横方向に沿って張架されている。これにより、ワイヤ54の各々は、一対のスライダ50が縦方向に移動されることで、縦方向に平行移動される。
【0052】
また、ワイヤ56は、長手方向の先端の各々が横ガイド38の長孔48に挿通されてガイド溝44内のスライダ52に連結されており、ワイヤ56の各々は、支持枠34の縦方向に張架されている。これにより、ワイヤ56の各々は、一対のスライダ52が横方向に移動されることで、横方向に平行移動される。なお、
図1では、ワイヤ54、56の各々を相対的に長くして図示している。
【0053】
ワイヤ54の数は、枠体20における縦方向の通孔30の数とされており、ワイヤ54は、各々が縦方向に配列された通孔30の各々に対応されている。また、ワイヤ54は、通孔30の開口における縦方向の中間位置(
図3及び
図4の実線位置)が支持位置とされ、通孔30の開口周縁の横桟28の裏側(下側)の位置が退避位置(
図3及び
図4の二点鎖線位置)とされている。一対のスライダ50は、ワイヤ54の各々が支持位置から退避位置の間を移動するようにガイド溝42内を移動される(通孔30の開口の長さ寸法Loの凡そ半分の移動量)。
【0054】
また、ワイヤ56の数は、枠体20における横方向の通孔30の数とされており、ワイヤ56は、各々が横方向に配列された通孔30の各々に対応されている。また、ワイヤ56は、通孔30の開口における横方向の中間位置が支持位置とされ、通孔30の開口周縁の縦桟26の裏側(下側)の位置が退避位置とされている。一対のスライダ52は、ワイヤ56の各々が支持位置から退避位置の間を移動するようにガイド溝44内を移動される(通孔30の開口の幅寸法Woの凡そ半分の移動量)。
【0055】
これにより、支持部22では、ワイヤ54、56の各々が支持位置に移動されることで、枠体20の通孔30の各々においてワイヤ54,56が十字状に配置されて、ワイヤ54、56がタイル16の通孔30の通過を制限して、タイル16を通孔30に保持する。また、支持部22では、ワイヤ54、56の各々が退避位置に移動されることで、枠体20の通孔30の裏側を解放し、タイル16の通孔30の通過を可能にする。なお、スライダ50、52の各々は、手動で移動されてもよく、アクチュエータによってワイヤ54、56の支持位置と退避位置との間を移動されてもよい。
【0056】
次に、本実施形態の作用として、タイル張り装置12を用いたタイル張りパネル10の製造を説明する。
タイル張り装置12は、例えば略水平とされた作業台60(
図3参照)上に配置されて用いられる。作業台60には、外壁材14が載置される。また、外壁材14の表面には、タイル16の接着手段としての接着剤62(
図1及び
図3参照)が塗布される。
【0057】
次に、支持部22の支持枠34の表側内部に枠体20を挿入配置し、この支持枠34を作業台60上の外壁材14に被せるように配置することで、支持枠34の裏側内部に外壁材14を配置する。これと共に、スライダ50、52をワイヤ54、56の各々が通孔30の各々における支持位置となるように移動させておく。
【0058】
この後、表側が上方に向けられた複数のタイル16を、枠体20の表側(上方)から通孔30の各々に投入して、複数の通孔30内の各々にタイル16を配置する。
【0059】
ここで、枠体20の通孔30の各々は、周囲が傾斜面32A、32Bに囲われており、通孔30は、表側から裏側に向けて開口幅(開口面積)が狭められている。また、通孔30の各々の裏側には、ワイヤ54、56が十字状に配置されている。このため、タイル16の各々は、一部が通孔30の下側開口から突出された状態で通孔30内に配置される。これにより、複数のタイル16は、枠体20の通孔30の各々においてワイヤ54、56に支持され、各々の縦方向位置及び横方向位置が揃えられて枠体20内に整列される。
【0060】
このようにして通孔30の各々にタイル16を配置した状態で、一対のスライダ50を縦方向の上側に移動させると共に、一対のスライダ52を横方向の右側に移動させて、タイル16の各々を通孔30の各々から外壁材14上に落とし込む。
【0061】
この後に、タイル16の各々を表面側から押さえて、タイル16の裏面に接着剤62に密着させて外壁材14に張り付け、タイル16が張られた外壁材14を支持枠34から取り出す。これにより、複数のタイル16が外壁材14上に縦横に配列されたタイル張りパネル10が得られる。
【0062】
ここで、タイル張り装置12では、枠体20に複数の通孔30が貫通形成されており、枠体20は、複数の縦桟26と横桟28とにより格子状に形成され、外壁材14の表側(上方)において互いの間隔が略目地幅とされて複数の通孔30が縦横に配列されている。これにより、タイル張り装置12では、外壁材14上に複数のタイル16を縦横に配列して配置できる。
【0063】
また、タイル張り装置12では、支持枠34に複数のワイヤ54、56が取り付けられており、ワイヤ54が通孔30の縦方向の中間位置に配置され、ワイヤ56が通孔30の横方向の中間位置に配置される。また、スライダ50、52を移動することで、ワイヤ54、56の各々が通孔30を下方に開放する位置に移動され、複数のタイル16が通孔30から外壁材14上に落とし込まれる。このため、通孔30の各々においてタイル16が安定して支持され、外壁材14上に適切に落とし込まれる。
【0064】
これにより、複数のタイル16を外壁材14上に縦横に配列できる。また、ワイヤ54が縦方向の上側に退避されると共に、ワイヤ56が横方向の右側に退避されるので、タイル16の通孔30の縦方向下側の横桟28と横方向左側の縦桟26に合わせられるので、タイル16の縦方向及び横方向の各々の位置を揃えることができる。
【0065】
また、タイル張り装置12では、ワイヤ54が一対のスライダ50の間に張架され、ワイヤ56が一対のスライダ52の間に張架されているので、通孔30の各々におけるタイル16の支持及び落とし込みのための構成を簡略にできる。
【0066】
これにより、タイル16が縦方向及び横方向に揃えられると共に、縦目地及び横目地が揃えられた高品質のタイル張りパネル10を製造できる。また、枠体20の通孔30の各々にタイル16を配置する簡単な作業でタイル張りパネル10を製造できる。
【0067】
また、タイル張り装置12では、支持枠34の内法を外壁材14及び枠体20の外形寸法に合わせ、支持枠34の表側内部に枠体20を配置し、支持枠34の裏側内部に外壁材14が配置される。これにより、外壁材14と枠体20との位置合わせができるので、枠体20の通孔30の配列に合わせた外壁材14上の位置にタイル16を精度よく配列できる。しかも、外壁材14上に落とし込まれたタイル16の表側部分は、枠体20の通孔30内に位置しているので、外壁材14上でのタイル16のずれを制限できる。
【0068】
このように形成されたタイル張りパネル10では、タイル16として外装タイルが用いられ、基板として外壁材14が用いられており、建物の外壁下地に固定することで、タイル張り外壁を容易に施行できて、タイル張り外壁を施行する際の作業性を向上できる。
【0069】
一方、建物(住宅)には、ユニット式住宅(ユニット式の建物)がある。ユニット式住宅では、建物用ユニットが用いられ、ユニット式住宅では、複数の建物用ユニットが間取りに応じて縦横及び上下に配列され、隣接する建物用ユニット同士が連結されて躯体が構成される。
【0070】
建物用ユニットの各々は、製造工場において製造される際、住宅の間取りに応じて天井、床、間仕切り壁及び外壁等が施工されて製造される。また、製造された建物用ユニットの各々は、製造製品として製造工場から出荷(搬出)されて、建築現場(施行場所)に搬入され、建築現場においてユニット式住宅が建築される。
【0071】
このようなユニット式住宅においては、タイル張り外壁を施行する際、製造工場において建物用ユニットにタイル張りパネル10を取り付け施行しておくことができる。これにより、タイル張り外壁の住宅を建築する際、タイル張り作業を簡略化できる。また、タイル張りには、タイル張りパネル10を用いるので、タイル張り作業の作業性が極めて向上される。しかも、建築現場におけるタイル張りの作業を不要にできる。
【0072】
なお、以上説明した本実施形態では、外壁材14の全面にタイル16を縦横に配列したタイル張りパネル10を製造するように説明した。しかしながら、建物の外壁には、玄関や窓などの開口部が設けられ、外壁材14に建物の開口部に合わせた開口部分が設けられることがある。
【0073】
タイル張り装置12には、建物の開口部に合わせた開口部分が設けられた外壁材が用いられてもよい。この場合、枠体20において外壁材の開口部分に対応する通孔30を表側から閉塞するマスク部材(マスク体)を用い、マスク部材を枠体20に配置すればよい。これにより、外壁材において開口部分を除く領域にタイル16を縦横に配列できる。
【0074】
また、以上説明した本実施形態では、枠体20内に縦桟26及び横桟28を格子状に配置することで複数が縦横に配列された通孔30を形成した。しかしながら、枠体の構成はこれに限るものではなく、枠体は、複数の通孔が縦目地の間隔で横方向に配列されると共に、横目地の間隔で縦方向に配列された構成であればよい。
【0075】
さらに、本実施形態では、タイル16として外装タイルを用い、タイル16を外壁材14に張り付けたタイル張りパネル10の製造を説明した。しかしながら、タイル張りパネルは、内装タイルを内壁材(内壁のタイル下地)としての基板に張り付けた内装用のタイル張りパネルであてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、ワイヤ54、56を用いて通孔30に配置されたタイル16を支持した。しかしながら、支持部材は、幅寸法が縦桟26及び横桟28の幅寸法(目地幅)より狭い帯状部材であってもよい。また、支持部材は、通孔30の周囲の縦桟26及び横桟28の少なくとも一方に対で配置されて、通孔30の周縁部から開口内に出没可能な支持板であってもよい。この場合、支持板が通孔30の開口内に突出されることで、通孔30の開口幅を狭めて、タイル16の通過を制限すればよい。
【0077】
本実施形態に係るタイル張り装置12は、昇降装置を用いて枠体20と支持部22とが一体で、又は枠体20と支持部22とが個別に昇降可能とされてもよい。また、タイル張り装置12は、移動手段により枠体20と支持部22とが外壁材14(基板)に対して水平方向に相対移動可能にされてもよい。これにより、複数の外壁材14に順にタイル16を張り付けることができ、タイル張りパネル10の製造を円滑にできて、タイル張りパネルの製造を自動化ができる。
【符号の説明】
【0078】
10 タイル張りパネル
12 タイル張り装置(製造装置)
14 外壁材(基板)
16 タイル
20 枠体
22 支持部(支持手段)
26 縦桟
28 横桟
30 通孔
32A、32B 傾斜面
34 支持枠(支持手段)
42、44 ガイド溝
46、48 長孔
50、52 スライダ(支持手段)
54 ワイヤ(支持部材、第1及び第2線状部材の一方)
56 ワイヤ(支持部材、第1及び第2線状部材の他方)