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特許7334132携帯端末の探索のための進行速度を決定する移動基地局、プログラム及び方法
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  • 特許-携帯端末の探索のための進行速度を決定する移動基地局、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】携帯端末の探索のための進行速度を決定する移動基地局、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/06 20090101AFI20230821BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20230821BHJP
【FI】
H04W84/06
H04W4/029
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020055463
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158470
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0326981(US,A1)
【文献】特開2008-236435(JP,A)
【文献】特表2021-536696(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局であって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ことを特徴とする移動基地局。
【請求項2】
当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rと、インターバル時間Iにおける検知可能進行距離d(=I・v)とを用いて、移動基地局の進行方向に対して垂直方向となる検知可能進行幅cを算出する
ことを特徴とする請求項に記載の移動基地局。
【請求項3】
検知可能進行幅cは、以下のように決定する
c=√(R-d
ことを特徴とする請求項に記載の移動基地局。
【請求項4】
携帯端末の探索領域が予め規定されている場合に、
携帯端末から信号を受信した場合、検知地点の電波範囲と携帯端末の探索領域との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定し、
携帯端末から信号を受信しなかった場合、検知可能進行幅cの外側範囲と携帯端末の探索領域との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の移動基地局。
【請求項5】
携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局の移動速度を決定するプログラムであって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局の移動速度決定方法であって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ことを特徴とする移動速度決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動基地局を用いて、携帯端末を発見する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時における人命救助を目的として、端末から位置情報を取得するためのガイドラインが公開されている(例えば非特許文献1参照)。ここでは、位置登録に基づく基地局情報と、端末で測位可能なGPS(Global Positioning System)情報とが利用されている。端末は、移動基地局から放射された電波を検知した際に、移動基地局との間で位置登録に基づく認証シーケンスを実行し、GPSによって測位した位置情報を移動基地局へ送信する。この技術によれば、移動基地局は、ドローンやヘリコプタ、気球、飛行船のような飛行物体に、基地局機能を搭載したものである。
【0003】
図1は、空中を飛行する移動基地局を表す説明図である。
【0004】
図1によれば、移動基地局1は、GPSによって自らの位置を測位しながら自律的に移動する。このとき、移動基地局1は、携帯端末2を発見するために、電波を放射しながら飛行する。その電波範囲は、電波到達距離を半径とする円状のものとなる。
これに対し、携帯端末2は、ユーザが所持する既存のスマートフォンや携帯電話機のようなものである。携帯端末2も、GPSによって自らの位置(緯度経度)を測位することができる。
【0005】
従来、山岳遭難者を発見する際に、ドローンを用いて、自律航法や遠隔操縦を問わず、適切に運航計画を立案する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、受注データファイルを参照してドローンの出発地と目的地とを特定し、次に、ドローン用航空ネットワークデータベースを参照して出発地から目的地までの飛行ルートからなる運行計画を作成し、運行計画に基づいて飛行するドローンから順次に送信される現在位置を含む状態情報を受信しながら当該ドローンの動態を管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-165932号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】総務省, 「人命救助等における GPS位置情報の取扱いに関するとりまとめ,”報道資料, 2013年 7月、[online]、[令和2年3月19日検索]、インターネット<URL:http://www.soumu.go.jp/main_content/000237319.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
精度が高い位置情報を取得するべくGPSによる測位技術があるが、携帯端末が測位した位置情報をサーバ等に送信するためには、認証設備が必要となるという制約がある。被災地などでは、必ずしも利用者が端末を利用できる環境にあるわけではなく、また、認証設備を事前に準備できないことが想定される。そのために、必ずしも携帯端末の位置情報を利用できない場合もある。
これに対し、携帯端末の滞在位置を特定するために、携帯端末が基地局とやり取りするアクセス信号を用いることができる。移動基地局から電波を発射して、携帯端末からの応答を受信した際に、その電波範囲内に携帯端末が滞在するとみなせる。
【0009】
しかしながら、滞在位置が不明な携帯端末を発見するためには、移動基地局は、広い探索領域を、網羅的に飛行する必要がある。移動基地局は、電波を放射し続けながら、その広い探索領域をあたかも塗りつぶすように飛行する。
一方で、携帯端末は、移動基地局から放射される電波の受信を待機すると共に、その電波を検知した際に、移動基地局へ向けて信号を送信する。
【0010】
また、移動基地局が照射する電波範囲が広いほど、探索結果としての位置範囲も広くなってしまう。一方で、移動基地局が照射する電波範囲が狭いほど、探索結果としての位置範囲も狭くできるが、網羅的な探索のためには移動基地局の飛行距離が長くならざるを得ない。
【0011】
また、携帯端末は、移動基地局からの信号を常時待機するほど、バッテリの蓄電量の消費を早めてしまう。特に被災地や僻地では、ユーザ自ら携帯端末を操作できない環境にある場合も多い。最終的に、携帯端末のバッテリが完全に切れてしまうと、そのユーザを発見する手段が全く無くなってしまう。
【0012】
これに対して、携帯端末は、基地局からの電波を受信できない圏外にあっても、バッテリの消費を軽減するために、基地局から到来する電波を間欠的にウォッチする(インターバル時間毎に検知動作を起動する)ように動作する。
しかしながら、移動基地局は、携帯端末のインターバル時間(検知動作の起動時点の間の時間間隔)など関係なく飛行している。携帯端末としては、移動基地局の電波範囲内に滞在していても、インターバル時間内に移動基地局が通り過ぎてしまった場合、その移動基地局が放射する電波を検知することもできない。
【0013】
これに対し、本願の発明者は、移動基地局にとって、携帯端末を探索するための全体的な飛行距離が短くなる、最適な進行速度を決定することはできないか、と考えた。
【0014】
そこで、本発明は、携帯端末の探索のための進行速度を決定する移動基地局、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局であって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の移動基地局における他の実施形態によれば、
当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rと、インターバル時間Iにおける検知可能進行距離d(=I・v)とを用いて、移動基地局の進行方向に対して垂直方向となる検知可能進行幅cを算出する
ことも好ましい。
【0019】
本発明の移動基地局における他の実施形態によれば、
検知可能進行幅cは、以下のように決定する
c=√(R-d
ことも好ましい。
【0020】
本発明の移動基地局における他の実施形態によれば、
携帯端末の探索領域が予め規定されている場合に、
携帯端末から信号を受信した場合、検知地点の電波範囲と携帯端末の探索領域との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定し、
携帯端末から信号を受信しなかった場合、検知可能進行幅cの外側範囲と携帯端末の探索領域との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定する
ことも好ましい。
【0021】
本発明によれば、携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局の移動速度を決定するプログラムであって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、携帯端末を発見するべく、空中を所定方向及び所定高度で進行する移動基地局の移動速度決定方法であって、
携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間のインターバル時間Iと、当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径Rとを用いて、進行方向への移動速度vを、以下のように決定する
v=R/(√2・I)
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の移動基地局、プログラム及び方法によれば、携帯端末の探索のための進行速度を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】空中を飛行する移動基地局を表す説明図である。
図2】本発明における移動基地局の機能構成図である。
図3】移動基地局の進行速度と検知可能範囲との関係を表す説明図である。
図4】本発明における移動基地局の進行速度と検知可能範囲とを表す説明図である。
図5】携帯端末からの信号の検知有りの場合における当該携帯端末の探索領域を表す説明図である。
図6】携帯端末からの信号の検知無しの場合における当該携帯端末の探索領域を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明における移動基地局の機能構成図である。
【0027】
図2によれば、移動基地局1は、携帯端末2と通信可能な基地局機能101と、自ら移動可能なマルチコプタ(移動機能)102と、自らの位置を測位するGPS機能(測位機能)103とを搭載する。
【0028】
基地局機能101は、広域無線通信網に基づくLTE(Long Term Evolution)基地局として説明するが、例えば3G(3rd Generation)、5G(5th Generation)又はWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)に基づく基地局(例えばLTEにおけるeNB(evolved Node B))であってもよい。勿論、狭域無線通信網に基づく無線LANのアクセスポイントやBluetooth(登録商標)に基づくものであってもよい。
【0029】
また、移動基地局1は、携帯端末2からの信号を受信する端末検知機能11と、自律的な移動(方向、高度、速度)を制御する移動制御機能12と、本発明の特徴となる移動速度決定機能13とを有する。
これら機能構成部は、移動基地局に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。また、これら機能構成部の処理の流れは、移動速度決定方法しても理解できる。
【0030】
端末検知機能11は、当該移動基地局1の進行中に、任意の地点(検知地点)で、端末からの信号を受信する。その時、その検知位置(緯度経度)を中心として電波到達距離を半径とする円状の電波範囲に、当該携帯端末2が滞在していると認識する。但し、このとき、移動基地局1から見て、何れの位置に携帯端末2が存在しているかは不明であるが、少なくとも電波範囲内に存在していることは確かである。
【0031】
移動制御機能12は、GPS機能103によって自らの現在位置を認識すると共に、飛行計画に沿って移動するべくマルチコプタ102を制御する。
【0032】
移動速度決定機能13は、移動制御機能12へ、当該移動基地局1の進行速度を指示する。移動速度決定機能13は、当該移動基地局1に一体的に組み込まれたものであってもよいし、無線によって通信可能な遠隔の制御装置から指示されるものであってもよい。
【0033】
図3は、移動基地局の進行速度と検知可能範囲との関係を表す説明図である。
【0034】
図3(a)は、移動基地局1の進行速度が遅い場合を表す。
図3(b)は、移動基地局1の進行速度が早い場合を表す。
図3(a)(b)の両方とも、携帯端末2は、移動基地局1の電波範囲に対して側部に滞在しているとする。
尚、移動基地局1の進行について、方向及び高度は一定に制御されているとする。
【0035】
前述したように、携帯端末2は、基地局と通信できない圏外時の無線動作として、バッテリの消費を軽減するために、インターバル時間を空けながら、基地局から到来する電波の検知動作を起動する。そのために、携帯端末2の滞在位置によっては、インターバル時間内で、移動基地局が通過してしまう場合があり、当然、その移動基地局の電波を検知することはできない。
【0036】
ここで、以下のような検知可能進行距離dを算出する。
検知可能進行距離d=インターバル時間I×進行速度v
検知可能進行距離dは、移動基地局1から放射される電波範囲について、進行側に向かう距離が当該検知可能進行距離d以上の場合、検知可能とするものである。即ち、移動基地局1の電波範囲について、進行側に向かう距離が当該検知可能進行距離dよりも短い場合、携帯端末2は、検知時点に移動基地局1の電波を受信できない場合が生じる。
【0037】
図3(a)によれば、移動基地局1の進行速度が遅いために、検知可能進行距離dも比較的短くなり、側部に滞在する携帯端末も検知される。即ち、側部の携帯端末の滞在位置では、進行側に向かう距離が当該検知可能進行距離d以上となっている。
一方で、図3(b)によれば、移動基地局1の進行速度が速いために、検知可能進行距離dも比較的長くなり、側部に滞在する携帯端末が検知されない場合が生じる。即ち、側部の携帯端末の滞在位置では、進行側に向かう距離が当該検知可能進行距離dよりも短いためである。
【0038】
図3(a)(b)によれば、移動基地局1が携帯端末2を確実に検知できる「検知可能進行幅」が明示されている。
図3(a)によれば、移動基地局1の進行速度が遅いために、検知可能進行距離dが比較的短く、且つ、検知可能進行幅cが比較的長くなる。
一方で、図3(b)によれば、移動基地局1の進行速度が早いために、検知可能進行距離dが比較的長く、且つ、検知可能進行幅cが比較的短くなる。
【0039】
このような関係に基づいて、本発明によれば、携帯端末2のインターバル時間を考慮して、探索時間が最小となるように飛行体の速度を決定しようとする。即ち、移動基地局1は、広い探索領域を、できる限り短い飛行時間で携帯端末を発見するべく、効率良く飛行させる。
【0040】
図4は、本発明における移動基地局の進行速度と検知可能範囲とを表す説明図である。
【0041】
図4(a)によれば、移動基地局1から放射される電波範囲の円周に、4頂点が接する正方形(最大面積)を規定できるように移動速度vが決定される。但し、移動基地局1は、携帯端末2の探索の際、所定方向及び所定高度で空中を進行するものとする。
I:携帯端末が移動基地局から放射される電波を検知する起動時点の間の
インターバル時間(s)
R:当該移動基地局から放射される円状の電波範囲の直径(m)
v:進行方向への移動速度(m/s)
v=R/(√2・I)
移動基地局1が、自ら放射する電波範囲の中で、検知可能範囲を最大化(正方形)する移動速度vで移動することによって、1回の飛行によって携帯端末2を発見可能な範囲も最大化することができ、それを繰り返すことによって、全体的な飛行時間も短縮化することができる。
【0042】
図4(b)によれば、進行方向に対する両側の電波範囲について、以下のように規定する。
検知可能範囲:当該正方形の進行内側の電波範囲(検知可能進行幅cの決定)
検知不明範囲:当該正方形の進行外側の電波範囲
【0043】
また、検知可能範囲における検知可能進行幅cは、以下のように算出される。
d(=I・v):インターバル時間Iで進行可能な検知可能進行距離(m)
c:移動基地局の進行方向に対して垂直方向となる検知可能進行幅(m)
c=√(R-d
【0044】
移動基地局1における時間tあたりの探索面積Sは、以下のように算出される。
S=√(R-d)・vt=vt√(R-I
次に、tに関して変形すると、以下のようになる。
t=S/(v√(R-I))
次に、tをvに関して微分すると、以下のようになる。
∂t/∂v=S(2I-R)/(v(R-I3/2
上式について、∂t/∂v=0のとき、tは最小となり、以下のように表すことができる。
v=R/(√2・I)
この進行速度vで、移動基地局1を進行させることによって、携帯端末2の飛行距離及び飛行時間を最小化することができる。
【0045】
図5は、携帯端末からの信号の検知有りの場合における当該携帯端末の探索領域を表す説明図である。
図6は、携帯端末からの信号の検知無しの場合における当該携帯端末の探索領域を表す説明図である。
【0046】
図5及び図6によれば、携帯端末2が滞在するであろう広い「探索領域」が予め規定されている。探索領域は、例えば山岳遭難者を発見する場合、自治体や救助機関から伝えられた遭難想定範囲である。
このとき、移動基地局1は、探索領域に対して、電波を放射し続けながら、網羅的に飛行する必要がある。
【0047】
図5によれば、移動基地局1は、携帯端末2から信号を受信した場合、「検知地点の電波範囲」と「携帯端末の探索領域」との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定する。この重畳範囲は、移動基地局1にとって、次の「探索領域」となる。
An :次に決定された探索領域
An-1:先に決定された探索領域
Bn :移動基地局における携帯端末の検知地点の電波範囲
An = An-1 ∩ Bn
【0048】
図6によれば、移動基地局1は、携帯端末2から信号を受信しなかった場合、検知可能進行幅cの外側範囲と携帯端末の探索領域との重畳範囲に、当該携帯端末が滞在しているものと推定する。この重畳範囲は、移動基地局1にとって、次の「探索領域」となる。
An :次に決定された探索領域
An-1:先に決定された探索領域
Cn :移動基地局の進行における検知可能進行幅cの外側範囲
An = An-1 ∩ Cn
【0049】
移動基地局1は、次に決定された探索領域Anに対して、飛行ルートを自律的に設定する。例えば探索領域Anの中心を飛行するものであってもよいし、側部から飛行するものであってもよい。
このように、図5及び図6を繰り返す(nの増分)ことによって、移動基地局1は、少なくとも探索領域Anを自律的に絞り込んでいきながら、自らの飛行ルートを決定していくことができる。結果的に、移動基地局1における飛行距離の短縮化と、携帯端末2を発見するまでの時間の短縮化とにつながる。
【0050】
最終的に、絞り込まれていった探索領域の面積|An|が、絞り込み要求面積α以下となったときに、移動基地局1は、携帯端末2の探索飛行を終了する。
次に決定された探索領域|An| < 絞り込み要求面積α
【0051】
以上、詳細に説明したように、本発明の移動基地局、プログラム及び方法によれば、携帯端末の探索のための進行速度を決定することができる。
【0052】
特に、特定の通信事業者に依存しない、移動基地局の運用制御のみによって、携帯端末の滞在位置を推定することができる。また、移動基地局は自律的に移動可能であって、人手を要することなく携帯端末を発見することができる。
【0053】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0054】
1 移動基地局
101 基地局機能
102 移動機能(マルチコプタ)
103 GPS機能
11 端末検知機能
12 移動制御機能
13 移動速度決定機能
2 携帯端末

図1
図2
図3
図4
図5
図6