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特許7334153モーター化されたミクロトームのコントロール
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  • 特許-モーター化されたミクロトームのコントロール 図1
  • 特許-モーター化されたミクロトームのコントロール 図2
  • 特許-モーター化されたミクロトームのコントロール 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】モーター化されたミクロトームのコントロール
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/06 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
G01N1/06 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020528025
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2017113802
(87)【国際公開番号】W WO2019104585
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】514210304
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ リミテッド シャンハイ
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems Ltd. Shanghai
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ズェグアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シャオキ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ソン
(72)【発明者】
【氏名】リャン、シャン
(72)【発明者】
【氏名】シ、ジンユー
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-256745(JP,A)
【文献】特開平9-145559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0053057(US,A1)
【文献】特開2006-34474(JP,A)
【文献】特開2000-134867(JP,A)
【文献】特開2012-52657(JP,A)
【文献】特開2000-283899(JP,A)
【文献】特開平10-197418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断ナイフ(4)、スライド(5)上に載置された対象物ホルダ(6)、及び切断ナイフ(4)に対して相対的に、切断方向及び厚さを定義する方向へ移動可能なスライド(5)
コントロールユニットによってコントロールされ、厚さを定義する方向へのスライドの移動を実行する第1の電気モーター、
コントロールユニットによってコントロールされ、切断方向へのスライドの移動を実行する第2の電気モーターを有し、
コントロールユニットが、厚さを定義する方向及び切断方向へのスライドの移動をコントロールするように構成され、かつコントロールユニットが、切片化の後の画像撮像をトリガーするように構成され、
コントロールユニットが、他の対応するコマンドに対する応答として、メモリ位置を保存及び/又は消去するように構成され、
前記メモリ位置が切断ナイフから水平に離れた位置であり、
前記スライドが、第1のハンドホイールの回転の機能として、厚さを定義する方向へ移動され、
第2のハンドホイール(8)の回転の機能として、スライド(5)が切断方向へ移動され、かつ第2のハンドホイール(8)が、力学的駆動トレインを介してスライド(5)とカップル化され、そして、
ミクロトームが、第2の電気モーターとスライド(5)との間に電気的に操作可能なクラッチを含み、クラッチがコントロールユニットによってコントロールされ、そして、コントロールユニットが、ブレーキコマンドに対する応答としてクラッチを開閉するように構成される、
ミクロトーム(1)。
【請求項2】
第1のハンドホイール(14)が、ハンドホイール(14)の回転をモニタリングするためのエンコーダを含む電気駆動トレインを介してスライド(5)とカップル化されるとともに、ハンドホイール(14)の回転の機能として厚さを定義する方向へスライド(5)を移動させるための第1の電気モーターともカップル化される、請求項1に記載のミクロトーム(1)。
【請求項3】
コントロールユニットがメモリ位置を提供し、そして、対応するコマンドに対する応答としてスライド(5)を厚さを定義する方向のメモリ位置へ移動させるように構成される、請求項1又は2に記載のミクロトーム(1)。
【請求項4】
コントロールユニットが、少なくとも3つの異なる速度で第1の電気モーターを回転するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のミクロトーム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロトームのモーター化された(motorized)機能をコントロールするためのコントロールユニットを有するミクロトームに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、切断ナイフ及び対象物の間の相対的な移動によって切断操作を実行して、薄い切片を生成するためのミクロトームの分野にある。駆動モーター、コントロールユニット及びハンドホイールなどの手動操作デバイスを有する駆動システムは、相対的な移動をもたらすように提供され得る。
【0003】
操作者に対する継続したストレスを最小化させるため、及び同時に単純化された取り扱いを確実にするために、ミクロトームはますます自動化されている。更に、切片化される標本のスループットは、対応して自動化されたミクロトームを用いて増加する。自動化されたミクロトームにおいて、例えば、発展は、切断ナイフに対して対象物を自動的に繰り出すことのみならず、モーターを有する駆動システムを追加的に備えて、対象物及び切断ナイフの間の相対的な切断移動をもたらすことを含む。
【0004】
そのようなディスクタイプのミクロトームは、例えば、国際公開WO98/04898A1に開示及び記載されている。
【0005】
回転式ミクロトームは、一般的には対象物キャリアを含む。対象物キャリアは、切断される標本を保持する標本ホルダを担持する。対象物キャリアは、回転式ミクロトーム上の垂直な経路を上下に移動する。この垂直移動の際に、標本は、回転式ミクロトーム上に堅固に配設されたナイフ又はカッターの上を通過する。回転式ミクロトームにおいて、垂直な切断移動のコントロールは、ハンドホイールによって駆動されるクランクメカニズムの手段によって実行することができる。クランクメカニズムは、ハンドホイールの回転動作を対象物キャリアの垂直な移動へと転換する。
【0006】
米国特許US6,598,507B1は、そのような薄い切片を生成するための回転式ミクロトームを開示し、ここでは切断操作が、切断ナイフ及び対象物の間の相対的な移動の仕方によって実行される。駆動モーター、コントロールユニット及びハンドホイールを有する駆動システムが相対的な切断移動もたらすために提供される。ハンドホイールは、ハンドホイールの回転の際に、コントロールユニットに対して対応するシグナルを配信するエンコーダに対して接続される。駆動モーターは、その際に前記コントロールユニットによって活性化される。エンコーダシグナルが不在の場合には駆動システムはロックされる。
【0007】
米国特許8640585B2は、スライド式ミクロトームを有し、標本の複数の画像を生成する装置を開示する。標本は、平面上を移動可能な態様で標本ホルダ内に固定される。切断エッジを有するナイフが、切断方向に沿って移動可能な標本の上方に配設される。ナイフの切断エッジの反対側にはカメラを有する顕微鏡が提供され、標本の切断表面が生成された直後のそれぞれの画像を取得する。
【0008】
米国出願US3884563は、標本の運動画像全体(motion picture gross)、マイクロ写真又はマクロ写真の撮像を許容するように、回転ナイフへ向かって前進する染色及び凍結された標本から有機材料の薄いシリアル切片が切り出されるミクロトーム装置を記載する。冷蔵及び断熱されたハウジングは、切片化及び撮像の間に標本を凍結された状態で維持する。装置は、従来の動画撮像ミクロトームデザインのもの(cine-microtome designs)よりも、より短い時間でのより良い品質のフィルムの作成を可能にする。フィルムは、医薬品、生命 科学及びエコロジーの領域での診断、研究及び教育ツールとして有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO98/04898A1
【文献】米国特許US6,598,507B1
【文献】米国特許US8640585B2
【文献】US3884563
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明によれば 請求項1に記載の特徴を有するミクロトームが提案される。
【0011】
有利な更なる発展形態は、従属請求項及び以下の記載を構成する。
【0012】
本発明の第1の視点によれば、切断ナイフ、スライド上に載置された対象物ホルダ、及び切断ナイフに対して相対的に、切断方向及び厚さを定義(規定)する方向へ移動可能なスライド、及びコントロールユニットを有するミクロトームが提案される。厚さを定義する方向へのスライドの移動は、コントロールユニットによってコントロールされる第1の電気モーターによって実行され、そして切断方向へのスライドの移動は、コントロールユニットによってコントロールされる第2の電気モーターによって実行される。ここで、コントロールユニットは、厚さを定義する方向及び切断方向へのスライドの移動をコントロールするように構成される。
好ましくは、
切断ナイフ、スライド上に載置された対象物ホルダ、及び切断ナイフに対して相対的に、切断方向及び厚さを定義する方向へ移動可能なスライドを有し、
厚さを定義する方向へのスライドの移動が、コントロールユニットによってコントロールされる第1の電気モーターによって実行され、
切断方向へのスライドの移動が、前記コントロールユニットによってコントロールされる第2の電気モーターによって実行され、
コントロールユニットが、厚さを定義する方向及び切断方向へのスライドの移動をコントロールするように構成され、かつコントロールユニットが、切片化の後の画像撮像をトリガーするように構成され、
第2のハンドホイールの回転の機能として、スライドが切断方向へ移動され、かつ第2のハンドホイールが、力学的駆動トレインを介してスライドとカップル化され、
ミクロトームが、第2の電気モーターとスライドとの間に電気的に操作可能なクラッチを含み、クラッチがコントロールユニットによってコントロールされ、そして、コントロールユニットが、ブレーキコマンドに対する応答としてクラッチを開閉するように構成される、
ミクロトームが提供される。
【0013】
好ましくは、コントロールユニットは、切片化の後の画像撮像をトリガーするように構成される。このことは、例えば、標本の写真を1以上の切片ごとに撮像して、標本の3D再構築体の生成を可能にする。このためには、写真を撮像する際に標本の位置がおよそ同一であることが重要である。
【0014】
好ましくは、第1のハンドホイールの回転の機能として(function:回転に基づいて、回転に応じて)、スライドが厚さを定義する方向へ移動される。つまり、移動に関して正確な手動コントロールが可能になる。
【0015】
第1のハンドホイールが、ハンドホイールの回転をモニタリングするためのエンコーダを含む電気駆動トレインを介してスライドとカップル化されるとともに、ハンドホイールの回転の機能として厚さを定義する方向へスライドを移動させるための第1の電気モーターともカップル化される。これによって、厚さを定義する方向へのスライドの移動が第1の電気モーターを介して容易に実行できるため、ハンドホイールとスライドの移動との間の力学的カップリングが存在しない。
【0016】
有利には、コントロールユニットはメモリ位置を提供し、そして、対応するコマンドに対する応答としてスライドを厚さを定義する方向のメモリ位置へ移動させるように構成される。これによって、スライド及び(and in turn)対象物を予定された位置までナイフから遠ざけて、そこで更なる機能が実行されるように移動させることができる。
【0017】
有利には、コントロールユニットは、対応するコマンド、例えば ボタン操作に対する応答として、メモリ位置を保存及び/又は消去するように構成される。これによって、ユーザは、メモリ位置を非常に容易に設定することができる。
【0018】
有利には、コントロールユニットは、少なくとも3つの異なる速度で第1の電気モーターを回転するように構成される。これによって、ナイフに対して相対的なスライドの前後の移動を非常に正確にコントロールすることができる。
【0019】
有利には、第2のハンドホイールの回転の機能として、スライドが切断方向へ移動される。つまり、移動に関して正確な手動のコントロールが可能になる。
【0020】
有利には、第2のハンドホイールは、力学的駆動トレインを介してスライドとカップル化される。これによって、ユーザが切断移動に関して全面的なコントロールを常時行うように、ハンドホイールとスライドの切断移動との間の力学的なカップリングがもたらされる。
【0021】
更に、コントロールユニットによってコントロールされる第2の電気モーターによってスライドが切断方向へ移動される。このことはミクロトームの自動的な使用、例えば1つの標本からの複数の切片の生成のための使用、例えば3D再構築体を生成するための使用を可能にする。このために、コントロールユニットは好ましくは切片化の後に画像の撮像をトリガーするように構成される。
【0022】
有利には、ミクロトームが第2の電気モーターとスライドとの間に電気的に操作可能なクラッチを含み、クラッチがコントロールユニットによってコントロールされる。これによって、スライドと第2の電気モーターとの間の接続を、容易に確立又は切断することができる。
【0023】
有利には、コントロールユニットは、ブレーキコマンドに対する応答としてクラッチを開閉するように構成される。これによって、ユーザは、スライドと第2の電気モーターとの間の接続を容易に確立又は切断することができる。閉じられたクラッチは、ハンドホイールのブレーキとして作用する。
【0024】
更なる利点及び本発明の実施形態は、明細書及び添付図面から明確になるだろう。
【0025】
上述の特徴及び以下に更に記載される特徴が、本発明の範囲から逸脱すること無く、それぞれに記載の組み合わせのみならず、更なる組み合わせ又は単独で使用可能であることに注視すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、ハンドホイールを有するミクロトーム及び外部に配設されるコントロールパネルの斜視図である。
図2図2は、対象物の水平移動に関する異なる速度を図示するスキームである。
図3図3は、3D再構築モードを図示するスキームである。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0027】
本発明は、模式図の助けと共に好ましい実施例を参照してより詳細に説明される。
【0028】
図1は、ミクロトームハウジング2、及び切断ナイフ4を受容するナイフホルダ3を有するミクロトーム1を示す。対象物7は、2方向矢印の方向へ移動可能なように、スライド5上に載置(マウント)された対象物ホルダ6の上に配設される。ハンドル9を有するハンドホイール8が回転可能な態様で取り付けられる手動操作デバイスは、ミクロトーム1に備えられる。ハンドホイール8の回転は対象物スライド5の上下移動をもたらすとともに、対象物7をナイフ4のエッジの上へガイドする。
【0029】
ハンドホイール8は、クランクドライブ(US5,065,657を参照)などの力学的駆動トレインによってスライド5に対して接続され得る。ハンドホイール8を回転することによって クランクドライブのクランクが回転するように、ハンドホイール8はクランクドライブのクランクに対して堅固に固定され得る。
【0030】
スライド5の上下移動をモーター化する(motorized)ために、クランクドライブのクランクは、ベルトドライブなどの力学的駆動トレインを介して電気モーターと更に接続される。すなわち、電気モーターの回転シャフトはベルトを介してプーリ又は同様のものと接続され、プーリはクランクドライブのクランクと接続される(又はクラッチを介して接続可能である)。
【0031】
上下移動(すなわち切断方向の)のための電気モーターは、コントロールユニット(ハウジング2内の)によってコントロールされる。コントロールユニットは、外部のコントロールパネル10と接続され得る。コントロールパネル10は、数値入力のためのキーパッド11、継続的に可変し得る入力のための回転コントローラ13、及び特定の切り替え位置及び操作状態を入力するためのスイッチ12を有する。
【0032】
好ましくは、電気的に操作可能なクラッチが、電気モーターと力学的駆動トレインとの間(ここではプーリとクランクとの間)に配置される。電気的に操作可能なクラッチは、コントロールユニットによってコントロールされ得る。クラッチが開いている場合には、クランクは電気モーターによって邪魔されずに、ハンドホイール8によって手動で回転され得る。クラッチが閉じている場合には、クランクは電気モーターによって回転され得る。
【0033】
更に、電気モーターと上下移動のための力学的駆動トレインとの間に、上下移動の非常に単純なブレーキを可能にするために電気的に操作可能なクラッチが提供される。クラッチが閉じている場合には、ハンドホイール8の手動の回転が電気モーターによって阻止される。クラッチを閉じるための対応するブレーキボタンは、コントロールパネル10上又はハウジング2上に配設され得る。更に、コントロールユニットは、スライド5が最も低く位置した時に、各切片化の後にクラッチを自動的に閉じるように構成することができる。
【0034】
更に、スライド5は前後に移動させることができる。通常では、スライドは対象物が上方へ移動する際にナイフに対して接触しないように切片化の後に後方へ移動され、そしてスライドは厚さを調節するために次の切片化の前に前方へ移動される。ハンドルを有するハンドホイール14が回転可能な態様で取り付けられる手動操作デバイスは、ミクロトーム1に備えられる。ハンドホイール14の回転は、スライド5を前後に(すなわち厚さを定義する方向へ)移動させる。
【0035】
本質的には、ハンドホイール14は、クランクドライブ(US5,065,657を参照)などの力学的駆動トレインによってスライド5に対して接続することができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、ハンドホイール14は、力学的駆動トレインを介してではなく、追加の電気駆動モーターを含む電気駆動トレインを介してスライド5に対してカップル化される。スライド5の前後移動(すなわち厚さを定義する方向へ)のための電気駆動モーターも、コントロールユニット(ハウジング2内の)によってコントロールされる。これは、ハンドホイール14の回転を対応するシグナルに変換して、それをコントロールユニットへ送信するエンコーダによって提供される。コントロールユニットにおいてシグナルが解析され、それに従って駆動モーターが活性化される。この構成を用いることで、手慣れた繊細な様式で駆動システムの操作を継続することが可能になる。これは特に標本の交換又はナイフの交換の後で、2つ(標本又はナイフ)の互いに対する再配列が必要である場合に、特別に有利である。つまり、わずかなハンドホイール移動によって、駆動システムは前後に繊細に移動され得る。更に、エンコーダからシグナルが供給されていない場合であっても、コントロールユニットによる信頼できる駆動システムのロックは影響され得る。このスタンバイモードにおいて、オペレータはミクロトームに対する作業を実行するため、切断ナイフに対するかなりの損傷のリスクがある。この損傷のリスクは、駆動システムの自動的なロックによって最小化される。
【0036】
電気モーターによるスライド5の前後移動は、スライド5のメモリ位置を定義するという本発明の好ましい実施形態の可能性を更にもたらし、ここでは対応するコマンド、例えばコントロールパネル10上のメモリボタンを押すことに対する応答として、スライド5が自動的に移動し得る。このメモリ位置がナイフから水平に離れた位置であること、すなわちスライド5が水平に移動してメモリ位置へ到着することが強調されなければならない。メモリ位置は、対応するコマンド、例えばコントロールパネル10を使用したコマンドに対する応答として設定及び消去することができる。更に、ホーム位置又はデフォルト位置を、ナイフから最も離れた位置に定義することができる。
【0037】
更に、電気モーターによるスライド5の前後移動は、異なる移動速度が定義されるという本発明の好ましい実施例の可能性を更にもたらす。特に、少なくとも3つの異なる移動速度、第1の移動速度(いわゆる低速)、第2の移動速度(いわゆる中速(medium speed))及び第3の移動速度(いわゆる高速)を提供することができる。例えば低速は対象物の頭部の前後の移動に関して0.5mm/sであり得るし、中速は対象物の頭部の前方移動に関して1mm/sであり得るし、高速はホーム位置又はメモリ位置への対象物の頭部の移動に関して2mm/sであり得る。
【0038】
異なる速度を使用する利点を示す実施例が図2に示される。切片化が終了した時には、上方へ移動する際に対象物がナイフに対して接触しないことを保障するためにスライドは後方へ移動させなければならない。この後方への移動は、低速又は素早い速度(高速)の何れかで達成され得る。低速は、対象物が交換されないため、スライドの実際の位置を非常に正確に知る必要がある場合に使用することができる。素早い速度は、対象物を交換する必要があるため、スライドの位置に関する正確な知識が重要でない場合に使用することができる。
【0039】
その際にスライドは上方へ移動される。続いて、例えば新たなる対象物カセットを載置することによって対象物を交換すること、対象物の画像を撮像すること及び/又は新たなる切片化を開始することができる。
【0040】
新たなる切片化が実行され得る前に、対象物を再度下方へ移動させた時にナイフで切断され得るように、それに固定された対象物を有するスライド5は、前方へ移動されなければならない。この前方への移動は、低速又は中速(ミドル速度)のいずれかで達成され得る。低速は、対象物が後方へ低速したため、対象物とナイフとの間の距離が短いのみである場合に使用され得る。中速は、対象物がホーム位置へ移動した及び/又は交換されたため、対象物とナイフとの間の距離が高い(high、長い)場合に使用され得る。
【0041】
この文脈において、駆動モーターの一方又は両方がステッパモーターとして、又はDCモーター、特にBLDC(ブラシレスDC)モーターとして構成され得る。
【0042】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、コントロールユニットは、切片化の後の画像撮像をトリガーするように構成される。これは、好ましくは、例えば図3に示す3D再構築機能を実行するために、順番に複数の画像を撮像することに使用され得る。これは、標本の3Dモデルを再構築する機能である。3Dモードが開始された場合に、コントロールユニットは、ミクロトーム(特に電気モーター及びクラッチ)をコントロールして、標本を1つの切片へと切り出し、次にスライドを画像撮像位置、特に上述のメモリ位置へ移動させ、そして停止して外部のカメラに対してリレーシグナルを送信する。カメラはリレーシグナルを得て、写真を撮像し、次にフィードバックリレーシグナルをミクロトームに対して送信して第2の切片化をトリガーする。
【0043】
この全ては、コントロールユニットがスライドの上下移動とともにスライドの前後移動をコントロールすることができ、かつ、標本を有するスライドをメモリ位置へ移動させることができ、そして画像取得をトリガーすることができるため、本発明の好ましい実施例のミクロトームのコントロールユニットによって実行され得る。
図1
図2
図3