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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】グリコシルトランスフェラーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/067 20060101AFI20230821BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20230821BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230821BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230821BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C07H19/067 CSP
A61K31/7072
A61P31/04
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K31/337
A61K31/7068
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2020558862
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013152
(87)【国際公開番号】W WO2019140158
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】62/616,657
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399129696
【氏名又は名称】カリフォルニア・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(73)【特許権者】
【識別番号】520258758
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エム・クレモンス
(72)【発明者】
【氏名】クロス・ミチオ
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-078385(JP,A)
【文献】特表2003-532736(JP,A)
【文献】Katsuhiko MITACHI et al.,“Novel FR-900493 Analogues That Inhibit the Outgrowth of Clostridiumdifficile Spores”,ACS Omega,2018年02月09日,Vol. 3, No. 2,p.1726-1739
【文献】Katsuhiko MITACHI et al.,“Stereocontrolled Total Synthesis of Muraymycin D1 Having a Dual Mode of Action against Mycobacterium tuberculosis”,Journalof the American Chemical Society,Vol. 138,No. 39,2016年09月26日,p.12975-12980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して、1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R1が、
【化2】
であり、
Xは、存在しない、及び
Yは、-CH2-である、
請求項1の化合物。
【請求項3】
式Iの化合物が、
【化3】
である、請求項1若しくは2の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記化合物が、以下の立体化学
【化4】
を有する、請求項3の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式Iの化合物が、
【化5】
である、請求項1若しくは2の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記化合物が、以下の立体化学
【化6】
を有する、請求項5の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R1が、C7アルキルであり、
Xが、存在しない、及び
Yが、存在しない、
請求項1の化合物。
【請求項8】
式Iの化合物が、
【化7】
である、請求項1若しくは7の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記化合物が、以下の立体化学
【化8】
を有する、請求項8の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
式Iの化合物が、
【化9】
である、請求項1若しくは7の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記化合物が、以下の立体化学
【化10】
を有する、請求項10の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
R1が、
【化11】
であり、
Xが、-NH-であり、及び
Yが、-CH2-である、
請求項1の化合物。
【請求項13】
式Iの化合物が、
【化12】
である、請求項1若しくは12の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
前記化合物が、以下の立体化学
【化13】
を有する、請求項13の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその塩、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物又は請求項15に記載の組成物を含む、それを必要とする個体においてドリキル-ホスフェートN-アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ(DPAGT1)を阻害するための医薬
【請求項17】
第二の化合物と共に投与される、請求項16の医薬
【請求項18】
前記第二の化合物が、タキソールである、請求項17の医薬
【請求項19】
前記第二の化合物が、ツニカマイシンである、請求項17の医薬
【請求項20】
前記第二の化合物が、ゲムシタビンである、請求項17の医薬
【請求項21】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物又は請求項15に記載の組成物を含む、それを必要とする個体において感染症を治療するための医薬
【請求項22】
前記感染症が、細菌感染症である、請求項21に記載の医薬
【請求項23】
前記細菌感染症が、クロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる、請求項22に記載の医薬
【請求項24】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物又は請求項15に記載の組成物を含む、それを必要とする個体において癌を治療するための医薬
【請求項25】
前記癌が、子宮頸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵癌、細胞腫、又は腺癌である、請求項24に記載の医薬
【請求項26】
式III:
【化14】
の化合物を含む組成物を調製する方法であって、
溶媒及び塩基の存在下、銅試薬と式II:
【化15】
の化合物を反応させる工程、並びに式IIの化合物を保護基試薬と更に反応させる工程を含む、前記方法
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、並びに
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基である)。
【請求項27】
前記銅試薬が、CuSO4、Cu(OAc)2、及びCuCl2からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記銅試薬が、Cu(OAc)2である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド、メタノール、及び水の混合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
PGが、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記保護基試薬が、二炭酸ジ-tert-ブチル(Boc2O)である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
PGが、カルボキシベンジル(Cbz)である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記保護基試薬が、クロロギ酸ベンジルである、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記保護基試薬が、N-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミドである、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
式V:
【化16】
の化合物を含む組成物を調製する方法であって、
溶媒中の塩基条件下、
式III:
【化17】
の化合物を式IV:
【化18】
の化合物と反応させる工程を含む、前記方法
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
R3は、OC1~C4アルキル、トシレート、メシレート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、イミダゾール、及びトリフレートからなる群から選択される)。
【請求項37】
R3が、イミダゾールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記塩基が、トリエチルアミンである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド及びジクロロメタンの混合物である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
式I:
【化19】
の化合物を含む組成物を調製する方法であって、
溶媒中の酸で、
式V:
【化20】
の化合物を処理する工程を含む、方法
(R1
【化21】
あり、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、-NH-であり、
Yは、-(CH2)n-であり、
PGは、アセチル(Ac)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルバメート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
nは、1である)。
【請求項41】
前記酸が、トリフルオロ酢酸である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記溶媒が、ジクロロメタンである、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年1月12日に出願した米国仮特許出願第62/616657号の優先権を主張するものである。当該出願の全内容は、参照により、ことごとく本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
目下注目されている生物学的標的は、ドリキル-ホスフェートN-アセチルグルコサミン-ホスホトランスフェラーゼ(DPAGT1)である。DPAGT1は、糖タンパク質生合成のために最初に関与する酵素である。細胞表面多糖類は、生体内の多数の生物学的過程において重要な役割を果たし、細胞表面タンパク質の異常なグリコシル化は、正常細胞が悪性腫瘍性状態に進行する間に起こる。従って、細胞表面グリコシル化の改変が、多くの癌細胞の特徴である。最近開発された腫瘍マーカーの多くは、炭水化物抗原である。癌細胞における特定の分岐過程の生合成を遮断する薬物様グリコシルトランスフェラーゼを発見することは、非常に困難な主題であるが、N-グリカン生合成は、最初に関与する酵素DPAGT1の阻害によって終了できる。選択的DPAGT1阻害剤は、増殖進行においてN結合型グリカンの増加した分岐を必要とするある一定の固形癌にとって有望な治療可能性を有する。DPAGT1の強い阻害が細胞毒性を引き起こし得るので、DPAGT1阻害剤は、抗細菌剤としての有望な治療可能性もまた有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Vargas, D.A.ら、(2016) PLoS Computational Biol. 12: e1005007
【文献】Nita-Lazar M.ら、(2009) Cancer Res. 316: 1871~1884頁
【文献】Lim, E.ら、(2015) Apoptosis、8: 1087~1098頁
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、1418頁
【文献】Journal of Pharmaceutical Science、66、2 (1977)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro編、Mack Publishing Co.、1985、Easton、PA)
【文献】Holford, N. H. G.及びScheiner, L. B.、Clin. Pharmacokinet. 6: 429~453頁(1981)
【文献】Loewe, S.及びMuischnek, H.、Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114: 313~326頁(1926)
【文献】Chou, T. C.及びTalalay, P.、Adv. Enzyme Regul. 22: 27~55頁
【文献】Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、1~17巻(John Wiley and Sons、1991)
【文献】Rodd's Chemistry of Carbon Compounds、1~5巻及び追補(Elsevier Science Publishers、1989)
【文献】Organic Reactions、1~40巻(John Wiley and Sons、1991)
【文献】Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc.、1989)
【文献】March, Advanced Organic Chemistry第4版、(Wiley 1992)
【文献】Carey及びSundberg、Advanced Organic Chemistry第4版、A及びB巻(Plenum 2000、2001)
【文献】Green及びWuts、Protective Groups in Organic Synthesis第3版(Wiley 1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造的に多種多様なDPAGT1阻害剤、特に、細菌感染症及び癌の治療にとって強力な及び/又は選択的であるDPAGT1阻害剤を調製する必要性が、依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
化合物、及びこれらの化合物を使用して、それを必要とする個体においてDPAGT1を阻害する方法が、本明細書に提供される。
【0006】
従って、態様において、
式I:
【化1】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して、1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。
【0007】
実施形態において、R1は、ピペラジン-O-Ph-CF3であり、Xは、存在しない、及びYは、-CH2-である。
【0008】
別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0009】
更に別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化3】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0010】
また別の実施形態において、R1は、C7アルキルであり、Xは、存在しない、及びYは、存在しない。
【0011】
実施形態において、式Iの化合物は、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0012】
別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化5】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0013】
更に別の実施形態において、R1は、ピペラジン-O-PhCF3であり、Xは、-NH-であり、及びYは、-CH2-である。
【0014】
また別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化6】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0015】
実施形態において、式Iの化合物は、
【化7】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0016】
別の態様において、薬学的に許容される担体と一緒に、本明細書に記載された化合物のいずれか又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0017】
また別の態様において、本明細書に記載された、化合物又は組成物のいずれかの治療有効量を個体へ投与する工程を含む、それを必要とする個体においてドリキル-ホスフェートN-アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ(DPAGT1)を阻害する方法が、本明細書に提供される。
【0018】
方法の実施形態において、方法は、第二の化合物を投与する工程を更に含む。別の実施形態において、第二の化合物は、タキソール、ツニカマイシン、及びゲムシタビンからなる群から選択される。
【0019】
これらの併用療法の実施形態において、化合物及び追加の治療剤は、同時配合される。別の実施形態において、化合物及び追加の治療剤は、同時投与される。
【0020】
これらの併用療法の別の実施形態において、本明細書に提供された化合物を投与することは、それを必要とする個体においてDPAGT1を阻害するのに同様の結果を達成するために必要とされる少なくとも1種の追加の治療剤のみの投与と比べて、より少ない投与量又は頻度で1種の追加の治療剤を投与することを可能にする。
【0021】
更に別の態様において、本明細書に記載された、化合物又は組成物のいずれかの治療有効量を個体へ投与する工程を含む、それを必要とする個体において感染症を治療する方法が、本明細書に提供される。
【0022】
方法の実施形態において、感染症は、細菌感染症である。別の実施形態において、細菌感染症は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)、及びスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)からなる群から選択される細菌によって引き起こされる。また別の実施形態において、細菌感染症は、クロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる。
【0023】
態様において、本明細書に記載された、化合物又は組成物のいずれかの治療有効量を個体へ投与する工程を含む、それを必要とする個体において癌を治療する方法が、本明細書に提供される。
【0024】
方法の実施形態において、癌は、子宮頸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵癌、細胞腫、又は腺癌である。
【0025】
別の態様において、
式III:
【化8】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書に提供され、
溶媒及び塩基の存在下、銅試薬と式II:
【化9】
の化合物を反応させる工程、並びに式IIの化合物を保護基試薬と更に反応させる工程を含む
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、並びに
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基である)。
【0026】
実施形態において、銅試薬は、CuSO4、Cu(OAc)2、及びCuCl2からなる群から選択される。別の実施形態において、銅試薬は、Cu(OAc)2である。
【0027】
また別の実施形態において、塩基は、水酸化ナトリウムである。更に別の実施形態において、溶媒は、ジメチルホルムアミド、メタノール、及び水の混合物である。実施形態において、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)であり、保護基試薬は、二炭酸-tert-ブチル(Boc2O)である。別の実施形態において、PGは、カルボキシベンジル(Cbz)であり、保護基試薬は、クロロギ酸ベンジルである、又はN-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミドである。
【0028】
また別の態様において、式V:
【化10】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書で提供され、
溶媒中の塩基条件下、式III:
【化11】
の化合物を式IV:
【化12】
の化合物と反応させる工程を含む
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
R3は、OC1~C4アルキル、トシレート、メシレート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、イミダゾール、及びトリフレートからなる群から選択される)。
【0029】
実施形態において、R3は、イミダゾールである。別の実施形態において、塩基は、トリエチルアミンである。また別の実施形態において、溶媒は、ジメチルホルムアミド及びジクロロメタンの混合物である。
【0030】
更に別の態様において、式I:
【化13】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書に提供され、
溶媒中の酸で、
式V:
【化14】
の化合物を処理する工程を含む
(R1は、ピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、OC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、-NH-であり、
Yは、-(CH2)n-であり、
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
nは、1である)。
【0031】
実施形態において、酸は、トリフルオロ酢酸である。別の実施形態において、溶媒は、ジクロロメタンである。
【0032】
本発明を例証する目的のために、本発明のある一定の実施形態を図面で示す。しかし、本発明は、図面に示された実施形態の正確な配置及び手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本明細書に提供されたアミド含有化合物を調製する一般的な合成方法を示す図である。
図2】本明細書に提供された尿素含有化合物を調製する一般的な合成方法を示す図である。
図3】本発明の化合物及び既知の抗細菌剤の存在下のC.ディフィシル(C. difficile)芽胞の生存率を示す図である。
図4】化合物11の抗細菌活性を示す図である。
図5】化合物11のAsPc-1及びPanc-1細胞生存率アッセイを示す図である。
図6】β-カテニンについてのウエスタンブロットアッセイ及び化合物11によるDPAGT1阻害を示す図である。
図7】ゲムシタビン、タキソール、ツニカマイシン、及び化合物11でのPanc-1細胞についてのボイデンチャンバー遊走アッセイを示す図である。
図8】ツニカマイシン、タキソール、及び化合物11でのAsPc-1細胞についてのボイデンチャンバー遊走アッセイを示す図である。
図9】ゲムシタビン及び化合物11の存在下、AsPc-1及びPanc-1細胞株についてのスクラッチアッセイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
それを必要とする個体において癌又は細菌感染症の治療に有用である、化合物及びその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。
【0035】
非限定的態様において、これらの化合物は、DPAGT1を阻害できる。特定の実施形態において、本明細書に提供された化合物は、DPAGT1阻害剤と考えられる。従って、一態様において、本明細書に提供された化合物は、DPAGT1阻害剤として作用することによる個体における癌又は細菌感染症の治療に有用である。
【0036】
DPAGT1は、グリコシルトランスフェラーゼファミリー4に属し、ドリキルホスフェートでUDP-GlcNAcからN-アセチル-D-グルコサミニル-ジホスホドリコールへの形質転換を触媒する、ERに局在している膜内在性タンパク質である。ER膜中のアンカーN-アセチル-D-グルコサミニル-ジホスホドリコールは、連続的グリコシルトランスフェラーゼによって修飾されて、ドリコール結合オリゴ糖前駆物質を形成し、この前駆物質は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)によってポリペプチド鎖の選択されたアスパラギン残基(N-X-S又はN-X-T配列)へ転移させられる。
【0037】
抗細菌治療
クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、2013年以来公衆衛生上の脅威と宣言されてきた。CDIは、下痢症、腸の炎症、及び場合によっては死亡を引き起こす。およそ250,000人が、米国において毎年CDIにより入院している。C.ディフィシルの感染形態は、芽胞であり、その発芽は、CDI発症における最初の関与段階である。C.ディフィシルは、環境中に豊富にあり、C.ディフィシル関連下痢症(CDAD)を引き起こす毒素を生成する場所である腸で、コロニーを形成する。広域スペクトル抗生物質によるCDIのための抗生物質療法は、腸内細菌叢の正常なバランスを崩壊させる副作用を有し、C.ディフィシル大腸炎を引き起こすことが頻繁にある。CDIの抗生物質治療は、抗生物質耐性と細菌の生理的因子(例えば、芽胞形成、偽膜の保護効果)の両方に起因して、困難である。CDADの治療のために取得可能な薬物の数は限定的である。
【0038】
興味深いことに、ある一定の抗生物質剤は、細菌性ホスホトランスフェラーゼ(MurX及びWecA)を標的にすることによって、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する強い静菌活性を示した。WecA酵素阻害剤は、ヒトホモログ、DPAGT1に干渉する可能性を有する。従って、DPAGT1の強い阻害が、多くの細菌株中で細胞毒性を引き起こすことが、観察された。
【0039】
癌治療
CTNNB1遺伝子(癌原遺伝子)によってコード化されたβ-カテニンは、細胞-細胞接着及び遺伝子転写を調節及び協調させる多機能タンパク質である。β-カテニンは、高度に保存されたWnt(羽根なしInt)/β-カテニンシグナリング経路における決定的な転写因子であり、胚発生及び発癌現象において重要な役割を果たす(Vargas, D.A.ら、(2016) PLoS Computational Biol. 12: e1005007)。正常細胞において、β-カテニン濃度は、プロテアソーム分解が理由で低い。β-カテニンの変異が、卵巣癌、乳癌、癌性肝腫瘍、結腸直腸癌、肺癌及び膠芽腫を含む多様な癌に見られる(Nita-Lazar M.ら、(2009) Cancer Res. 316: 1871~1884頁)。これらの癌細胞において、変異は、β-トランスデューシンリピート含有タンパク質(β-TrCP)結合モチーフ中で観察され、ユビキチン化を促進し、β-カテニンの分解を困難にする。これは、細胞質中のβ-カテニンの高レベルを引き起こし、β-カテニンは、核へ移行させられ、Wnt遺伝子を含む標的遺伝の転写を活発にする。β-カテニン及びカテニンタンパク質ファミリーのその他のメンバー(α-カテニン、及びγ-カテニン(プラコグロビン))の別の機能は、E-カドヘリン、細胞間の細胞接着の原因となるカルシウム依存性細胞-細胞接着分子に関係している。DPAGT1のN-グリコシル化標的の1つは、E-カドヘリンである。β-カテニンの過剰発現は、高いレベルのDPAGT1発現を引き起こし、E-カドヘリンの異常な改変をもたらす。多数の研究が、Wnt/β-カテニンシグナリング経路が、DPAGT1発現を標的にすることによって、タンパク質N-グリコシル化の代謝経路を調節すると結論付けた。DPAGT1の調節不全は、口腔癌における細胞間の接着において妨害を引き起こす(Nita-Lazarら、2009)。これらの観察された生物学的過程に基づいて、DPAGT1の阻害は、細胞-細胞接着の減少及びメタセシスを誘発し、アポトーシス経路の引き金となり得る(Lim, E.ら、(2015) Apoptosis、8: 1087~1098頁)。少数のDPAGT1阻害剤のみが、目下のところ確認されている。従って、DPAGT1の阻害は、ある一定の癌における本質的なN-グリカンの生合成の「アキレス腱」である可能性が大いにある。
【0040】
定義
本発明を説明するのに使用された様々な用語の定義を下に記載する。これらの定義は、個別に又はより大きいグループの一部としてのいずれかで、特定の例において別段の限定をしない限り、用語が本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて使用されるとき、その用語に適用される。
【0041】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を一般的に有する。一般的に、本明細書で使用される命名法、並びに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、及びペプチド化学における検査法は、周知の、当技術分野において通常使用されているものである。
【0042】
本明細書で使用するとき、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の対象の1つ又は1つ超(つまり、少なくとも1つ)のことである。例として、「an element(元素)」は、1個の元素又は1個超の元素を意味する。更に、用語「including(含む)」並びにその他の形、例えば、「include」、「includes」、及び「included」の使用は、限定的ではない。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、当業者によって理解され、使用される文脈で、ある程度まで変化することになる。本明細書で使用するとき、量、時間的持続等の測定値に関する場合、用語「約」は、かかる変化が開示された方法を実施するのに適切であるように、指定された値から、±5%、±1%、及び±0.1%を含む、±20%又は±10%の変化を包含することが意味される。
【0044】
用語「treat(治療する)」、「treated」「treating」又は「treatment(治療)」は、治療される状態、障害又は疾患に関連する又は引き起こされる、少なくとも1つの症状の軽減又は緩和を含む。ある一定の実施形態において、治療は、癌及び細菌感染症に関する状態のために本発明の化合物の有効量をDPAGT1と接触させることを含む。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「予防する」又は「予防」は、何も起こっていなかった場合には障害若しくは疾患の進展がないこと、又は障害若しくは疾患の進展がすでにあった場合には更なる障害若しくは疾患の進展がないことを意味する。障害又は疾患と関連する症状のいくつか又は全てを予防するものの能力ともまた、考えられる。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「患者」、「個体」、又は「対象」は、ヒト又はヒト以外の哺乳類のことである。ヒト以外の哺乳類とは、例えば、家畜及びペット、例えばヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ及び海洋哺乳類を含む。好ましくは、患者、対象、又は個体は、ヒトである。
【0047】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」、「薬学的有効量」、及び「治療有効量」は、所望の生物学的結果をもたらす、薬剤の無毒であるが十分な量のことである。その結果は、疾患の徴候、症状、若しくは疾患の原因の削減又は緩和、又は生物システムのいずれかのその他の所望の変化であり得る。いずれの個別の場合においても適切な治療量は、日常の実験を使用して、当業者によって決定されてよい。
【0048】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される」は、化合物の生物学的活性又は特性を抑制せず、相対的に無毒である、担体又は賦形剤等の材料のことであり、つまり、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく又は含有される組成物の成分のいずれとも有害な形で相互作用することなく、個体へ投与され得る。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、存在する酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって改変されている、開示された化合物の誘導体のことである。薬学的に許容される塩の例には、これらに限定されるものではないが、アミン等の塩基性残基の鉱酸又は有機酸の塩;カルボン酸等の酸性残基のアルカリ又は有機塩等が、含まれる。本発明の薬学的に許容される塩には、例えば、無毒の無機又は有機の酸から形成された、親化合物の従来の無毒の塩が含まれる。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成できる。一般的に、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水若しくは有機溶媒中又は水及び有機溶媒の混合物中の適切な塩基若しくは酸の化学量論量と反応させることによって調製でき、一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。表現「薬学的に許容される塩」は、モノ塩又は1:1の塩に限定されない。例えば、「薬学的に許容される塩」は、ビス塩、例えばビス塩酸塩もまた含む。好適な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、1418頁及びJournal of Pharmaceutical Science、66、2 (1977)にあり、前記文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」又は「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体と本発明内の有用な少なくとも1種の化合物との混合物のことである。医薬組成物は、患者又は対象への化合物の投与を促進する。化合物を投与する複数の技術は、これらに限定されるものではないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、点眼、肺、及び局所投与を含み、当技術分野に存在する。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される材料、組成物又は担体、例えば、液体又は固体充填剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、賦形剤、添加剤、増粘剤、溶媒又は被包材料を意味し、意図された機能を実施するように、患者内又は患者へ本発明内の有用な化合物を運ぶ又は輸送することに関与する。典型的に、かかる構成物は、1つの器官又は身体の部分から別の器官又は身体の部分へ、運ばれる又は輸送される。それぞれの担体は、本発明内で有用な化合物を含む、配合物のその他の成分と適合し、患者に傷害性でないという意味において「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として働き得る材料のいくつかの例には、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;添加剤、例えば、カカオバター及び坐剤ワックス;油、例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;界面活性剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに、医薬配合物中で使用される、その他の無毒の適合物質が含まれる。
【0052】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される担体」には、本発明内で有用な化合物の活性と適合し、患者に生理的に許容される、いずれかの及び全てのコーティング剤、抗細菌及び抗真菌剤、並びに吸収遅延剤等もまた含まれる。補足の活性化合物が、組成物中に組み込まれてもまたよい。「薬学的に許容される担体」には、本発明内で有用な化合物の薬学的に許容される塩が更に含まれてもよい。本発明の実行において使用される医薬組成物に含まれてよいその他の追加の成分は、当技術分野において既知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro編、Mack Publishing Co.、1985、Easton、PA)に記載されていて、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書で使用するとき、「併用療法」は、2種以上の治療剤を投与し、本開示に記載された治療上の状態又は障害を治療することである。かかる投与は、実質的に同時の方法で、例えば、定率の活性成分を有する単一のカプセルで、又はそれぞれの活性成分のための複数若しくは別々の容器(例えば、カプセル)での、これらの治療剤の同時投与を包含する。更に、かかる投与は、ほぼ同時又は異なる時期のいずれかでの逐次的方法で、それぞれの種類の治療剤を使用することもまた包含する。どちらの場合においても、治療計画は、本明細書に記載された状態又は障害を治療する際の合剤の有益な効果をもたらすことになる。
【0054】
本明細書に記載された薬剤の組合せは、相乗効果を示す。用語「相乗効果」及び表現「相乗作用」は、本明細書で使用するとき、例えば、DPAGT1阻害剤、及び例えば細菌増殖を阻害する効果をもたらす第二の化合物(例えば、ツニカマイシン)等の2種の薬剤の作用のことであり、単独で投与されたそれぞれの薬物の効果の単純な加算よりも大きい。相乗効果は、例えば、シグモイド-Emax方程式(Holford, N. H. G.及びScheiner, L. B.、Clin. Pharmacokinet. 6: 429~453頁(1981))、ロエベ相加の方程式(Loewe, S.及びMuischnek, H.、Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114: 313~326頁(1926))、及び50%有効方程式(Chou, T. C.及びTalalay, P.、Adv. Enzyme Regul. 22: 27~55頁)等の好適な方法を使用して計算できる。
【0055】
用語「DPAGT1」は、本明細書で使用するとき、ドリキル-ホスフェートN-アセチルグルコサミン-ホスホトランスフェラーゼのことであり、N-グリカン生合成のための最初に関与する酵素である。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、単独で又は別の置換基の部分として、特に明記しない限り、指定された炭素原子の数を有する、直鎖又は分枝鎖の炭化水素を意味する(つまり、C1~C10-アルキルは、1~10個の炭素原子を有するアルキルを意味し、直鎖及び分枝鎖を含む)。実施形態において、C1~C10アルキル基が、本明細書に提供される。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが含まれる。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシ」は、-O-アルキル基のことであり、アルキルは、本明細書に定義されている通りである。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ等が含まれる。実施形態において、C1~C4アルコキシ基が、本明細書に提供される。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「ハロ」又は「ハロゲン」、単独で又は別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子、好ましくは、フッ素、塩素、又は臭素、より好ましくは、フッ素又は塩素を意味する。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「Ph」は、フェニルを意味し、C6アリール系である。用語「アリール」は、1、2又は3つの環を含有する芳香族炭素環系を意味し、かかる環は縮合されていてよく、縮合されるとは上に定義されている。環が縮合される場合、環の1つは、完全に不飽和でなければならず、縮合された環は、完全に飽和、部分的に不飽和、又は完全に不飽和であり得る。用語「アリール」には、これらに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、インダニル、及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニルが含まれる。いくつかの実施形態において、アリール基は、6個の炭素原子を有する。
【0060】
アリール部分が異なる環原子を通じて指定された部分に、結合又はさもなければ付着され得る場合(つまり、付着の特定のポイントを表示することなく示される又は記載される)場合、そのときは、全ての可能なポイントを意図していることが理解されるべきである。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「置換された」は、原子又は原子団が、水素を別の原子団に付着した置換基に置き換えたことを意味する。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「場合によって置換された」は、言及された基が、置換又は非置換であり得ることを意味する。ある実施形態においては、言及された基は、ゼロ置換基で場合によって置換されている、つまり、言及された基は、非置換であり、別の実施形態においては、言及された基は、本明細書に記載された基から個別に及び独立して選択された、1つ又は複数の追加の基で場合によって置換されている。
【0063】
化合物
態様において、式I:
【化15】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して、1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。
【0064】
式Iの実施形態において、Xは、存在しない。式Iの別の実施形態において、Yは、-CH2-である。式Iのまた別の実施形態において、R1は、ピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換されていて、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換されている。式Iの更に別の実施形態において、R1は、C6~C8アルキルである。式Iの実施形態において、R1は、C7アルキルである。式Iの別の実施形態において、Xは、-NH-である。式Iのまた別の実施形態において、Yは、存在しない。式Iの更に別の実施形態において、R1は、ピペラジン-O-Ph-CF3である。式Iの実施形態において、R2は、C1アルキルである。式Iの実施形態において、R2は、Hである。
【0065】
実施形態において、R1は、
【化16】
であり、
Xは、存在しない、及びYは、-CH2-である。
【0066】
別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化17】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0067】
また別の実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化18】
を有する。
【0068】
更に別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化19】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0069】
実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化20】
を有する。
【0070】
別の実施形態において、R1は、C7アルキルであり、Xは、存在しない、及びYは、存在しない。
【0071】
また別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化21】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0072】
更に別の実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化22】
を有する。
【0073】
実施形態において、式Iの化合物は、
【化23】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0074】
別の実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化24】
を有する。
【0075】
また別の実施形態において、R1は、
【化25】
であり、
Xは、-NH-である、及びYは、-CH2-である。
【0076】
更に別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化26】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0077】
実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化27】
を有する。
【0078】
別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化28】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0079】
また別の実施形態において、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の立体化学:
【化29】
を有する。
【0080】
実施形態において、式Iの化合物は、Table A(表1)の化合物、又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0081】
【表1】
【0082】
態様において、薬学的に許容される担体と一緒に、本明細書に記載された化合物のいずれか又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0083】
一実施形態において、開示された化合物は、互変異性体として存在してよい。全ての互変異性体は、本明細書に提示された化合物の範囲内に含まれる。
【0084】
本明細書に記載された化合物には、1個又は複数の原子が、同じ原子番号であるが通常自然界にある原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、同位体標識化合物もまた含まれる。本明細書に記載された化合物に含まれるのに好適な同位体の例には、これらに限定されるものではないが、2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、及び35Sが含まれる。別の実施形態において、同位体標識化合物は、薬物又は基質組織内分布研究において有用である。別の実施形態において、重水素等のより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性(例えば、生体内半減期の増加又は必要投与量の削減)をもたらす。また別の実施形態において、本明細書に記載された化合物は、2H(すなわち、重水素)同位体を含む。
【0085】
更に別の実施形態において、ポジトロンを放出する同位体、例えば、11C、18F、15O及び13Nでの置換は、基質受容体占有率の試験のためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究において有用である。同位体標識化合物は、いずれかの好適な方法によって、又はさもなければ使用される非標識試薬の代わりに、適切な同位体標識試薬を使用する方法によって調製される。
【0086】
本明細書に記載された特定の化合物、及び異なる置換基を有する本明細書に記載された式によって包含されるその他の化合物は、本明細書に記載された、並びに例えば、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、1~17巻(John Wiley and Sons、1991)、Rodd's Chemistry of Carbon Compounds、1~5巻及び追補(Elsevier Science Publishers、1989)、Organic Reactions、1~40巻(John Wiley and Sons、1991)、Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc.、1989)、March, Advanced Organic Chemistry第4版、(Wiley 1992)、Carey及びSundberg、Advanced Organic Chemistry第4版、A及びB巻(Plenum 2000、2001)、並びにGreen及びWuts、Protective Groups in Organic Synthesis第3版(Wiley 1999)(これらの文献の全ては、かかる開示のために参照によって組み込まれる)に記載された、技術及び材料を使用して合成される。本明細書に記載された化合物の調製の一般的な方法は、本明細書に提供された式にある様々な部分の導入のために、適切な試薬及び条件の使用によって変更される。
【0087】
本明細書に記載された化合物は、市販の供給源から入手可能な化合物から出発する、いずれかの好適な手順を使用して合成される、又は本明細書に記載された手順を使用して調製される。
【0088】
治療の方法
本発明の化合物は、個体の疾患又は状態を治療する方法に使用でき、前記方法は、本発明の化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物を対象へ投与する工程を含む。
【0089】
一態様において、本発明は、本明細書に記載された組成物の化合物のいずれかを対象へ投与する工程を含む、それを必要とする個体においてDPAGT1を選択的に阻害する方法を提供する。
【0090】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載された組成物の化合物のいずれかを個体へ投与する工程を含む、個体においてDPAGT1を阻害する方法を提供する。
【0091】
実施形態において、方法は、第二の化合物を投与する工程を含む。ある一定の実施形態において、第二の化合物は、タキソール、ツニカマイシン、及びゲムシタビンからなる群から選択される。
【0092】
別の実施形態において、DPAGT1を阻害する方法は、式I:
【化30】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0093】
また別の実施形態において、DPAGT1を阻害する方法は、化合物11:
【化31】
又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0094】
また別の態様において、本発明は、本明細書に記載された、化合物又は組成物のいずれかの治療有効量を個体へ投与する工程を含む、それを必要とする個体において感染症を治療する方法を提供する。
【0095】
実施形態において、細菌感染症は、クロストリジウム・ディフィシル、枯草菌、ウエルシュ菌、及びスメグマ菌からなる群から選択される細菌によって引き起こされる。別の実施形態において、細菌感染症は、クロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる。
【0096】
別の実施形態において、感染症を治療する方法は、式I:
【化32】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0097】
また別の実施形態において、感染症を治療する方法は、化合物11:
【化33】
又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0098】
更に別の態様において、本発明は、本明細書に記載された化合物又は組成物のいずれかの治療有効量を個体へ投与する工程を含む、それを必要とする個体において癌を治療する方法を提供する。
【0099】
実施形態において、癌は、子宮頸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵癌、細胞腫、又は腺癌である。
【0100】
別の実施形態において、癌を治療する方法は、式I:
【化34】
(R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択され、
Yは、存在しないか又は-(CH2)n-であり、並びに
m及びnは、それぞれの出現において独立して1、2、又は3である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0101】
また別の実施形態において、癌を治療する方法は、化合物11:
【化35】
又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0102】
調製する方法
本発明は、とりわけ、DPAGT1阻害剤として有用である、式I:
【化36】
の化合物を調製する方法を提供する。
【0103】
態様において、本発明は、式Iの化合物を生成するのに有用な中間化合物を調製する方法を提供する。更に別の態様において、本発明は、中間体が少なくとも1つのキラル中心を有するという条件で、本明細書に記載された中間体のいずれかのエナンチオマー豊富化組成物を提供する。
【0104】
本明細書に記載された方法は、化合物及び中間体並びにその組成物を調製する方法を含み、R1は、C1~C10アルキル又はピペラジン-O-Phから選択され、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換される。いくつかの実施形態において、R1は、ピペラジン-O-PhCF3である。いくつかの実施形態において、R1は、C5~C8アルキルである。別の実施形態において、R1は、C7アルキルである。いくつかの実施形態において、R1は、ピペラジン-O-PhCF3である。いくつかの実施形態において、R2は、H又はC1~C6アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R2は、Hである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1アルキルである。いくつかの実施形態において、Xは、存在しない、-(CH2)m-、及び-NH-からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Xは、存在しない。いくつかの実施形態において、Xは、-NH-である。いくつかの実施形態において、Yは、存在しないか又は-(CH2)n-である。いくつかの実施形態において、Yは、-CH2-である。いくつかの実施形態において、Yは、存在しない。いくつかの実施形態において、m及びnは、それぞれの出現において独立して1、2、又は3である。いくつかの実施形態において、mは、1である。いくつかの実施形態において、nは、1である。必要に応じて、これらの実施形態は、方法のいずれかにおいて本明細書に記載された中間体又は化合物のいずれかに適用できる。
【0105】
態様において、式III:
【化37】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書に提供され、
溶媒及び塩基の存在下、銅試薬と式II:
【化38】
の化合物を反応させる工程、並びに式IIの化合物を保護基試薬と更に反応させる工程を含む
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、並びに
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基である)。
【0106】
実施形態において、銅試薬は、CuSO4、Cu(OAc)2、及びCuCl2からなる群から選択される。別の実施形態において、銅試薬はCu(OAc)2である。
【0107】
また別の実施形態において、塩基は、水酸化ナトリウムである。更に別の実施形態において、溶媒は、ジメチルホルムアミド、メタノール、及び水の混合物である。実施形態において、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)であり、保護基試薬は、二炭酸ジ-tert-ブチル(Boc2O)である。別の実施形態において、PGは、カルボキシベンジル(Cbz)であり、保護基試薬は、クロロギ酸ベンジルである、又はN-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミドである。
【0108】
別の態様において、式V:
【化39】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書に提供され、
溶媒中の塩基条件下、式III:
【化40】
の化合物を式IV:
【化41】
の化合物と反応させる工程を含む
(R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
R3は、OC1~C4アルキル、トシレート、メシレート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、イミダゾール、及びトリフレートからなる群から選択される)。
【0109】
実施形態において、R3は、イミダゾールである。別の実施形態において、塩基は、トリエチルアミンである。また別の実施形態において、溶媒は、ジメチルホルムアミド及びジクロロメタンの混合物である。更に別の実施形態において、R3は、イミダゾールであり、塩基は、トリエチルアミンであり、溶媒は、ジメチルホルムアミド及びジクロロメタンの混合物である。
【0110】
また別の態様において、式I:
【化42】
の化合物を含む組成物を調製する方法が、本明細書に提供され、
溶媒中の酸で、
式V:
【化43】
の化合物を処理する工程を含む
(R1は、ピペラジン-O-Phであり、Phは、C1~C4アルキル又はOC1~C4アルキルで場合によって置換され、OC1~C4アルキルは、1、2、又は3個のハロで場合によって更に置換され、
R2は、H又はC1~C6アルキルであり、
Xは、-NH-であり、
Yは、-(CH2)n-であり、
PGは、アセチル(Ac)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンゾイル(Bz)、カルボキシベンジル(Cbz)、カルバメート、3,4-ジメトキシ-ベンジル(DMPM)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、4-ニトロベンジルスルホニル(Nos)、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP)、4-トルエンスルホニル(Tos)、及びクロロギ酸トリクロロエチル(Troc)からなる群から選択される保護基であり、並びに
nは、1である)。
【0111】
実施形態において、酸は、トリフルオロ酢酸である。別の実施形態において、溶媒は、ジクロロメタンである。また別の実施形態において、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である。更に別の実施形態において、PGは、カルボキシベンジル(Cbz)である。実施形態において、酸は、トリフルオロ酢酸であり、溶媒は、ジクロロメタンであり、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である。
【0112】
態様において、上に記載された方法によって調製された化合物が、本明細書に提供される。
【0113】
投与/投与量/配合物
別の態様において、薬学的に許容される担体と一緒に、本発明の少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0114】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与の方法について所望の治療反応を達成するのに有効であり、患者に有毒でない、活性成分の量を得るために変化してよい。
【0115】
特に、選択された投与量レベルは、使用される特定の化合物の活性、投与の時期、化合物の排泄率、治療の期間、化合物と組み合わせて使用されるその他の薬物、化合物又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、健康全般及び既往歴を含む、多様な要因並びに医術において周知の同様の要因に依存することになる。
【0116】
当技術分野における通常の技術を有する医学博士、例えば、医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方し得る。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するために必要とされるより低いレベルで開示された化合物を服用させて医薬組成物の投与を始め、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0117】
特定の実施形態において、投与し易く、投与量を均一にするための投与単位形態で化合物を配合することが、特に有利である。投与単位形態は、本明細書で使用するとき、治療される患者のための単位による投与としてふさわしい物理的に分離した単位のことであり、それぞれの単位は、必要とされる薬剤溶媒を伴って所望の治療効果をもたらすように計算された、開示された化合物の予め決められた量を含有する。本発明の投与単位形態は、(a)開示された化合物及び達成される特定の治療効果の独特な特徴、並びに(b)患者における疼痛、抑うつ障害、又は薬物依存の治療のために、かかる開示された化合物を混ぜ合わせる/配合する技術分野における固有の制限によって左右され、直接的に依存する。
【0118】
一実施形態において、本発明の化合物は、1種又は複数の薬学的に許容される添加剤又は担体を使用して、配合される。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、治療有効量の開示された化合物及び薬学的に許容される担体を含む。
【0119】
本発明の組成物のいずれかの投与の経路には、経口、経鼻、直腸、膣内、非経口、頬、舌下又は局所が含まれる。本発明に使用するための化合物は、経口又は非経口、例えば、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬、(経)尿道、膣(例えば、経膣及び膣周囲)、鼻腔(内)及び(経)直腸、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、くも膜下腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、並びに局所投与等のいずれかの好適な経路による投与のために配合されてよい。一実施形態において、投与の好ましい経路は、経口である。
【0120】
好適な組成物及び剤形には、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、ゲルカプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、顆粒剤、ビーズ剤、経皮パッチ剤、ゲル剤、散剤、ペレット剤、マグマ剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、ペースト剤、硬膏剤、ローション剤、ディスク剤、坐剤、経鼻若しくは経口投与用液体噴霧剤、吸入用乾燥粉末又はエアロゾル化配合物、膀胱内投与用組成物及び配合物等が含まれる。本発明に有用であり得る配合物及び組成物は、本明細書に記載された、特定の配合物及び組成物に限定されないことが、理解されるべきである。
【0121】
経口適用にとって、特に好適なのは、錠剤、ドラジェ剤、液剤、ドロップ剤、坐剤、又はカプセル剤、カプレット剤及びゲルカプセル剤である。経口使用を意図した組成物は、当技術分野において既知のいずれかの方法に従って調製されてよく、かかる組成物は、錠剤の製造にとって好適である不活性で無毒の薬学的添加剤からなる群から選択される1種又は複数の剤を含有してよい。かかる添加剤には、例えば、ラクトース等の不活性な賦形剤;トウモロコシデンプン等の顆粒及び崩壊剤;デンプン等の結着剤;並びにステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤が含まれる。錠剤は、コーティングされていなくてもよい、又は上品な見た目のため若しくは有効成分の放出を遅らせるため既知の技術によってコーティングされてもよい。経口使用のための配合物は、有効成分が不活性賦形剤と混合されている硬ゼラチンカプセル剤として提示されてもまたよい。
【0122】
非経口投与のために、開示された化合物は、注射又は注入、例えば、静脈内、筋肉内又は皮下注射若しくは注入のために、又は大量瞬時投与若しくは持続注入での投与のために配合されてよい。油性又は水性溶媒中の懸濁剤、溶液剤又は乳剤は、懸濁化、安定化又は分散化剤等のその他の配合剤を場合によって含有して、使用されてよい。
【0123】
当業者は、本明細書に記載された、特定の手順、実施形態、請求項、及び実施例との多数の等価物を、認識することになる、又は単なる日常の実験を使用して確かめることができる。かかる等価物は、本発明の範囲内にあり、本明細書に添付された特許請求の範囲によって網羅されると考えられた。例えば、当技術分野で認識されている代替物によって並びに単なる日常の実験を使用して、これらに限定されないが、反応時間、反応の大きさ/体積、及び実験の試薬、例えば溶媒、触媒、圧力、大気条件、例えば窒素雰囲気、及び還元/酸化剤を含む反応条件を変更することは、本出願の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0124】
数値及び範囲が本明細書に与えられる場合、これらの数値及び範囲によって包含される全ての数値及び範囲は、本発明の範囲内に包含されることを意味することが理解されるべきである。更に、これらの範囲内にある全ての数値、並びに数値の範囲の上限又は下限もまた、本出願によって想定されている。
【0125】
以下の実施例は、本発明の態様を更に例証する。しかし、以下の実施例は、記載されている本発明の教示又は開示を決して限定しない。
【実施例
【0126】
本発明は、以下の実施例によって更に例証されるが、更に限定されると解釈されるべきでない。本発明の実行は、別段の指示がない限り、有機合成、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学及び免疫学の従来の技術を使用することになり、これらは、当技術の範囲内である。
【0127】
略称
Å オングストローム
aq. 水性
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
Boc2O 二炭酸ジ-tert-ブチル
CDCl3 重水素化クロロホルム
CH3CN アセトニトリル(MeCN)
D2O 重水
DCC N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DMSO ジメチルスルホキシド
ESI エレクトロスプレーイオン化
Et3N トリエチルアミン
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
リンドラーcat. 5% Pd-CaCO3、Pb(OCOCH3)2、及びキノリン
MeOD 重水素化メタノール
MS 分子篩
MTPM モノメトキシテトラクロロジフェニルメトキシメチル
Na2SO4 硫酸ナトリウム
NaB(CN)H3 シアノ水素化ホウ素ナトリウム
NaHCO3 重炭素ナトリウム
NIS N-ヨードスクシンイミド
NMO N-メチルモルホリンN-オキシド
OAc アセテート
OTf トリフレート、トリフルオロメタンスルホネート
t-BuOH tert-ブタノール
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TIPS トリイソプロピルシラン
TMS トリメチルシラン
TMSCN トリメチルシリルシアニド
Tol トルエン
【0128】
(実施例1)
化合物9の合成
【化44】
【0129】
ステップ1
CH2Cl2 (5.0mL)及びDMSO (1.0mL)中で13(0.65g、1.0mmol)及びジクロロ酢酸(0.12mL、1.5mmol)を攪拌した溶液に、0℃でDCC (0.23mL、1.5mmol)を加え、反応混合物を、室温まで温めた。8時間後、反応を、aq.飽和NaHCO3でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。沈殿物を濾過し、粗アルデヒドを、精製せずに次の反応のために使用した。トルエン(6mL)中のZn(OTf)2 (1.45g、4.0mmol)及び(+)-N-メチルエフェドリン(0.79g、4.8mmol)の懸濁液に、室温でEt3N (0.61mL、4.8mmol)を加えた。2時間後、4-フェニル-1-ブチン(0.62mL、4.8mmol)を加えた。4時間後、トルエン(5mL)中の粗アルデヒドの溶液を加えた。反応混合物を、16時間、攪拌し、aq.飽和NaHCO3でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 60:40)によって精製して、14 (0.62g、0.80mmol、2つのステップのために80%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 50:50) Rf = 0.30; [α]22 D -0.116(c = 2.17、CHCl3); IR(薄膜)νmax = 3387(br)、3087、2981、2937、1716、1664、1597、1556、1454、1374、1276、1211、1156、1065、1039、916、856、807、786、733、698cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.53 (ddd, J = 20.4, 8.5, 0.7 Hz, 1H), 7.35 - 7.27 (m, 4H), 7.24 - 7.15 (m, 4H), 6.85 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.68 (dd, J = 8.1, 4.1 Hz, 1H), 5.60 - 5.50 (m, 3H), 4.89 - 4.78 (m, 2H), 4.57 (ddt, J = 12.0, 4.3, 2.0 Hz, 1H), 4.24 (dd, J = 4.4, 3.1 Hz, 1H), 3.78 (d, J = 3.3 Hz, 3H), 2.83 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.53 (td, J = 7.4, 2.0 Hz, 2H), 1.57 (s, 3H), 1.36 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 162.11, 162.08, 159.50, 150.87, 150.85, 141.07, 140.84, 140.30, 140.27, 136.90, 135.36, 135.29, 133.99, 133.95, 133.79, 133.64, 131.21, 129.37, 129.34, 128.41, 128.39, 126.40, 126.21, 126.18, 125.49, 125.44, 115.34, 115.32, 114.28, 114.24, 101.79, 101.74, 96.69, 96.37, 89.23, 89.19, 86.83, 86.73, 84.09, 83.93, 80.91, 69.46, 63.02, 62.99, 55.68, 34.72, 34.70, 27.16, 25.29, 20.87, 20.85; HRMS (ESI+) m/z C37H34N2O8NaCl4 [M + Na]の計算値797.0967, 実測値: 797.0994.
【0130】
ステップ2
CH2Cl2 (12.0mL)中で14 (227mg、0.292mmol)、15 (497mg、0.584mmol)、3Å分子篩(900mg)及びSrCO3 (431mg、2.920mmol)を攪拌した懸濁液に、0℃でAgBF4 (28.5mg、0.146mmol)及びNIS (131mg、0.584mmol)を加えた。24時間後、Et3N (2mL)を、反応混合物に加え、混合物を、シリカゲルパッド(ヘキサン/EtOAc 1:1)に通した。合わせた有機相を、真空中で濃縮した。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 90:10、その後80:20、その後70:30)によって精製して、16 (416mg、0.277mmol、95%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 67:33) Rf = 0.70; [α]21 D +0.100 (c = 2.09、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 2942、2866、2102、1743、1724、1675、1456、1278、1218、1099、1070、882、772cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.54 (dd, J = 23.1, 8.5 Hz, 1H), 7.32 - 7.27 (m, 4H), 7.24 - 7.16 (m, 4H), 6.84 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 3.7 Hz, 1H), 5.71 - 5.64 (m, 2H), 5.60 - 5.49 (m, 2H), 5.20 - 5.16 (m, 3H), 4.79 (ddd, J = 7.5, 6.5, 3.1 Hz, 1H), 4.64 (td, J = 5.9, 2.6 Hz, 1H), 4.57 (ddt, J = 11.4, 6.3, 1.9 Hz, 1H), 4.28 (dt, J = 6.2, 2.8 Hz, 1H), 4.19 (tt, J = 6.1, 3.0 Hz, 1H), 3.79 - 3.72 (m, 7H), 3.50 (ddd, J = 13.0, 7.6, 3.3 Hz, 1H), 3.35 (dd, J = 13.0, 3.4 Hz, 1H), 2.83 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.55 (td, J = 7.4, 1.8 Hz, 2H), 2.29 (t, J = 1.6 Hz, 2H), 2.24 (dd, J = 5.1, 2.1 Hz, 2H), 1.62 - 1.55 (m, 7H), 1.36 (d, J = 2.0 Hz, 3H), 1.08 - 1.00 (m, 54H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 175.6, 171.0, 170.9, 170.71, 170.70, 170.6, 162.2, 162.1, 159.5, 150.8, 150.7, 140.4, 140.19, 140.15, 140.13, 136.92, 136.91, 135.4, 135.3, 133.9, 133.8, 133.7, 131.2, 129.4, 129.3, 128.5 (2C), 128.4 (2C), 126.5, 126.4, 126.2, 126.1, 125.6, 125.5, 115.29, 115.25, 114.23, 114.22, 104.61, 104.55, 101.83, 101.82, 88.8, 88.2, 84.44, 84.35, 83.9, 81.4, 81.3, 80.6, 79.9, 76.5, 75.9, 75.8, 74.1, 71.8, 71.7, 71.4, 70.7, 69.6, 69.5, 68.9, 68.8, 59.97, 59.96, 55.7, 46.2, 46.0, 44.7, 44.6, 34.7, 34.51, 34.49, 32.7, 32.61, 32.57, 28.0, 27.38, 27.35, 27.3, 27.1, 25.34, 25.27, 20.9, 18.1 (12C), 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C74H106Cl4N5O15Si2 [M + H]の計算値1500.5978, 実測値: 1500.5992.
【0131】
ステップ3
EtOH/H2O (9:1、9.5mL)中で16 (286mg、0.19mmol)、NH4Cl (305mg、5.70mmol)及びZn (373mg、5.70mmol)を懸濁した溶液を、12時間、80℃で攪拌し、室温まで冷却した。沈殿物を、濾過し、合わせた有機溶液を、真空中で濃縮した。粗混合物を、精製せずに次の反応のために使用した。THF (9.5mL)中で粗混合物を攪拌した溶液に、飽和NaHCO3 (aq.、9.5mL)及びBoc2O (124mg、0.57mmol)を加えた。反応混合物を、室温で6時間、攪拌し、水性層を、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 85:15、その後80:20、その後67:33)によって精製して、17 (258mg、0.16mmol、2つのステップのために86%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 70:30) Rf = 0.30; [α]21 D +0.012 (c = 0.90、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 2941、2866、1720、1676、1456、1366、1278、1219、1100、1070、882、772cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.54 (dd, J = 19.9, 8.5 Hz, 1H), 7.33 - 7.27 (m, 4H), 7.24 - 7.16 (m, 4H), 6.85 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 5.72 - 5.64 (m, 2H), 5.60 - 5.48 (m, 2H), 5.26 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 5.17 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 5.13 - 5.08 (m, 1H), 4.82 - 4.76 (m, 1H), 4.65 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 4.51 (dd, J = 13.8, 6.0 Hz, 1H), 4.31 - 4.26 (m, 1H), 4.23 - 4.17 (m, 1H), 3.78 (d, J = 2.7 Hz, 3H), 3.74 (d, J = 6.9 Hz, 4H), 3.48 - 3.40 (m, 1H), 3.36 - 3.26 (m, 1H), 2.83 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.56 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.27 (t, J = 2.6 Hz, 2H), 2.23 (t, J = 3.0 Hz, 2H), 1.62 - 1.55 (m, 7H), 1.42 (s, 9H), 1.37 (d, J = 2.6 Hz, 3H), 1.11 - 0.99 (m, 54H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 159.5, 150.8, 136.9, 131.3, 129.3, 128.5 (2C), 128.4 (2C), 126.5, 126.1, 125.4, 115.30, 115.26, 80.0, 60.0, 55.7, 46.4, 46.2, 46.0, 44.83, 44.78, 42.5, 34.51, 34.49, 32.60, 32.55, 31.9, 29.7, 28.7, 28.4, 28.3, 27.4, 27.33, 27.29, 27.26, 27.09, 27.05, 25.4, 22.7, 22.6, 20.9, 18.1 (6C), 17.9 (6C), 14.1, 11.9 (3C), 11.8 (3C); HRMS (ESI+) m/z C79H116Cl4N3O17Si2 [M + H]の計算値1574.6597, 実測値: 1574.6609.
【0132】
ステップ4
EtOAc (50mL)及びMeOH (50mL)中で17 (258mg、0.16mmol)及びキノリン(38.7μL、0.33mmol)を攪拌した溶液に、リンドラー触媒(300mg)を加えた。H2ガスを、導入し、反応混合物を、室温、H2雰囲気下(600psi)で攪拌した。7時間、攪拌後、リンドラー触媒(150mg)を、反応混合物に加えた。反応混合物を、室温、H2雰囲気下(600psi)で、11時間、攪拌した。溶液を、珪藻土を通じて濾過し、1N HCl (aq.)で洗浄した。合わせた有機溶液を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗混合物を、精製せずに次の反応のために使用した。t-BuOH/アセトン(1:1、2.1mL)中で粗混合物及びNMO (192mg、1.64mmol)を攪拌した溶液に、室温でOsO4 (水中4%、1.04mL、0.16mmol)を加えた。反応物を40℃で2時間、攪拌した後、NMO (192mg、1.64mmol)及びOsO4 (水中4%、1.04mL、0.16mmol)を加えた。40℃で2時間、攪拌した後、反応溶液を、EtOAcで希釈し、飽和NaHCO3 aq./飽和Na2SO3 aq. (2:1)でクエンチした。不均一混合物を、30分間、攪拌し、次に、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗混合物を、シリカゲルパッド(ヘキサン/EtOAc 33:67)に通して、ジアステレオマー混合物として18を得た。この混合物を、更に精製せずに次の反応のために使用した。
【0133】
ステップ5
CH2Cl2 (0.7mL)中で18 (22.1mg、0.014mmol)及びNaHCO3 (11.5mg、0.14mmol)を攪拌した溶液に、0℃でPb(OAc)4 (12.1mg、0.027mmol)を加えた。反応混合物を、0℃で2時間、攪拌し、飽和NaHCO3(aq)でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥し、真空中で濃縮した。アルデヒド18の粗混合物を、精製せずに次の反応のために使用した。CH2Cl2 (0.4mL)中で(BnO)2P(O)-CH2-P(O)(OBn)OH (30.6mg、0.069mmol)を攪拌した溶液に、18の混合物のCH2Cl2 (0.3mL)溶液を加え、19を、その溶液に加えた。9時間後、反応物を、TMSCN (17.1μL、0.14mmol)に加え、室温で9時間、攪拌した。完了後、反応混合物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 80:20、その後60:40)によって精製して、21 (16.7mg、9.49μmol、2つのステップのために69%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 60:40) Rf = 0.40; [α]21 D +0.075 (c = 0.73、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 3317 (br)、2930、2865、1719、1675、1600、1462、1102、1071、882、772、683cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.68 (s, 1H), 7.49 (dd, J = 11.4, 8.8 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.32 (s, 1H), 7.19 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.86 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 6.50 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 5.73 (dd, J = 23.0, 8.0 Hz, 1H), 5.59 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 5.54 (d, J = 9.4 Hz, 2H),
5.42 (t, J = 10.1 Hz, 1H), 5.25 (s, 1H), 5.08 - 5.00 (m, 2H), 4.96 - 4.82 (m, 2H), 4.50 - 4.45 (m, 1H), 4.25 - 4.19 (m, 1H), 4.15 - 4.06 (m, 1H), 3.94 - 3.83 (m, 1H), 3.80 - 3.63 (m, 10H), 3.49 - 3.41 (m, 1H), 3.39 - 3.31 (m, 1H), 3.03 (dt, J = 12.0, 6.1 Hz, 1H), 2.71 - 2.61 (m, 1H), 2.54 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.51 - 2.45 (m, 1H), 2.29 - 2.17 (m, 4H), 1.67 - 1.51 (m, 10H), 1.41 (s, 9H), 1.28 (dd, J = 15.7, 8.1 Hz, 10H), 1.05 (s, 42H), 1.01 (s, 6H), 0.95 (s, 6H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.9, 159.5, 136.9, 136.8, 131.3, 131.2, 129.42, 129.36, 128.84 (2C), 128.82 (2C), 128.80 (2C), 126.4, 126.2, 125.1, 120.09, 120.05, 115.4, 115.31, 115.30, 114.84, 114.81, 84.90, 84.87, 80.84, 80.78, 80.2, 79.8, 79.4, 78.2, 76.1, 74.3, 60.0, 59.9, 55.8, 55.7, 52.0, 46.2, 46.0, 44.83, 44.77, 35.4, 32.56, 32.55, 31.8, 31.5, 29.7, 29.19, 29.16, 28.4, 28.3, 27.3, 27.2, 22.7, 18.1 (12C), 14.1, 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C88H135Cl4N6O18Si2 [M + H]の計算値1759.8126, 実測値: 1759.8135.
【0134】
ステップ6
EtOH/H2O (9:1、0.5 mL)中で21 (8.8mg、5.0μmol)を攪拌した溶液に、室温でHgCl2 (2.7mg、0.010mmol)及びアセトアルドキシム(3.0μL、0.050mmol)を加えた。室温で6時間、攪拌した後、反応混合物を、減圧下で濃縮した。残留物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、CHCl3で抽出した。合わせ有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 99.5:0.5、その後99.2:0.8、その後98.8:1.2)によって精製して、22 (7.9mg、4.5μmol、89%)を得た。TLC (CHCl3/MeOH 95:5) Rf = 0.40; IR (薄膜)νmax = 3335 (br)、2927、2865、1668、1601、1460、1099、1071、882、681cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.59 (dd, J = 19.5, 8.5 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.30 (t, J = 2.6 Hz, 1H), 7.24 - 7.18 (m, 1H), 7.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.50 (s, 1H), 5.84 (brs, 1H), 5.59 - 5.47 (m, 3H), 5.26 - 5.14 (m, 2H), 5.06 - 4.97 (m, 1H), 4.96 - 4.87 (m, 1H), 4.84 - 4.73 (m, 1H), 4.55 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 4.28 - 4.14 (m, 2H), 3.80 - 3.70 (m, 7H), 3.59 - 3.46 (m, 1H), 3.41 (brs, 2H), 2.83 (brs, 2H), 2.54 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 2.50 - 2.43 (m, 1H), 2.29 - 2.21 (m, 4H), 1.99 (brs, 2H), 1.65 - 1.53 (m, 10H), 1.43 (s, 9H), 1.35 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 1.32 - 1.24 (m, 10H), 1.05 (d, J = 3.2 Hz, 48H), 1.00 - 0.97 (m, 6H), 0.87 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 159.6, 159.5, 136.87, 136.85, 136.4, 135.2, 134.0, 133.64, 133.59, 131.3, 129.42, 129.40, 128.9 (2C), 126.2, 125.3, 120.2, 120.1, 115.4 (2C), 74.5, 60.0, 59.9, 55.73, 55.72, 46.2, 46.1, 46.0, 44.8, 35.4, 32.7, 32.6, 31.8, 31.5, 29.69, 29.67, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 29.24, 29.16, 29.09, 28.51, 28.49, 28.48, 28.45, 28.43, 28.42, 28.36, 28.33, 28.31, 28.28, 27.33, 27.30, 27.25, 27.2, 25.3, 22.7, 18.1 (12C), 14.1, 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C88H137Cl4N6O19Si2 [M + H]の計算値1777.8231, 実測値: 1777.8219.
【0135】
ステップ7
CH3CN (0.5mL)中で22 (5.8mg、3.3μmol)及びパラホルムアルデヒド(2.9mg、0.098mmol)を攪拌した溶液に、NaB(CN)H3 (6.2mg、0.098mmol)を加えた。室温で4時間、攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、CHCl3で抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 40:60)によって精製して、23 (5.5mg、3.1μmol、95%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 33:67) Rf = 0.60; [α]21 D +0.022 (c = 0.28、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 2932、2866、1718、1672、1601、1463、1101、1071、884cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.75 (d, J = 17.0 Hz, 1H), 7.56 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.30 (s, 2H), 7.20 (dt, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.85 (s, 2H), 6.51 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.28 (brs, 1H), 5.95 (d, J = 21.6 Hz, 1H), 5.84 - 5.78 (m, 1H), 5.74 (d, J = 23.3 Hz, 1H), 5.54 (s, 2H), 5.49 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 5.18 (brs, 1H), 5.11 (s, 2H), 5.02 (brs, 1H), 4.88 - 4.83 (m, 1H), 4.80 - 4.74 (m, 1H), 4.39 - 4.31 (m, 2H), 4.24 - 4.18 (m, 1H), 3.92 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.74 (q, J = 6.6 Hz, 4H), 3.68 - 3.63 (m, 1H), 3.50 - 3.40 (m, 2H), 3.37 - 3.30 (m, 1H), 2.83 - 2.74 (m, 1H), 2.68 - 2.59 (m, 1H), 2.54 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.49 (s, 3H), 2.37 (q, J = 8.0, 7.6 Hz, 2H), 2.29 - 2.20 (m, 4H), 1.98 - 1.88 (m, 2H), 1.62 - 1.52 (m, 6H), 1.40 (s, 9H), 1.36 (brs, 3H), 1.33 - 1.23 (m, 6H), 1.09 - 1.01 (m, 48H), 0.98 (s, 6H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 171.0, 162.0, 159.5, 157.1, 136.9, 131.3, 129.4, 128.7 (2C), 119.9 (2C), 115.3, 115.1, 114.2, 70.6, 70.1, 69.9, 67.1, 60.4, 60.1, 59.96, 59.95, 58.9, 55.8, 55.7, 54.4, 54.1, 46.22, 46.16, 46.1, 45.3, 44.9, 44.8, 44.7, 42.3, 41.2, 39.93, 39.86, 39.6, 39.04, 38.97, 35.4, 32.7, 32.64, 32.63, 32.62, 32.58, 31.9, 31.8, 31.7, 31.6, 31.53, 31.48, 29.69, 29.67, 29.6, 29.4, 29.22, 29.17, 28.50, 28.49, 28.4, 27.29, 27.28, 27.21, 27.17, 25.23, 25.20, 22.68, 22.66, 18.1 (12C), 14.1, 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C89H139Cl4N6O19Si2 [M + H]の計算値1791.8388, 実測値: 1791.8404.
【0136】
ステップ8
CH2Cl2 (0.70mL)中で23 (2.9mg、1.6μmol)を攪拌した溶液に、TFA (0.30mL)を加えた。反応混合物を、室温で2時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。H2O (0.2mL)中で粗混合物を攪拌した溶液に、TFA (0.8mL)を加えた。反応混合物を、40℃で4時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 80:20、その後CHCl3/MeOH/H2O/50%アンモニア水56:42:7:3)によって精製して、9 (1.2mg、1.6μmol、100%)を得た。TLC (n-ブタノール/エタノール/CHCl3/28%アンモニア水4:7:2:7) Rf = 0.55; [α]20 D +0.038 (c = 0.12、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3333 (br)、2926、2855、1676、1204、1135、840、801、722cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.82 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.12 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 5.76 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.70 (s, 1H), 5.18 (s, 1H), 4.58 (s, 1H), 4.28 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 4.21 - 4.16 (m, 3H), 4.14 - 4.07 (m, 3H), 3.61 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 3.21 (dd, J = 13.6, 3.4 Hz, 1H), 2.83 (td, J = 12.1, 11.7, 5.0 Hz, 1H), 2.57 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.46 (s, 3H), 2.46 - 2.40 (m, 2H), 2.00 - 1.89 (m, 1H), 1.79 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 1.63 - 1.55 (m, 2H), 1.37 - 1.23 (m, 10H), 0.91 - 0.87 (m, 3H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ 173.9, 172.3, 142.4, 140.2, 137.3, 129.7 (2C), 121.5 (2C), 112.1, 102.4, 92.5, 84.2, 80.5, 78.4, 76.4, 75.4, 72.0, 70.8, 68.5, 54.5, 39.5, 36.3, 35.0, 33.0, 32.8, 30.29, 30.26, 24.3, 23.7, 14.4; HRMS (ESI+) m/z C34H53N6O11 [M + H]の計算値721.3772, 実測値: 721.3761.
【0137】
(実施例2)
化合物10の合成
【化45】
【0138】
CH2Cl2 (0.70mL)中で22 (7.9mg、4.5μmol)を攪拌した溶液に、TFA (0.30mL)を加えた。反応混合物を、室温で1時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。H2O (0.2mL)中で粗混合物を攪拌した溶液に、TFA (0.8mL)を加えた。反応混合物を、40℃で2時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 80:20、その後CHCl3/MeOH/H2O/50%アンモニア水56:42:7:3)によって精製して、10 (2.4mg、3.4μmol、76%、95.8%純度)を得た。TLC (n-ブタノール/エタノール/CHCl3/28%アンモニア水4:7:2:7) Rf = 0.50; [α]21 D +0.538 (c = 0.24、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3302 (br)、2926、1672、1542、1412、1271、1131、1111、1062、819、721cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.77 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.74 (s, 1H), 5.73 (d, J = 12.6 Hz, 1H), 5.14 (s, 1H), 4.21 (dd, J = 4.7, 4.2 Hz, 1H), 4.19 - 4.13 (m, 2H), 4.11 (t, J = 4.7 Hz, 1H), 4.08 (s, 2H), 4.02 - 3.99 (m, 1H), 3.50 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 3.24 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 3.16 - 3.09 (m, 1H), 2.73 - 2.60 (m, 2H), 2.57 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.43 (dd, J = 7.4, 4.0 Hz, 2H), 1.86 (五重線, J = 7.2 Hz, 2H), 1.59 (五重線, J = 6.4, 5.7 Hz, 2H), 1.35 - 1.26 (m, 8H), 0.92 - 0.87 (m, 3H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ 177.2, 174.2, 166.1, 152.1, 142.6, 140.1, 137.4, 129.7 (2C), 121.5 (2C), 110.6, 102.7, 92.5, 85.2, 80.5, 76.4, 75.0, 73.0, 71.2, 64.3, 43.2, 36.3, 35.5, 33.0, 32.8, 30.3, 26.6, 23.7, 14.4; HRMS (ESI+) m/z C33H51N6O11 [M + H]の計算値707.3616, 実測値: 707.3624.
【0139】
(実施例3)
化合物11の合成
【化46】
【0140】
ステップ1
CH2Cl2 (1.0mL)中で18 (32.5mg、0.020mmol)及びNaHCO3 (16.9mg、0.20mmol)を攪拌した溶液に、0℃で、Pb(OAc)4 (17.9mg、0.040mmol)を加えた。反応混合物を、0℃で2時間、攪拌し、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、次に、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、CH2Cl2 (0.5mL)中に溶解し、CH2Cl2 (0.5mL)中で(BnO)2P(O)-CH2-P(O)(OBn)OH (45.0mg、0.10mmol)を攪拌した溶液に加えた。次に、20を、その溶液に加えた。6時間後、反応物を、TMSCN (25.2μL、0.20mmol)に加え、室温で12時間、攪拌した。完了後、反応混合物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、次に、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 80:20、その後60:40)によって精製して、24 (23.9mg、0.012mmol、2つのステップのために61%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 50:50) Rf = 0.40; [α]21 D +0.102 (c = 0.75、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 3342 (br)、2941、2866、1718、1675、1505、1464、1243、1164、1101、1071、883、772、688cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.49 (dd, J = 8.5, 4.3 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.22 - 7.11 (m, 7H), 6.94 - 6.88 (m, 5H), 6.86 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 6.50 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.25 - 6.16 (m, 1H), 5.73 (dd, J = 22.2, 8.0 Hz, 1H), 5.60 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 5.56 - 5.41 (m, 3H), 5.21 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 5.05
- 4.98 (m, 2H), 4.94 - 4.77 (m, 2H), 4.53 - 4.37 (m, 3H), 4.25 - 4.16 (m, 2H), 4.05 - 3.98 (m, 1H), 3.80 - 3.69 (m, 6H), 3.68 - 3.63 (m, 1H), 3.56 (dd, J = 17.3, 3.4 Hz, 1H), 3.48 (ddt, J = 11.6, 7.2, 4.0 Hz, 2H), 3.44 - 3.29 (m, 1H), 3.08 (dq, J = 9.5, 5.3, 4.8 Hz, 2H), 2.95 (dt, J = 11.4, 5.5 Hz, 1H), 2.47 (td, J = 12.0, 11.4, 5.7 Hz, 1H), 2.36 - 2.14 (m, 5H), 2.13 - 2.05 (m, 2H), 1.97 - 1.85 (m, 3H), 1.84 - 1.75 (m, 1H), 1.58 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 1.55 - 1.50 (m, 4H), 1.40 (s, 9H), 1.33 (d, J = 4.8 Hz, 3H), 1.28 - 1.23 (m, 3H), 1.08 - 1.02 (m, 42H), 1.01 (s, 6H), 0.94 (d, J = 2.1 Hz, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.4, 171.0, 170.9, 159.5, 155.8, 150.9, 150.7, 142.8, 136.9, 136.8, 135.3, 135.1, 134.13, 134.05, 133.86, 133.85, 133.78, 131.2, 131.1, 129.42, 129.37, 129.0, 126.4, 126.2, 125.5, 125.2, 122.5 (2C), 121.8, 119.3, 118.4, 116.8 (2C), 116.6 (2C), 115.4, 115.3, 114.71, 114.66, 106.4, 102.3, 102.2, 84.8, 80.7, 80.6, 79.9, 79.8, 79.3, 76.2, 74.32, 74.30, 72.9, 60.38, 60.35, 60.0, 59.9, 55.72, 55.71, 52.0, 46.6, 46.2, 45.9, 44.84, 44.77, 42.99, 42.96, 42.4, 41.2, 33.53, 33.49, 32.6, 32.5, 30.3, 28.4, 27.3 (2C), 27.17, 27.16, 27.1, 25.4, 18.1 (12C), 14.2, 14.1, 11.91 (3C), 11.90 (3C); HRMS (ESI+) m/z C94H135Cl4F3N7O20Si2 [M + H]の計算値1934.8007, 実測値: 1934.8021.
【0141】
ステップ2
EtOH/H2O (9:1、0.5mL)中で24 (15.4mg、8.0μmol)を攪拌した溶液に、室温でHgCl2 (4.3mg、0.016mmol)及びアセトアルドキシム(4.9μL、0.080mmol)を加えた。室温で6時間、攪拌した後、反応混合物を、減圧下で濃縮した。残留物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、CHCl3で抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 99.5:0.5、その後99.2:0.8、その後98.8:1.2)によって精製して、25 (15.3mg、7.8μmol、98%)を得た。TLC (CHCl3/MeOH 95:5) Rf = 0.30; [α]21 D +0.144 (c = 0.53、CHCl3); IR (薄膜)νmax = 3335 (br)、2940、2866、1719、1676、1505、1464、1367、1242、1162、1101、1070、882、681cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.53 (dd, J = 8.6, 5.1 Hz, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.28 - 7.22 (m, 2H), 7.21 - 7.12 (m, 6H), 6.91 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 6.86 (d, J = 2.6 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.94 (brs, 1H), 5.79 - 5.67 (m, 3H), 5.56 - 5.47 (m, 2H), 5.17 (brs, 1H), 5.06 (s, 1H), 4.96 (brs, 1H), 4.82 - 4.73 (m, 2H), 4.43 (tt, J = 7.8, 3.8 Hz, 1H), 4.39 - 4.28 (m, 3H), 4.21 (brs, 1H), 4.13 (brs, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.73 (q, J = 7.4 Hz, 5H), 3.67 (brs, 1H), 3.48 (ddd, J = 11.7, 7.2, 3.7 Hz, 2H), 3.41 - 3.28 (m, 1H), 3.17 (s, 1H), 3.09 (ddd, J = 12.2, 8.2, 3.3 Hz, 2H), 2.80 - 2.60 (m, 2H), 2.38 - 2.15 (m, 7H), 2.13 - 2.05 (m, 2H), 1.93 (ddd, J = 12.8, 8.0, 3.7 Hz, 2H), 1.85 - 1.79 (m, 2H), 1.54 (s, 3H), 1.42 (s, 9H), 1.34 (s, 3H), 1.04 (d, J = 2.8 Hz, 42H), 1.01 (s, 6H), 0.96 (s, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 162.1, 162.0, 159.6, 159.5, 156.2, 155.8, 150.9, 150.4, 142.80, 142.78, 136.88, 136.86, 135.23, 135.21, 133.9, 133.6, 131.33, 131.30, 131.29, 129.40, 129.37, 129.2, 129.1, 129.02, 128.98, 126.24, 126.22, 126.21, 125.40, 125.36, 124.5, 124.4, 123.20, 123.19, 122.5 (2C), 121.8, 120.1, 119.3, 116.8 (2C), 115.4, 80.4, 80.02, 79.99, 79.96, 79.95, 79.92, 79.87, 79.85, 79.83, 74.51, 74.50, 72.7, 70.4, 70.3, 69.5, 60.0, 59.9, 55.73, 55.72, 46.7, 46.19, 46.15, 46.13, 46.11, 46.10, 46.07, 46.0, 44.8, 34.7, 34.5, 32.61, 32.58, 30.2, 29.7, 29.64, 29.60, 28.50, 28.45, 28.42, 28.38, 28.34, 27.25 (2C), 27.19, 27.16, 25.31, 25.29, 25.27, 18.1 (12C), 14.1, 12.2, 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C94H137Cl4F3N7O21Si2 [M + H]の計算値1952.8112, 実測値: 1952.8098.
【0142】
ステップ3
CH2Cl2 (0.70mL)中で25 (5.3mg、2.7μmol)を攪拌した溶液に、TFA (0.30mL)を加えた。反応混合物を、室温で1時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。H2O (0.2mL)中で粗混合物を攪拌した溶液に、TFA (0.8mL)を加えた。反応混合物を、40℃で2時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 80:20、その後CHCl3/MeOH/H2O/50%アンモニア水56:42:7:3)によって精製して、11 (2.2mg、2.5μmol、91%)を得た。TLC (n-ブタノール/エタノール/CHCl3/28%アンモニア水4:7:2:7) Rf = 0.50; [α]21 D +0.375 (c = 0.30、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3352 (br)、2932、1677、1505、1243、1201、1136、801、722cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.78 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 9.0, 3.5 Hz, 4H), 7.00 (dd, J = 16.0, 8.6 Hz, 4H), 5.77 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 5.73 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.14 (s, 1H), 4.57 - 4.50 (m, 1H), 4.28 (s, 2H), 4.22 - 4.13 (m, 3H), 4.10 (dd, J = 8.6, 4.4 Hz, 1H), 4.07 - 3.98 (m, 2H), 3.52 - 3.46 (m, 3H), 3.44 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.17 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 3.14 - 3.02 (m, 3H), 2.60 (ddq, J = 18.4, 11.8, 6.9 Hz, 2H), 2.29 (td, J = 7.3, 2.8 Hz, 2H), 2.12 (dd, J = 14.5, 5.6 Hz, 2H), 1.93 - 1.73 (m, 4H), 1.39 - 1.25 (m, 2H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ 175.6, 166.2, 157.6, 152.0, 142.6, 131.2, 129.6 (2C), 123.6 (2C), 118.11 (2C), 118.07 (2C), 110.5, 102.7, 92.3, 85.3, 81.4, 80.4, 76.5, 75.1, 74.1 (2C), 73.0, 71.3, 64.4, 43.7, 43.6, 34.7, 31.5, 26.9; HRMS (ESI+) m/z C39H51F3N7O13 [M + H]の計算値882.3497, 実測値: 882.3512.
【0143】
(実施例4)
化合物12の合成
【化47】
【0144】
ステップ1
CH3CN (0.5mL)中で25 (7.8mg、4.0μmol)及びパラホルムアルデヒド(3.6mg、0.12mmol)を攪拌した溶液に、NaB(CN)H3 (7.5mg、0.12mmol)を加えた。室温で17時間、攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCO3 aq.でクエンチし、CHCl3で抽出した。合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 33:67)によって精製して、26 (4.7mg、2.4μmol、59%)を得た。TLC (ヘキサン/EtOAc 20:80) Rf = 0.50; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.57 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 19.7, 7.9 Hz, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.22 - 7.10 (m, 5H), 6.90 (d, J = 9.1 Hz, 4H), 6.85 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 6.25 (d, J = 27.7 Hz, 1H), 5.84 (dd, J = 13.4, 8.0 Hz, 1H), 5.55 (s, 1H), 5.48 (brs, 1H), 5.13 (brs, 1H), 5.09 (s, 1H), 4.99 (brs, 1H), 4.86 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 4.74 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.43 (tt, J = 7.5, 3.6 Hz, 1H), 4.36 - 4.28 (m, 4H), 4.20 (dd, J = 8.6, 3.5 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.74 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 3.69 - 3.63 (m, 2H), 3.51 - 3.42 (m, 4H), 3.29 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.08 (ddd, J = 12.2, 8.4, 3.4 Hz, 2H), 2.76 - 2.68 (m, 1H), 2.61 - 2.51 (m, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.29 - 2.14 (m, 5H), 2.12 - 2.05 (m, 2H), 1.96 - 1.83 (m, 4H), 1.55 (s, 3H), 1.39 (s, 9H), 1.37 (s, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.04 (d, J = 4.6 Hz, 42H), 1.01 (s, 6H), 0.99 (s, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 173.0, 172.3, 171.22, 171.15, 162.0, 159.5, 157.5, 155.8, 150.6, 142.83, 142.81, 136.9, 135.4, 131.3, 129.36, 129.35, 129.31, 129.30, 129.03, 128.99, 128.95, 128.93, 126.1, 122.5 (2C), 116.8 (2C), 116.6, 115.33, 115.29, 107.3, 106.9, 84.1, 79.30, 79.28, 79.26, 79.24, 79.23, 74.88, 74.87, 73.6, 72.83, 72.80, 70.61, 70.56, 69.8, 67.3, 60.39, 60.36, 60.0, 59.9, 55.70 (2C), 54.2, 46.6 (2C), 46.1, 46.0, 45.0, 44.9, 44.7, 43.1, 41.2, 32.61, 32.59, 30.33 (2C), 30.27, 30.25, 29.69, 29.67, 29.65, 29.60, 28.52, 28.45, 27.31, 27.28, 27.24, 27.23, 27.22, 27.15, 25.14, 25.11, 22.7, 18.1 (12C), 14.2, 14.1, 11.9 (6C); HRMS (ESI+) m/z C95H139Cl4F3N7O21Si2 [M + H]の計算値1966.8269, 実測値: 1966.8288.
【0145】
ステップ2
CH2Cl2 (0.70mL)中で26 (4.7mg、2.4μmol)を攪拌した溶液に、TFA (0.30mL)を加えた。反応混合物を、室温で2時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。H2O (0.2mL)中で粗混合物を攪拌した溶液に、TFA (0.8mL)を加えた。反応混合物を、40℃で4時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH 80:20その後、CHCl3/MeOH/H2O/50%アンモニア水56:42:7:3)によって精製して、12 (2.0mg、2.2μmol、92%)を得た。TLC (n-ブタノール/エタノール/CHCl3/28%アンモニア水4:7:2:7) Rf = 0.55; [α]20 D +0.246 (c = 0.24、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3276 (br)、2933、1675、1505、1465、1271、1243、1199、1111cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.84 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.5, 3.3 Hz, 4H), 7.01 (dd, J = 13.1, 8.6 Hz, 4H), 5.86 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.73 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.16 (s, 1H), 4.54 (tt, J = 7.3, 3.1 Hz, 1H), 4.30 - 4.25 (m, 3H), 4.26 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.22 - 4.05 (m, 6H), 3.70 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 3.52 - 3.44 (m, 2H), 3.09 (ddt, J = 12.3, 8.6, 4.3 Hz, 2H), 2.91 - 2.82 (m, 1H), 2.58 - 2.53 (m, 1H), 2.50 (s, 3H), 2.30 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 2.15 - 2.08 (m, 2H), 1.96 - 1.82 (m, 3H), 1.81 - 1.71 (m, 1H), 1.39 - 1.25 (m, 2H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ 175.3, 172.2, 157.6, 152.0, 142.4, 131.3, 129.7 (2C), 123.6 (2C), 118.12 (2C), 118.08 (2C), 111.9, 92.1, 84.4, 80.3, 78.4, 76.4, 75.4, 74.1 (2C), 71.5, 70.8, 68.3, 43.7, 39.7, 34.5, 31.5 (2C), 24.5; HRMS (ESI+) m/z C40H53F3N7O13 [M + H]の計算値896.3653, 実測値: 896.3640.
【0146】
(実施例6)
化合物8の合成
【化48】
【0147】
ステップ1
DMF/H2O (9:1、0.60mL)中で27 (32mg、0.06mmol)、NH4Cl (0.17g、3.17mmol)、NaHCO3 (80mg、0.95mmol)及び28 (72mg、0.32mmol)を攪拌した溶液に、EDCI (61mg、0.32mmol)を加えた。反応混合物を、室温で8時間、攪拌し、濾過し、真空中で濃縮した。粗混合物を、C18逆相HPLC [カラム: Luna(登録商標) (100Å、10μm、250×10mm)、溶媒: 5:95 MeOH:水中0.05M NH4HCO3、流速: 3.0mL/分、UV: 254nm]によって精製して、29 (30mg、0.061mmol、95%、保持時間: 6.7分)を得た。TLC (n-ブタノール/エタノール/CHCl3/28%アンモニア水4:7:2:7) Rf = 0.10; [α]22 D +0.168 (c = 0.26、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3298 (br)、2923、2852、1677、1632、1464、1405、1272、1112、1061cm-1; 1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.70 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.84 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.72 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 5.18 (s, 1H), 4.37 (dd, J = 5.6, 2.8 Hz, 1H), 4.26 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 4.20 (dd, J = 7.5, 4.8 Hz, 1H), 4.13 - 4.06 (m, 3H), 3.94 - 3.75 (m, 1H), 3.31 (d, J = 13.4 Hz, 1H), 3.12 - 3.06 (m, 1H), 3.01 (dt, J = 6.9, 3.4 Hz, 2H), 2.95 - 2.83 (m, 1H), 2.83 - 2.68 (m, 1H), 1.93 - 1.80 (m, 2H); 13C NMR (101 MHz, D2O) δ 166.19, 163.11, 162.76, 151.29, 142.38, 108.44, 101.89, 91.71, 83.25, 78.45, 74.44, 72.81, 71.54, 69.33, 62.08, 44.89, 42.07, 37.52; HRMS (ESI+) m/z C19H33N6O10 [M + H]の計算値505.2258, 実測値: 505.2272.
【0148】
ステップ2
H2O-MeOH-DMF (1:1:1、0.6mL)中で29 (8.1mg、0.016mmol)、Cu(OAc)2 (H2O中1.0M、0.048mL、0.048mmol)、及びNaOH (H2O中1.0M、0.048mL、0.048mmol)を攪拌した溶液に、Boc2O (8.7mg、0.040mmol)を加えた。反応混合物を、室温で4時間、攪拌し、濾過し、真空中で濃縮した。粗混合物を、C18逆相HPLC [カラム: Luna(登録商標) (100Å、10μm、250×10mm)、溶媒: 25:75 MeOH:水中0.05M NH4HCO3、流速: 3.0mL/分、UV: 254nm]によって精製して、30 (8.8mg、0.015mmol、91%、保持時間: 13.0分)を得た。TLC (CHCl3/MeOH/H2O/28%アンモニア水56:42:7:3) Rf = 0.10; IR (薄膜)νmax = 3329 (br)、3312 (br)、2979、2929、1678、1572、1508、1459、1392、1367、1279、1131、1115、1077、1057、1018cm-1; 1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.76 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.79 (s, 1H), 5.76 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.05 (s, 1H), 4.25 - 4.13 (m, 3H), 4.03 (dd, J = 10.5, 6.8 Hz, 3H), 3.52 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 3.36 - 3.31 (m, 2H), 3.29 (s, 1H), 2.97 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.65 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.82 - 1.73 (m, 2H), 1.34 (s, 9H); 13C NMR (101 MHz, D2O) δ 176.10, 161.92, 161.73, 160.96, 146.67, 140.44, 109.60, 102.04, 90.59, 90.39, 82.37, 81.77, 80.86, 79.92, 75.26, 74.88, 41.07, 38.32, 38.19, 27.69 (3C); HRMS (ESI+) m/z C24H41N6O12 [M + H]の計算値605.2782, 実測値: 605.2795.
【0149】
ステップ3
DMF-CH2Cl2 (1:1、0.2mL)中で30 (4.3mg、7.1μmol)及び31 (9.8mg、0.021mmol)を攪拌した溶液に、室温でEt3N (4.7μL、0.036mmol)を加えた。反応混合物を、室温で12時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAcその後CHCl3/MeOH/H2O/28%アンモニア水56:42:7:3)に通して、32 (6.4mg、6.4μmol、90%)を得た。TLC (CHCl3/MeOH/H2O/28%アンモニア水56:42:7:3) Rf = 0.55; [α]21 D +0.086 (c = 0.17、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3325 (br)、2930、2855、1678、1553、1505、1267、1242、1197、1163、1113、1033cm-1; 1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 7.92 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.21 - 7.16 (m, 4H), 7.01 - 6.95 (m, 6H), 5.82 (s, 1H), 5.75 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.10 (s, 1H), 4.53 (dd, J = 7.8, 4.0 Hz, 2H), 4.34 (s, 1H), 4.26 (s, 2H), 4.22 (s, 1H), 4.19 - 4.15 (m, 2H), 4.06 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 3.98 - 3.94 (m, 2H), 3.93 (s, 1H), 3.52 - 3.44 (m, 4H), 3.26 - 3.20 (m, 1H), 3.08 (ddd, J = 12.2, 8.6, 3.1 Hz, 4H), 2.15 - 2.06 (m, 2H), 1.91 - 1.82 (m, 2H), 1.44 (s, 9H); 13C NMR (101 MHz, MeOD) δ 173.09, 172.96, 158.76, 157.79, 157.63, 152.17, 152.09, 131.12, 130.54 (2C), 130.43, 129.63 (2C), 129.23, 123.85, 123.58, 121.89, 120.53, 120.32, 118.20, 118.11 (2C), 118.02, 117.15 (2C), 76.68, 74.01, 73.34, 71.10, 43.80, 31.62, 31.49, 28.89 (3C), 28.75, 23.77, 22.54; HRMS (ESI+) m/z C44H60F3N8O15 [M + H]の計算値997.4130, 実測値: 997.4168.
【0150】
ステップ4
CH2Cl2 (0.35mL)中で32 (6.4mg、6.4μmol)を攪拌した溶液に、TFA (0.15mL)を加えた。反応混合物を、室温で3時間、攪拌し、全ての揮発性溶媒を、真空中で蒸発させた。粗混合物を、DOWEX (50W×4)イオン交換樹脂によって精製した。樹脂を、MeOH/H2O (4:1)及びMeOHで洗浄した。粗生成物(TFA塩)を、MeOH (10mL)中に溶解し、DOWEX (50W×4)上で吸収した。樹脂を、MeOHで洗浄し、MeOH/50%アンモニア水(10:1)で溶離した。溶離物を、減圧下で濃縮し、結果として生じた水性溶液を、凍結乾燥して、8 (5.7mg、6.4μmol、100%)を得た。TLC (CHCl3/MeOH/H2O/28%アンモニア水56:42:7:3) Rf = 0.35; [α]20 D +0.037 (c = 0.05、メタノール); IR (薄膜)νmax = 3310 (br)、3077、2928、2853、1649、1614、1555、1515、1504、1267、1241、1222、1196、1162、1112、1037、1029cm-1; 1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 7.84 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.15 (m, 4H), 7.06 - 6.96 (m, 6H), 5.79 (s, 1H), 5.74 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.13 (s, 1H), 4.58 - 4.51 (m, 2H), 4.26 (s, 1H), 4.23 - 4.20 (m, 1H), 4.19 - 4.14 (m, 2H), 4.10 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 3.97 - 3.94 (m, 1H), 3.47 (d, J = 10.7 Hz, 2H), 3.40 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.23 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.07 (ddd, J = 12.5, 8.5, 3.6 Hz, 2H), 2.90 (dd, J = 13.3, 3.8 Hz, 1H), 2.80 (dd, J = 13.3, 7.2 Hz, 1H), 2.70 - 2.55 (m, 2H), 2.17 - 2.05 (m, 2H), 1.92 - 1.82 (m, 2H), 1.69 - 1.60 (m, 2H); 13C NMR (101 MHz, MeOD) δ 158.76, 157.63, 152.09, 143.91, 131.12, 130.54 (2C), 130.43, 129.63 (2C), 129.24, 123.85, 123.59, 121.89, 120.53, 120.32, 118.19, 118.11 (2C), 118.03, 117.16 (2C), 102.63, 76.69, 74.01, 73.35, 43.80, 31.62, 31.49, 28.92, 22.53; HRMS (ESI+) m/z C39H52F3N8O13 [M + H]の計算値897.3606, 実測値: 897.3629.
【0151】
(実施例5)
酵素阻害
芽胞調製
C.ディフィシル(ATCC43596)を、BHI寒天板に播種し、7日間、嫌気条件下、37℃でインキュベートした。芽胞を、滅菌蒸留水を使用して、寒天から収集し、文献に記載された手順に従って精製した。C.ディフィシルの栄養型を、30分間50℃で加熱して死滅させた。調製された芽胞を、4℃で滅菌蒸留水中に懸濁した。
【0152】
最小発育阻止濃度アッセイ
C.ディフィシル(ATCC43596)の単一コロニーを、BHI寒天板で増殖させた。種培養物及びより大きい培養物を、BHIブロスを使用して得た。フラスコを37℃で48時間、嫌気的にインキュベートし、中間対数期(OD600 0.4)まで培養した。阻害剤を、ポリエチレングリコール300-H2O (1/1、最終濃度100μLあたり1mg)に溶解した。この濃縮物を、全ての研究のための原液として使用した。細菌培養を、阻害剤の段階希釈物で処理し、48時間37℃でインキュベートした。MICを、570nm及び600nmで96ウェルプレートリーダー(Bio Tek社Synergy XT (Winooski、VT、USA))によって測定した。必要な場合、それぞれのウェル(96ウェルプレート)の生細菌を、BHI寒天板上のコロニー形成単位(CFU)よって測定した。吸光度測定もまた、570nm及び600nmでBio Tek社Synergy XT (Winooski、VT、USA)、96ウェルプレートリーダーを使用して実施した。
【0153】
芽胞生存率試験
試験化合物の溶液を、C.ディフィシル芽胞(2×105mL-1)を含有する懸濁液に加え、混合物を、24時間37℃でインキュベートした。試験化合物で処理した芽胞懸濁液を、遠心分離し(×4,700g)、ペレット剤を、滅菌蒸留水で洗浄し、0.1%タウロコール酸ナトリウム(発芽剤)を含有するBHI寒天上に撒き、嫌気条件下48時間37℃でインキュベートとした。結果として生じたコロニーを、数えた。
【0154】
WecAアッセイ
UDP-グルコサミン-C6-FITC (2mM原液、0.56μL)、MgCl2 (0.5M、4μL)、β-メルカプトエタノール(50mM、5μL)、CHAPS (5%、11.25μL)、トリス緩衝液(pH 8.0、50mM)、ウンデカプレニルホスフェート(4mM、1.4μL)、及び阻害剤分子(トリス緩衝液中0~100μg/mL)を、500μLエッペンドルフチューブに入れた。攪拌した反応混合物に、P-60 (10μL)を、加えた(反応混合物の総体積: 50μLトリス緩衝液で調整)。反応混合物を、37℃で4時間インキュベートし、n-ブタノール(150μL)でクエンチした。2つの相を、ボルテックスによって混合し、3分間10,000×gで遠心分離した。上の有機相を、逆相HPLCによってアッセイした。有機相(30μL)を、HPLC (溶媒: MeOH/0.05M aq. NH4HCO3 85:15、その後95:5の勾配溶離; UV: 485nm ;流速: 0.5ml/分;カラム: Kinetex 5μm C8、100Å、150×4.60mm)に注入し、C55-P-P-グルコサミン-C6-FITCのためのピークの面積を、定量化して、IC50値を得た。IC50値を、生成物阻害パーセンテージ対阻害剤濃度のプロットから計算した。
【0155】
MraYアッセイ
パークヌクレオチド-Nε-C6-ダンシル(2mM原液、1.88μL)、MgCl2 (0.5M、5μL)、KCl (2M、5μL)、トリトンX-100 (0.5%、5.63μL)、トリス緩衝液(pH 8.0、50mM)、ネリルホスフェート(0.1M、2.25μL)、及び阻害剤分子(トリス緩衝液中0~100μg/mL)を、500μLエッペンドルフチューブに入れた。攪拌した反応混合物に、P-60 (10μL)を、加えた(反応混合物の総体積: 50μLトリス緩衝液で調整)。反応混合物を、室温(26℃)で2時間インキュベートし、CHCl3 (100μL)でクエンチした。2つの相を、ボルテックスによって混合し、10分間25,000×gで遠心分離した。上の水性相を、逆相HPLCによってアッセイした。水相(10μL)を、HPLC(溶媒: CH3CN/0.05M aq. NH4HCO3 = 25:75; UV: 350nm;流速: 0.5mL/分;カラム: Kinetex 5μm C8、100Å、150×4.60mm)に注入し、脂質I -ネリル誘導体のためのピークの面積を定量化して、IC50値を得た。IC50値を、生成物阻害パーセンテージ対阻害剤濃度のプロットから計算した。
【0156】
【表2】
【0157】
化合物9~12のIC50値を、その他の既知の抗細菌剤と比較して測定した(Table 1(表2))。驚いたことに、FR-900493 (1)は、弱いMraY阻害活性(IC50 25.0μM)を示したが、中程度のWecA阻害活性(IC50 5.0μM)を示した。4つの化合物(9、10、11、及び12)が、抗C.ディフィシル活性を示すことが確認された。N-メチル類似体である9及び12は、弱い抗C.ディフィシル増殖阻害活性を示したが、MraY阻害活性は、FR-900493 (1)より30及び3倍超強力であった。非常に対照的に、de-N-メチル類似体である10及び11は、1より、MraY阻害活性において100及び300倍超大きかった。11のWecA阻害活性は、1より約15倍大きかったが、MraY酵素の阻害は、抗-C.ディフィシル活性に起因する可能性があり、弱いWecA阻害剤10は、C.ディフィシルの栄養状態に対する殺菌活性を示した。驚いたことに、11は、非常に強いMraY/WecA阻害剤であることが示され、その活性は、ツニカマイシン、既知のMraY/WecA阻害剤抗生物質より有意に良好であった。抗C.ディフィシル活性は、MraYの酵素阻害活性とよく相関し、11及び10は、それぞれC.ディフィシルに対して、MIC値3.25及び12.5μg/mLを示した(例えば、バンコマイシンについてMIC 2.5μg/mL)。
【0158】
C.ディフィシル芽胞についての9、10、及び11の結果を、24時間、これらの類似体(×2 MIC)でのC.ディフィシル芽胞の処理後、タウロコレート含有寒天板上の芽胞発芽のコロニー形成単位(CFU)を数えることによって判定した。C.ディフィシル芽胞は、ほとんどの既知の抗C.ディフィシル剤に耐性を示す。実際に、これらの研究において、バンコマイシン、メトロニダゾール、及びリネゾリドは、×5 MICでさえも芽胞発芽を阻害しなかった。それどころか、新規のMraY阻害剤9、10、及び11は、×2 MICでC.ディフィシル芽胞の生存率の低下を引き起こした(図3)。
【0159】
(実施例6)
WecA阻害
細胞毒性アッセイ
細胞毒性アッセイを、ベロサル腎臓(ATCC CCL-81)及びHepG2ヒト肝芽腫細胞(ATCC HB-8065)株を使用して実施した。ベロ又はHepG2細胞を、75cm2フラスコ内で培養し、10% FBS、ペニシリン、及びストレプトマイシンを含有するATCCによる配合イーグル最小必須培地を使用して、96ウェル細胞培養プレートに移した。0.78~200μg/mLの範囲の濃度でそれぞれの試験化合物の段階的に希釈されたアリコートを、細胞に加えた。ツニカマイシン、コリスチン又はトブラマイシン等の既知の毒性を有する対照化合物を、それぞれのプレートに含む。プレートを、インキュベートし、細胞毒性効果を、MTTアッセイによって判定した。
【0160】
AglHアッセイ
AglHアッセイを、WecAアッセイについて記載した手順の通り実施したが、WecA及びウンデカプレニルホスフェートの代わりに、MjAglH及びα-ジヒドロウンデカプレニルホスフェートを使用した。
【0161】
【表3】
【0162】
化合物11は、試験されたその他の化合物より優秀な物理化学的特徴を示した(Table 2(表3))。1) 11(22mg/mL)の水溶性は、10より200倍大きい、2) 11は、ベロ細胞に対してツニカマイシンよりおよそ450倍低い細胞毒性を示した(11についてIC50 56.8μM対ツニカマイシンについて0.12μM)、並びに3) 11は、溶血の相対的に低い誘発を示し(IC50 205.6μM)、その一方で、ツニカマイシンは、11よりはるかに低い濃度で血液細胞の溶解を引き起こした。興味深いことに、11は、10及びツニカマイシンより相対的に強いAglH阻害活性を示した(IC50 3.61μM)が、ベロ細胞対する11のIC50レベルは、10及びツニカマイシンのレベルより有意に高かった。化合物11は、C.ディフィシル、ウエルシュ菌(C. perfringens)、及び枯草菌(B. subtilis)に対する抗細菌活性(図4内の赤線)もまた示した。
【0163】
(実施例7)
癌細胞に対する細胞毒性
選択された分子を、MTT比色分析アッセイによって癌及び健康な細胞における細胞毒性(IC50)について試験した。結果を、Tables 3(表4)及びTable 4(表5)に示す。
【0164】
細胞毒性アッセイ
ベロ細胞について:ベロ細胞を、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、最少必須アミノ酸、ペニシリン-ストレプトマイシン及び10%ウシ胎仔血清を含有する、完全イーグル最小必須増殖培地(EMEM)で培養した。細胞の播種数は、400,000細胞/mL、最終の40,000細胞/ウェルであった。0.78から200μg/mLの範囲の濃度で、この細胞株へ分子を暴露して72時間後、培地を、黄色のテトラゾリウム染料MTTを加える前に、フェノールレッドなしの完全EMEMへ変化させた。生存率を、紫色のホルマザン生成物へのMTTの細胞内変換に基づいて、評価した。着色したホルマザン生成物の吸光度を、Bio Tek社Synergy HT分光光度計によって570nmで測定した。細胞数に対するMTT反応の直線性を、判定した。
【0165】
それぞれの細胞を、ATCCによる推奨培地で培養し、IC50のデータを、それぞれの細胞株で得た。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
化合物11は、試験された癌細胞株の多くで強い細胞毒性活性を示した。試験されたその他の化合物(ツニカマイシン、マイトマイシンC、及びタキソール)と違って、11は、健康な、非癌性ベロ細胞にほとんど細胞毒性効果がなかった。化合物11は、健康なHPNE細胞に対するPanc-1細胞についての選択的細胞毒性もまた示した(>1:350、IC50 HPNE/IC50 Panc-1)。
【0169】
AsPc-1及びPanc-1細胞に対する11の細胞毒性活性を、細胞生存率アッセイによってもまた測定した(図5)。ほとんど全てのAsPc-1細胞を、様々な濃度(1.77μM、3.54μM、及び14.17μM)の11の存在下、4日後死滅させた。同様に、生存Panc-1細胞のパーセンテージは、11の存在下(0.44μM、1.77μM、及び7.08μM)、約3日後ほぼゼロであった。
【0170】
11の抗癌効果は、IC50値0.26μMで、糖タンパク質生合成に必須の酵素、DPAGT1を阻害する能力に起因していると考えられる(図6)。DPAGT1を阻害することによって、β-カテニンのN-グリコシル化もまた、阻害する。β-カテニン過剰発現は、多くの癌に随伴していて、11は、0.39nMという低い濃度でβ-カテニンのN-グリコシル化を阻害することを示した。このDPAGT1阻害及びその後のN-グリコシル化阻害は、本発明の化合物の作用機構への更なる洞察を提供し得る。
【0171】
Panc-1細胞及びAsPc-1細胞に対する11の細胞毒性活性を、ボイデンチャンバー遊走アッセイ(図7及び図8)及びスクラッチ(創傷治癒)アッセイ(図9)によってもまた判定した。化合物11は、ゲムシタビン、タキソール、及びツニカマイシンより少ないPanc-1遊走細胞をもたらした(図7)。同様の結果を、AsPc-1細胞においても観察した(図8)。スクラッチアッセイにおいて、11での処理は、ゲムシタビンより少ないAsPc-1細胞遊走をもたらしたが、その一方で、Panc-1細胞遊走は、ゲムシタビンと同様であった(図9)。
【0172】
(実施例8)
化合物11及びパクリタキセル(タキソール)での相乗効果
相乗アッセイ
その他の癌薬物との11の相乗又は拮抗活性を、前に報告した微量希釈ブロスチェッカーボード技術によってインビトロで評価した。FIC指数を、以下の式に従って計算した。ΣFIC = FICA + FICB = CA/MICA + CB/MICB、式中、MICA及びMICBは、薬物A及びBのMICであり、CA及びCBは、組み合わせて使用された薬物A及びBの濃度である。これらの相互作用研究において、0.5未満のΣFICは、相乗活性を表す。結果を、Table5(表6)に示す。
【0173】
【表6】
【0174】
FIC指数は、相乗作用の良い尺度と考えられる。0.5未満のFIC値は、化合物の組合せが、化合物の効果の合計のみより大きい(つまり、相加効果より大きい)、相乗効果をもたらすことを指す。驚いたことに、11及びタキソールの5つの組合せの全てが、相乗効果をもたらした。11と組み合わせた場合、タキソールは、7nMという低い濃度で使用して、AsPc-1細胞を死滅させることができる。
【0175】
これらの結果は、臨床的観点から有益であり得る。Table3(表4)に示されている通り、11は、健康な細胞にほとんど効果がなく、一方でタキソールは、細胞が癌性であるかどうかに関係なく、身体の全ての分裂細胞に対して有毒である。Table5(表6)の化学的組合せの結果は、タキソールをより低い濃度で使用して、同程度の治療効果を達成し得ることを意味し、従って、タキソールのみでの癌治療に特有な副作用を減少させる。
【0176】
(実施例9)
化合物11及びゲムシタビンでの相乗効果
化合物11及びゲムシタビンの様々な組合せでAsPc-1細胞を処理する効果を、測定した。これらの実験を、実施例7と同じ方法で実施した。結果を、Table 6(表7)及びTable 7(表8)に示す。
【0177】
【表7】
【0178】
【表8】
【0179】
繰り返しになるが、試験された組合せは両方とも、FIC値によって示されている通り、相乗効果を生み出した。Table 7(表8)のデータは、11及びゲムシタビンがAsPc-1細胞に対して有する細胞毒性活性を更に実証していて、その中で11の0.0488μM及びゲムシタビンの0.977μMという低い濃度は、AsPc-1細胞死をもたらしている。
【0180】
ゲムシタビンは、急速に分裂するいかなる細胞も死滅させるので、ゲムシタビン治療のいくつかの副作用には、白血球細胞、血小板、及び赤血球細胞の減少、並びに毛髪脱落、悪心、及び嘔吐症状が含まれる。11及びゲムシタビンの組合せについて観察された相乗効果は、より低い濃度のゲムシタビンが、11と一緒に投与されて、より高い濃度のゲムシタビンのみの治療と同じ治療効果を生み出し得ることを示し、従って、ゲムシタビン治療に随伴する副作用のいくつかを緩和する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9