IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロオーエルイーディーの特許一覧

特許7334190光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク
<>
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図1A
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図1B
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図1C
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図2
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図3
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図4A
  • 特許-光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク 図4B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】光学表示システムを含む保護マスク、特にダイビング・マスク
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230821BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20230821BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230821BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C11/00
H04N5/64 511A
H04N5/74 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020567589
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 FR2019051359
(87)【国際公開番号】W WO2019234361
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】1854933
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519215762
【氏名又は名称】マイクロオーエルイーディー
【氏名又は名称原語表記】MICROOLED
【住所又は居所原語表記】7 Parvis Louis Neel BP 50 BHT Batiment 52 Grenoble Cedex 09 France
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルセラン - ディボン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ルノー - グ―ド、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シューラカン - バダルー、セドリック
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-169822(JP,A)
【文献】特開昭51-132600(JP,A)
【文献】国際公開第2005/093493(WO,A1)
【文献】特開2016-161670(JP,A)
【文献】特開2017-026704(JP,A)
【文献】特表2016-541017(JP,A)
【文献】特開2006-276884(JP,A)
【文献】特開2003-140081(JP,A)
【文献】特開平03-207172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0115010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
G02B 27/01
G02C 11/00
H04N 5/64
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔に装着されることが可能なフレーム(5)と、
前記フレームによって担持される窓(2)と、
光学表示システム(10)であって、
画像を投影することが可能な表示装置(12)、及び
前記表示装置から前記画像を受け取ってそれを送ることが可能なプリズム(20)
を含む、光学表示システム(10)と、
を備える、保護マスク(1)、特にダイビング・マスクであって、
前記プリズム(20)が、第1の能動面(21)及び第2の能動面(22)、並びに基底面(23)を有し、
前記窓が、内側面(3)上に反射領域(30)を有する平坦な窓であり、
前記表示装置及び前記プリズムが、
前記表示装置が前記プリズム(20)の前記第1の能動面(21)上に前記画像を投影し、
前記画像が前記プリズムを通過して前記プリズム(20)の前記基底面(23)により前記第2の能動面(22)に向かって反射され、
前記画像が前記プリズム(20)の前記第2の能動面(22)から前記窓(2)の前記反射領域(30)上に投影され、
前記窓が前記使用者の眼(41)内に前記画像を送り、
前記プリズム(20)と前記反射領域(30)との間の光学経路上にレンズ(28)が配置される
ように、構成され且つ配置される
ことを特徴とする、保護マスク(1)。
【請求項2】
前記第1及び第2の能動面(21、22)のうちの少なくとも一方が凸面であることを特徴とする、請求項1に記載の保護マスク。
【請求項3】
前記第1及び第2の能動面(21、22)のうちの少なくとも一方が非球面であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の保護マスク。
【請求項4】
前記第1及び第2の能動側方面(21、22)が、基底面(23)から延在し、且つ、前記プリズム(20)の頂部(24)において一緒になることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項5】
前記プリズムが、その頂部(24)により前記窓(2)の前記内側面(3)に固定されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項6】
前記プリズムが、前記第1及び第2の能動側方面(21、22)の他に、少なくとも1つの、また具体的には2つの他の非能動側方面(25、26)を備え、各非能動側方面が、前記基底面(23)から延在し、且つ、前記プリズムの頂部(24)又は頂縁部又は頂面において一緒になることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項7】
前記使用者の前記眼(41)のうちの一方の眼の前に配置される単一の光学表示システム(10)、又は、前記使用者のそれぞれの眼の前にそれぞれが配置される2つの光学表示システム(10)を備えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項8】
前記表示装置(12)及び前記プリズム(10)のうちの一方が、前記窓(2)の前記内側面(3)に固定され、前記表示装置及び前記プリズムのうちのもう一方が、前記フレーム(5)に固定されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項9】
前記レンズ(28)が、平凸型のものであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項10】
ダイビング・マスク、独立式呼吸保護マスク、パイロット・マスク、溶接工マスク、又は飛び散りから身を守るためのマスクであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の保護マスク。
【請求項11】
使用者の顔に装着されるのに適したフレームと前記フレームによって担持される窓とを備える請求項1から10までのいずれか一項に記載の保護マスクのための単体光学系(42)であって、
前記光学表示システムが、
画像を投影することが可能な表示装置(12)と、
前記表示装置から前記画像を受け取り且つ前記画像を前記窓の方向に送ることが可能なプリズム(20)であって、第1及び第2の能動面を有する、プリズム(20)と、
前記プリズム(20)と前記反射領域(30)との間の前記光学経路上に配置されたレンズ(28)と、
前記マスクの前記フレーム又は前記窓への取付けのための手段と、
を備える、単体光学系(42)。
【請求項12】
前記レンズが、密閉スクリーンの機能を果たす、請求項11に記載の単体光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の分野に関し、より詳細には、光学表示システムに関する。本発明は、保護マスクに組み入れられた光学表示システム(「スマート・マスク」と呼ばれる)に関する。そのようなマスクは、具体的には、ダイビング・マスク又は保護マスクであり得る。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイビング・マスクは、高圧に耐えなければならず、したがってかなり嵩張る。このことが、外部環境の視界を制限する。視覚システムをダイビング・マスクに組み入れることも、空間要求の制約を受ける。HUDビジョンと呼ばれる、ヘッド・アップ表示装置により情報又は画像を表示することを可能にするダイビング・マスクの様々なモデルが知られている。1つの実例は、市販されているOceanic Datamask(商標)システムである。多数の特許文献が、様々な構成を提案している。これらの解決法は、通例、かなり嵩張り且つ重いダイビング・マスクにつながり、これは、通常の使用には適さない特定の目的を示す。
【0003】
文献米国特許第6447115号及び米国特許第7038639号(米国海軍)、並びに米国特許第8082922号(Drager Safety)は、マスクの底隅部に表示システムを位置決めすることを提案している。このシステムは、表示装置が使用者の視界を制限するので、特に嵩張る。この構成の光学経路は、表示装置上の直接視野である。類似の幾何形状により、文献WO2011/044680及びWO2011/085501(Intel)は、視界へのシステムの影響及びマスクそれ自体のサイズへの影響を軽減する、小型化された表示装置を使用することを提案している。WO90/01717(GEC Marconi)及び米国特許第4,081,209号(Elliott)は、凹面窓上に画像を投影する内部表示装置を含むパイロット・ヘルメットを説明している。
【0004】
表示システムによるマスクの内側の妨害は、表示装置をマスクの外側にオフセットすれば回避することができる。これは、米国特許第9001005号及び米国特許第9069166号(Intel)で説明されている。どちらの場合でも光学経路は同じであり、即ち、表示装置の直接視である。そのような外部表示装置もまた、視界を制限し得る。さらに、画像は、窓を通過して回折及び反射を経験し、それにより、画像の鮮明さ及び輝度が弱められ得る。いかなる場合でも、外部表示システムは、外部環境(ヘルメットのタイプに応じて、水圧、熱、煙)に耐えることができるように保護されなければならない。このことが、機械的水準及び電気的水準の両方においてシステムをかなり複雑なものにする。
【0005】
外部表示装置を含む別のシステムが、DE102011082208(Carl Zeiss)で説明されている。この文献は、表示装置及びプリズムを外部に有するダイビング・ゴーグルを提案している。画像は、マスクの窓の内側での多重反射により、使用者の眼に向いた窓の面に伝えられる。画像の伝播の領域は、実装するのが比較的複雑な光学層の蒸着による、窓の特異的な局所処理から得られる。
【0006】
最後に、WO2002/00299(Comsonic Trilithic)で説明されているダイビング・マスクは、窓上に配置された、角柱状突出部を組み込んだオフセット表示装置を説明している。画像は、プリズム上に投影され、且つ、使用者の眼に向かって直接送られる。
【0007】
マスクの外側に配置された光学表示システムの利点は、それらがマスクの内側の空間をふさがないことである。そのような光学表示システムの欠点は、水圧及び機械的損傷に対して光学表示システムを密封する必要があるので、それらがかなり嵩張り且つ重いことである。そのため、そのような光学表示システムは、マスクの外側を通した使用者の視界を制限する。さらに、使用者の眼内への直接投影は、眼による焦点調節の労力を必要とし、それは目の疲労の一因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6447115号
【文献】米国特許第7038639号
【文献】米国特許第8082922号
【文献】WO2011/044680
【文献】WO2011/085501
【文献】WO90/01717
【文献】米国特許第4,081,209号
【文献】米国特許第9001005号
【文献】米国特許第9069166号
【文献】DE102011082208
【文献】WO2002/00299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目標は、上述された従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善することである。
【0010】
本発明の別の目標は、頑丈且つコンパクトであり且つマスクの内側に完全に配置されるヘッド・アップ表示システムを提案することである。
【0011】
別の目標は、使用者の視界内に配置される画像を生成することが可能な、良好な画質を保証する単純な表示システムを提案することである。
【0012】
本発明の別の目的は、平坦な窓とともに使用され得る表示システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、問題は、2つの光学的構成要素即ちOLEDタイプの超小型表示装置及びプリズムを含むコンパクトな表示システムによって解決される。後者は、超小型表示装置によって受信された画像を拡大し、且つ、その画像をマスクの窓の内側面上に投影する。使用者は、窓上の反射における画像を、直接にその視界に見る。ダイビング・マスクで使用する場合、ガラスの面の光学指数(おおよそ1.46)は水の光学指数(おおよそ1.34)に比較的よく適応し、したがって寄生反射(parasitic reflection)が認められないので、マスクの窓の特定の光学的処理は必要とされない。
【0014】
本発明の第1の対象は、
- 使用者の顔に装着されることが可能なフレームと、
- 前述のフレームによって担持される窓と、
- 光学表示システムであって、
・ 画像を投影することが可能な表示装置、及び
・ 前述の表示装置から前述の画像を受け取ってそれを送ることが可能なプリズム
を含む、光学表示システムと、
を備える、保護マスク、特にダイビング・マスクであって、
- プリズムが、第1及び第2の能動面、並びに基底面を有し、
- 窓が、内側面上に反射領域を有する平坦な窓であり、
- 前述の表示装置及び前述のプリズムが、
・ 前述の表示装置が、プリズムの第1の能動面上に前述の画像を投影し、
・ 前述の画像が、プリズムを通過して、プリズムの基底面により第2の能動面に向かって反射され、
・ 画像が、プリズムの前述の第2の能動面から前述の窓の前述の反射領域上に投影され、
・ 前述の窓が、使用者の眼内に前述の画像を送り、
・ プリズムと前述の反射領域との間の光学経路上にレンズが配置される
ように構成され且つ配置される
ことを特徴とする、保護マスク、特にダイビング・マスクである。
【0015】
プリズムの2つの能動面は、表示装置の画像を拡大し、且つ、使用者からある程度の距離のところに虚像を形成することが好ましい。
【0016】
前述の第1及び第2の能動側方面は、基底面から延在し、且つ、プリズムの頂部において一緒になる。前述のプリズムは、典型的には、前述の第1及び第2の能動側方面の他に、少なくとも1つの、また具体的には2つの他の非能動側方面を備え、各非能動側方面は、前述の基底面から延在し、且つ、前述の頂点又は頂縁部又は頂面において一緒になる。
【0017】
1つの実施例では、前述の第1及び第2の能動面のうちの少なくとも一方は、凸面且つ/又は非球面である。
【0018】
別の実施例では、表示装置及びプリズムのうちの一方は、窓の内側面に固定され、表示装置及びプリズムのうちのもう一方は、フレームに固定される。プリズムは、その頂部により窓の内側面に固定され得る。
【0019】
マスクは、使用者の眼のうちの一方の前に配置される単一の光学表示システム、又は、使用者のそれぞれの眼の前にそれぞれ配置される2つの光学表示システムを備え得る。2つの光学表示システムを使用者の同じ眼の前に配置することも可能である。
【0020】
マスクの光学系の前述のレンズは、両凸、平凸、平凹、両凹、又はメニスカス型のものであり得る。例えばダブレットを形成するレンズ群を使用することも可能である。
【0021】
本発明の別の対象は、使用者の顔に装着されるのに適したフレームと前述のフレームによって担持される窓とを備える保護マスク、特にダイビング・マスクのための単体光学系であって、
前述の光学表示システムが、
- 画像を投影することが可能な表示装置と、
- 前述の表示装置から前述の画像を受け取り且つ前述の画像を窓の方向に送ることが可能なプリズムであって、第1及び第2の能動面を有する、プリズムと、
- プリズムと前述の反射領域との間の光学経路上に配置されたレンズと、
- 前述のマスクのフレーム又は窓への取付けのための手段と、
を備える、単体光学系である。
【0022】
前述のレンズは、光束の収束及び補正に関する光学的機能を有する。前述の単体光学系は、有利には水密である。前述のレンズはまた、単体光学系の密閉スクリーンの機能を果たしてもよい。
【0023】
図1から4は、本発明の実施例を示す。これらの図は、実例として与えられるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明によるマスクの実施例の片側の正面図である。
図1B】本発明によるマスクの実施例のもう片側の正面図である。
図1C】本発明によるマスクの実施例の図1Aと同じ側の正面図である。
図2】光学経路を示さない、図1によるマスクの光学表示システムの概略図である。
図3】プリズムと窓との間にレンズを含む、別の実施例による光学表示システムの概略図である。
図4A図3の光学表示システムを使用するマスクの正面図である。
図4B】光学表示システムを透過させて示す内側の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書では、以下の符号が使用される。
【表1】
【0026】
図1は、本発明によるマスクの典型的な実施例を示す。図1Bは、そのフレームとマスクを水密にするための手段とを含むマスクの一般的態様だけを(概略的に)示すが、図1A及び1Cは、マスクの光学的構成要素だけを、マスクのフレームを含まずに(概略的に)示す。
【0027】
マスク1は、フレーム5によって保持された窓2を備え、それらは全て図1Bに単独で見ることができる。図1は、使用者の頭部40に固定するための手段などの、マスクの他の基本的であるが知られている要素を示さない。マスクを水密にするための手段が概略的に描写されており、且つ、参照番号7を有する。窓2は、内側面3及び外側面4を有し、そのどちらも図2に見ることができる。内側面3は、平坦であるか又は僅かに湾曲していてもよい。同様に、外側面4は、平坦であるか又は僅かに湾曲していてもよい。この実施例によるフレーム1は、鼻のための通路6を有する。これは、このようにすると窓2が使用者の眼41により接近して配置されるので、有利である。しかし、本発明は、鼻のための通路を有さないマスクに対して実装されてもよい。
【0028】
本発明によれば、マスク1は、図1A及び1Cに単独で見ることができる光学表示システム10を有する。このシステム10は、マスク1の内側に配置される。システム10は、表示装置12及びプリズム20を備える。本発明による光学表示システム10は、様々なやり方で位置決めすることができ、図1A及び1Cは、2つの可能性を示す。図1Aでは、表示装置12は、プリズム20とともに水平軸上に配置されているが、図1Cでは、表示装置12は、プリズム20とともに水平軸に近い軸上に配置されている。どちらの場合でも、投影領域30は、窓2の内側面3上に配置される。
【0029】
表示装置12は、有利には、それ自体が知られているOLED(有機発光ダイオード:organic light emitting diode)タイプの超小型表示装置である。図2によりはっきりと見ることができるプリズム20は、平面図において矩形の形状である基部又は基底面23を備える。プリズムの側方面は、基部23から延在し、且つ、頂縁部24(「屈折性縁部(refringent edge)」と呼ばれる)において一緒になる。能動面又は光学表面21及び22と呼ばれる2つの第1の対向する面、並びに非能動面25及び26と呼ばれる2つの他の対向する面が見られる。非能動側方面25、26は、本発明による光学表示システムの光学的効果に関与しない。
【0030】
有利には、前述の能動面21、22のうちの少なくとも一方、好ましくは両方は、平坦ではなく、凸面又は凹面である。これは、画像の拡大をもたらす。さらに好ましくは、これらの凸状光学面21、22のうちの少なくとも一方は、非球面である。これは、光学収差を補正することを可能にし、且つ、画像の歪みを減少させる。
【0031】
図1及び2による実施例では、光学表示システム10は、他のいかなる光学的構成要素も備えない。
【0032】
図2に概略的に示されるように、表示装置12及びプリズム20は、表示装置12(図2では光ビームの出発点としてのみ示されており、且つ、窓2の内側面3に接近して配置されている)がプリズム20の第1の凸状面21上にその画像を投影するように、また、プリズム20が基底面23上で反射された画像をその第2の凸状面22から窓2の内側面3の反射領域30上に投影するように、構成され且つ配置される。プリズム20の内側において、画像は、第1の能動面21から基底面23に向かって屈折され、次いで第2の能動面22に向かって基底面23上で反射される。第2の能動面22から窓2の内側面3上に投影された画像は、使用者の眼41内に反射される。2つの凸状隣接面21、22を含むプリズム20の使用は、画像の拡大をもたらす。
【0033】
図1による実施例では、本発明によるマスク1は、使用者の眼41のうちの一方の前に配置された単一の光学表示システム10を有する。図に示されていない別の実施例によれば、マスク1は、使用者の各眼41(の前)に1つの、2つの光学表示システム10を備える。図に示されていないさらに別の実施例によれば、マスクは、使用者の同じ眼(の前)に2つの光学表示システムを備える。この場合、前述の光学系のうちの一方は、典型的には窓の頂部に配置され、もう一方は、窓の底部に配置される。
【0034】
一般に、表示装置12は、(図1におけるように)窓2の内側面3に固定されるか、又は、フレーム5上に固定され得る(図に示されていない変形)。プリズム20は、適切な固定手段を使用して、窓2の内側面3に、又はフレーム5に固定され得る。これらの2つの場合のそれぞれにおいて、前述の固定手段はまた、表示装置12を固定し得る。この変形では、表示装置12及びプリズム20は、共通の固定手段により一緒に保持され且つ窓2の内側面3上に又はフレーム5上に固定される、単一のブロックを形成し得る。別の変形では、プリズム20は、プリズムの頂部24により、窓2の内側面3に固定される。プリズム20の形態に応じて、この頂部24は、頂点、頂縁部(屈折性)、又は頂面であり得る。後者の変形では、プリズム20は、光学表示システム10の空間要求を最小限に抑えるために、窓2に可能な限り接近し得る。プリズムの頂部24が窓2の内側面3に接触するという事実は、必ずしもプリズム20の機能を妨げない。
【0035】
上述のように、プリズム20の側方面25、26は、プリズム20の光学的効果及び光学表示システムの光学的効果に関与しない。側方面25、26は、平坦、凹面、又は凸面であり得る。側方面25、26は、黒色に塗られ、且つ/又は、プリズム20がマスク1に取り付けられるときにプリズム20を位置決めするための支持面若しくは機械的把持面としての役割を果たし得る。別の実施例では、前述の固定手段は、プリズム20の側面25、26のうちの少なくとも一方に取り付けられる。
【0036】
図3は、本発明による光学表示システムの別の実施例を概略的に示し、この実施例では、平凸であり得るレンズ28が、プリズム20と窓2の内側面3との間の光学経路上に配置される。それにより、仮想画像の焦点調節を改善することができる。表示装置12及びプリズム20が単体システム42を形成する場合、前述のレンズ28は、密閉スクリーンの役割を果たすことができる。図3における実施例では、プリズムの2つの光学表面が、窓2の内側面3に向かって配向された単一の湾曲表面27を形成し、このプリズムが、いかなる屈折性縁部も有さないことが、留意されるであろう。本発明の全ての実施例において典型的には非球面である単一の湾曲表面により2つの光学表面が表わされるそのようなプリズムを使用することが可能であることは、明白である。
【0037】
図4は、図3に関連して説明されたような単体システムの2つの異なる図、即ち、マスクの内側の図(図4A)及び外側の図(図4B)を示す。単体システム42(その光学的構成要素を示すために、透過して示されている)を見ることができる。レンズ28は、密閉スクリーンを形成する。この密閉スクリーンは、窓2から短距離のところに配置される。使用者の瞳孔41の3つの異なる位置が示されている。この単体システムは、窓2に、又はフレーム6に固定され得る。
【0038】
本発明は、知られたタイプの任意のマスクとともに、また具体的にはダイビング・マスク及び保護マスクとともに実装され得る。これらのマスクは、少なくとも1つの窓2を備え、且つ、フレーム5を備え得る。それらは、鼻6のための通路を有し得るか、又は有し得ない。第1の場合では、窓2は、第2の場合におけるよりも使用者の眼41に近接し、また、光学表示システム12のサイズを減少させることを可能にする本発明は、いっそう有利になるであろう。保護マスクは、例えば、ダイビング・マスク、独立式呼吸マスク(self-contained respiratory mask)、パイロット・マスク、又は飛び散りから身を守るマスクである溶接工マスクであり得る。窓2が画像の歪みを生じさせない平坦なものであるマスクが、好ましい。
【0039】
本発明によるマスクは、使用者が見ることができまた窓を通した使用者の通常の視野上に重ね合わせられる、1つ若しくは複数の色の英数字形態の及び/又は画像の形態の、あらゆるタイプの情報を表示することを可能にする。この情報は、様々な性質のものであってよく、且つ、様々な性質のソース又はセンサによって供給されてもよく、且つ、例えば、時間の測定値(具体的には、現在時刻、時点ゼロからの経過時間、事象が起こるまでの残り時間)、空間の測定値(具体的には、潜水深さ、コンパス方位、位置)、使用者によって持ち運ばれる予備資源量(具体的には、圧縮空気、酸素、電気エネルギー)、環境(具体的には、外部温度、COレベル、酸素レベル、COレベル、障害物に対する距離、可視性、使用者によって持ち運ばれるカメラからの画像)、外部送信機から受信される情報及び命令(例えば、使用者の目に見えない危険に関する情報、使用者に与えられる命令)、グラフ(例えば、潜水曲線、減圧曲線)に関連し得る。
【0040】
本発明によるマスク1は、多くの利点を有する。窓2の内側面3上への画像の投影により、投影される画像は使用者の自然な視野上に重ね合わせられるので、焦点調節の労力は使用者に必要とされない。光学表示システムのプリズム20は、光学的機能の大半を集中する。プリズム20は、画像を拡大し、且つ、反射領域30上に画像を投影することを可能にし、この反射領域30は、良好な視覚的快適性とともにマスクの使用者によるその認知を可能にするのに十分な大きさである。光束は、反射面の乱れの危険性を伴うことなしに、プリズムにおいて曲げられ、画像は、2つの非平面の光束入射面及び光束射出面により、集中され且つ補正される。したがって、光学表示システムは、非常にコンパクトであり、結果的に、マスクの着用者の全体的な視野は、縮小されない。したがって、使用者の直接視は、光学系によりごく僅かにしか邪魔されない。マスク1の内側に光学系を据え付けることは、眼41と窓2との間の距離を増大させることを必要としない。
【0041】
本発明による光学表示システムは、特に単純であり、且つ、平坦な窓を備えた標準的なタイプのダイビング・マスクに直接取り付けられ得る。マスクを改造する必要はなく、また、マスクの保護機能及び水密機能は維持される。窓は、能動的な光学的機能を有さずに、単純に鏡面反射表面としての役割を果たす。窓が湾曲しているマスクと比較すると、表示システムを追加することは、曲り具合の精密な制御も、窓の曲り具合に対する表示システムの個別の調整も必要としない。本発明による表示システムは、特にコンパクトであり、且つ、接着結合により平坦な窓に容易に固定することができる(接着結合は、湾曲した窓の場合、より困難であり得る)。
【0042】
1つの実施例では、窓の内側面に機能性被覆が追加される。この被覆は、知られたタイプのものであってよい。この被覆は、光学的機能を有する被覆、例えば、広帯域反射被覆(金属層又は誘電体層など)、又は表示装置の放射波長に集中される狭帯域反射被覆であってよい(典型的には、誘電体層。被覆は、これらの光学的機能のうちの1つと、1つ又は複数の他の機能、具体的には耐曇り機能、引っ掻き傷防止機能、若しくは油はじき機能とを組み合わせる被覆であってもよい。
【0043】
OLEDを基礎とする超小型表示装置を備えた光学表示システムの電力消費量は、非常に減少される。表示装置の電気供給源は、電池であってよい。電気供給源は、例えば光学ユニット内に位置決めされ得る。
【0044】
本発明の光学表示システムは、既存のマスクにうまく嵌まることができ、また、マスクの設計を変更することは通常必要とされない。これらのマスクは非常に特殊な製品であり、マスク、マスクの窓、又はマスクのシェルに対する任意の実質的な修正はかなりの費用を生じさせるはずなので、上記のことは、重要な利点となる。
【0045】
図に示されていない変形では、本発明による単体システム12はまた、アドレス指定マイクロプロセッサ及び/又は再充電可能電流源を備え、再充電可能電流源は、表示装置に、また存在するのであればマイクロプロセッサに給電する。
【0046】
プリズム20は、例えば知られた成形技法又は射出技法により、適切な透明プラスチック材料から作製され得る。例えば成形ガラスから作られた、研磨された能動面を有するガラス・プリズムを使用することも可能である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B