(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】高圧縮性オープンコード
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20230821BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20230821BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 L
B60C9/20 E
(21)【出願番号】P 2021504261
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070032
(87)【国際公開番号】W WO2020021006
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】コルニーユ リシャール
(72)【発明者】
【氏名】バルゲ アンリ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/089990(WO,A1)
【文献】特表2013-527887(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189073(WO,A1)
【文献】特開平06-346386(JP,A)
【文献】中国実用新案第2736404(CN,Y)
【文献】特開平10-035215(JP,A)
【文献】国際公開第2007/128335(WO,A1)
【文献】特表2017-535692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋巻き金属フィラメント状要素(54)の単層(52)を含むコード(50、50’)であって、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)が、コード(50、50’)が実質的に直線の方向に延びる時に、該実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線(A)の周りに螺旋経路を描き、それにより、該主軸線(A)に対して実質的に垂直な断面平面内で、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)の中心と該主軸線(A)との間の距離が、螺旋直径Dhの半分に等しく、かつ該層(52)の全ての該金属フィラメント状要素(54)に関して実質的に一定かつ同一であり、該金属フィラメント状要素(54)が、直径Dvのコードの内部エンクロージャ(58)を定め、各金属フィラメント状要素(54)が、直径Dfと、Rf=P/(π×Sin(2α))によって定められる螺旋曲率半径Rfとを有し、Pが、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素のピッチであり、αが、各金属フィラメント状要素(54)の螺旋角である前記コード(50、50’)であって、
ミリメートルを単位として表されるDh、Dv、Df、及びRfを用いて、
9≦Rf/Df≦30、かつ
1.30≦Dv/Df≦2.10であり、ここで、Dv=Dh-Dfである、
ことを特徴とするコード(50、50’)。
【請求項2】
11≦Rf/Df≦19であることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項3】
1.30≦Dv/Df≦2.05であることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項4】
前記螺旋曲率半径Rfは、2mm≦Rf≦7mmであるようなものであることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項5】
各金属フィラメント状要素(54)の前記螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mmであるようなものであることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項6】
Dfは、0.10mm≦Df≦0.50mmであるようなものであることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項7】
Dvは、Dv≧0.46mmであるようなものであることを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項8】
D≦2.00mmであるような直径Dを有することを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項9】
As≧1%であるような構造伸長Asを有し、
前記構造伸長Asは、力-伸長曲線を取得するためにコードに2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定され、
前記構造伸長Asは、前記力-伸長曲線の最大勾配に対応する%を単位とする伸長に等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のコード(50、50’)。
【請求項10】
請求項1に記載のコード(50、50’)をエラストマー母材に埋め込むことによって得られるフィラメント状補強要素、
を含むことを特徴とするタイヤ(10、10’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのタイヤのような物品を補強するのに使用可能である金属コードに関する。タイヤは、支持要素、例えばリムと協働することによって大気圧よりも高い圧力まで加圧することができるキャビティを形成することを意図するケーシングを意味すると理解される。本発明によるタイヤは、実質的にトロイダル形状の構造を有する。
【背景技術】
【0002】
N=5個の螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む金属コードは、従来技術から公知である。各金属フィラメント状要素は、鋼鉄モノフィラメントから構成され、かつ0.38mmに等しい直径を有する。各金属フィラメント状要素は、ピッチP=6.7mmで巻かれ、かつ金属フィラメント状要素の最終螺旋アセンブリ段階の前に個々に事前形成される。金属フィラメント状要素は、コードの内部エンクロージャを定める。この事前形成及び内部エンクロージャは、組み立てられた状態でコードに比較的有意な含気を与え、言い換えれば、隣接する金属フィラメント状要素の各対の間に比較的大きい空間を与える。そのような含気は、2.3%に等しいコードの構造伸長Asを引き起こす。そのようなコードは、特に、タイヤ、例えば重量タイプの車両のためのタイヤに使用されることを意図している。
【0003】
金属フィラメント状要素を個々に事前形成する段階を必要とするのに加えて、この従来技術のコードは、比較的低い長手方向圧縮性を有し、コードが比較的弱い長手方向圧縮変形の下で座屈することを意味する。そのような座屈は、コードの局所曲げとして現れ、コードの圧縮時剛性を下げるだけでなく、例えばタイヤが受ける循環的効果の下で金属フィラメント状要素が損傷を受けるリスクにも至る。
【0004】
螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む金属コードの別の例は、WO2016/166056に説明されている。WO2016/166056では、コード3.26は、N=3個の螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含み、各金属フィラメント状要素は、鋼鉄モノフィラメントから構成され、かつ0.26mmに等しい直径を有する。上述したコード5.38と全く同様に、WO2016/166056でのコード3.26は、比較的低い長手方向圧縮性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた長手方向圧縮性と単層がそこから構成される金属フィラメント状要素の直径に比べて相対的に小さい直径との両方を示すN個の螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含むコードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の主題は、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含むコードであり、層の各金属フィラメント状要素は、コードが実質的に直線の方向に延びる時に実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに螺旋経路を描き、それにより、主軸線に対して実質的に垂直な断面平面内で、層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線との間の距離は、螺旋直径Dhの半分に等しく、かつ層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であり、金属フィラメント状要素は、直径Dvのコードの内部エンクロージャを定め、各金属フィラメント状要素は、直径Dfと螺旋曲率半径Rfを有し、Dh、Dv、Df、及びRfがミリメートルを単位として表される時に、コードは、以下の関係式を満足する。
9≦Rf/Df≦30、かつ
1.30≦Dv/Df≦2.10
【0007】
本発明によるコードは、下記で説明する比較試験によって明らかであるように、優れた長手方向圧縮性と、全ての他が等しい場合に比較的小さい直径とを示す。
【0008】
本発明者は、本発明の背景において、各金属フィラメント状要素の直径Dfに対して十分に大きい曲率半径Rfに起因してコードが十分に含気され、それにより、コードの長手軸線からの各金属フィラメント状要素の比較的大きい間隔と、この間隔が、金属フィラメント状要素がそれらの螺旋に起因して比較的強い長手方向圧縮変形に適応することを可能にすることとに起因して座屈のリスクを低減すると仮定する。それとは対照的に、従来技術のコードの各金属フィラメント状要素の曲率半径Rfは直径Dfに対して比較的小さいので、金属フィラメント状要素は、コードの長手軸線により近く、かつそれらの螺旋に起因して長手方向圧縮変形に適応することができる程度が本発明によるコードよりも遙かに小さい。
【0009】
更に、各金属フィラメント状要素の過度に大きい曲率半径Rfの場合に、本発明によるコードは、例えばタイヤに対する補強の役割を保証するのに不十分な圧縮時長手方向剛性を有すると考えられる。
【0010】
更に、過度に大きい内部エンクロージャ直径Dvの場合に、コードは、金属フィラメント状要素の直径に対して過度に大きい直径を有すると考えられる。それとは対照的に、過度に小さい内部エンクロージャ直径Dvの場合に、コードは、座屈することなく比較的高い長手方向圧縮変形に適応することができるには過度に小さい空間をコードのための金属フィラメント状要素間に有すると考えられる。
【0011】
特性Dh、Df、Dv、及びRf、及び下記で説明する他の特性の値は、コードが製造された直後、すなわち、エラストマー母材に埋め込むあらゆる段階の前か、又はコードが例えばタイヤのエラストマー母材から抽出され、それに伴ってあらゆるエラストマー母材、特にコードに存在するあらゆる材料がコードから除去される洗浄段階を施した後かのいずれかでコード上で測定される又はコードから決定される。元の状態を保証するために、各金属フィラメント状要素とエラストマー母材との間の接着界面は、例えば炭酸ナトリウム浴中の電気化学工程を用いて排除しなければならない。下記で説明するタイヤを製造する方法の成形段階に関する効果、特にコードの伸長は、プライ及びコードの抽出によって排除され、この抽出中にプライ及びコードは、成形段階以前からのこれらの特性を実質的に取り戻す。
【0012】
本発明によるコードは、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む。言い換えれば、本発明によるコードは、螺旋巻き金属フィラメント状要素の2つの層でも2よりも多い層でもなく1つの層を含む。層は、1つだけではなく複数の金属フィラメント状要素で製造される。コードの一実施形態では、例えば、コードの製造工程が完了した時に、本発明によるコードは、巻かれた金属フィラメント状要素の層から構成される、言い換えれば、層内のもの以外のいずれの他の金属フィラメント状要素も含まない。
【0013】
本発明によるコードは、単一螺旋を有する。定義により、単一螺旋コードは、各金属フィラメント状要素の軸線がコード軸線の周りに第1の螺旋を描き、更にコード軸線によって描かれた螺旋の周りに第2の螺旋を描く2重螺旋コードとは対照的に層の各金属フィラメント状要素の軸線が単一螺旋を描くコードである。言い換えれば、コードは、実質的に直線の方向に延びる時に互いに螺旋状に巻かれた金属フィラメント状要素の単層を含み、この層の各金属フィラメント状要素は、主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内で層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線との間の距離が層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であるような螺旋経路を実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに描く。それとは対照的に、2重螺旋コードが実質的に直線の方向に延びる時に、層の各金属フィラメント状要素の中心と実質的に直線の方向との間の距離は、層の金属フィラメント状要素の全てに関して異なる。
【0014】
本発明によるコードは、中心金属コアを持たない。このコードをNが金属フィラメント状要素の個数である1xN構造のコード又はオープンコードとも呼ぶ。上記で定めた本発明によるコードでは、内部エンクロージャは空であり、従っていずれの充填材料も持たず、特にいずれのエラストマー組成も持たない。従って、このコードを充填材料なしのコードと呼ぶ。
【0015】
本発明によるコード内のエンクロージャは、金属フィラメント状要素によって境界が定められ、理論円により、すなわち、一方の部分に関して各金属フィラメント状要素の半径方向内側に、他方の部分に関して各金属フィラメント状要素に対してタンジェンシャルに境界が定められた容積に対応する。この理論円の直径は、エンクロージャ直径Dvに等しい。
【0016】
フィラメント状要素は、長手方向に主軸線に沿って延び、主軸線と垂直に主軸線に沿う寸法Lと比較して相対的に小さい最大寸法Gを有する断面を有する要素を意味する。相対的に小さいという表現は、L/Gが100よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、1000よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。この定義は、円形断面を有するフィラメント状要素と、非円形断面、例えば多角形又は楕円形の断面を有するフィラメント状要素との両方を意図している。非常に好ましくは、各金属フィラメント状要素は円形断面を有する。
【0017】
定義により、金属という用語は、フィラメント状要素の大部分(すなわち、その重量の50%超)又は全て(その重量の100%)が金属材料から構成されることを意味する。各金属フィラメント状要素は、好ましくは、鋼鉄、より好ましくは、当業者が一般的に炭素鋼と呼ぶパーライト炭素鋼又はフェライト-パーライト炭素鋼で製造され、又はステンレス鋼(定義によると少なくとも10.5%のクロムを含む鋼鉄)で製造される。
【0018】
当業者に公知のパラメータである構造伸長Asは、例えば、2014年の規格ASTM D2969-04を試験されたコードに適用し、それによって力-伸長曲線を取得することで決定される。Asは、得られたこの力-伸長曲線からこの曲線の最大勾配に対応する%を単位とする伸長として推定される。力-伸長曲線は、増大する伸長の方向に構造部分、弾性部分、及び可塑性部分を含むことを想起されるであろう。構造部分は、コードの含気、すなわち、コードを構成する様々な金属フィラメント状要素の間の空き空間からもたらされる構造伸長Asに対応する。弾性部分は、コードの構造、特に様々な層の角度及びスレッドの直径の構成からもたらされる弾性伸長に対応する。可塑性部分は、1又は2以上の金属フィラメント状要素の可塑性からもたらされる可塑性伸長(弾性限界よりも大きい不可逆変形)に対応する。
【0019】
螺旋角αは当業者に公知のパラメータであり、三回反復を含む以下の反復計算を用いて決定することができ、添字iが反復回数1,2、又は3を示している。%を単位として表される構造伸長Asを既知として、螺旋角α(i)は、慣例記号Pが、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチであり、Nが、層内の金属フィラメント状要素の個数であり、Dfが、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素の直径であり、Arcos、Cos、Arctan、及びSinが、それぞれ逆余弦関数、余弦関数、逆正接関数、及び正弦関数を表す時に、式α(i)=Arcos[(100/(100+As)×Cos[Arctan((π×Df)/(P×Cos(α(i-1))×Sin(π/N))]]が成り立つようなものである。1回目の反復、すなわち、α(1)の計算では、α(0)=0である。αが度を単位として表される時に、3回目の反復では、小数点の後に少なくとも1つの有効桁を有するα(3)=αが得られる。
【0020】
ミリメートルを単位として表される螺旋直径Dhは、Pが、各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチであり、αが、上記で決定された各金属フィラメント状要素の螺旋角であり、Tanが正接関数である時に、Dh=P×Tan(α)/πという関係式を用いて計算される。螺旋直径Dhは、コードの主軸線に対して垂直な平面内で層の複数の金属フィラメント状要素の中心を通過する理論円の直径に対応する。
【0021】
ミリメートルを単位として表されるエンクロージャ直径Dvは、Dfが各金属フィラメント状要素の直径であり、Dhが螺旋直径であり、これら両方がミリメートルを単位として表される時に、Dv=Dh-Dfという関係式を用いて計算される。
【0022】
ミリメートルを単位として表される曲率半径Rfは、Pが、ミリメートル単位として表される各金属フィラメント状要素のピッチであり、αが、各金属フィラメント状要素の螺旋角であり、Sinが正弦関数である時に、Rf=P/(π×Sin(2α))という関係式を用いて計算される。
【0023】
各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチは、当該フィラメント状要素が内部に位置付けられたコードの軸線と平行に測定される当該フィラメント状要素が延びる長さであり、この長さの後にこのピッチを有する当該フィラメント状要素がこのコード軸線の周りに一回転し終わることを想起されるであろう。
【0024】
下記で説明する任意的な特性は、技術的に適合する限り互いに組み合わせることができる。
【0025】
有利な実施形態では、全ての金属フィラメント状要素は同じ直径Dfを有する。
【0026】
コードは、文献WO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法に従ってかつそのような設備を使用して製造される。分割段階を実施するそのような方法は、金属フィラメント状要素が螺旋状に巻かれる単一アセンブリ段階を含み、このアセンブリ段階に特に構造伸長の値を引き上げるために各金属フィラメント状要素を個々に事前形成する段階が先行する従来のケーブリング方法と区別しなければならない。そのような方法及び設備は、文献EP0548539、EP1000194、EP0622489、WO2012055677、JP2007092259、W02007128335、JPH06346386、又はEP0143767に説明されている。これらの方法実施中に、可能な最も大きい構造伸長をもたらすように金属モノフィラメントが個々に事前形成される。しかし、特定の設備を必要とする金属モノフィラメントを個々に事前形成するこの段階は、個々の事前形成段階がなく、他に大きい構造伸長をもたらすことを可能にすることもない方法と比較して、この方法を相対的に非生産的にするだけでなく、このようにして事前形成される金属モノフィラメントに対して事前形成ツールとの摩擦に起因する悪影響も有する。そのような悪影響は、金属モノフィラメントの面に破裂開始ファクタを生成し、従って金属モノフィラメントの耐久性に関して、特に圧縮下耐久性に関して有害である。そのような事前形成マークの不在又は存在は、製造方法実施後に電子顕微鏡下で又はより簡単にはコードを製造する方法を知ることによって識別可能である。
【0027】
使用される方法に起因して、コードの各金属フィラメント状要素は事前形成マークを持たない。そのような事前形成マークは、特に扁平を含む。更に、事前形成マークは、各金属フィラメント状要素が沿って延びる主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内を延びる亀裂を含む。そのような亀裂は、主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内で各金属フィラメント状要素の半径方向外面から半径方向内側に向けて延びる。上述のように、そのような亀裂は、機械的事前形成ツールによる曲げ負荷に起因して、すなわち、各金属フィラメント状要素の主軸線とは垂直に引き起こされ、それによってこれらの亀裂は耐久性に関して非常に有害になる。それとは対照的に、金属フィラメント状要素が一時的中心上で集合的かつ同時に事前形成されるWO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法では、事前形成負荷は捻り方向に、従って各金属フィラメント状要素の主軸線の周りに非垂直に作用する。生成されるいずれの亀裂も、各金属フィラメント状要素の半径方向外面から半径方向内側に向けてではなく、各金属フィラメント状要素の半径方向外面に沿って延び、それによってこれらの亀裂は耐久性に関してそれ程有害ではなくなる。
【0028】
「aとbの間」という表現で表すあらゆる値範囲は、a超からb未満までの値範囲を表し(すなわち、限界値a及びbを除外する)、それに対して「aからbまで」という表現で表すあらゆる値範囲は、aからbに至るまでの値範囲を意味する(すなわち、厳密に限界値a及びbを含む)。
【0029】
本明細書では、半径方向横断面又は半径方向断面は、タイヤの回転軸線を含む平面内の横断面又は断面を意味する。
【0030】
軸線方向という表現は、タイヤの回転軸線に対して実質的に平行な方向を意味する。
【0031】
円周方向という表現は、軸線方向とタイヤの半径との両方に対して実質的に垂直な方向(言い換えれば、タイヤの回転軸線を中心とする円に対するタンジェント)を意味する。
【0032】
半径方向という表現は、タイヤの半径に沿う方向、すなわち、タイヤの回転軸線に交わり、この軸線に対して実質的に垂直なあらゆる方向を意味する。
【0033】
子午面(Mと表示する)は、タイヤの回転軸線に対して垂直であり、2つのビードの間の中間に位置し、クラウン補強体の中心を通過する平面である。
【0034】
タイヤの赤道円周平面(E)は、子午面及び半径方向と垂直にタイヤの赤道線を通過する理論面である。タイヤの赤道線は、円周断面平面(円周方向に対して垂直であり、半径方向と軸線方向と平行な平面)内でタイヤの回転軸線と平行であり、地面との接触状態になることが意図されたトレッドの半径方向最外点と、支持体、例えば、リムとの接触状態になることが意図されたタイヤの半径方向最内点とであるHに等しい距離を挟む2つの点の間で等距離に位置付けられた軸線である。
【0035】
角度の向きは、当該角度を定める基準直線から当該角度を定める他方の直線に到達するために回転する必要がある時計周り又は反時計周りの方向、この場合はタイヤの円周方向を意味する。
【0036】
好ましい実施形態では、11≦Rf/Df≦19が成り立つ。
【0037】
好ましい実施形態では、1.30≦Dv/Df≦2.05、より好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.00が成り立つ。
【0038】
有利なことに、螺旋曲率半径Rfは、2mm≦Rf≦7mmであるようなものである。
【0039】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対しては2mm≦Rf≦5mm、好ましくは、3mm≦Rf≦5mmである。
【0040】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、4mm≦Rf≦6mm、好ましくは、4mm≦Rf≦5mmである。
【0041】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、4mm≦Rf≦7mm、好ましくは、4.5mm≦Rf≦6.5mmである。
【0042】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mmであるようなものである。
【0043】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.50mm≦Dh≦1.00mm、好ましくは、0.70mm≦Dh≦1.00mmである。
【0044】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.85mm≦Dh≦1.20mm、好ましくは、0.90mm≦Dh≦1.15mmである。
【0045】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.95mm≦Dh≦1.40mm、好ましくは、1.00mm≦Dh≦1.35mmである。
【0046】
有利なことに、Dfは、0.10mm≦Df≦0.50mmであるようなものである。
【0047】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.20mm≦Df≦0.35mm、好ましくは、0.25mm≦Df≦0.33mmである。
【0048】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.22mm≦Df≦0.40mm、好ましくは、0.25mm≦Df≦0.38mmである。
【0049】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.32mm≦Df≦0.50mm、好ましくは、0.35mm≦Df≦0.50mmである。
【0050】
有利なことに、Dvは、Dv≧0.46mmであるようなものである。
【0051】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.46mm≦Dv≦0.70mmである。
【0052】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.50mm≦Dv≦0.80mmである。
【0053】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、0.55mm≦Dv≦1.00mmである。
【0054】
好ましい実施形態では、各金属フィラメント状要素は、3mm≦P≦15mmであるようなピッチPで巻かれる。
【0055】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して3mm≦P≦9mmである。
【0056】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、7mm≦P≦15mmである。
【0057】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、9mm≦P≦15mmである。
【0058】
有利なことに、コードは、D≦2.00mmであるような直径Dを有する。
【0059】
Dと表示する直径又は見かけ直径は、フィラメント状要素の巻きピッチPの1.5倍に少なくとも等しい直径の接触を有する厚みゲージ(1/100ミリメートルの精度をもたらすことを可能にし、a型接点が装備され、0.6N前後の接触圧を有するKaeferからのモデルJD50を含むことができる)を用いて測定される。測定プロトコルは、3つの測定(コードの軸線と垂直にゼロ張力下で実施される)のセットの3回反復から構成され、これらの測定のうちの第2及び第3のものは、コードの軸線の周りの測定方向の回転によって前回の測定から3分の1回転だけ角度オフセットされた方向に実施される。
【0060】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.75mm≦D≦1.40mm、好ましくは、1.00mm≦D≦1.30mmである。
【0061】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、1.15mm≦D≦1.55mmである。
【0062】
オフロード車両、例えば、農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを目的とするコードの一実施形態では、1.5mm≦D≦2mmである。
【0063】
一実施形態では、各金属フィラメント状要素は、単一金属モノフィラメントを含む。この場合に、各金属フィラメント状要素は、金属モノフィラメントで有利に構成される。この実施形態の変形では、金属モノフィラメントは、銅、亜鉛、錫、コバルト、又はこれらの金属の合金、例えば、黄銅又は青銅を含む金属コーティングの層で直接に被覆される。この変形では、各金属フィラメント状要素は、例えば、鋼鉄で製造された金属モノフィラメントから構成され、金属コーティング層で直接に被覆されたコアを形成する。
【0064】
この実施形態では、各金属要素モノフィラメントは、上述のように好ましくは鋼鉄で製造され、1000MPaから5000MPaの範囲にわたる機械強度を有する。そのような機械強度は、タイヤの分野で一般的に遭遇する鋼鉄等級、すなわち、NT(標準張力)級、HT(高張力)級、ST(超張力)級、SHT(超高張力)級、UT(ウルトラ張力)級、UHT(ウルトラ高張力)級、及びMT(メガ張力)級に対応し、高機械強度の使用は、コードを内部に埋め込むことを目的とする母材の補強の改善及びこうして補強される母材の軽量化を潜在的に可能にする。
【0065】
有利なことに、層がN個の螺旋巻き金属フィラメント状要素から構成される場合に、Nは、3から6の範囲にわたる。
【0066】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の直径Dfに対するピッチPの比Kは、P及びDfがミリメートルを単位として表される時に、19≦K≦44であるようなものである。
【0067】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の螺旋角αは、13°≦α≦21°であるようなものである。
【0068】
過度に高い比Kの値の場合又は過度に小さい螺旋角の値の場合に、コードの長手方向圧縮性は低減する。過度に低い比Kの値の場合又は過度に大きい螺旋角の値の場合に、コードの長手方向剛性は低減し、従って、コードの補強機能が低減する。
【0069】
有利なことに、コードは、それに2014年の規格ASTM D2969-04を適用し、それによって力-伸長曲線を取得することで決定され、%を単位とした力-伸長曲線の最大勾配に対応する伸長に等しいAs≧1%、好ましくは、As≧2.5%、より好ましくは、As≧3%、更に好ましくは、3%≦As≦5.5%であるような構造伸長Asを有する。
【0070】
有利なことに、各金属フィラメント状要素は事前形成マークを持たない。言い換えれば、コードは、金属フィラメント状要素の各々を個々に事前形成する段階を持たない方法によって得られる。
【0071】
上述のように、本発明によるコードは、文献WO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法に従ってかつそのような設備を使用することによって製造される。この方法は、M個の金属フィラメント状要素を含む一時的アセンブリを撚転によって組み立てる段階であって、その間にM個の金属フィラメント状要素が一時的中心上に集合的にかつ同時に事前形成される上記組み立てる段階と、それに続く一時的アセンブリを一時的中心と本発明によるコードとの間で分離する段階であって、その間に一時的アセンブリが一時的中心と一時的アセンブリのM個の金属フィラメント状要素の少なくとも一部分との間で分離されて本発明によるコードが形成される上記分離する段階とを含む。より具体的には、そのような方法は、一時的アセンブリを形成するためにM個の金属フィラメント状要素の層内でM個の金属フィラメント状要素を一時的中心の周りに互いに組み立てる段階と、一時的アセンブリを少なくともM1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリとM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリとに分割する段階とを含む。次いで、第1のアセンブリ及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方は、本発明によるコードを形成し、すなわち、M1=N及び/又はM2=Nである。
【0072】
撚転段階に応答した各金属フィラメント状要素の弾性回復に起因して、一時的アセンブリの各金属フィラメント状要素のピッチは、一時的ピッチからそれよりも大きいピッチPに変化する。当業者は、望ましいピッチPをもたらすために適用される一時的ピッチがどのように決定されるかを知っている。
【0073】
類似の方式で、コード内の各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、この弾性回復に起因して、一時的アセンブリ内の各フィラメント状要素の一時的螺旋直径よりも実質的に大きい。コード内の各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、撚転の度合いが高いほど一時的アセンブリ内の各フィラメント状要素の一時的螺旋直径よりも一層大きい。当業者は、撚転度合いと一時的中心の性質とに依存して望ましい螺旋直径Dhをもたらすために適用される一時的螺旋直径がどのように決定されるかを知っている。エンクロージャ直径Dvに対して同じことが当てはまる。
【0074】
有利なことに、第1の実施形態では、一時的アセンブリを分割する段階は、第1及び第2のアセンブリの一時的中心を分離する段階を含む。この実施形態では、第1のアセンブリは、互いに巻かれて単層内で第1のアセンブリの軸線の周りに分散されたM1個のフィラメント状要素から構成される。同様に、この実施形態の第2のアセンブリは、互いに巻かれて単層内で第2のアセンブリの軸線の周りに分散されたM2個の金属フィラメント状要素から構成される。言い換えれば、この第1の実施形態では、一時的中心が少なくとも1つのフィラメント状要素を含む場合に、一時的中心の各フィラメント状要素は、M1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリ及びM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリに属さない。従ってM1+M2=Mである。
【0075】
この第1の実施形態の第1の好ましい変形では、分割段階実施中に、第1のアセンブリは、第2のアセンブリと一時的中心とによって形成された一時的ユニットから分離され、次いで、第2のアセンブリと一時的中心とが互いに分離される。第2の変形では、分割段階実施中に、一時的中心と第1のアセンブリと第2のアセンブリとが互いに対にされて同時に分離される。
【0076】
有利なことに、本方法は、一時的中心を再利用する段階を含み、この段階実施中に、
・一時的中心が分割段階の下流で回収され、
・先に回収された一時的中心がアセンブリ段階の上流に導入される。
【0077】
好ましい実施形態では、一時的中心を再利用する段階は継続的に行うことができ、すなわち、分離段階から出る一時的中心は、それを蓄積する中間段階なくアセンブリ段階に再導入される。別の実施形態では、一時的中心を再利用する段階は断続的であり、すなわち、一時的中心を蓄積する中間段階が存在する。
【0078】
より好ましくは、織物一時的中心が使用される。
【0079】
第2の実施形態では、一時的アセンブリを分割する段階は、一時的中心を少なくとも第1のアセンブリと第2のアセンブリとの間で分割する段階を含む。従って、この第2の実施形態では、互いに螺旋状に巻かれたP1個、P2個の金属フィラメント状要素それぞれの層を各々が含む金属フィラメント状要素の2つのアセンブリが得られ、これらのアセンブリのうちの少なくとも一方では、中心コアは、周りに当該層の金属フィラメント状要素が巻かれた一時的中心の少なくとも一部分を含む又はそれから構成される。言い換えれば、この第2の実施形態では、一時的中心がK個の金属フィラメント状要素を含む場合に、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの少なくとも1個は、M1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリ及びM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリのうちの少なくとも一方に属する。
【0080】
有利なことに、分割段階実施中に、一時的中心の少なくとも第1の部分が一時的アセンブリの第1の金属フィラメント状要素と一緒に分割され、それによって第1のアセンブリが形成される。
【0081】
従って、第1のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれたP1個の金属フィラメント状要素の層と、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの第1の部分(K1個のフィラメント状要素)を含む又はそれから構成され、周りにP1個の金属フィラメント状要素が互いに螺旋状に巻かれた中心コアとを含む。P1+K1=M1である。
【0082】
有利なことに、分割段階実施中に、一時的中心の少なくとも第2の部分が一時的アセンブリの第2の金属フィラメント状要素と一緒に分割され、それによって第2のアセンブリが形成される。
【0083】
従って、第2のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれたP2個の金属フィラメント状要素の層と、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの第2の部分(K2個のフィラメント状要素)を含む又はそれから構成され、周りにP2個の金属フィラメント状要素が互いに螺旋状に巻かれた中心コアとを含む。P2+K2=M2である。
【0084】
好ましくは、第1のアセンブリと第2のアセンブリとは同時に形成される。
【0085】
好ましくは、分割段階の前に、一時的中心の第1の部分と第2の部分が一時的中心を構成する。従って、一時的中心の第1の部分と第2の部分は相補的である。従ってK1+K2=Kである。変形では、K1+K2<Kであることが可能である。
【0086】
変形では、第1のアセンブリは、一時的中心を含む又はそれから構成される中心コアの周りで互いに螺旋状に巻かれたP1個の金属フィラメント状要素の層を含み、第2のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれ、中心コアを持たないP2=M2個の金属フィラメント状要素の層を含む。
【0087】
一実施形態では、アセンブリ段階は、撚転によって実施される。そのような場合に、金属フィラメント状要素は、集合的撚転と要素自体の軸線の周りの個々の撚転との両方を受け、それによって金属フィラメント状要素の各々に対する撚り戻しトルクを生じる。別の実施形態では、アセンブリ段階は、ケーブリングによって実施される。この場合に、金属フィラメント状要素は、アセンブリ点付近の同期回転に起因して要素自体の軸線の周りの撚転を受けない。
【0088】
好ましくは、撚転アセンブリ段階では、本方法は、一時的アセンブリを平衡化する段階を含む。従って、M個の金属フィラメント状要素と一時的中心とで構成されるアセンブリに対して平衡化段階が実施される場合に、平衡化段階は、暗黙のうちに分割段階の上流に実施される。
【0089】
有利なことに、本方法は、分割段階の後に第1及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方を平衡化する段階を含む。
【0090】
有利なことに、本方法は、第1及び第2のアセンブリのそれぞれの進行方向の周りのこれらのアセンブリの回転を維持する段階を含む。この段階は、分割段階の後かつ第1及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方を平衡化する段階の前に実施される。
【0091】
本発明の更に別の主題は、コードが埋め込まれたエラストマー母材を含む半完成の製品又は物品を補強するためのそのようなコードの使用である。
【0092】
そのような半完成の製品又は物品は、未硬化状態(すなわち、架橋又は加硫の前)と硬化状態(架橋又は加硫の後)の両方での車両のためのパイプ、ベルト、コンベヤベルト、トラック、タイヤである。好ましい実施形態では、そのような半完成の製品又は物品は、プライの形態を取る。
【0093】
本発明の更に別の主題は、上記に定めたコードが少なくとも1つ埋め込まれたエラストマー母材を含む半完成の製品又は物品である。
【0094】
本発明の更に別の主題は、上記で定めたコードを含むタイヤを補強するためのこのコードの使用である。
【0095】
最後に、本発明の別の主題は、上記で定めたコードをエラストマー母材に埋め込むことによって得られるフィラメント状補強要素を含むタイヤである。タイヤは、支持要素、例えば、リムと協働することにより、大気圧よりも高い圧力に加圧することができるキャビティを形成することを目的とするケーシングを意味すると理解される。本発明によるタイヤは、実質的にトロイダル形状の構造を有する。
【0096】
本発明によるタイヤ内では、コードは、エラストマー母材に埋め込まれる。従って、本発明によるタイヤ内では、コードは、エラストマー組成に基づいておりかつ充填されたコードの内部エンクロージャ内に位置する内部エンクロージャのための充填材料を含む。この場合に、充填材料は、コードが埋め込まれるエラストマー母材が基づくものと同じエラストマー組成に基づいている。
【0097】
特徴Df、Dv、Rf、及び下記で説明する他の特性の値は、タイヤから抽出されたプライ及びコード上で測定される又はそれから決定される。上述したコードの特性は、成形段階を所与としてタイヤを製造する方法の完了時にタイヤが上述した利点を有することになることを保証する。
【0098】
エラストマー母材は、エラストマー組成の架橋から得られるエラストマー挙動を有する母材を意味する。従ってエラストマー母材は、エラストマー組成に基づいている。エラストマー母材と全く同様に、充填材料もエラストマー組成、この場合はコードが埋め込まれる母材と同じ組成に基づいている。
【0099】
「~に基づく」という表現は、当該組成が、組成の製造の様々なフェーズ中にいくつかが少なくとも部分的に互いに反応することができる及び/又は反応することが意図された様々な使用成分の原位置反応の化合物及び/又は生成物を含み、従って当該組成が完全又は部分的な架橋状態にあるか又は未架橋状態にあることが可能であることを意味すると理解しなければならない。
【0100】
エラストマー組成は、当該組成が少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含むことを意味する。好ましくは、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含む組成は、エラストマーと架橋システムと充填剤とを含む。これらのプライに使用される組成は、フィラメント状補強要素のスキムコーティングのための従来の組成であり、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム、補強充填剤、例えばカーボンブラック及び/又はシリカ、架橋システム、例えば、好ましくは、硫黄とステアリン酸と酸化亜鉛とを含む加硫システム、並びに任意的に加硫促進剤、加硫遅延剤、及び/又は様々な添加剤を含む。フィラメント状補強要素と、それが埋め込まれる母材との間の接着は、例えば、通常の接着剤組成、例えばRFL型の接着剤又は同等の接着剤によって保証される。
【0101】
破断荷重の15%に等しい荷重に対するプライの引張時割線弾性率をMA15と表示し、daN/mmを単位として表している。弾性率MA15は、2014年の規格ASTM D2969-04をプライのコードに適用することによって得られた力-伸長曲線に基づいて計算される。コードの引張時割線弾性率は、点(0,0)と、破断荷重の15%に等しい縦座標値を有する曲線の点との間に引かれた直線の勾配を決定することによって計算される。弾性率MA15は、コードの引張時割線弾性率に1mmのプライ当たりのコードの密度dを乗じることによって決定される。プライ内のフィラメント状補強要素の密度dは、フィラメント状補強要素がプライ内を延びる方向に対して垂直な方向にプライに存在するフィラメント状補強要素の個数であることを想起されるであろう。密度dは、補強要素がプライ内を延びる方向に対して垂直な方向の2つの連続するフィラメント状補強要素の間の軸線間距離に等しいmmを単位として表される埋め込みピッチpから決定することができる。dとpの間の関係は、d=100/pである。
【0102】
コードの破断荷重は、2014年の規格ASTM D2969-04に従って測定される。プライの破断荷重は、2014年の規格ASTM D2969-04をプライのコードに適用することによって得られた力-伸長曲線に基づいて計算される。プライの破断荷重は、コードの破断荷重に上記で定めた単位幅のプライ当たりのコードの密度を乗じることによって決定される。
【0103】
下記で説明する任意的な特性は、技術的に適合する限り、互いに組み合わせることができる。
【0104】
本発明のタイヤは、乗用自動車(特に四輪駆動車及びSUV(スポーツ用多目的車)を含む)のためのものとすることができるが、オートバイのような二輪車、又は小型トラック、重量車両、すなわち、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両、オフロード車両、農業車両又は建設プラント車両、航空機又は他の搬送車両又は荷役車両のためのものとすることもできる。非常に好ましくは、本発明のタイヤは、乗用車を意図している。
【0105】
有利なことに、タイヤは、トレッド及びクラウン補強体を含むクラウンと、2つの側壁と、2つのビードとを含み、各側壁は各ビードをクラウンに接続し、クラウン補強体はクラウン内でタイヤの円周方向に延び、タイヤは、ビードの各々内に固着されて側壁及びクラウン内を延びるカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、半径方向にカーカス補強体とトレッドの間に挿入され、クラウン補強体は、上記で定めたコードをエラストマー母材に埋め込むことによって得られるフィラメント状補強要素を含む。
【0106】
好ましくは、クラウン補強体は、少なくとも1つのフーピングプライ、好ましくは、単一フーピングプライを含むフープ補強体を含む。フープ補強体は、好ましくは、フーピングプライによって形成される。この実施形態は、乗用車、二輪車のためのタイヤ、小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤ、及び好ましくは、乗用車のためのタイヤに特に適している。
【0107】
好ましくは、クラウン補強体は、少なくとも1つの作動プライを含む作動補強体を含む。
【0108】
一実施形態では、フープ補強体は、半径方向に作動補強体とトレッドの間に挿入される。この場合に、金属コードの使用により、フープ補強体は、そのフーピング機能に加えて、織物フーピングフィラメント状補強要素を含むフープ補強体よりも一層有効であるパンク及び衝撃からの保護機能を有する。
【0109】
有利なことに、フーピングプライは、上記で定めたコードをエラストマー母材に埋め込むことによって得られる少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む。
【0110】
コードは、その小さい直径により、フーピングプライの厚み、フーピングプライの重さ、タイヤのヒステリシス、従って、タイヤの転がり抵抗を低減することを可能にする。特に、全ての他が等しい状態で、フーピングプライの厚みが厚いほどそのヒステリシスは高い。直径を低減することにより、プライの全厚は低減し、一方、各コードの裏側に存在する厚みは維持され、一方の部分に関してトレッドとフーピングプライの間、他方の部分に関してフーピングプライの半径方向内側にあるプライとフーピングプライ自体との間の分離厚みを維持することが可能になる。更に、各コードの裏側の厚みを一定に保つことにより、フーピングプライを通る腐食性薬剤の通過に対する耐性が保持され、作動補強体を保護することが可能になり、この保護は、作動補強体が単一作動プライのみを備える時に一層重要である。
【0111】
更に、コードは、その優れた長手方向圧縮性により、タイヤに優れた圧縮時耐久性を与えることを可能にし、これは、作動プライの排除の場合にUS2007006957に説明されている従来技術のタイヤと比較して一層有利である。更に、WO2016/166056に説明されている従来技術のフーピング織物フィラメント状補強要素と比較して、このフープ補強体は、金属フィラメント状要素の使用に起因してそれ程高価ではなく、より熱安定性が高く、タイヤに機械的保護を与える。これに加えて、金属フィラメント状要素の使用は、フープ補強体が製造された後にそれを放射線写真によって検査することを容易にする。最後に、WO2016/166056に説明されている従来技術のコード3.26と比較して、本発明によるタイヤのコードは、優れた長手方向圧縮を示し、従って、一層良好な圧縮時耐久性を示す。
【0112】
最後に、金属コードの使用により、フープ補強体は、そのフーピング機能に加えて、フーピング織物フィラメント状補強要素を含むフープ補強体よりも一層有効であるパンク及び衝撃に対する保護機能を有する。
【0113】
有利なことに、上記又は各フーピングフィラメント状補強要素は、タイヤの円周方向と厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度を形成する。
【0114】
有利なことに、上記又は各作動プライは、複数の作動フィラメント状補強要素を含む。好ましくは、各作動フィラメント状補強要素は、金属フィラメント状要素である。
【0115】
好ましくは、各プライの作動フィラメント状補強要素は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。より好ましくは、各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの作動補強体の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。
【0116】
好ましくは、クラウン補強体は、少なくとも1つのカーカスプライ、より好ましくは、単一カーカスプライを含む。カーカス補強体は、好ましくは、カーカスプライによって形成される。この実施形態は、乗用車、二輪車のためのタイヤ、小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重量路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選択される産業車両のためのタイヤ、及び好ましくは乗用車のためのタイヤに特に適している。
【0117】
有利なことに、カーカスプライは、カーカスフィラメント状補強要素を含む。
【0118】
好ましくは、各カーカスフィラメント状補強要素は、織物フィラメント状要素である。定義により、織物は、接着剤組成に基づく1又は2以上の被覆層で任意的に被覆された1又は2以上の要素織物モノフィラメントによって形成された非金属フィラメント状要素を意味する。各要素織物モノフィラメントは、例えば、溶融紡糸、溶液紡糸、又はゲル紡糸によって得られる。各要素織物モノフィラメントは、有機材料、特にポリマー材料、又は無機材料、例えばガラス又は炭素から製造される。ポリマー材料は、熱可塑型のもの、例えば、脂肪族ポリアミド、特にポリアミド6,6、及びポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートとすることができる。ポリマー材料は、非熱可塑型のもの、例えば、芳香族ポリアミド、特にアラミド、及び天然又は人工のいずれかのセルロース、特にレーヨンとすることができる。
【0119】
好ましくは、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの一方のビードからタイヤの他方のビードまで軸線方向に延びる。
【0120】
有利なことに、少なくとも作動フィラメント状補強要素及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置される。
【0121】
有利な実施形態では、クラウン補強体は、作動補強体とフープ補強体によって形成される。
【0122】
プライは、一方の部分に関して1又は2以上のフィラメント状補強要素とし、他方の部分に関してエラストマー母材とするアセンブリであり、フィラメント状補強要素がエラストマー母材に埋め込まれたアセンブリである。
【0123】
有利なことに、各プライのフィラメント状補強要素は、エラストマー母材に埋め込まれる。様々なプライは、同じエラストマー母材又は異なるエラストマー母材を含むことができる。
【0124】
本発明によるタイヤの第1の実施形態では、作動補強体は2つの作動プライを含み、好ましくは、作動補強体は2つの作動プライから構成される。
【0125】
この第1の実施形態では、作動フィラメント状補強要素及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置される。この第1の実施形態では、フーピングフィラメント状補強要素は、三角形メッシュを定める必要はない。
【0126】
有利なことに、この第1の実施形態では、各作動プライ内の各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの円周方向と10°から40°、好ましくは、20°から30°の範囲にわたる角度を形成する。
【0127】
有利なことに、一方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素がタイヤの円周方向となす角度の向きは、他方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素がタイヤの円周方向となす角度の向きと反対である。言い換えれば、一方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素に他方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素が交差する。
【0128】
有利なことに、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの子午面内で、言い換えれば、タイヤのクラウン内でタイヤの円周方向と80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度を形成する。
【0129】
有利なことに、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの赤道円周平面内で、言い換えれば、各側壁内でタイヤの円周方向と80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度を形成する。
【0130】
本発明の第2の実施形態では、作動補強体は、単一作動プライを含む。作動補強体は、好ましくは、作動プライによって形成される。この実施形態は、上記又は各フーピングフィラメント状補強要素が上記で定めたコードによって形成される時に特に有利である。上述したフープ補強体の機械強度及び耐久性特性は、次に、作動プライを作動補強体から排除することを可能にする。有意に軽量のタイヤが得られる。
【0131】
この第2の実施形態では、フーピングフィラメント状補強要素、作動フィラメント状補強要素、及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置される。この第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、フーピングフィラメント状補強要素は、三角形メッシュを定めるのに必要である。
【0132】
有利なことに、各カーカス補強フィラメント状要素は、タイヤの子午面内で、言い換えれば、タイヤのクラウン内でタイヤの円周方向と55°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、55°から80°、より好ましくは、60°から70°の範囲にわたる角度AC1を成す。従って、カーカスフィラメント状補強要素は、円周方向となす角度に起因してタイヤのクラウン内の三角形メッシュの形成に加担する。
【0133】
一実施形態では、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの赤道円周平面内で、言い換えれば、タイヤの各側壁内でタイヤの円周方向と85°よりも大きいか又はそれに等しい角度AC2を成す。カーカスフィラメント状補強要素は、各側壁内で実質的に半径方向のものであり、すなわち、円周方向に対して実質的に垂直であり、半径方向タイヤの全ての利点を保持することを可能にする。
【0134】
一実施形態では、各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの子午面内でタイヤの円周方向と10°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、30°から50°、より好ましくは、35°から45°の範囲にわたる角度ATを成す。従って、作動フィラメント状補強要素は、円周方向となす角度に起因してタイヤのクラウン内の三角形メッシュの形成に加担する。
【0135】
可能な限り効果的な三角形メッシュを形成するために、角度ATの向きと角度AC1の向きは、好ましくは、タイヤの円周方向に関して反対である。
【0136】
上述した第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、有利なことに、フーピングプライは、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して300daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、350daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、より好ましくは、400daN.mm-1よりも大きいか又はそれに等しい引張時割線弾性率を有する。一実施形態では、フーピングプライは、有利なことに、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して500daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、好ましくは、450daN.mm-1よりも小さいか又はそれに等しい引張時割線弾性率を有する。
【0137】
上述した第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、有利なことに、フーピングプライの破断荷重は、55daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、60daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、より好ましくは、65daN.mm-1よりも大きいか又はそれに等しい。有利なことに、フーピングプライの破断荷重は、85daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、好ましくは、80daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、75daN.mm-1よりも小さいか又はそれに等しい。
【0138】
本発明によるタイヤを製造する方法
【0139】
本発明によるタイヤは、下記で説明する方法を用いて製造される。
【0140】
最初に、各カーカスプライ、各作動プライ、及び各フーピングプライが製造される。各プライは、当該プライのフィラメント状補強要素を非架橋エラストマー組成内に埋め込むことによって製造される。
【0141】
次いで、カーカス補強体、作動補強体、フープ補強体、及びトレッドが、未乾燥形態のタイヤを形成するように配置される。
【0142】
次いで、未乾燥形態のタイヤは、それ自体を少なくとも半径方向に拡大させるように成形される。この段階は、未乾燥形態のタイヤの各プライを円周方向に伸張する効果を有する。この段階は、上記又は各フーピングフィラメント状補強要素をタイヤの円周方向に伸張するという効果を有する。従って、上記又は各フーピングフィラメント状補強要素は、成形段階の前に成形後とは異なる特性を有する。
【0143】
上述のように、上述の充填材料なしのコードの特性は、成形段階を所与としてタイヤを製造する方法の完了時にタイヤが上述した利点を有することになることを保証する。
【0144】
最後に、各組成が架橋状態を提供し、かつ当該組成に基づくエラストマー母材を形成するタイヤをもたらすために、成形された未乾燥形態のタイヤの組成は、例えば、硬化又は加硫によって架橋される。
【0145】
単なる非限定例として図面を参照しながら与える以下の説明を閲読することで本発明はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるタイヤの半径方向断面図である。
【
図2】赤道円周平面E上へのフーピングフィラメント状補強要素、作動フィラメント状補強要素、及びカーカスフィラメント状補強要素の投影を示す
図1のタイヤの破断図である。
【
図3】
図1のタイヤの子午面M上への投影内のこのタイヤの側壁に配置されたカーカスフィラメント状補強要素の図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態によるコード(直線で静止状態にあると仮定した)のその軸線に対して垂直な横断面図である。
【
図7】
図6の曲線の導関数の変動を伸長の関数として示す曲線の図である。
【
図8】第2の実施形態によるコードの
図4と類似の図である。
【
図9】第2の実施形態によるコードの
図5と類似の図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態によるタイヤの
図1のものと類似の図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態による
図10のタイヤの
図2のものと類似の図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態による
図10のタイヤの
図3のものと類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
本発明の第1の実施形態によるタイヤ
【0148】
図1は、それぞれタイヤの通常の軸線方向(X)、半径方向(Y)、及び円周方向(Z)に対応する座標系X、Y、Zを示している。
【0149】
図1は、全体参照番号10で表示する本発明によるタイヤの半径方向断面図を示している。タイヤ10は、軸線方向Xに対して実質的に平行な軸線の周りの回転を実質的に提供する。この場合に、タイヤ10は、乗用車を意図している。
【0150】
タイヤ10は、それぞれ作動フィラメント状補強要素46、47を含む2つの作動プライ16、18を含む作動補強体15と、少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素48を含むフーピングプライ19を含むフープ補強体17とを含むクラウン補強体14を含むクラウン12を有する。クラウン補強体14は、クラウン12内でタイヤ10の円周方向Zに延びる。クラウン12は、クラウン補強体14の半径方向外側に配置されたトレッド20を含む。この場合に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19は、半径方向に作動補強体15とトレッド20の間に挿入される。この場合に、作動補強体15は、2つの作動プライ16、18のみを含み、フープ補強体17は、単一フーピングプライ19を含む。この場合に、作動補強体15は2つの作動プライ16、18から構成され、フープ補強体17はフーピングプライ19から構成される。クラウン補強体14は、作動補強体15とフープ補強体17で構成される。
【0151】
タイヤ10は、クラウン12を半径方向内側に向けて延ばす2つの側壁22を更に含む。更に、タイヤ10は、側壁22の半径方向内側にある2つのビード24であって、その各々が充填ゴム30の塊を載せている環状補強構造体26、この場合はビードワイヤ28を有する上記ビード24を有し、更に半径方向カーカス補強体32を有する。各側壁22は、各ビード24をクラウン12に接続する。
【0152】
カーカス補強体32は、複数のカーカスフィラメント状補強要素44を含むカーカスプライ34を有し、カーカスプライ34は、ビードからクラウン12に向かって側壁を通って延びる主ストランド38と、環状補強構造体26の半径方向外側にある半径方向外側端部42を有する折り返しストランド40とを各ビード24内に形成するようにビードワイヤ28の周りの折り返し部によってビード24の各々に固着される。従って、カーカス補強体32は、ビード24から側壁22内でそれを通って延び、クラウン12の中に延びる。カーカス補強体32は、クラウン補強体14及びフープ補強体17の半径方向内側に配置される。従って、クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に挿入される。カーカス補強体32は、単一カーカスプライ34を含む。この場合に、カーカス補強体32は、カーカスプライ34によって形成される。
【0153】
タイヤ10は、側壁22の軸線方向内側にかつクラウン補強体14の半径方向内側に置かれて2つのビード24の間を延びる好ましくはブチルで製造された気密内部層46を更に含む。
【0154】
各作動プライ16、18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34は、対応するプライの補強要素が埋め込まれたエラストマー母材を含む。作動プライ16、18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34の各エラストマー母材は、従来、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム、補強充填剤、例えばカーボンブラック及び/又はシリカ、架橋システム、例えば、好ましくは、硫黄とステアリン酸と酸化亜鉛とを含む加硫システム、並びに時に加硫促進剤、加硫遅延剤、及び/又は様々な添加剤を含む補強要素のスキムコーティングのための従来のエラストマー組成に基づいている。
【0155】
図2及び
図3を参照すると、各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の一方のビード24から他方のビード24まで軸線方向に延びる。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の子午面M内及び赤道円周平面E内で、言い換えれば、クラウン12及び各側壁22内でタイヤ10の円周方向Zと80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度A
Cを成す。
【0156】
図2を参照すると、各作動プライ16、18の作動フィラメント状補強要素46、47は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。各作動フィラメント状補強要素46、47は、タイヤ10の作動補強体15の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。各作動フィラメント状補強要素46、48は、子午面M内でタイヤ10の円周方向Zと10°から40°、好ましくは、20°から30°の範囲にわたってこの場合は26°に等しい角度を形成する。作動プライ16内で作動フィラメント状補強要素46とタイヤ10の円周方向Zとがなす角度Sの向きは、他方の作動プライ18内で作動フィラメント状補強要素47とタイヤ10の円周方向Zとがなす角度Qの向きと反対である。言い換えれば、一方の作動プライ16内の作動フィラメント状補強要素46に他方の作動プライ18内の作動フィラメント状補強要素47が交差する。
【0157】
図2を参照すると、単一フーピングプライ19は、そのエラストマー組成に基づくかつ
図4及び
図5に例示して下記でより詳細に説明するようなエラストマー母材にコード50を埋め込むことによって得られる少なくともフーピングフィラメント状補強要素48を含む。フーピングプライ19の母材に埋め込まれた状態で、タイヤ10内のコード50は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づく内部エンクロージャ58のための充填材料を含み、この充填材料53は、コード50のこの内部エンクロージャ58に位置する。この事例では、フーピングプライ19は、タイヤ10のクラウン12の軸線方向幅L
Fにわたって間断なく巻かれた単一フーピングフィラメント状補強要素48を含む。有利なことに、軸線方向幅L
Fは、作動プライ18の幅L
Tよりも小さい。フーピングフィラメント状補強要素48は、タイヤ10の円周方向Zと厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度A
Fを成す。この事例では、この角度は、この場合は5°に等しい。
【0158】
カーカスフィラメント状補強要素44及び作動フィラメント状補強要素46、47は、赤道円周平面E上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるようにクラウン12に配置される。
【0159】
各カーカスフィラメント状補強要素44は、織物フィラメント状要素であり、従来、2個のマルチフィラメントストランドを含み、各マルチフィラメントストランドは、ポリエステル、この場合はPETのモノフィラメントの紡績糸から構成され、これら2個のマルチフィラメントストランドは、個々に240巻回.m-1で一方向に過剰撚転され、次いで、240巻回.m-1で反対方向に互いに撚転される。これら2個のマルチフィラメントストランドは、互いの周りに螺旋状に巻かれる。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220テクスに等しい番手を有する。
【0160】
各作動フィラメント状補強要素46、47は、金属フィラメント状要素であり、この場合に、各々が0.30mmに等しい直径を有する2つの鋼鉄モノフィラメントのアセンブリであり、これら2つの鋼鉄モノフィラメントは、14mmのピッチで互いに巻かれる。
【0161】
本発明の第1の実施形態によるコード
【0162】
図4及び
図5を参照すると、本発明による各コード50は、螺旋巻き金属フィラメント状要素54の単層52を含む。この事例では、コード50は単層52から構成され、言い換えれば、コード50は、層52のもの以外のいずれの金属フィラメント状要素も含まない。層52は、N個の螺旋巻き金属フィラメント状要素から構成され、Nは、3から6の範囲であり、この場合はN=4である。コード50は、それがその最大長さに沿って延びる方向に対して実質的に平行に延びる主軸線Aを有する。層52の各金属フィラメント状要素54は、コード50が実質的に直線の方向に延びる時にこの実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線Aに対して実質的に垂直な断面平面内で層52の各金属フィラメント状要素54の中心と主軸線Aの間の距離が層52の全ての金属フィラメント状要素54に関して実質的に一定かつ同一であるような螺旋経路を主軸線Aの周りに描く。層52の各金属フィラメント状要素54の中心と主軸線Aの間のこの一定の距離は、螺旋直径Dhの半分に等しい。
【0163】
図示の実施形態では、各金属フィラメント状要素54は、単一金属モノフィラメント56を含む。各金属フィラメント状要素54は、銅、亜鉛、錫、コバルト、又はこれらの金属の合金、この場合は黄銅を含む金属被覆の層(図示していない)を更に含む。各金属モノフィラメント56は炭素鋼で製造され、この場合は3100MPaに等しい引張強度を有する。
【0164】
各金属フィラメント状要素54の直径Dfは、全ての金属フィラメント状要素54に関して0.10≦Df≦0.50mm、好ましくは、0.20mm≦Df≦0.35mm、より好ましくは、0.25mm≦Df≦0.33mm、この場合はDf=0.32mmであるようなものである。各金属フィラメント状要素54には事前形成マークがない。
【0165】
コード50は、D≦2.00mm、好ましくは、0.75mm≦D≦1.40mm、より好ましくは、1.00mm≦D≦1.30mm、この場合はD=1.27mmであるような直径Dを有する。
【0166】
有利なことに、各金属フィラメント状要素54は、3mm≦P≦15mm、好ましくは、3mm≦P≦9mm、この場合はP=8mmであるようなピッチPで巻かれる。
【0167】
各金属フィラメント状要素の直径Dfに対するピッチPの比Kは、P及びDFがミリメートルを単位として表される時に19≦K≦44、この場合はK=25であるようなものである。
【0168】
第1の実施形態によるコード50は、As≧1%であるような、好ましくはAs≧1%であるような、好ましくはAs≧2.5%、より好ましくはAs≧3%、更に好ましくは3%≦As≦5.5%であるような、この場合は4.8%に等しいような構造伸長Asを有する。上述のように、値Asは、2014年の規格ASTM D2969-04を適用してコードの力-伸長曲線をプロットすることによって決定される。得られた曲線を
図6に示している。次いで、この力-伸長曲線からこの曲線の導関数の変動が推定される。
図7は、この導関数の変動を伸長の関数として示している。この場合に、この導関数の最高点は値Asに対応する。
【0169】
各金属フィラメント状要素の螺旋角αは、13°≦α≦21°であるようなものである。この事例では、上述のように、コード50の特性に関して、α(1)=20.05°、α(2)=20.36°、及びα(3)=α=20.37°である。
【0170】
各金属フィラメント状要素54は、2mm≦Rf≦7mm、好ましくは、2mm≦Rf≦5mm、より好ましくは、3mm≦Rf≦5mmであるような螺旋曲率半径Rfを有する。曲率半径Rfは、Rf=P/(π×Sin(2α))という関係式を用いて計算される。この場合はP=8mm及びα=20.37°であるので、Rf=3.90mmである。
【0171】
各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mm、好ましくは、0.50mm≦Dh≦1.00mm、より好ましくは、0.70mm≦Dh≦1.00mmであるようなものである。螺旋直径Dhは、Dh=P×Tan(α)/πという関係式を用いて計算される。この場合はP=8mm及びα=20.37°であるので、Dh=0.95mmである。
【0172】
金属フィラメント状要素54は、コード50の直径Dvの内部エンクロージャ58を定める。エンクロージャ直径Dvは、Dfが各金属フィラメント状要素の直径であり、Dhが螺旋直径である時に、Dv=Dh-Dfという関係式を用いて計算される。有利なことに、Dvは、Dv≧0.46mm、好ましくは、0.46mm≦Dv≦0.70mmであるようなものである。この場合はDh=0.95mm及びDf=0.32mmであるので、Dv=0.63mmである。
【0173】
本発明により、9≦Rf/Df≦30、好ましくは、11≦Rf/Df≦19が成り立つ。この場合はRf/Df=12.2が成り立つ。同様に、本発明により、1.30≦Dv/Df≦2.1、好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.05、より好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.00、この場合はDv/Df=1.97が成り立つ。
【0174】
本発明の第2の実施形態によるコード
【0175】
ここで本発明によるタイヤのコードの第2の実施形態を以下に説明する。参照番号50’で表示するこのコードを
図8及び
図9に例示している。従来の図に示す第1の実施形態と類似の要素は同一参照番号で表示している。
【0176】
コード50’は、螺旋巻き金属フィラメント状要素54の単層52を含む。層52は、N=6個の螺旋巻き金属フィラメント状要素から構成される。
【0177】
図示の実施形態では、各金属フィラメント状要素54は、単一金属モノフィラメント56を含む。各金属フィラメント状要素54は、銅、亜鉛、錫、コバルト、又はこれらの金属の合金、この場合は黄銅を含む金属コーティングの層(図示せず)を更に含む。
【0178】
各金属フィラメント状要素54の直径Dfは、全ての金属フィラメント状要素54に関して0.10≦Df≦0.50mm、好ましくは、0.20mm≦Df≦0.35mm、より好ましくは、0.25mm≦Df≦0.33mm、この場合はDf=0.32mmであるようなものである。各金属フィラメント状要素54には事前形成マークがない。
【0179】
コード50’は、D≦2.00mm、好ましくは、0.75mm≦D≦1.30mm、より好ましくは、1.00mm≦D≦1.20mm、この場合はD=1.15mmであるような直径Dを有する。
【0180】
有利なことに、各金属フィラメント状要素54は、3mm≦P≦15mm、好ましくは、3mm≦P≦9mm、この場合はP=8mmであるようなピッチPで巻かれる。
【0181】
各金属フィラメント状要素の直径Dfに対するピッチPの比Kは、P及びDFがミリメートルを単位として表される時に19≦K≦44、この場合はK=25であるようなものである。
【0182】
コード50’内の金属フィラメント状要素の個数の多さと比較的小さい直径とに起因して、コード50’は、比較的中程度のこの場合は1.6%に等しい構造伸長Asを有する。
【0183】
各金属フィラメント状要素の螺旋角αは、13°≦α≦21°であるようなものである。この事例では、上述のように、コード50の特徴に関して、α(1)=17.35°、α(2)=17.87°、及びα(3)=α=17.9°である。
【0184】
各金属フィラメント状要素54は、2mm≦Cf≦7mm、好ましくは、2mm≦Rf≦5mm、より好ましくは、3mm≦Rf≦5mmであるような螺旋曲率半径Rfを有する。曲率半径Rfは、Rf=P/(π×Sin(2α))という関係式を用いて計算される。この場合はP=8mm及びα=17.9°であるので、Rf=4.36mmである。
【0185】
各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mm、好ましくは、0.50mm≦Dh≦0.90mm、より好ましくは、0.70mm≦Dh≦0.90mmであるようなものである。螺旋直径Dhは、第1の実施形態の場合と同様に計算され、この場合はP=8mm及びα=17.9°であるので、Dh=0.82mmである。
【0186】
エンクロージャ直径Dvは、第1の実施形態の場合と同様に計算される。有利なことに、Dvは、Dv≧0.46mm、好ましくは、0.46mm≦Dv≦0.60mmであるようなものである。この場合はDh=0.82mm及びDf=0.32mmであるので、Dv=0.50mmである。
【0187】
本発明により、9≦Rf/Df≦30、好ましくは、11≦Rf/Df≦19が成り立つ。この場合はRf/Df=13.6が成り立つ。同様に、本発明により、1.30≦Dv/Df≦2.1、好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.05、より好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.00、この場合はDv/Df=1.56が成り立つ。
【0188】
第1の実施形態によるタイヤを製造する方法
【0189】
タイヤ10は、下記で説明する方法を用いて製造される。
【0190】
最初に、作動プライ18及びカーカスプライ34が、各プライの複数のフィラメント状補強要素を互いに平行に配置し、これらの要素を架橋後にエラストマー母材を形成することが意図された少なくとも1つのエラストマーを含む未架橋組成内に例えばスキムコーティングによって埋め込むことによって製造される。プライの複数のフィラメント状補強要素が互いに平行であり、更にプライの主方向と平行である直線プライとして公知のプライが得られる。次いで、必要に応じて、各直線プライの一部分がある切断角度で切断され、プライの複数のフィラメント状補強要素が互いに平行であり、プライの主方向と切断角度に等しい角度を形成する傾斜プライとして公知のプライが得られるようにこれらの部分が互いに対して当接される。
【0191】
次いで、アセンブリ方法が実施され、その実施中に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19が、作動補強体15の半径方向外側に配置される。この事例では、第1の変形では、LFよりもかなり小さい幅Bを有するストリップが製造され、このストリップの未架橋エラストマー組成に基づくエラストマー母材内にコード50を埋め込むことによってこのストリップ内にフーピングフィラメント状補強要素48が形成され、ストリップは、軸線方向幅LFが得られるように数回にわたって螺旋に巻かれる。第2の変形では、幅LFを有するフーピングプライ19が、カーカスプライ及び作動プライと類似の方式で製造され、作動補強体15の上で1回巻かれる。第3の変形では、コード50によって形成されたフーピングフィラメント状補強要素48が、作動プライ18の半径方向外側に巻かれ、次いで、その上にフーピングプライ19の未架橋エラストマー組成に基づく層が堆積され、この層内に、コード50によって形成されたフーピングフィラメント状補強要素48がタイヤの硬化中に埋め込まれることになる。これら3つの変形では、コード50によって形成された接合されたフィラメント状補強要素48は、タイヤを製造する方法の完了時にコード50によって形成されたフーピングフィラメント状補強要素48を含むフーピングプライ19を形成するために組成に埋め込まれる。
【0192】
次に、カーカス補強体、作動補強体、フープ補強体、及びトレッドが、エラストマー母材の組成がまだ架橋されておらず、未硬化状態にある未乾燥形態のタイヤを形成するように配置される。
【0193】
次いで、未乾燥形態のタイヤは、それを少なくとも半径方向に拡大するように成形される。最後に、各組成が架橋状態を提供し、当該組成に基づくエラストマー母材を形成するタイヤをもたらすために、成形された未乾燥形態のタイヤの組成は、例えば硬化又は加硫によって架橋される。
【0194】
本発明の第2の実施形態によるタイヤ
【0195】
図10から12は、本発明の第2の実施形態によるタイヤ10’を示している。これらの図では、第1の実施形態によるタイヤ10と類似の要素を同一参照番号によって表している。
【0196】
タイヤ10’は、軸線方向Xに対して実質的に平行な軸線の周りの回転を実質的に提供する。タイヤ10’は、この場合は乗用車を意図している。
【0197】
タイヤ10’は、トレッド20とクラウン補強体14とを含むクラウン12を有し、クラウン補強体14は、クラウン12内で円周方向Zに延びる。
【0198】
クラウン補強体14は、単一作動プライ18を含む作動補強体15と、単一フーピングプライ19を含むフープ補強体17とを含む。この場合に、作動補強体15は作動プライ18から構成され、フープ補強体17はフーピングプライ19から構成される。クラウン補強体14は、作動補強体15とフープ補強体17で構成される。
【0199】
クラウン補強体14は、トレッド20を載せている。この場合に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19は、半径方向に作動補強体15とトレッド20の間に挿入される。
【0200】
タイヤ10’は、クラウン12を半径方向に内側に向けて延ばす2つの側壁22を含む。更に、タイヤ10’は、側壁22の半径方向内側にある2つのビード24であって、その各々が充填ゴム30の塊を載せている環状補強構造体26、この事例ではビードワイヤ28を有する上記ビード24を有し、更に半径方向カーカス補強体32を有する。クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に置かれる。各側壁22は、各ビード24をクラウン12に接続する。
【0201】
カーカス補強体32は、単一カーカスプライ34を有する。この場合に、カーカス補強体32は、カーカスプライ34によって形成される。カーカス補強体32は、ビード24から側壁22を通ってクラウン12の中に延びる主ストランド38と、半径方向に環状補強構造体26の外側にある半径方向外側端部42を有する折り返しストランド40とを各ビード24内に形成するようにビードワイヤ28の周りで折り返すことによってビード24の各々内に固着される。従って、カーカス補強体32は、ビード24から側壁22を通ってクラウン12の中に延びる。この実施形態では、カーカス補強体32は、クラウン12を通って軸線方向にも延びる。クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に挿入される。
【0202】
各作動プライ18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34は、対応するプライの1又は2以上の補強要素が埋め込まれたエラストマー母材を含む。
【0203】
図10を参照すると、単一カーカスプライ34は、カーカスフィラメント状補強要素44を含む。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の一方のビード24から他方のビード24まで軸線方向に延びる。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10’の子午面M内で、言い換えれば、クラウン12内でタイヤ10の円周方向Zと55°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、55°から80°、より好ましくは、60°から70°の範囲にわたる角度A
C1を成す。所与の縮尺において全てのカーカスフィラメント状補強要素44を互いに平行に示す略図である
図12を参照すると、カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10’の赤道円周平面E内で、言い換えれば、側壁22内でタイヤ10’の円周方向Zと85°よりも大きいか又はそれに等しい角度A
C2を成す。
【0204】
この例では、基準直線から反時計周り方向に、この場合は円周方向Zに向けられた角度が正号を有し、基準直線から時計周り方向に、この場合は円周方向Zに向けられた角度が負号を有するという一般則を採用する。この事例では、AC1=+67°及びAC2=+90°である。
【0205】
図11を参照すると、単一作動プライ18は、複数の作動フィラメント状補強要素46を含む。これらの作動フィラメント状補強要素46は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。各作動フィラメント状補強要素46は、タイヤ10の作動補強体15の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。各作動フィラメント状補強要素46は、子午面M内でタイヤ10’の円周方向Zと10°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、30°から50°、より好ましくは、35°から45°の範囲にわたる角度A
Tを成す。上記で定めた向きを所与とすると、A
T=-40°である。
【0206】
単一フーピングプライ19は、少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素48を含む。この事例では、フーピングプライ19は、2つの隣接する巻きの間の軸線方向距離が1.3mmに等しいようにタイヤ10’のクラウン12の軸線方向幅LFにわたって間断なく巻かれる。有利なことに、軸線方向幅LFは、作動プライ18の幅LTよりも小さい。フーピングフィラメント状補強要素48は、タイヤ10’の円周方向Zと厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度AFを成す。この事例では、AF=+5°である。
【0207】
フーピングプライ19は、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して430daN.mm-1に等しい引張時割線弾性率を有する。フーピングプライの破断荷重は69daN.mm-1に等しい。
【0208】
カーカスフィラメント状補強要素44、作動フィラメント状補強要素46、及びフーピングフィラメント状補強要素48は、赤道円周平面E上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるようにクラウン12に配置されることに注意されるであろう。この場合に、角度AFにより、更に角度ATの向きと角度AC1の向きがタイヤ10’の円周方向Zに関して反対であることにより、三角形メッシュを得ることが可能になる。
【0209】
各カーカスフィラメント状補強要素44は、織物フィラメント状要素であり、従来、2つのマルチフィラメントストランドを含み、各マルチフィラメントストランドは、ポリエステル、この場合はPETのモノフィラメントの紡績糸から構成され、これら2つのマルチフィラメントストランドは、個々に240巻回.m-1で一方向に過剰撚転され、次いで、互いに240巻回.m-1で反対方向に互いに撚転される。これら2つのマルチフィラメントストランドは、互いの周りに螺旋状に巻かれる。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220テクスに等しい番手を有する。
【0210】
各作動フィラメント状補強要素46は、金属フィラメント状要素であり、この場合に、各々が0.30mmに等しい直径を有する2つの鋼鉄モノフィラメントのアセンブリであり、これら2つの鋼鉄モノフィラメントは、14mmのピッチで互いに巻かれる。
【0211】
フーピングフィラメント状補強要素48は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づくエラストマー母材にコード50又は50’を埋め込むことによって得られる。
【0212】
タイヤ10’は、タイヤ10を製造する方法と類似の方法を実施することによって製造される。タイヤ10’の三角形メッシュを形成するために、EP1623819又はFR1413102に説明されている特定のアセンブリ方法が実施される。
【0213】
比較試験
【0214】
乗用車のためのタイヤを補強することを目的とする様々なコードAからV及び産業車両のためのタイヤを補強することを目的とする様々なコードA’からJ’を試験した。
【0215】
コードAからVの間で、以下のものが区別される。
・本発明によるものではなく、かつ従来技術のケーブリングアセンブリ方法を実施することによって得られたコードA、F、及びJ、
・WO2016/166056に説明されている金属コード3.26に対応し、本発明によるものではなく、かつ従来技術の撚転アセンブリ方法を実施することによって得られたコードV、
・本発明によるものではなく、かつWO2016083265及びWO2016083267に説明されている従来技術の方法を実施することによって得られたコードB、D、G、I、K、S、T、及びU、
・本発明によるものであり、かつWO2016083265及びWO2016083267に説明されている従来技術の方法を実施することによって得られ、コードQ及びコードOがそれぞれ上述したコード50及び50’であるコードC、E、H、L、M、N、O、P、Q、及びR。
【0216】
コードA’からJ’の間で、以下のものが区別される。
・本発明によるものではなく、かつ従来技術のケーブリングアセンブリ方法又は撚転アセンブリ方法を実施することによって得られたコードA’及びE’、
・本発明によるものではなく、かつWO2016083265及びWO2016083267に説明されている従来技術の方法を実施することによって得られたコードB’、F’、及びH’、
・本発明によるものではなく、かつ各金属フィラメント状要素を事前形成する方法を実施し、それにケーブリングアセンブリ段階を続けることによって得られたコードD’、
・本発明によるものであり、かつWO2016083265及びWO2016083267に説明されている従来技術の方法を実施することによって得られたコードC’、G’、I’、及びJ’。
【0217】
各金属コードに関して、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素の直径Df、金属フィラメント状要素の個数N、Dfに対するピッチPの比に等しいピッチ係数K、度を単位として表される螺旋角α、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素のピッチP、ミリメートルを単位として表される螺旋直径Dh、ミリメートルを単位として表されるエンクロージャ直径Dv、ミリメートルを単位として表される螺旋曲率半径Rf、比Rf/Df、比Dv/Df、%を単位として表される構造伸長As、ミリメートルを単位として表されるコードの直径D、及び以下の通りに決定された圧縮性インジケータεcを測定した。
【0218】
圧縮性インジケータεcは、12mm×8mmの面積を有する四角形断面と20mmに等しい高さとを有する試験試料に対して測定したものである。試験試料は、硬化状態で10MPaに等しい弾性率(この場合に、弾性率は、タイヤに使用される組成の弾性率を表し、他の分野では他の弾性率を考えることができる)を有してコードの軸線が試験試料の対称軸線と一致するように試験される金属コードが埋め込まれたエラストマー母材を含む。20mm×20mmの面積を有する2個の支持プレートを試験試料の四角形断面の予め慎重に研磨した各面に接着剤接合する。次いで、各支持プレートを張力又は圧縮下で使用可能な可動クロスヘッドを有する試験機械(例えば、Zwick製又はInstron製の機械)に接続する。試験試料(上述の20mm×20mmのプレートの一方の上に載った)を水平支持面を有する30mmの直径の支持体の上に置き、支持体自体を試験機械の下側クロスヘッドに締結する。機械の可動クロスヘッドの下には、第1の支持面に対面するように配置された同じく水平な支持面を有する30mmに等しい直径の第2の支持体を担持する負荷センサを配置する。従って、2つの水平支持体を分離する距離は、可動クロスヘッドの移動によって変更することができる。この距離は、試験試料が負荷なしで30mmの直径の2つの支持体の間に適合することができるような値を第1の値として取り、次いで、0.1Nの予備負荷を作用するための第2の値を取り、更に試験の終了まで3mm/mnの速度まで低減することになり、試験は、試験試料がその初期高さの10%だけ押し潰された後に停止される。20℃で力-圧縮曲線を取得する。対応する変形への母材の負荷の寄与を試験試料の負荷の値から差し引く(母材のみで製造された単一ブロックの力-圧縮曲線から始めて)。座屈が発生し、これが、試験試料が曲がる時に負荷が低下し始める限界変形である最大変形の値は、この最大負荷の値に対応する。圧縮性インジケータεcは、記録されるこの限界変形の値に等しい。
【0219】
これら全ての測定の結果を下記の表1及び表2に列挙している。圧縮性インジケータεcに関して、εc≧5の値に対して十分な長手方向圧縮性が得られると推定される。εcの値が高いほど長手方向圧縮性に対して一層有利である。表示NTは、コードが試験されなかったことを示している。
【0220】
コードA、B、及びCを比較すると、コードAはコードCよりも低い長手方向圧縮性及び大きい直径Dを有することに注意されたい。特に、コードAの螺旋曲率半径Rfは比較的大きく、コードAは座屈を受けやすくなる。コードBはコードCよりも小さい直径Dを有するが、特に、螺旋曲率半径Rf及びエンクロージャ直径Dvが過度に小さく、金属フィラメント状要素をコードの軸線に過度に近接させて座屈しやすくするので、コードBの長手方向圧縮性は不十分である。
【0221】
コードD、E、及びVを比較すると、コードDは適切な螺旋曲率半径Rfを有するが、エンクロージャ直径は過度に小さく、それによって確かにコードは非常に密にはなるが、それにも関わらず、本発明によるコードEとは異なり、長手方向圧縮性が非常に低くなることに注意されたい。コードVは、少ない個数の金属フィラメント状要素に起因して比較的小さい直径を有するが、十分な長手方向圧縮性を示さない。
【0222】
コードF、G、H、及びIを比較すると、コードG及びIは比較的小さい直径を有するが、それにも関わらずこれらのコードは、特に小さいエンクロージャ直径Dvに起因して長手方向圧縮性が非常に低く、コードIに関しては比較的大きい螺旋曲率半径Rfに起因してそれ程低くないことに注意されたい。コードFは、比較的大きい直径と低い長手方向圧縮性との2重の欠点を有する。
【0223】
コードJ、K、L、M、N、及びOを比較すると、比較的大きい螺旋曲率半径Rfに起因して、コードJは低い長手方向圧縮性を有することに注意されたい。コードJのものよりも多いか又はそれに等しいスレッドの個数に対して、コードM、N、及びOは、全てより小さい直径及びかなり良好な圧縮性を有することに注意されたい。コードKは、比較的小さい直径を有するが、過度に小さいエンクロージャ直径に起因して僅かな長手方向圧縮性のみを有する。
【0224】
コードP、Q、R、S、T、及びUを比較すると、コードUは、本発明によるコードP、Q、及び特にRと比較して過度に大きい直径を有することに注意されたい。コードS及びTは、小さい直径Dを有するが、コードP、Qとは異なり、特に、コードSと類似の直径を有するがかなり高い長手方向圧縮性を有するRとは異なり、非常に低い長手方向圧縮性を有する。
【0225】
コードA’、B’、C’、及びD’を比較すると、コードA’は、過度に大きい直径Dと過度に低い長手方向圧縮性とを有することに注意されたい。小さめであるがコードB’及びD’は、過度に小さいエンクロージャ直径Dvに起因し、かつコードD’に関しては金属フィラメント状要素を事前形成する段階を必要とすることに起因して、非常に低い圧縮性のみを有するという同じ欠点を有する。コードC’は、コードB’及びD’のものよりもかなり大きい直径を有するが、良好な長手方向圧縮性を示す。
【0226】
コードE’、F’、G’、H’、I’、及びJ’を比較すると、コードE’及びH’、特にコードH’は、過度に大きい直径Dを有することに注意されたい。コードF’は、比較的小さい直径を有するが、不十分な長手方向圧縮性という代償を有する。それとは対照的に、コードG’、I’、及びJ’、特にコードJ’は、直径と長手方向圧縮性の間の優れた妥協を示す。
【0227】
【0228】
【符号の説明】
【0229】
50 コード
54 金属フィラメント状要素
56 金属モノフィラメント
58 内部エンクロージャ
Dh 螺旋直径